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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021618
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】印刷システム
(51)【国際特許分類】
   D06B 11/00 20060101AFI20240208BHJP
   D06H 3/08 20060101ALI20240208BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240208BHJP
   D06P 5/30 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
D06B11/00 A
D06H3/08
B41J2/01 451
B41J2/01 401
D06P5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124590
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼津 直樹
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 弘
(72)【発明者】
【氏名】小澤 欣也
(72)【発明者】
【氏名】岩上 欧史
【テーマコード(参考)】
2C056
3B154
4H157
【Fターム(参考)】
2C056EA05
2C056EB13
2C056EB45
2C056EC26
2C056EC28
2C056EC43
2C056FB03
2C056HA58
3B154AB19
3B154AB28
3B154BA09
3B154BB33
3B154BC08
3B154BD01
3B154CA01
3B154CA23
3B154DA13
4H157AA02
4H157GA06
4H157GA34
(57)【要約】
【課題】布帛に対して適切な印刷液を選定できる印刷システムを提供する。
【解決手段】印刷システム10は、印刷液を布帛99に吐出することによって布帛に印刷する印刷部22と、布帛を観察することによって観察データD2を取得する観察部28と、を含む少なくとも1つの第1システム11と、少なくとも1つの第1システムとネットワークを介して通信するシステムであって、印刷前の布帛を観察部が観察することによって得られた印刷前観察データD3を取得する取得部44と、機械学習によって学習済みのモデルであって、印刷前観察データが入力されることによって、印刷前観察データが示す布帛に対して推奨される印刷液である推奨液の物性パラメーターを出力するモデルM1を記憶する記憶部43と、モデルが出力した物性パラメーターを示す推奨データD6を、少なくとも1つの第1システムに出力する出力部45と、を含む第2システム12と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷液を布帛に吐出することによって前記布帛に印刷する印刷部と、
前記布帛を観察することによって観察データを取得する観察部と、
を含む少なくとも1つの第1システムと、
前記少なくとも1つの第1システムとネットワークを介して通信するシステムであって、
印刷前の前記布帛を前記観察部が観察することによって得られた印刷前観察データを取得する取得部と、
機械学習によって学習済みのモデルであって、前記取得部が取得した前記印刷前観察データが入力されることによって、前記印刷前観察データが示す前記布帛に対して推奨される印刷液である推奨液の物性パラメーターを出力する前記モデルを記憶する記憶部と、
前記モデルが出力した前記物性パラメーターを示す推奨データを、前記少なくとも1つの第1システムに出力する出力部と、
を含むシステムである第2システムと、
を備える印刷システム。
【請求項2】
前記物性パラメーターは、前記推奨液の粘性、前記推奨液の表面張力、及び、前記布帛に対する前記推奨液の接触角の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1システムは、複数の第1システムのうちの1つであり、
前記取得部は、前記複数の第1システムのそれぞれから前記印刷前観察データを取得し、
前記出力部は、前記複数の第1システムのうち、前記モデルに入力された前記印刷前観察データの取得元である第1システムに対して、前記モデルが出力した前記推奨データを出力することを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1システムは、前記推奨データを表示する表示部を備えることを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、布帛に印刷を実施する第1システムと、第1システムと通信する第2システムとを含む印刷システムが記載されている。第2システムは、第1システムから布帛に関する情報を取得する。第2システムは、取得した情報に基づいて、推奨する印刷条件を第1システムに出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-73092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
