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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021604
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20240208BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20240208BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/26 200
B01D53/62
B01D53/14 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124550
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】521260123
【氏名又は名称】權 龍祥
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100221006
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 一磨
(72)【発明者】
【氏名】權 龍祥
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4D052
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA03
4D002CA01
4D002CA07
4D002CA13
4D002DA01
4D002DA02
4D002DA03
4D002DA11
4D002DA16
4D002DA21
4D002DA22
4D002DA31
4D002DA46
4D002EA02
4D002EA08
4D002FA01
4D002GB11
4D002HA08
4D020AA03
4D020BA01
4D020BA04
4D020BA16
4D020BA30
4D020BB01
4D020BB03
4D020BC01
4D020CA05
4D020CB08
4D020CC02
4D020CC09
4D020CC10
4D020DA01
4D020DA02
4D020DB03
4D020DB05
4D052AA02
4D052CE00
4D052HA01
(57)【要約】
【課題】アミン溶液内で二酸化炭素化合物を合成させ、小容量化して、二酸化炭素の回収を効率よくできる。
【解決手段】二酸化炭素を含む気体から前記二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収システム1である。二酸化炭素を含む気体が取り込まれ、前記気体から水分を除くことで前記気体の二酸化炭素濃度を高め、二酸化炭素濃度が高い気体を排出する二酸化炭素濃度アップ装置3と、二酸化炭素濃度アップ装置3から排出される気体を取り込み、アミン溶液により二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収槽2とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含む気体から前記二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収システムであって、
前記二酸化炭素を含む気体が取り込まれ、前記気体から水分を除くことで前記気体の二酸化炭素濃度を高め、二酸化炭素濃度が高い気体を排出する二酸化炭素濃度アップ手段と、
前記二酸化炭素濃度アップ手段から排出される気体を取り込み、アミン溶液を用いて二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収手段とを備える、
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項2】
前記二酸化炭素濃度アップ手段は、前記二酸化炭素を含む気体を、水分除去機構が配置された槽を有する循環路を、1回もしくは複数回循環させるものである、請求項1記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項3】
前記水分除去機構は、シリカゲルなどの吸収剤を設置する機構、あるいは除去フィルタや凝縮器などを設置する機構である、請求項2記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項4】
