(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021575
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】回転抵抗発生装置
(51)【国際特許分類】
F16D 63/00 20060101AFI20240208BHJP
F16D 37/02 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F16D63/00 P
F16D37/02 P
F16D37/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124494
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000516
【氏名又は名称】曙ブレーキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成澤 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】野口 哲弥
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AB27
3J058BA01
3J058BA67
3J058CC13
3J058DC01
3J058DC14
3J058DC16
3J058DC22
(57)【要約】
【課題】回転抵抗の発生効率の向上を図れるとともに、径方向幅寸法の小型化を図れる、回転抵抗発生装置を実現する。
【解決手段】回転抵抗発生装置1を、電磁コイル2と、静止部材3と、回転部材4と、MR流体5とを含んで構成する。静止部材3を、電磁コイル2の中心軸Oを含む仮想平面で切断した断面において、電磁コイル2の周囲に囲むように配置し、かつ、電磁コイル2の周囲の少なくとも1箇所に不連続部9を有するものとする。回転部材4に備えられた挿入筒部22を、不連続部9に挿入配置する。MR流体5を、不連続部9に備えられた円筒面状の第1静止側周面13と挿入筒部22に備えられた第1回転側周面25との間に形成され、かつ、電磁コイル2の側面に隣接して配置された第1環状空間27に充填する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環形状を有する電磁コイルと、
前記電磁コイルの中心軸を含む仮想平面で切断した断面において、前記電磁コイルの周囲を囲むように配置され、かつ、前記電磁コイルの周囲の少なくとも1箇所に不連続部を有する、静止部材と、
前記不連続部に挿入配置される挿入部を有し、前記静止部材に対して相対回転する、回転部材と、
前記電磁コイルにより印加される磁場により見かけ上の粘度が変化する、MR流体と、
を備え、
前記不連続部は、円筒面状の静止側周面を有しており、
前記挿入部は、前記静止側周面に対し径方向に対向する円筒面状の回転側周面を有しており、
前記MR流体は、前記静止側周面と前記回転側周面との間に形成された環状空間に充填されており、
前記環状空間は、前記電磁コイルの側面に隣接して配置されている、
回転抵抗発生装置。
【請求項2】
前記環状空間は、軸方向に関して前記電磁コイルと重なる位置に配置されている、請求項1に記載した回転抵抗発生装置。
【請求項3】
前記静止部材と前記回転部材との間には、前記環状空間を密閉するためのシール装置が1乃至複数備えられている、請求項1に記載した回転抵抗発生装置。
【請求項4】
前記シール装置は、径方向に関して前記環状空間と重なる位置に配置されている、請求項3に記載した回転抵抗発生装置。
【請求項5】
前記シール装置は、前記環状空間よりも前記電磁コイルから軸方向に離隔した位置に配置されている、請求項3に記載した回転抵抗発生装置。
【請求項6】
前記静止部材は、前記電磁コイルの径方向外側に配置された外径側静止部材と、前記電磁コイルの径方向内側に配置された内径側静止部材とからなり、
前記外径側静止部材と前記内径側静止部材との間に、前記不連続部が備えられている、
請求項1に記載した回転抵抗発生装置。
【請求項7】
前記外径側静止部材と前記回転部材との間に、前記環状空間を密閉するための外径側シール装置が備えられており、
前記内径側静止部材と前記回転部材との間に、前記環状空間を密閉するための内径側シール装置が備えられている、
請求項6に記載した回転抵抗発生装置。
【請求項8】
前記不連続部は、全体が円筒形状を有し、径方向に対向する2つの前記静止側周面を有しており、
前記挿入部は、全体が円筒形状を有し、外周面及び内周面のそれぞれに前記回転側周面を有しており、
前記環状空間が、径方向に関して前記挿入部を挟んで両側に備えられている、
請求項1に記載した回転抵抗発生装置。
【請求項9】
2つの前記環状空間は、互いに連通している、請求項8に記載した回転抵抗発生装置。
【請求項10】
前記静止部材は、前記環状空間と外部空間とを連通する連通孔を有しており、
前記連通孔の前記外部空間側の開口部は、ベローズで覆われている、
請求項1に記載した回転抵抗発生装置。
【請求項11】
前記ベローズは、前記連通孔の径方向外側の開口部を覆っている、
請求項10に記載した回転抵抗発生装置。
【請求項12】
前記静止部材に対して前記回転部材を回転自在に支持する転がり軸受をさらに備える、
請求項1に記載した回転抵抗発生装置。
【請求項13】
前記静止部材は、前記仮想平面で切断した断面において、前記電磁コイルの周囲の2箇所に前記不連続部を有しており、
前記回転部材は、2つ備えられており、
前記環状空間は、軸方向に関して前記電磁コイルを挟んで両側に配置されている、
請求項1に記載した回転抵抗発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転抵抗発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機械装置には、回転部材に対して回転抵抗を付与するために、回転抵抗発生装置が組み込まれている。
【0003】
特開2017-116013号公報(特許文献1)などには、MR流体を利用した回転抵抗発生装置が開示されている。
【0004】
