(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002157
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】車両用スライドドア構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/06 20060101AFI20231228BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20231228BHJP
E05B 79/20 20140101ALI20231228BHJP
【FI】
B60J5/06 A
B60J5/00 M
E05B79/20
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101194
(22)【出願日】2022-06-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】江藤 寛人
(72)【発明者】
【氏名】石井 優貴
(72)【発明者】
【氏名】永田 慎
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ43
2E250LL01
2E250QQ08
(57)【要約】
【課題】クリップ等、位置規制部品の部品点数を減少させることができる車両用スライドドア構造を提供する。
【解決手段】ドアハンドル6に一端8aを、ドアラッチ装置7aに他端8bを、それぞれ接続するケーブル8を備える。モジュールパネル5の後部5bには、車幅方向外側に膨出する膨出部15が設けられている。膨出部15の車幅方向内側には、ドア開閉装置4が組付けられている。そして、ケーブル8は、インナパネル2とモジュールパネル5との合わせ部19を通過して取付開口部3からモジュールパネル5の車幅方向外側に導出されて、膨出部15の車両後方側面15aに沿うように配策される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に貫通する取付開口部を有するインナパネルと、
前記取付開口部に取付けられて、ドア開閉装置が組付けられるモジュールパネルと、
前記インナパネル若しくは前記モジュールパネルの車幅方向内側で車両前方かつ上部に配置されたドアハンドルと、
前記インナパネルの車幅方向外側で前記ドアハンドルの下方に取付けられたドアラッチ装置と、
前記ドアハンドルに一端を、前記ドアラッチ装置に他端を、それぞれ接続するケーブルと、
を備える車両用スライドドア構造であって、
前記モジュールパネルの後部には、車幅方向外側に膨出する膨出部が設けられ、
前記膨出部の車幅方向内側には、前記ドア開閉装置が組付けられ、
前記ケーブルは、前記インナパネルと前記モジュールパネルとの合わせ部を通過して前記取付開口部から前記モジュールパネルの車幅方向外側に導出されて、前記膨出部の前記車両後方側面に沿うように配策される、ことを特徴とする車両用スライドドア構造。
【請求項2】
前記取付開口部は、前記インナパネルの側面視で前記車両前方かつ上方から後方かつ下方に斜め方向に延びるように開口形成されるとともに、
前記ドア開閉装置は、前記モジュールパネルの後部かつ下部に組付けられ、
前記ケーブルは、前記膨出部の車両後方かつ下方を通って前方に折返した、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用スライドドア構造。
【請求項3】
前記モジュールパネルは、前記膨出部の後方に、車幅方向外側に膨出する他の膨出部を備え、
前記ケーブルは、前記膨出部と前記他の膨出部との間に形成される凹状の溝部を通って配策されている、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用スライドドア構造。
【請求項4】
前記モジュールパネルは、前記膨出部の車幅方向の外側面から突出する突出部を有し、
前記ケーブルは、前記突出部の後面に沿って配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用スライドドア構造。
【請求項5】
