(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021562
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ロール成形機及びロール成形方法
(51)【国際特許分類】
B21D 7/08 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B21D7/08 G
B21D7/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124468
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】曽根 諒也
(72)【発明者】
【氏名】上向 賢一
(72)【発明者】
【氏名】織部 大樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 智貴
【テーマコード(参考)】
4E063
【Fターム(参考)】
4E063AA08
4E063BB03
4E063CA03
4E063EA12
4E063JA07
4E063LA16
4E063LA20
(57)【要約】
【課題】溶体化処理した金属材の曲げ加工を精度良く行うことができるロール成形機を提供する。
【解決手段】ロール成形機は、支点ロール部21,22と、曲げロール部23と、アクチュエータ24又は26と、制御装置41と、を備える。支点ロール部21,22は、長尺材100に接触する支点ロール21a,21b,22a,22bを有する。曲げロール部23は、長尺材100に接触して長尺材100を曲げる曲げロール23a,23bを有する。アクチュエータ24又は26は動力を発生させる。制御装置41は、溶体化処理後の長尺材100の暴露温度及び暴露時間に基づいてアクチュエータ24又は26を制御して、支点ロール21a,21b,22a,22b又は曲げロール23a,23bの位置を変更する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶体化処理した長尺材を搬送経路に沿って搬送しながら曲げ加工を行ってロール成形部品を製造するロール成形機において、
前記搬送経路に沿って配置され、前記長尺材に接触する支点ロールを有する支点ロール部と、
前記支点ロール部よりも下流の前記搬送経路に沿って配置され、前記長尺材に接触して前記長尺材を曲げる曲げロールを有する曲げロール部と、
前記支点ロール又は前記曲げロールの位置を変化させる動力を発生させるアクチュエータと、
溶体化処理後の前記長尺材の暴露温度及び暴露時間に基づいて前記アクチュエータを制御して、前記支点ロール又は前記曲げロールの位置を変更する制御装置と、
を備えるロール成形機。
【請求項2】
請求項1に記載のロール成形機であって、
前記制御装置は、前記暴露温度及び前記暴露時間と、前記ロール成形部品の曲率半径の目標値と、に基づいて前記アクチュエータを制御し、前記支点ロール部に対する前記曲げロール部の相対位置を変化させるロール成形機。
【請求項3】
請求項1に記載のロール成形機であって、
前記支点ロール部は前記長尺材を挟み込む一対の支点ロールを有し、又は前記曲げロール部は前記長尺材を挟み込む一対の曲げロールを有し、
前記制御装置は、前記アクチュエータを制御し、前記支点ロール同士の隙間、又は前記曲げロール同士の隙間を変化させるロール成形機。
【請求項4】
請求項1に記載のロール成形機であって、
前記制御装置は、前記暴露温度及び前記暴露時間に基づいて前記長尺材の材料強度を推定し、前記材料強度に基づいて前記アクチュエータを制御するロール成形機。
【請求項5】
請求項4に記載のロール成形機であって、
前記制御装置は、
前記暴露温度、前記暴露時間、及び前記材料強度を対応付けたデータベースにアクセスし、溶体化処理後の前記長尺材の前記暴露温度及び前記暴露時間に対応する前記材料強度を特定して、前記材料強度を推定するロール成形機。
【請求項6】
請求項1に記載のロール成形機であって、
前記制御装置は、新たな前記ロール成形部品の製造を開始する毎に、前記アクチュエータを制御して、前記支点ロール又は前記曲げロールの位置を変更するロール成形機。
【請求項7】
請求項1に記載のロール成形機であって、
前記制御装置は、長尺材に前記曲げ加工を行って1つの前記ロール成形部品を製造する途中において、前記アクチュエータを制御して、前記支点ロール又は前記曲げロールの位置を変更するロール成形機。
【請求項8】
請求項2に記載のロール成形機であって、
前記曲げロール部は、前記長尺材を挟み込む2以上の曲げロールを有し、
前記曲げロール部は、前記曲げロールの回転軸と平行な旋回軸を中心に旋回し、
前記制御装置は、前記アクチュエータを制御して前記支点ロール部に対する前記曲げロール部の相対位置を変化させるとともに、前記曲げロール部を旋回させるロール成形機。
【請求項9】
請求項2に記載のロール成形機であって、
前記制御装置は、更に、前記長尺材の厚さに基づいて前記アクチュエータを制御するロール成形機。
【請求項10】
請求項2に記載のロール成形機であって、
前記制御装置は、前記長尺材の材料強度と、前記ロール成形部品の曲率半径と、前記相対位置と、を対応付けたデータベースにアクセスして、推定した前記材料強度及び前記ロール成形部品の曲率半径の目標値に対応する前記相対位置を特定し、特定した前記相対位置に基づいて前記アクチュエータを制御するロール成形機。
【請求項11】
請求項3に記載のロール成形機であって、
前記制御装置は、前記暴露温度及び前記暴露時間に基づいて前記長尺材の材料強度を推定し、
前記制御装置は、前記材料強度と、前記ロール成形部品のうち予め決定された代表面の平面度の目標値と、に基づいて、前記アクチュエータを制御するロール成形機。
【請求項12】
請求項11に記載のロール成形機であって、
前記制御装置は、前記材料強度と、前記ロール成形部品のうち予め決定された代表面の平面度の目標値と、前記長尺材の厚さと、に基づいて、前記アクチュエータを制御するロール成形機。
【請求項13】
請求項11に記載のロール成形機であって、
前記制御装置は、前記材料強度と、前記ロール成形部品のうち予め決定された代表面の平面度と、前記隙間と、の関係を示す関係式に対して、推定した前記材料強度、及び、前記平面度の目標値を入力値として前記隙間を特定し、特定した前記隙間に基づいて前記アクチュエータを制御するロール成形機。
【請求項14】
請求項11に記載のロール成形機であって、
