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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002155
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】スイッチトリラクタンスモータ
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/092 20160101AFI20231228BHJP
   H02K 19/10 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H02P25/092
H02K19/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101188
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 久
(72)【発明者】
【氏名】高草木 竜一
(72)【発明者】
【氏名】須藤 健二
【テーマコード(参考)】
5H501
5H619
【Fターム(参考)】
5H501BB02
5H501BB11
5H501CC04
5H501DD03
5H501DD09
5H501HB07
5H619AA01
5H619BB01
5H619BB06
5H619BB24
5H619PP05
5H619PP14
(57)【要約】
【課題】大型化や製造コストの増大を抑えつつトルク特性を向上できるスイッチトリラクタンスモータを提供する。
【解決手段】複数のステータ突極10を有するステータ3と、ステータ3の径方向外側に配置され、複数のロータ突極7を有するロータ4と、周方向で隣り合う2つのステータ突極10間に形成されたスロット11に挿通されてステータ3に巻回される3相構造のコイル2U,2V,2Wと、コイル2U,2V,2Wへの通電制御を行う制御部5と、を備える。ステータ突極10の個数とロータ突極7の個数との比は、6:4である。コイル2U,2V,2Wは、周方向で2つ置きのスロット11間に跨って巻回され、かつ1つのスロット11に1つの相のみ挿通されている。制御部5は、コイル2U,2V,2Wの3相のうちの任意の2相に同時に通電を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコア、及び前記ステータコアの外周面から径方向外側に向かって突出された複数のステータ突極を有するステータと、
前記ステータの径方向外側に前記ステータと同心円上に配置された環状のロータコア、及び前記ロータコアの内周面から径方向内側に向かって突出されて周方向に等間隔に配置された複数のロータ突極を有するロータと、
周方向で隣り合う2つの前記ステータ突極間に形成されたスロットに挿通されて前記ステータに巻回される3相構造のコイルと、
前記コイルへの通電制御を行う制御部と、
を備え、
前記ステータ突極の個数と前記ロータ突極の個数との比は、6:4であり、
前記コイルは、周方向で2つ置きの前記スロット間に跨って巻回され、かつ1つの前記スロットに1つの相のみ挿通されており、
前記制御部は、前記コイルの3相のうちの任意の2相に同時に通電を行う
ことを特徴とするスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項2】
前記ステータ突極の個数は12個であり、
前記ロータ突極の個数は8個である
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項3】
前記制御部は、互いに並列に接続されて相毎の前記コイルに対応した3つのHブリッジ回路からなり、
前記制御部は、各相の前記コイルに独立して通電を行う
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項4】
前記コイルは、周方向で2つ置きの前記スロット間に、順方向、逆方向の順に周方向で連続して巻回されている
ことを特徴とする請求項2に記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項5】
前記ステータ突極は、先端部が周方向一方に向かって屈曲された第1ステータ突極と、先端部が前記周方向一方とは反対方向の周方向他方に向かって屈曲された第2ステータ突極と、からなり、
前記第1ステータ突極と前記第2ステータ突極とが周方向に交互に配置されており、かつ前記第1ステータ突極における径方向外側の第1先端面と前記第2ステータ突極における径方向外側の第2先端面とは周方向に等間隔で配置されており、
前記第1ステータ突極と前記第2ステータ突極とにより形成される前記スロットは、周方向の幅が径方向外側に向かうにしたがって漸次狭くなる台形スロットと、周方向の幅が径方向外側に向かうにしたがって漸次広くなるV字スロットと、からなり、
前記台形スロットと前記V字スロットとが周方向に交互に配置されており、
前記V字スロットの径方向の深さは、前記台形スロットの径方向の深さよりも浅い
ことを特徴とする請求項4に記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【請求項6】
前記ロータの回転軸線と前記ステータ突極における径方向外側の先端面との間の径方向の距離は、前記ロータ突極の径方向内側の先端面と前記ロータコアの外周面との間の径方向の距離よりも長い
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスイッチトリラクタンスモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチトリラクタンスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スイッチトリラクタンスモータ(Switched Reluctance Motor)が知られている。スイッチトリラクタンスモータの中には、環状のステータと、ステータの径方向内側に回転自在に設けられたロータと、を備えたものがある。
ステータは、環状のステータコアと、ステータコアの内周面から径方向内側に向かって突出する複数のステータ突極と、を備える。ロータは、回転軸線を中心に回転するロータコアと、ロータコアの外周面から径方向外側に向かって突出する複数のロータ突極と、を備える。ステータ突極には、コイルがいわゆる集中巻き方式により巻回されている。
【0003】
