(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021589
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】身体装着型装置、移動情報取得制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 19/49 20100101AFI20240208BHJP
G01S 19/34 20100101ALI20240208BHJP
G01C 21/28 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
G01S19/49
G01S19/34
G01C21/28
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124520
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾下 佑樹
【テーマコード(参考)】
2F129
5J062
【Fターム(参考)】
2F129AA02
2F129BB03
2F129BB21
2F129BB26
2F129BB33
2F129BB45
2F129BB63
5J062BB05
5J062CC07
5J062DD23
5J062DD25
5J062FF01
5J062FF04
5J062FF06
(57)【要約】
【課題】ユーザの運動種別を反映してより適切に動作を切り替える身体装着型装置、移動情報取得制御方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】身体装着型装置は、衛星からの電波を受信して測位を行う測位処理部と、自機の向き及び動きに係る計測を行う計測部と、ユーザの運動の種別に係る情報を取得する取得部と、制御部と、を備える。制御部は、測位処理部による測位の結果を得られていない期間に、計測部の計測結果に基づいて時間ごとの移動量を算出するか否かを、運動の種別に応じて決定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星からの電波を受信して測位を行う測位処理部と、
自機の向き及び動きに係る計測を行う計測部と、
ユーザの運動の種別に係る情報を取得する取得部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記測位処理部による測位の結果を得られていない期間に、前記計測部の計測結果に基づいて時間ごとの移動量を算出するか否かを、前記運動の種別に応じて決定する、
身体装着型装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記運動の種別がユーザの走歩行に係る動作を伴わないものである場合には、前記移動量を算出しない、請求項1記載の身体装着型装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記移動量を算出しない場合には、前記測位処理部により得られた時間的に隣り合う2点の位置に基づいて当該2点間の移動距離を算出する、請求項2記載の身体装着型装置。
【請求項4】
前記制御部は、休止期間を挟んで間欠的に前記測位処理部により測位を行わせ、前記移動量を算出しない場合であって、かつ前記休止期間中に前記計測部により進行方向の変化が検出された場合には、前記測位処理部により測位を行わせる、請求項1記載の身体装着型装置。
【請求項5】
前記取得部は、入力操作を受け付ける操作受付部を備え、
前記制御部は、前記操作受付部が受け付けた操作により定められた前記運動の種別に応じて前記移動量の算出有無を決定する、
請求項1記載の身体装着型装置。
【請求項6】
前記計測部は、加速度センサ及び方位センサのうち少なくともいずれかを含む
請求項1記載の身体装着型装置。
【請求項7】
衛星からの電波を受信して測位を行う測位処理部と、自機の向き及び動きに係る計測を行う計測部と、を備える身体装着型装置の移動情報取得制御方法であって、
前記身体装着型装置のユーザの運動の種別に係る情報を取得し、
前記測位処理部による測位の結果を得られていない期間に、前記計測部の計測結果に基づいて時間ごとの移動量を算出するか否かを、前記運動の種別に応じて決定する、
移動情報取得制御方法。
【請求項8】
衛星からの電波を受信して測位を行う測位処理部と、自機の向き及び動きに係る計測を行う計測部と、を備える身体装着型装置のコンピュータを、
前記身体装着型装置のユーザの運動の種別に係る情報を取得する取得手段、