前記代表面は、前記ロール成形部品のうち、前記搬送経路に垂直な方向で見たときに最大長さを有する部位の表面であって、当該部位の厚み方向に垂直な平面であり、
前記制御装置は、前記材料強度と、前記代表面の平面度の目標値と、に基づいて、前記アクチュエータを制御するロール成形機。
【請求項15】
溶体化処理した長尺材を搬送経路に沿って搬送しながら、前記長尺材に接触する支点ロールを有する支点ロール部と、前記長尺材に接触して前記長尺材を曲げる曲げロールを有する曲げロール部と、により曲げ加工を行ってロール成形部品を製造するロール成形方法において、
溶体化処理後の前記長尺材の暴露温度及び暴露時間に基づいてアクチュエータを制御し、前記支点ロール又は前記曲げロールの位置を変化させるロール成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、主として、長尺物に曲げ加工を行ってロール成形部品を製造するロール成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、金属材に対して熱間曲げを行うための熱間曲げ加工装置を開示する。熱間曲げ加工装置は、金属材を送り出す送出手段と、金属材を局所的に加熱する加熱手段と、加熱された部分を冷却する冷却手段と、加熱された部分に曲げモーメントを付与する挟持手段と、を備える。熱間曲げ加工装置は、金属材の変位又は温度を測定して測定値を取得する。熱間曲げ加工装置は、測定値に基づいて、送出手段及び挟持手段を制御する。これにより、残留応力に起因した変形や焼き付きが発生しにくいため、加工精度の高い熱間曲げ加工が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属材を加工して金属部品を製造する際には、金属材が溶体化処理されることがある。溶体化処理とは、金属材を高温で加熱することにより、添加元素を金属材に均一に溶け込ませた後に、金属材を急冷する処理である。その後、時効硬化が生じることにより金属材の材料強度が高くなる。ここで、特許文献1の加工装置は熱間曲げを対象としている。そのため、特許文献1には、溶体化処理した金属材の曲げ加工において、加工精度を高める手段について開示されていない。
【0005】
本出願は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、溶体化処理した金属材の曲げ加工を精度良く行うことができるロール成形機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本出願の観点によれば、以下の構成のロール成形機が提供される。即ち、ロール成形機は、溶体化処理した長尺材を搬送経路に沿って搬送しながら曲げ加工を行ってロール成形部品を製造する。ロール成形機は、支点ロール部と、曲げロール部と、アクチュエータと、制御装置と、を備える。前記支点ロール部は、前記搬送経路に沿って配置され、前記長尺材に接触する支点ロールを有する。前記曲げロール部は、前記支点ロール部よりも下流の前記搬送経路に沿って配置され、前記長尺材に接触して前記長尺材を曲げる曲げロールを有する。前記アクチュエータは、前記支点ロール又は前記曲げロールの位置を変化させる動力を発生させる。前記制御装置は、溶体化処理後の前記長尺材の暴露温度及び暴露時間に基づいて前記アクチュエータを制御して、前記支点ロール又は前記曲げロールの位置を変更する。
【発明の効果】
【0008】
本出願によれば、溶体化処理した金属材の曲げ加工を精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】長尺材が第1支点ロール部で挟み込まれる様子を示す断面図。
【
図4】第1支点ロール部のロール間の隙間を示す断面図。
【
図5】曲げロール部の位置の変更により長尺材の曲率半径が変化することを示す平面図。
【
図6】暴露温度及び暴露時間に基づいて曲げ加工機の各ロールの位置を変更する処理を示すフローチャート。
【
図7】暴露温度、暴露時間、及び材料強度の関係を示すグラフ。
【
図8】材料強度、ロール成形部品の曲率半径、曲げロール部の位置の関係を示すグラフ。
【
図10】平面度(浮き量)と、材料強度、長尺材の厚さ、ロール間の隙間のそれぞれとの関係を示すグラフ。
【
図11】曲げロール部が3つの曲げロールで構成されている変形例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して本出願の実施形態を説明する。初めに、
図1を参照して、ロール成形機1の概要について説明する。
【0011】
ロール成形機1は、長尺材100を搬送経路10に沿って搬送しながら、長尺材100を加工して、ロール成形部品101を製造する。搬送経路10に沿って複数のロールが設けられており、これらのロールが長尺材100を挟み込んで送り出すことにより、長尺材100が搬送される。
図1に示すように、長尺材100は、例えば巻かれた状態で搬送経路10の最上流にセットされているが、長尺材100は巻かれた状態に限られず、必要な長さにあらかじめ切断された状態であってもよい。ロール成形機1は、搬送経路10の上流側から順に、断面加工機11と、曲げ加工機12と、切断機13と、受け台14と、を備える。
【0012】
長尺材100は、ある方向のサイズが、他の方向のサイズよりも大きい材料である。本実施形態の長尺材100は板状であり、長手方向のサイズが、厚さ方向及び幅方向のサイズよりも大幅に大きい。以下では、長尺材100の長手方向に垂直な平面で切った断面における長尺材100の形状を単に断面と称する。加工前の長尺材100の断面は、矩形であるが、円形であってもよいし、それらと異なる形状であってもよい。長尺材100は、金属製であり、例えば7000系のアルミニウム合金製である。なお、長尺材100は7000系のアルミニウム合金製に限られず、2000系等の他のアルミニウム合金製や他の金属製であってもよい。
【0013】
断面加工機11は、長尺材100の断面形状を変化させる。具体的には、断面加工機11は、加工ロール11a,11bを備える。加工ロール11a,11bは複数個備えられていてもよい。加工ロール11a,11bの回転軸は、例えば長尺材100の幅方向と平行である。加工ロール11a,11bの回転軸は、長尺材100の幅方向に対して角度を持っていてもよい。加工ロール11aの表面には凹部もしくは凸部が形成されており、加工ロール11bの表面には、加工ロール11aの凹部もしくは凸部に相対する形状の凸部もしくは凹部が形成されている。加工ロール11a,11bで長尺材100を挟み込んで送り出すことにより、長尺材100の断面形状が変化する。なお、断面加工機11は必須の構成要素ではない。他の場所で加工ロール11a,11bにより長尺材100の断面形状を変化させた後、またはロールを使用しない公知の方法で長尺材100の断面形状を変化させた後に、曲げ加工機12が設置されている場所に長尺材100を移動させてもよい。断面形状の加工が不要な場合は、断面加工機11を省略することもできる。