特開2017-116013号公報に記載された回転抵抗発生装置は、電磁コイルの径方向内側に、回転部材に固定された回転ディスクと静止部材に固定された静止ディスクとを、電磁コイルの軸方向に交互に配置している。そして、回転ディスクと静止ディスクとの間のディスク隙間に、MR流体を充填している。
【0005】
回転部材に回転抵抗を付与する際には、電磁コイルに通電し、ヨークとして機能する静止部材に磁路を形成することで、MR流体に磁場を印加する。これにより、MR流体の見かけ上の粘度を変化させ、回転部材に回転抵抗を付与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2017-116013号公報に記載された回転抵抗発生装置は、電磁コイルの径方向内側に、回転ディスク及び静止ディスクを配置しており、電磁コイルと、回転ディスク及び静止ディスクとが、電磁コイルの径方向に重なるように配置されている。このため、回転抵抗発生装置の径方向幅寸法が嵩む原因となる。
【0008】
そこで、回転抵抗発生装置の径方向幅寸法を小さくするために、電磁コイルと、回転ディスク及び静止ディスクとを、電磁コイルの軸方向に並べて配置することが考えられる。ただし、この場合には、回転ディスク及び静止ディスクのそれぞれに直交する方向ではなく、回転ディスク及び静止ディスクのそれぞれの面と平行な方向に、磁路が形成される。このため、所定の回転抵抗を発生させるのに必要な消費電力が増大し、回転抵抗の発生効率が低くなる。
【0009】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、回転抵抗の発生効率の向上を図れるとともに、径方向幅寸法の小型化を図れる、回転抵抗発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様にかかる回転抵抗発生装置は、電磁コイルと、静止部材と、回転部材と、MR流体と、を備える。
前記電磁コイルは、円環形状を有している。
前記静止部材は、前記電磁コイルの中心軸を含む仮想平面で切断した断面において、前記電磁コイルの周囲を囲むように配置され、かつ、前記電磁コイルの周囲の少なくとも1箇所に不連続部を有している。
前記回転部材は、前記不連続部に挿入配置される挿入部を有し、前記静止部材に対して相対回転する。
前記MR流体は、前記電磁コイルにより印加される磁場により、見かけ上の粘度、すなわち、降伏せん断力が変化する。
前記不連続部は、円筒面状の静止側周面を有している。
前記挿入部は、前記静止側周面に対し径方向に対向する円筒面状の回転側周面を有している。
前記MR流体は、前記静止側周面と前記回転側周面との間に形成された環状空間に充填されている。
前記環状空間は、前記電磁コイルの側面に隣接して配置されている。
なお、前記環状空間が、前記電磁コイルの側面に隣接して配置されるとは、前記環状空間が、軸方向に関して前記電磁コイルと重なる位置に配置される場合に限らず、前記電磁コイルの側面に対して径方向内側又は径方向外側にずれて配置される場合を含む。
【0011】
本開示の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記環状空間を、軸方向に関して前記電磁コイルと重なる位置に配置することができる。
【0012】
本開示の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記回転部材を、全体を一体に構成することができる。あるいは、前記回転部材を、互いに別体に構成された回転部材本体と前記挿入部とを含んで構成することができる。
【0013】
本開示の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記静止部材と前記回転部材との間に、前記環状空間を密閉するためのシール装置を1乃至複数備えることができる。
この場合には、前記シール装置を、径方向に関して前記環状空間と重なる位置に配置することができる。
又は、前記シール装置を、前記環状空間よりも前記電磁コイルから軸方向に離隔した位置に配置することもできる。
【0014】
本開示の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記静止部材を、複数の部材から構成することができ、該複数の部材同士の間に、前記不連続部を備えることができる。
【0015】
本開示の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記静止部材を、前記電磁コイルの径方向外側に配置された外径側静止部材と、前記電磁コイルの径方向内側に配置された内径側静止部材とから構成し、前記外径側静止部材と前記内径側静止部材との間に、前記不連続部を備えることができる。
この場合には、前記外径側静止部材と前記回転部材との間に、前記環状空間を密閉するための外径側シール装置を備えることができ、前記内径側静止部材と前記回転部材との間に、前記環状空間を密閉するための内径側シール装置を備えることができる。
【0016】
本開示の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記不連続部を、全体が円筒形状を有し、径方向に対向する2つの前記静止側周面を有するものとし、前記挿入部を、全体が円筒形状を有し、外周面及び内周面のそれぞれに前記回転側周面を有するものとすることができる。そして、前記環状空間を、径方向に関して前記挿入部を挟んで両側に備えることができる。
この場合には、2つの前記環状空間を、互いに連通させることができる。
【0017】
本開示の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記静止部材を、前記環状空間と外部空間とを連通する連通孔を有するものとすることができる。そして、前記連通孔の前記外部空間側の開口部を、ベローズで覆うことができる。
この場合、前記ベローズは、前記連通孔の径方向外側の開口部を覆うことができる。
又は、前記ベローズは、前記連通孔の軸方向の開口部を覆うこともできる。
【0018】
本開示の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記静止部材に対して前記回転部材を回転自在に支持する転がり軸受をさらに備えることができる。
