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特開2024-21539シート搬送ローラ用ゴム組成物およびシート搬送ローラ
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  • 特開-シート搬送ローラ用ゴム組成物およびシート搬送ローラ 図1
  • 特開-シート搬送ローラ用ゴム組成物およびシート搬送ローラ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021539
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】シート搬送ローラ用ゴム組成物およびシート搬送ローラ
(51)【国際特許分類】
   F16C 13/00 20060101AFI20240208BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20240208BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20240208BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240208BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F16C13/00 A
C08L23/16
C08L53/02
C08L9/00
B65H5/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124427
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼窪 眞司
(72)【発明者】
【氏名】藤井 良輔
【テーマコード(参考)】
3F049
3J103
4J002
【Fターム(参考)】
3F049CA12
3F049CA15
3F049CA16
3F049LA01
3F049LB01
3J103AA02
3J103AA13
3J103AA85
3J103BA41
3J103GA02
3J103GA33
3J103GA54
3J103GA57
3J103GA58
3J103GA60
3J103HA12
3J103HA53
4J002AC01Y
4J002AC03Y
4J002AC06Y
4J002AC07Y
4J002AC08Y
4J002AC09Y
4J002BB15W
4J002BB18Y
4J002BG04Y
4J002BP01X
4J002CH04Y
4J002CP03Y
4J002FD010
4J002FD030
4J002FD140
4J002FD150
4J002GM00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】摩擦係数が優れたシート搬送ローラを作製できるゴム組成物を提供する。
【解決手段】シート搬送ローラ用ゴム組成物は、基材ゴムと水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体とを含有し、前記基材ゴムが、エチレン-αオレフィン共重合体を含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材ゴムと水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体とを含有し、
前記基材ゴムが、エチレン-αオレフィン共重合体を含有することを特徴とするシート搬送ローラ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記基材ゴム100質量%中のエチレン-αオレフィン共重合体の含有率が、50質量%以上である請求項1に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体の含有量が、前記基材ゴム100質量部に対して、5質量部~150質量部である請求項1または2に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記基材ゴムが、さらにジエン系ゴムを含有する請求項1または2に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ジエン系ゴムが、イソプレンゴムおよび/または天然ゴムである請求項4に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記シートが、枚葉紙である請求項1または2に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1または2に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物から成型されたことを特徴とするシート搬送ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送ローラの形成に使用されるゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
静電式複写機、レーザープリンタ、普通紙ファクシミリ装置、およびこれらの複合機、インクジェットプリンタ等の画像形成装置、ならびに自動現金預払機(ATM)等の機器類におけるシート搬送機構には、各種のシート搬送ローラが組み込まれている。前記シート搬送ローラは、紙、プラスチックフィルム等のシートと接触しながら回転して摩擦によってシートを搬送する。
【0003】
