(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021558
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】コンタクトおよびコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/57 20110101AFI20240208BHJP
【FI】
H01R12/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124460
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 正章
(72)【発明者】
【氏名】辻 淳也
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB18
5E223AB59
5E223AB67
5E223AB76
5E223AC01
5E223BA07
5E223BB01
5E223CD01
5E223DA05
5E223DB08
5E223DB11
5E223DB25
5E223EA03
5E223EB02
5E223EB15
(57)【要約】
【課題】外力に抗してコンタクトを回路基板等に保持する保持力を向上させること。
【解決手段】第1接続対象(3M)と第2接続対象(P)とを電気的に接続するコンタクト(3)は、第1接続対象(3M)と接触可能に構成されているコンタクト本体(31)と、コンタクト本体(31)から第2接続対象(P)に向けて突出し、第2接続対象(P)とはんだ(7)で接合可能に構成されている接合部(32~34,39)と、を備える。接合部(32~34,39)の輪郭(30,35)の一部には、輪郭(30,35)の外側に向けて接合部(32~34,39)の突出方向(D1)の逆方向(D2)をベクトル成分に含む法線ベクトル(N1)を引けるアンカー形状(301~304)が与えられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接続対象(3M)と第2接続対象(P)とを電気的に接続するコンタクト(3)であって、
前記第1接続対象(3M)と接触可能に構成されているコンタクト本体(31)と、
前記コンタクト本体(31)から前記第2接続対象(P)に向けて突出し、前記第2接続対象(P)とはんだ(7)で接合可能に構成されている接合部(32~34,39)と、を備え、
前記接合部(32~34,39)の輪郭(30,35)の一部には、前記輪郭(30,35)の外側に向けて前記接合部(32~34,39)の突出方向(D1)の逆方向(D2)をベクトル成分に含む法線ベクトル(N1)を引けるアンカー形状(301~304)が与えられている、コンタクト(3)。
【請求項2】
前記接合部(32~34,39)に設けられるはんだボール(7B)を備える、
請求項1に記載のコンタクト(3)。
【請求項3】
前記コンタクト(3)に設定される挿抜方向(z)に対して直交する方向を幅方向(x)と言うとき、
前記接合部(32,33,39)は、前記コンタクト本体(31)に連なる基端(321)よりも末端(322)側で、前記基端(321)の前記幅方向(x)の寸法よりも前記幅方向(x)に拡大されて前記アンカー形状(301)をなしている、
請求項1に記載のコンタクト(3)。
【請求項4】
前記接合部(34,39)には、切欠(36)または開口(37,38)が形成され、
前記切欠(36)または前記開口(37,38)における前記輪郭(352~354)の一部には、前記アンカー形状(302~304)が与えられている、
請求項1に記載のコンタクト(3)。
【請求項5】
前記コンタクト(3)の挿抜方向(z)に対して平行に設定される前記接合部(32~34,39)の中心線(L)に対して、前記アンカー形状(301~304)は対称である、
請求項1に記載のコンタクト(3)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のコンタクト(3)と、
前記コンタクト(3)を保持するハウジング(4,5)と、を備える、コネクタ(1,2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだで接合対象に接合されるコンタクトと、当該コンタクトを備えるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板またはIC(Integrated Circuit)パッケージ等に相当する第1の回路構造と、他の回路基板に相当する第2の回路構造とが、回路基板に表面実装されるコネクタを用いて挿抜可能に接続される場合がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載のZIF(Zero Insertion Force)コネクタは、PGA(Pin Grid Array)型のICパッケージのピンと、回路基板上のパッドとを相互接続する。かかるコネクタは、PGAに倣ってマトリックス状に配置される多数のコンタクトと、コンタクトを収容するハウジングと、コンタクトを駆動してICパッケージのピンに押し付けるスライダとを備えている。
