(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021560
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】シールド電線組付体
(51)【国際特許分類】
H02G 15/04 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
H02G15/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124465
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】幸松 聖児
【テーマコード(参考)】
5G375
【Fターム(参考)】
5G375AA12
5G375BA01
5G375BB03
5G375CA07
5G375CA12
5G375CA13
5G375DA08
5G375DA36
(57)【要約】
【課題】フェルールの移動によるワイヤシールの損傷を防ぐとともに、フェルールの過大変位を防ぐことかできるシールド電線組付体を提供すること。
【解決手段】本発明のシールド電線組付体1は、編組線15を含むシールド電線10と、シールド電線10に組み付けられる、編組線15の接地に関わる導電性材料から構成されるフェルール40と、シールド電線10に組み付けられる、防水を担うワイヤシール60と、フェルール40とワイヤシール60との間に組付けられる、電気絶縁材料から構成されるストッパ50と、を備える。ストッパ50は、フェルール40の径方向Dの内側への変位を抑制する第一ストッパ51と、フェルール40のワイヤシール60に向けた変位を抑制する第二ストッパ55と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
編組線(15)を含むシールド電線(10)と、 前記シールド電線(10)に組み付けられる、前記編組線(15)の接地に関わる導電性材料から構成されるフェルール(40)と、 前記シールド電線(10)に組み付けられる、防水を担うワイヤシール(60)と、 前記フェルール(40)と前記ワイヤシール(60)との間に組付けられる、電気絶縁材料から構成されるストッパ(50)と、を備え、 前記ストッパ(50)は、 前記フェルール(40)の径方向(D)の内側への変位を抑制する第一ストッパ(51)と、 前記フェルール(40)の前記ワイヤシール(60)に向けた変位を抑制する第二ストッパ(55)と、を備える、シールド電線組付体(1)。
【請求項2】
前記第一ストッパ(51)と前記第二ストッパ(55)とは一体的に形成される、 円筒状の前記第一ストッパ(51)と、 前記第一ストッパ(51)の一方の端部おいて径方向(D)の外側に向けてフランジ状に突き出す前記第二ストッパ(55)と、を有する請求項1に記載のシールド電線組付体(1)。
【請求項3】
前記第一ストッパ(51)は、 前記フェルール(40)が備える弾性片(44)の径方向(D)の内側への変位を許容する変位許容部(52)と、 前記フェルール(40)の径方向(D)の内側への前記変位を規制する変位規制部(53)とを備え、 前記変位許容部(52)の外径D52は前記変位規制部(53)の外径D53よりも小さく形成される、請求項1または請求項2に記載のシールド電線組付体(1)。
【請求項4】
前記第二ストッパ(55)は、 前記第一ストッパ(51)の一方の端部から径方向(D)の外側に向けて突き出すフランジ(55A)を備え、 前記フランジ(55A)の径方向(D)の寸法をD55、前記フェルール(40)の径方向の寸法をD43とすると、D55≧D43が成り立つ、請求項3に記載のシールド電線組付体(1)。
【請求項5】
前記フランジ(55A)の径方向(D)の端部(先端)から前記第一ストッパ(51)と平行に延びるリング状のリブ(55B)を備え、 前記リブ(55B)と前記変位規制部(53)との間に、前記フェルール(40)が挟まれる、請求項4に記載のシールド電線組付体(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水用のシール部材であるワイヤシールを備えるシールド電線組付体に関する。
【背景技術】
【0002】
電機コネクタに使用するシールド電線の接地方法について、例えば特許文献1(