前記測位処理部による測位の結果を得られていない期間に、前記計測部の計測結果に基づいて時間ごとの移動量を算出するか否かを、前記運動の種別に応じて決定する算出判別手段、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、身体装着型装置、移動情報取得制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザの腕(手首を含む)、脚部や胴などに固定して当該ユーザのアクティビティやバイタルを計測する身体装着型装置がある。この身体装着型装置では、GNSS(Global Navigation Satellite System)に係る測位衛星からの電波を受信して測位(衛星測位)を行い、アクティビティに伴って移動するユーザの位置を特定して移動履歴や移動量情報などを取得することができるものがある。
【0003】
衛星測位は、測位衛星からの電波を受信できない地下、トンネル内や屋内では難しく、また、高層ビルの谷間や山の谷間といった広い方向から電波を受信しづらい場所でも精度よく測位結果を得るのが難しい場合がある。また、携帯型装置では、消費電力の低減を図るために測位動作を間欠的に行う場合がある。これらの場合に、加速度センサや方位センサといった物理量の計測センサを用いてユーザの相対的な歩行移動量を算出して基準位置に加算していくことで、測位された位置間の移動履歴を定める自律航法に係る技術がある。特許文献1には、自律航法での計測時に、自機の保持状態に応じて加速度の検出パターンを変更することで、より精度よく相対移動に係るデータを取得する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自律航法では、徒歩での移動ではない場合には、ユーザの移動動作に係る動作周期や動作周期当たりの移動速度を適切に定めるのが難しく、正確な移動履歴からのずれが大きくなりやすいという課題があった。
【0006】
この発明の目的は、ユーザの運動種別を反映してより適切に動作を切り替える身体装着型装置、移動情報取得制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、
衛星からの電波を受信して測位を行う測位処理部と、
自機の向き及び動きに係る計測を行う計測部と、
ユーザの運動の種別に係る情報を取得する取得部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記測位処理部による測位の結果を得られていない期間に、前記計測部の計測結果に基づいて時間ごとの移動量を算出するか否かを、前記運動の種別に応じて決定する、
身体装着型装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従うと、ユーザの運動種別を反映してより適切に動作を切り替えることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】電子時計の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】走歩行系アクティビティ及び非走歩行系アクティビティでそれぞれ移動履歴を取得する場合の位置取得の例を示す図である。
【
図3】移動履歴取得処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図4】走歩行系アクティビティ及び非走歩行系アクティビティでそれぞれ移動距離を取得する場合の移動距離取得の例を示す図である。
【
図5】移動量計測制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の身体装着型装置である電子時計1の機能構成を示すブロック図である。電子時計1は、CPU11(Central Processing Unit)(制御部)と、RAM12(Random Access Memory)と、記憶部13と、表示部14と、操作受付部15(取得部)と、通信部16と、計時部17と、衛星電波受信処理部18(測位処理部)と、計測部19などを備える。
【0011】
CPU11は、演算処理を行って電子時計1の全体動作を統括制御するプロセッサである。プロセッサは単一のものであってもよいし、複数のものが並列に又は用途などに応じて独立に動作するのであってもよい。また、CPU11には、汎用CPUに加えて又は代えて、専用マイコンなどを含んでいてもよい。
【0012】
RAM12は、例えばDRAMなどであり、CPU11に作業用のメモリ空間を提供して一時データを記憶する。
少なくとも上記CPU11及びRAM12が本実施形態の身体装着型装置のコンピュータに含まれる。
【0013】
記憶部13は、不揮発性のメモリであって、例えばフラッシュメモリである。記憶部13には、プログラム131や設定データなどが記憶されている。
【0014】