前記膨出部の車両後方側面は、車両後方に向けて凸となるように湾曲して形成されている、ことを特徴とする、請求項1に記載の車両用スライドドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用スライドドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用スライドドアのケーブル配策構造は、孔を有するドアインナパネルと、孔を通りドアインナパネルの車内側から車外側にわたって配索される操作ケーブルと、が備えられている(例えば特許文献1等参照)。ドアインナパネルの車内側または車外側の一方側で孔の範囲内には、操作ケーブルを支持する樹脂サッシュが備えられている。また、樹脂サッシュ等には、別途形成されたU字状のクリップ(クランプ部材)が固定されている。そして、操作ケーブルは、クリップに係止されて操作ケーブルの動きが規制されている(例えば特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両用スライドドア構造は、ドア内部に配置された他の部品と接触しない経路上に操作ケーブルを配策する必要がある。このため、他の部品を回避するように所望の円弧形状に湾曲させて操作ケーブルがクリップにて固定されている。
このように配策されたケーブルに急角度で屈曲する部分が存在すると操作の際のケーブルの動きが悪化する。このため、従来の車両用スライドドア構造では、複数のクリップを用いて、ある程度弛みを持たせた状態でケーブルを固定している。
【0005】
しかしながらクリップの数量が増大すると、製造コストが増大するとともに、組付け作業性が低下してしまう。
したがって、ケーブルを所望の形状となるように配策しつつ、クリップ等の位置規制部品が増大しないようにするためには、更なる改良の余地があった。
この発明は、クリップ等、位置規制部品を減少させることができる、車両用スライドドア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の車両用スライドドア構造は、車幅方向に貫通する取付開口部を有するインナパネルと、インナパネルの取付開口部に取付けられて、ドア開閉装置が組付けられるモジュールパネルと、を備える。また、車両用スライドドア構造は、インナパネル若しくはモジュールパネルの車幅方向内側で車両前方かつ上部に配置されたドアハンドルと、インナパネルの車幅方向外側でドアハンドルの下方に取付けられたドアラッチ装置と、を備える。そして、車両用スライドドア構造は、ドアハンドルに一端を、ドアラッチ装置に他端を、それぞれ接続するケーブルを備える。
モジュールパネルの車両前後方向で後部には、ドア開閉装置が車幅方向内側に組付けられた部分を車幅方向外側に膨出する膨出部が設けられている。膨出部の車幅方向内側には、ドア開閉装置が組付けられている。そして、ケーブルは、インナパネルとモジュールパネルとの合わせ部を通過して取付開口部からモジュールパネルの車幅方向外側に導出されて、膨出部の車両後方側面に沿うように配策される、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、クリップ等、位置規制部品の部品点数を減少させることができる車両用スライドドア構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態の車両用スライドドア構造を用いた車両で、右側後部のスライドドアのうち外装部材を取り外した状態を示す右側面図である。
【
図2】スライドドア内にケーブルが配索されている様子を示し、
図1中II部付近の要部を拡大した側面図である。
【
図3】モジュールパネルに形成された凹部にケーブルが配索される様子を示す
図2中III-III線に沿った位置での断面図である。
【
図4】モジュールパネルの膨出部に形成された突出部と、配策されたケーブルとの関係を示す
図2中IV-IV線に沿った位置での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明が適用される実施形態の車両で、右側後部に位置するスライドドア1の内部の構成を外装部材が取り外されている状態で見た右側面図である。
【0010】
スライドドア1は、車幅方向に貫通する取付開口部3を有するインナパネル2と、取付開口部3に取付けられて、ドア開閉装置4が組付けられるモジュールパネル5と、を備える。
インナパネル2は、鋼板等で形成され、モジュールパネル5は、樹脂材等で形成されている。インナパネル2の車幅方向外側(車外側)には、アウタパネル10(
図3参照)が取付けられている。また、インナパネル2の車幅方向内側(車内側)には、モジュールパネル5を覆うように図示しない内装パネルが取付けられる。
【0011】
図1に示すようにインナパネル2は、縦長の略矩形状を呈しており、上部には図示しない窓ガラス用の窓開口部2aが形成されている。また、インナパネル2の窓開口部2aの下方には取付開口部3が形成されている。
