IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジキンの特許一覧

<>
  • 特開-濃度測定装置及びその調整方法 図1
  • 特開-濃度測定装置及びその調整方法 図2
  • 特開-濃度測定装置及びその調整方法 図3
  • 特開-濃度測定装置及びその調整方法 図4
  • 特開-濃度測定装置及びその調整方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021533
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】濃度測定装置及びその調整方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/33 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
G01N21/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124416
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 正明
(72)【発明者】
【氏名】田中 一輝
(72)【発明者】
【氏名】滝本 昌彦
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059EE01
2G059EE11
2G059FF10
2G059GG01
2G059GG02
2G059GG03
2G059GG05
2G059HH03
2G059JJ22
2G059KK03
2G059MM01
2G059MM09
2G059MM10
2G059MM14
2G059NN05
(57)【要約】
【課題】 強度の異常な周期的変化を防ぎ、適切な濃度測定を可能にする濃度測定装置を提供する。
【解決手段】 其々が異なる波長の光を発する複数の光源2,3と、光源2,3が発する異なる複数の波長の前記光を合波する合波器5と、合波器5により合波された光が通過する被測定流体Gを入れるための測定セル6と、測定セル6を通過した透過光を検出するための透過光検出器7と、透過光検出器7が出力したアナログ検出信号の増幅率及びオフセット電圧を調整するための受光回路8と、受光回路8で調整されたアナログ検出信号をデジタル信号9sに変換する信号変換器9と、デジタル信号9sの挙動を検知するように構成された信号検知部15と、デジタル信号9sを周波数解析して求めた振幅スペクトルを用いて被測定流体Gの濃度を演算するように構成された濃度演算部13と、を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
其々が異なる波長の光を発する複数の光源と、
前記複数の光源が発する異なる複数の波長の前記光を合波する合波器と、
前記合波器により合波された光が通過する被測定流体を入れるための測定セルと、
前記測定セルを通過した透過光を検出するための透過光検出器と、
前記透過光検出器が出力したアナログ検出信号の増幅率及びオフセット電圧を調整するための受光回路と、
前記受光回路で調整されたアナログ検出信号をデジタル信号に変換する信号変換器と、
前記信号変換部によりデジタル変換されたデジタル信号の挙動を検知するように構成された信号検知部と、
前記デジタル信号を周波数解析して求めた振幅スペクトルを用いて前記被測定流体の濃度を演算するように構成された濃度演算部と、
を備える濃度測定装置。
【請求項2】
前記合波器は、合波された合波光を2方向に出力し、一方の光が前記測定セルに入射され、他方の光が前記測定セルに入射しない非入射光とされ、
前記非入射光を、参照光として検出するための非入射光検出器を更に備え、
前記受光回路は、更に、前記非入射光検出器により検出された前記非入射光のアナログ検出信号の増幅率及びオフセット電圧を調整可能に構成され、
前記信号変換器は、更に、前記非入射光検出器により検出され前記受光回路で調整されたアナログ検出信号をデジタル信号に変換するように構成されている、
請求項1に記載の濃度測定装置。
【請求項3】
前記合波器により合波された合波光を、前記測定セルを通過する透過光と前記測定セル内を通過しない非入射光とに分岐するための分岐器と、