前記二酸化炭素回収手段は、前記アミン溶液を循環させることで、前記二酸化炭素を含む気体と気液接触させて前記気体中の二酸化炭素を回収するものである、
請求項1記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項5】
前記二酸化炭素を含む気体は、ケーシング内に二酸化炭素吸収材が配置されている吸収ユニットを備える二酸化炭素分離装置より取り込まれるものであり、
前記二酸化炭素吸収材が、常温で二酸化炭素を吸収し、加熱により二酸化炭素を分離するものであり、
前記二酸化炭素分離装置は、大気を前記ケーシング内の二酸化炭素吸収材を通じて加熱処理装置に給気として供給し、前記加熱処理装置の加熱処理後の排気でもって前記ケーシング内の二酸化炭素吸収材を加熱し、前記二酸化炭素吸収材から二酸化炭素を分離させるものである、請求項1記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項6】
前記二酸化炭素分離装置は、
前記ケーシングの一側に接続され前記二酸化炭素吸収材に大気を供給する第1配管と、
前記ケーシングの他側に設けられ、二酸化炭素吸収材を通過した大気を、給気として加熱処理装置内に供給する第2配管と、
前記第2配管に設けられる第1開閉バルブと、
一端が前記加熱処理装置に接続され、中間部分が前記ケーシング内の二酸化炭素吸収材内を通過し、他端が外部に開放され、前記加熱処理装置によって加熱された空気が流れる排気配管とを備え、
二酸化炭素吸収時には、前記第1配管を通じて二酸化炭素吸収材に前記二酸化炭素を含む気体を供給し、前記二酸化炭素吸収材を通過した後の前記気体を、前記第2配管を通じて、給気として前記加熱処理装置によって加熱処理した後の排気を前記排気配管を通じて流し、前記二酸化炭素吸収材から分離させる、
請求項5記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項7】
さらに、前記第1配管に接続され二酸化炭素を回収する回収管と、
前記第1配管と前記回収管との接続部分に設けられ前記二酸化炭素吸収材に前記気体を供給する第1状態と、前記二酸化炭素吸収材から分離される二酸化炭素を前記回収管を通じて回収する第2状態とを切り替える切替手段とを備え、
二酸化炭素吸収時には、前記切替手段を第1状態とする一方、二酸化炭素分離時には、前記切替手段を第2状態とする、
請求項6記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項8】
前記加熱処理装置は、加熱炉である、請求項5記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項9】
二酸化炭素吸収材は、リチウムシリケート、ナトリウムフェライト等の固形物の吸収材である、請求項5記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項10】
前記ケーシング内において、前記二酸化炭素吸収材の前記第1配管側に、大気の供給時に大気を分散して前記二酸化炭素吸収材に供給する金属製メッシュフィルタが配置されている、請求項6に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項11】
前記吸収ユニットは、第1及び第2ユニットが並列に配置されるものであり、
前記第1及び第2ユニットの一方が、二酸化炭素を吸収している状態にあるときには、前記第1及び第2ユニットの他方が二酸化炭素を分離している状態にある、
請求項6に記載の二酸化炭素回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気中の二酸化炭素を回収する方法として、セラミックス吸収材を用い、600℃程度で吸収し、800℃程度の熱で分離回収することが知られている。そのようなセラミックス吸収材を用いる方法は、高温での吸収、分離であるので、エネルギーコストも多くかかり、加熱炉の排気熱を利用する場合でも高温の炉が必要であり、用途が制限されている。そのため、多くの場合、大型プラントや大型設備でしか使用することができず、汎用性がなく、また投資も大規模なものが必要となる。
【0003】