表示部14は、CPU11の制御に基づいて少なくとも時刻を表示する。表示部14は、液晶ディスプレイなどのデジタル表示画面を有していてもよいし、複数の指針(時針や分針など)、当該複数の指針を回転動作させる歯車列(輪列機構)及び輪列機構を回転駆動するステッピングモータなどを有していてもよい。
【0015】
操作受付部15は、ユーザなどの外部からの入力操作を受け付けて受付信号をCPU11へ出力する。操作受付部15は、例えば、押しボタンスイッチを有し、当該押しボタンスイッチの押下操作を検出して受付信号を出力する。また、操作受付部15は、引き出し動作及び回転動作が可能なりゅうずなどを有していてもよい。
【0016】
通信部16は、外部機器との通信を制御する。通信部16は、例えば、LANによる通信に係るネットワークカードや、ブルートゥース(登録商標)による近距離無線通信の通信モジュールなどを有し、例えば、電子時計1におけるアクティビティの計測結果などの外部機器への送信を制御する。
【0017】
計時部17は、図示略の発振回路が生成するある発振周波数のクロック信号を計数して現在日時(時刻)を出力する。計時部17は、CPU11がソフトウェア的に日時を計数するものであってもよい。
【0018】
衛星電波受信処理部18は、図示略のアンテナを有し、上空の複数(少なくとも4機)の測位衛星からの電波を受信して、その受信内容とタイミング差とに基づいて現在日時及び電子時計1(自機)の現在位置を算出する測位を行う。電波を受信する対象となる測位衛星には、例えば、全地球測位システム(GPS;Global positioning System)、準天頂衛星システム(QZSS)、GLONASS、GalileоといったGNSS(全地球測位システム)に係るものが含まれる。衛星電波受信処理部18は、測位衛星からの電波を受信して信号を復調、復号する受信処理部と、信号の内容に基づいて測位演算を行う演算処理部とを有する。
【0019】
計測部19は、自機の向きや動きに係る計測を行う物理センサを有し、各センサの計測結果をCPU11へ出力する。物理センサには、例えば、加速度センサ191と、方位センサ192とが含まれる。
【0020】
加速度センサ191は、3軸方向の加速度を計測する。3軸方向は適宜定められてよいが(例えば、表示部14の表示面に平行な2軸及び垂直な1軸など)、重力加速度が計測可能であることで、重力方向と水平面内方向とに座標変換して分離することが可能であってよい。方位センサ192は、地磁場を計測するセンサであり、3軸方向の磁場強度を計測することで、磁北方向を得ることができる。
【0021】
本実施形態の電子時計1は、例えば、腕時計型の電子装置であって、バンドにより腕に装着可能なものである。
【0022】
次に、電子時計1における位置情報取得動作について説明する。
本実施形態の電子時計1では、ユーザの操作受付部15への入力操作により、どのアクティビティ(運動の種別)を実行するかの設定を受け付けて(取得して)から、アクティビティの計測を開始し、入力操作によりアクティビティの計測を終了する命令が受け付けられた場合や、規定された最大継続時間が経過したり、移動が計測されないまま基準時間が経過した場合などに、アクティビティの計測が終了する。
【0023】
ここでいうアクティビティは、水平方向についての位置の移動を伴うものであり、従来の走歩行系(ユーザの走歩行に係る動作を伴う)アクティビティである歩行(ウォーキング、散歩、ハイキング、トレッキング、登山)、走行(ランニング、ジョギング、クロスカントリー、トレイルランニング)などの他、非走歩行系(ユーザの走歩行に係る動作を伴わない)アクティビティとして自転車(サイクリング、ロングライド)、スキー(滑降)、スノーボード、水泳などが挙げられる。なお、クロスカントリースキーに関しては、走歩行系アクティビティに加えられてもよい。
【0024】
電子時計1では、走歩行系アクティビティでは、測位動作を間欠的に行って、それらの間の位置を自律航法による移動量を加算していくことで補完する。自律航法では、加速度センサ191や方位センサ192といった計測部19を用いてユーザの相対的な歩行移動量を算出する。すなわち、移動軌跡の補完には、歩行者自律航法(PDR;Pedestrian Dead-Reckoning)が用いられる。一方で、上述のように自律航法の技術は、走歩行系の移動以外では精度が得られないことから、非走歩行系アクティビティでは、自律航法によ移動量の算出を行わない。この場合には、加速度センサ191や方位センサ192といった自機の動きや向きに係る計測を行う計測部19による計測結果から、ユーザの進行方向が変化した場合を判別して、このときに追加で測位動作を行う。すなわち、電子時計1では、アクティビティ(運動の種別)に応じて自律航法による移動距離及び現在位置の算出を行うか否か(有無)が決定される。