布帛においては、その種別ごとに印刷液の浸透性が異なる。布帛に対する印刷液の浸透性が変わると、印刷液が滲みやすくなったり、印刷液が定着しにくくなったりすることによって、画質が変化する。そのため、特許文献1に記載の印刷システムでは、所定の画質を得るために、布帛の種別に合わせて適切な印刷条件をユーザーに提示する。しかし、ユーザーによっては、所定の画質を得るために、印刷液の選択によって対応したい場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する印刷システムは、印刷液を布帛に吐出することによって前記布帛に印刷する印刷部と、前記布帛を観察することによって観察データを取得する観察部と、を含む少なくとも1つの第1システムと、前記少なくとも1つの第1システムとネットワークを介して通信するシステムであって、印刷前の前記布帛を前記観察部が観察することによって得られた印刷前観察データを取得する取得部と、機械学習によって学習済みのモデルであって、前記取得部が取得した前記印刷前観察データが入力されることによって、前記印刷前観察データが示す前記布帛に対して推奨される印刷液である推奨液の物性パラメーターを出力する前記モデルを記憶する記憶部と、前記モデルが出力した前記物性パラメーターを示す推奨データを、前記少なくとも1つの第1システムに出力する出力部と、を含むシステムである第2システムと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】印刷システムの一実施形態を示すブロック図である。
図2】推奨する物性パラメーターを推測する推測処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、印刷システムの一実施形態について図を参照しながら説明する。印刷システムは、織物、編物などの布帛に印刷液の一例であるインクを吐出することによって、文字、写真などの画像を印刷するインクジェット式のプリンターを含むシステムである。
【0008】
<印刷システム>
図1に示すように、印刷システム10は、少なくとも1つの第1システム11と、1つの第2システム12とを含む。印刷システム10は、例えば、複数の第1システム11と、1つの第2システム12とを含む。印刷システム10は、少なくとも1つの第1システム11と、1つの第2システム12とが、ネットワークを介して通信可能に接続されることによって構成される。
【0009】
<第1システム>
複数の第1システム11は、何れも共通の構成である。そのため、複数の第1システム11については、1つの第1システム11を代表して説明する。
【0010】
第1システム11は、布帛99に印刷を実施するシステムである。第1システム11は、例えば、布帛99に捺染を施すことによって、布帛99に印刷を実施する。第1システム11は、例えば、ユーザーに所有される。複数の第1システム11は、例えば、複数のユーザーにそれぞれ所有される。一のユーザーが、複数の第1システム11のうち2つ以上の第1システム11を所有してもよい。
【0011】
第1システム11は、印刷装置21を含む。印刷装置21は、布帛99に印刷を実施する装置である。
印刷装置21は、印刷部22を備える。印刷部22は、印刷液を吐出することによって布帛99に印刷するように構成される。印刷部22は、ヘッド23を有する。ヘッド23は、1以上のノズル24を有する。ヘッド23は、ノズル24から布帛99に印刷液を吐出する。
【0012】
印刷部22は、キャリッジ25を有してもよい。キャリッジ25は、ヘッド23を搭載する。キャリッジ25は、布帛99に対して走査する。印刷装置21は、例えば、キャリッジ25とともにヘッド23が布帛99に対して走査するシリアルプリンターである。印刷装置21は、ヘッド23が布帛99の幅にわたって一斉に印刷液を吐出可能なラインプリンターでもよい。
【0013】
印刷装置21には、例えば、カートリッジ26が装着される。カートリッジ26は、印刷液を収容する。カートリッジ26は、印刷装置21に対して着脱自在である。カートリッジ26は、例えば、印刷部22に装着される。印刷装置21にカートリッジ26が装着されることによって、カートリッジ26に収容される印刷液がヘッド23に供給される。
【0014】
カートリッジ26は、ICチップ27を有する。ICチップ27は、印刷液データD1を記憶する。印刷液データD1は、印刷液に関するデータである。ICチップ27は、カートリッジ26が収容する印刷液に関する印刷液データD1を記憶する。
【0015】
印刷液データD1は、印刷液の物性パラメーターを示すデータを含む。印刷液の物性パラメーターは、印刷液の粘性、印刷液の表面張力、及び、布帛99に対する印刷液の接触角の少なくとも1つを含む。ICチップ27は、印刷液データD1として、印刷液の粘性、印刷液の表面張力、及び、布帛99に対する印刷液の接触角を記憶する。印刷液の物性パラメーターは、布帛99に対する印刷液の浸透性に影響する。すなわち、印刷液の物性パラメーターは、布帛99に印刷される画像の画質に影響する。