このような構成のもと、コイルに通電を行うとステータ突極が励磁される。そして、ステータ突極に生じた磁気吸引力によってロータ突極が吸引される。各ステータ突極のコイルへの通電タイミングを順次切り替えることにより、ロータが継続的に回転される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-272071号公報
【特許文献2】特開2008-99521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでスイッチトリラクタンスモータは永久磁石を有さないことから、大きな始動トルクを得にくい。大きな始動トルクを得るには、通電容量を多くすることがある。単純に通電容量を多くしようとすると、それに耐え得るコイルや制御部(制御回路)の素子が必要になる。このように、スイッチトリラクタンスモータのトルク特性を向上しようとすると、スイッチトリラクタンスモータが大型化したり製造コストが増大したりしてしまうという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、大型化や製造コストの増大を抑えつつトルク特性を向上できるスイッチトリラクタンスモータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の第1態様では、スイッチトリラクタンスモータは、ステータコア、及び前記ステータコアの外周面から径方向外側に向かって突出された複数のステータ突極を有するステータと、前記ステータの径方向外側に前記ステータと同心円上に配置された環状のロータコア、及び前記ロータコアの内周面から径方向内側に向かって突出されて周方向に等間隔に配置された複数のロータ突極を有するロータと、周方向で隣り合う2つの前記ステータ突極間に形成されたスロットに挿通されて前記ステータに巻回される3相構造のコイルと、前記コイルへの通電制御を行う制御部と、を備え、前記ステータ突極の個数と前記ロータ突極の個数との比は、6:4であり、前記コイルは、周方向で2つ置きの前記スロット間に跨って巻回され、かつ1つの前記スロットに1つの相のみ挿通されており、前記制御部は、前記コイルの3相のうちの任意の2相に同時に通電を行う。
【0008】
このように、ステータの径方向外側にロータを配置した。スイッチトリラクタンスモータをアウタロータとすることにより、大きなトルクを得やすくできる。また、上記のように構成することで、ステータ突極にいわゆる分布巻き方式によりコイルが巻回される。
各スロットには、1相のコイルのみ挿通されているので、コイルの3相のうちの任意の2相に同時に通電を行うことにより、所定のステータ突極を励磁できる。各コイルにそれぞれ従来の通電容量で電流を供給することにより、各ステータ突極は、従来の2倍の電流で励磁されることになる。このため、スイッチトリラクタンスモータは大きなトルクを得ることができる。したがって、従来よりもコイルへの通電容量を大きくすることなく、通電容量を多くすることによる制御部の素子の変更も必要ない。よって、スイッチトリラクタンスモータの大型化や製造コストの増大を抑えつつトルク特性を向上できる。
【0009】
本発明の第2態様では、第1態様のスイッチトリラクタンスモータにおいて、前記ステータ突極の個数は12個であり、前記ロータ突極の個数は8個である。
【0010】
このように構成することで、スイッチトリラクタンスモータの大きさを適正な大きさに維持しつつ、各コイルへの通電容量を抑えることができる。また、多数のステータ突極にロータ突極に対する磁気的な吸引力を分散できる。この結果、ロータコアの磁路を狭くできるので、ロータコアの肉厚を薄肉化できる。このため、トルク特性を向上しつつ、スイッチトリラクタンスモータの大型化を確実に抑えることができる。
【0011】
本発明の第3態様では、第1態様又は第2態様に記載のスイッチトリラクタンスモータにおいて、前記制御部は、互いに並列に接続されて相毎の前記コイルに対応した3つのHブリッジ回路からなり、前記制御部は、各相の前記コイルに独立して通電を行う。
【0012】
このように構成することで、各相のコイルへの通電制御を個別に行うことができる。このため、例えばロータの回転特性に応じ、所望のコイルの通電に対して進角制御を行うことができる。よって、スイッチトリラクタンスモータの始動トルクを向上させる等、スイッチトリラクタンスモータのトルク特性をさらに向上できる。
【0013】
本発明の第4態様では、第2態様のスイッチトリラクタンスモータにおいて、前記コイルは、周方向で2つ置きの前記スロット間に、順方向、逆方向の順に周方向で連続して巻回されている。
【0014】
このように構成することで、各スロットへの各相のコイルの巻回数を変更することなく、ステータの軸方向両端に配置されるコイルエンドの引き回し本数を減少できる。このため、ステータ突極にいわゆる分布巻き方式によりコイルを巻回する場合であってもコイルエンドの巻き太りを低減できる。よって、スイッチトリラクタンスモータを小型化できる。
【0015】
本発明の第5態様では、第4態様のスイッチトリラクタンスモータにおいて、前記ステータ突極は、先端部が周方向一方に向かって屈曲された第1ステータ突極と、先端部が前記周方向一方とは反対方向の周方向他方に向かって屈曲された第2ステータ突極と、からなり、前記第1ステータ突極と前記第2ステータ突極とが周方向に交互に配置されており、かつ前記第1ステータ突極における径方向外側の第1先端面と前記第2ステータ突極における径方向外側の第2先端面とは周方向に等間隔で配置されており、前記第1ステータ突極と前記第2ステータ突極とにより形成される前記スロットは、周方向の幅が径方向外側に向かうにしたがって漸次狭くなる台形スロットと、周方向の幅が径方向外側に向かうにしたがって漸次広くなるV字スロットと、からなり、前記台形スロットと前記V字スロットとが周方向に交互に配置されており、前記V字スロットの径方向の深さは、前記台形スロットの径方向の深さよりも浅い。
【0016】
このように構成することで、所定のスロット間に巻回されたコイルのコイルエンドによって、他のスロットの軸方向両端を塞いでしまうことを抑制できる。このため、各スロットにコイルを確実、かつ十分に収納させることができ、コイルエンドの巻き太りをさらに低減できる。よって、スイッチトリラクタンスモータをさらに小型化できる。
【0017】
本発明の第6態様では、第1態様から第5態様のいずれか1項のスイッチトリラクタンスモータにおいて、前記ロータの回転軸線と前記ステータ突極における径方向外側の先端面との間の径方向の距離は、前記ロータ突極の径方向内側の先端面と前記ロータコアの外周面との間の径方向の距離よりも長い。
【0018】