図1)に開示されるように、編組線と圧着可能なシールドコンタクト(接触子(61))を用いる構造が知られている。具体的には、ターミナル(53)と、芯線がターミナル(53)に接続されたシールド線(57)のシールド編組(59)と圧着接続されて金属シェル(55)と接触する接触子(61)と、シールド線(57)の外周に挿着されてシールド線(57)を封止する防水用シール部材(65)と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される構造を防水コネクタに適用した場合、体格縮小の目的から接触子(フェルール)を防水用シール部材(ワイヤーシール)の近傍に配置する必要がある。しかし、電線を引っ張るなどの取り扱い方によっては、フェルールが移動してワイヤシールに接触し、ワイヤシールに損傷を与え防水性能を損なうおそれがある。また、フェルールは金属シェルとばね片により弾性をもって接地するが、構造上の理由から電線との間に空間が発生してしまう。フェルールのばね片は、この空間方向に変位し接触荷重を発生させるが、端子挿入時の姿勢や部品の出来栄えにより、フェルールに過大な変位が生じてしまい、接続信頼性を損なうおそれがある。
【0005】
以上より、本発明は、フェルールの移動によるワイヤシールの損傷を防ぐとともに、フェルールの過大変位を防ぐことかできるシールド電線組付体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシールド電線組付体は、編組線を含むシールド電線と、シールド電線に組み付けられる、編組線の接地に関わる導電性材料から構成されるフェルールと、シールド電線に組み付けられる、防水を担うワイヤシールと、フェルールとワイヤシールとの間に組付けられる、電気絶縁材料から構成されるストッパと、を備える。
ストッパは、フェルールの径方向の内側への変位を抑制する第一ストッパと、フェルールのワイヤシールに向けた変位を抑制する第二ストッパと、を備える。
【0007】
シールド電線組付体において、好ましくは、第一ストッパと第二ストッパとは一体的に形成され、円筒状の第一ストッパと、第一ストッパの一方の端部おいて径方向の外側に向けてフランジ状に突き出す第二ストッパと、を有する。
【0008】
第一ストッパは、好ましくは、フェルールが備える弾性片の径方向の内側への変位を許容する変位許容部と、フェルールの径方向の内側への変位を規制する変位規制部とを備え、変位許容部の外径D52は変位規制部の外径D53よりも小さく形成される。
【0009】
第二ストッパは、好ましくは、第一ストッパの一方の端部から径方向の外側に向けて突き出すフランジを備え、フランジの径方向の寸法をD55、フェルールの径方向の寸法をD43とすると、D55≧D43が成り立つ。
【0010】
シールド電線組付体において、好ましくは、フランジの径方向の端部から第一ストッパと平行に延びるリング状のリブを備え、リブと変位規制部との間に、フェルールが挟まれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電線組付体によれば、第一ストッパと第二ストッパを有するストッパを備え、第一ストッパがフェルールの径方向の内側に向けて過大に変位するのを防ぎ、かつ、第二ストッパがワイヤシールに傷が生ずるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係るシールド電線を示す斜視図である。
【
図2】
図1のシールド電線のシール部の構成要素を分離して示す斜視図である。
【
図3】
図2のストッパを示す三面図および縦断面図である。
【
図4】電気コネクタに装着された
図1のシールド電線を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るシールド電線組付体1について説明する。
シールド電線組付体1は、
図1に示すように、シールド電線10と、シールド電線10に組み付けられる、編組線の接地に関わる接地要素20と、シールド電線組付体1が例えば電気コネクタに装着されて防水を担うワイヤシール60と、を備える。シールド電線組付体1は、接地要素20とワイヤシール60との間に介在するストッパ50を備える。シールド電線組付体1は、ストッパ50を備えることにより、ワイヤシール60に傷が発生するのを防ぐことができる傷防止効果を奏する。ストッパ50は、これに加えて、フェルール40の弾性片44に弾性限界を超える過大な変位が生ずるのを防ぐことができる過大変位防止効果を奏する。