前記非入射光を、参照光として検出するための非入射光検出器と、を更に備え、
前記受光回路は、更に、前記非入射光検出器により検出された検出信号の増幅率及びオフセット電圧を調整可能に構成され、
前記信号変換器は、更に、前記非入射光検出器により検出され前記受光回路で調整されたアナログ検出信号をデジタル信号に変換するように構成されている、
請求項1に記載の濃度測定装置。
【請求項4】
前記信号検知部は、前記デジタル信号の波形をモニターに表示する信号を出力するように構成されている、請求項1~3のいずれかに記載の濃度測定装置。
【請求項5】
前記信号検知部は、前記デジタル信号の振幅値が所定範囲内にあるか否かを判定し、前記振幅値が前記所定範囲から外れた場合に警告を発生させるための信号を出力するように構成されている、請求項1~3のいずれかに記載の濃度測定装置。
【請求項6】
濃度測定装置の調整方法であって、
前記濃度測定装置は、
其々が異なる波長の光を発する複数の光源と、
前記複数の光源が発する異なる複数の波長の前記光を合波し、合波した光を2方向に出力する合波器と、
前記合波器より出力された前記2方向の光の一方の光が通過する被測定流体を入れるための測定セルと、
前記測定セルを通過した透過光を検出するための透過光検出器と、
前記合波器より出力された前記2方向の光の他方の光を前記測定セルに入射しない参照光として検出するための非入射光検出器と、
前記透過光検出器及び前記非入射光検出器が出力したアナログ検出信号の増幅率及びオフセット電圧を調整するための受光回路と、
前記受光回路で調整されたアナログ検出信号をデジタル信号に変換する信号変換器と、
前記信号変換器によりデジタル変換されたデジタル信号の挙動を検知する信号検知部と、
前記デジタル信号を周波数解析して求めた振幅スペクトルを用いて前記被測定流体の濃度を演算するように構成された濃度演算部と、を含み、
前記調整方法は、
前記デジタル信号のデジタル値の変化を検知し、前記デジタル値の変化が所定の範囲内であることを判定するステップと、
前記デジタル値が所定の範囲から外れている場合、前記透過光検出器および前記非入射光検出器のアナログ検出信号の増幅率及び/又はオフセット電圧を変更するステップと、
を含む、前記濃度測定装置の調整方法。
【請求項7】
濃度測定装置の調整方法であって、
前記濃度測定装置は、
其々が異なる波長の光を発する複数の光源と、
前記複数の光源が発する異なる複数の波長の前記光を合波する合波器と、
前記合波器により合波された光が通過する被測定流体を入れるための測定セルと、
前記測定セルを通過した透過光を検出するための透過光検出器と、
前記合波器により合波された合波光を、前記測定セルを通過する透過光と前記測定セル内を通過しない非入射光とに分岐するための分岐器と、
前記非入射光を、参照光として検出するための非入射光検出器と、
前記透過光検出器及び前記非入射光検出器が出力したアナログ検出信号の増幅率及びオフセット電圧を調整するための受光回路と、
前記受光回路で調整されたアナログ検出信号をデジタル信号に変換する信号変換器と、
前記信号変換器によりデジタル変換されたデジタル信号の挙動を検知するように構成された信号検知部と、
前記デジタル信号を周波数解析して求めた振幅スペクトルを用いて濃度を演算するように構成された濃度演算部と、を含み、
前記調整方法は、
前記デジタル信号のデジタル値の変化を検知し、前記デジタル値の変化が所定の範囲内であることを判定するステップと、
前記デジタル値が所定の範囲から外れている場合、前記透過光検出器および前記非入射光検出器のアナログ検出信号の増幅率及び/又はオフセット電圧を変更するステップと、
を含む、前記濃度測定装置の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸光度を利用してガス濃度を測定するための濃度測定装置及びその調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置に有機金属(MO)ガス等の原料ガスを供給するガス供給ラインに組み込まれ、ガス供給ラインを流れるガスの濃度を測定する濃度測定装置が知られている(特許文献1等)。
【0003】
この種の濃度測定装置は、光源からの所定波長の光を測定セルに入射し、測定セル内を通過する際にガスによる吸収を受けた光を透過光検出器で検出することにより吸光度を測定し、吸光度から濃度を求めている。