そこで、二酸化炭素を短時間かつ低コストで分離することができるものとして、温度差によって二酸化炭素の吸収及び脱離が可能である二酸化炭素吸収材と、前記二酸化炭素吸収材に電磁波を照射して加熱する電磁波照射部と、を備える二酸化炭素分離装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1の技術では、二酸化炭素の回収に電磁波を照射して加熱する電磁波照射部を必要とするので、特殊な構造となり、回収コストが高くなる。
【0004】
本願出願人は、二酸化炭素吸収材(例えば、リチウムシリケート、ナトリウムフェライトなどの固形の吸収材)を有する給気路を通じて、二酸化炭素を含む気体(大気)を加熱炉内に、その際に二酸化炭素を吸収し、加熱路内で200~300℃に前記気体を加熱処理し、加熱処理後の排気で、二酸化炭素吸収材を加熱すれば、二酸化炭素吸収材から排熱を利用して二酸化炭素を分離できることに着想し、先に特許出願している(特願2021-098921参照)。
【0005】
つまり、二酸化炭素吸収材(例えば、リチウムシリケート、ナトリウムフェライトなどの固形の吸収材)を加熱炉の給気路に組み込み、給気路や排気路の構造を工夫して、一連の流れとして、二酸化炭素の吸収、分離、回収を行うことで、回収に要するエネルギーコストを低減でき、また、セラミック吸収材を用いる場合に比べて、吸収温度・分離温度を低下させることができるので、プラントではなく、小型の加熱炉(小規模の加熱処理装置を含む)でもできるようになり、汎用性も広がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-188319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、二酸化炭素の排出規制により、二酸化炭素の回収技術が様々研究されているが、いずれの装置も回収した二酸化炭素を小容量化するためには、昇圧設備や冷却設備などの初期投資も併せて必要になるため、設備費用が非常に多くかかるという課題がある。
【0008】
そこで、前述した特願2021-098921などにおいて排出される、二酸化炭素を含む気体の場合も含めて、前記二酸化炭素を含む気体を、アミン溶液(雰囲気)内を循環させ、二酸化炭素化合物を合成させて二酸化炭素を回収することで、小容量化でき、初期投資を抑えて二酸化炭素を回収できる。それに加えて、さらに循環させる前記二酸化炭素を含む気体二酸化炭素濃度を予め高めておけば、アミン溶液での二酸化炭素回収効率を向上できうることに着想し、本発明をなしたものである。
【0009】
本発明は、アミン溶液内での二酸化炭素化合物を合成させ、小容量化して、二酸化炭素の回収を効率よくできる二酸化炭素回収システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、二酸化炭素を含む気体から前記二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収システムであって、前記二酸化炭素を含む気体が取り込まれ、前記気体から水分を除くことで前記気体の二酸化炭素濃度を高め、二酸化炭素濃度が高い気体を排出する二酸化炭素濃度アップ手段と、前記二酸化炭素濃度アップ手段から排出される気体を取り込み、アミン溶液を用いて二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収手段とを備える、ことを特徴とする。
【0011】
このようにすれば、二酸化炭素濃度が高い気体を、アミン溶液中に循環供給することで、アミン溶液内で二酸化炭素化合物を合成させ、小容量化でき、初期投資を抑えて二酸化炭素を回収できる。それに加えて、前記二酸化炭素を含む気体の二酸化炭素濃度が高いので、アミン溶液での回収効率を向上できる。
【0012】
また、この二酸化炭素回収システムは、前記二酸化炭素濃度アップ手段が、前記二酸化炭素を含む気体を、水分除去機構が配置された槽を有する循環路を、1回もしくは複数回循環するものとすれば、アミン溶液を循環させて、二酸化炭素を含む気体と気液接触させるので、前記気体中の二酸化炭素が効率よく回収される。
【0013】
また、前記水分除去機構は、シリカゲルなどの吸収剤を設置する機構、あるいは除去フィルタや凝縮器などを設置する機構とすることができる。
【0014】
また、この二酸化炭素回収システムは、前記二酸化炭素回収手段が、前記アミン溶液を循環させることで、前記二酸化炭素を含む気体と気液接触させて前記気体中の二酸化炭素を回収するものである。このようにすれば、アミン溶液を循環させて、二酸化炭素を含む気体と気液接触させるので、前記気体の二酸化炭素濃度が効率よく回収される。