なお、走歩行系アクティビティの実施中の自律航法に係る計測部19による計測は、衛星電波受信処理部18の動作と比較して十分に消費電力が小さいので、衛星電波受信処理部18が正常に測位を行っている場合であっても動作を停止する必要はなく、計測期間中連続して動作させてもよい。しかしながら、より低消費電力に電子時計1を動作させる場合には、衛星電波受信処理部18の休止期間にのみ自律航法に必要な計測部19を動作させてもよい。非走歩行系アクティビティの実施中は、上記のように必要に応じて方位センサ192だけ動作してもよいし、あるいは、他の機能との併用を考慮して、計測部19の動作自体はアクティビティによらずに継続されてもよい。
【0025】
この場合の進行方向の変化は、スキーの個々の細かいターンなどを各々検出しないようにする一方で、徐々に方向が変わるカーブなどの検出が少なくとも一部で可能なように、累積的な方向変化と平均的な方向変化とを適宜考慮することとしてもよい。考慮の基準及び検出対象の角度変化の基準値(下限値)は、アクティビティの種別に応じて各々定められてもよい。
【0026】
図2は、走歩行系アクティビティ及び非走歩行系アクティビティでそれぞれ移動履歴を取得する場合の位置取得の例を示す図である。
【0027】
図2(a)に示すように、走歩行系アクティビティでは、例えば、休止期間(測位の結果を得られていない期間)を挟んで間欠的に衛星測位を行い(黒丸)、各休止期間では、当該休止期間よりも短い時間間隔で定期的に自律航法により移動方向及び時間ごとの移動距離(移動量)を算出して、基準となる衛星測位位置に対して加算していくことで現在位置を特定する(白丸)。このとき、自律航法により求められる位置は、加算回数が増えるにつれて誤差も累積していくので、前後の直近の衛星測位の結果に基づいて周知の技術により補正されてもよい。
【0028】
一方、
図2(b)に示すように、非走歩行系アクティビティでも間欠的に衛星測位が行われるが(黒丸)、その間の期間では自律航法による現在位置の算出が行われない。その代わりに、計測部19(特に方位センサ192)の計測により進行方向の変化が検出された場合に、追加で衛星電波受信処理部18による衛星測位が行われて各々進行方向の変更地点付近の位置を特定する(斜線ハッチされた丸)。このようにして、非走歩行系アクティビティでも大きく電力消費量を増加させずに移動経路の概略をつかむことの可能な計測が行われる。
【0029】
図3は、電子時計1で実行される移動履歴取得処理のCPU11による制御手順を示すフローチャートである。この移動履歴取得処理は、操作受付部15によりアクティビティの選択及び移動履歴の計測の開始に係る命令が取得された場合(取得手段)に開始される。
【0030】
CPU11は、選択されたアクティビティが走歩行系であるか否かを判別する(ステップS101)。走歩行系であると判別された場合には(ステップS101で“YES”)、CPU11は、衛星測位を中断中であるか否かを判別する(ステップS102)。
【0031】
衛星測位を中断中であると判別された場合には(ステップS102で“YES”)、CPU11は、前回の衛星測位から測位間隔が経過したか否かを判別する(ステップS103)。測位間隔が経過したと判別された場合には(ステップS103で“YES”)、CPU11は、衛星電波受信処理部18により衛星測位を再開させる(ステップS104)。それから、CPU11の処理は、ステップS120へ移行する。
【0032】
測位間隔に対応する時間が経過していないと判別された場合には(ステップS103で“NO”)、CPU11は、計測部19の計測値から、相対移動距離及び移動方向を算出する(ステップS105)。CPU11は、前回の位置にこの相対移動距離及び移動方向を加算することで、現在位置を特定する(ステップS106)。それから、CPU11の処理は、ステップS120へ移行する。
【0033】
ステップS102の判別処理で、衛星測位を中断中ではないと判別された場合には(ステップS102で“NO”)、CPU11は、衛星測位により現在位置が特定されたか否かを判別する(ステップS107)。現在位置が特定されたと判別された場合には(ステップS107で“YES”)、CPU11は、特定された現在位置を取得し、衛星測位を中断する(ステップS108)。それから、CPU11の処理は、ステップS120へ移行する。
【0034】
衛星測位により現在位置が特定されていないと判別された場合には(ステップS107で“NO”)、CPU11は、測位に係る処理の開始(再開)から継続上限時間が経過したか否かを判別する(ステップS109)。継続上限時間が経過していないと判別された場合には(ステップS109で“NO”)、CPU11の処理は、ステップS101に戻る。継続上限時間が経過したと判別された場合には(ステップS109で“YES”)、CPU11は、衛星電波受信処理部18による衛星測位の動作を中断させ(ステップS110)、それから、処理をステップS105へ移行させる。