【0004】
半導体製造装置等では複数種のプロセスガスが供給されるが、ガス種によって光の波長に対する吸収の割合が異なる。そのため、複数の異なる波長の光(紫外光)を用いて吸光度が測定され得る。複数の異なる波長の光は、合波器で合波されてから測定セルに入射される。測定セルに入射した合波光は、測定セル内のガスによる吸収を受けた後、一つの透過光検出器で受光される。透過光検出器から出力されるアナログ検出信号は、A/D変換され、増幅されてから、高速フーリエ変換により周波数解析されて各周波数成分の振幅スペクトルに変換され、振幅スペクトルの振幅値が透過光の強度として出力される。吸収がある波長の振幅スペクトルの振幅は減少する。
【0005】
振幅スペクトルの振幅の変化から、ランベルト・ベールの法則に基づき、吸光度Aλを求める下記式(1)により、濃度Cが算出される。
【0006】
λ=log10(I/I)=αLC ・・・・(1)
ここで、Iは測定セルに入射する前記入射光の初期強度、Iは測定セルを通過した透過光の強度、αはモル吸光係数(m/mol)、Lは測定セルの光路長(m)、Cは濃度(mol/m)である。モル吸光係数αは物質によって決まる係数である。
【0007】
図1は、従来の濃度測定装置を示す機能ブロック図である。この濃度測定装置1Aは、複数の光源2、3と、光源2、3の其々に異なる波長の光を発光させるための発光回路4と、光源2、3の其々で発光した光を合波する合波器5と、合波器5で合波された光が入射される測定セル6と、測定セル6内を通過した光を検出する透過光検出器7と、透過光検出器7で検出した透過光の検出信号の増幅率及びオフセット電圧を調整するための受光回路8と、受光回路8で増幅率及びオフセット電圧を調整されたアナログ信号をデジタル信号に変換する信号変換器9と、信号変換器9によりデジタル変換されたデジタル信号を収集し、メモリ等の記憶装置に記録されたプログラムに従って、被測定ガスの濃度を演算するように構成された処理装置10Aと、を備えている。図示例の光源は2つであるが、必要に応じて3つ以上の光源が設けられる。
【0008】
光源2、3は、発光ダイオード等の発光素子で構成され、発光回路4は、複数の光源2,3の其々に異なる周波数の駆動電流を流すため、処理装置10Aからの指令信号に基づいて、駆動電流の電流値4a、周波数4b、電流オフセット4cを其々調節し、制御する機能を有する。
【0009】
測定セル6は、被測定ガスが流入出するガス入口6a及びガス出口6b、光入射窓6c、光出射窓6dを備えている。
【0010】
合波器5は、例えば特許文献1の図6と同様にハーフミラーを含み、2方向から入射する光を合波し、合波された光を2方向に出力する。合波器5から出力される2方向の光のうち一方の光は測定セル6に入射し、他方の光は測定セル6に入射せずに非入射光検出器11により検出される。合波された光を参照光として分岐する分岐器を合波器とは別体として設けることもある(特許文献1の図1)。
【0011】
非入射光検出器11の検出信号は、参照光として、透過光検出器7の検出信号の補正に用いられる(特許文献1)。前記補正は、下記式(2)に基づく演算処理により、なされ得る。
【0012】
cor=Icell×(Iref,0/Iref) ・・・(2)
上式(2)において、Icorは補正後の透過光の光強度、Icellは透過光検出器で検出された透過光の濃度測定時の強度、Iref,0は非入射光検出器で検出された非入射光の初期強度、Irefは非入射光検出器で検出された非入射光の濃度測定時の強度である。
【0013】
受光回路8は、固定増幅部8a、オフセット調整部8b、及び可変増幅部8cを含む。それらは、透過光及び参照光のアナログ検出信号のそれぞれを、固定増幅し、オフセット電圧を調整し、且つ可変増幅する。透過光及び参照光の検出信号が微小であるため、固定増幅部8aにより検出信号を大きく固定増幅させておいて、固定増幅後の検出信号を可変増幅部8cにより微調整することにより、検出信号の増幅率が調整される。オフセット調整部8bによるオフセット調整量(即ちオフセット電圧)、及び可変増幅部8cの増幅率は、処理装置10Aからの指令信号に基づいて決定される。
【0014】