シート搬送ローラの材料としては、価格、耐オゾン性の性能の観点からエチレンプロピレンジエンモノマー共重合体(EPDM)が使用されることが多い。ここで、近年、画像形成装置等で使用されるシートの種類が多岐にわたるようになり、シート搬送ローラに対しては高い摩擦係数が要求される場合がある。そこで、EPDMを用いたローラの摩擦係数を高める技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、EPDMとして、非油展EPDMと油展EPDMを併用したゴム組成物、ならびに、非油展EPDM、油展EPDM、および、イソプレンゴムを含有するゴム組成物が記載されている(特許文献1(請求項1、4)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-2271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、摩擦係数が優れたシート搬送ローラを作製できるゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することができた本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、基材ゴムと水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体とを含有し、前記基材ゴムが、エチレン-αオレフィン共重合体を含有することを特徴とする。
ゴム組成物が、基材ゴムとしてのエチレン-αオレフィン共重合体、および、水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体を含有することで、得られるローラの摩擦係数が向上する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、摩擦係数に優れたシート搬送ローラを作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のシート搬送ローラの一例を示す斜視図である。
図2】摩擦係数測定方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<シート搬送ローラ用ゴム組成物>
シート搬送ローラ用ゴム組成物(以下、単に「ゴム組成物」と称する場合がある。)は、基材ゴムとしてのエチレン-αオレフィン共重合体、および、水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体を含有する。
【0011】
(基材ゴム)
前記ゴム組成物は、基材ゴムとして、エチレン-αオレフィン共重合体を含有する。前記エチレン-αオレフィン共重合体は、構成成分として、少なくともエチレンとαオレフィンとを含む共重合体である。また、前記エチレン-αオレフィン共重合体には、エチレンとαオレフィンに少量のジエン成分を加えることで、主鎖中に二重結合を導入したエチレン-αオレフィン-ジエン共重合体も含まれる。前記エチレン-αオレフィン共重合体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0012】
前記αオレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等が挙げられる。
前記ジエン成分としては、エチリデンノルボルネン(ENB)、1,4-ヘキサジエン(1,4-HD)、ジシクロペンタジエン(DCP)等が挙げられ、エチリデンノルボルネンが好ましい。
【0013】
前記エチレン-αオレフィン共重合体としては、エチレン-プロピレン共重合体(EPM)、エチレン-ブテン共重合体(EBR)、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体(EPBR)、エチレン-オクテン共重合体(EOR)等が挙げられる。また、前記エチレン-αオレフィン-ジエン共重合体としては、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、エチレン-ブテン-ジエン共重合体(EBDM)、エチレン-プロピレン-ブテン-ジエン共重合体(EPBDM)等が挙げられる。
【0014】
前記エチレン-αオレフィン共重合体のエチレン成分の含有率は、40質量%以上が好ましく、より好ましくは42質量%以上、さらに好ましくは43質量%以上であり、79質量%以下が好ましく、より好ましくは78質量%以下、さらに好ましくは77質量%以下である。エチレン単位の含有率が前記範囲であれば、市販品で入手しやすく、シート搬送ローラとして成型加工でき、シート搬送ローラとして好適なゴムが得られる。
【0015】
前記エチレン-αオレフィン共重合体として、前記エチレン-αオレフィン-ジエン共重合体を用いる場合、ジエン成分の含有率は、0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは0.7質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上であり、15質量%以下が好ましく、より好ましくは14質量%以下、さらに好ましくは13質量%以下である。ジエン単位の含有率が前記範囲であれば、市販品で入手しやすく、シート搬送ローラとして成型加工でき、シート搬送ローラとして好適なゴムが得られる。
【0016】
前記エチレン-αオレフィン共重合体は、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、いずれも使用できる。なお、油展タイプの場合、添加された伸展油の質量は、加工助剤として取り扱うものとする。
【0017】
前記エチレン-αオレフィン共重合体を主成分として含有することが好ましい。前記ゴム成分中のエチレン-αオレフィン共重合体の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。なお、本発明では、前記基材ゴムとして、エチレン-αオレフィン共重合体のみを含有することも好ましい態様である。
【0018】