【0035】
ステップS101の判別処理で、選択されているアクティビティが走歩行系ではないと判別された場合には(ステップS101で“NO”)、CPU11は、衛星測位を中断中であるか否かを判別する(ステップS111)。
【0036】
衛星測位を中断中であると判別された場合には(ステップS111で“YES”)、CPU11は、前回の衛星測位から測位間隔が経過したか否かを判別する(ステップS112)。測位間隔が経過したと判別された場合には(ステップS112で“YES”)、CPU11は、衛星電波受信処理部18による衛星測位を再開させる(ステップS115)。それから、CPU11の処理は、ステップS120へ移行する。
【0037】
測位間隔が経過していないと判別された場合には(ステップS112で“NO”)、CPU11は、計測部19の計測値から進行方向を特定する(ステップS113)。CPU11は、進行方向の変化が検出されたか否かを判別する(ステップS114)。進行方向の変化が検出されたと判別された場合には(ステップS114で“YES”)、CPU11の処理は、ステップS115へ移行する。進行方向の変化が検出されていないと判別された場合には(ステップS114で“NO”)、CPU11の処理は、ステップS120へ移行する。
【0038】
ステップS111の判別処理で、衛星測位を中断中ではないと判別された場合には(ステップS111で“NO”)、CPU11は、衛星測位により現在位置が特定されたか否かを判別する(ステップS116)。現在位置が特定されたと判別された場合には(ステップS116で“YES”)、CPU11は、特定された現在位置を取得し、衛星電波受信処理部18による衛星測位を中断させる(ステップS117)。それから、CPU11の処理は、ステップS120へ移行する。
【0039】
現在位置が特定されていないと判別された場合には(ステップS116で“NO”)、CPU11は、衛星測位の動作の継続上限時間が経過したか否かを判別する(ステップS118)。継続上限時間が経過していないと判別された場合には(ステップS118で“NO”)、CPU11の処理は、ステップS120へ移行する。継続上限時間が経過したと判別された場合には(ステップS118で“YES”)、CPU11は、衛星電波受信処理部18による衛星測位動作を中断させる(ステップS119)。それから、CPU11の処理は、ステップS120へ移行する。
【0040】
ステップS120の処理へ移行すると、CPU11は、アクティビティの計測を終了する命令が取得されたか否かを判別する(ステップS120)。計測を終了する命令が取得されていないと判別された場合には(ステップS120で“NO”)、CPU11の処理は、ステップS101に戻る。計測を終了する命令が取得されたと判別された場合には(ステップS120で“YES”)、CPU11は、移動履歴の取得に係る処理を終了して、移動履歴取得処理を終了する。
ステップS101、S102、S111の処理が、本実施形態の算出判別手段を構成する。
【0041】
図4は、走歩行系アクティビティ及び非走歩行系アクティビティでそれぞれ移動距離を取得する場合の移動距離取得の例を示す図である。
図4(a)に示すように、走歩行系アクティビティで衛星測位を行って得られた現在位置(黒丸)の変化量から移動距離を取得する途中で、衛星測位の結果が得られなくなった(取得に失敗した、例えば上記のように、トンネル内、地下、ビルや山の深い谷間など)場合(測位の結果を得られていない期間)には、自律航法による相対移動距離の計測に切り替えて(この場合、白丸で示している現在位置自体は必ずしも特定する必要がない)、当該相対移動距離を積算していくことで合計の移動距離が得られる。
【0042】
衛星測位の結果取得が再開された場合、再開後最初の位置(斜線ハッチされた丸)だけでは、前回位置からの移動距離が得られないので、前回位置からこのタイミングまでの移動距離は、引き続き自律航法により得られた距離とすることができる。自律航法の相対移動距離を積算して現在位置を特定した場合、累積した計測誤差を含む位置と衛星測位された現在位置とをつなぐ距離は、正確な値からのずれが大きくなる場合がある。
【0043】
一方、
図4(b)において、非走歩行系アクティビティで衛星測位を行って得られた現在位置(黒丸)の変化量から移動距離を取得する途中で、衛星測位の結果が得られなくなった場合、自律航法に係る処理は省略され、単純に次に衛星測位の結果が得られ次第、その現在位置(斜線ハッチされた丸)と、前回の位置との間の距離(時間的に隣り合う2点の位置の間の距離)が移動距離として求められる(破線)。