信号変換器9は、受光回路8で調整された透過光及び参照光のアナログ検知信号を、デジタル信号に変換する。
【0015】
処理装置10Aは、信号変換器9からのデジタル信号を収集するデータ収集機能10a、高速フーリエ変換による周波数解析する解析機能10b、及び、周波数解析により得られた振幅スペクトルの振幅値を強度出力12として出力する強度出力機能10cを備えている。処理装置10Aは更に濃度演算部13を備え、濃度演算部13は、内部メモリ等の記憶装置に記憶されたプログラムに従って、強度出力機能10cから出力された強度出力12を用いて、上記したランベルト・ベールの式に基づいて、被測定流体である被測定ガスGの濃度を演算する。処理装置10Aは、MPU(Micro Processor Unit)が用いられている。図中、符号14はクロック発生回路を示す。
【0016】
上記濃度測定装置においては、測定感度を高めるため、振幅スペクトルの出力、即ち強度出力ができるだけ大きくなるように、強度出力の目標値が設定される。そして、受光回路8では、強度出力が設定された目標値になるように、強度出力を確認しながら、受光回路8に入力されたアナログ信号の増幅及びオフセットのためのパラメータ(増幅率、オフセット電圧)が調整されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第WO2017/029791号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上記従来の濃度測定装置において、所定周波数の振幅値から求められる上記強度出力に異常な周期的変化が生じ、濃度を適切に測れないという事象が生じることがあった。
【0019】
本発明は、吸光度測定に用いる強度出力に生じる異常な周期的変化を防止し、濃度を適切に測定することができる濃度測定装置及びその調整方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る濃度測定装置は、其々が異なる波長の光を発する複数の光源と、前記複数の光源が発する異なる複数の波長の前記光を合波する合波器と、前記合波器により合波された光が通過する被測定流体を入れるための測定セルと、前記測定セルを通過した透過光を検出するための透過光検出器と、前記透過光検出器が出力したアナログ検出信号の増幅率及びオフセット電圧を調整するための受光回路と、前記受光回路で調整されたアナログ検出信号をデジタル信号に変換する信号変換器と、前記信号変換部によりデジタル変換されたデジタル信号の挙動を検知するように構成された信号検知部と、前記デジタル信号を周波数解析して求めた振幅スペクトルを用いて前記被測定流体の濃度を演算するように構成された濃度演算部と、を備える。
【0021】
また、前記合波器は、合波された合波光を2方向に出力し、一方の光が前記測定セルに入射され、他方の光が前記測定セルに入射しない非入射光とされ、前記非入射光を、参照光として検出するための非入射光検出器を更に備え、前記受光回路は、更に、前記非入射光検出器により検出された前記非入射光のアナログ検出信号の増幅率及びオフセット電圧を調整可能に構成され、前記信号変換器は、更に、前記非入射光検出器により検出され前記受光回路で調整されたアナログ検出信号をデジタル信号に変換するように構成され得る。
【0022】
また、前記合波器により合波された合波光を、前記測定セルを通過する透過光と前記測定セル内を通過しない非入射光とに分岐するための分岐器と、前記非入射光を、参照光として検出するための非入射光検出器と、を更に備え、前記受光回路は、更に、前記非入射光検出器により検出された検出信号の増幅率及びオフセット電圧を調整可能に構成され、前記信号変換器は、更に、前記非入射光検出器により検出され前記受光回路で調整されたアナログ検出信号をデジタル信号に変換するように構成され得る。
【0023】
前記信号検知部は、前記デジタル信号の波形をモニターに表示する信号を出力するように構成され得る。
【0024】
前記信号検知部は、前記デジタル信号の振幅値が所定範囲内にあるか否かを判定し、前記振幅値が前記所定範囲から外れた場合に警告を発生させるための信号を出力するように構成され得る。
【0025】