前記他のゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等のジエン系ゴム;エピクロルヒドリン系ゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、シリコンゴム等の非ジエン系ゴムが挙げられる。これらの他のゴム成分は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記ゴム組成物は、基材ゴムとしては、ジエン系ゴムを含有することも好ましく、特にイソプレンゴム、天然ゴムを含有することが好ましい。基材ゴムとして、イソプレンゴム、天然ゴムを含有することで、得られるシート搬送ローラの摩擦係数が一層向上する。
【0020】
基材ゴムがジエン系ゴムを含有する場合、基材ゴム100質量%中のジエン系ゴムの含有率は、5質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、45質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。ジエン系ゴムの含有率が上記範囲内であれば、高い摩擦係数を維持しつつ、得られるシート搬送ローラの製造コストを削減できる。
【0021】
基材ゴムがジエン系ゴムを含有する場合、基材ゴム中のエチレン-αオレフィン共重合体とジエン系ゴムとの質量比(エチレン-αオレフィン共重合体/ジエン系ゴム)は55/45以上が好ましく、より好ましくは60/40以上、さらに好ましくは70/30以上であり、95/5以下が好ましく、より好ましくは90/10以下、さらに好ましくは85/15以下である。
【0022】
(水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体)
前記ゴム組成物は、水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体を含有する。水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体を含有することで、シート搬送ローラの摩擦係数を高めることができる。前記水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体は、ポリスチレンとファルネセンとのブロック共重合体(スチレン-ファルネセンブロック共重合体)を水素添加したものである。前記スチレン-ファルネセンブロック共重合体の構造は、線状ブロック共重合体であることが好ましい。また、スチレンブロックをA、ファルネセンブロックをBで表したとき、共重合体の構造は、A-B-A型トリブロック共重合体が好ましい。
【0024】
前記スチレン-ファルネセンブロック共重合体はファルネセンに由来する構造を含有する。前記ファルネセンとしては、α-ファルネセン、β-ファルネセンが挙げられ、β-ファルネセンが好ましい。前記β-ファルネセンは、サトウキビの糖分を発酵させて得られる化合物である。構成成分としてバイオ由来であるβ-ファルネセンを用いれば、ゴム組成物中のバイオマス原料の比率を高めることができる。
【0025】
前記水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体のスチレン含有率は、5質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、45質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である。スチレン含有率が上記範囲内であれば、市販品として入手しやすく、シート搬送ローラとして好適なゴムが得られる。
【0026】
前記スチレン-ファルネセンブロック共重合体は、構成成分として、スチレンおよびファルネセンのみを含有することが好ましい。前記スチレン-ファルネセンブロック共重合体は、構成成分として、スチレンおよびファルネセン以外の成分を含有してもよい。この場合、構成成分中のスチレンおよびファルネセンの合計含有率は70質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0027】
前記水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体のメルトフローレイト(230℃、10kg)は、0.5g/10min以上が好ましく、より好ましくは1.0g/10min以上、さらに好ましくは1.5g/10min以上であり、80g/10min以下が好ましく、より好ましくは70g/10min以下、さらに好ましくは60g/10min以下である。メルトフローレイト(230℃、10kg)が上記範囲内であれば基材ゴムと混合しやすい。メルトフローレイトは、フローテスターを用いて、JIS K7210(2014)に準じて測定する。
【0028】
前記ゴム組成物中の前記水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体の含有量は、前記基材ゴム100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上であり、150質量部以下が好ましく、より好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下である。前記水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体の含有量が5質量部以上であれば得られるシート搬送ローラの摩擦係数が一層高くなり、150質量部以下であれば得られるシート搬送ローラの耐摩耗性の低下を抑制でき、またコストの増大を抑制できる。
【0029】
(加硫剤)
前記ゴム組成物は、加硫剤を含有することが好ましい。前記加硫剤としては、硫黄系加硫剤、有機過酸化物等が挙げられる。前記ゴム組成物が加硫剤を含有することで、得られるシート搬送ローラの耐摩耗性がより向上する。前記加硫剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記硫黄系加硫剤としては単体硫黄、硫黄ドナー型化合物が挙げられる。前記単体硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド状硫黄、不溶性硫黄が挙げられる。前記硫黄ドナー型化合物としては、4,4’-ジチオビスモルホリンなどが挙げられる。