このように構成することで、スイッチトリラクタンスモータをアウタロータとした場合であってもロータの径方向の大型化を抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スイッチトリラクタンスモータの大型化や製造コストの増大を抑えつつトルク特性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態におけるスイッチトリラクタンスモータの概略構成図である。
図2】本発明の第1実施形態におけるステータの展開図である。
図3】本発明の第1実施形態における制御部の回路図である。
図4】本発明の第1実施形態における制御部による各コイルへの通電タイミングの一例を示すタイムチャートである。
図5】比較例のスイッチトリラクタンスモータの概略構成図である。
図6】本発明の第1実施形態におけるスイッチトリラクタンスモータと比較例のスイッチトリラクタンスモータとの性能を比較した表である。
図7】本発明の第2実施形態におけるスイッチトリラクタンスモータの概略構成図である。
図8】本発明の第2実施形態におけるステータの展開図である。
図9】本発明の第3実施形態におけるステータの展開図である。
図10】本発明のコイルエンドの巻き太りを説明する図であり(a)は、第2実施形態を示し、(b)は、第3実施形態を示す。
図11】本発明の第4実施形態におけるステータ及びロータの概略構成図である。
図12】本発明の第4実施形態におけるステータにU相のコイルを巻回した状態を示す説明図である。
図13】本発明の第4実施形態におけるステータに、U相のコイルの次にV相のコイルを巻回した状態を示す説明図である。
図14】本発明の第4実施形態におけるステータに、U相のコイル及びV相のコイルの次に、W相のコイルを巻回した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
[第1実施形態]
<スイッチトリラクタンスモータ>
図1は、スイッチトリラクタンスモータ1の概略構成図である。
図1に示すように、スイッチトリラクタンスモータ(以下、SRモータと称する)1は、コイル2U,2V,2W(U相のコイル2U、V相のコイル2V、W相のコイル2W)が巻回されたステータ3と、ステータ3に対して回転自在に設けられたロータ4と、コイル2U,2V,2Wへの通電制御を行う制御部5と、を備える。以下、ロータ4の回転軸線Cに平行な方向を軸方向、ロータ4の回転方向を周方向、軸方向及び周方向に直交するロータ4の径方向を単に径方向と称して説明する。
【0023】
<ロータ>
ロータ4は、例えば電磁鋼板を複数積層して形成されている。しかしながらこれに限られるものではなく、ロータ4は、軟磁性粉を加圧することにより形成してもよい。ロータ4は、回転軸線Cと同軸上のシャフト8と、シャフト8に固定され回転軸線Cを中心とする円環状のロータコア6と、ロータコア6の内周面6aから径方向内側に向かって突出された複数(第1実施形態では4個)のロータ突極7と、を備える。
【0024】
シャフト8は、例えば図示しないケースに回転自在に支持されている。ロータコア6は、例えば軸方向の一端に図示しない底部を有する。この底部を介し、シャフト8にロータコア6が固定されている。ロータ突極7は、周方向に等間隔で配置されている。
【0025】
<ステータ>
ステータ3は、例えば電磁鋼板を複数積層して形成されている。しかしながらこれに限られるものではなく、ステータ3は、軟磁性粉を加圧することにより形成してもよい。ステータ3は、ロータ4の径方向内側に回転軸線Cと同軸上に配置された円柱状のステータコア9と、ステータコア9の外周面9aから径方向外側に向かって突出された複数(第1実施形態では6個)のステータ突極10と、を備える。
【0026】
ステータコア9は、例えば図示しないケースに固定されている。ステータコア9の径方向中央には、シャフト8を挿通可能なシャフト挿通孔9bが形成されている。このシャフト挿通孔9bに、シャフト8を回転自在に支持させてもよい。ステータ突極10は、周方向に等間隔で配置されている。
周方向で隣り合うステータ突極10の間には、それぞれスロット11が形成される。このスロット11に、コイル2U,2V,2Wが挿通されるようにしてステータ3にコイル2U,2V,2Wが巻回される。
【0027】
このように、SRモータ1は、ステータ3の径方向外側にロータ4が配置された、いわゆるアウタロータ型のモータである。アウタロータ型のモータとして、回転軸線Cとステータ突極10における径方向外側の先端面10aとの間の径方向の距離L1は、ロータ突極7の径方向内側の先端面7aとロータコア6の外周面6bとの間の距離L2よりも長い。このような距離L1,L2を満たすように、ステータコア9、ステータ突極10、ロータコア6、及びロータ突極7が形成されている。また、ステータ突極10の個数とロータ突極7の個数との比は、6:4である。
【0028】
<コイル及びコイルの巻回方法>
コイル2U,2V,2Wは、3相(U相、V相、W相)で構成されており、U相のコイル2U、V相のコイル2V、W相のコイル2Wからなる。以下、コイル2U,2V,2Wの具体的な巻回方法について説明する。
【0029】
図2は、ステータ3の展開図であり、隣接するステータ突極10の間がスロット11に相当する。以下の説明では、各ステータ突極10に周方向に順に番号を付して説明する。
図1図2に示すように、各相のコイル2U,2V,2Wは、1つのスロット11に、1つの相のみ挿通されている。これに加え、各相のコイル2U,2V,2Wは、2つ置きのスロット11間に、いわゆる分布巻き方式により巻回されている。
【0030】
例えば、U相のコイル2Uは、6-1番のステータ突極10間のスロット11と、このスロット11に対して間に2つのスロット11を挟んで存在する3-4番のステータ突極10間のスロット11と、に跨って所定回数巻回されている。
例えば、V相のコイル2Vは、2-3番のステータ突極10間のスロット11と、このスロット11に対して間に2つのスロット11を挟んで存在する5-6番のステータ突極10間のスロット11と、に跨って所定回数巻回されている。
例えば、W相のコイル2Wは、4-5番のステータ突極10間のスロット11と、このスロット11に対して間に2つのスロット11を挟んで存在する1-2番のステータ突極10間のスロット11と、に跨って所定回数巻回されている。
各相のコイル2U,2V,2Wの端末部2Ua,2Va,2Waは、制御部5に接続されている。
【0031】
<制御部>
図3は、制御部5の回路図である。
図3に示すように、制御部5は、相毎のコイル2U,2V,2Wに対応した3つのHブリッジ回路HBu,HBv,HBw(U相のHブリッジ回路HBu、V相のHブリッジ回路HBv、W相のHブリッジ回路HBw)からなる。各Hブリッジ回路HBu,HBv,HBwは、それぞれ独立して構成されており、それぞれ電源(バッテリ)Eに並列に接続されている。