また、本発明の一態様に係る濃度測定装置の調整方法は、前記濃度測定装置が、其々が異なる波長の光を発する複数の光源と、前記複数の光源が発する異なる複数の波長の前記光を合波し、合波した光を2方向に出力する合波器と、前記合波器より出力された前記2方向の光の一方の光が通過する被測定流体を入れるための測定セルと、前記測定セルを通過した透過光を検出するための透過光検出器と、前記合波器より出力された前記2方向の光の他方の光を前記測定セルに入射しない参照光として検出するための非入射光検出器と、前記透過光検出器及び前記非入射光検出器が出力したアナログ検出信号の増幅率及びオフセット電圧を調整するための受光回路と、前記受光回路で調整されたアナログ検出信号をデジタル信号に変換する信号変換器と、前記信号変換器によりデジタル変換されたデジタル信号の挙動を検知する信号検知部と、前記デジタル信号を周波数解析して求めた振幅スペクトルを用いて前記被測定流体の濃度を演算するように構成された濃度演算部と、を含み、前記調整方法が、前記デジタル信号のデジタル値の変化を検知し、前記デジタル値の変化が所定の範囲内であることを判定するステップと、前記デジタル値が所定の範囲から外れている場合、前記透過光検出器および前記非入射光検出器のアナログ検出信号の増幅率及び/又はオフセット電圧を変更するステップと、を含む。
【0026】
また、本発明の他の一態様に係る濃度測定装置の調整方法は、前記濃度測定装置が、其々が異なる波長の光を発する複数の光源と、前記複数の光源が発する異なる複数の波長の前記光を合波する合波器と、前記合波器により合波された光が通過する被測定流体を入れるための測定セルと、前記測定セルを通過した透過光を検出するための透過光検出器と、前記合波器により合波された合波光を、前記測定セルを通過する透過光と前記測定セル内を通過しない非入射光とに分岐するための分岐器と、前記非入射光を、参照光として検出するための非入射光検出器と、前記透過光検出器及び前記非入射光検出器が出力したアナログ検出信号の増幅率及びオフセット電圧を調整するための受光回路と、前記受光回路で調整されたアナログ検出信号をデジタル信号に変換する信号変換器と、前記信号変換器によりデジタル変換されたデジタル信号の挙動を検知するように構成された信号検知部と、前記デジタル信号を周波数解析して求めた振幅スペクトルを用いて濃度を演算するように構成された濃度演算部と、を含み、前記調整方法が、前記デジタル信号のデジタル値の変化を検知し、前記デジタル値の変化が所定の範囲内であることを判定するステップと、前記デジタル値が所定の範囲から外れている場合、前記透過光検出器および前記被入射光検出器のアナログ検出信号の増幅率及び/又はオフセット電圧を変更するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、信号変換器によりデジタル変換された合波光のデジタル信号の挙動を検知することにより、異常な周期的変動が生じないように調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】従来の濃度測定装置を示す機能ブロック図である。
図2】本発明に係る濃度測定装置の第1実施形態を示す機能ブロック図である。
図3図2の濃度測定装置によるデジタル変換された合波光のモニター画像である。
図4図2の濃度測定装置によるデジタル変換された合波光の他のモニター画像である。
図5】本発明に係る濃度測定装置の第2実施形態を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る濃度測定装置の実施形態について、以下に図2図5を参照して説明する。なお、従来技術と同一又は類似の構成要素に同符号を付している。
【0030】
図2を参照して、本発明の第1実施形態に係る濃度測定装置1は、其々が異なる波長の光を発する複数の光源2,3と、複数の光源2,3が発する異なる複数の波長の光を合波する合波器5と、合波器5により合波された光が通過する被測定ガスGを入れるための測定セル6と、測定セル6を通過した透過光を検出するための透過光検出器7と、透過光検出器7で検出した透過光の透過光信号の増幅率及びオフセット電圧を調整するための受光回路8と、受光回路8で調整されたアナログ信号8sをデジタル信号9sに変換する信号変換器9と、信号変換器9によりデジタル変換されたデジタル信号9sの挙動を検知するように構成された信号検知部15と、デジタル信号9sを周波数解析して求めた振幅スペクトルを用いて被測定ガスGの濃度を演算するように構成された濃度演算部13と、を備える。