以下、シールド電線組付体1について、その構成要素を順に説明し、その後に装着対象である電気コネクタのハウジング100に対するシールド電線組付体1の装着状態およびシールド電線組付体1による傷防止機能および過大変位防止機能の二つの機能を説明する。
【0014】
[シールド電線10:
図1,
図4]
シールド電線10は、
図1および
図4に示すように、導電性を有する芯線11と、芯線11の周囲を覆う電気的な絶縁材料から構成される内層被覆13と、内層被覆13の周囲を覆う編組線15と、編組線15の周囲を覆う外層被覆17と、を備える。シールド電線10は、芯線11と電気的に接続される端子19を備えている。なお、シールド電線10において、
図1などに示すように、端子19の側を前方(F)と定義し、端子19の逆の側を後方(R)と定義する。この定義は相対的な意味を有する。たとえば、ワイヤシール60はストッパ50よりも後方(R)においてシールド電線10に組み付けられ、ストッパ50はワイヤシール60よりも前方(F)においてシールド電線10に組み付けられる。
【0015】
[芯線11]
芯線11は、例えば、複数の金属素線をより合わせてなる撚線、中実構造を有する単体からなる導体など、または、これらの導体を組み合わせたものを用いることもできる。芯線11を構成する材料は、例えば、銅または銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金などの導電性に優れる金属材料を用いることができる。後述する編組線15の金属素線も同様である。
【0016】
[内層被覆13]
内層被覆13は、例えば、芯線11の外周面を全周にわたって被覆する。内層被覆13は、例えば、合成樹脂などの電気的な絶縁材料から構成され、具体的には、例えば、架橋ポリエチレン、架橋ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を主成分とする合成樹脂が用いられる。内層被覆13は、単一種類の絶縁材料から構成されてもよいし、複数種類の絶縁材料を一例として複数の層に適宜組み合わせて構成されてもよい。
【0017】
[編組線15]
編組線15は、内層被覆13の外周を覆う筒状の形態をなしている。編組線15としては、複数の金属素線が編成された編組線や、金属素線と樹脂素線とを組み合わせて編成された編組線を用いることができる。
編組線15は、前方(F)の端部において、外層被覆17から露出する部分が後方(R)に向けて折り返される。この折返部15Aは、フェルール40と固定体30の間に挟み込まれる。こうして、編組線15は、フェルール40と電気的に接続される。
【0018】
[外層被覆17]
外層被覆17は、編組線15の外周面の周方向の全域を覆っている。外層被覆17は、例えば、内層被覆13と同様の電気的な絶縁材料によって構成される。
【0019】
[端子19]
端子19は、内層被覆13から露出される芯線11の先端部に接続される。端子19は、芯線11との接続を担う芯線接続部19Aと、芯線接続部19Aと一体的に形成され、図示が省略される相手端子と接続される相手接続部19Bと、を備える。端子19において、芯線接続部19Aと相手接続部19Bは、一例とし、導電性に優れる金属材料からなる板材を打ち抜き、曲げなどの機械加工を施すことにより、一体的に形成される。
【0020】
芯線接続部19Aは、例えば、圧着、溶接などの手段によって芯線11と電気的な接続に加えて機械的にも接続される。
相手接続部19Bは、相手端子との締結による接続のために、その板厚方向に貫通する締結孔19Cが形成される。例えば、締結孔19Cに挿入された図示しないボルトにより、図示が省略される相手端子と電気的および機械的に接続される。
【0021】
[接地要素20:
図2,
図4,
図5]
接地要素20は、
図2、
図4および
図5に示すように、シールド電線10の編組線15と後述するハウジング100とを電気的に接続する。接地要素20は、編組線15の折返部15Aをフェルール40に加締めるのに加えてフェルール40をシールド電線10の所定位置に固定する固定体30と、固定体30との間に編組線15の折返部15Aを挟み込むフェルール(ferrule)40と、を備えている。
【0022】
[固定体30]