【0019】
本開示の一態様にかかる回転抵抗発生装置は、前記静止部材を、前記仮想平面で切断した断面において、前記電磁コイルの周囲の2箇所に前記不連続部を有するものとし、前記回転部材を、2つ備えることができる。そして、前記環状空間を、軸方向に関して前記電磁コイルを挟んで両側に配置することができる。
【0020】
本開示の一態様にかかる回転抵抗発生装置では、前記回転部材を、互いに同軸に配置された複数の円筒形状を有する前記挿入部を備えたものとすることができる。
この場合には、前記静止部材を、径方向に隣り合う前記挿入部同士の間に配置される隔壁筒を備えたものとすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示の回転抵抗発生装置によれば、回転抵抗の発生効率の向上を図れるとともに、径方向幅寸法の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施の形態の第1例にかかる回転抵抗発生装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態の第1例にかかる回転抵抗発生装置を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態の第1例にかかる回転抵抗発生装置を一部を省略して示す、断面斜視図である。
【
図5】
図5は、実施の形態の第1例にかかる回転抵抗発生装置を示す、分解斜視図である。
【
図6】
図6は、実施の形態の第1例にかかる回転抵抗発生装置を示す、断面分解斜視図である。
【
図7】
図7は、実施の形態の第2例を示す、
図2に相当する図である。
【
図8】
図8は、実施の形態の第3例を示す、
図2に相当する図である。
【
図9】
図9は、実施の形態の第3例を示す、
図4に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[実施の形態の第1例]
実施の形態の第1例について、
図1~
図6を用いて説明する。
【0024】
本例の回転抵抗発生装置1は、電磁コイル2と、静止部材3と、回転部材4と、MR流体5と備えている。
【0025】
本例の回転抵抗発生装置1は、磁場を加えると液体状から半固定状に変化するといったMR流体5の特性を利用して、回転部材4に回転抵抗を付与する非摩擦式の抵抗発生装置である。本例の回転抵抗発生装置1は、例えば、MRダンパ又はMRブレーキとして利用できる。
【0026】
回転抵抗発生装置1は、全体が略円筒形状を有しており、径方向中央部に軸方向に貫通した挿通孔6を有する。回転抵抗発生装置1の径方向幅寸法は、軸方向全長にわたりほぼ一定である。挿通孔6の内側には、例えば、往復移動可能なロッドなどを配置することができる。なお、挿通孔6は、省略することもできる。
本明細書及び特許請求の範囲で、「軸方向」、「周方向」及び「径方向」とは、特に断らない限り、円環状の電磁コイル2の軸方向、周方向及び径方向をいう。
【0027】
〈電磁コイル〉
電磁コイル2は、MR流体5に磁場を印加するための磁場発生装置であり、円環形状を有している。電磁コイル2は、電流が流れると、
図2に一部を実線αで示したような磁気回路(磁場)を形成する。つまり、電磁コイル2の軸方向一方側(
図2の右側)及び軸方向他方側(
図2の左側)に存在する部分には、径方向(放射方向)を向いた磁路を形成し、電磁コイル2の径方向外側及び径方向内側に存在する部分には、軸方向を向いた磁路を形成する。
【0028】
本例では、電磁コイル2は、導線からなるコイル本体7と、該コイル本体7を支持したコイルボビン8とから構成されている。コイルボビン8は、全体が円環状に構成されており、略U字形の断面形状を有する。
【0029】
〈静止部材〉
静止部材3は、全体が略円筒形状を有しており、使用時にも回転しない。静止部材3は、電磁コイル2と同軸に配置されている。静止部材3は、
図2に示すように、電磁コイル2の中心軸Oを含む仮想平面で切断した断面において、電磁コイル2の周囲を覆うように配置され、ヨークとして機能する。このため、静止部材3は、電磁コイル2の外周面、内周面、軸方向一方側の側面、及び軸方向他方側の側面のそれぞれを覆っている。
【0030】
静止部材3は、電磁コイル2の中心軸Oを含む仮想平面で切断した断面において、電磁コイル2の周囲の1箇所に不連続部9を有している。具体的には、静止部材3は、前記断面において、電磁コイル2の軸方向一方側の側面に隣接した部分に、不連続部9を有している。
【0031】
不連続部9は、径方向幅寸法に比べて軸方向寸法の大きい円筒状空間であり、電磁コイル2と同軸に配置されている。不連続部9の径方向幅寸法は、軸方向及び円周方向にわたり一定であり、電磁コイル2の径方向幅寸法よりも小さい。具体的には、不連続部9の径方向幅寸法は、電磁コイル2の径方向幅寸法の1/4倍~1倍程度である。不連続部9の軸方向寸法は、電磁コイル2の軸方向寸法の1/2倍~3/2倍程度であり、図示の例では、電磁コイル2の軸方向寸法とほぼ同じである。
【0032】
本例では、静止部材3は、複数の部材から構成されている。具体的には、静止部材3は、外径側静止部材10と内径側静止部材11とから構成されている。外径側静止部材10及び内径側静止部材11のそれぞれは、例えば鉄(純鉄)などの磁性金属製、好ましくは強磁性材製である。
【0033】
《外径側静止部材》
外径側静止部材10は、略円筒形状を有しており、電磁コイル2の径方向外側に配置されている。外径側静止部材10は、回転抵抗発生装置1の外周面の大部分を構成している。
【0034】
外径側静止部材10は、電磁コイル2の外周面を覆うとともに、電磁コイル2の軸方向一方側の側面のうちの径方向外側部から径方向中間部にわたる範囲を覆っている。別の言い方をすれば、外径側静止部材10は、電磁コイル2の軸方向一方側の側面のうちの径方向内側部は覆っていない。
【0035】
外径側静止部材10は、段付き形状の内周面を有している。外径側静止部材10は、内周面の軸方向中間部に、径方向内側に向けて張り出した内向フランジ部12を有する。
【0036】