【0014】
曲げ加工機12は、長尺材100の長手方向の形状、つまり曲率を変化させる。加工前の長尺材100の長手方向は直線状であるが、曲げ加工機12の曲げ加工により、長尺材100の長手方向が湾曲状、言い換えれば円弧状となる。曲げ加工機12は、搬送経路10の上流側から順に第1支点ロール部21、第2支点ロール部22、及び曲げロール部23を備える。なお、支点ロール部が3つ以上あってもよいし、曲げロール部が2つ以上あってもよい。これらのロールの回転軸は、断面形状が変化する前の長尺材100の厚さ方向と平行であることが望ましい。ただし、ロールの回転軸は長尺材100の厚さ方向と必ずしも平行である必要はない。
図2には、第1支点ロール部21が示されている。第1支点ロール部21は、第1支点ロール21a,21bを備える。第1支点ロール21a,21bの外表面は、長尺材100の断面に沿った形状であることが望ましい。ただし、例えば長尺材100の断面が湾曲している部分においては、必ずしも支点ロール21a,21bの外表面が長尺材100に沿った形状である必要はない。なお、第2支点ロール部22及び曲げロール部23の形状は、第1支点ロール部21と同様である。曲げ加工機12の詳細な構成については後述する。
【0015】
切断機13は、カッタ等を備えており、長尺材100を切断する。断面加工機11及び曲げ加工機12による加工が行われた長尺材100を切断機13が切断することにより、ロール成形部品101が製造される。製造されたロール成形部品101は、受け台14の上に置かれる。なお、切断機13は必須の構成要素ではない。例えば、1つの長尺材100を加工して1つのロール成形部品101を製造する場合や、あらかじめ必要長さに切断された材料を成形する場合は、切断機13を省略することができる。
【0016】
受け台14は、製造されたロール成形部品101を置くための台である。受け台14は、ロール成形部品101の形状に沿った形状であることが望ましいが、ロール成形部品101の形状に沿わなくてもロール成形部品101を載置できる形状であってもよい。受け台14には、製造されたロール成形部品101の形状すなわち曲率を確認するための複数の距離センサ、または複数の棒状のインデックスが、所定の間隔をあけて受け台14上に配置されていてもよい。また、製造されたロール成形部品101のうち予め決定された代表面の平面度を測定するための計測装置が設けられていてもよい。
【0017】
次に、
図3から
図5を参照して、曲げ加工機12の詳細について説明する。以下の説明では、曲げ加工機12を構成するロールの形状を簡略化して図示することがある。
【0018】
曲げ加工機12は、支点ベース31と、曲げベース32と、を備える。支点ベース31には、上述した第1支点ロール部21及び第2支点ロール部22が取り付けられている。曲げベース32には、上述した曲げロール部23が取り付けられている。第1支点ロール部21と第2支点ロール部22は、ある直線に沿って配置されている。曲げロール部23は、この直線から外れた位置に配置されている。これにより、長尺材100を曲げ加工することができる。
【0019】
第1支点ロール部21は、上述したように、一対の第1支点ロール21a,21bを備える。第1支点ロール21a,21bは長尺材100を厚さ方向に挟んで対向するように配置されている。第1支点ロール21a,21bの少なくとも一方はアクチュエータにより回転駆動される。アクチュエータは例えば電動モータである。第1支点ロール21a,21bが長尺材100に接触して回転することにより、長尺材100を搬送することができる。
【0020】
また、第1支点ロール部21は、第1支点ロール21a,21b同士の隙間を変化させる機構を有する。具体的には、第1支点ロール21aは、第1支点ロール21bに離接する方向にスライド可能に構成されている。スライド方向は、
図3の平面視において、第1支点ロール21a,21bの回転中心同士を接続する方向である。
【0021】
詳細には、第1支点ロール21aには、スライド軸21cが取り付けられており、スライド軸21cにはアクチュエータ24が取り付けられている。アクチュエータ24は、スライド軸21cを介して第1支点ロール21aをスライドさせるための動力を発生させるシリンダ又はソレノイドである。また、アクチュエータ24は、電動モータ及びボールネジであってもよい。アクチュエータ24を駆動することにより、スライド軸21cを介して、第1支点ロール21aを第1支点ロール21bに対して離接させることができる。その結果、第1支点ロール21a,21b同士の隙間を変化させることができる。
【0022】
図4には、第1支点ロール21a,21b同士の隙間の変化を示す図が記載されている。本実施形態では、第1支点ロール21aの位置について基準面が定められている。本実施形態の基準面は、回転軸と平行である。そして、基準面を基準として、第1支点ロール21aを第1支点ロール21bから離間させる方向を負として隙間の大きさを定める。また、基準面を基準として第1支点ロール21aを第1支点ロール21bに近接させる方向を正として隙間の大きさを定める。基準面の位置は予め定められており、第1支点ロール21aが基準面に一致している際のアクチュエータ24の状態が記憶されている。また、隙間が指定されることにより、その隙間を実現させるようにアクチュエータ24を駆動させることもできる。
【0023】
なお、第1支点ロール21a,21b同士の隙間を変化させる構成は本実施形態とは異なっていてもよい。例えば、第1支点ロール21aに代えて又は加えて、第1支点ロール21bをスライドさせてもよい。この場合、基準面は第1支点ロール21bの位置としてもよい。
【0024】
第2支点ロール部22は、第1支点ロール部21と同様に、一対の第2支点ロール22a,22bと、スライド軸22cと、を備える。第2支点ロール部22においても、第2支点ロール22aと第2支点ロール22bの少なくとも一方をスライドさせることにより、第2支点ロール22a,22b同士の隙間を変化させることができる。
【0025】
曲げロール部23は、第1支点ロール部21と同様に、一対の曲げロール23a,23bと、スライド軸23cと、を備える。曲げロール部23においても、曲げロール23aと曲げロール23bの少なくとも一方をスライドさせることにより、曲げロール23a,23b同士の隙間を変化させることができる。