【0031】
前記有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-ジイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0032】
前記加硫剤を配合する場合、その含有量は、前記基材ゴム100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは0.8質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上であり、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは4.0質量部以下、さらに好ましくは3.0質量部以下である。前記加硫剤の含有量が0.5質量部以上であれば形成されるローラの耐摩耗性がより向上し、3.0質量部以下であれば形成されるローラの硬度が高くなりすぎず、摩擦係数が良好となる。
【0033】
(加硫促進剤)
前記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。前記加硫促進剤としては、無機促進剤、有機促進剤のいずれも使用できる。前記無機促進剤としては、消石灰、マグネシア(MgO)、リサージ(PbO)等が挙げられる。前記有機促進剤としては、例えば、チアゾール系促進剤、チウラム系促進剤、スルフェンアミド系促進剤、ジチオカルバミン酸塩系促進剤等が挙げられる。加硫促進剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記硫黄系加硫剤と組み合わせる加硫促進剤としては、チアゾール系促進剤とチウラム系促進剤を併用するのが好ましい。
【0034】
前記チアゾール系促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2-(N,N-ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられ、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィドが好ましい。
【0035】
前記チウラム系促進剤としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられ、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィドが好ましい。
【0036】
前記スルフェンアミド系促進剤としては、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられ、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが好ましい。
【0037】
前記ジチオカルバミン酸塩系促進剤としては、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等が挙げられ、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛が好ましい。
【0038】
前記加硫促進剤の合計使用量は、前記基材ゴム100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上であり、20質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下である。
【0039】
(加硫促進助剤)
前記ゴム組成物は、加硫促進助剤を含有してもよい。前記加硫促進助剤としては、酸化亜鉛が挙げられる。前記加硫促進助剤の使用量は、前記基材ゴム100質量部に対して1質量部以上、10質量部以下が好ましい。
【0040】
(その他の成分)
前記ゴム組成物は、充填剤、加工助剤、老化防止剤、しゃくかい剤、顔料など、本発明の趣旨を害さない範囲で、ゴムの配合剤として一般的に使用される配合剤を使用することができる。
【0041】
前記充填剤としては、ゴムの配合剤として一般的に使用されるものが使用することができ、例えば、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム等が挙げられ、カーボンブラック、炭酸カルシウムが好ましい。充填剤を配合することにより、得られるローラの機械的強度等を向上できる。
【0042】
前記充填剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上であり、100質量部以下が好ましく、より好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下、特に好ましくは28質量部以下である。
【0043】
前記加工助剤としては、炭素数12~30の脂肪酸(ステアリン酸等)、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、炭化水素(パラフィン)、プロセスオイル等が挙げられる。
【0044】
前記老化防止剤としては、ジエチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等が挙げられる。
【0045】
前記シート搬送ローラ用ゴム組成物は、基材ゴム、および、水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体、ならびに必要に応じて他の原料を配合し、ニーダー、バンバリーミキサー、オープンロール等で混練することで調製できる。混練の方法および条件は生産スケールによって適宜選択される。