内向フランジ部12の内周面は、軸方向にわたり内径が変化しない円筒面状の第1静止側周面13と、軸方向一方側に向かうほど内径が大きくなる静止側傾斜面14とを有している。
【0037】
本例では、内向フランジ部12の軸方向他方側の側面によって、電磁コイル2の軸方向一方側の側面を覆っている。また、内向フランジ部12の軸方向他方側の側面と電磁コイル2の軸方向一方側の側面との間には、Oリング15aを挟持している。
【0038】
外径側静止部材10は、軸方向両側の端部の円周方向複数箇所に、雌ねじ孔16を有している。雌ねじ孔16のそれぞれは、外径側静止部材10の軸方向端面に開口している。
【0039】
《内径側静止部材》
内径側静止部材11は、略円筒形状を有しており、電磁コイル2の径方向内側に配置されている。内径側静止部材11は、略L字形の断面形状を有しており、外径側静止部材10と同軸に配置されている。内径側静止部材11の内周面は、回転抵抗発生装置1の内周面の軸方向他方側の半部を構成している。
【0040】
内径側静止部材11は、電磁コイル2の内周面を覆うとともに、電磁コイル2の軸方向他方側の側面を覆っている。
【0041】
内径側静止部材11は、段付き形状の外周面を有している。内径側静止部材11は、外周面の軸方向一方側部に、軸方向にわたり外径が変化しない円筒面状の第2静止側周面17を有する。また、内径側静止部材11は、外周面の軸方向他方側部に、径方向外側に向けて張り出した外向フランジ部18を有する。
【0042】
本例では、外向フランジ部18の軸方向一方側の側面の径方向内側部によって、電磁コイル2の軸方向他方側の側面を覆っている。また、外向フランジ部18の軸方向一方側の側面と電磁コイル2の軸方向他方側の側面との間には、Oリング15bを挟持している。
【0043】
外向フランジ部18の軸方向一方側の側面の径方向外側部は、外径側静止部材10の軸方向他方側の端面に突き当てられている。外向フランジ部18は、円周方向の複数箇所に、軸方向に貫通した通孔19を有している。通孔19は、外径側静止部材10の軸方向他方側の端部に備えられた雌ねじ孔16と等ピッチで配置されている。
【0044】
図示の例では、通孔19を挿通した図示しないボルトを、外径側静止部材10の軸方向他方側の端面に開口した雌ねじ孔16に螺合することで、外径側静止部材10と内径側静止部材11とを、電磁コイル2を囲むように結合固定している。
【0045】
本例では、外径側静止部材10と内径側静止部材11とを結合固定した状態で、外径側静止部材10と内径側静止部材11との間に、不連続部9が形成される。具体的には、外径側静止部材10に備えられた内向フランジ部12の内周面と、内径側静止部材11のうちで電磁コイル2から軸方向一方側に突出した部分の外周面との間に、不連続部9が形成される。
【0046】
このため、不連続部9の径方向外側の周面は、内向フランジ部12の内周面に備えられた円筒面状の第1静止側周面13によって構成されており、不連続部9の径方向内側の周面は、内径側静止部材11の外周面に備えられた円筒面状の第2静止側周面17によって構成されている。したがって、不連続部9は、径方向に対向する2つの静止側周面である、第1静止側周面13及び第2静止側周面17を有する。
【0047】
内径側静止部材11は、軸方向一方側の端部に、静止側短筒部20を有する。静止側短筒部20の内径は、内径側静止部材11のうちで静止側短筒部20の軸方向他方側に隣接した部分の内径に比べて大きい。静止側短筒部20の外周面は、第2静止側周面17の軸方向一方側の端部を構成する。
【0048】
〈回転部材〉
回転部材4は、全体が略円筒形状を有しており、使用時に回転する。具体的には、回転部材4は、図示しない他の部材によって一方向又は両方向に回転させられる。これにより、回転部材4は、同軸に配置された静止部材3に対して相対回転する。回転部材4は、例えば鉄(純鉄)などの磁性金属製、好ましくは強磁性材製である。
【0049】
回転部材4は、外径側静止部材10の軸方向一方側の半部の径方向内側に配置され、かつ、内径側静止部材11の軸方向一方側に隣接配置されている。回転部材4の内周面は、回転抵抗発生装置1の内周面の軸方向一方側の半部を構成している。回転部材4の内径は、軸方向全長にわたり一定であり、内径側静止部材11の内径と等しい。
【0050】
回転部材4は、回転部材本体21と挿入筒部22と回転側短筒部23とを有している。図示の例では、回転部材本体21と挿入筒部22と回転側短筒部23とは、互いに一体に構成されているが、回転部材本体21と挿入筒部22と回転側短筒部23とを、別体に構成し、互いに結合することもできる。本例では、挿入筒部22が、特許請求の範囲に記載した挿入部に相当する。回転部材本体21と挿入筒部22と回転側短筒部23とを、別体に構成する場合には、挿入筒部22のみを強磁性材製とし、回転部材本体21及び回転側短筒部23を、非磁性材製とすることもできる。
【0051】
回転部材本体21は、略矩形の断面形状を有しており、全体が略円筒状に構成されている。回転部材本体21は、後述する転がり軸受34を介して、外径側静止部材10に対して回転自在に支持されている。
【0052】
回転部材本体21は、外周面の軸方向他方側の端部に、軸方向他方側に向かうほど外径が小さくなる回転側傾斜面24を有する。回転側傾斜面24は、外径側静止部材10の内周面に備えられた静止側傾斜面14と全周にわたり近接対向している。
【0053】
挿入筒部22は、薄肉円筒形状を有しており、回転部材本体21の軸方向他方側の側面の径方向外側の端部から軸方向他方側に向けて伸長している。挿入筒部22は、軸方向全長にわたり外径及び内径が一定である。挿入筒部22は、外周面に円筒面状の第1回転側周面25を有し、かつ、内周面に円筒面状の第2回転側周面26を有する。
【0054】
挿入筒部22の軸方向寸法は、不連続部9の軸方向寸法とほぼ同じであるか、不連続部9の軸方向寸法よりも少しだけ小さい。挿入筒部22の径方向幅寸法は、不連続部9の径方向幅寸法よりも少しだけ小さい。
【0055】
挿入筒部22は、不連続部9に挿入配置されている。具体的には、挿入筒部22は、不連続部9に対して軸方向一方側から軸方向に挿入されている。
【0056】
