(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021586
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】高さ調整具および高さ調整システム
(51)【国際特許分類】
F16M 11/24 20060101AFI20240208BHJP
H02S 20/30 20140101ALI20240208BHJP
E04B 1/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F16M11/24 D
H02S20/30 B
E04B1/00 502M
F16M11/24 H
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124513
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】597170346
【氏名又は名称】株式会社郷葉
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】小松田 泰載
(57)【要約】
【課題】 簡素で安価な構成でありながら、簡単かつ迅速に対象物の高さを細かく調整することができる高さ調整具および高さ調整システムを提供する。
【解決手段】 傾斜面に設置される対象物4の高さを調整する高さ調整具1であって、水平プレート21と垂直プレート22とからなる略L字形状の本体プレート2を有し、垂直プレート22には、長手方向に沿って設けられた長孔の左右両側に、略半円形状の係止凹部24が同一のピッチで複数個設けられているとともに、右側の係止凹部24と、左側の係止凹部24とは高さ位置をずらして配置されており、係止凹部24のいずれかに、対象物4に固定された係止凸部6を係止して固定することにより対象物4の高さを調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜面に設置される対象物の高さを調整する高さ調整具であって、
水平プレートと垂直プレートとからなる略L字形状の本体プレートを有し、
前記垂直プレートには、長手方向に沿って設けられた長孔の左右両側に、略半円形状の係止凹部が同一のピッチで複数個設けられているとともに、右側の前記係止凹部と、左側の前記係止凹部とは高さ位置をずらして配置されており、
前記係止凹部のいずれかに、前記対象物に固定された係止凸部を係止して固定することにより前記対象物の高さを調整する、高さ調整具。
【請求項2】
右側の前記係止凹部と、左側の前記係止凹部とは、半ピッチ分の高さをずらして配置されている、請求項1に記載の高さ調整具。
【請求項3】
前記係止凸部はナットで締め付け固定可能なボルトで構成されており、前記高さ調整具と前記ナットとの間、または前記高さ調整具とボルト頭部との間には、前記係止凹部の左右幅よりも長い横幅を有する位置ズレ防止プレートが挟持される、請求項1または請求項2に記載の高さ調整具。
【請求項4】
前記水平プレートの略中央部には、前記水平プレートを地面に固定する固定杭を挿通させるための挿通孔が設けられている、請求項1または請求項2に記載の高さ調整具。
【請求項5】
前記本体プレートの左右縁部には、前記水平プレートおよび前記垂直プレートの双方に接合される一対の補強リブが設けられている、請求項1または請求項2に記載の高さ調整具。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の高さ調整具と、前記対象物を載置するための載置フレームとを有し、前記載置フレームは、少なくとも前記対象物の底面における外縁部に沿う枠状に形成されており、前記高さ調整具における前記係止凹部のいずれかに、前記対象物および前記載置フレームのそれぞれに固定された各係止凸部を係止して固定することにより前記対象物の高さを調整する、高さ調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜面に設置される対象物の高さを調整するのに好適な高さ調整具および高さ調整システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物置等を傾斜面に設置する場合、傾斜面を整地して水平にならしたり、あるいは傾斜面の下方側にコンクリートブロック等のスペーサーを挟めることにより、水平状態を維持するように設置している。また、特開平10-299987号公報には、物置等の基礎枠を支持するための基礎レベル調整台が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、傾斜面を水平に整地する作業は熟練を要する上、非常に面倒で手間や時間がかかるという問題がある。また、コンクリートブロック等を挟めるやり方では微調整がきかず、正確に水平状態を維持することが難しいという問題がある。さらに、特許文献1に記載された基礎レベル調整台は、構造が複雑で精密さが要求される製品であるため、製品単価が高くて費用がかかるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、簡素で安価な構成でありながら、簡単かつ迅速に対象物の高さを細かく調整することができる高さ調整具および高さ調整システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る高さ調整具は、簡素で安価な構成でありながら、簡単かつ迅速に対象物の高さを細かく調整するという課題を解決するために、傾斜面に設置される対象物の高さを調整する高さ調整具であって、水平プレートと垂直プレートとからなる略L字形状の本体プレートを有し、前記垂直プレートには、長手方向に沿って設けられた長孔の左右両側に、略半円形状の係止凹部が同一のピッチで複数個設けられているとともに、右側の前記係止凹部と、左側の前記係止凹部とは高さ位置をずらして配置されており、前記係止凹部のいずれかに、前記対象物に固定された係止凸部を係止して固定することにより前記対象物の高さを調整する。
