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特開2024-21530畜産動物に植物水溶性成分を給餌する方法
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  • 特開-畜産動物に植物水溶性成分を給餌する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021530
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】畜産動物に植物水溶性成分を給餌する方法
(51)【国際特許分類】
   A23K 10/14 20160101AFI20240208BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20240208BHJP
   A23K 20/163 20160101ALI20240208BHJP
【FI】
A23K10/14
A23K10/30
A23K20/163
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124413
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】510336200
【氏名又は名称】日本ニュートリション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100213207
【弁理士】
【氏名又は名称】西嶋 大作
(72)【発明者】
【氏名】伊吹 昌久
【テーマコード(参考)】
2B150
【Fターム(参考)】
2B150AA01
2B150BB03
2B150BB08
2B150CE11
2B150CE21
2B150DC14
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、マンナン含有素材を酵素処理することによりその有効成分を、連続的、定量的に畜産動物に給餌する方法を提供することにある。
【解決手段】
あらかじめ酵素処理したマンナン含有素材を封入したティーバッグ様のものを流体圧機械の有効成分添加器中へ浸漬させると、その有効成分が簡単に溶出することが見いだし、マンナン含有素材から得られる有効成分を定量的、連続的に給餌できることを見出して本発明を完成するに至った。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動投薬配合器である流体圧機械の添加剤投入部分に、ティーバッグ様の内部に機能原料素材を封入し、浸漬させることを特徴とした、水溶性成分の給餌法。
【請求項2】
機能性原料素材が、あらかじめ酵素処理されたものであることを特徴とする請求項1に記載の給餌法。
【請求項3】
機能性原料素材の有効成分が、水溶性物質であることを特徴とする請求項1記載の給餌法。
【請求項4】
ティーバッグ様のものが、原料素材投入口を閉じることができる形状であることを特徴とする請求項1記載の給餌法。
【請求項5】
機能性原料素材として、マンナン含有素材を酵素処理し、マンノース類を遊離させたものを使用する請求項1から4のいずれかに記載の給餌法。
【請求項6】
マンノース類の主要成分が、マンノース、マンノビオース、マンノトリオ―スのいずれか
であることを特徴とする請求項5記載の給餌法。
【請求項7】
酵素処理に用いられる酵素が、ヘミセルラーゼであることを特徴とする請求項5に記載の給餌法。
【請求項8】
マンナン含有素材が、コプラミール、パーム核ミール、コーヒー粕、豆皮から選択される1または2以上の組合せであることを特徴とする請求項5記載の給餌法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コプラミールから得られる水溶性有効成分を効率的に畜産動物に与える給餌法である。
【背景技術】
【0002】
自動投薬配合器である流体圧機械を利用した添加剤の投入は、畜産動物への給餌法として頻繁に利用されている(特許文献1)。流体圧機械とは、水等の流体を弁をとおして通過させた時に生じる圧力差によって添加剤を溶解した流体を吸い上げ、連続的、定量的に畜産動物の飲水に有効成分を分散または溶解させる機械である。この添加剤を溶解させる流体は一般的には水であり、投入される添加剤は、ビタミンBのような水溶性物資か、油溶性物質であれば水に乳化させて投与している。この水溶性物質の投与は、例えば植物性素材から、抽出精製したものを投与するのが一般的であり、水溶性物質を抽出精製せずに投与すると水不溶性物質が、ノズルを塞いでしまったりして、機械の故障につながってしまう。
【0003】
従って、植物の有効成分は、抽出してノズルがつまらないようになる程度に夾雑物を除去し、精製しなければならない。そのために、有効成分を畜産動物に給餌するには大きなコストを支払って夾雑物を取り除いたものを使用しなければならないのが現状である。