【0026】
また、曲げロール部23は、第2支点ロール部22に対する相対位置を変化させる旋回機構とスライド機構を有する。旋回機構は旋回軸23dを備える。曲げロール部23は、旋回軸23dを中心にして旋回可能に曲げベース32に取り付けられている。曲げロール部23には、更に、アクチュエータ25,26が取り付けられている。アクチュエータ25を駆動することにより、曲げロール部23を旋回軸23dを中心にして旋回させることができる。スライド機構は、曲げロール部23をスライドさせる機構である。スライド方向は、
図3の平面視において、曲げロール23a,23bの回転中心同士を接続する方向である。アクチュエータ26を駆動することにより、曲げロール23a,23b及び旋回軸23dを一体的にスライドさせることができる。アクチュエータ25は、例えば電動モータである。アクチュエータ26は、シリンダ又はソレノイドである。アクチュエータ26は、電動モータ及びボールネジであってもよい
【0027】
旋回機構及びスライド機構を有することにより、第2支点ロール部22に対する曲げロール部23の相対位置を変化させることができる。これにより、
図5の鎖線に示すように、長尺材100の曲がり具合、言い換えれば長尺材100の曲率半径を変化させることができる。なお、第2支点ロール部22に対する曲げロール部23の相対位置を変化させる機構は、本実施形態とは異なっていてもよい。例えば、曲げベース32が水平面内を自在に移動可能であってもよい。
【0028】
上述したアクチュエータ24、25、26は、制御装置41によって制御されている。制御装置41は、CPU等の演算装置と、SSD又はフラッシュメモリ等の記憶装置と、通信モジュール等の通信装置と、を備える。記憶装置に記憶されたプログラムを演算装置が実行することにより、制御装置41は曲げ加工機12に関する様々な制御を行うことができる。また、制御装置41は、通信装置を用いてデータベース装置43にアクセスすることにより、様々なデータを取得できる。制御装置は、その内部に時計または時間を計測する装置を備えていてもよい。
【0029】
データベース装置43は、ローカルエリアネットワーク又はワイドエリアネットワークを介して、制御装置41と通信可能である。データベース装置43は、HDD又はSSD等の記憶装置を備えるサーバである。データベース装置43は、ロール成形機1の制御に必要なデータを記憶し、制御装置41からの要求に応じて当該データを送信する。なお、ロール成形機1の制御に必要なデータは、データベース装置43ではなく制御装置41に記憶されていてもよい。この場合、データベース装置43を省略できる。
【0030】
また、ロール成形機1が設けられる環境には、温度センサ42が設けられている。温度センサ42は、長尺材100が曝される環境の温度である暴露温度を測定する。温度センサ42は、測定した暴露温度を制御装置41に出力する。なお、温度センサ42で測定した暴露温度は、制御装置41に出力せず、データベース装置43に直接出力し、記憶されてもよい。
【0031】
また、曲げ加工機12に供給される前の長尺材100に対して溶体化処理、搬送、又は保管を行う環境には、時計またはストップウォッチが設置される。時計又はストップウォッチは、溶体化処理後に長尺材100が常温環境に曝された時間の合計値である総暴露時間を計測する。長尺材100の総暴露時間は、自動的に記録されるかまたは入力装置を用いて人によって記録される。例えば、長尺材100にストップウォッチを設置し、常温での暴露が開始された段階でストップウォッチでの時間計測をスタートさせる。長尺材100を冷凍庫に移動させたタイミングでストップウォッチでの時間計測をストップさせ、冷凍庫から常温環境に移動させた段階で再びストップウォッチでの時間計測をスタートさせるようにして、長尺材100の総暴露時間を計測してもよい。長尺材100の暴露が開始された時刻、または長尺材100の総暴露時間は、制御装置41に出力され、または入力装置により制御装置41に入力される。ストップウォッチでの時間計測をスタートさせるための暴露が開始された時刻は、長尺材100が予め設定された温度になった時点の時刻でもよい。また、時計又はストップウォッチは長尺材100とは異なる位置に配置されてもよい。
【0032】
次に、
図6から
図10を参照して、暴露温度及び暴露時間に基づいて、曲げ加工機12の各ロールの位置を変更する処理について説明する。
【0033】
初めに、長尺材100の特性について説明する。本実施形態の長尺材100は溶体化処理されている。溶体化処理とは、金属材を高温で加熱することにより、添加元素を金属材に均一に溶け込ませた後に、金属材を急冷する処理である。これにより、溶体化処理後の長尺材100では時効硬化が生じて、長尺材100の材料強度は上昇していく。また、溶体化処理後であって時効硬化が完了するまでの金属の調質状態をWと称することがある。ロール成形機1による長尺材100の加工は、長尺材100の調質状態Wで行われる。従って、加工開始時までの暴露状況が不明であると、加工時点での長尺材100の正確な材料強度は不明である。
【0034】
また、加工時点での長尺材100の材料強度が異なる場合、同じロール位置などの加工条件で長尺材100を加工したとしても、製造されるロール成形部品101の形状が異なる可能性がある。例えば、長尺材100の材料強度が高いほど、曲げ加工機12による曲げ加工後のスプリングバックが増大するため、ロール成形部品101の曲率半径が大きくなる。また、長尺材100の材料強度が低いほど、ロール成形部品101の平面度が悪くなり易い。このように、加工時点での長尺材100の材料強度が不明である場合、必要な形状を得ることができず、歩留まりが低下する可能性がある。本実施形態では、それを解消するために、
図6のフローチャートに示す第1補正と第2補正を行う。第1補正は、ロール成形部品101の曲率半径を適正にする処理であり、第2補正は、ロール成形部品101の平面度を適正にする処理である。以下、具体的に説明する。
【0035】
初めに、制御装置41は、第1補正タイミングか否かを判定する(S101)。本実施形態では、ロール成形機1の長尺材100を加工して複数のロール成形部品101を製造する。第1補正タイミングは、例えば、新たなロール成形部品101の製造を開始するタイミングである。これにより、ロール成形部品101を製造する毎に適切な条件で加工することができる。なお、第1補正タイミングは、本実施形態とは異なるタイミングであってもよい。例えば、所定時間が経過したことを第1補正タイミングとしてもよい。この場合、1つのロール成形部品101の製造の途中において、第1補正タイミングが到来してもよい。
