(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002153
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】配線回路基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/05 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
H05K1/05 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101183
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】池田 敬裕
(72)【発明者】
【氏名】石川 岳人
(72)【発明者】
【氏名】武田 雄希
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼山 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】山田 恭太郎
【テーマコード(参考)】
5E315
【Fターム(参考)】
5E315AA03
5E315AA11
5E315BB02
5E315BB04
5E315BB05
5E315CC01
5E315DD15
5E315GG22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】第1金属薄膜を簡便に形成でき、導体層と金属支持基板との間の抵抗を低くできる配線回路基板を提供する。
【解決手段】配線回路基板1は、金属支持基板2、第1金属薄膜3、絶縁層4、第2金属薄膜5及び導体層6と、を備える。第1金属薄膜3は、厚み方向金属支持基板2の一方面に配置される。絶縁層4は、厚み方向第1金属薄膜3の一方面に配置され、厚み方向に貫通する貫通孔41を有する。第2金属薄膜6は、厚み方向絶縁層4の一方面に配置される。導体層5は、第2金属薄膜5の一方面に配置される。貫通孔41内において、第1金属薄膜3及び第2金属薄膜5は、金属支持基板2と導体層6との間に配置され、金属支持基板2の一方面に第1金属薄膜3の他方面が接触し、第1金属薄膜3の一方面に第2金属薄膜5の他方面が接触する。第2金属薄膜5の一方面に導体層6の他方面が接触する。少なくとも第1金属薄膜3は、クロムを含む合金である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属支持基板と、
厚み方向における前記金属支持基板の一方面に配置される第1金属薄膜と、
厚み方向における前記第1金属薄膜の一方面に配置される絶縁層であって、厚み方向を貫通する貫通孔を有する絶縁層と、
前記絶縁層の一方面に配置される第2金属薄膜と、
前記第2金属薄膜の一方面に配置される導体層とを備え、
前記貫通孔内において、前記第1金属薄膜および前記第2金属薄膜は、前記金属支持基板と前記導体層との間に配置され、前記金属支持基板の一方面に前記第1金属薄膜の他方面が接触し、前記第1金属薄膜の一方面に前記第2金属薄膜の他方面が接触し、前記第2金属薄膜の一方面に前記導体層の他方面が接触し、
少なくとも前記第1金属薄膜の材料は、クロムを含む合金である、配線回路基板。
【請求項2】
前記合金における前記クロムの含有割合は、50質量%以下である、請求項1に記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記合金は、さらに、ニッケル、チタン、タングステンおよびモリブデンからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含有する、請求項1または請求項2に記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記第2金属薄膜の材料は、クロムを含む第2合金である、請求項1または請求項2に記載の配線回路基板。
【請求項5】
前記第2合金における前記クロムの含有割合は、50質量%以下である、請求項4に記載の配線回路基板。
【請求項6】
前記合金は、さらに、ニッケル、チタン、タングステンおよびモリブデンからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含有する、請求項4に記載の配線回路基板。
【請求項7】
前記合金と、前記第2合金とは、同一組成である、請求項4に記載の配線回路基板。
【請求項8】
前記第1金属薄膜は、
第1金属層と、
厚み方向における前記第1金属層の一方面に配置される第1酸化層と