【0004】
ハウジングの回路基板側に露出するコンタクトの尾端には、はんだボールが設けられている。はんだボールは、ICパッケージのピンと対応して配列され、BGA(Ball Grid Array)をなしている。コンタクトの集合は、BGAと、回路基板のパッドに塗布されるはんだペーストとによって、回路基板に接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コンタクトと回路基板等とのはんだによる接合箇所には、例えば、コネクタを嵌合対象から引き抜く際に加えられる外力により負荷が発生する。
本発明は、外力に抗してコンタクトを回路基板等に保持する保持力を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1接続対象と第2接続対象とを電気的に接続するコンタクトであって、第1接続対象と接触可能に構成されているコンタクト本体と、コンタクト本体から第2接続対象に向けて突出し、第2接続対象とはんだで接合可能に構成されている接合部と、を備える。
接合部の輪郭の一部には、輪郭の外側に向けて接合部の突出方向の逆方向をベクトル成分に含む法線ベクトルを引けるアンカー形状が与えられている。
【0008】
本発明のコンタクトは、接合部に設けられるはんだボールを備えることが好ましい。
【0009】
本発明のコンタクトにおいて、コンタクトに設定される挿抜方向に対して直交する方向を幅方向と言うとき、接合部は、コンタクト本体に連なる基端よりも末端側で、基端の幅方向の寸法よりも幅方向に拡大されてアンカー形状をなしていることが好ましい。
【0010】
本発明のコンタクトにおいて、接合部には、切欠または開口が形成され、切欠または開口における輪郭の一部には、アンカー形状が与えられていることが好ましい。
【0011】
本発明のコンタクトにおいて、コンタクトの挿抜方向に対して平行に設定される接合部の中心線に対して、アンカー形状は対称であることが好ましい。
【0012】
また、本発明のコネクタは、上述のコンタクトと、コンタクトを保持するハウジングと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
接合部にアンカー形状が与えられた本発明のコンタクトによれば、はんだとの接触面積の拡大により接合強度を増加させ、また、接合部がはんだから抜けないように拘束するはんだの領域の破断強度を保持力として得ることができる。そのため、外力に対してコンタクトを回路基板等に保持する保持力を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は、本発明の実施形態に係る第1コネクタおよび第2コネクタの斜視図である。(b)は、第1コネクタおよび第2コネクタが嵌合した状態を示す模式図である。
【
図2】(a)は、
図1のIIa-IIa線の位置における第2組付体の断面図である。(b)は、
図1のIIb-IIb線の位置における第1組付体の断面図である。
【
図3】(a)は、第1コネクタの平面図である。(b)は、(a)のIIIb矢視側面図である。(c)は、(a)のIIIc矢視側面図である。
【
図4】(a)は、コンタクトの斜視図である。(b)は、コンタクトの平面図である。(c)は、コンタクトの接合部のアンカー形状を説明するための模式図である。
【
図6】(a)は、第1コネクタの一部のコンタクトの拡大図である。(b)は、
図3(a)のVIb-VIb線断面図である。
【
図7】(a)は、コンタクトの接合部に設けられているはんだボールを示す斜視図である。(b)は、ハウジングから露出したコンタクトの接合部を示す斜視図である。
【
図8】(a)は、コンタクトの一部およびはんだボールの縦断面図である。(b)は、コンタクトが回路基板にはんだで接合されている状態を示す図である。
【
図9】比較例のコンタクトが回路基板にはんだで接合されている状態を示す図である。
【
図10】(a)は、第1変形例に係るコンタクトを示す図である。(b)は、第2変形例に係るコンタクトを示す図である。
【