【0044】
あるいは、上記と同様に、計測部19の方位センサ192の計測結果に基づいて、進行方向が変化したタイミングと進行方向とを特定しておき、測位に成功した両側の2点間での経過時間(dt1+dt2)を各々の時間で移動方向ごとの移動距離を配分することで移動距離を求めてもよい。例えば、折れ曲がりが1回の場合、測位失敗前の位置からその時点での進行方向へ伸ばした直線と、測位失敗前後の2点からの距離がdt1:dt2となる水平面上の直線との交点を進行方向の変化点(三角)と推定して移動距離を求めてもよい。あるいは、移動距離の算出は、測位失敗期間の前後の移動速度の平均値に測位失敗の継続時間を乗じて求めてもよい。この場合には、計測部19による進行方向の変化の検出も不要である。なお、この場合、アクティビティの種類によっては、測位失敗期間内での移動距離の上限を両端の直線距離に対して定めることで、測位失敗期間中の一時停止などを考慮してもよい。
【0045】
図5は、移動量計測制御処理のCPU11による制御手順を示すフローチャートである。
この処理は、アクティビティの選択及び移動量計測の開始命令が操作受付部15などにより取得された場合(取得手段)に開始される。
【0046】
CPU11は、走歩行系アクティビティが選択されているか否かを判別する(ステップS141)。走歩行系アクティビティが選択されていると判別された場合(ステップS141で“YES”)、CPU11は、衛星測位結果(現在位置)の取得に失敗したか否かを判別する(ステップS142)。
【0047】
衛星測位の結果取得に失敗したと判別された場合には(ステップS142で“YES”)、CPU11は、計測部19の計測結果に基づいて前回の歩行者自律航法(PDR)で移動距離を求めたタイミングからの移動距離を算出する(ステップS143)。それから、CPU11の処理は、ステップS150へ移行する。
【0048】
衛星測位結果の取得に失敗していないと判別された場合には(ステップS142で“NO”)、CPU11は、現在位置を取得する(ステップS144)。CPU11は、前回測位結果の取得に失敗した状態からの復帰であるか否かを判別する(ステップS145)。
【0049】
失敗した状態からの復帰ではないと判別された場合には(ステップS145で“NO”)、CPU11は、前回の位置と現在位置との差分を求めて前回の衛星測位で得られた位置からの移動量を算出する(ステップS146)。それから、CPU11の処理は、ステップS150へ移行する。失敗した状態からの復帰であると判別された場合には(ステップS145で“YES”)、CPU11の処理は、ステップS143へ移行する。
【0050】
ステップS141の判別処理で、走歩行系アクティビティが選択されていない(非走歩行系アクティビティが選択されている)と判別された場合には(ステップS141で“NO”)、CPU11は、衛星測位の結果取得に失敗したか否かを判別する(ステップS147)。衛星測位の結果取得に失敗していないと判別された場合には(ステップS147で“NO”)、CPU11は、現在位置を取得する(ステップS148)。それから、CPU11の処理は、ステップS146へ移行する。この場合のステップS146における「前回位置」は、測位失敗からの復帰時には、測位失敗する前に測位で得られた位置である。
【0051】
衛星測位の結果取得に失敗したと判別された場合には(ステップS147で“YES”)、CPU11の処理は、ステップS150へ移行する。
【0052】
ステップS150の処理へ移行すると、CPU11は、アクティビティ計測の終了命令が取得されたか否かを判別する(ステップS150)。終了命令が取得されていないと判別された場合には(ステップS150で“NO”)、CPU11の処理は、ステップS141に戻る。終了命令が取得されたと判別された場合には(ステップS150で“YES”)、移動距離の計測に係る全ての処理を終了して、移動量計測制御処理を終了する。
ステップS141、S142、S147の処理が、本実施形態の算出判別手段を構成する。
【0053】
なお、上記では、間欠的な衛星電波受信による現在位置の変化履歴の取得と、短い時間間隔での測位結果の取得による移動量の取得とを例に挙げて説明したが、現在位置の変化履歴が取得されてもよいし、間欠的な衛星電波受信を行いながら自律航法を併用して移動量の取得を行ってもよい。後者の場合には、上記のように進行方向の変化を検出して測位を行えばよい。
【0054】
以上のように、本実施形態の身体装着型装置である電子時計1は、測位衛星からの電波を受信して測位を行う衛星電波受信処理部18と、自機の向き及び動きに係る計測を行う計測部19と、ユーザのアクティビティ(運動)の種別に係る情報を取得する取得部としての操作受付部15と、CPU11と、を備える。CPU11は、衛星電波受信処理部18による測位の結果を得られていない期間に、計測部19の計測結果に基づいて時間ごとの移動量を算出するか否かを、アクティビティの種別に応じて決定する。