取付開口部3は、インナパネル2の側面視で前後方向略中央に、車両前方かつ上方から後方かつ下方に斜め方向に延びるように開口形成されている。
【0012】
詳しくは、取付開口部3の周縁部は、主に、車両前方かつ上方から後方かつ下方に斜め方向に延びる仮想線L1を挟んで、上縁3aおよび下縁3bを有している。上縁3aおよび下縁3bは、上下方向へ一定の間隔を置いてほぼ平行に設けられている。
また、取付開口部3の周縁部は、これらの上縁3aおよび下縁3bの各前端部間を接続する前縁3cと、上縁3aおよび下縁3bの各後端部間を接続する後縁3dと、を有している。
【0013】
このうち、前縁3cは、スライドドア1の前縁部1aに対して上下方向へ沿うように延設されている。また、前縁3cの上端部および上縁3aの前端部は、上側コーナ部3eで接続されている。上側コーナ部3eは、窓開口部2aの下縁前側近傍に設けられている。
さらに、後縁3dは、スライドドア1の後縁部1bの形状に沿うように上下方向へ向けて延設されている。後縁3dの下端部と、下縁3bの後端部は、下側コーナ部3fで接続されている。
【0014】
取付開口部3の周縁部には、車幅方向内側から外側に向けてモジュールパネル5の外周縁が当接されてねじ止めにより固定される。すなわち、取付開口部3の周縁部には、ねじ孔(図示せず)が間隔を置いて複数形成されている。また、モジュールパネル5の外周縁には、これらのねじ孔に対応する位置に挿通孔が複数形成されている。
そして、モジュールパネル5は、取付開口部3の周縁部に取付られる際、各ねじ孔および挿通孔の位置を合わせた状態で車幅方向へそれぞれねじが挿通される。各ねじは、車幅方向反対側に位置するナットにそれぞれ螺合される。これにより取付開口部3の周縁部に車幅方向内側から当接されたモジュールパネル5の外周縁が固定される。
【0015】
また、スライドドア1は、ドアハンドル6を備えている。ドアハンドル6は、車幅方向で車室内側に内側ドアハンドル6bを有するとともに、車外側に外側ドアハンドル6aを有している。ドアハンドル6は、インナパネル2若しくはモジュールパネル5の車幅方向内側で車両前方かつ上部に配置され、取付開口部3の上側コーナ部3eに車幅方向で一部を重複させている。
【0016】
さらに、スライドドア1の前縁部1aには、上下方向に沿って上スティフナ7および下スティフナ7bが配置されている。このうち、上スティフナ7と車幅方向で重なる部分には、ドアラッチ装置7aが設けられている。ドアラッチ装置7aは、インナパネル2の車幅方向外側でドアハンドル6の下方に取付けられている。
実施形態の上スティフナ7の下方に設けられた下スティフナ7bは、車両前後方向へ延設されるサイドバーの前端部を接続して側面視略L字状の高剛性部を形成している。
【0017】
スライドドア1は、開閉機構の操作を行うケーブル8,9を有している。ケーブル8,9は、それぞれ可撓性を有していて、インナパネル2の車幅方向内側でそれぞれの一端8a,9aをドアハンドル6に接続している。また、ケーブル8の他端8bは、ドアラッチ装置7aに接続されている。さらに、ケーブル9の他端9bは、インナパネル2の外側を通過してドアローラ嵌合装置(図示せず)に接続されている。
そして、スライドドア1の開閉の際、ドアハンドル6にて内側ドアハンドル6bまたは外側ドアハンドル6aが操作される。これにより、ケーブル8,9を介してドアラッチ装置7aおよびドアローラ嵌合装置におけるドア開口周縁への係合状態を係合または係合解除とすることができる。
【0018】
さらに、実施形態では、
図2に示すように、各ケーブル8,9の周囲に、保護用のケーブルダクト12,14および13が設けられている。各ケーブルダクト12等は可撓性を有する部材で構成されていて、各ケーブル8,9の湾曲変形に追従して湾曲する。
【0019】
そして、
図3に示すようにモジュールパネル5のうち、膨出部15の車幅方向で内側15cには、ドア開閉装置4が組付けられている。
ドア開閉装置4は、モジュールパネル5の後部5bかつ下部に配置して、モータ等のスライド機構(図示せず)を有している。そして、スライド機構は、駆動によりスライドドア1をスライドさせて車両の側面に開口形成されている開口部を開閉する。
【0020】
また、スライドドア1のモジュールパネル5の後部5bには、ドア開閉装置4を配置している部分に対応して車幅方向外側に膨出する膨出部15が設けられている。
実施形態の膨出部15は、
図1に示す車両側面視で取付開口部3を構成する後縁3dの下端部と、下縁3bの後端部とが接続される下側コーナ部3f近傍に設けられている。膨出部15は、略長円形形状を呈していて車両後方に向かうに従って上方へ傾斜する仮想線L2(