図11】(a)は、第3変形例に係るコンタクトを示す図である。(b)は、第4変形例に係るコンタクトを示す図である。(c)は、第5変形例に係るコンタクトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
〔全体構成〕
図1(a)は、本発明のコネクタの一例としての第1コネクタ1および第2コネクタ2を示している。第1コネクタ1は、二次元配列される複数のコンタクト3と、メインハウジング4およびサブハウジング5とを備えている。第2コネクタ2も、二次元配列される複数のコンタクト3と、メインハウジング4およびサブハウジング5とを備えている。
【0016】
第1コネクタ1のコンタクト群(コンタクト3の集合)は、
図2(b)に示すように第1回路基板11にはんだ7で接合される。第2コネクタ2のコンタクト群は、
図2(a)に示すように第2回路基板12にはんだで接合される。第1コネクタ1と第2コネクタ2とが
図1(b)に模式的に示すように嵌合されると、第1コネクタ1のコンタクト3と、第2コネクタ2のコンタクト3とが接触して電気的に接続される。
このとき、第1コネクタ1のコンタクト3および第2コネクタ2のコンタクト3を介して、第1回路基板11と、第1回路基板11に対して平行に配置される第2回路基板12とが接続されることとなる。第1コネクタ1と第2コネクタ2とは、第1回路基板11および第2回路基板12に対して直交する方向(挿抜方向としてのz方向)に挿抜可能とされている。
各図には、xyz直交座標系を示す。
【0017】
〔コンタクトの基本構成〕
コンタクト3は、接続対象との接触による導通に用いられる導電性の部材である。本実施形態のコンタクト3は、異なる目的で用いられる複数種類のコンタクトを総称したものであって、具体的には、
図1(a)および
図3(a)に示すように、シグナルコンタクト3Aと、グランドコンタクト3Bと、グランドシールド3Cとを包含する。シグナルコンタクト3Aおよびグランドコンタクト3Bは、第1回路基板11と第2回路基板12との間の信号伝達に用いられる。グランドシールド3Cは、電磁シールドを提供する。シグナルコンタクト3A、グランドコンタクト3B、およびグランドシールド3Cのいずれも、固有の配置パターンによりxy面に亘り配列された状態でメインハウジング4に保持される。
【0018】
本実施形態においては、第1コネクタ1と第2コネクタ2とがそれぞれ備える同種のコンタクトが互いに接続される。例えば、第1コネクタ1のシグナルコンタクト3Aと、第2コネクタ2のシグナルコンタクト3Aとが互いに接続される。同種のコンタクトは、同じ形状に形成されている。同種のコンタクトは、第1コネクタ1と第2コネクタ2とを対向して配置すると同じ位置に配置される。
【0019】
図4(a)および(b)は、3種を代表してグランドコンタクト3Bを示している。シグナルコンタクト3Aの幅(x方向の寸法)は、グランドコンタクト3Bの幅よりも狭い。グランドシールド3Cには、2つのシグナルコンタクト3Aと1つのグランドコンタクト3Bとの合計3つのコンタクト3に対応する幅が与えられている。3種のコンタクト3のいずれも、例えば銅合金からなる板材の打ち抜きおよび曲げの加工により所定の形状が与えられている。
【0020】
グランドコンタクト3Bは、第1接続対象としての相手コンタクト3M(
図2(a))と接触するとともに、相手回路基板上に形成される第2接続対象としてのパッドP(
図8(b))とはんだ7で接合されることにより、相手コンタクト3MとパッドPとを電気的に接続する。
ここで、相手コンタクト3Mは、
図2に示すように、第1コネクタ1のコンタクト3を基準とすると、第2コネクタ2のコンタクト3に相当する。相手コンタクト3Mは、第2コネクタ2のコンタクト3を基準とすると、第1コネクタ1のコンタクト3に相当する。
本実施形態のグランドコンタクト3Bは、挿抜方向zに対して平行に設定される中心線Lに対してほぼ対称に形成されているが、その限りではない。
【0021】
グランドコンタクト3Bは、相手コンタクト3Mに接続可能に構成されているコンタクト本体31と、コンタクト本体31からパッドPに向けて突出し、パッドPとはんだで接合可能に構成されている接合部32とを備えている。接合部32は、Contact tailと称される。グランドシールド3Cは、2つの接合部32を備えている。接合部32には、例えばニッケルめっき、錫めっき等を施すことができる。
【0022】
コンタクト本体31は、接合部32側から中間部311を経て先端部312に向けて、挿抜方向zに延在している。先端部312の幅は、中間部311の幅よりも狭い。先端部312は、板厚方向に曲げられることでばね性が与えられている。中間部311には、ばね定数を調整するための孔311Aが必要に応じて形成されている。