【0036】
制御装置41は、第1補正タイミングであると判定した場合、第1補正タイミングと判定された時点の暴露温度及び暴露時間を取得する(S102)。制御装置41は、温度センサ42が検出した温度を随時取得して記憶装置に記憶している。制御装置41の演算装置は、記憶装置にアクセスすることにより、この暴露温度を取得する。また、暴露時間は、溶体化処理後に常温等の環境に曝されている時間の長さである。制御装置41は、現在使用中の長尺材100の暴露が開始した時刻、またはロール成形機1での成形を開始した時点までの長尺材100の総暴露時間を記憶装置に記憶している。長尺材100の暴露が開始した時刻、またはロール成形機1での成形を開始した時点までの長尺材100の総暴露時間は、長尺材100を監視する何らかのセンサにより自動的に記憶装置に記録させてもよいし、入力装置を用いて人が記憶装置に入力し記憶させてもよい。制御装置41の演算装置は、記憶装置にアクセスすることにより取得した時刻および第1補正タイミングであると判断した時の時刻、または記憶装置にアクセスすることにより取得した総暴露時間および第1補正タイミングであると判断した時の時刻に基づいて、暴露時間を算出する。第1補正タイミングであると判断した時の時刻は、制御装置41に内蔵された時計から取得してもよいし、制御装置41の外部にある時計の時刻をカメラ等のセンサを用いて取得してもよいし、入力装置を用いて人が入力してもよい。
【0037】
次に、制御装置41は、暴露温度及び暴露時間に基づいて材料強度を推定する(S103)。調質状態Wの長尺材100の材料強度は、
図7に示すように暴露温度及び暴露時間に依存する。
図7には、暴露温度、暴露時間、及び材料強度の関係を示すグラフが示されている。横軸が暴露時間、縦軸が材料強度である。材料強度は、例えば材料の0.2%耐力もしくは引張強度である。
図7に示すグラフは、予め実験的に取得されたデータに基づいて作成されている。このデータ又はグラフはデータベース装置43に記憶されている。制御装置41はデータベース装置43にアクセスすることにより、このデータ又はグラフを取得する。
【0038】
図7のグラフに示すように、暴露温度が高くなるにつれて一定暴露時間当たりの材料強度の上昇量が大きくなり、暴露時間が長くなるにつれて材料強度が高くなる。ただし
図7に示すように、時効硬化による材料強度の上昇は、材料固有の値へ漸近するため、一定暴露時間当たりの材料強度の上昇量は、暴露温度の大小関係と必ずしも一致しない。
図7に示すように、暴露温度がY℃であって暴露時間がT1である場合、暴露温度がY℃のグラフ上において、暴露時間がT1のときの材料強度を参照することにより、材料強度を推定できる。なお、取得した暴露温度が例えばX℃とY℃の間にある場合、暴露温度がX℃のグラフと暴露温度がY℃のグラフを補間することにより、取得した暴露温度に応じた材料強度を特定する。
【0039】
本実施形態では、温度センサ42は暴露温度そのものを検出するが、暴露温度に連動する温度を検出してもよい。例えば、温度センサ42は、長尺材100の処理で用いられる潤滑油の温度、又は、長尺材100自体の温度を検出してもよい。本質的には、常温等の環境に暴露されている調質状態Wの材料強度は、長尺材100自体の温度及び暴露時間に依存する。そして長尺材100自体の温度は、例えば、長尺材100の処理で用いられる潤滑油の温度、又は、暴露温度に依存する。従って、温度センサ42が長尺材100以外の温度を検出して当該温度を用いて材料強度を推定する場合であっても、本質的又は実質的には長尺材100自体の温度に基づいて材料強度を推定していることとなる。
【0040】
次に、制御装置41は、ロール成形部品101の曲率半径の目標値と、長尺材100の材料強度と、に基づいて、曲げロール部23の目標位置を特定する(S104)。上述したように、ロール成形部品101の曲率半径は、材料強度に依存する。また、
図5を用いて説明したように、ロール成形部品101の曲率半径は、当然ながら曲げロール部23の位置に依存する。また、スプリングバックは長尺材100の断面形状に依存するため、ロール成形部品101の曲率半径は、長尺材100の断面形状に依存する。
図8には、長尺材100の断面の形状のうち厚さ以外が同一の場合を例にとり、厚さがD1mmの場合における、材料強度、曲げロール部23の位置、及び、ロール成形部品101の曲率半径の関係を示すグラフが示されている。横軸が材料強度、縦軸がロール成形部品101の曲率半径である。
図8に示すグラフは、予め実験的に取得されたデータに基づいて作成されている。このデータ又はグラフはデータベース装置43に記憶されている。制御装置41はデータベース装置43にアクセスすることにより、このデータ又はグラフを取得する。なお、データベース装置43には、厚さがD1mm以外のデータ又はグラフも記憶されている。
【0041】
図8に示すように、長尺材100の厚さがD1mmであって、ロール成形部品101の曲率半径の目標値がR1であって、ステップS103で推定した材料強度がS1である場合、この交点には、位置Bのグラフが存在している。この場合、制御装置41は、曲げロール部23の目標位置として位置Bを特定する。なお、この交点が例えば位置Aと位置Bの間にある場合、位置Aのグラフと位置Bのグラフを補間することにより、曲げロール部23の位置を特定する。
【0042】
長尺材100の厚さが1種類であったり、厚さが複数種類でも差異が僅かであったりする場合は、長尺材100の厚さに関係なく同じデータを用いて曲げロール部23の位置を特定してもよい。また、本実施形態では第1支点ロール部21及び第2支点ロール部22の位置は固定されており、曲げロール部23の位置のみを変化させる。一方で、ロール成形部品101の曲率半径に依存するのは、第2支点ロール部22に対する曲げロール部23の相対位置であるため、曲げロール部23に代えて又は加えて、第2支点ロール部22の位置が変更可能であってもよい。また、グラフに基づいて曲げロール部23の位置を推定する処理に代えて、曲率半径と曲げロール部23の位置と材料強度の関係を示す関係式を作成し、関係式に基づいて曲げロール部23の位置を特定してもよい。
【0043】
ステップS104において、制御装置41は、特定した曲げロール部23の目標位置と、ロール成形部品101の曲率半径の目標値により、旋回軸23dを中心とした曲げロール部23の目標旋回角度を算出してもよい。