を備える、請求項1または請求項2に記載の配線回路基板。
【請求項9】
前記金属支持基板は、
金属支持層と、
厚み方向における前記金属支持層の一方面に配置される表面金属層であって、前記金属支持層より導電率が高い表面金属層と
を備える、請求項1または請求項2に記載の配線回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
金属支持基板と、第1金属薄膜と、絶縁層と、第2金属薄膜と、グランド層とを備える配線回路基板が知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の配線回路基板では、第1金属薄膜は、金属支持基板の上面に配置されている。絶縁層は、第1金属薄膜の上面に配置されている。第1金属薄膜および絶縁層は、それらを厚み方向に貫通する開口部を共通して有する。なお、第1金属薄膜の開口部は、絶縁層の開口部から露出する第1金属薄膜の除去により形成される。
【0004】
第2金属薄膜およびグランド層は、上記した開口部内に配置されており、開口部内では、第2金属薄膜を介して金属支持基板と電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の配線回路基板の第1金属薄膜の形成において、絶縁層の開口部から露出する部分の除去が必要となる。そのため、第1金属薄膜の形成は、手間がかかる。
【0007】
そこで、第1金属薄膜を簡便に形成するために、上記した部分を除去せずに、開口部内に残すことが試みられる。
【0008】
上記の試みでは、第1金属薄膜を形成した後に、絶縁層をフォトリソグラフィーで形成する際に、第1金属薄膜は、露光後の絶縁層とともに加熱される。すると、絶縁層の開口部から露出する第1金属薄膜は、大気に暴露されて、酸化される。第1金属薄膜が、クロム単体であれば、上記した酸化によって、第1金属薄膜の抵抗が顕著に増大する。すると、グランド層と金属支持基板との間の抵抗を低くできないという不具合がある。
【0009】
本発明は、第1金属薄膜を簡便に形成できながら、導体層と金属支持基板との間に第1金属薄膜および第2金属薄膜が介在しても、導体層と金属支持基板との間の抵抗を低くできる配線回路基板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明[1]は、金属支持基板と、厚み方向における前記金属支持基板の一方面に配置される第1金属薄膜と、厚み方向における前記第1金属薄膜の一方面に配置される絶縁層であって、厚み方向を貫通する貫通孔を有する絶縁層と、前記絶縁層の一方面に配置される第2金属薄膜と、前記第2金属薄膜の一方面に配置される導体層とを備え、前記貫通孔内において、前記第1金属薄膜および前記第2金属薄膜は、前記金属支持基板と前記導体層との間に配置され、前記金属支持基板の一方面に前記第1金属薄膜の他方面が接触し、前記第1金属薄膜の一方面に前記第2金属薄膜の他方面が接触し、前記第2金属薄膜の一方面に前記導体層の他方面が接触し、少なくとも前記第1金属薄膜の材料は、クロムを含む合金である、配線回路基板を含む。
【0011】
この配線回路基板によれば、貫通孔内において、第1金属薄膜および第2金属薄膜は、金属支持基板と導体層との間に配置されるので、第1金属薄膜の除去を不要とすることができ、第1金属薄膜を簡便に形成できる。
【0012】
また、この配線回路基板では、第1金属薄膜の材料は、クロムを含む合金であるので、導体層と金属支持基板との間に第1金属薄膜および第2金属薄膜が介在しても、導体層と金属支持基板との間の抵抗を低くできる。
【0013】
本発明[2]は、前記合金における前記クロムの含有割合は、50質量%以下である、[1]に記載の配線回路基板を含む。
【0014】
本発明[3]は、前記合金は、さらに、ニッケル、チタン、タングステンおよびモリブデンからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含有する、[1]または[2]に記載の配線回路基板を含む。
【0015】
本発明[4]は、前記第2金属薄膜の材料は、クロムを含む第2合金である、[1]または[2]に記載の配線回路基板を含む。
【0016】
この配線回路基板では、第2金属薄膜の材料は、クロムを含む第2合金であるので、導体層と金属支持基板との間の抵抗をより一層低くできる。
【0017】
本発明[5]は、前記第2合金における前記クロムの含有割合は、50質量%以下である、[4]に記載の配線回路基板を含む。
【0018】
本発明[6]は、前記合金は、さらに、ニッケル、チタン、タングステンおよびモリブデンからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含有する、[4]に記載の配線回路基板を含む。