【0015】
また、この二酸化炭素回収システムは、さらに、前記二酸化炭素を含む気体が、ケーシング内に二酸化炭素吸収材が配置されている吸収ユニットを備える二酸化炭素分離装置より取り込まれるものであり、前記二酸化炭素吸収材が、常温で二酸化炭素を吸収し、加熱により二酸化炭素を分離するものであり、
前記二酸化炭素分離装置は、大気を前記ケーシング内の二酸化炭素吸収材を通じて加熱処理装置に給気として供給し、前記加熱処理装置の加熱処理後の排気でもって前記ケーシング内の二酸化炭素吸収材を加熱し、前記二酸化炭素吸収材から二酸化炭素を分離させるものである。
【0016】
ここで、加熱処理装置は、加熱処理に際し、供給された大気を加熱することになる装置であり、加熱炉等のように燃焼による場合のほか、電気ヒータによる電気炉なども含まれる。
【0017】
このようにすれば、加熱処理装置に、大気などの二酸化炭素を含む気体が供給される際に、二酸化炭素吸収材に二酸化炭素が吸収され、二酸化炭素分離時には、排気配管内に排気(加熱された気体)が流れ、その排気の熱を利用し、二酸化炭素吸収材を加熱し、二酸化炭素吸収材から二酸化炭素を分離させ、回収することができる。よって、排気の熱の利用のため、回収のエネルギーコストを低減できる。つまり、加熱処理装置の通常運転のエネルギーコストで、大気中の二酸化炭素を回収・分離することができる。
【0018】
また、この二酸化炭素回収システムは、前記二酸化炭素分離装置が、前記ケーシングの一側に接続され前記二酸化炭素吸収材に大気を供給する第1配管と、前記ケーシングの他側に設けられ、二酸化炭素吸収材を通過した大気を、給気として加熱処理装置内に供給する第2配管と、前記第2配管に設けられる第1開閉バルブと、一端が前記加熱処理装置に接続され、中間部分が前記ケーシング内の二酸化炭素吸収材内を通過し、他端が外部に開放され、前記加熱処理装置によって加熱された空気が流れる排気配管とを備え、二酸化炭素吸収時には、前記第1配管を通じて二酸化炭素吸収材に前記二酸化炭素を含む気体を供給し、前記二酸化炭素吸収材を通過した後の前記気体を、前記第2配管を通じて、給気として前記加熱処理装置によって加熱処理した後の排気を前記排気配管を通じて流し、前記二酸化炭素吸収材から分離させる構造とすることができる。
【0019】
さらに、前記第1配管に接続され二酸化炭素を回収する回収管と、前記第1配管と前記回収管との接続部分に設けられ前記二酸化炭素吸収材に前記気体を供給する第1状態と、前記二酸化炭素吸収材から分離される二酸化炭素を前記回収管を通じて回収する第2状態とを切り替える切替手段とを備え、二酸化炭素吸収時には、前記切替手段を第1状態とする一方、二酸化炭素分離時には、前記切替手段を第2状態とすれば、切替が容易となる。
【0020】
また、この二酸化炭素回収システムは、前記加熱処理装置を加熱炉とすれば、排気の排熱を、加熱に利用できる。そして、排熱の利用のため、回収のエネルギーコストを極めて低減できる。
【0021】
また、この二酸化炭素回収システムは、二酸化炭素吸収材に、リチウムシリケート、ナトリウムフェライト等の固形物の吸収材を用いることができる。
【0022】
また、この二酸化炭素回収システムは、前記ケーシング内において、前記二酸化炭素吸収材の前記第1配管側に、大気の供給時に大気を分散して前記二酸化炭素吸収材に供給する金属製メッシュフィルタが配置されているようにすれば、大気の供給時に大気を分散して二酸化炭素吸収材に導入させることができ、再利用に有効活用できる。
【0023】
また、この二酸化炭素回収システムは、そして、前記吸収ユニットは、第1及び第2ユニットが並列に配置されるものであり、前記第1及び第2ユニットの一方が、二酸化炭素を吸収している状態にあるときには、前記第1及び第2ユニットの他方が二酸化炭素を分離している状態にあるようにすることで、2つの吸収ユニットを交互に使用することで、効率よく回収することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、上記のように、二酸化炭素濃度が高い気体を、アミン溶液中を循環させることで、アミン溶液を用いて二酸化炭素化合物を合成し、二酸化炭素を回収するので、小容量化して、二酸化炭素の回収を効率よくできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る二酸化炭素回収システムの一実施の形態を示す全体図である。
図2】前記二酸化炭素回収システムに用いる二酸化炭素濃度アップ手段の一例を示す図である。