【0031】
光源2,3は、図示例では発光ダイオードが用いられるが、レーザーダイオード等の他の発光素子を用いることもできる。光源2,3の波長は、図示例では紫外領域の波長が利用されるが、紫外領域以外の波長領域の光も利用可能である。
【0032】
合波器5は、ハーフミラー5aを含み、2方向から入射する光を合波し、合波された光を2方向に出力する。合波器5から出力される2方向の光のうち一方の光は測定セル6に入射し、他方の光は測定セル6に入射せずに非入射光検出器11により検出される。
【0033】
透過光検出器7及び非入射光検出器11は、図示例ではフォトダイオードが利用されているが、フォトトランジスター等の他の光センサーを用いることもできる。
【0034】
発光回路4及び受光回路8におけるオフセット調整は、オペアンプのオフセット電圧の調整により行うことができる。受光回路8における可変増幅部8cは、オペアンプに設けた可変抵抗を調整することにより増幅率の調整をすることができる。
【0035】
処理装置10は、信号変換器9からのデジタル信号のデータを収集するデータ収集機能10a、高速フーリエ変換による周波数解析する解析機能10b、周波数解析により得られた振幅スペクトルの振幅値を強度出力12として出力する強度出力機能10c、濃度演算部13、及び、信号検知部15を備える。濃度演算部13における濃度演算及び参照光を用いた濃度補正演算は、上記特許文献1等により公知であるので、詳細な説明を省略する。
【0036】
処理装置10は、MPU(Micro Processor Unit)により構成されている。データ収集機能10aは、バッファメモリ等の記憶装置により構成され、信号変換器9からサンプリングされた合波光のデジタルデータを記録し得る。処理装置10は、内蔵された記憶装置に記録されたプログラムに従い、信号変換器9から収集したデジタル信号を、高速フーリエ変換し、振幅値の強度を出力して、濃度を演算する。前記プログラムを記録した記録装置は処理装置10に外部接続されていてもよい。処理装置10は、MPUに限らず、マイクロコンピュータ、MCU(Micro Controller Unit)等の他のコンピュータシステムとしてもよい。
【0037】
信号検知部15は、信号変換器9でデジタル変換された合波光のデジタル波形信号(以下、「デジタル合波」とも言う。)のデジタル値をモニター16に出力する表示機能を備えることにより、合波光のデジタル信号の挙動を検知することができる。このような表示機能は、例えば、処理装置10に収集されたデジタルデータを用いてモニターに表示するプログラムを構築することにより行うことができる。
【0038】
前記表示機能を実行するためのプログラムは、処理装置10に内蔵されたメモリ等の記憶装置に記憶され得る。処理装置10は、記録されたプロブラムに従い、デジタル合波のデジタル値をモニター16に表示させる信号を出力する。前記プログラムを記録する記憶装置は処理装置10に外部接続されていてもよい。
【0039】
信号検知部15は、透過光検出器7によって検出された合波光のデジタル波形信号をモニターに表示する信号を出力する。信号検知部15は、非入射光検出器11によって検出された合波光のデジタル波形をモニターに表示する信号を出力するように構成することもできる。
【0040】
図3は、信号変換器9に入力されるアナログデータをオシロスコープに表示させた画像と、合波器5から出力されたデジタル合波をモニターに表示させた画像とを並べた一例を示している。デジタル合波のモニター画像は、データ収集機能10aを構成する記憶装置から時系列で取り出したデジタル波形データのグラフである。なお、図3の画像は、透過光検出器7で検出された検出信号の波形である。
【0041】
図3の例では、信号変換器9が、入力定格0~3.3V、分解能16ビットのA/D変換器であり、このA/D変換器に3.3Vが入力された場合に出力される16bitの最大値(量子化数)が、65535 digitsであり、正常に出力される上限である。
【0042】
図3の例は、信号変換器9を構成するA/D変換器へのアナログ入力信号が定格内に収まっており、そのアナログ入力信号をデジタル変換したデジタル合波のデジタル値も、正常にサンプリングされ、16ビット値が出力されて、A/D変換後の出力値(サンプリング値)の最大値(65535digits)以下の範囲内に収まっている。