不連続部9に挿入筒部22を挿入配置した状態で、第1回転側周面25は、第1静止側周面13に対して微小隙間を介して全周にわたり近接対向し、かつ、第2回転側周面26は、第2静止側周面17に対して微小隙間を介して全周にわたり近接対向する。
【0057】
これにより、径方向に対向する第1静止側周面13と第1回転側周面25との間に、円筒状の微小隙間である第1環状空間27が形成され、かつ、径方向に対向する第2静止側周面17と第2回転側周面26との間に、円筒状の微小隙間である第2環状空間28が形成される。
【0058】
第1環状空間27及び第2環状空間28のそれぞれは、電磁コイル2の軸方向一方側の側面に隣接して配置されている。本例では、第1環状空間27及び第2環状空間28のそれぞれは、軸方向に関して電磁コイル2と重なるように配置されている。
【0059】
第1環状空間27及び第2環状空間28は、挿入筒部22を挟むようにして、挿入筒部22の径方向両側に配置される。このため、第1環状空間27と第2環状空間28とは、径方向に重なるように互いに同軸に配置されている。
【0060】
第1環状空間27及び第2環状空間28のそれぞれの径方向幅寸法は、挿入筒部22の径方向幅寸法よりも小さい。
【0061】
第1環状空間27と第2環状空間28とは、電磁コイル2の軸方向一方側の側面と挿入筒部22の軸方向他方側の端面との間に形成された連通部29を介して、互いに連通している。
【0062】
第1環状空間27と第2環状空間28と連通部29とは、電磁コイル2の中心軸Oを含む仮想平面で切断した断面において略コ字形に折れ曲がるようにつながっており、1つの収容空間30を構成している。
【0063】
回転側短筒部23は、円筒形状を有しており、回転部材本体21の軸方向他方側の側面の径方向内側の端部から軸方向他方側に向けて伸長している。回転側短筒部23の軸方向寸法は、挿入筒部22の軸方向寸法よりも十分に短く、内径側静止部材11に備えられた静止側短筒部20の軸方向寸法とほぼ同じである。不連続部9に挿入筒部22を挿入配置した状態で、回転側短筒部23は、静止側短筒部20の径方向内側に配置される。
【0064】
〈MR流体〉
MR流体5は、外部磁場に応じて見かけ上の粘度が変化する機能性流体の1種であり、粒子径が1μm~10μm程度の強磁性粒子(純鉄やカルボニル鉄など)を主に油系の溶媒中に分散させてなる混濁液である。
【0065】
本例では、MR流体5を、第1環状空間27及び第2環状空間28のそれぞれに充填するとともに、連通部29にも充填している。すなわち、MR流体5は、断面略コ字形の収容空間30に充填されている。
【0066】
MR流体5は、磁場が加えられると、静止部材3と回転部材4との間に鎖状粒子クラスターを形成し、見かけ上の粘度が変化する(半固体状に変化する)。具体的には、径方向に対向する第1静止側周面13と第1回転側周面25との間に鎖状粒子クラスターを形成するとともに、径方向に対向する第2静止側周面17と第2回転側周面26との間に鎖状粒子クラスターを形成し、降伏せん断力を変化させる。なお、
図2及び
図3には、MR流体5を梨子地模様で表している。
【0067】
本例の回転抵抗発生装置1は、第1環状空間27及び第2環状空間28を密封するために、外径側シール装置31及び内径側シール装置32をさらに備える。外径側シール装置31及び内径側シール装置32は、静止部材3と回転部材4との間に配置されている。
【0068】
外径側シール装置31は、外径側静止部材10の内周面の軸方向一方側の端部と回転部材本体21の外周面の軸方向中間部との間に配置され、第1環状空間27の軸方向一方側の開口部を塞いでいる。このために、外径側シール装置31は、外径側静止部材10の内周面に内嵌支持されており、弾性材製のリップ部33aを回転部材本体21の外周面に全周にわたり摺接させている。したがって、外径側シール装置31は、第1環状空間27よりも電磁コイル2から軸方向に離隔した位置、すなわち、第1環状空間27よりも軸方向一方側に配置されている。
【0069】
内径側シール装置32は、静止側短筒部20の内周面と回転側短筒部23の外周面との間に配置され、第2環状空間28の軸方向一方側の開口部を塞いでいる。このために、内径側シール装置32は、静止側短筒部20の内周面に内嵌支持されており、弾性材製のリップ部33bを回転側短筒部23の外周面に全周にわたり摺接させている。したがって、内径側シール装置32は、径方向に関して第2環状空間28と重なる位置に配置されている。
【0070】
本例では、第1環状空間27の軸方向一方側の開口部を外径側シール装置31により塞ぎ、かつ、第2環状空間28の軸方向一方側の開口部を内径側シール装置32により塞ぐことで、MR流体5を収容空間30に密封している。
【0071】
本例の回転抵抗発生装置1は、回転部材4を静止部材3に対して回転自在に支持するための転がり軸受34をさらに備える。転がり軸受34は、外径側静止部材10の内周面の軸方向一方側の端部と、回転部材本体21の外周面の軸方向中間部との間に配置されている。
【0072】
本例の回転抵抗発生装置1は、連結部材35及び抜け止め部材36をさらに備える。連結部材35は、円環形状を有しており、内径側静止部材11を構成する外向フランジ部18の軸方向他方側の側面に、外径側静止部材10と内径側静止部材11とを連結するためのボルトを利用して固定される。抜け止め部材36は、円環形状を有しており、図示しないボルトを利用して、外径側静止部材10の軸方向一方側の端面に固定される。抜け止め部材36は、転がり軸受34と軸方向に係合することで、転がり軸受34が軸方向一方側に抜け出ることを防止する。
【0073】
〈動作説明〉
本例の回転抵抗発生装置1により、回転部材4に対して回転抵抗を付与するには、例えば制御器からの指令などに基づいて、電磁コイル2に電流を流す。これにより、ヨークとして機能する静止部材3に、磁気回路を形成する。そして、第1環状空間27及び第2環状空間28のそれぞれに充填されたMR流体5に磁場を印加する。特に本例では、第1環状空間27及び第2環状空間28のそれぞれを直交して横切る、換言すれば、第1環状空間27及び第2環状空間28を径方向に貫通する磁路を形成し、第1環状空間27及び第2環状空間28に充填されたMR流体5に磁場を印加する。
【0074】