図3】本発明に係る二酸化炭素回収システムの別の実施の形態を示す全体図である。
図4図3に示す二酸化炭素分離装置の概略構成を示し、(a)は平面断面図、(b)は正面図である。
図5図4に示す二酸化炭素分離装置の変形例を示し、(a)は正面図、(b)は斜視図である。
図6図5に示す二酸化炭素分離装置を下側から見た状態を示し、(a)は下面図、(b)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る実施の形態を図面に沿って説明する。図1は本発明に係る二酸化炭素回収システムの一実施の形態を示す全体図である。
【0027】
図1に示すように、二酸化炭素回収システム1は、二酸化炭素回収槽2内に、二酸化炭素を含む気体(例えば大気)が、二酸化炭素濃度を高める二酸化炭素濃度アップ装置3を介して、導入口2aを通じて導入される。その際、導入口2aを通じての導入に先立って、導入路4、第1圧力センサ5、二酸化炭素濃度を検出する第1濃度センサ6、温度センサ7が順に設けられている。
【0028】
二酸化炭素回収槽2は、下部槽2Aと上部槽2Bとを有し、下部槽2A内にアミン溶液Aが貯留されている。アミン溶液の液面高さは、レベルセンサ8にて測定され、下部槽2Aでの液面高さが設定値より低くなると、給液バルブ9が開状態とされ、給液路10からのアミン溶液の供給により一定の液面高さが維持されるようになっている。
【0029】
下部槽Aのアミン溶液は、ポンプ11にて、下部槽2Aから上部槽2Bの充填剤槽12の上方まで供給路13を通じてくみ上げられ、スプレーノズル14から下方に散布させることで、充填剤層12内で、充填層12の下方の導入口2aより導入される二酸化炭素と、スプレーノズル14からの霧状のアミン溶液との気液接触が行われ、充填剤層12内を通過する際に二酸化炭素の吸収が促進され、散布されたアミン溶液は最終的に下部槽1Aに回収される。そのサイクルが繰り返し行われることで、アミン溶液による二酸化炭素の吸収処理が行われる。
【0030】
第2圧力センサ15にて供給路13を通じてのアミン溶液の供給圧が一定値以上になると、開閉バルブ16が閉じられる一方、リターン路17の開閉バルブ18が開かれ、アミン溶液は下部槽1Aに戻される。
【0031】
アミン溶液に二酸化炭素が吸収され、二酸化炭素を含まない排気が、上部槽2Bの排出口2bから排気路19を通じてブロア20にて大気に放出される。大気放出の際、二酸化炭素濃度を検出する第2濃度センサ21にて二酸化炭素濃度が測定され、二酸化炭素を含んでいると判定される場合には、大気放出が停止される。また、濃度センサ6,21により、供給される気体と排出される気体との二酸化炭素濃度をモニタリングすることによって、アミン溶液の吸収能力が飽和状態に達したことが判定される。
【0032】
アミン溶液が飽和状態となり、二酸化炭素を吸収できなくなると、開閉バルブ22が開かれ、アミン溶液は下部槽1Aから排出路23を通じて排出され、新しいアミン溶液が給液路10を通じて充填される。つまり、アミン溶液の交換が行われる。
【0033】
二酸化炭素吸収のためのアミン溶媒としては、モノエタノールアミン(MEA)、メチルジエタノールアミン(MDEA)、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、及びピペラジン(PZ/PIPA)などを使用する。使用するアミン濃度は20~30wt%水溶液である。
【0034】
一般的には、1級・2級・3級アミンを比較すると、CO2吸収量・吸収速度は1級>2級>3級の順に、放散量・反応熱は3級>2級>1級の順に優れている。このように吸収量と反応熱はトレードオフの関係を有するため、使用するアミンはいずれか1種類でもよいが、反応性、腐食性などの面から複数のアミンを混合してもよい。
【0035】
以下にアミンと二酸化炭素の反応式を示す。アミン溶液を用いた二酸化炭素吸収はアミンと二酸化炭素が反応し、炭酸イオンを生成する化学反応を利用した二酸化炭素の吸収技術である。
【0036】
【数1】
【0037】
このように、二酸化炭素回収槽2にアミン溶液を入れ、二酸化炭素を含む気体を通すことにより、アミン溶液に二酸化炭素を吸着させる。後述するように、導入口2aを通じて挿入する気体としては、特願2021-098921にて分離された二酸化炭素を含む気体を対象とすることもできる。
【0038】