【0046】
前記ゴム組成物の硬化物の硬度(デュロメータ法、タイプA硬さ)は、10以上が好ましく、より好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上であり、90以下が好ましく、より好ましくは85以下、さらに好ましくは80以下である。硬化物の硬度が10以上であればシート搬送に適した硬度となり搬送力がより向上し、90以下であればローラ軸の圧入がより容易である。
【0047】
<シート搬送ローラ>
本発明のシート搬送ローラは、前記シート搬送ローラ用ゴム組成物から成型されたものである。
シート搬送ローラの形状としては、円筒状、円柱状、多角筒状、多角柱状が挙げられる。シート搬送ローラが円筒状、多角筒状の場合、シート搬送ローラはシャフトを有することが好ましい。前記シャフトの材質は特に限定されず、金属、セラミック、樹脂等が挙げられる。
【0048】
図1にシート搬送ローラの一例を示す。図1に記載のシート搬送ローラ1は、上述した本発明のゴム組成物を筒状に形成したローラ本体2を備えている。前記ローラ本体2の中心には断面円形の通孔3が設けられており、当該通孔3には、図示しない駆動系に連結されるなどした円柱状のシャフト4が挿通されて、固定されている。ローラ本体2の外周面は、通孔3およびシャフト4と同心の筒状に形成されている。
【0049】
ローラ本体2とシャフト4とは、例えば、ローラ本体2の通孔3に、当該通孔3の内径よりも外径の大きいシャフト4を圧入する等して、空転を生じないように互いに固定されている。つまり、両者間の径差に基づく締め代により、当該両者間で一定の空転トルク(空転が生じない限界のトルク)が確保されている。
【0050】
シャフト4は、例えば、金属、セラミック、硬質樹脂等によって形成されている。ローラ本体2は、必要に応じて複数個を、1本のシャフト4の複数箇所に固定してもよい。
ローラ本体2を製造する方法は、ゴム組成物を押出成形法等によって筒状に成形した後、プレス架橋法等によって架橋する方法;トランスファー成形法等によって筒状に成形するとともに架橋する方法等が挙げられる。
【0051】
ローラ本体2は、上記製造の工程の任意の時点で、必要に応じて、外周面を所定の表面粗さになるように研磨したり、ローレット加工、シボ加工等したりしてもよい。また、外周面が所定幅となるようにローラ本体2の両端をカットしてもよい。ローラ本体2の外周面は、任意のコート層で被覆してもよい。
【0052】
またローラ本体2は、外周面側の外層と通孔3側の内層の2層構造に形成してもよい。その場合、少なくとも外層を上記本発明のゴム組成物によって形成するのが好ましい。ただし、構造を簡略化し、生産性を向上するとともに製造コストを低下させること等を考慮すると、ローラ本体2は、図1に示すように単層構造とするのが好ましい。
【0053】
また、ローラ本体2は多孔質構造としてもよい。しかし、耐摩耗性を向上したり、圧縮永久ひずみを小さくして、1箇所で接触した状態が比較的長期間に亘って続いても変形による凹みを生じにくくしたりするために、ローラ本体2は、実質的に非多孔質構造であるのが好ましい。
【0054】
前記通孔3は、シート搬送ローラ1の用途によっては、ローラ本体2の中心から偏心した位置に設けてもよい。また、ローラ本体2の外周面は筒状ではなく異形形状、たとえば、筒状の外周面の一部が平面状に切欠かれた形状等であってもよい。これら異形形状のローラ本体2を備えたシート搬送ローラ1を製造するには、先に説明した製造方法によって直接に、異形形状のローラ本体2を成形したのち架橋させてもよいし、筒状に成形したローラ本体2を、後加工によって異形形状としてもよい。
【0055】
また筒状に成形したローラ本体2の通孔3に、当該ローラ本体2の異形形状に対応する変形形状とされたシャフト4を圧入して、ローラ本体2を異形形状に変形させてもよい。
この場合、外周面5の研磨やローレット加工、シボ加工などは、変形前の筒状の外周面
5に対して実施できるため加工性を向上できる。
【0056】
<画像形成装置>
本発明のシート搬送ローラは、例えば、レーザープリンタや静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の、電子写真法を利用した種々の画像形成装置に組み込むことができる。また、本発明のシート搬送ローラは、例えば、インクジェットプリンタやATM等に組み込むこともできる。
【0057】
本発明のシート搬送ローラは、シートと接触しながら回転して、摩擦によってシートを搬送する。前記シートとしては、枚葉紙等の枚葉シート、連続紙等の連続シートが挙げられる。前記シート搬送ローラは、例えば、給紙ローラ、搬送ローラ、プラテンローラ、排紙ローラ等として用いることができる。
【実施例0058】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0059】
[評価方法]
(1)硬度
ゴム組成物の硬化物の硬度は、JIS K6253-3(2012)に準拠して測定した。具体的には、ゴム組成物を用いて、170℃で20分間プレスして、厚み2mmのシートを作製した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚重ねた状態で、タイプAデュロメータの加圧板を接触させ、接触させてから3秒後に数値を読み取った。
【0060】
(2)引張強さ、破断伸び
ゴム組成物の硬化物の引張強さ、破断伸び(切断時伸び)は、JIS K6251(2017)に準拠して測定した。具体的には、ゴム組成物を用いて、170℃で20分間プレスして、厚み2mmのシートを作製し、これをダンベル形状(ダンベル状3号形、平行部分の厚さ2mm、初期の標線間距離20mm)に打ち抜いて試験片を作製した。引張試験測定装置を用いて物性を測定した(測定温度23℃、引張速度500mm/分)。そして、試験片が切断するまで引っ張ったときに記録される最大の引張力を試験片の試験前の断面積で除することで引張強さを算出した。