【0023】
また、コンタクト本体31には、メインハウジング4に保持される圧入突起313と、圧入深さを決めるストッパ突起314とが形成されている。圧入突起313およびストッパ突起314は、コンタクト本体31の幅方向xの両側に形成されている。
【0024】
接合部32は、コンタクト本体31に連なる基端321から、回路基板上のパッドPに近接した末端322まで延びている。基端321の幅は、コンタクト本体31において幅が狭い先端部312の幅と比べても狭い。末端322およびその近傍は、板厚方向に押しつぶされることで、末端322に向かうにつれて次第に薄くなっている。
【0025】
接合部32には、はんだボール7B(
図6(a))が設けられる。はんだボール7Bは、球状のはんだの塊に相当する。はんだボール7Bは、例えば、錫、銀、および銅の合金からなる。
接合部32は、溶融したはんだが接合部32の周りに充填され易いように、また、固化したはんだおよび接合部32への応力集中を避けるため、滑らかな形状に形成されている。
【0026】
シグナルコンタクト3Aおよびグランドシールド3Cも、グランドコンタクト3Bとは形状が相違するものの、同様のコンタクト本体31および接合部32を備えている。
本実施形態の各コンタクト3に備わる接合部32のいずれにも、後述するアンカー形状が与えられている。
【0027】
〔コネクタの構成〕
図3(a)、
図5、
図6(a)および(b)を参照し、第1コネクタ1の具体的構成を説明する。第1コネクタ1と同様に構成されている第2コネクタ2の説明は省略する。
第1コンタクト1のメインハウジング4は、コンタクト3が配列される平面視矩形状の配列領域41と、その周囲の領域であって、サブハウジング5との組み付けに必要な周囲領域42とを備えている。
メインハウジング4およびサブハウジング5は、いずれも絶縁性の樹脂材料から射出成形により形成されている。使用される樹脂材料は、はんだ接合に必要な耐熱性を備えている。
【0028】
配列領域41には、相手コネクタに対向する側に突出し、所定方向(x方向)に延在する突条401と、キャビティ402に挿入されるコンタクト3を保持する保持部403とが形成されている。複数の突条401は、延在する方向に対して直交する方向(y方向)に所定間隔で並んでいる。
【0029】
突条401のy方向の一方の側面に沿って、シグナルコンタクト3Aおよびグランドコンタクト3Bがx方向に所定の順序で所定のピッチで配置される。また、突条401の他方の側面に沿って、グランドシールド3Cが所定のピッチで配置される。
【0030】
メインハウジング4をz方向に貫通して形成されているキャビティ402には、コンタクト3が突条401とは反対側から挿入される。コンタクト3は、コンタクト本体31の先端部312側からキャビティ402に挿入され、圧入突起313が保持部403としてのキャビティ402の内壁に圧入されることでメインハウジング4に保持される。
図6(a)に圧入方向Dpを矢印で示す。コンタクト3は、圧入突起313よりも幅が広いストッパ突起314が止まる位置まで圧入される。
【0031】
y方向に隣り合う突条401の間の空間Sに、第2コネクタ2のメインハウジング4に形成されている突条401が挿入されると、同種のコンタクト3の先端部312が相互にy方向に押圧されることで弾性変形した状態に接触する。突条401には、先端部312の弾性変位を許容する窪み401A(
図5)が形成されている。
【0032】
サブハウジング5は、コンタクト3の接合部32側からメインハウジング4に組み付けられる。サブハウジング5は、
図1(a)および
図6(b)に示すように、板状に形成され、メインハウジング4の配列領域41の裏面に配置される。サブハウジング5は、周囲領域42に配置される複数のピン52等によりメインハウジング4に締結される。
【0033】
サブハウジング5には、各コンタクト3に対応する凹部51がコンタクト3の総数と同数だけ形成され、各凹部51にははんだボール7B(
図7(a))が配置される。凹部51の内側には、
図7(b)に示すように、矩形状の開口512を通じて接合部32の末端322が突出している。開口512は、底部511のy方向における中央に形成されている。
末端322は基端321側と比べて薄く形成されているので、開口512への挿入が容易である。挿入後における接合部32の中心線Lと底部511におけるx方向の中心とは、一致していることが好ましい。
【0034】
各凹部51に配置されたはんだボール7Bは、加熱により凹部51内で溶融し、放熱により固化することで、
図8(a)に示すように接合部32に設けられる。図示しないはんだペーストがパッドP上に塗布された第1回路基板11上に、はんだボール7Bを備える第1コネクタ1を配置してリフロー工程を経ると、