MR流体5は、上述のような磁場が印加されると、分散粒子が磁気分極することにより鎖状構造を形成し、見かけ上の粘度(降伏せん断力)が高まって半固体状となる。そして、第1静止側周面13と第1回転側周面25との間、及び、第2静止側周面17と第2回転側周面26との間に、粒子の鎖状構造(コラム構造)を形成する。この結果、回転部材4に対して、MR流体5の鎖状構造をせん断することに対する回転抵抗(トルク)が付与される。
【0075】
また、回転抵抗の大きさは、電磁コイル2に流れる電流の大きさを変化させることで調整できる。したがって、回転部材4に付与する抵抗の大きさを微調整することが可能になる。また、電磁コイル2に通電することで、回転部材4に回転抵抗を付与できるため、優れた応答性及び制御性を有する。さらに、回転抵抗を付与するのに摩耗粉を発生させずに済む。
【0076】
回転抵抗を解除するには、電磁コイル2への通電を中止(ストップ)する。これにより、MR流体5は、見かけ上の粘度が下がり液体状に戻るため、回転部材4に付与される抵抗は十分に低くなる。
【0077】
以上のような本例の回転抵抗発生装置1によれば、回転抵抗の発生効率の向上を図れるとともに、径方向幅寸法の小型化を図れる。
すなわち、本例では、MR流体5を充填した第1環状空間27及び第2環状空間28のそれぞれを、電磁コイル2の軸方向一方側の側面に隣接して配置している。このため、電磁コイル2に通電した際に、電磁コイル2の周囲に形成される磁路が、第1環状空間27及び第2環状空間28のそれぞれを直交するように横切りやすくなる。したがって、電磁コイル2に大きな電流を流さなくても、MR流体5の見かけ上の粘度を十分に上昇させることができる。この結果、本例の回転抵抗発生装置1によれば、所定の回転抵抗を発生させるのに必要な消費電力を抑制でき、回転抵抗の発生効率の向上を図ることができる。
【0078】
また、本例では、それぞれが円筒状の微小隙間である第1環状空間27及び第2環状空間28を、電磁コイル2の軸方向一方側の側面に隣接して配置しているため、前述した特開2017-116013号公報に記載された従来構造のように、電磁コイルと、回転ディスク及び静止ディスクとを、径方向に重なるように配置した場合に比べて、回転抵抗発生装置1の径方向幅寸法の小型化を図ることができる。
【0079】
特に本例では、第1環状空間27及び第2環状空間28のそれぞれを、軸方向に関して電磁コイル2と重なる位置に配置している。これにより、電磁コイル2の周囲に形成される磁路が、第1環状空間27及び第2環状空間28のそれぞれを直交するように横切るため、回転抵抗の発生効率のさらなる向上を図れる。また、回転抵抗発生装置1の径方向幅寸法のさらなる小型化も図れる。
【0080】
また、本例では、第1環状空間27及び第2環状空間28といった2つの環状空間を備えているため、電磁コイル2に通電した際に、第1環状空間27及び第2環状空間28のそれぞれに充填されたMR流体5の見かけ上の粘度を同時に変化させることができる。したがって、環状空間を1つだけ備える場合に比べて、回転抵抗発生装置1の回転抵抗の発生効率を向上できる。
【0081】
また、本例では、外径側シール装置31を、第1環状空間27と径方向に重なる位置ではなく、第1環状空間27よりも軸方向一方側に配置しているため、外径側静止部材10及び回転部材4のそれぞれの構造を簡略化できるとともに、回転抵抗発生装置1の径方向幅寸法の小型化を図る面で有利になる。
【0082】
また、本例では、内径側シール装置32を、第2環状空間28と径方向に重なる位置、すなわち、第2環状空間28の径方向内側に配置しているため、内径側シール装置32の小径化を図れる。このため、内径側シール装置32のシールトルクの低減を図れる。また、回転抵抗発生装置1の軸方向寸法の小型化を図れる。さらに本例では、外径側シール装置31を、第1環状空間27の軸方向一方側に隣接して配置し、かつ、内径側シール装置32を、第2環状空間28の径方向内側に隣接して配置しているため、MR流体5の容量を必要最小限に抑えることができる。このため、回転抵抗発生装置1のコスト低減を図れるとともに重量の増加を抑えられる。
【0083】
また、本例では、静止部材3に備えられた円筒状空間である不連続部9に、回転部材4に備えられた円筒状の挿入筒部22を軸方向一方側から挿入することができるため、静止部材3と回転部材4とを軸方向に組み合わせることで、第1環状空間27及び第2環状空間28を形成できる。したがって、回転抵抗発生装置1の組立作業の作業性を向上できる。
【0084】
[実施の形態の第2例]
実施の形態の第2例について、
図7を用いて説明する。
【0085】
本例の回転抵抗発生装置1は、外径側静止部材10の軸方向中間部の円周方向1箇所に、径方向に貫通した連通孔37を備えている。
【0086】
連通孔37の径方向内側の端部は、第1静止側周面13に開口しており、連通孔37の径方向外側の端部は、外径側静止部材10の外周面に開口している。このため、連通孔37は、第1環状空間27と外部空間とを連通する。なお、連通孔37は、外径側静止部材10の軸方向端面に開口させることもできる。
【0087】
連通孔37の径方向外側の開口部は、袋状に構成された金属製又はゴム製のベローズ38で覆われている。
【0088】
以上のような本例では、収容空間30に充填したMR流体5の体積が、温度上昇に伴って膨張した際に、ベローズ38が膨らむことで、収容空間30の内圧が上昇することを抑制できる。このため、MR流体5の温度が上昇した場合にも、MR流体5が、外径側シール装置31又は/及び内径側シール装置32から漏れ出すことを防止できる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
【0089】
[実施の形態の第3例]
実施の形態の第3例について、
図8及び
図9を用いて説明する。
【0090】
本例の回転抵抗発生装置1aは、電磁コイル2と、静止部材3aと、2つの回転部材4a、4bと、MR流体5と備えている。本例の回転抵抗発生装置1aは、軸方向に関して対称形状を有している。
【0091】
静止部材3aは、電磁コイル2の中心軸Oを含む仮想平面で切断した断面において、電磁コイル2の周囲の2箇所に不連続部9a、9bを有している。
【0092】