図2参照)に長手方向を沿わせている。さらに、
図1に示す側面視で取付開口部3の周縁で外方へ膨らむ凸部に膨出部15の下部が合わせられる。
【0021】
そして、ドア開閉装置4は、
図3に示すように膨出部15の車幅方向内側に凹設された凹部に収容されている。膨出部15は、モジュールパネル5の凹部の反対側側面に外側パネル面5aから車幅方向外方に凸状に膨出する外側面15bを形成している。外側面15bは、外側に位置するアウタパネル10の内側面と略平行に離間して平坦状に形成されている。
【0022】
図2に示すように、膨出部15の車幅方向の外側面15bは、車幅方向外側へ突出する突出部20を一体に設けている。突出部20は、外側面15bと直交する平板状の後面21と、後面21の各端部からほぼ平行に延設される一対の平板状の側面22,22と、を備えている。
このうち、後面21は、膨出部15の車両後方側面15aの湾曲形状に沿って円弧状に形成されている。
また、各側面22は、後面21とほぼ同じ高さ寸法で(
図4参照)、後面21の両端とほぼ直交して車両前方へ向けて一体となるように配置されている。そして、突出部20は、
図2に示すように側面視で略C字状に形成されている。
【0023】
さらに実施形態のケーブル8,9は、インナパネル2とモジュールパネル5との間の合わせ部19を通過して取付開口部3からモジュールパネル5の車幅方向外側に導出される(
図1参照)。
本実施形態の合わせ部19は、取付開口部3の上縁3aおよび下縁3bの接続部分近傍に車幅方向へ所定寸法で離間形成される隙間を有している。隙間は、取付開口部3の周縁とモジュールパネル5の周縁との間に設けられて、ケーブル8,9を挿通可能としている。
【0024】
図2に示すように、ケーブル8,9は、合わせ部19の隙間から上下方向で下方に導出される。導出されたケーブル8,9は、膨出部15の車両後方側面15aへ向けて延設される。また、膨出部15の車両後方側面15aは、後方へ向けて凸となるように湾曲して形成されている。そして、これらのケーブル8,9は、膨出部15の車両後方かつ下方を通って前方に折返される。
このため、
図1に示すようにケーブル8,9は、合わせ部19から導出されて、膨出部15の車両後方側面15aに沿うように湾曲しながら膨出部15の車両後方かつ下方を通って前方に折返される。
【0025】
実施形態のケーブル8は、膨出部15とドアラッチ装置7aとの中間位置で、取付開口部3の下縁3bと重なる部分に一つのクリップ部材30が用いられて、インナパネル2に固定されている。ケーブル8は、クリップ部材30で固定された位置からさらに前方へ延設された他端8bをドアラッチ装置7aに接続している。
【0026】
また、実施形態のケーブル9は、ドアハンドル6から取付開口部3の上縁3aに沿って直線状に延設されて合わせ部19から導出されて、膨出部15の車両後方側面15aに沿うように湾曲して折返される。折返されたケーブル9は、スライドドア1の前部下方へ向けて直線状に配策される。そして、ケーブル9の他端9bは、ドア下縁近傍で図示しないドアローラ嵌合装置に接続されている。
【0027】
さらに、本実施形態のモジュールパネル5は、
図2に示すように膨出部15の上部で後方には、車幅方向外側に膨出する他の膨出部17を備えている。
図3に示すように他の膨出部17の外側端17aは、膨出部15の外側の外側面15bの車幅方向外側の位置と同等の位置まで外方へ向けて膨出形成されている。
車両前後方向に所定寸法離間配置されたこれらの膨出部15と、他の膨出部17と、の間には、溝部18が凹状に形成される。溝部18は、アウタパネル10側が開放されていて溝部18に沿って車両上下方向へケーブル8,9が配策される。
【0028】
そして、実施形態では、
図1に示すように、ケーブル8,9が突出部20の後面21に沿って所望の湾曲形状で配策される。突出部20は膨出部15の車幅方向の外側面15bから突出されている。このため、ケーブル8,9は、車両後方側面15aで折り返される位置に至ると、膨出部15の後面21により位置が規制されて急激な屈曲変形を生じさせない。
詳しくは、
図1に示すように膨出部15の車幅方向の外側面15bから突出する突出部20は、インナパネル2よりも車幅方向で外側に配置される(
図4参照)。
合わせ部19の隙間から導出されたケーブル8,9は、インナパネル2の外側に配置されたドアラッチ装置7aに接続される。これにより膨出部15の車両後方側面15aに沿って前方へ折返されるケーブル8,9の一部が