固定体30は、フェルール40の圧着部41とその外側から嵌合されるとともに、周方向の適宜の位置において径方向の内側に向けて荷重を加えることで、編組線15を間に挟んだ状態で圧着部41を加締めて機械的に拘束する。この加締めにより、編組線15とフェルール40との間の安定した電気的な接続を確保するのに加えて、圧着部41はシールド電線10の外層被覆17に圧着され、フェルール40がシールド電線10の所定位置に固定される。
固定体30を構成する材料は、その目的を達成できる限り限定されず、鉄系、アルミニウム系、銅系などの金属材料から構成され。固定体30は、典型的には円筒状の部材から構成され、内部に圧着部41が位置される嵌合孔31と、嵌合孔31を取り囲む加締めリング33と、を備える。
ここでは固定体30として加締めリング33を例示するが、圧着部41をシールド電線10に対して固定するのに加えて、編組線15との電気的な接続をすることができるのであれば、固定体30の形態は問われない。
【0023】
[フェルール40]
フェルール40は、固定体30により加締められることにより、シールド電線10の所定位置においてシールド電線10に圧着される圧着部41と、ハウジング100と電気的に接続される接続部43と、を備える。圧着部41と接続部43とはそれぞれ環状に形成されるが、圧着部41の径が小さく、かつ圧着部41と接続部43とは固定体30と同様の導電性を有する金属材料から一体的に形成される。フェルール40は、例えば、平坦な板材を円環状に折り曲げて作製することができる。また、フェルール40は、圧着部41と同じ形の円管を用意し、接続部43に対応する部分を拡径成形することにより作製することができる。
【0024】
圧着部41は、一例として、単純な円管状とされる。
接続部43は、前方支持端43Aと、軸線(C)の方向に間隔を空けて設けられる後方支持端43Bと、前方支持端43Aと後方支持端43Bの間に設けられる複数の弾性片44と複数の静止片45と、を備える。
【0025】
フェルール40がシールド電線10に装着されると、弾性片44は前方(F)の側に配置され、後方支持端43Bが後方(R)の側に配置される。前方支持端43Aと後方支持端43Bは何れも周方向に連なって形成されている。
【0026】
それぞれの弾性片44は、前方支持端43Aの側が自由端44Aをなし、後方支持端43Bの側が後方支持端43Bと連なる固定端44Bをなす片持ち梁状の形態をなしている。それぞれの弾性片44には、ハウジング100との直接的な接続を担う接点44Cが形成されている。接点44Cは、弾性片44の径方向の外側に向けて隆起するように形成されている。弾性片44において、接点44Cを除く横断面、つまり軸線(C)と直交する面は円弧状の形態をなしている。静止片45も同様である。
【0027】
それぞれの静止片45は、前方支持端43Aの側が前方支持端43Aと連なる固定端45Aをなし、後方支持端43Bの側が後方支持端43Bと連なる固定端45Bをなす両持ち梁状の形態をなしている。なお、静止片45は、弾性体である金属材料からなる板状の部材であるから、変形し得るが、弾性片44との対比において静止するとの観点から静止片45と称される。
【0028】
複数の弾性片44と複数の静止片45とは、前方支持端43Aと後方支持端43Bとの間において、周方向に交互に設けられている。また、弾性片44と静止片45は、軸線(C)からの径方向の寸法は等しく形成されており、複数の弾性片44と複数の静止片45は、円弧上に交互に配置される。
【0029】
[ストッパ50:
図2,
図3,
図4,
図5]
次に、固定体30とワイヤシール60の間に配置され、傷防止効果および過大変位防止効果を奏することのできるストッパ50について
図2~
図5を参照して説明する。
ストッパ50は、軸線(C)の方向に延びる円筒状の第一ストッパ51と、後方(R)において第一ストッパ51と連なり径方向(D)の外側にフランジ状に突き出す第二ストッパ55と、を備える。第一ストッパ51と第二ストッパ55は、一例として、ゴムまたは電気的な絶縁性を備える樹脂材料から、一体的に形成される。
【0030】
[第一ストッパ51]
第一ストッパ51は、シールド電線10の外層被覆17とフェルール40の間に配置されることで、フェルール40の弾性片44が径方向(D)の内側に過大な変位をするのを防ぐことを目的として設けられる。
第一ストッパ51は、内周面51Aと外周面51Bとを備える。第一ストッパ51は、前方(F)の側に配置される変位許容部52と、変位許容部52よりも後方(R)の側に配置される変位規制部53と、を備える。変位許容部52には、径方向(D)の外側に隙間を空けてフェルール40の弾性片44が配置される。隙間を空けて変位規制部53には、径方向(D)の外側にフェルール40の後方支持端43Bが配置される。