二酸化炭素濃度アップ装置3(二酸化炭素濃度アップ手段)は、図2に一例を示すように、二酸化炭素を含む気体が注入される注入路31及び排出される排出路32を有するケーシング33と水分吸収剤(例えば、シリカゲル)が配置されている水分除去槽34(水分除去機構)と、それらの間で前記気体を循環させる循環路35とを備え、注入路31、排出路32及び循環路35には、開閉弁36,37,38が設けられている。なお、前記水分除去機構は、水分吸収剤(例えば、シリカゲル)が設置されている水分除去槽34に代えて、除去フィルタや凝縮器などが設置されている機構とすることも可能である。
【0039】
そして、二酸化炭素を含む気体を、循環路35を通じて循環させ、水分除去槽34を繰り返し通過させることで、水分吸収剤によって水分が除かれ、結果として二酸化炭素濃度が高められる。なお、循環路35の循環は、複数回でもよく、1回だけでもよい。
【0040】
なお、アミン溶液を循環する二酸化炭素回収槽には一般的に排ガスの無害化に用いられるスクラバー(洗浄装置)を利用するので、アミン溶液は腐食性を有するが、スクラバー自体が強アルカリや強酸雰囲気に耐えうる仕様となっているため、腐食性に関する懸念は回避される。
【0041】
排出路23を通じて排出される飽和状態となったアミン溶液は定期的にローリー車により回収され、別工場にて吸収した二酸化炭素が分離され、再利用される。
【0042】
<第2実施形態>
次に、上記の二酸化炭素回収槽と、二酸化炭素濃度アップ装置と、加熱炉を利用した二酸化炭素分離装置(特願2021-098921参照)とを、図3に示すように組み合わせることもできる。これにより、昇圧設備や冷却設備などの初期投資が莫大な付帯設備を導入することなく、二酸化炭素の回収が実現される。
【0043】
この場合、二酸化炭素分離装置50は、図4(a)(b)に示すように、吸収ユニット51を備え、この吸収ユニット51のケーシング54の中心を排気配管52が貫通し、それの外側に環状の二酸化炭素吸収材53が配置されている。二酸化炭素吸収材53は、常温で二酸化炭素を吸収し、200~300℃の加熱により分離する固形物の吸収材(例えば、リチウムシリケート、ナトリウムフェライト等の固形物の吸収材)で、この装置50は、加熱処理装置(例えば加熱炉の炉体58)に接続して用いられる。
【0044】
二酸化炭素吸収材53は、空気中の二酸化炭素を吸収するもので、設置可能な量で対象となる空間の二酸化炭素濃度を制御可能な二酸化炭素の吸収速度を有し、二酸化炭素吸収後、加熱により再度二酸化炭素を吸収できる再生が可能なものであればよく、その種類は特に限定されない。例えば、Li2ZrO3、LiFeO2、LiNiO2、Li2TiO3、Li2SiO3、Li4SiO4等リチウム系複合酸化物や、ナトリウムフェライト等であればよい。
【0045】
特に、水溶性を示す4価のリチウムシリケートと炭酸カリウムからなる二酸化炭素吸収材は、通常の室内環境において二酸化炭素吸収速度が非常に早く、好適である。また、二酸化炭素吸収材53の形状は、二酸化炭素濃度制御を行う空気がスムーズに流通でき、ケーシング54内に内包できる形状、たとえばペレット状や、フィルタ形状に形成されていればよい(特開2021-20209号公報参照)。
【0046】
そして、ケーシング54の一側には、切替バルブ56を有し大気(給気)を二酸化炭素吸収材53に導入する第1配管57を有し、他側には、二酸化炭素吸収材53を通過した大気を加熱炉の炉体58に供給する、第1開閉バルブ59を有する第2配管60が接続されている。二酸化炭素吸収材53の第1配管57側には、給気時に大気を吸収材に分散して導入できるように金属製メッシュフィルタ61が配置されている。
【0047】
排気配管2は、一端が第2開閉バルブ62を介して炉体58(具体的には、炉内排気管)に接続され、他端が外部に開放されている。この第2開閉バルブ62は、二酸化炭素分離時には、開状態とされ、炉体58内からの排気が排気配管2を流れることで、排熱によって二酸化炭素吸収材53を加熱し、二酸化炭素吸収材53から二酸化炭素を分離させる。
【0048】
切替バルブ56は、導入される大気を二酸化炭素吸収材53に流す第1状態と、二酸化炭素吸収材53から分離した二酸化炭素を、回収管66に流す第2状態とを選択的に取り得るようになっている。第1の状態では、導入された大気が二酸化炭素吸収材53内に導入され、第2の状態では、二酸化炭素吸収材53から分離した二酸化炭素が、回収管66に流れる。
【0049】
よって、加熱炉の炉体58への給気時には、図2(a)に示すように、切替バルブ56は第1状態とされ、第1開閉バルブ59は開状態とされ、第2開閉バルブ62は閉状態とされる。