図4に示すようにインナパネル2の外側面から車幅方向外方へ離間していても、後面21に沿ってケーブル8,9の位置が規制される。
このため、ケーブル8,9は、インナパネル2の外方に離間する部分を有していても所望の湾曲形状の経路を通るように配策される。
【0029】
さらに、
図1に示すようにケーブル8は、取付開口部3の下縁3bに沿って直線状に配策される。この際、取付開口部3の下縁3b側に設けられた一つのクリップ部材30によってケーブル8が係止されてインナパネル2に固定される。これにより、スライドドア1は、少ないクリップ部材30を用いてケーブル8を側面視で略U字状となるように確実に配策できる。
【0030】
また、ケーブル9は、取付開口部3の上縁3aに沿って直線状に配策されてから、膨出部15の車両後方側面15aに沿って湾曲されて折り返される。そして、ケーブル9は、車両前方でスライドドア1の下部に向けて直線状に延設され他端9bをドアローラ嵌合装置(図示せず)に接続する。これにより、ケーブル9は、側面視で略L字状となるように配策される。
【0031】
さらに、本実施形態のスライドドア1には、モジュールパネル5の外側パネル面5aに窓ガラス昇降装置11が備えられている。窓ガラス昇降装置11は、窓開口部2aにて図示しない窓ガラスを昇降させる。
窓ガラス昇降装置11は、膨出部15の車両前方かつ上方で開口部の上縁3aおよび下縁3b間の外側パネル面5aに配置されている。このため、窓ガラス昇降装置11は、開口周縁に配策されたケーブル8,9と干渉しない。
【0032】
また、
図1に示すように、窓ガラス昇降装置11は、ドア開閉装置4と同じモジュールパネル5でかつ仮想線L1に沿って隣接配置される。
図3に示すようにドア開閉装置4は、モジュールパネル5の膨出部15の内側15cに、窓ガラス昇降装置11は、外側パネル面5aの凹部にそれぞれ車幅方向で交互に備えられている。このため、車幅方向寸法の増大を抑制してスライドドア1内のスペース効率を向上させることができる。
【0033】
次に、実施形態の車両用スライドドア構造の作用効果について説明する。
実施形態の車両用スライドドア構造は、クリップ等、位置規制部品の部品点数を減少させることができる。
詳しくは、
図1に示すように、膨出部15の車両後方側面15aに沿わせて所望の湾曲形状となるように緩やかに撓ませながらケーブル8,9gを配策できる。このため、ケーブル8,9による操作性を損なうことなく、膨出部15によって車両前方方向へのケーブル8,9の移動を規制することができる。
したがって、車両用スライドドア構造では、クリップ等のケーブル位置を規制する位置規制部品の部品点数の増大を抑制して所望の経路にケーブル8,9を配策できる。
そして、クリップの数量が減少するため取付作業性が向上する。また、部品点数が減少するため製造コストを削減できる。
【0034】
さらに、実施形態の車両用スライドドア構造では、
図1に示すように、インナパネル2の取付開口部3の下縁3bに外側から一ヶ所、クリップ部材30を用いてケーブル8が固定されている。また、ケーブル8,9は、図示しない取付開口部3の上縁3aに沿って図示しないクリップ等により配置されている。このため、ケーブル8,9は、モジュールパネル5に固定されていなくても、膨出部15の車両後方側面15aに沿うように緩やかに折返されて湾曲した形状で配策される。
小型化により膨出部15を車外側に膨出させたモジュールパネル5は、ドア開閉装置4または窓ガラス昇降装置11を装着している。このためケーブル8,9を配策する空間スペースが限られる。実施形態のモジュールパネル5は小型化によりレイアウト上の制約が生じてもケーブル8,9を膨出部15の車両後方側面15aに迂回させて配策できる。
よって、クリップの個数を増やすことなく、モジュールパネル5の小型化を実現することができる。
【0035】
上述してきたように、本実施形態の車両用スライドドア構造は、車両用スライドドア構造は、車幅方向に貫通する取付開口部3を有するインナパネル2と、取付開口部3に取付けられて、ドア開閉装置4が組付けられるモジュールパネル5と、を備える。また、車両用スライドドア構造は、インナパネル2若しくはモジュールパネル5の車幅方向内側で車両前方かつ上部に配置されるドアハンドル6と、インナパネル2の車幅方向外側でドアハンドル6の下方に取付けられたドアラッチ装置7aと、を備える。そして、車両用スライドドア構造は、ドアハンドル6に一端8aを、ドアラッチ装置7aに他端8bを、接続するケーブル8を備える。