【0032】
3つのHブリッジ回路HBu,HBv,HBwは、それぞれ2つのアーム12U,13U,12V,13V,12W,13W(第1アーム12U,12V,12W、第2アーム13U,13V,13W)が電源Eに並列に接続された回路である。各アーム12U~13Wは、2つのスイッチング素子NH,NLを直列接続した回路である。
U相の第1アーム12Uには、2つのスイッチング素子NH,NLの間に、U相のコイル2Uにおける一方の端末部2Uaが接続されている。U相の第2アーム13Uには、2つのスイッチング素子NH,NLの間に、U相のコイル2Uにおける他方の端末部2Uaが接続されている。
【0033】
V相の第1アーム12Vには、2つのスイッチング素子NH,NLの間に、V相のコイル2Vにおける一方の端末部2Vaが接続されている。V相の第2アーム13Vには、2つのスイッチング素子NH,NLの間に、V相のコイル2Vにおける他方の端末部2Vaが接続されている。
W相の第1アーム12Wには、2つのスイッチング素子NH,NLの間に、W相のコイル2Wにおける一方の端末部2Waが接続されている。W相の第2アーム13Wには、2つのスイッチング素子NH,NLの間に、W相のコイル2Wにおける他方の端末部2Waが接続されている。
このような構成のもと、各スイッチング素子NH,NLのオン・オフを切り替えることにより、各相のコイル2U,2V,2Wに独立して通電制御が行われる。
【0034】
<制御部によるコイルへの通電制御、及びSRモータの動作>
次に、図1図5に基づいて、制御部5による各相のコイル2U,2V,2Wへの通電制御、及びSRモータ1の動作について説明する。
図4は、制御部5による各相のコイル2U,2V,2Wへの通電タイミングの一例を示すタイムチャートである。図4中、上に記載している番号は、ステータ突極10の番号に対応している。
【0035】
前述したように、1つのステータ突極10を挟んで周方向両側に存在する2つのスロット11には、それぞれ異なる相のコイル2U,2V,2Wが挿通されている。この結果、各ステータ突極10は、疑似的に2相のコイル2U,2V,2Wで巻回された形になる。このため、任意の2相のコイル2U,2V,2Wに同時に通電を行うことにより、通電された2つの相のコイル2U,2V,2Wの間に位置するステータ突極10が励磁される。
【0036】
例えば、図1図2図4に示すように、U相のコイル2U及びW相のコイル2Wに同時に通電を行うことにより、1,4番ステータ突極10が励磁される。この際、1,4番ステータ突極10の周囲をあたかも一方向に電気が流れるように(図2における矢印参照)U相のコイル2U及びW相のコイル2Wの通電制御が行われる。
1,4番ステータ突極10が励磁されると、これら1,4番ステータ突極10にロータ突極7が磁気的に吸引され、ロータ4が回転される。そして、通電される各相のコイル2U,2V,2Wを順次切り替えることにより、ロータ4が継続的に回転される。
【0037】
ここで、図5図6を参照しながら比較例のSRモータと第1実施形態のSRモータ1とを比較する。
図5は、比較例のSRモータ101の概略構成図である。図6は、第1実施形態のSRモータ1と比較例のSRモータ101との相電流、1つのコイル2U,2V,2Wの巻回数、1相当たりの起磁力、及び1つのステータ突極10における総起磁力を比較した表である。図5中、第1実施形態のSRモータ1と同一態様には同一符号を付して説明を省略する。
【0038】
図1図5に示すように、第1実施形態のSRモータ1と比較例のSRモータ101とは、ロータ突極7の個数、及びステータ突極10の個数は、同一である。第1実施形態のSRモータ1と比較例のSRモータ101との相違点は、各相のコイル2U,2V,2Wの巻回方式が異なる点にある。すなわち、比較例のSRモータ101では、各ステータ突極10にいわゆる集中巻き方式によりコイルが巻回されている例を示す。集中巻き方式とは、1つのステータ突極10に所定回数だけコイルを巻回する方式である。
【0039】
比較例の各ステータ突極10に巻回されたコイルは、周方向に順にU相、V相、W相に割り当てられる。このため、1つのスロット11には、2つの相のコイル2U,2V,2Wが挿通されることになる。ステータ突極10の個数が6個であるので、各相のコイル2U,2V,2Wは、それぞれ2つのステータ突極10に巻回されていることになる。比較例のコイルと第1実施形態のコイル2U,2V,2Wは同一のコイルを使用しているものとする。
【0040】
図6に示すように、比較例のコイル2U,2V,2Wと第1実施形態のコイル2U,2V,2Wは同一のコイルであるので、どちらも相電流は同一となる。相電流はαとする。
比較例では、1つのスロット11に2つの相のコイル2U,2V,2Wが挿通される。これに対し、第1実施形態では、1つのスロット11に1つの相のコイル2U,2V,2Wが挿通される。このため、比較例における1つのコイル2U,2V,2Wの巻回数をTとすると、第1実施形態では、1つのコイル2U,2V,2Wの巻回数が比較例の2倍の2Tとなる。
【0041】
1相の起磁力は、比較例では2つのステータ突極10に同相のコイル2U,2V,2Wが巻回されるので、同相のコイル2U,2V,2Wが2つ存在することになる。このため、2×α×Tとなる。第1実施形態では、同相のコイル2U,2V,2Wは1つのみ存在することになるが、1つのコイル2U,2V,2Wの巻回数が2Tであるので、α×2Tとなる。結果的に、1相の起磁力は、比較例と第1実施形態とで同一になる。
【0042】
しかしながら、第1実施形態では、1つのステータ突極10を2相のコイル2U,2V,2Wで励磁している。このため、比較例の1つのステータ突極10における総起磁力2αTに対し、第1実施形態の1つのステータ突極10における総起磁力は、2×2αTとなる。よって、各相のコイル2U,2V,2Wの相電流は比較例と第1実施形態とで同一でありながら、第1実施形態の総起磁力は、比較例に対して2倍となる。
【0043】
このように、上述の第1実施形態では、3相構造のコイル2U,2V,2Wは、周方向で2つ置きのスロット11間に跨って巻回され、かつ1つのスロット11に1つの相のみ挿通されている。制御部5は、コイル2U,2V,2Wの3相のうちの任意の2相に同時に通電を行う。このため、各相のコイル2U,2V,2Wにそれぞれ従来の通電容量で電流を供給することにより、各ステータ突極10を、従来の2倍の電流で励磁することができる。この結果、SRモータ1は大きなトルクを得ることができる。したがって、従来よりも各相のコイル2U,2V,2Wへの通電容量を大きくすることなく、通電容量を多くすることによる制御部5の素子(スイッチング素子NH,NL)の変更も必要ない。