不連続部9a、9bは、径方向幅寸法に比べて軸方向寸法の大きい円筒状空間であり、電磁コイル2の軸方向両側に配置されている。具体的には、不連続部9aは、電磁コイル2の軸方向一方側の側面に隣接した部分に備えられており、不連続部9bは、電磁コイル2の軸方向他方側の側面に隣接した部分に備えられている。
【0093】
本例の場合にも、静止部材3aは、外径側静止部材10aと内径側静止部材11aとから構成されている。そして、外径側静止部材10aの内周面と内径側静止部材11aの外周面との間に、不連続部9a、9bを形成している。
【0094】
このために、外径側静止部材10aは、内周面の軸方向中間部に2つの内向フランジ部12a、12bを有している。2つの内向フランジ部12a、12bは、軸方向に離隔して配置されている。内向フランジ部12a、12bのそれぞれの内周面には、第1静止側周面13a、13bが備えられている。また、内径側静止部材11aは、外周面の軸方向両側部に、2つの第2静止側周面17a、17bを有している。
【0095】
不連続部9a、9bのそれぞれの径方向外側の周面は、円筒面状の第1静止側周面13a、13bによって構成されており、不連続部9a、9bのそれぞれの径方向内側の周面は、第2静止側周面17a、17bによって構成されている。したがって、不連続部9aは、径方向に対向する2つの静止側周面である、第1静止側周面13a及び第2静止側周面17aを有し、不連続部9bは、径方向に対向する2つの静止側周面である、第1静止側周面13b及び第2静止側周面17bを有する。
【0096】
内径側静止部材11aは、軸方向両側の端部に、静止側短筒部20a、20bを有している。静止側短筒部20a、20bのそれぞれの外周面は、第2静止側周面17a、17bの一部を構成する。
【0097】
2つの回転部材4a、4bは、内径側静止部材11aを軸方向両側から挟むように配置されている。
【0098】
回転部材4aは、外径側静止部材10aの軸方向一方側の半部の径方向内側に配置され、かつ、内径側静止部材11aの軸方向一方側に隣接配置されている。これに対し、回転部材4bは、外径側静止部材10aの軸方向他方側の半部の径方向内側に配置され、かつ、内径側静止部材11aの軸方向他方側に隣接配置されている。
【0099】
回転部材4aは、回転部材本体21aと挿入筒部22aと回転側短筒部23aとを有している。挿入筒部22aは、外周面に円筒面状の第1回転側周面25aを有し、かつ、内周面に円筒面状の第2回転側周面26aを有する。
【0100】
本例では、挿入筒部22aを不連続部9aに挿入配置している。具体的には、挿入筒部22aを、不連続部9aに対して軸方向一方側から軸方向に挿入している。これにより、径方向に対向する第1静止側周面13aと第1回転側周面25aとの間に、円筒状の微小隙間である第1環状空間27aを形成し、かつ、径方向に対向する第2静止側周面17aと第2回転側周面26aとの間に、円筒状の微小隙間である第2環状空間28aを形成している。そして、第1環状空間27a及び第2環状空間28aを含んで構成される収容空間30aに、MR流体5を充填している。
【0101】
第1環状空間27a及び第2環状空間28aのそれぞれは、電磁コイル2の軸方向一方側の側面に隣接して配置されている。本例では、第1環状空間27a及び第2環状空間28aのそれぞれは、軸方向に関して電磁コイル2と重なるように配置されている。
【0102】
回転部材4bは、回転部材本体21bと挿入筒部22bと回転側短筒部23bとを有している。挿入筒部22bは、外周面に円筒面状の第1回転側周面25bを有し、かつ、内周面に円筒面状の第2回転側周面26bを有する。
【0103】
本例では、挿入筒部22bを不連続部9bに挿入配置している。具体的には、挿入筒部22bを、不連続部9bに対して軸方向他方側から軸方向に挿入している。これにより、径方向に対向する第1静止側周面13bと第1回転側周面25bとの間に、円筒状の微小隙間である第1環状空間27bを形成し、かつ、径方向に対向する第2静止側周面17bと第2回転側周面26bとの間に、円筒状の微小隙間である第2環状空間28bを形成している。そして、第1環状空間27b及び第2環状空間28bを含んで構成される収容空間30bに、MR流体5を充填している。
【0104】
第1環状空間27b及び第2環状空間28bのそれぞれは、電磁コイル2の軸方向他方側の側面に隣接して配置されている。本例では、第1環状空間27b及び第2環状空間28bのそれぞれは、軸方向に関して電磁コイル2と重なるように配置されている。
【0105】
このため本例では、軸方向に関して電磁コイル2の両側に、環状空間が2つずつ配置されている。
【0106】
本例の回転抵抗発生装置1aは、合計4つのシール装置を備えている。すなわち、本例では、第1環状空間27aの軸方向一方側の開口部を、外径側シール装置31aにより塞いでおり、第2環状空間28aの軸方向一方側の開口部を、内径側シール装置32aにより塞いでいる。また、第1環状空間27bの軸方向他方側の開口部を、外径側シール装置31bにより塞いでおり、第2環状空間28bの軸方向他方側の開口部を、内径側シール装置32bにより塞いでいる。
【0107】
本例の回転抵抗発生装置1aは、2つの転がり軸受34a、34bを備えている。一方の転がり軸受34aは、外径側静止部材10aに対して回転部材4aを回転自在に支持しており、他方の転がり軸受34bは、外径側静止部材10aに対して回転部材4bを回転自在に支持している。
【0108】
以上のような本例の回転抵抗発生装置1aによれば、電磁コイル2に通電した際に、電磁コイル2の軸方向一方側に配置された第1環状空間27a及び第2環状空間28aのそれぞれを直交して横切るように磁路を形成できるとともに、電磁コイル2の軸方向他方側に配置された第1環状空間27b及び第2環状空間28bのそれぞれを直交して横切るように磁路を形成できる。このため、2つの回転部材4a、4bのそれぞれに対して回転抵抗を付与することができる。
【0109】