【0019】
本発明[7]は、前記合金と、前記第2合金とは、同一組成である、[4]に記載の配線回路基板を含む。
【0020】
この配線回路基板では、第1金属薄膜の合金と、第2金属薄膜の第2合金とが、同一組成であるので、第1金属薄膜および第2金属薄膜を、共通の装置で効率的に形成できる。さらに、同じ種類のエッチング液を用いて、第1金属薄膜および第2金属薄膜を効率的にパターン形成できる。
【0021】
本発明[8]は、前記第1金属薄膜は、第1金属層と、厚み方向における前記第1金属層の一方面に配置される第1酸化層とを備える、[1]または[2]に記載の配線回路基板を含む。
【0022】
第1金属薄膜は、第1酸化層を備えるので、第1金属薄膜の抵抗が増大する傾向がある。
【0023】
しかし、この配線回路基板では、第1金属薄膜の材料が、クロムを含む合金であるので、導体層と金属支持基板との間の抵抗を低くできる。
【0024】
本発明[9]は、前記金属支持基板は、金属支持層と、厚み方向における前記金属支持層の一方面に配置される表面金属層であって、前記金属支持層より導電率が高い表面金属層とを備える、[1]または[2]に記載の配線回路基板を含む。
【0025】
この配線回路基板では、金属支持基板は、金属支持層より導電率が高い表面金属層を備えるので、導体層と金属支持層との間の抵抗をより一層低くできる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の配線回路基板は、第1金属薄膜を簡便に形成できながら、導体層と金属支持基板との間に第1金属薄膜および第2金属薄膜が介在しても、導体層と金属支持基板との間の抵抗を低くできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の配線回路基板の一実施形態の断面図である。
【
図2】
図1に示す配線回路基板の工程図である。
図2Aは、第1金属薄膜を形成する工程である。
図2Bは、絶縁層を形成する工程である。
図2Cは、第2金属薄膜を形成する工程である。
図2Dは、導体層を形成する工程である。
図2Eは、カバー絶縁層を形成する工程である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
1. 本発明の配線回路基板の一実施形態
図1を参照して、本発明の配線回路基板の一実施形態を説明する。
【0029】
図1に示すように、配線回路基板1は、厚みを有する。配線回路基板1は、シート形状を有する。配線回路基板1は、面方向に延びる。面方向は、厚み方向に直交する。配線回路基板1は、金属支持基板2と、第1金属薄膜3と、絶縁層4と、第2金属薄膜5と、導体層6と、を備える。また、配線回路基板1は、さらに、カバー絶縁層7を備える。
【0030】
2. 金属支持基板2
金属支持基板2は、厚み方向における配線回路基板1の他端部に配置される。金属支持基板2は、面方向に延びる。本実施形態では、金属支持基板2は、金属支持層21のみを備える。金属支持層21は、厚み方向における配線回路基板1の他方面を形成する。金属支持層21の材料としては、鉄、ステンレス、銅、および、銅合金が挙げられ、好ましくは、ステンレス、および、銅合金が挙げられる。金属支持層21の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下である。
【0031】
3. 第1金属薄膜3
第1金属薄膜3は、厚み方向における金属支持基板2の一方面に配置される。厚み方向における第1金属薄膜3の他方面は、厚み方向における金属支持基板2の一方面に接触する。具体的には、厚み方向における第1金属薄膜3の他方面は、厚み方向における金属支持層21の一方面に接触する。好ましくは、第1金属薄膜3は、厚み方向における金属支持層21の一方面の全部に接触する。第1金属薄膜3は、面方向に延びる。第1金属薄膜3の材料は、合金である。合金は、クロムを含む。合金は、クロムの他に、例えば、ニッケル、チタン、タングステンおよびモリブデンからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む。合金が上記した少なくとも1つの金属を含むことによって、第1金属薄膜3は酸化しても高抵抗化を抑制できる。金属としては、好ましくは、ニッケル、および、チタンが挙げられる。合金としては、好ましくは、CrTi合金、および、NiCr合金が挙げられる。
【0032】