図8(b)に示すように、第1コネクタ1の各コンタクト3がはんだ7により第1回路基板11のパッドPに接合される。溶融後に固化したはんだ7は、接合部32の中心線Lと、はんだ7の中心線とが一致した状態で、基端321を除いて接合部32の全体を隙間なく包み込むことが好ましい。
【0035】
〔接合部のアンカー形状および作用〕
さて、外力に抗してコンタクト3をはんだ7に留めるため、
図4(c)に示すように、各コンタクト3の接合部32の平面視の輪郭30の一部には、アンカー形状301が与えられている。本実施形態の接合部32は、基端321よりも末端322側で、基端321の幅方向xの寸法よりも幅方向xに拡大されてアンカー形状301をなしている。本実施形態のアンカー形状301は、接合部32の中心線Lに対して対称である。末端322の幅は、サブハウジング5の開口512に挿入可能な長さを上限とする。
【0036】
なお、本実施形態の接合部32の末端322の形状は、少ない打ち抜き工程で安価に成形するため、中心線Lに対して非対称に形成されている。本実施形態に限らず、接合部32は、末端322の形状を含め、中心線Lに対して対称であってもよい。
【0037】
図4(c)において、アンカー形状301が与えられている範囲に亘り、接合部32の輪郭30を太線で示している。「輪郭」は、物の外形の線に相当する。「外形」は、物の外側から見える形を言う。
アンカー形状301は、輪郭30の外側に向けて、接合部32の突出方向D1の逆方向D2をベクトル成分v1に含む法線ベクトルN1を引ける輪郭30の形状を言う。「輪郭の外側に向けて」は、コンタクト3が単体の状態であれば、輪郭30を起点として、輪郭30の周囲の空間に向けて、という意味に相当する。
図4(c)には、接合部32の輪郭30の外側に向けては引かれていない法線ベクトルの一例として法線ベクトルN3が示されている。この法線ベクトルN3は、輪郭30から接合部32自身に向けて、つまり輪郭30の内側に向けて引かれている。
【0038】
法線ベクトルN1は、逆方向D2のベクトル成分v1と、ベクトル成分v1に対して直交するベクトル成分v2とを含んでいる。アンカー形状301が与えられていない範囲において輪郭30の外側に向けて引ける法線ベクトルN2は、突出方向D1のベクトル成分v3と、ベクトル成分v3に対して直交するベクトル成分v4とを含んでおり、逆方向D2のベクトル成分v1を含んでいない点で、法線ベクトルN1とは相違する。
【0039】
アンカー形状301が与えられている範囲に亘り、接合部32は基端321側からはんだ7により拘束されている。そのため、例えば、第1コネクタ1から第2コネクタ2が引き抜かれる際に、
図8(b)に示すように、回路基板11,12に対して垂直な向きの外力F1がコンタクト3に作用したり、図示しない点を中心とする回転方向の外力F2がコンタクト3に作用したりしても、そうした外力F1,F2に抗してコンタクト3をはんだ7に留めることが可能となる。なお、外力F2は、
図8(b)に示す反時計回りの向きには限らず、時計回りの向きであるとしても、アンカー形状301に基づいて同様にコンタクト3をはんだ7に留めることができる。
【0040】
ここで、コンタクト3とはんだ7との間には、接合部32の表面32A、裏面32B、および側面32Cにおいてはんだ7と接触している面積に相応の接合強度が得られている。これに加え、アンカー形状301により、外力F1,F2に対して接合部32を拘束するはんだ7の領域(
図8(b)において破線で囲まれた領域7R)が引抜力に抵抗する。その結果、コンタクト3をはんだ7により回路基板11(または12)に保持する保持力が増大する。アンカー形状301が中心線Lに対して対称に形成されていることで、時計回りの外力に対しても反時計周りの外力F2に対しても同等の保持力が確保される。
はんだ7の領域7Rを厚く形成して引抜きに対する抵抗力を高めるため、アンカー形状301は、基端321から末端322側にある程度離れた位置に形成されていることが好ましい。
【0041】
図9に比較例として示す典型的な接合部62の輪郭60には、輪郭60の外側に向けて法線ベクトルN2は引けても、突出方向D1の逆方向D2をベクトル成分に含む法線ベクトルN1を引くことはできない。つまり、接合部62はアンカー形状301を備えていない。そうすると、比較例の接合部62と本実施形態の接合部32とのそれぞれのz方向の長さおよび板厚が同一であるとしても、比較例の接合部62とはんだ7との接触面積は、本実施形態の接合部32とはんだ7との接触面積よりも小さい。そのため、比較例の接合部62に作用する外力F1,F2の大きさによっては、接合部62がはんだ7から引き抜かれるおそれがある。