【0031】
変位許容部52の外径D52が変位規制部53の外径D53よりも小さく形成される(
図3~
図5参照)。以上のように、第一ストッパ51の外径を二段階にすることにより、変位規制部53においてフェルール40の径方向(D)への過度の動きを抑制しつつ、変位許容部52において弾性片44の必要十分な径方向(D)の内側への撓みによる変位を許容する。なお、
図4および
図5において、弾性片44は撓んでいないように描かれている。外径D53と外径D52の差分ΔD(ΔD=外径D53-外径D52)は、弾性片44に与えられる必要十分な変位に対応するように設定される。
【0032】
第一ストッパ51の内周面51Aには、軸線(C)の方向に延びる複数の突条54が周方向に均等間隔で配置される。突条54の径方向(D)の内側に向かう先端は尖っている。ストッパ50の内側にシールド電線10が嵌合さると、突条54がシールド電線10の外層被覆17に食い込むことで、シールド電線10とストッパ50の周方向における相対的な位置ずれを防ぐことができる。
【0033】
[第二ストッパ55]
第二ストッパ55は、フェルール40の接続部43の後方(R)の端部とワイヤシール60との間に配置されることで、フェルール40がワイヤシール60に向けて移動するのを遮り、フェルール40の接続部43が接触してワイヤシール60が損傷するのを防ぐ傷防止機能を発揮する。そのために、第二ストッパ55(フランジ55A)の径方向(D)の寸法をD55、接続部43の径方向の寸法をD43とすると、D55≧D43が成り立つように、第二ストッパ55が形成される(
図5参照)。
【0034】
第二ストッパ55は、第一ストッパ51の後方(R)の端部から径方向(D)の外側に向けて突き出すフランジ55Aと、フランジ55Aの径方向(D)の端部(先端)から前方(F)に向けてかつ第一ストッパ51と平行に延びるリング状のリブ55Bと、を備える。
フランジ55Aは、ワイヤシール60に向けて移動しようとするフェルール40が衝突することにより、ワイヤシール60を保護する。
リブ55Bは、変位規制部53との間でフェルール40の接続部43を挟むことで、接続部43の径方向(D)の変位を拘束し、接続部43の位置決めを担う。
【0035】
[ワイヤシール60]
ワイヤシール60は、ハウジング100とシールド電線10の外層被覆17との間に設けられ、かつ、ハウジング100と外層被覆17の両方に密着することで、外層被覆17を伝ってハウジング100の内部に水分が浸入するのを防ぐ。
ワイヤシール60は、シールド電線10の外層被覆17の外周面に密着される電線シール部61と、ハウジング100の内周面に密着されるハウジングシール部63とを有している。ワイヤシール60は、例えばシリコーンゴム、ニトリルゴムおよびフッ素ゴムなどのゴム材料から構成される。
【0036】
[ハウジング100:
図4,
図5]
ハウジング100は、
図4および
図5に示すように、前方(F)から後方(R)に向けて延びる電線収容スペース101を備え、シールド電線組付体1はこの電線収容スペース101に収容され、電気コネクタにおける一つの要素を構成する。なお、ハウジング100は、一例として、前述した導電性の金属材料、典型的にはアルミニウム合金から構成される。
【0037】
電線収容スペース101は、一例として、前方(F)に配置される小スペース101Aと、小スペース101Aよりも後方(R)に配置される大スペース101Bと、を備える。小スペース101Aと大スペース101Bは、ともに円柱状の空隙からなるが、大スペース101Bは小スペース101Aよりも径が大きい。小スペース101Aと大スペース101Bの境界には、段差101Cが形成される。小スペース101Aに臨むハウジング100の内周面はフェルール40の弾性片44の接点44Cが電気的に接続される電接面101Dを構成する。大スペース101Bに臨むハウジング100の内周面はワイヤシール60のハウジングシール部63が密着されるシール面101Eを構成する。大スペース101Bの後方(R)の端部は外部に連なる開口101Fとされるが、この開口101Fは、止め具103により閉じられている。
【0038】
[ハウジング100におけるシールド電線組付体1の装着状態:
図4,
図5]