【0044】
しかも、SRモータ1は、ステータ3の径方向外側にロータ4が配置された、いわゆるアウタロータ型のモータである。従来、SRモータ1としてはステータ3の径方向内側にロータ4を配置した、いわゆるインナーロータ型のモータである。このため、従来と比較してロータ4の直径を大きくでき、大きなトルクを得やすくできる。よって、SRモータ1の大型化や製造コストの増大を抑えつつトルク特性を向上できる。
【0045】
制御部5は、互いに並列に接続されて相毎のコイル2U,2V,2Wに対応した3つのHブリッジ回路HBu,HBv,HBwからなる。各Hブリッジ回路HBu,HBv,HBwは、それぞれ独立して構成されている。制御部5は、各相のコイル2U,2V,2Wに独立して通電を行う。このため、各相のコイル2U,2V,2Wへの通電制御を個別に行うことができる。例えばロータ4の回転特性に応じ、所望のコイル2U,2V,2Wの通電に対して進角制御を行うことができる。よって、SRモータ1の始動トルクを向上させる等、SRモータ1のトルク特性をさらに向上できる。
【0046】
SRモータ1では、回転軸線Cとステータ突極10における径方向外側の先端面10aとの間の径方向の距離L1は、ロータ突極7の径方向内側の先端面7aとロータコア6の外周面6bとの間の距離L2よりも長い。このため、SRモータ1をアウタロータとした場合であってもロータ4の径方向の大型化を抑制できる。
【0047】
SRモータ1の大型化や製造コストの増大を抑えつつトルク特性を向上できるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「全ての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」、及び目標9「強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの促進を図る」に貢献することが可能となる。
【0048】
上述の第1実施形態では、制御部5において、3つのHブリッジ回路HBu,HBv,HBwは、それぞれ2つのアーム12U,13U,12V,13V,12W,13Wが電源Eに並列に接続された回路である場合について説明した。各アーム12U~13Wは、2つのスイッチング素子NH,NLを直列接続した回路である場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、各アーム12U~13Wを構成する素子は、3つのHブリッジ回路HBu,HBv,HBwによって、各相のコイル2U,2V,2Wに独立して通電制御を行うことが可能な素子で構成されていればよい。
【0049】
上述の第1実施形態では、ステータ3は、6個のステータ突極10を備える場合について説明した。ロータ4は、4個のロータ突極7を備える場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、SRモータ1は、ステータ突極10の個数とロータ突極7の個数との比が、6:4であればよい。例えば、ステータ突極10及びロータ突極7の各個数を、以下の実施形態のように設定してもよい。以下、詳述する。
【0050】
[第2実施形態]
図7図8に基づいて、第2実施形態について説明する。第1実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する(以下の実施形態についても同様)。
図7は、第2実施形態におけるSRモータ201の概略構成図である。図7は、前述の図1に対応している。
図7に示すように、第2実施形態のSRモータ201において、ステータ突極10の個数、及びロータ突極7の個数以外の基本的構成は、前述の第1実施形態と同様である。
第2実施形態では、ステータ3は、12個のステータ突極10を備えている。ロータ4は、8個のロータ突極7を備えている。
【0051】
<コイルの巻回方法>
次に、図8に基づいて、第2実施形態における各相のコイル2U,2V,2Wの巻回方法について説明する。
図8は、第2実施形態におけるステータ3の展開図である。図8は、前述の図2に対応している。図8では、各ステータ突極10に周方向に順に番号を付して説明する。
図8に示すように、例えば、U相のコイル2Uは、12-1番のステータ突極10間のスロット11と、このスロット11に対して間に2つのスロット11を挟んで存在する3-4番のステータ突極10間のスロット11と、に跨って所定回数巻回され、第1U相コイル21Uを形成する。
【0052】
U相のコイル2Uは、3-4番のステータ突極10間のスロット11から引き出された後、6-7番のステータ突極10間のスロット11と、このスロット11に対して間に2つのスロット11を挟んで存在する9-10番のステータ突極10間のスロット11と、に跨って所定回数巻回され、第2U相コイル22Uを形成する。第1U相コイル21Uの巻回方向と、第2U相コイル22Uの巻回方向とは、同一方向である。
【0053】
例えば、V相のコイル2Vは、2-2番のステータ突極10間のスロット11と、このスロット11に対して間に2つのスロット11を挟んで存在する5-6番のステータ突極10間のスロット11と、に跨って所定回数巻回され、第1V相コイル21Vを形成する。
V相のコイル2Vは、5-6番のステータ突極10間のスロット11から引き出された後、8-9番のステータ突極10間のスロット11と、このスロット11に対して間に2つのスロット11を挟んで存在する11-12番のステータ突極10間のスロット11と、に跨って所定回数巻回され、第2V相コイル22Vを形成する。第1V相コイル21Vの巻回方向と、第2V相コイル22Vの巻回方向とは、同一方向である。
【0054】
例えば、W相のコイル2Wは、4-5番のステータ突極10間のスロット11と、このスロット11に対して間に2つのスロット11を挟んで存在する7-8番のステータ突極10間のスロット11と、に跨って所定回数巻回され、第1W相コイル21Wを形成する。
W相のコイル2Wは、7-8番のステータ突極10間のスロット11から引き出された後、10-11番のステータ突極10間のスロット11と、このスロット11に対して間に2つのスロット11を挟んで存在する1-2番のステータ突極10間のスロット11と、に跨って所定回数巻回され、第2W相コイル22Wを形成する。第1W相コイル21Wの巻回方向と、第2W相コイル22Wの巻回方向とは、同一方向である。
【0055】