【0007】
また、本発明の一態様として、対象物の高さを等ピッチで調整するという課題を解決するために、右側の前記係止凹部と、左側の前記係止凹部とは、半ピッチ分の高さをずらして配置されていてもよい。
【0008】
さらに、本発明の一態様として、係止凸部が位置ズレして係止凹部から脱落するのを防止するという課題を解決するために、前記係止凸部はナットで締め付け固定可能なボルトで構成されており、前記高さ調整具と前記ナットとの間、または前記高さ調整具とボルト頭部との間には、前記係止凹部の左右幅よりも長い横幅を有する位置ズレ防止プレートが挟持されていてもよい。
【0009】
また、本発明の一態様として、傾斜面に対して高さ調整具をしっかりと固定するという課題を解決するために、前記水平プレートの略中央部には、前記水平プレートを地面に固定する固定杭を挿通させるための挿通孔が設けられていてもよい。
【0010】
さらに、本発明の一態様として、高さ調整具を補強するという課題を解決するために、前記本体プレートの左右縁部には、前記水平プレートおよび前記垂直プレートの双方に接合される一対の補強リブが設けられていてもよい。
【0011】
本発明に係る高さ調整システムは、対象物のバランスが取りやすく、安定性を向上するとともに、対象物の腐食を抑制するという課題を解決するために、上述したいずれかの態様の高さ調整具と、前記対象物を載置するための載置フレームとを有し、前記載置フレームは、少なくとも前記対象物の底面における外縁部に沿う枠状に形成されており、前記高さ調整具における前記係止凹部のいずれかに、前記対象物および前記載置フレームのそれぞれに固定された各係止凸部を係止して固定することにより前記対象物の高さを調整する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡素で安価な構成でありながら、簡単かつ迅速に対象物の高さを細かく調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る高さ調整具の一実施形態を示す(a)正面図、(b)A-A線断面図および(c)平面図である。
【
図2】本実施形態の高さ調整具を示す(a)背面図、(b)右側面図および(c)底面図である。
【
図3】本実施形態の高さ調整システムを用いて高さを調節した物置を示す図である。
【
図4】本発明に係る高さ調整具の他の実施形態を示す(a)正面図、(b)B-B線断面図および(c)平面図である。
【
図5】他の実施形態の高さ調整具を示す(a)背面図、(b)右側面図および(c)底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る高さ調整具および高さ調整システムの実施形態について図面を用いて説明する。
【0015】
本実施形態の高さ調整具1は、傾斜面に設置される対象物4の高さを調整するためのものであり、
図1および
図2に示すように、水平プレート21と垂直プレート22とからなる略L字形状の本体プレート2を有している。なお、本発明において、対象物4とは、物置や温室等のように、高さの調整を必要とする全ての設置物を含む概念である。
【0016】
本体プレート2は、鋼板等によって形成されており、略L字形状に屈曲させた短辺側が水平プレート21を構成し、長辺側が垂直プレート22を構成する。本実施形態において、水平プレート21と垂直プレート22との屈曲角度は厳密な直角ではなく、垂直プレート22を略垂直方向に一致させたとき、水平プレート21が傾斜面と面接触する程度の角度に調整される。すなわち、傾斜面の上方側に屈曲される水平プレート21は、垂直プレート22に対して鋭角をなし、傾斜面の下方側に屈曲される水平プレート21は、垂直プレート22に対して鈍角をなすように、傾斜面の傾斜角度に合わせて調整される。
【0017】
水平プレート21は、高さ調整具1を立てた状態で支持するものである。本実施形態において、水平プレート21は平板状に形成されており、傾斜面と面接触するようになっている。また、水平プレート21の略中央部には、
図1(b),(c)に示すように、水平プレート21を地面に固定する固定杭5を挿通させるための挿通孔23が設けられている。
【0018】
垂直プレート22は、対象物4を所望の高さ位置で支持するものである。本実施形態において、垂直プレート22には、
図1(a),(b)に示すように、長手方向に沿って設けられた長孔の左右両側に、略半円形状の係止凹部24が同一のピッチで複数個設けられている。そして、右側の係止凹部24と、左側の係止凹部24とは半ピッチ分の高さをずらして配置されている。これにより、対象物4の高さ位置が半ピッチ単位で調整可能となるため、水平に対する誤差が最大でも半ピッチに抑えられる。なお、右側の係止凹部24と、左側の係止凹部24との位置関係は上記構成に限定されるものではなく、少なくとも高さ位置がずらされていればよい。
【0019】