シールド電線組付体1は、
図4および
図5に示すように、ハウジング100の電線収容スペース101に装着される。接地要素20(固定体30,フェルール40)およびストッパ50は、小スペース101Aおよび大スペース101Bに亘ってその内部に収容される。
【0039】
小スペース101Aにおいて、フェルール40の圧着部41と固定体30の加締めリング31の間に編組線15の間に折返部15Aが挟まれることで、編組線15とフェルール40が電気的に接続される。また、小スペース101Aにおいて、変位許容部52の周囲における弾性片44の径方向(D)の内側への必要十分な変位が許容される。
【0040】
大スペース101Bにおいて、後方支持端43Bがその内側に設けられる変位規制部53により径方向(D)の内側への変位が拘束される。加えて、後方支持端43Bは径方向(D)の外側の変位がリブ55Bにより拘束される。弾性片44の接点44Cは電接面101Dに接触する。さらに、後方支持端43Bよりも後方(R)にはフランジ55Aが配置されている。フランジ55Aの径方向(D)の先端に連なるリブ55Bは、その前方(F)の端部が段差101Cに突き当たり、ストッパ50の前方(F)に向けた変位が拘束される。ストッパ50の後方(R)に向けた変位は、ワイヤシール60を介して、止め具103により拘束される。
【0041】
[シールド電線組付体1が奏する効果]
シールド電線組付体1は、ストッパ50を備えることにより、以下の効果を奏する。
ストッパ50は、フェルール40の内側に設けられる第一ストッパ51を備える。したがって、シールド電線組付体1によれば、フェルール40が径方向(D)の内側に向けて過大に変位するのを防ぐ過大変位防止効果を奏することができる。また、ストッパ50は、フェルール40の後方支持端43Bの後方(R)に第二ストッパ55を備える。したがって、シールド電線組付体1によれば、フェルール40が後方(R)に向けて変位してワイヤシール60に突き当たり、ワイヤシール60に傷が生ずるのを防ぐ傷防止効果を奏することができる。しかも、シールド電線組付体1は、一体として形成される単一の部材であるストッパ50を設けることにより、過大変位防止効果および傷防止効果という二つの効果を奏することができるので、コスト的な優位性をも備えている。
【0042】
以上、本発明による好ましい実施形態を説明したが、当該実施形態の他にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、好ましい形態として、ストッパ50は、過大変位防止機能を有する第一ストッパ51と、傷防止機能を発揮する第二ストッパ55とが一体で形成されているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、個別に作製された第一ストッパ51に相当する部材と第二ストッパ55に相当する部材とを、第一ストッパ51と第二ストッパ55のそれぞれに対応するシールド電線組付体1における位置に配置してもよい。
【0043】
また、フェルール40の接続部43は、好ましい形態として、片持ち梁状の弾性片44を備えるが、単純な円筒状の形態としてもよい。その形態においても、ハウジング100の電接面101Dとの電気的な接続を確実に得るために、接点44Cまたは接点44Cに相当する部位を備えることが好ましい。
【符号の説明】
【0044】
1 電線組付体
10 シールド電線
11 芯線
13 内層被覆
15 編組線
15A 折返部
17 外層被覆
19 端子
19A 芯線接続部
19B 相手接続部
19C 締結孔
20 接地要素
30 固定体
31 嵌合孔
33 加締めリング
40 フェルール
41 圧着部
43 接続部
43A 前方支持端
43B 後方支持端
D43 外径
44 弾性片
44A 自由端
44B 固定端
44C 接点
45 静止片
45A,45B 固定端
50 ストッパ
51 第一ストッパ
51A 内周面
51B 外周面
52 変位許容部
D52 外径
53 変位規制部
D53 外径
54 突条
55 第二ストッパ
55A フランジ
55B リブ
D55 外径
60 ワイヤシール
61 電線シール部
63 ハウジングシール部
100 ハウジング
101 電線収容スペース
101A 小スペース
101B 大スペース
101C 段差
101D 電接面
101E シール面
101F 開口
103 止め具
C 軸線
D 径方向
F 前方
R 後方