このように、多様な(複数の)アクティビティ時の位置や移動量を含む計測が可能な場合に、アクティビティの種類を取得して、ユーザの運動種別を反映して自律航法に係る処理を行うか否かを決定して動作を切り替えることができるので、アクティビティの種類によっては良好な精度で結果を得られない自律航法に係る処理及び結果の取得を行わず、不自然な結果を混入させない。これにより、取得結果の精度低下を抑えることができる。
【0055】
また、CPU11は、アクティビティの種別が走歩行に係る動作を伴わないものである場合には、移動量を算出しない。従来、走歩行に係る自律航法での移動量の判定は相対的に精度よく結果を得られるが、走歩行を伴わない移動の場合には、自律航法の精度がよくない。したがって、走歩行に係る動作の有無におうじて自律航法による移動量の算出有無を切り替えることで、不自然に精度の低い計測データの混入を抑制することができる。
【0056】
また、CPU11は、移動量を算出しない場合には、衛星電波受信処理部18により得られた時間的に隣り合う2点の位置に基づいて当該2点間の移動距離を算出する。すなわち、測位が間欠的な場合や、測位に失敗した区間が含まれる場合でも、単純に成功した測位の結果だけを用いて移動距離を算出してもよい。この場合、折れ曲がりなどが全て省略されるので移動距離としては最小限の値になるが、移動距離を誤って水増し算出するのを避けることができる。
【0057】
また、CPU11は、休止期間を挟んで間欠的に衛星電波受信処理部18により測位を行わせ、自律航法による移動量を算出しない場合であって、かつ休止期間中に計測部19により進行方向の変化が検出された場合には、衛星電波受信処理部18により測位を行わせることができる。すなわち、進行方向が変化した場合に当該変化の位置を衛星測位により得ることができるので、最小限の衛星測位により電力消費の増大を抑えつつ、実際の移動に即した移動量を算出することが可能になる。
【0058】
また、電子時計1は、取得部として、入力操作を受け付ける操作受付部15を備える。CPU11は、操作受付部15が受け付けた操作により定められたアクティビティの種別に応じて自律測位による移動量の算出有無を決定する。このように、アクティビティ計測の開始時などにユーザがアクティビティ種別を入力操作することで、容易かつ確実にアクティビティの種別を特定し、当該種別に応じて自律航法の利用有無を定めて、不正確なデータの混入を抑えることができる。
【0059】
また、計測部19は、加速度センサ191及び方位センサ192のうち少なくともいずれかを含む。これにより、CPU11は、歩行時の方向転換などの動作の変化が生じたタイミングを容易に特定することができる。
【0060】
また、本実施形態の移動情報取得制御方法では、身体装着型装置(電子時計1)のユーザのアクティビティの種別に係る情報を取得し、衛星電波受信処理部18による測位の結果を得られていない期間に、計測部19の計測結果に基づいて時間ごとの移動量を算出するか否かを、アクティビティの種別に応じて決定する。
このような移動情報取得制御方法にでは、ユーザのアクティビティの種別を反映して自律航法に係る処理を行うか否かを決定して動作を切り替えることができるので、アクティビティの種類によっては良好な精度で結果を得られない自律航法に係る処理及び結果の取得を行わないこととして、取得結果の精度低下を抑えることができる。
【0061】
また、上記移動情報取得制御方法に係るプログラム131を、衛星電波受信処理部18及び計測部19を備える身体装着型装置(電子時計1)のコンピュータにインストールして実行させることで、容易にアクティビティに応じて適切な精度で移動軌跡や移動量の算出などを行うことができる。
【0062】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、自律航法の計測を行わない場合に、追加的に衛星測位を行うことを可能としたが、これに限られない。例えば、自律航法の計測有無に応じて衛星測位の間隔が変更されてもよい。
【0063】
また、上記実施の形態では、一定間隔での間欠的な衛星測位に対して進行方向の変化に応じて追加的に衛星測位を行うものとして説明したが、これに限られない。例えば、追加的な衛星測位が行われた場合には、そのタイミングから上記一定間隔後に次の衛星測位が行われるように定められてもよい。
【0064】