合金におけるクロムの含有割合は、例えば、90質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、30質量%以下であり、また、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、10質量%以上である。
【0033】
合金におけるクロムの含有割合が上記した上限以下であれば、第1金属薄膜3の抵抗を低減でき、より具体的には、第1金属薄膜3が第1酸化層32を備えることによる第1金属薄膜3の抵抗の増大を抑制できる。そのため、後述する導体層6と金属支持基板2との間の抵抗をより一層低くできる。
【0034】
合金におけるクロムの含有割合が上記した下限以上であれば、絶縁層4との密着性を担保できる。合金におけるクロムの含有割合は、TEM-EDX(エネルギー分散型X線分光法)により求められる。
【0035】
合金におけるクロムを除く金属の含有割合は、クロムの上記した含有割合の残部である。合金における金属の含有割合は、TEM-EDXにより求められる。
【0036】
3.1 第1金属層31
第1金属薄膜3は、第1金属層31と、第1酸化層32とを備える。第1金属層31は、厚み方向における第1金属薄膜3の他端部に配置される。第1金属層31は、面方向に延びる。第1金属層31は、厚み方向における金属支持基板2の一方面の全部に接触する。第1金属薄膜3の材料としては、上記した合金が挙げられる。第1金属層31の厚みは、例えば、1nm以上、好ましくは、10nm以上であり、また、例えば、500nm以下、好ましくは、250nm以下である。
【0037】
3.2 第1酸化層32
第1酸化層32は、厚み方向における第1金属薄膜3の一端部に配置される。第1酸化層32は、厚み方向における第1金属層31の一方面に配置される。つまり、第1酸化層32は、第1酸化層32は、厚み方向における第1金属層31の一方面の全部に接触する。第1酸化層32は、後述する絶縁層4の製造における加熱(露光後加熱)によって形成される。第1酸化層32の材料は、上記した合金の複合酸化物である。第1酸化層32の厚みは、例えば、0.5nm以上、好ましくは、1nm以上であり、また、例えば、20nm以下、好ましくは、10nm以下である。第1金属層31の厚みに対する第1酸化層32の厚みの比は、例えば、0.001以上、好ましくは、0.002以上であり、また、例えば、1以下、好ましくは、0.5以下である。なお、第1金属層31と第1酸化層32との境界は、
図1の拡大図で示すように、破線で示されるが、境界が明確に観察されないことも許容される。第1酸化層32の存在は、TEM-EDXによって求められる。
【0038】
第1金属薄膜3の厚みは、例えば、1nm以上、好ましくは、10nm以上であり、また、例えば、500nm以下、好ましくは、250nm以下である。
【0039】
4. 絶縁層4
絶縁層4は、厚み方向における第1金属薄膜3の一方面に配置される。絶縁層4は、厚み方向における第1金属薄膜3の一方面に接触する。絶縁層4は、厚み方向における第1酸化層32の一方面に配置され、第1酸化層32の一方面に接触する。絶縁層4は、面方向に延びる。絶縁層4は、ベース絶縁層である。
【0040】
絶縁層4は、貫通孔41を有する。貫通孔41は、厚み方向において絶縁層4を貫通する。本実施形態では、貫通孔41は、厚み方向の一方側に向かって開口断面積が大きくなる断面略テーパ形状を有する。貫通孔41は、絶縁層4の内周面42によって区画される。絶縁層4の材料としては、例えば、絶縁性樹脂が挙げられる。絶縁性樹脂としては、例えば、ポリイミドが挙げられる。絶縁層4の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、50μm以下である。
【0041】
5. 第2金属薄膜5
第2金属薄膜5は、絶縁層4の一方面に配置される。具体的には、第2金属薄膜5は、厚み方向における絶縁層4の一方面と、絶縁層4の内周面42とに接触する。また、第2金属薄膜5は、貫通孔41内において、厚み方向における第1金属薄膜3の一方面に配置されている。具体的には、厚み方向における第2金属薄膜5の他方面は、貫通孔41内において、厚み方向における第1金属薄膜3の一方面に接触している。絶縁層4に接触する第2金属薄膜5と、第1金属薄膜3に接触する第2金属薄膜5とは、連続する。
【0042】
第2金属薄膜5の材料は、例えば、第2合金である。第2合金は、クロムを含む。第2合金は、クロムの他に、例えば、ニッケル、チタン、タングステンおよびモリブデンからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む。第2合金が上記した少なくとも1つの金属を含むことによって、第2金属薄膜5が酸化しても第2金属薄膜5の高抵抗化を抑制できる。金属としては、好ましくは、ニッケル、および、チタンが挙げられる。第2合金としては、好ましくは、CrTi合金、および、NiCr合金が挙げられる。また、好ましくは、第2金属薄膜5の第2合金と、第1金属薄膜3の合金とは、同一組成である。