【0044】
次に、制御装置41は、曲げロール部23を目標位置に移動させる駆動指令を生成してアクチュエータ26を制御する(S105)。駆動指令は、曲げロール部23を現在位置から目標位置に移動させるために必要な指令である。ステップS104で曲げロール部23の目標旋回角度を算出した場合は、曲げロール部23を旋回させる駆動指令も同時に生成してアクチュエータ25を制御してもよい。
【0045】
次に、制御装置41は、第2補正タイミングか否かを判定する(S106)。第2補正タイミングとして設定可能なタイミングは、第1補正タイミングと同じである。また、第1補正タイミングと第2補正タイミングが一致していてもよいし、異なっていてもよい。
【0046】
制御装置41は、第2補正タイミングであると判定した場合、暴露温度及び暴露時間を取得し(S107)、暴露温度及び暴露時間に基づいて材料強度を推定する(S108)。ステップS107の処理はステップS102の処理と同じであり、ステップS108の処理はステップS103の処理と同じである。第2補正タイミングが第1補正タイミングと同じである場合は、ステップS102で取得した暴露温度及び暴露時間をステップS107で利用してもよいし、ステップS103で推定した材料強度をステップS108で利用してもよい。
【0047】
次に、制御装置41は、ロール成形部品101の平面度の目標値、長尺材100の材料強度、及び長尺材100の厚さに基づいて、ロール間の隙間を特定する(S109)。平面度とは、基準となる平面からの誤差の大きさを示す指標である。例えば平面度が1mmである場合、着目している平面は、1mm間隔で平行に配置された2つの仮想平面の間に収まる。
図9に示すように、完成したロール成形部品101は受け台14の載置面に置かれる。ここで、ロール成形部品101のうち後述する代表面の平面度が大きい場合、ロール成形部品101の一部が受け台14の載置面から浮き上がる。従って、平面度と浮き量は同じ概念の指標である。以下では、代表して平面度という用語を用いて説明する。代表面は、ロール成形部品101が有する面であり、ロール成形部品101の形状に応じて予め決定される面である。本実施形態の代表面は、ロール成形部品101のうち、搬送経路10に垂直な方向で見たときに最大長さを有する部位の表面であって、当該部位の厚み方向に垂直な平面である。なお、
図9は、ロール成形部品101を搬送経路10に垂直な方向で見た図に相当する。
図9では、ロール成形部品101の上面が代表面であると示されているが、下面を代表面として取り扱ってもよい。なお、本実施形態の代表面は一例であり、ロール成形部品101の異なる面を代表面として取り扱ってもよい。
【0048】
図10には、上から順に平面度と材料強度の関係を示すグラフ、平面度と長尺材100の厚さの関係を示すグラフ、及び、平面度とロール間の隙間の関係を示すグラフが示されている。
図10の上の図の横軸は材料強度であり縦軸が平面度である。
図10の中央の図の横軸は長尺材100の厚さであり縦軸が平面度である。
図10の下の図の横軸はロール間の隙間であり縦軸が平面度である。
図10に示すグラフは、予め実験的に取得されたデータに基づいて作成されている。
図10の各グラフに示すように、平面度は、材料強度、長尺材100の厚さ、ロール間の隙間に依存する。従って、以下の式(1)が成立する。
平面度=(a1・材料強度)+(a2・厚さ)+(a3・ロール間の隙間)+b・・・(1)
式(1)は重回帰分析により得られる回帰式である。a1,a2,a3は偏回帰係数である。bは切片、言い換えれば定数項である。
図10のグラフを作成するためのデータを式(1)に代入することにより、a1,a2,a3,bの値を推定できる。また、式(1)を変形することにより、以下の式(2)が得られる。
ロール間の隙間=(平面度-a1・材料強度-a2・厚さ-b)/a3・・・(2)
ただしロール間の隙間を解とする式は、必ずしも式(1)の式変形により得られる式(2)でなくてもよい。試験的に係数と定数項を決定してもよい。それにより、以下の式(3)が得られる。
ロール間の隙間=(c1・平面度)+(c2・材料強度)+(c3・厚さ)+d・・・(3)
c1,c2,c3は係数であり、dは定数項である。
【0049】
制御装置41は、平面度の目標値と、ステップS107で推定した材料強度と、厚さと、を式(2)あるいは式(3)に代入することにより、ロール間の隙間を特定する。なお、長尺材100の厚さが1種類であったり、厚さが複数種類でも差異が僅かであったりする場合は、長尺材100の厚さに関する項を省略してもよい。また、関係式を用いてロール間の隙間を特定する処理に代えて、第1補正の曲げロール部23の位置を特定した方法、即ちグラフ上に示された位置関係からロール間の隙間を特定してもよい。
【0050】
次に、制御装置41は、第1支点ロール部21、第2支点ロール部22、及び曲げロール部23のロール間の隙間が、特定した隙間になるように駆動指令を生成してアクチュエータ24を制御する(S110)。
【0051】
次に、制御装置41は、終了条件を満たしたか否かを判定する(S111)。終了条件は、ロール成形部品101の製造処理が終了したか否かを判定するための条件である。終了条件は、例えば、規定数のロール成形部品101の製造が完了したこと、又は、終了時間に到達したこと等である。制御装置41は、終了条件を満たしたと判定した場合、制御を終了する。制御装置41は、終了条件を満たしていないと判定した場合、ステップS101の処理に戻る。
【0052】
以上の処理を行うことにより、長尺材100が調質状態Wであり、加工時点での長尺材100の正確な材料強度が不明である場合においても、材料強度を推測してそれに応じた加工条件を設定できるため、ロール成形部品101の形状の精度を高くできる。
【0053】
以上に説明したように、本実施形態のロール成形機1は、以下の特徴1を有しており、以下のロール成形方法を実行する。即ち、ロール成形機1は、溶体化処理した長尺材100を搬送経路10に沿って搬送しながら曲げ加工を行ってロール成形部品101を製造する。ロール成形機1は、支点ロール部21,22と、曲げロール部23と、アクチュエータ24又は26と、制御装置41と、を備える。支点ロール部21,22は、搬送経路10に沿って配置され、長尺材100に接触する。曲げロール部23は、支点ロール部21,22よりも下流の搬送経路10に沿って配置され、長尺材100に接触して長尺材100を曲げる。アクチュエータ24、26は、支点ロール21a,21b,22a,22b又は曲げロール23a,23bの位置を変化させる動力を発生させる。制御装置41は、溶体化処理後の長尺材100の暴露温度及び暴露時間に基づいてアクチュエータ24を制御して、支点ロール21a,21b,22a,22b又は曲げロール23a,23bの位置を変更する。以上が特徴1である。