モジュールパネル5の後部5bには、車幅方向外側に膨出する膨出部15が設けられ、膨出部15の車幅方向内側には、ドア開閉装置4が組付けられている。ケーブル8は、インナパネル2とモジュールパネル5との合わせ部19を通過して取付開口部3からモジュールパネル5の車幅方向外側に導出される。そして、ケーブル8は、膨出部15の車両後方側面15aに沿うように配策される。
【0036】
このため、本実施形態のスライドドア1は、クリップ等、位置規制部品の部品点数を減少させることができる。
詳しくは、膨出部15の車両後方側面15aに沿うようにケーブル8,9が配策される。このため、スライドドア1は、モジュールパネル5から膨出形成された膨出部15の車両後方側面15aの湾曲形状を用いてケーブル8,9を所望の経路で配策できる。
したがって、クリップ部材30の数量を減少させて取付作業性を良好なものとすることができる。また、部品点数が減少するため、製造コストを削減できるともにメンテナンス作業性を向上させることができる。
【0037】
また、取付開口部3は、インナパネル2の側面視で車両前方かつ上方から後方かつ下方に斜め方向に延びるように開口形成される。ドア開閉装置4は、モジュールパネル5の後部かつ下部に組付けられ、ケーブル8,9は、膨出部15の車両後方かつ下方を通って前方に折返している。
このため、ケーブル8,9の長さが配策経路に沿って一定の長さとなる。
詳しくは、ドアハンドル6に一端8a,9aを接続したケーブル8,9が取付開口部3の上縁3aに沿って車両前方かつ上方から後方かつ下方に斜め方向に配策されている。そして、ケーブル8,9は、スライドドア1の下方に位置する膨出部15の車両後方側面15aで折り返されて、再び上縁3aと平行に形成された下縁3bに沿って前部へ向けて直線状に配策される。
従って、ケーブル8,9は、既定の配策経路に沿って屈曲変形する。よってドアハンドル6からドアラッチ装置7aまで所望の一定長さで配策することができる。
【0038】
そして、モジュールパネル5は、膨出部15の後方に、車幅方向外側に膨出する他の膨出部17を備え、ケーブル8,9は、膨出部15と他の膨出部17との間に形成される凹状の溝部18を通って配策されている。
【0039】
このため、溝部18内に配設されたケーブル8,9は、移動が規制される。溝部18は、モジュールパネル5の車幅方向の外側面から膨出して一体に形成された膨出部15および他の膨出部17間に形成されている。このため、別途クリップ等を設ける必要がなくなり、位置規制部材の点数を減少させることができる。
【0040】
さらに、モジュールパネル5は、膨出部15の車幅方向の外側面15bから突出する突出部20を有し、ケーブル8,9は、突出部20の後面21に沿って配置されている。
詳しくは、実施形態では、ケーブル8,9が突出部20の後面21に沿って所望の湾曲形状で配策される。ケーブル8,9は、車幅方向で外側面15bの位置まで外方に撓んで配策されていても、外側面15bから突設された突出部20の後面21により移動が規制される。
さらに実施形態の突出部20の後面21は、ケーブル8,9配策側とは、反対側から側面22,22により支持されて
図2に示す側面視で略C字状に形成されている。このため、単板状のリブなど側面22,22がないものと比較して後面21の倒れ方向(車両前方方向)への変形が抑制される。
【0041】
また、膨出部15の車両後方側面15aは、車両後方に向けて凸となるように湾曲して形成されている。ケーブル8,9は、膨出部15の湾曲する車両後方側面15aに沿って配設される。
このため、スライドドア1では、ケーブル8,9が車両後方側面15aの湾曲形状に沿って円弧状に配策されて急角度で屈曲することなく緩やかに撓んで湾曲する。したがって、ケーブル8,9は、クリップ等、位置規制部品の部品点数を減少させつつ、操作時の動きを円滑とすることができ、さらに操作性を向上させることができる、といった実用上有益な作用効果を発揮する。
【0042】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、若しくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。上記実施形態に対して可能な変形は、たとえば、以下のようなものである。
【0043】
本実施形態では、二本のケーブル8,9を膨出部15に沿わせて配策しているが特にこれに限らない。例えば、一本のケーブル8または9、或いは三本以上の複数本のケーブル8等を配策してもよい。すなわち、ケーブルは、インナパネル2とモジュールパネル5との合わせ部19を通過して取付開口部3からモジュールパネル5の車幅方向外側に導出されるものであればよい。そして、ケーブルは、膨出部15の車両後方側面15aに沿うように配策されるものであればよい。このように、ケーブルの種類、太さや長さ等の形状、数量および材質が本実施形態に限定されるものではない。