【0016】
第1システム11は、観察部28を備える。観察部28は、布帛99を観察することによって観察データD2を取得する。具体的には、観察部28は、布帛99を観察することによって、観察画像を生成する。観察部28は、布帛99の観察画像を観察データD2として取得する。観察データD2は、布帛99に関するデータである。観察画像は、布帛99を画像として電子化したデータである。
【0017】
観察部28は、例えば、X線CT検査装置である。この場合、観察部28は、布帛99にX線を照射することによって布帛99を観察する。観察部28は、観察データD2として、布帛99のCT画像を取得する。観察部28は、X線CT検査装置に限らず、電子顕微鏡でもよいし、光学顕微鏡でもよいし、デジタルカメラでもよい。
【0018】
観察データD2は、印刷前観察データD3を含む。印刷前観察データD3は、印刷される前の布帛99を観察部28が観察することによって得られるデータである。印刷前観察データD3は、印刷前の布帛99をユーザーが観察部28に観察させることによって得られる。
【0019】
観察データD2は、印刷後観察データD4を含む。印刷後観察データD4は、印刷された後の布帛99を観察部28が観察することによって得られるデータである。印刷後観察データD4は、印刷後の布帛99をユーザーが観察部28に観察させることによって得られる。
【0020】
第1システム11は、表示部29を備える。表示部29は、情報を表示するように構成される。表示部29は、例えば、第2システム12から受信した情報を表示する。表示部29は、例えば、ディスプレイである。
【0021】
第1システム11は、操作部30を備える。操作部30は、例えば、ポインティングデバイスでもよいし、タッチパネルでもよい。ユーザーは、操作部30を操作することによって、第1システム11にデータを入力したり、第1システム11に指示を与えたりできる。
【0022】
第1システム11は、制御部31を備える。制御部31は、第1システム11を制御する。制御部31は、例えば、操作部30を通じてユーザーから指示を受信することによって、その指示に沿って第1システム11を制御する。制御部31は、第2システム12と通信する。制御部31は、第2システム12とデータを授受する。
【0023】
制御部31は、印刷装置21に内包された構成でもよいし、印刷装置21とは別の独立した装置でもよい。制御部31は、例えば、印刷装置21が備えるCPUでもよいし、印刷装置21と接続されるコンピューター端末でもよい。
【0024】
制御部31は、コンピュータープログラムにしたがって各種処理を実行する1つ以上のプロセッサーで構成されてもよい。制御部31は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路などの1つ以上の専用のハードウェア回路で構成されてもよい。制御部31は、プロセッサー及びハードウェア回路の組み合わせを含む回路で構成されてもよい。プロセッサーは、CPU、ならびに、RAM及びROMなどのメモリーを含む。メモリーは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納する。メモリー、すなわちコンピューター可読媒体は、汎用又は専用のコンピューターでアクセスできるあらゆる可読媒体を含む。
【0025】
制御部31は、印刷液データD1を取得する。制御部31は、例えば、ICチップ27から印刷液データD1を読み出すことによって、印刷液データD1を取得する。制御部31は、例えば、操作部30を通じて印刷液データD1を取得してもよい。この場合、ユーザーは、カートリッジ26に記載された情報、例えばカートリッジ26の型番を、操作部30を通じて制御部31に入力する。制御部31は、入力された情報をもとに、例えばデータベースを検索することによって、印刷液データD1を取得してもよい。
【0026】
制御部31は、観察データD2を取得する。制御部31は、例えば、観察部28が観察画像を生成するたびに、観察部28から観察データD2を取得する。制御部31は、観察画像を画像解析してもよい。制御部31は、印刷前の布帛99を観察した観察画像を画像解析することによって、布帛99の特徴量を取得してもよい。制御部31は、例えば、観察画像にフーリエ変換を施すことによって得られるスペクトルを解析する。これにより、制御部31は、観察画像を画像解析する。布帛99の特徴量は、例えば、布帛99を構成する糸の太さ、糸の密度、織り方、編み方など、布帛99の構造を示す量である。制御部31は、布帛99の特徴量を観察データD2として取得してもよい。すなわち、観察データD2は、布帛99の観察画像、その観察画像をもとに得られる情報、又は、その双方を示すデータである。
【0027】
制御部31は、印刷後の布帛99を観察した観察画像を画像解析することによって、布帛99の特徴量と、布帛99に印刷された画像の画質を示す評価値とを取得してもよい。画質の評価値によって、画質が定量的に評価される。画質とは、滲み、鮮鋭性、色味、粒状性、バンディング、階調、などである。評価値は、布帛99の特徴量と同様に、観察画像が画像解析されることによって得られる。この場合、観察データD2は、評価値を含む。