本実施形態の高さ調整具1は、単体でも使用可能であるが、本実施形態の高さ調整システム10は、上述した高さ調整具1に加えて、
図3に示すように、対象物4を載置するための載置フレーム3を有している。本実施形態において、載置フレーム3は、鋼製の角パイプによって構成されており、平面視で長方形状の枠状に連結されている。ただし、載置フレーム3の構成は上記に限定されるものではなく、少なくとも対象物4の底面における外縁部に沿う枠状に形成されていればよい。
【0020】
つぎに、本実施形態の高さ調整具1および高さ調整システム10による作用について説明する。なお、以下の説明では、対象物4として物置を傾斜面に設置する場合について説明する。
【0021】
以上のような本実施形態の高さ調整具1および高さ調整システム10を用いて、傾斜面に設置される物置の高さを調整する場合、まず、
図3に示すように、物置を載置フレーム3の上に載置する。これにより、載置フレーム3が、物置の底面における外縁部全体に当接して支持するため、物置のバランスが取りやすく、安定性が向上する。また、設置後は、物置の底面が地面から離れるため、雨水等に浸かりにくく、サビ等による腐食が抑制される。
【0022】
つぎに、物置の側面における四隅の下端部近傍に、係止凹部24に係止可能な係止凸部6を固定する。また、載置フレーム3の側面にも同様に、物置に固定された各係止凸部6から、係止凹部24のピッチの整数倍だけ離れた垂直下方位置のそれぞれに係止凸部6を固定する。なお、本実施形態では、係止凸部6として、ナットで締め付け固定可能なボルトを使用しているが、この構成に限定されるものではなく、係止凹部24に係止可能で、その係止位置を固定可能なものであればよい。
【0023】
つづいて、物置が略水平状態となるように、各係止凸部6を高さ調整具1の係止凹部24に嵌め入れて係止させる。このとき、高さ調整具1は、左右で係止凹部24の高さ位置がずらされているため、細かい高さ調整が可能となる。特に、本実施形態では、半ピッチ分の高さをずらして左右の係止凹部24が配置されているため、等ピッチでの高さ調整が可能である。また、係止凸部6と係止凹部24という簡素で安価な構成でありながら、簡単かつ迅速に物置の高さが調整される。
【0024】
さらに、本実施形態では、物置の側面に取り付けられて略垂直方向となる垂直プレート22に対して、水平プレート21が傾斜面と面接触する。このため、傾斜面との間に大きな摩擦力を発生させて位置ズレを防止するとともに、その表面積に応じて対象物4の重量を分散させるため、傾斜面に食い込んで調整後の高さを変化させてしまうことがない。また、水平プレート21の挿通孔23に固定杭5を打ち込むことにより、高さ調整具1が傾斜面に対してしっかりと固定される。なお、固定杭5としては、略T字形状の鉄筋等を用いることができる。
【0025】
なお、本実施形態では、係止凸部6としてのボルトをナットで締め付け固定する際、
図3に示すように、高さ調整具1とナットとの間、または高さ調整具1とボルト頭部との間には、係止凹部24の左右幅よりも長い横幅を有する位置ズレ防止プレート61が挟持されている。これにより、ナット61によって締め付けられた位置ズレ防止プレート61が、高さ調整具1との間で大きな摩擦力を発生させるため、係止凸部6が位置ズレして係止凹部24から脱落してしまうことが防止される。
【0026】
以上のような本実施形態の高さ調整具1および高さ調整システム10によれば、以下のような効果を奏する。
1.簡素で安価な構成でありながら、簡単かつ迅速に対象物4の高さを細かく調整することができる。
2.半ピッチ分の高さをずらして配置された左右の係止凹部24によって、対象物4の高さを等ピッチで調整することができる。
3.位置ズレ防止プレート61によって、係止凸部6が位置ズレによって係止凹部24から脱落するのを防止することができる。
4.水平プレート21の挿通孔23に固定杭5を打ち込むことにより、傾斜面に対して高さ調整具1をしっかりと固定することができる。
5.載置フレーム3によって、対象物4のバランスが取りやすく、安定性を向上できるとともに、対象物4の腐食を抑制することができる。
【0027】
なお、本発明に係る高さ調整具1および高さ調整システム10は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0028】
例えば、上述した本実施形態では、本体プレート2が、水平プレート21と垂直プレート22とから構成されているが、この構成に限定されるものではない。具体的には、
図4および
図5に示すように、本体プレート2の左右縁部に、水平プレート21および垂直プレート22の双方に接合される一対の補強リブ25,25が設けられていてもよい。この構成によれば、上述した本実施形態の作用効果に加えて、重量の大きい対象物4にも使用することができる。
【0029】
ただし、補強リブ25を設けた場合、水平プレート21と垂直プレート22との屈曲角度は固定される。このため、例えば70度~110度の範囲内で、屈曲角度が1度ずつ異なる複数の高さ調整具1を事前に用意しておけばよい。これにより、対象物4を設置しようとする傾斜面の傾斜に応じて、適切な高さ調整具1を選択することが可能となる。
【符号の説明】
【0030】
1 高さ調整具
2 本体プレート
3 載置フレーム
4 対象物
5 固定杭
6 係止凸部
10 高さ調整システム
21 水平プレート
22 垂直プレート
23 挿通孔
24 係止凹部
25 補強リブ
61 位置ズレ防止プレート