【0044】
また、本実施形態では、膨出部15と他の膨出部17との間に凹状の溝部18を形成してケーブル8,9を配策している。しかしながら特にこれに限らない。例えば、他の膨出部17を複数形成してもよい。また、溝部18の数量も複数形成して、各溝部にそれぞれケーブル8.9を配策してもよい。すなわち、モジュールパネル5から車幅方向外側に膨出することにより膨出部および溝部を形成するものであればよく、形状、数量等が本実施形態の膨出部15あるいは他の膨出部17に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0045】
1 スライドドア
2 インナパネル
3 取付開口部
4 ドア開閉装置
5 モジュールパネル
6 ドアハンドル(6a 外側ドアハンドル、6b 内側ドアハンドル)
7a ドアラッチ装置
8,9 ケーブル
15 膨出部
15a 車両後方側面
19 合わせ部
【手続補正書】
【提出日】2023-10-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に貫通する取付開口部を有するインナパネルと、
前記取付開口部に取付けられて、ドア開閉装置が組付けられるモジュールパネルと、
前記インナパネル若しくは前記モジュールパネルの車幅方向内側で車両前方かつ上部に配置されたドアハンドルと、
前記ドアハンドルに一端を接続するケーブルと、
を備える車両用スライドドア構造であって、
前記モジュールパネルの後部には、車幅方向外側に膨出する膨出部が設けられ、
前記膨出部の車幅方向内側には、前記ドア開閉装置が組付けられ、
前記ケーブルは、前記インナパネルと前記モジュールパネルとの合わせ部を通過して前記取付開口部から前記モジュールパネルの車幅方向外側に導出されて、前記膨出部の車両後方側面に沿うように配策される、ことを特徴とする車両用スライドドア構造。
【請求項2】
前記インナパネルの車幅方向外側で前記ドアハンドルの下方に取付けられたドアラッチ装置を備え、
前記ケーブルは、湾曲しながら前記膨出部の車両後方かつ下方を通って前方に折返されて、前方へ延設された他端を、前記ドアラッチ装置に接続している、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用スライドドア構造。
【請求項3】
前記取付開口部は、前記インナパネルの側面視で前記車両前方かつ上方から後方かつ下方に斜め方向に延びるように開口形成されるとともに、
前記ドア開閉装置は、前記モジュールパネルの後部かつ下部に組付けられ、
前記ケーブルは、前記膨出部の車両後方かつ下方を通って前方に折返した、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用スライドドア構造。
【請求項4】
前記モジュールパネルは、前記膨出部の後方に、車幅方向外側に膨出する他の膨出部を備え、
前記ケーブルは、前記膨出部と前記他の膨出部との間に形成される凹状の溝部を通って配策されている、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用スライドドア構造。
【請求項5】
前記モジュールパネルは、前記膨出部の車幅方向の外側面から突出する突出部を有し、
前記ケーブルは、前記突出部の後面に沿って配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用スライドドア構造。
【請求項6】
前記膨出部の車両後方側面は、車両後方に向けて凸となるように湾曲して形成されている、ことを特徴とする請求項1~3または請求項5のうちいずれか一項に記載の車両用スライドドア構造。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の車両用スライドドア構造は、車幅方向に貫通する取付開口部を有するインナパネルと、取付開口部に取付けられて、ドア開閉装置が組付けられるモジュールパネルと、インナパネル若しくはモジュールパネルの車幅方向内側で車両前方かつ上部に配置されたドアハンドルと、ドアハンドルに一端を接続するケーブルと、を備える。モジュールパネルの後部には、車幅方向外側に膨出する膨出部が設けられ、膨出部の車幅方向内側には、ドア開閉装置が組付けられ、ケーブルは、インナパネルとモジュールパネルとの合わせ部を通過して取付開口部からモジュールパネルの車幅方向外側に導出されて、膨出部の車両後方側面に沿うように配策される、ことを特徴としている。