【0054】
これにより、暴露温度及び暴露時間に基づいてアクチュエータ24を制御することで、長尺材100の現在の材料強度を考慮して各ロールを制御できる。その結果、溶体化処理した長尺材100の曲げ加工を精度良く行うことができる。
【0055】
本実施形態のロール成形機1は、以下の特徴2を有する。即ち、ロール成形機1において、制御装置41は、暴露温度及び暴露時間と、ロール成形部品101の曲率半径の目標値と、に基づいてアクチュエータ26を制御し、支点ロール部21,22に対する曲げロール部23の相対位置を変化させる。以上が特徴2である。
【0056】
これにより、ロール成形部品101の曲率半径を目標値に精度良く近づけることができる。
【0057】
本実施形態のロール成形機1は、以下の特徴3を有する。即ち、ロール成形機1において、支点ロール部21,22は長尺材100を挟み込む一対の支点ロール21a,21bを有し、又は、曲げロール部23は長尺材100を挟み込む一対の曲げロール23a,23bを有する。制御装置41は、アクチュエータ24を制御し、支点ロール21a,21b同士の隙間、又は、曲げロール23a,23b同士の隙間を変化させる。以上が特徴3である。
【0058】
本実施形態のロール成形機1は、以下の特徴4を有する。即ち、制御装置41は、暴露温度及び暴露時間に基づいて長尺材100の材料強度を推定し、材料強度に基づいてアクチュエータ24又は26を制御する。以上が特徴4である。
【0059】
これにより、簡単な方法で材料強度を推定できる。
【0060】
本実施形態のロール成形機1は、以下の特徴5を有する。即ち、制御装置41は、暴露温度、暴露時間、及び材料強度を対応付けたデータベースにアクセスし、溶体化処理後の長尺材100の暴露温度及び暴露時間に対応する材料強度を特定して、材料強度を推定する。以上が特徴5である。
【0061】
これにより、データベースを用いることにより、材料強度を精度良く推定できる。
【0062】
本実施形態のロール成形機1は、以下の特徴6を有する。即ち、制御装置41は、新たなロール成形部品101の製造を開始する毎にアクチュエータ24又は26を制御して、支点ロール21a,21b,22a,22b又は曲げロール23a,23bの位置を変更する。以上が特徴6である。
【0063】
これにより、適正な加工条件でロール成形部品101の製造を開始できる。また、ロール成形部品101の製造中は加工条件を変更しないことにより、例えばロール成形部品101の曲率又は平面度を均一にすることができる。
【0064】
本実施形態のロール成形機1は、以下の特徴7を有する。即ち、制御装置41は、長尺材100に曲げ加工を行って1つのロール成形部品101を製造する途中において、アクチュエータ24又は26を制御して、支点ロール21a,21b,22a,22b又は曲げロール23a,23bの位置を変更する。以上が特徴7である。
【0065】
これにより、例えば製造に長い時間が掛かるロール成形部品101等を精度良く製造できる。
【0066】
本実施形態のロール成形機1は、以下の特徴8を有する。即ち、曲げロール部23は、長尺材100を挟み込む2以上の曲げロール23a,23bを有する。曲げロール部23は、曲げロール23a,23bの回転軸と平行な旋回軸23dを中心に旋回する。例えば、制御装置41は、例えばアクチュエータ26を制御して支点ロール部21に対する曲げロール部23の相対位置を変化させるとともに、アクチュエータ25を制御して曲げロール部23を旋回させる。以上が特徴8である。
【0067】
これにより、相対位置を変化させる機構を単純にすることができる。
【0068】
本実施形態のロール成形機1は、以下の特徴9を有する。即ち、制御装置41は、更に、長尺材100の厚さに基づいてアクチュエータ26を制御する。以上が特徴9である。
【0069】
これにより、ロール成形部品101の曲率半径を更に精度良く成形できる。
【0070】
本実施形態のロール成形機1は、以下の特徴10を有する。即ち、制御装置41は、材料強度と、ロール成形部品101の曲率半径と、相対位置と、を対応付けたデータベースにアクセスして、推定した材料強度及びロール成形部品101の曲率半径の目標値に対応する相対位置を特定し、特定した相対位置に基づいてアクチュエータ26を制御する。以上が特徴10である。
【0071】
これにより、データベースの値を用いることにより、ロール成形部品101の曲率半径を更に精度良く成形できる。
【0072】
本実施形態のロール成形機1は、以下の特徴11を有する。即ち、制御装置41は、暴露温度及び暴露時間に基づいて長尺材100の材料強度を推定する。制御装置41は、材料強度と、ロール成形部品101のうち予め決定された代表面の平面度の目標値と、に基づいて、アクチュエータ24を制御する。以上が特徴11である。
【0073】
これにより、ロール成形部品101の代表面の平面度を目標値に近づけることができる。
【0074】
本実施形態のロール成形機1は、以下の特徴12を有する。即ち、制御装置41は、材料強度と、ロール成形部品101のうち予め決定された代表面の平面度の目標値と、長尺材100の厚さと、に基づいて、アクチュエータ24を制御する。以上が特徴12である。
【0075】
これにより、長尺材100の厚さを用いることにより、ロール成形部品101の平面度を更に精度良く成形できる。
【0076】
本実施形態のロール成形機1は、以下の特徴13を有する。即ち、制御装置41は、材料強度と、ロール成形部品101のうち予め決定された代表面の平面度と、ロール間の隙間と、の関係を示す関係式に対して、推定した材料強度、及び、平面度の目標値を入力値として隙間を特定し、当該隙間に基づいてアクチュエータ24を制御する。以上が特徴13である。
【0077】
これにより、簡単な処理でロール間の隙間を特定できる。
【0078】
本実施形態のロール成形機1において、代表面は、ロール成形部品101のうち、搬送経路10に垂直な方向で見たときに最大長さを有する部位の表面であって、当該部位の厚み方向に垂直な平面である。制御装置41は、材料強度と、代表面の平面度の目標値と、に基づいて、アクチュエータ24を制御する。以上が特徴14である。
【0079】
これにより、ロール成形部品101の浮上りに最も影響する面を代表面として、アクチュエータ24を制御することができる。そのため、ロール成形部品101の浮上りを所望の範囲に抑えることができる。