【0042】
〔実施形態による主な効果〕
接合部32にアンカー形状301が与えられた本実施形態のコンタクト3によれば、比較例(
図9)に対し、接触面積の拡大により接合強度を増加させ、また、破断強度を保持力として得ることができる。そのため、より大きな引き抜き荷重に対しても、あるいは、コネクタ1,2の小型化に伴いはんだ7との接触面積が減少したとしても、必要な保持力を担保することが可能となる。
【0043】
〔回路構造体の組立〕
第1コネクタ1、第2コネクタ2、第1回路基板11、および第2回路基板12からなる回路構造体100を組み立てる手順の一例を説明する。
メインハウジング4にコンタクト3を圧入する。その後、メインハウジング4にサブハウジング5を組み付ける。これらの手順を第1コネクタ1および第2コネクタ2のそれぞれについて行うことで、第1コネクタ1および第2コネクタ2を得ることができる。
【0044】
続いて、サブハウジング5の凹部51にそれぞれ、球状に成形されているはんだボール7Bを配置し、メインハウジング4およびサブハウジング5の組付体を加熱する。はんだボール7Bは、オーブン、ヒーター等による加熱により溶融し、放熱により固化することで、
図8(a)に示すようにコンタクト3の接合部32に接合される。
【0045】
はんだボール7Bは、加熱により軟化しつつ、接合部32を包み込みながら底部511に向けて沈む過程で、凹部51の正方形の外周縁513により底部511の中心に案内される。
上記の手順を第1コネクタ1と第2コネクタ2とについてそれぞれ行うことで、いずれもはんだボール7Bの配列(Ball Grid Array)を備えた第1コネクタ1および第2コネクタ2が製造される。
【0046】
第1回路基板11のパッドP上には、例えばメタルマスクおよびスキージを用いて、図示しないはんだペーストが塗布(印刷)される。はんだペースト(クリームはんだ)は、はんだの微細な粉体と、フラックスとが混合されてなる。はんだボール7BがパッドPに位置決めされた状態に第1コネクタ1を第1回路基板11上に載せ、第1コネクタ1および第1回路基板11をリフローオーブンに入れて所定の温度に加熱すると、はんだボール7Bおよびはんだペースト中のはんだが溶融する。
【0047】
その後、放熱により固化したはんだ7により、
図8(b)に示すように各コンタクト3がパッドPに接合されることで、第1コネクタ1と第1回路基板11とからなる第1組付体A1(
図2(b))が製造される。
第2回路基板12および第2コネクタ2についても同様に、はんだペーストの印刷、リフローオーブンによる加熱を行うと、第2コネクタ2の各コンタクト3が第2回路基板12のパッドPに接合されることで、第2コネクタ2と第2回路基板12とからなる第2組付体A2(
図2(a))が製造される。
第1組付体A1の第1コネクタ1と、第2組付体A2の第2コネクタ2とが、
図1(b)に示すように嵌合されると、回路構造体100の組立が完了する。
【0048】
〔第1変形例〕
図10(a)に示すコンタクトの接合部33のように、幅方向xの一方側にのみアンカー形状301が与えられていてもよい。この場合も、アンカー形状301に基づき、はんだ7と接合部33との接合強度が増加し、また、外力に抗して接合部33を基端321側から拘束するはんだ7の領域7Rの破断強度が得られる。接合部33の面積は、上記実施形態の接合部32の面積よりも小さいので、銅合金等のコンタクトの使用材料を節約しつつ、少なくとも比較例に対しては保持力を向上させることができる。
【0049】
第1コネクタ1あるいは第2コネクタ2に備わる全てのコンタクト3の接合部が、必ずしも同一の形状である必要はない。例えば、上記実施形態の接合部32(
図8)を含むコンタクトと、第1変形例の接合部33を含むコンタクトとが、同一のコネクタにおいて混在していてもよい。その場合、コネクタを複数の領域に区分した場合の保持力の解析等に基づいて、例えば、はんだとコンタクトとに必要な保持力が相対的に大きな領域には、上記実施形態の接合部32を含むコンタクト3を配置し、必要な保持力が相対的に小さな領域には第1変形例の接合部33を含むコンタクトを配置することができる。解析等に基づいて、コネクタにおける一部の領域には、アンカー形状が与えられていない比較例の接合部62を含むコンタクトを配置することも可能である。
【0050】
以下の変形例の接合部を含むコンタクトを含め、同一コネクタにおける2種以上の接合部の混在は許容される。シグナルコンタクト3Aの接合部と、グランドコンタクト3Bの接合部と、グランドシールド3Cの接合部とには、それぞれ固有の形状が与えられていてもよい。