【0004】
以上現状に対して、原料素材をティーバッグに詰めて、有効成分のみを溶出させる手法が、考えられている(特許文献2)。確かにこの手法であると、有効成分のみが溶出して、夾雑物の分散が防止できる手法である。しかしながら、これは、定量的かつ連続的な給餌方法ではない。畜産業界では、なるべく労務コストを削減しながら、定量的かつ連続的に給餌する必要があり、なるべく簡便に、定量的、連続的に有効成分を給餌する必要性がある。
【0005】
マンナン含有素材例えば、コプラミールには、マンナンが含有されており、これをヘミセルラーゼの一種であるマンナナーゼを作用させることによって、マンノビオースが遊離して、サルモネラ等の病原菌への抵抗性を示すなど、様々な免疫賦活効果をもつことが知られている(非特許文献1、非特許文献2)。このマンノビオースは水溶性であり、抽出し精製すれば、水溶性の有効成分として活用でき、飲水に混合することができるなどして、利用範囲が広まる。しかし、この遊離したマンノースやマンノビオースを抽出精製するには大きなコストかけなければ実現できず、当該業者にとっては負担が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2004-502256号公報
【特許文献2】特開2022-91605号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】British Poultry Science 48 (3), 331-341
【非特許文献2】Veterinary Immunology and Immunopathology 139 (2-4), 289-295
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの状況を鑑みて、本発明の課題は、マンナン含有素材を酵素処理することによりその有効成分を、連続的、定量的に畜産動物に給餌する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、あらかじめ酵素処理したマンナン含有素材を封入したティーバッグ様のものを流体圧機械の有効成分添加器中へ浸漬させると、その有効成分が簡単に溶出することが見いだし、マンナン含有素材から得られる有効成分を定量的、連続的に給餌できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
1)自動投薬配合器である流体圧機械の添加剤投入部分に、ティーバッグ様の内部に機能原料素材を封入し、浸漬させることを特徴とした、水溶性成分の給餌法。
2)機能性原料素材が、あらかじめ酵素処理されたものであることを特徴とする1に記載の給餌法。
3)機能性原料素材の有効成分が、水溶性物質であることを特徴とする1記載の給餌法。
4)ティーバッグ様のものが、原料素材投入口を閉じることができる形状であることを特徴とする1記載の給餌法。
5)機能性原料素材として、マンナン含有素材を酵素処理し、マンノース類を遊離させたものを使用する1から4のいずれかに記載の給餌法。
6)マンノース類の主要成分が、マンノース、マンノビオース、マンノトリオ―スのいずれかであることを特徴とする5記載の給餌法。
7)酵素処理に用いられる酵素が、ヘミセルラーゼであることを特徴とする5に記載の給餌法。
8)マンナン含有素材が、コプラミール、パーム核ミール、コーヒー粕、豆皮から選択される1または2以上の組合せであることを特徴とする5記載の給餌法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の酵素処理したマンナン含有素材をティーバッグ様のものに封入し、流体圧機械の添加剤添加部分に浸漬することにより、有効成分としてのマンノビオースを連続的、定量的に畜産動物に給餌することができる。これにより、安価に畜産動物の免疫賦活をすることにより、サルモネラ等の病原菌に対する抵抗性を付与することができ、当該業者にとっては有益な方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明における自動投薬配合器を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明について詳細に説明する。なお、本発明において特別な記載がない場合、%は重量%を示す。
【0014】
本発明における自動投薬配合器は特に限定されるものではないが、流体圧機械を用いることが好ましい。流体圧機械は一般的には図1に示したとおりである。Aから水等の流体が流れてきて、Dに流れていく間に、Bの流体圧機械を通過する際に生じる差圧により、Cに溶解した有効成分を引き上げて水等と混合するといったものである。この流体圧機械は、モータ―付のものやそうでないものがあるが、特に限定されない。この場合に、流体圧機械を通さずに、本発明のティーバッグ様のものに、酵素処理したマンナン含有素材を詰めて、有効成分であるマンノビオース等を溶出させたものを直接投入してもよいが、この場合定量性や連続性が損なわれるので、自動投配合器を用いることが肝心である。すなわち本発明は、この有効成分添加容器C中に、あらかじめ酵素処理したコプラミールをティーバッグ様のものに詰めて浸漬することにより達成される。