【0043】
第2金属薄膜5の第2合金と、第1金属薄膜3の合金とは、同一組成であれば、第1金属薄膜3および第2金属薄膜5を、共通の装置で効率的に形成できる。さらに、同じ種類のエッチング液を用いて、第1金属薄膜3および第2金属薄膜5を効率的にパターン形成できる。
【0044】
第2合金におけるクロムの含有割合は、例えば、90質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、30質量%以下であり、また、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、10質量%以上である。
【0045】
第2合金におけるクロムの含有割合が上記した上限以下であれば、第2金属薄膜5の抵抗を低減でき、より具体的には、第2金属薄膜5が酸化されることに起因する第2金属薄膜5の抵抗の増大を抑制できる。そのため、後述する導体層6と金属支持基板2との間の抵抗をより一層低くできる。
【0046】
第2合金におけるクロムの含有割合が上記した下限以上であれば、絶縁層4との密着性を担保できる。第2合金におけるクロムの含有割合は、TEM-EDXにより求められる。
【0047】
第2金属薄膜5の第2合金と、第1金属薄膜3の合金とは、同一組成であれば、第2合金におけるクロムの含有割合と、合金におけるクロムの含有割合とは、同一である。
【0048】
第2合金におけるクロムを除く金属の含有割合は、クロムの上記した含有割合の残部である。第2合金における金属の含有割合は、TEM-EDXにより求められる。
【0049】
第2金属薄膜5の厚みは、例えば、1nm以上、好ましくは、10nm以上であり、また、例えば、500nm以下、好ましくは、250nm以下である。
【0050】
6. 導体層6
導体層6は、第2金属薄膜5の一方面に配置される。厚み方向における導体層6の他方面は、厚み方向における第2金属薄膜5の一方面に接触する。これによって、第1金属薄膜3および第2金属薄膜5は、貫通孔41内において、金属支持基板2と導体層6とにそれぞれ接触するように、金属支持基板2と導体層6との間に配置される。本実施形態では、導体層6は、グランド層である。導体層6は、貫通孔41内における第1金属薄膜3および第2金属薄膜5を介して、金属支持基板2とグランド接続(接地)される。導体層6の材料としては、例えば、銅、銀、金、鉄、アルミニウム、クロム、および、それらの合金が挙げられる。導体層6の材料として、好ましくは、銅が挙げられる。導体層6の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、30μm以下である。
【0051】
7. カバー絶縁層7
仮想線で示すカバー絶縁層7は、厚み方向における配線回路基板1の一端部に配置される。カバー絶縁層7は、厚み方向における配線回路基板1の一方面を形成する。図示しないが、カバー絶縁層7は、厚み方向における絶縁層4の一方面に配置される。カバー絶縁層7は、導体層6を覆う。カバー絶縁層7の材料としては、例えば、絶縁性樹脂が挙げられる。絶縁性樹脂としては、例えば、ポリイミドが挙げられる。カバー絶縁層7の厚みは、例えば、1μm以上であり、また、例えば、100μm以下である。
【0052】
8. 配線回路基板1の製造方法
図2A-
図2Eを参照して、配線回路基板1の製造方法を説明する。
【0053】
図2Aに示すように、まず、第1金属薄膜3を、厚み方向における金属支持基板2の一方面に配置する。例えば、薄膜形成法、好ましくは、ドライプロセス、より好ましくは、スパッタリングによって、第1金属薄膜3を金属支持基板2の一方面に形成する。スパッタリングでは、上記した合金からなるターゲットが用いられ、または、クロムと、クロム以外の金属(合金がCrTi合金であれば、Ti、合金がNiCr合金であれば、Ni)とのそれぞれがターゲットとして用いられる。この工程では、第1金属薄膜3は、第1酸化層32(
図2B参照)をまだ備えず、第1金属層31のみを備える。
【0054】
図2Bに示すように、次いで、絶縁層4を、厚み方向における第1金属薄膜3の一方面に配置する。例えば、感光性の絶縁性樹脂を含むワニスを、第1金属薄膜3の一方面の全部に塗布し、その後、フォトリソグラフィーによって、貫通孔41を有する絶縁層4を形成する。フォトリソグラフィーによって絶縁層4を形成する場合には、露光後の絶縁層4を加熱(露光後加熱)する。大気雰囲気下で、例えば、100℃以上、好ましくは、150℃以上、また、例えば、500℃以下に絶縁層4を加熱する。上記した加熱によって、第1酸化層32が第1金属層31の一方面に形成される。