【0043】
A/D変換器から出力されたデジタル合波のデジタル値が、A/D変換器の入力定格に対応する出力値の最大値以下に収まっている場合(図3の場合)、高速フーリエ変換により周波数解析しても、強度出力12に異常な周期的変化は生じておらず、ほぼ一定の強度出力が得られていた。
【0044】
図4は、信号変換器9を構成するA/D変換器へのアナログ入力信号がA/D変換器の定格(0~3.3V)から外れ、そのアナログ入力信号をA/D変換したデジタル合波のデジタル値が上限に達し、飽和している状態が示されている。このような状態で、高速フーリエ変換により周波数解析すると、強度出力12に、異常な周期的変化が生じ、適切な濃度の演算が行えていなかった。
【0045】
そこで、信号変換器9を構成するA/D変換器に定格電圧が入力された場合に出力されるA/D変換器の分解能の最大値を、上限の基準値に設定することができる。図3の例では、基準値は62259 digits に設定される。なお、この基準値は、光源2,3の長期使用による強度変動を考慮して、数パーセント小さい値にする等の変更が可能である。
【0046】
合波光のデジタル値が基準値を超えた場合、或いは、所定範囲(0~基準値)から外れた場合は、合波光のデジタル値が基準値以下或いは前記所定範囲内に収まるように、受光回路8におけるオフセット調整部8bによるオフセット電圧及び/又は可変増幅部8cによる増幅率を再調整する。
【0047】
受光回路8におけるオフセット電圧及び増幅率の再調整は、非入射光検出器11のアナログ検出信号および透過光検出器7のアナログ検出信号の双方について、同じパラメータ、即ち、同じオフセット電圧及び同じ増幅率によって再調整される。また、強度出力が設定された目標値になるように、強度出力を確認しながら、受光回路8におけるオフセット電圧及び増幅率の再調整がなされる。
【0048】
他の実施形態において、信号検知部15は、検知された合波のデジタル信号のデジタル値が所定範囲(0~基準値)内にあるか否かを判定し、デジタル値が前記所定範囲から外れた場合に警告を発生させるための信号を出力する。その警告は、例えば、モニター16へのアラーム表示であってもよいし、スピーカー(図示せず。)からのアラーム音の発生であってもよい。このような警告発信機能は、例えば、処理装置10のデータ収集機能10aに収集され記憶された合波光のデジタルデータを用いて、合波光の振幅値が所定範囲内にあるか否かを判定し、所定範囲内から外れた場合に所定の信号を発生させるプログラムを構築することにより行うことができる。
【0049】
前記警告発信機能を実行するためのプログラムは、処理装置10に内蔵されたメモリ等の記憶装置に記憶され得る。処理装置10は、記録されたプロブラムに従い、デジタル合波のデジタル値(振幅値)が所定範囲にあるか否かを判定し、所定範囲から外れた場合に前記警告を発生させるための信号を出力する。前記警告発信機能を実行するためのプログラムを記録する記憶装置は処理装置10に外部接続されていてもよい。
【0050】
図5は、本発明の第2実施形態に係る濃度測定装置の機能ブロック図を示している。第2実施形態の濃度測定装置1は、合波された光を参照光として分岐する分岐器17を合波器5とは別体として備えている点が上記第1実施形態と相違し、その他の構成は上記第1実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0051】
本発明は、上記実施形態に限定解釈されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態においては、2つの光源を備えているが、3以上の光源を備え、其々の光源が異なる波長の光は発する構成とすることもできる。また、参照光による補正処理を行わない構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 濃度測定装置
2、3 光源
4 発光回路
5 合波器
6 測定セル
7 透過光検出器
8 受光回路
9 信号変換器
10 処理装置
11 非入射光検出器
13 濃度演算部
15 信号検知部
図1
図2
図3
図4
図5