したがって、上述の第2実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。これに加え、第2実施形態では、第1実施形態と比較してステータ突極10の個数、及びロータ突極7の個数が2倍である。このため、第1実施形態と同一のトルクを出力する場合、1つのステータ突極10における磁気的吸引力を低減できる。また、各相のコイル2U,2V,2Wへの通電容量を抑えることができる。この結果、ロータコア6の剛性を低減でき、かつロータコア6の磁路も狭くできる。よって、SRモータ1のトルク特性を向上しつつ、大型化を確実に抑えることができる。
【0056】
上述の第2実施形態において、ステータ3への各相のコイル2U,2V,2Wの巻回方法に用いられる装置は、コイルを繰り出すフライヤを1つ用いる、いわゆるシングルフライヤ方式(以下、単にシングルフライヤ方式と称する)の装置である。しかしながらこれに限られるものではなく、回転軸線Cを中心に点対称位置に存在する2つのフライヤからコイルを同時に繰り出す、いわゆるダブルフライヤ方式(以下、単にダブルフライヤ方式と称する)の装置を用い、ステータ3に各相のコイル2U,2V,2Wを巻回してもよい。
【0057】
この場合、2つのフライヤによって、第1各相コイル21U,21V,21Wと、対応する第2各相コイル22U,22V,22Wと、を同時に形成できる。また、シングルフライヤ方式の場合のように、第1各相コイル21U,21V,21Wから第2各相コイル22U,22V,22Wに各相のコイル2U,2V,2Wを引き回す際の渡り線2Ub,2Vb,2Wb(図8参照)が無くなる。
【0058】
このため、各相のコイル2U,2V,2Wのコストを低減できる。また、ステータコア9(ステータ突極10)の軸方向両端での各相のコイル2U,2V,2Wの重なりを低減できる。具体的には、ステータ突極10の個数を前述の第1実施形態と比較してn倍したとすると、ステータコア9(ステータ突極10)の軸方向両端での各相のコイル2U,2V,2Wの重なりは、前述の第1実施形態と比較して1/nに低減可能である。
【0059】
以下の説明では、ステータコア9(ステータ突極10)の軸方向両端での各相のコイル2U,2V,2Wをコイルエンドと称する。また、コイルエンドでの各相のコイル2U,2V,2Wの重なりをコイルエンドの巻き太りと称する場合がある。
【0060】
[第3実施形態]
次に、図9図10に基づいて、第3実施形態について説明する。
図9は、第3実施形態におけるステータ3の展開図である。図9は、前述の図8に対応している。図9図8と同様に各ステータ突極10に周方向に順に番号を付して説明する。
図9に示すように、前述の第2実施形態と第3実施形態とは、ステータ突極10の個数及びロータ突極7の個数は同一である。前述の第2実施形態と第3実施形態との相違点は、各相のコイル2U,2V,2Wの巻回方法が異なる点にある。以下、詳述する。
【0061】
<コイルの巻回方法>
図9に示すように、例えば、U相のコイル2Uは、12-1番のステータ突極10間のスロット11と、このスロット11に対して間に2つのスロット11を挟んで存在する3-4番のステータ突極10間のスロット11と、に跨って順方向(一方向)に所定回数巻回され、第1U相コイル31Uを形成する。
続いて、U相のコイル2Uは、3-4番のステータ突極10間のスロット11と、このスロット11に対して間に2つのスロット11を挟んで存在する6-7番のステータ突極10間のスロット11と、に跨って順方向とは逆方向に所定回数巻回され、第2U相コイル32Uを形成する。
【0062】
続いて、U相のコイル2Uは、3-4番のステータ突極10間のスロット11から引き出された後、6-7番のステータ突極10間のスロット11と、このスロット11に対して間に2つのスロット11を挟んで存在する9-10番のステータ突極10間のスロット11と、に跨って順方向に所定回数巻回され、第3U相コイル33Uを形成する。
続いて、U相のコイル2Uは、9-10番のステータ突極10間のスロット11と、このスロット11に対して間に2つのスロット11を挟んで存在する12-1番のステータ突極10間のスロット11と、に跨って逆方向に所定回数巻回され、第4U相コイル34Uを形成する。
【0063】
ここで、例えば、12-1番のステータ突極10間のスロット11には、第1U相コイル31Uと第4U相コイル34Uとの2つのU相コイル31U,34Uが挿通されている。第1U相コイル31Uは順方向に巻回されているのに対し、第4U相コイル34Uは逆方向に巻回されている。このため、12-1番のステータ突極10間のスロット11には、同一方向から引き回されたU相のコイル2Uが挿通されていることになる(図9における矢印参照)。したがって、U相のコイル2Uに通電を行った際、12-1番のステータ突極10間のスロット11に挿通された2つのU相コイル31U,34Uには、同一方向に電気が流れる。
【0064】
同様に、3-4番のステータ突極10間のスロット11には、第1U相コイル31Uと第2U相コイル32Uとの2つのU相コイル31U,32Uが挿通されている。6-7番のステータ突極10間のスロット11には、第2U相コイル32Uと第3U相コイル33Uとの2つのU相コイル32U,33Uが挿通されている。9-10番のステータ突極10間のスロット11には、第3U相コイル33Uと第4U相コイル34Uとの2つのU相コイル33U,34Uが挿通されている。
【0065】
これに対し、前述の第2実施形態では、12-1番のステータ突極10間のスロット11、3-4番のステータ突極10間のスロット11、6-7番のステータ突極10間のスロット11、及び9-10番のステータ突極10間のスロット11に、それぞれ第1U相コイル21U又は第2U相コイル22Uの1つのコイルのみが挿通されている。
ここで、第2実施形態と第3実施形態とを同一特性のSRモータ1とした場合、第2実施形態と第3実施形態とには、同一スロット11に同一本数のコイル2U,2V,2Wが挿通されていればよい。このため、第3実施形態における各U相コイル31U~34Uのそれぞれの巻回数は、第2実施形態の各U相コイル21U,22Uの半分となる。
【0066】
V相のコイル2V、及びW相のコイル2WについてもU相のコイル2Uと同様に所定のスロット11に巻回される。このため、第3実施形態におけるV相のコイル2V、及びW相のコイル2Wについての巻回方法の詳細な説明は省略する。
【0067】
次に、図10に基づいて、コイルエンドでの各相のコイル2U,2V,2Wの重なりを、第2実施形態と第3実施形態とで比較して説明する。
図10は、コイルエンドでの各相のコイル2U,2V,2Wの重なり本数を説明する図であり、(a)は、第2実施形態における各相のコイル2U,2V,2Wのステータ3への巻回状態を示し、(b)は、第3実施形態における各相のコイル2U,2V,2Wのステータ3への巻回状態を示す。図10(a)は、前述の図8に対応している。図10(b)は、前述の図9に対応している。