【0061】
(3)摩擦係数測定
図2に示すように、普通紙11(富士フイルムビジネスイノベーション製、P紙(幅60mm、長さ210mm))を、水平に設置したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の板10の上に載置した。この紙11に、シート搬送ローラ1のローラ本体2を載置し、シャフト4に鉛直荷重W1(=300gf)を付加し板10に圧接させた。
次いで、温度23℃、相対湿度55%の環境下、ローラ本体2を一点鎖線の矢印R1で示す方向に200rpmで回転させた際に、紙11の一端に接続したロードセル12に加わる搬送力F(gf)を測定した。
測定した搬送力Fと鉛直荷重W1(=300gf)とから式(1)によって初期の摩擦係数μを求めた。
μ=F(gf)/W1(gf) (1)
【0062】
(4)強制摩耗試験
図2に示すように、普通紙11(富士フイルムビジネスイノベーション製、P紙)を、水平に設置したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の板10の上に載置した。この紙11に、シート搬送ローラ1のローラ本体2を載置し、シャフト4に鉛直荷重W1(=500gf)を付加し板10に圧接させた。
次いで、温度23℃、相対湿度55%の環境下、ローラ本体2を一点鎖線の矢印R1で示す方向に200rpmで10分間連続回転させた。その後、回転させる前のローラ本体2の質量W0(g)と回転後のローラ本体2の質量W1(g)とから下記式(2)によって摩耗減量率(%)求めた。
摩耗減量率(%)=100×(W0-W1)/W0 (式2)
【0063】
[ゴム組成物の調製]
表1、2に示した配合となるように、各原料を混合し、ゴム組成物を調製した。具体的には、まず基材ゴム、水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体および充填材を、ニーダーを用いて混合し、混合物を調製した。この際、ニーダー槽内の温度(材料温度)80℃~130℃で、2分間以上混合した。次いで、得られた混合物を冷却して、表面温度を50℃に制御したオープンロールを用いて、前記混合物と加硫剤、加硫促進剤および加硫促進助剤を混合し、ゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物について、硬化物の測定結果を表1、2に示した。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
表1、2で使用した原料は下記のとおりである。
EPDM1:住友化学製、「エスプレン(登録商標)505A」(非油展EPDM)(エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン含有率50質量%、ジエン成分含有率9.5質量%)
EPDM2:住友化学製、「エスプレン670F」(油展EPDM)(エチレン含有率66質量%、ジエン成分含有率4.0質量%、EPDM100質量部に対するオイル添加量100質量部)
IR:日本ゼオン製、「Nipol(登録商標) IR2200」(イソプレンゴム)
NR:ベトナム製、天然ゴム(CV-60)
HSFC1:クラレ製、「SEPTON(登録商標)BIO-series SF902」(水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体(スチレン含有量18質量%、メルトフローレイト(230℃、10kg)55g/10min))
HSFC2:クラレ製、「SEPTON(登録商標)BIO-series SF903」(水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体(スチレン含有量30質量%、メルトフローレイト(230℃、10kg)2.1g/10min))
カーボンブラック:東海カーボン社製、シースト(登録商標)3
炭酸カルシウム1:備北粉化工業社製、ソフトン3200
炭酸カルシウム2:備北粉化工業社製、BF-300
酸化亜鉛:三井金属鉱業社製、酸化亜鉛2種
ステアリン酸:日油製、ステアリン酸つばき
硫黄:鶴見化学製、5%オイル入り硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業製、「ノクセラー(登録商標)TOT-N」(テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業製、「ノクセラーDM」(ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド)
加硫促進剤3:大内新興化学工業製、「ノクセラーCZ」(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤4:大内新興化学工業製、「ノクセラーZTC」(ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛)
有機過酸化物:日油製、「パークミル(登録商標)D」(ジクミルパーオキサイド)
【0067】
[シート搬送ローラの製造]
上記で得たゴム組成物を用いて、トランスファー成形により、170℃、30分間の成形条件で円筒状に成形した。円筒状の成形体に、シャフト(外径12mm)を圧入し、円筒研削盤を用いてゴムローラの外径が22mmとなるように研磨し、ゴムローラ部分の幅を25mmにカットし、シート搬送ローラを作製した。得られたシート搬送ローラの評価結果を、表1、2に示した。
【0068】