また、上記実施の形態では、ユーザの運動の種別を操作受付部15への入力操作により設定するものとして説明したが、これに限られない。アクティビティによって特徴的な加速度の変化パターンを計測部19の計測結果に基づいて判別して、アクティビティを推定してもよい。また、通信部16を介して取得された設定データなどに基づいて運動の種別が特定されてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、走歩行系か否かを判別基準としたが、移動動作パターンの周期と周期当たりの速度が精度よく定まるか否かで自律航法の併用有無を定めればよい。
【0066】
また、身体装着型装置である本実施形態の電子時計1は、常に身体に装着されて利用されなければならないわけではない。例えば、自転車に係るアクティビティの実行時にハンドルなどに取り付けられてもよい。
【0067】
また、身体装着型装置は、電子時計1に限られない。腕に装着される他の端末装置であるスマートウォッチなどのアクティビティ計であってもよいし、上腕、頭部、胴や脚部などに固定されて用いられるものであってもよい。
【0068】
また、上記実施の形態では、計測部19として加速度センサ191と方位センサ192を例に挙げて説明したが、これに限られない。その他のセンサ、例えばジャイロセンサなどが用いられてもよい。
【0069】
また、以上の説明では、本発明のユーザの運動の計測制御に係るプログラム131を記憶するコンピュータ読み取り可能な媒体としてフラッシュメモリなどの不揮発性メモリなどからなる記憶部13を例に挙げて説明したが、これに限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、HDD(Hard Disk Drive)、MRAMなどの他の不揮発性メモリや、CD-ROM、DVDディスクなどの可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、処理動作の内容及び手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0071】
[付記]
<請求項1>
衛星からの電波を受信して測位を行う測位処理部と、
自機の向き及び動きに係る計測を行う計測部と、
ユーザの運動の種別に係る情報を取得する取得部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記測位処理部による測位の結果を得られていない期間に、前記計測部の計測結果に基づいて時間ごとの移動量を算出するか否かを、前記運動の種別に応じて決定する、
身体装着型装置。
<請求項2>
前記制御部は、前記運動の種別がユーザの走歩行に係る動作を伴わないものである場合には、前記移動量を算出しない、請求項1記載の身体装着型装置。
<請求項3>
前記制御部は、前記移動量を算出しない場合には、前記測位処理部により得られた時間的に隣り合う2点の位置に基づいて当該2点間の移動距離を算出する、請求項2記載の身体装着型装置。
<請求項4>
前記制御部は、休止期間を挟んで間欠的に前記測位処理部により測位を行わせ、前記移動量を算出しない場合であって、かつ前記休止期間中に前記計測部により進行方向の変化が検出された場合には、前記測位処理部により測位を行わせる、請求項1記載の身体装着型装置。
<請求項5>
前記取得部は、入力操作を受け付ける操作受付部を備え、
前記制御部は、前記操作受付部が受け付けた操作により定められた前記運動の種別に応じて前記移動量の算出有無を決定する、
請求項1記載の身体装着型装置。
<請求項6>
前記計測部は、加速度センサ及び方位センサのうち少なくともいずれかを含む
請求項1記載の身体装着型装置。
<請求項7>
衛星からの電波を受信して測位を行う測位処理部と、自機の向き及び動きに係る計測を行う計測部と、を備える身体装着型装置の移動情報取得制御方法であって、
前記身体装着型装置のユーザの運動の種別に係る情報を取得し、
前記測位処理部による測位の結果を得られていない期間に、前記計測部の計測結果に基づいて時間ごとの移動量を算出するか否かを、前記運動の種別に応じて決定する、
移動情報取得制御方法。
<請求項8>
衛星からの電波を受信して測位を行う測位処理部と、自機の向き及び動きに係る計測を行う計測部と、を備える身体装着型装置のコンピュータを、
前記身体装着型装置のユーザの運動の種別に係る情報を取得する取得手段、
前記測位処理部による測位の結果を得られていない期間に、前記計測部の計測結果に基づいて時間ごとの移動量を算出するか否かを、前記運動の種別に応じて決定する算出判別手段、
として機能させるプログラム。
【符号の説明】
【0072】
1 電子時計
11 CPU
12 RAM
13 記憶部
131 プログラム
14 表示部
15 操作受付部
16 通信部
17 計時部
18 衛星電波受信処理部
19 計測部
191 加速度センサ
192 方位センサ