【0068】
図10(a)に示すように、第2実施形態における各相コイル21U~22Wのそれぞれの巻回数を4回としたとき、各箇所のコイルエンドでの各相のコイル2U,2V,2Wの重なり本数は、最大で8本となる。
これに対し、第3実施形態における各相コイル31U~34Wのそれぞれの巻回数は第2実施形態の半分の2回となる。このため、図10(b)に示すように、第3実施形態における各箇所のコイルエンドでの各相のコイル2U,2V,2Wの重なり本数は、最大で6本となる。
【0069】
したがって、上述の第3実施形態によれば、前述の第2実施形態と同様の効果を奏することができる。これに加え、第2実施形態と比較して各相コイル31U~34Wのそれぞれの巻回数を減少でき、コイルエンドでの各相のコイル2U,2V,2Wの重なり本数を減少できる。より具体的には、前述の第2実施形態と比較して、コイルエンドでの各相のコイル2U,2V,2Wの重なり本数を3/4に低減できる。このため、ステータ突極10にいわゆる分布巻き方式により各相のコイル2U,2V,2Wを巻回する場合であってもコイルエンドの巻き太りを低減できる。よって、SRモータ1を小型化できる。
【0070】
上述の第3実施形態では、各相のコイル2U,2V,2Wの巻回方法に用いられる装置がシングルフライヤ方式の装置である場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、ダブルフライヤ方式の装置を用いてステータ3に各相のコイル2U,2V,2Wを巻回してもよい。この場合、第2各相コイル32U,32V,32Wから第3各相コイル33U,33V,33Wに各相のコイル2U,2V,2Wを引き回す際の渡り線2Ub,2Vb,2Wb(図9参照)が無くなる。このため、各相のコイル2U,2V,2Wのコストを低減できるとともに、コイルエンドの巻き太りをさらに低減できる。
【0071】
上述の第3実施形態では、12個のステータ突極10と、8個のロータ突極7を備えたSRモータ201についての各相のコイル2U,2V,2Wの巻回方法について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、ステータ突極10の個数とロータ突極7の個数との比が、6:4であるSRモータ全体に、上述の巻回方法を適用することができる。
この場合、ステータ突極10の個数を前述の第1実施形態と比較してn倍したとすると、コイルエンドでの各相のコイル2U,2V,2Wの重なりは、前述の第1実施形態と比較して(1/n)×(3/4)に低減できる。
【0072】
[第4実施形態]
次に、図7及び図9を援用し、図11から図13に基づいて、第4実施形態について説明する。
図11は、第4実施形態におけるSRモータ401のステータ403及びロータ4の概略構成図である。図11は、前述の図7に対応している。
【0073】
図11に示すように、第4実施形態において、ステータ403は、12個のステータ突極410を備えている点、ロータ4は、8個のロータ突極7を備えている点等の基本的構成は、前述の第2実施形態(図7参照)と同様である。また、第4実施形態において、各相のコイル2U,2V,2Wの巻回方法は、前述の第3実施形態(図9参照)と同様である。
【0074】
<ステータ>
前述の第2実施形態及び第3実施形態と第4実施形態との相違点は、第2実施形態及び第3実施形態のステータ突極10の形状と、第4実施形態のステータ突極410の形状とが異なる点にある。
より詳しくは、第4実施形態のステータ突極410は、第1ステータ突極41と第2ステータ突極42と、からなる。第1ステータ突極41と第2ステータ突極42とは、それぞれ6個ずつ形成されている。第1ステータ突極41と第2ステータ突極42とが周方向に交互に配置されている。
【0075】
第1ステータ突極41は、ステータコア9の外周面9aから径方向外側に向かって突出する第1突極本体43と、第1突極本体43の径方向外側端から径方向外側に向かって屈曲延出された第1屈曲部44と、が一体成形されたものである。第1突極本体43は、径方向に対して周方向一方(図11における反時計回り方向CCW)に傾斜している。第1屈曲部44は、第1突極本体43の径方向外側端から周方向他方(図11における時計回り方向CW)に向かって屈曲延出されている。
【0076】
第2ステータ突極42は、ステータコア9の外周面9aから径方向外側に向かって突出する第2突極本体45と、第2突極本体45の径方向外側端から径方向外側に向かって屈曲延出された第2屈曲部46と、が一体成形されたものである。第2突極本体45は、径方向に対して周方向他方(図11における時計回り方向CW)に傾斜している。第2屈曲部46は、第2突極本体45の径方向外側端から周方向一方(図11における反時計回り方向CCW)に向かって屈曲延出されている。
【0077】
これらステータ突極41,42の先端面41a,42a(各屈曲部44,46の先端面44a,46a)の位置は、前述の第2実施形態におけるステータ突極10の先端面10aの位置と同一である。すなわち、各ステータ突極41,42の先端面41a,42aは、周方向に等間隔で配置されている。各ステータ突極41,42の先端面41a,42aは、回転軸線Cを中心とする同一円形状に位置している。
このように先端面41a,42aが位置されるように、各ステータ突極41,42を配置することにより、周方向で隣り合う2つのステータ突極41,42の間には、異なる形状の2つのスロット51,52(台形スロット51、V字スロット52)が形成される。これら2つのスロット51,52が周方向に交互に配置される。
【0078】
2つのスロット51,52のうち、台形スロット51は、周方向で隣り合うステータ突極41,42の周方向の幅W1(以下、台形スロット幅W1と称する)が、径方向外側に向かうにしたがって漸次狭くなる箇所に形成されている。台形スロット51を形成する2つのステータ突極41,42は、全体が互いに周方向に離間している。一方、台形スロット51の径方向外側端部における台形スロット幅W1は、各屈曲部44,46によって径方向外側に向かうにしたがって漸次広くなる。
【0079】
2つのスロット51,52のうち、V字スロット52は、周方向で隣り合うステータ突極41,42の周方向の幅W2(以下、V字スロット幅W2と称する)が、径方向外側に向かうにしたがって漸次広くなる箇所に形成されている。V字スロット52を形成する2つのステータ突極41,42は、径方向内側の根本が接合されている。この結果、V字スロット52の径方向の深さH2(以下、V字スロット深さH2と称する)は、台形スロット51の径方向の深さH1(以下、台形スロット深さH1と称する)よりも浅い。一方、V字スロット52の径方向外側端部におけるV字スロット幅W2は、各屈曲部44,46によって径方向外側に向かうにしたがって漸次狭くなる。