【0051】
〔第2変形例〕
以下に説明する第2~第5変形例のいずれも、それぞれが有するアンカー形状に基づき、接合強度が増加するとともに、外力に抗して接合部を拘束するはんだ7の領域7Rの破断強度を得ることができるので、コンタクトをはんだ7で回路基板11,12に留める保持力が向上する。
【0052】
図10(b)に示すコンタクトの接合部34のように、輪郭35の一部にアンカー形状302を含む切欠36を形成することもできる。接合部34は、略矩形状に形成されており、末端322の位置から基端321に向けて円弧状の切欠36が形成されている。輪郭35は、接合部34の外周の輪郭351と、切欠36の内周の輪郭352とからなる。
アンカー形状302は、内周輪郭352の両端の近傍に与えられる。かかるアンカー形状302も、上述のアンカー形状301と同様に、輪郭352の外側に向けて、突出方向D1の逆方向D2をベクトル成分に含む法線ベクトルN1を引くことの可能な形状に相当する。
【0053】
〔第3変形例〕
図11(a)に示すように、切欠36に代えて円形の開口37が接合部34に形成されていてもよい。開口37の内周の輪郭353における末端322側には、法線ベクトルN1を引けるアンカー形状303が与えられる。
【0054】
〔第4変形例〕
図11(b)に示すように、接合部34に形成される開口38は、例えば矩形状に形成されていてもよい。その場合も、開口38の輪郭354には、法線ベクトルN1が引けるアンカー形状304が与えられる。開口38には、他の適宜な形状を与えることもできる。
【0055】
〔第5変形例〕
図11(c)に示すコンタクトの接合部39は、2種類のアンカー形状301,303を含んでいる。接合部39の外形は、略円形に形成されている。そのため、接合部39は、基端321よりも末端322側で、基端321の幅方向xの寸法よりも幅方向xに拡大されてアンカー形状301をなしている、
また、接合部39の外形の中央には、例えば円形の開口37が形成されているので、開口37の内周の輪郭353にはアンカー形状303が与えられる。
【0056】
その他、コンタクトの接合部には、法線ベクトルN1の引ける適宜な1つ以上のアンカー形状を与えることができる。例えば、上記実施形態の接合部32(
図8)の末端322に切欠36(
図10(b))を形成することで、接合部32の輪郭30にはアンカー形状301,302が与えられる。
【0057】
以上の第2~第5変形例においては、アンカー形状301~304のいずれも、接合部の中心線Lに対して対称に形成されているが、アンカー形状301~304は、中心線Lに対して非対象であってもよい。
【0058】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0059】
図6(a)に示す圧入方向Dpとは逆の向きからコンタクト3がハウジングに圧入される場合は、接合部32およびはんだボール7Bの位置する凹部51がメインハウジング4に形成されていてもよい。この場合、サブハウジング5は必要ない。
【0060】
本発明のコネクタの適用例は、上記実施形態のような2つの回路基板11,12を含む回路構造体100には限られない。例えば、本発明のコネクタは、ICパッケージと回路基板とを接続するものであってもよい。その場合、コンタクトの第1接続対象は、例えば、ICパッケージのピンに相当する。
【符号の説明】
【0061】
1 第1コネクタ
2 第2コネクタ
3 コンタクト
3M 相手コンタクト(第1接続対象)
3A シグナルコンタクト
3B グランドコンタクト
3C グランドシールド
4 メインハウジング(ハウジング)
5 サブハウジング(ハウジング)
7 はんだ
7B はんだボール
7R 領域
11 第1回路基板
12 第2回路基板
30 輪郭
31 コンタクト本体
32~34,39 接合部
32A 表面
32B 裏面
32C 側面
35 輪郭
36 切欠
37,38 開口
41 配列領域
42 周囲領域
51 凹部
52 ピン
60 輪郭
62 接合部
100 回路構造体
301~304 アンカー形状
311 中間部
311A 孔
312 先端部
313 圧入突起
314 ストッパ突起
321 基端
322 末端
351~354 輪郭
401 突条
401A 窪み
402 キャビティ
403 保持部
511 底部
512 開口
513 外周縁
A1 第1組付体
A2 第2組付体
Dp 圧入方向
D1 突出方向
D2 逆方向
F1,F2 外力
L 中心線
N1 法線ベクトル(請求項1の法線ベクトル)
N2,N3 法線ベクトル
P パッド(第2接続対象)
S 空間
v1,v2,v3,v4 ベクトル成分
x 幅方向
y 方向
z 挿抜方向