ゴム組成物No.1~3は、基材ゴムとしてのエチレン-αオレフィン共重合体と、水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体と、加硫剤として硫黄を含有する場合である。ゴム組成物No.4は、エチレン-αオレフィン共重合体と硫黄を含有し、水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体を含有しない場合である。ゴム組成物No.1~3から形成されたシート搬送ローラは、水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体を含有しないゴム組成物No.4から形成されたシート搬送ローラよりも摩擦係数が向上していた。
【0069】
ゴム組成物No.5~7は、基材ゴムとしてのエチレン-αオレフィン共重合体と、水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体と、加硫剤として有機過酸化物を含有する場合である。ゴム組成物No.8は、エチレン-αオレフィン共重合体と有機過酸化物を含有し、水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体を含有しない場合である。ゴム組成物No.5~7から形成されたシート搬送ローラは、水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体を含有しないゴム組成物No.8から形成されたシート搬送ローラよりも摩擦係数が向上していた。
【0070】
ゴム組成物No.9および10は、基材ゴムとしての油展エチレン-αオレフィン共重合体と、水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体と、加硫剤として硫黄を含有する場合である。ゴム組成物No.11は、油展エチレン-αオレフィン共重合体と、硫黄を含有し、水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体を含有しない場合である。ゴム組成物No.9および10から形成されたシート搬送ローラは、水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体を含有しないゴム組成物No.11から形成されたシート搬送ローラよりも摩擦係数が向上していた。
【0071】
ゴム組成物No.12および13は、基材ゴムとしてのエチレン-αオレフィン共重合体、イソプレンゴムと、水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体と、加硫剤として有機過酸化物を含有する場合である。ゴム組成物No.14は、エチレン-αオレフィン共重合体、イソプレンゴム、有機過酸化物を含有し、水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体を含有しない場合である。ゴム組成物No.12および13から形成されたシート搬送ローラは、水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体を含有しないゴム組成物No.14から形成されたシート搬送ローラよりも摩擦係数が向上していた。
【0072】
ゴム組成物No.15および16は、基材ゴムとしてのエチレン-αオレフィン共重合体、天然ゴムと、水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体と、加硫剤として有機過酸化物を含有する場合である。ゴム組成物No.17は、エチレン-αオレフィン共重合体、天然ゴム、有機過酸化物を含有し、水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体を含有しない場合である。ゴム組成物No.15および16から形成されたシート搬送ローラは、水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体を含有しないゴム組成物No.17から形成されたシート搬送ローラよりも摩擦係数が向上していた。
【0073】
本発明(1)は、基材ゴムと水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体とを含有し、前記基材ゴムが、エチレン-αオレフィン共重合体を含有することを特徴とするシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
【0074】
本発明(2)は、前記基材ゴム100質量%中のエチレン-αオレフィン共重合体の含有率が、50質量%以上である本発明(1)に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
【0075】
本発明(3)は、前記水素添加スチレン-ファルネセンブロック共重合体の含有量が、前記基材ゴム100質量部に対して、5質量部~150質量部である本発明(1)または(2)に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
【0076】
本発明(4)は、前記基材ゴムとして、さらにジエン系ゴムを含有する本発明(1)~(3)のいずれかに記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
【0077】
本発明(5)は、前記ジエン系ゴムが、イソプレンゴムおよび/または天然ゴムである本発明(4)に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
【0078】
本発明(6)は、前記シートが、枚葉紙である本発明(1)~(5)のいずれかに記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
【0079】
本発明(7)は、本発明(1)~(6)のいずれかに記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物から成型されたことを特徴とするシート搬送ローラである。
【符号の説明】
【0080】
1:シート搬送ローラ、2:ローラ本体、3:通孔、4:シャフト、10:板、11:紙、12:ロードセル
図1
図2