【0080】
上述した特徴1から特徴14は矛盾が生じない限り、適宜組み合わせることができる。例えば、特徴3には、特徴1,2の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴4には、特徴1~3の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴5には、特徴1~4の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴6には、特徴1~5の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴7には、特徴1~6の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴8には、特徴1~7の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴9には、特徴1~8の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴10には、特徴1~9の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴11には、特徴1~10の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴12には、特徴1~11の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴13には、特徴1~12の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴14には、特徴1~13の少なくとも1つを組み合わせることができる。
【0081】
以上に本出願の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0082】
上記実施形態の曲げ加工機12は一例であり、各ロールの個数が上記実施形態とは異なっていてもよい。曲げ加工機12は、第1支点ロール21b、第2支点ロール22a、及び曲げロール23bを最低限備えていればよく、他のロールを省略してもよい。この場合、ロール間の隙間が存在しなくなるので、
図6のステップS106からS110の処理を省略することもできる。
【0083】
また、第1支点ロール部21を構成するロールは1つ又は2つに限られず、3つ以上であってもよい。同様に、第2支点ロール部22又は曲げロール部23を構成するロールは、それぞれ1つ又は2つに限られず、3つ以上であってもよい。第1支点ロール部21等を構成するロールが2つ以上である場合、これらのロールは長尺材100の厚さ方向の両側に配置される。言い換えれば、これらのロールは、長尺材100を挟み込むように配置される。また、第1支点ロール部21又は第2支点ロール部22を構成するロールが3つ以上の場合、
図6のステップS106からS110の処理を省略することもできる。ただし、第1支点ロール部21又は第2支点ロール部22が一対のロールで構成されている場合は、曲げロール部23を構成するロールの個数に関係なく、
図6のステップS106からS110の処理を行うことが好ましい。
【0084】
また、
図11に示すように、曲げロール部23が、3つの曲げロール23a1,23a2,23bで構成されていてもよい。2つの曲げロール23a1,23a2が長尺材100の厚さ方向の一側に配置され、1つの曲げロール23bが長尺材100の厚さ方向の他側に配置される。この場合、以下に示すように、曲げロール部23を旋回させるアクチュエータ25を省略しても、曲げロール部23の位置を適切に調整できる。具体的には、3つの曲げロール23a1,23a2,23bの位置関係は一定である。また、曲げロール23bに対して、曲げロール23a1,23a2は旋回可能に取り付けられている。
図11の鎖線に示すように曲げロール部23を移動させた状態で長尺材100を供給すると、長尺材100は、3つの曲げロール23a1,23a2,23bに接触するように変形させられる。言い換えれば、長尺材100の曲率に応じて、曲げロール部23は、アクチュエータの動力なしで自然に旋回する。従って、曲げロール23bを移動させるアクチュエータさえあれば、曲げロール部23を旋回させるアクチュエータは不要である。曲げロール部23の旋回軸の位置は特に限定されないが、例えば、曲げロール23a1,23a2の中心を結ぶ線分L1の中点から引いた垂線L2と、長尺材100の厚さ方向の中心と、の交点P1であることが好ましい。ただし、曲げロール部23の旋回軸の位置は、他の位置、例えば曲げロール23bの中心であってもよい。
【0085】
上記実施形態では、第1支点ロール部21、第2支点ロール部22、及び曲げロール部23の全てについてロール間の隙間を変更する処理を行うが、何れか1つ又は2つのロール部に対する処理を省略してもよい。また、平面度に最も影響を及ぼすと考えられる第2支点ロール部22については、少なくともロール間の隙間を変更することが好ましい。
【0086】
上記実施形態で示したフローチャートは一例であり、一部の処理を省略したり、一部の処理の内容を変更したり、新たな処理を追加したりしてもよい。例えば、第1補正タイミングと第2補正タイミングが同一である場合、ステップS106からS109の処理を省略できる。また、ロール成形部品101の形状又は要求される精度によっては、第1補正と第2補正の何れか一方を省略してもよい。
【0087】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するように構成又はプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、又は手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラム又は構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、又はユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【符号の説明】
【0088】
1 ロール成形機
10 搬送経路
12 曲げ加工機
21 第1支点ロール部
21a,21b 第1支点ロール
22 第2支点ロール部
22a,22b 第2支点ロール
23 曲げロール部
23a,23b 曲げロール
41 制御装置
42 温度センサ
100 長尺材
101 ロール成形部品