【0050】
これにより、第1配管57を通じて導入された大気が、二酸化炭素吸収材53を通過し、通過後の大気は第2配管60を通じて、加熱炉の炉体58内に供給される。大気が二酸化炭素吸収材53を通過している際に、二酸化炭素が二酸化炭素吸収材53に吸収され、大気から除かれる。
【0051】
一定時間経過すると、二酸化炭素吸収材53に二酸化炭素が十分吸収され、蓄積されるので、二酸化炭素吸収材53から二酸化炭素を分離し回収する作業に移ることになる。このとき、切替バルブ56は第2状態とされ、第1開閉バルブ59は閉状態とされ、第2開閉バルブ62は開状態とされる。
【0052】
そして、加熱炉の炉体58内から加熱処理後の排気が排気配管52を通じて、外部に排出され、その排出される際に、ケーシング54内を排気が通過し、排気配管52周囲に配置されている二酸化炭素吸収材53を加熱するので、二酸化炭素吸収材53から二酸化炭素を分離させる。この分離した二酸化炭素は、第1配管57を通じて回収管66に排出され、二酸化炭素濃度アップ装置3に送られる。よって、排熱を利用することで、エネルギーを無駄に使うことなく、二酸化炭素の回収がなされる。
【0053】
前記実施の形態では、吸収ユニットは1つであるが、図3に示すように、2つの吸収ユニット(、第1及び第2ユニット55A,55B)を備えるようにすることも可能である。この場合には、第1及び第2ユニット55A,55Bの一方が、二酸化炭素を吸収している状態にあるときには、第1及び第2ユニット55A,55Bの他方が二酸化炭素を分離している状態にある。
【0054】
大気導入側の配管構成は、ユニット55A,55Bのいずれに給気するかを切り替える切替バルブ71を有し二酸化炭素吸収材に給気する主管72a及び主管72aから分岐して二酸化炭素吸収材(ユニット55A,55B)に給気する分岐管72a,72bを有する第1配管72と、各吸収ユニット55A,55Bの排気配管に接続される第1排気管73とを備える。また、第1配管72の主管72aには、回収管に接続される継手74aを有する配管74の両端が接続され、配管74の、主管72a付近には開閉バルブ75,75が設けられている。
【0055】
炉体58側の配管構成は、炉体58に接続される継手81を有し端部がユニット55A,55B(二酸化炭素吸収材)に接続されている主配管82aと、主配管82aから分岐して延びユニット55A,55B(二酸化炭素吸収材)に接続される2つの分岐管82b,82bとを有する第2配管32と、主配管82aの両端部付近及び分岐管82b,82bに設けられている開閉バルブ83,83,83,83とを有する。また、開閉バルブ84を有し炉体58内を各ユニット55A,55Bの排気配管に接続する第2排気管85を備える。
【0056】
二酸化炭素吸収時には、切替バルブ71を第1状態、第1開閉バルブ83を開状態、第2開閉バルブ85を閉状態とする一方、二酸化炭素分離時には、切替バルブ71を第2状態、第1開閉バルブ83を閉状態、第2開閉バルブ85を開状態とするものである。
【0057】
よって、ユニット55A,55Bの一方が、二酸化炭素を吸収している際には、他方のユニット55A,55Bが二酸化炭素を分離し、二酸化炭素を回収することになる。
【0058】
<その他の実施形態>
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記の実施形態では、炉体の排気が配管を通じてケーシング内の二酸化炭素吸収材を加熱しているが、二酸化炭素吸収材を別の配管内に配置する構成とし、炉体の排気がケーシング内の配管外を通過する構成とすることも可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1 二酸化炭素回収システム
2 二酸化炭素回収槽(二酸化炭素回収手段)
2A 下部槽
2B 上部槽
2a 導入口
2b 排出口
3 二酸化炭素濃度アップ装置(二酸化炭素濃度アップ手段)
4 導入路
5,15 圧力センサ
6,21 濃度センサ
7 温度センサ
8 レベルセンサ
9 給液バルブ
10 給液路
11 ポンプ
12 充填剤層
13 供給路
14 スプレーノズル
16,18,22 開閉バルブ
17 リターン路
19 排気路
20 ブロア
23 排出路
31 注入路
32 排出路
33 ケーシング
34 水分除去槽(水分除去機構)
35 循環路
36,38 開閉バルブ
A アミン溶液
図1
図2
図3
図4
図5
図6