2つの回転部材4a、4bに対しては、互いに同じ大きさの回転抵抗を付与することもできるし、互いに異なる大きさの回転抵抗を付与することもできる。2つの回転部材4a、4bに互いに異なる大きさの回転抵抗を付与するには、例えば、回転部材4a、4bを構成する金属の材質を異ならせることができる。又は、第1環状空間27a及び第2環状空間28aに充填するMR流体5と、第1環状空間27b及び第2環状空間28bに充填するMR流体5とで、含有する強磁性粒子の大きさや密度を異ならせることもできる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例及び第2例と同じである。
【0110】
[実施の形態の第4例]
実施の形態の第4例について、
図10を用いて説明する。
【0111】
本例の静止部材3bは、不連続部9cを径方向に二分割する1つの隔壁筒39を備えている。
【0112】
隔壁筒39は、円筒形状を有しており、外径側静止部材10又は内径側静止部材11に対して支持固定されている。図示の例では、隔壁筒39は、内径側静止部材11の外周面の軸方向中間部に、支持環40を介して支持されている。隔壁筒39は、例えば鉄(純鉄)などの磁性金属製である。
【0113】
隔壁筒39は、外周面に円筒面状の第3静止側周面41を有し、かつ、内周面に円筒面状の第4静止側周面42を有する。
【0114】
本例の回転部材4cは、外径側挿入筒部43及び内径側挿入筒部44を有する。外径側挿入筒部43は、回転部材本体21の軸方向他方側の側面の径方向外側の端部から軸方向他方側に向けて伸長している。これに対し、内径側挿入筒部44は、回転部材本体21の軸方向他方側の側面の径方向中間部から軸方向他方側に向けて伸長している。外径側挿入筒部43と内径側挿入筒部44とは、互いに同軸に配置されている。
【0115】
外径側挿入筒部43は、外周面に円筒面状の第1回転側周面25を有し、かつ、内周面に円筒面状の第3回転側周面45を有する。内径側挿入筒部44は、外周面に円筒面状の第4回転側周面46を有し、かつ、内周面に円筒面状の第2回転側周面26を有する。
【0116】
不連続部9cに外径側挿入筒部43及び内径側挿入筒部44を挿入配置した状態で、外径側挿入筒部43と内径側挿入筒部44との径方向間部分に、隔壁筒39が配置される。外径側挿入筒部43及び内径側挿入筒部44と、隔壁筒39とは、互いに同軸に配置される。
【0117】
不連続部9cに外径側挿入筒部43及び内径側挿入筒部44を挿入配置した状態で、第1回転側周面25は、第1静止側周面13に対して微小隙間を介して全周にわたり近接対向し、かつ、第2回転側周面26は、第2静止側周面17に対して微小隙間を介して全周にわたり近接対向する。さらに本例では、第3回転側周面45は、第3静止側周面41に対して微小隙間を介して全周にわたり近接対向し、かつ、第4回転側周面46は、第4静止側周面42に対して微小隙間を介して全周にわたり近接対向する。
【0118】
これにより、径方向に対向する第1静止側周面13と第1回転側周面25との間に、円筒状の微小隙間である第1環状空間27が形成され、かつ、径方向に対向する第2静止側周面17と第2回転側周面26との間に、円筒状の微小隙間である第2環状空間28が形成される。さらに本例では、径方向に対向する第3静止側周面41と第3回転側周面45との間に、円筒状の微小隙間である第3環状空間47が形成され、かつ、径方向に対向する第4静止側周面42と第4回転側周面46との間に、円筒状の微小隙間である第4環状空間48が形成される。
【0119】
本例では、MR流体5を、第1環状空間27及び第2環状空間28だけでなく、第3環状空間47及び第4環状空間48にも充填している。
【0120】
以上のような本例では、電磁コイル2に通電した際に、第1環状空間27及び第2環状空間28だけでなく、第3環状空間47及び第4環状空間48のそれぞれを直交して横切るように磁路を形成できる。このため、回転抵抗の発生効率の更なる向上を図ることができる。
【0121】
また、変形例として、隔壁筒を2個以上(N個)備える場合には、挿入筒を隔壁筒よりも1個だけ多く(N+1個)備えることができる。例えば、隔壁筒を2個備える場合には、挿入筒を3個備えることができ、隔壁筒を3個備える場合には、挿入筒を4個備えることができる。このように隔壁筒及び挿入筒の数を増やすことで、環状空間の数を増やすことができるため、回転抵抗の発生効率の向上を図る面で有利になる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
【0122】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、発明の技術思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0123】
本開示の回転抵抗発生装置は、例えば、MRダンパやMRブレーキとして利用できる。また、本開示の回転抵抗発生装置は、例えば、イナータやトルクリミッタなどの各種機械装置に組み込んで使用することもできる。
【符号の説明】
【0124】
1、1a 回転抵抗発生装置
2 電磁コイル
3、3a、3b 静止部材
4、4a、4b、4c 回転部材
5 MR流体
6 挿通孔
7 コイル本体
8 コイルボビン
9、9a、9b、9c 不連続部
10、10a 外径側静止部材
11、11a 内径側静止部材
12、12a、12b 内向フランジ部
13、13a、13b 第1静止側周面
14 静止側傾斜面
15a、15b Oリング
16 雌ねじ孔
17、17a、17b 第2静止側周面
18 外向フランジ部
19 通孔
20、20a、20b 静止側短筒部
21、21a、21b 回転部材本体
22、22a、22b 挿入筒部
23、23a、23b 回転側短筒部
24 回転側傾斜面
25、25a、25b 第1回転側周面
26、26a、26b 第2回転側周面
27、27a、27b 第1環状空間
28、28a、28b 第2環状空間
29 連通部
30、30a、30b 収容空間
31、31a、31b 外径側シール装置
32、32a、32b 内径側シール装置
33a、33b リップ部
34、34a、34b 転がり軸受
35 連結部材
36 抜け止め部材
37 連通孔
38 ベローズ
39 隔壁筒
40 支持環
41 第3静止側周面
42 第4静止側周面
43 外径側挿入筒部
44 内径側挿入筒部
45 第3回転側周面
46 第4回転側周面
47 第3環状空間
48 第4環状空間