【0028】
制御部31は、目標画像データD5を取得する。目標画像データD5は、布帛99に印刷される画像の電子データである。制御部31は、例えば、第1システム11と通信する端末、第1システム11と接続される記憶媒体などから、目標画像データD5を取得する。制御部31は、取得した目標画像データD5が示す画像を布帛99に印刷する。
【0029】
制御部31は、印刷後観察データD4と目標画像データD5とを画像解析することによって、画質の変化を示す変化値を取得してもよい。観察データD2は、変化値を含んでもよい。変化値によれば、布帛99に印刷される画像によらず、画質が精度よく評価される。
【0030】
制御部31は、印刷液データD1を第2システム12に送信する。すなわち、制御部31は、すなわち、印刷に使用している印刷液の物性パラメーターを含むデータを第2システム12に送信する。制御部31は、観察データD2を第2システム12に送信する。制御部31は、印刷前観察データD3を第2システム12に送信する。すなわち、制御部31は、印刷予定の布帛99に関するデータを第2システム12に送信する。印刷前観察データD3は、第2システム12において入力データとして使用される。制御部31は、印刷後観察データD4を送信する。すなわち、制御部31は、印刷後の布帛99に関するデータを第2システム12に送信する。制御部31は、目標画像データD5を第2システム12に送信してもよい。すなわち、制御部31は、印刷予定の目標画像を示すデータを第2システム12に送信してもよい。
【0031】
制御部31は、印刷に伴い取得される複数のデータを、データセットDSとして第2システム12に送信する。データセットDSは、例えば、印刷液データD1と印刷後観察データD4とが互いに関連付けられたデータである。具体的には、制御部31は、印刷に使用した印刷液の物性パラメーターを示すデータと、その印刷液によって印刷した後の布帛99に関するデータとを互いに関連付けた状態で、第2システム12に送信する。データセットDSは、布帛99と印刷液との組み合わせに対する画質変化を示す。例えば、データセットDSにおいて、布帛99と印刷液との相性が良い場合、画質が高くなる。データセットDSは、第2システム12において教師データとして使用される。
【0032】
データセットDSは、目標画像データD5を含んでもよい。すなわち、制御部31は、印刷液データD1と印刷後観察データD4と目標画像データD5とがそれぞれ関連付けられた状態で、第2システム12に送信してもよい。具体的には、制御部31は、印刷に使用した印刷液の物性パラメーターを示すデータと、その印刷液によって印刷した後の布帛99に関するデータと、印刷予定の目標画像を示すデータとをそれぞれ関連付けた状態で、第2システム12に送信してもよい。
【0033】
データセットDSは、印刷前観察データD3を含んでもよい。すなわち、制御部31は、印刷液データD1と印刷前観察データD3と印刷後観察データD4とがそれぞれ関連付けられた状態で、第2システム12に送信してもよい。具体的には、制御部31は、印刷に使用した印刷液の物性パラメーターを示すデータと、印刷予定の布帛99に関するデータと、その印刷液によって印刷した後の布帛99に関するデータとをそれぞれ関連付けた状態で、第2システム12に送信してもよい。制御部31は、印刷液データD1と印刷前観察データD3と印刷後観察データD4と目標画像データD5とがそれぞれ関連付けられた状態で、第2システム12に送信してもよい。
【0034】
<第2システム>
第2システム12は、第1システム11と通信するシステムである。第2システム12は、第1システム11と情報を授受する。第2システム12は、複数の第1システム11と情報を授受する。第2システム12は、ベンダーに所持される。
【0035】
第2システム12は、サーバー装置41を含む。サーバー装置41は、制御部31と通信する。
サーバー装置41は、制御回路42を備える。制御回路42は、第2システム12を制御する。制御回路42は、例えば、CPUを含む。制御回路42は、制御部31と同様に、1つ以上のプロセッサーで構成されてもよいし、1つ以上の専用のハードウェア回路で構成されてもよいし、プロセッサー及びハードウェア回路の組み合わせを含む回路で構成されてもよい。
【0036】
制御回路42は、記憶部43を有する。記憶部43は、例えば、RAM及びROMなどのメモリーである。記憶部43は、第1システム11から受信したデータを記憶する。記憶部43は、第1システム11から受信したデータセットDSを蓄積する。記憶部43は、例えば、印刷液データD1、印刷前観察データD3、印刷後観察データD4、及び、目標画像データD5などを記憶する。記憶部43は、複数の第1システム11のそれぞれから受信したデータセットDSを蓄積する。データセットDSが蓄積されることによって、ビッグデータが構成される。
【0037】