【0015】
使用されるマンナン含有素材は、マンナンを含有するものの中で、コプラミール、パーム核ミール、コーヒー粕、豆皮が好ましい。これらは、マンナンを含有しており、酵素処理によって、マンノビオースを主体とした有効成分を遊離しやすい。特に、コプラミールは、マンナナーゼによりマンノビオースを遊離し、水に浸漬された場合には、容易にその有効成分を溶出することができ好ましい。浸漬されるコプラミールはあらかじめ酵素処理される必要がある。酵素処理されないコプラミールを用いると、コプラミールの繊維が酵素によってほぐれずに、繊維によって有効成分が封じ込められて、含有される有効成分の溶出が完全でなくなる。
【0016】
この酵素は、ヘミセルラーゼであればいい。好ましくはマンノース、マンノビオース、マンノトリオースを遊離しやすいものが好ましい。具体例としては、マンナナーゼ、マンノシダーゼの単独もしくは混合などがある。
【0017】
使用されるティーバッグ様のものは、酵素処理されたコプラミールそのものが外部に溶出することを最小限に抑えるものであればメッシュ間隔は特に限定されない。素材については、水に溶解してしまうものは使用できないがそれ以外の素材で特には限定されない。具体的には紙やポリプロピレン・ポリエステル・ナイロン(ポリアミド)などの一般的なプラスチックがあげられる。近年では生分解性プラスチックなども使用できる。
【0018】
前述したように酵素処理されたコプラミールは、その有効成分である、マンノビオース主体に自然免疫賦活効果をもち、投与された畜産動物は病原菌に対して抵抗性をもつことができる。この酵素処理されてマンノビオースを含有するコプラミールを直接畜産動物に給餌してもよいが、一般的に病原菌等に感染している畜産動物は、食欲が低下し、接餌の力が落ちてくる。しかしながら、飲水は必ず行われる行動であり、感染症に罹患した畜産動物に有効成分を飲水で与えることは非常に有意義である。もちろん、これらの有効成分を単離して製品化すればそのまま飲水に与えることができるが、そのためにはコストがかさんでしまい、農家にとっては大きな負担になる。以上のように本発明は、感染症に対して有効成分を大きなコスト負担もなく、連続的、定量的に与えることができるものである。
【0019】
以下に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例0020】
実施例1と比較例1
マンナナーゼで処理した、コプラミール100gを市販の出汁等を詰めて煮だす25cm×35cmの大きさのティーバッグ様の袋(ポリプロピレン製)に封入し、上部を封印し、5Lの水道水に浸漬させて、マンノビオースの溶出状況を測定した(実施例1)。また、酵素処理していないコプラミール100gを同様のティーバッグ様の袋に封入し、浸漬し同様にマンノビオースの溶出状況を測定した(比較例1)。なお溶出率は、以下の式で表した。
溶出率(%)=(浸漬された素材のマンノビオース含量/浸漬された素材のマンノビオース含量)*100
【0021】
【表1】
【0022】
表1のように、マンナナーゼで酵素処理したコプラミールはその有効成分5分後には完全に溶出することができている。反対に、未酵素処理のコプラミールは5分後でも半分しか溶出できていない。
すなわち、本発明のようにあらかじめ酵素処理したマンナン含有素材をティーバッグ様のものに封印し、これを自動配合器にかけることで、有効成分を100% 連続的、定量的に畜産動物へ給餌できることがわかる。
【実施例0023】
マンノビオースの有効濃度は、体重1kgあたり40mgといわれており、2kgのレイヤーであると一日80mg必要になる。酵素処理されたコプラミールには10%のマンノビオースが含有されているので、レイヤーに1羽に対して0.8g、1000羽に対しては800gの酵素処理コプラミールを浸漬すればよいことになる。
そこでサルモネラ感染の疑いのある平均体重2kgのレイヤー1000羽に対して、一日の飲水量280Lの給水を自動的かつ経時的に行っている、飲水供給ラインの中間地点設置されている流体圧機械(サンホープ社製、商品名ドサトロン)の有効成分添加容器中に酵素処理されたコプラミール800gを封入したティーバッグ様のものを浸漬して、一日一回このティーバッグ様のものを交換し、1週間給餌し続けて、給餌前後におけるクロアカスワブによるサルモネラ検出率を測定した。結果を表2に示す。
【0024】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0025】
この結果から、本発明による給餌法によると、サルモネラの感染が低減できることがわかり、当該業者にとっては、安価に感染症対策ができることがわかる。
図1