【0080】
このような構成のもと、2つ置きに存在するスロット51,52は、必ず形状の異なるスロット51,52となる。すなわち、ステータ403には、各相のコイル2U,2V,2Wが必ず形状の異なる2つのスロット51,52に跨って巻回される。より具体的には、2つのスロット51,52の台形スロット51に、各相コイル31U~34W(前述の図9参照)の巻き始めが挿通される。V字スロット52に、各相コイル31U~34Wの巻き終わりが挿通される。
【0081】
<エンドコイルの配置>
次に、図12から図14に基づいて、ステータ403に順次巻回されるコイル2U,2V,2Wにおけるエンドコイルの位置について説明する。
図12は、ステータ403にU相のコイル2Uを巻回した状態を示す説明図である。図13は、ステータ403に、U相のコイル2Uの次にV相のコイル2Vを巻回した状態を示す説明図である。図14は、ステータ403に、U相のコイル2U及びV相のコイル2Vの次に、W相のコイル2Wを巻回した状態を示す説明図である。図12から図14は、図11に対応している。
【0082】
図12図13に示すように、ステータ403にU相のコイル2Uを巻回した状態では、2つの異なるスロット51,52に挿通されることにより、コイルエンドの姿勢(向き)は、前述の第2実施形態のステータ3に巻回した場合のコイルエンドの姿勢と比較してずれる。より具体的には、各相コイル31U~34Wの巻き始めが挿通される台形スロット51の台形スロット深さH1は、各相コイル31U~34Wの巻き終わりが挿通されるV字スロット52のV字スロット深さH2よりも深い。このため、各相コイル31U~34Wは、巻き始め側よりも巻き終わり側が径方向外側にずれた姿勢になる。
【0083】
加えて、スロット51,52の形状が前述の第2実施形態のスロット11と比較して異形である。この結果、次に巻回されるV相のコイル2Vが挿通されるスロット51,52上を若干避けるように、U相のコイル2Uにおけるコイルエンドが配置される。このため、U相のコイル2Uのコイルエンドによって、V相のコイル2Vが挿通されるスロット51,52が完全に塞がれることがない。したがって、各スロット51,52に、確実にV相のコイル2Vを収納できる。
【0084】
図13図14に示すように、ステータ403にU相のコイル2U及びV相のコイル2Vを巻回した状態では、2つの異なるスロット51,52に挿通されることによりコイルエンドの姿勢がずれる。この結果、次に巻回されるW相のコイル2Wが挿通されるスロット51,52上を若干避けるように、U相のコイル2U及びV相のコイル2Vにおけるコイルエンドが配置される。このため、U相のコイル2U及びV相のコイル2Vのコイルエンドによって、W相のコイル2Wが挿通されるスロット51,52が完全に塞がれることがない。したがって、各スロット51,52に、確実にW相のコイル2Wを収納できる。
【0085】
ここで、台形スロット幅W1は、径方向外側に向かうにしたがって漸次狭くなる。このため、台形スロット51に挿通された各相のコイル2U,2V,2Wは、台形スロット51から径方向外側に抜けにくくなる。また、V字スロット52の径方向外側端部におけるV字スロット幅W2は、各屈曲部44,46によって径方向外側に向かうにしたがって漸次狭くなる。これら屈曲部44,46が、V字スロット52に挿通された各相のコイル2U,2V,2Wの径方向外側への抜け止めとして機能する。
【0086】
したがって、上述の第4実施形態によれば、前述の第3実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0087】
また、上述の第4実施形態では、ステータ403は、周方向に交互に配置された第1ステータ突極41及び第2ステータ突極42を備える。これら、第1ステータ突極41と第2ステータ突極42とにより、周方向に交互に配置された台形スロット51とV字スロット52とが形成される。各相のコイル2U,2V,2Wは、異なる2つのスロット51,52に巻回される。このため、所定のスロット51,52間に巻回された各相のコイル2U,2V,2Wのコイルエンドによって、他のスロット51,52の軸方向両端を塞いでしまうことを抑制できる。この結果、各スロット51,52に各相のコイル2U,2V,2Wを確実、かつ十分に収納させることができる。また、コイルエンドの巻き太りをさらに低減できる。よって、SRモータ401をさらに小型化できる。
異形のステータ突極41,42により、各スロット51,52から径方向外側に各相のコイル2U,2V,2Wが抜けてしまうことを防止できる。
【0088】
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の第1実施形態の構成から第4実施形態の構成を種々選択して組み合わせてよい。
【符号の説明】
【0089】
1…スイッチトリラクタンスモータ、2U…U相のコイル、2Ua…端末部、2Ub…渡り線、2V…V相のコイル、2Va…端末部、2Vb…渡り線、2W…W相のコイル、2Wa…端末部、2Wb…渡り線、3…ステータ、4…ロータ、5…制御部、6…ロータコア、6a…内周面、6b…外周面、7…ロータ突極、7a…先端面、8…シャフト、9…ステータコア、9a…外周面、9b…シャフト挿通孔、10…ステータ突極、10a…先端面、11…スロット、12U…第1アーム、12V…第1アーム、12W…第1アーム、13U…第2アーム、13V…第2アーム、13W…第2アーム、21U…第1U相コイル、21V…第1V相コイル、21W…第1W相コイル、22U…第2U相コイル、22V…第2V相コイル、22W…第2W相コイル、31U…第1U相コイル、32U…第2U相コイル、32V…第2V相コイル、32W…第2W相コイル、33U…第3U相コイル、33V…第3V相コイル、33W…第3W相コイル、34U…第4U相コイル、34V…第4V相コイル、34W…第4W相コイル、41…第1ステータ突極、41a…先端面、42…第2ステータ突極、42a…先端面、43…第1突極本体、44…第1屈曲部、44a…先端面、45…第2突極本体、46…第2屈曲部、46a…先端面、51…台形スロット、52…V字スロット、101…スイッチトリラクタンスモータ、201…スイッチトリラクタンスモータ、401…スイッチトリラクタンスモータ、403…ステータ、410…ステータ突極、C…回転軸線、E…電源、HBu…U相のブリッジ回路、HBv…V相のブリッジ回路、HBw…W相のブリッジ回路
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