【0055】
図2Cに示すように、次いで、第2金属薄膜5を、厚み方向における絶縁層4の一方面と、絶縁層4の内周面と、貫通孔41内における第1金属薄膜3の一方面とに配置する。例えば、薄膜形成法、好ましくは、ドライプロセス、より好ましくは、スパッタリングによって、第2金属薄膜5を絶縁層4の一方面および貫通孔41内の第1金属薄膜3の一方面に形成する。スパッタリングでは、上記した第2合金からなるターゲットが用いられ、または、クロムと、クロム以外の金属(第2合金がCrTi合金であれば、Ti、第2合金がNiCr合金であれば、Ni)とのそれぞれがターゲットとして用いられる。この工程では、第2金属薄膜5の表面は、酸化されていない。
【0056】
図2Dに示すように、次いで、導体層6を、厚み方向における第2金属薄膜5の一方面に配置する。例えば、導体パターン形成法、好ましくは、ウェットプロセス、より好ましくは、めっき、さらに好ましくは、電解めっきによって、導体層6を厚み方向における第2金属薄膜5の一方面に形成する。電解めっきでは、例えば、金属支持基板2から第1金属薄膜3を介して第2金属薄膜5に電流を流す。
【0057】
図2Eに示すように、その後、カバー絶縁層7を、導体層6を覆うように、絶縁層4の一方面に配置する。例えば、感光性の絶縁性樹脂を含むワニスを、絶縁層4および導体層6のそれぞれの一方面の全部に塗布し、その後、フォトリソグラフィーによって、カバー絶縁層7を形成する。フォトリソグラフィーによってカバー絶縁層7を形成する場合には、露光後のカバー絶縁層7を加熱(露光後加熱)する。大気雰囲気下で、例えば、100℃以上、好ましくは、150℃以上、また、例えば、500℃以下にカバー絶縁層7を加熱する。
【0058】
これによって、配線回路基板1が製造される。
【0059】
9. 一実施形態の作用効果
この配線回路基板1によれば、第1金属薄膜3は、貫通孔41内において金属支持基板2に接触しているので、特許文献1に記載されるような第1金属薄膜3の除去を不要とすることができ、第1金属薄膜3を簡便に形成できる。
【0060】
また、この配線回路基板1では、第1金属薄膜3の材料は、クロムを含む合金であるので、導体層6と金属支持基板2との間に第1金属薄膜3および第2金属薄膜5が介在しても、導体層6と金属支持基板2との間の抵抗を低くできる。
【0061】
一方、第1金属薄膜3は、第1酸化層32を備えるので、第1金属薄膜3の抵抗が増大する傾向がある。
【0062】
しかし、この配線回路基板1では、第1金属薄膜3の材料が、クロムを含む合金であるので、導体層6と金属支持基板2との間の抵抗を低くできる。
【0063】
第2金属薄膜5の第2合金と、第1金属薄膜3の合金とは、同一組成であれば、第1金属薄膜3および第2金属薄膜5を、共通の装置で簡便に形成できる。さらに、同じ種類のエッチング液を用いて、第1金属薄膜3および第2金属薄膜5をパターン形成できる。
【0064】
10. 変形例
以下の変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0065】
10.1 第1変形例
図3に示すように、第1変形例では、金属支持基板2は、金属支持層21と、表面金属層22とを備える。
【0066】
金属支持層21の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下である。
【0067】
表面金属層22は、厚み方向における金属支持基板2の一端部に配置される。表面金属層22は、厚み方向における金属支持層21の一方面に配置される。表面金属層22は、厚み方向における金属支持層21の一方面に接触する。また、表面金属層22は、厚み方向における第1金属薄膜3(第1金属層31)の他方面に接触する。
【0068】
表面金属層22の導電率は、金属支持層21の導電率より高い。表面金属層22の材料としては、例えば、銅、銀、および、金が挙げられる。これらは、単独使用または併用できる。表面金属層22の材料として、好ましくは、銅が挙げられる。
【0069】
表面金属層22の厚みは、例えば、0.5μm以上、好ましくは、3μm以上であり、また、例えば、10μm以下である。
【0070】
第1変形例の配線回路基板1では、金属支持基板2は、金属支持層21より導電率が高い表面金属層22を備えるので、導体層6と金属支持層21との間の抵抗をより一層低くできる。
【0071】
10.2 第2変形例
図示しないが、第2変形例では、第2金属薄膜5の材料は、クロムを含む第2合金ではなく、例えば、クロム、ニッケル、チタン、タングステンおよびモリブデンが挙げられる。具体的には、2金属薄膜5の材料としては、例えば、クロム単体、ニッケル単体、チタン単体、タングステン単体およびモリブデン単体が挙げられる。また、ニッケル、チタン、タングステンおよびモリブデンからなる群から選択される少なくとも2つの金属を含む合金であってもよい。
【0072】
10.3 第3変形例
図示しないが、第2金属薄膜5は、第2金属層と、厚み方向における第2金属層の一方面に配置される第2酸化層と、を有してもよい。
【実施例0073】
以下に実施例としての試験例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら試験例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0074】
試験例1
[酸化処理が施されていない第1金属薄膜3を備える第1の試験回路基板の製造およびDCR測定]
【0075】
厚み方向におけるガラス板の一方面に、銅からなる金属支持基板2、表1に記載される組成のCrTi合金からなる第1金属薄膜3、および、銅からなる導体層6を順に形成した。これにより、第1の試験回路基板を製造した。この第1の試験回路基板における第1金属薄膜3は、酸化処理(後述)がまだ施されていない。つまり、第1金属薄膜3は、第1酸化層32をまだ備えず、第1金属層31のみを備える。
【0076】
その後、金属支持基板2および導体層6の間のDCR(直流抵抗)をデジタルマルチメーターによって測定した。
【0077】
[酸化処理が施された第1金属薄膜3を備える第2の試験回路基板の製造]
厚み方向におけるガラス板の一方面に、銅からなる金属支持基板2、および、表1に記載される組成のCrTi合金からなる第1金属薄膜3を順に形成した。その後、第1金属薄膜3の一方面を酸化させた。これによって、第1酸化層32が第1金属薄膜3に備えられた。酸化では、第1金属薄膜3の一方面を酸素プラズマに暴露させた。
【0078】
その後、銅からなる導体層6を第1金属薄膜3の一方面に形成した。
【0079】
これにより、第2の試験回路基板を製造した。
【0080】
その後、金属支持基板2および導体層6の間のDCR(直流抵抗)をデジタルマルチメーターによって測定した。
【0081】
そして、第2の試験回路基板のDCRから、第1の試験回路基板のDCRを差し引いて、DCRの差を求めた。DCRの差を表1に記載する。
【0082】
試験例2-試験例5
試験例1と同様にして、第1および第2の試験回路基板をそれぞれ製造し、DCRの差を求めた。但し、第1金属薄膜3の組成を表1の通りに変更した。DCRの差を表1に記載する。
【0083】
比較試験例1(Cr単体からなる第1金属薄膜3)
試験例1と同様にして、第1および第2の試験回路基板をそれぞれ製造し、DCRの差を求めた。但し、表1に記載の通り、第1金属薄膜3の材料をCr単体に変更した。DCRの差を表1に記載する。
【0084】
比較試験例2(Ti単体からなる第1金属薄膜3)
試験例1と同様にして、第1および第2の試験回路基板を製造し、DCRの差を求めた。但し、表1に記載の通り、第1金属薄膜3の材料をTi単体に変更した。DCRの差を表1に記載する。
【0085】
比較試験例3(Ni単体からなる第1金属薄膜3)
試験例1と同様にして、第1および第2の試験回路基板を製造し、DCRの差を求めた。但し、表1に記載の通り、第1金属薄膜3の材料をNi単体に変更した。DCRの差を表1に記載する。
【0086】
[考察]
表1から分かるように、第1金属薄膜3の材料がCrTi合金である試験例1-試験例2のそれぞれは、第1金属薄膜3の材料がCr単体である比較試験例1に対して、DCRの差が低い。つまり、第1金属薄膜3が第1酸化層32を備える場合であっても、第1金属薄膜3の抵抗の増大を抑制できる。
【0087】
なお、比較試験例2では、第1金属薄膜3の材料がTi単体(Crの含有割合が0質量%)であり、Tiの含有割合が100質量%であり、絶縁層4と第1金属薄膜3との密着性が低いと評価される。
【0088】
表1から分かるように、第1金属薄膜3の材料がNiCr合金である試験例3-試験例5のそれぞれは、第1金属薄膜3の材料がCr単体である比較試験例1に対して、DCRの差が低い。つまり、第1金属薄膜3が第1酸化層32を備える場合であっても、第1金属薄膜3の抵抗の増大を抑制できる。
【0089】
なお、比較試験例3では、第1金属薄膜3の材料がNi単体(Crの含有割合が0質量%)であり、Niが磁性であることから、高周波の伝送損失が大きく、不適であると評価される。
【0090】