記憶部43は、機械学習によって学習済みのモデルM1を記憶する。モデルM1は、布帛99に対する適切な印刷液を推測するモデルである。モデルM1は、入力データが入力されると、推奨する印刷液、すなわち推奨液に関するデータを出力する。具体的には、モデルM1は、印刷前観察データD3が入力されると、印刷前観察データD3が示す布帛99に対して推奨される印刷液の物性パラメーター、すなわち推奨液の物性パラメーターを出力する。より詳しくは、モデルM1は、印刷前観察データD3が入力されると、印刷前観察データD3が示す布帛99に対して所定以上の画質が得られると推測する印刷液の物性パラメーターを出力する。すなわち、モデルM1は、印刷前観察データD3が示す布帛99に対して、出力する物性パラメーターを有する印刷液を用いると、所定以上の画質が得られると推測する。推奨液の物性パラメーターは、上述したように、推奨液の粘性、推奨液の表面張力、及び、布帛99に対する推奨液の接触角の少なくとも1つを含む。なお、推測の結果として、第1システム11のユーザーが既に用意している印刷液が、推奨される印刷液、すなわち推奨液と一致する場合もあるし、一致しない場合もある。
【0038】
モデルM1は、記憶部43に蓄積されるデータセットDSを用いて学習されたモデルである。モデルM1は、例えば、印刷液データD1と印刷後観察データD4とが互いに関連付いた教師データに基づいて制御回路42が機械学習を実施することによって構築される。教師データは、データセットDSから構成される。複数の第1システム11によって蓄積されたデータセットDSを教師データとして用いることによって、モデルM1の出力精度が向上する。
【0039】
教師データは、印刷液データD1及び印刷後観察データD4の他に、印刷前観察データD3を含んでもよい。印刷前観察データD3においては、布帛99に印刷液が付着していないため、印刷後観察データD4よりも布帛99の特徴量が抽出されやすい。特に、印刷液が付着することによって、布帛99の状態が変化する場合があることを考慮すると、印刷前観察データD3を用いる方が、布帛99の特徴量を精度よく抽出できる。そのため、モデルM1の学習精度が向上すると考えられる。
【0040】
教師データは、印刷液データD1及び印刷後観察データD4の他に、目標画像データD5を含んでもよい。この場合、モデルM1は、目標画像の画質と印刷後観察データD4が示す画質との変化具合を学習できる。この場合、モデルM1は、目標画像に対する画質変化を小さくするように、推奨する印刷液の物性パラメーターを出力できる。例えば、モデルM1は、目標画像データD5と同等の画質を得るにあたって推奨する印刷液の物性パラメーターを出力できる。また、教師データは、評価値を含んでもよいし、変化値を含んでもよい。
【0041】
モデルM1は、回帰モデルである。モデルM1は、教師データをもとに、布帛99の特徴量と印刷液の物性パラメーターとの組み合わせに対する画質変化の条件を学習する。学習手法は、例えば、ニューラルネットワークによる教師有り学習、いわゆるディープラーニングである。
【0042】
サーバー装置41は、取得部44を備える。取得部44は、情報を取得するためのインターフェースである。取得部44は、第1システム11から情報を取得する。取得部44は、例えば、第1システム11からデータセットDSを取得する。すなわち、取得部44は、複数の第1システム11から教師データを取得する。取得部44は、例えば、第1システム11から印刷前観察データD3を取得する。すなわち、取得部44は、複数の第1システム11から入力データを取得する。
【0043】
サーバー装置41は、出力部45を備える。出力部45は、情報を出力するためのインターフェースである。出力部45は、例えば、第1システム11に情報を出力する。出力部45は、推奨データD6を第1システム11に出力する。推奨データD6は、モデルM1が出力した印刷液に関するデータである。推奨データD6は、例えば、モデルM1が出力した印刷液の物性パラメーター、すなわち推奨液の物性パラメーターを示すデータである。出力部45は、複数の第1システム11のうち、モデルM1に入力された入力データの取得元である第1システム11に対して、推奨データD6を出力する。推奨データD6は、表示部29に表示される。これにより、第1システム11のユーザーは、布帛99に対して適切な印刷液を選定できる。
【0044】
推奨データD6は、モデルM1が出力する印刷液の物性パラメーターに限らず、その物性パラメーターを有する印刷液の型番、種別などを示す情報でもよい。例えば、制御回路42は、モデルM1が出力する印刷液の物性パラメーターをもとに、その物性パラメーターを有する印刷液を選定してもよい。この場合、制御回路42は、例えば、データベースを検索することによって、モデルM1が出力する印刷液の物性パラメーターに近しい印刷液を選定する。出力部45は、制御回路42が選定した印刷液を示す情報を推奨データD6として、第1システム11に出力してもよい。
【0045】
<フローチャート>
次に、印刷液の推測方法を示す推測処理について説明する。推測処理は、第1システム11において布帛99に印刷が実行される前に、印刷システム10において実行される。推測処理は、例えば、ユーザーが印刷予定の布帛99を観察部28に観察させることを契機に開始される。
【0046】
図2に示すように、ステップS11において、取得部44が第1システム11から印刷前観察データD3を取得する。
ステップS12において、制御回路42が印刷前観察データD3をモデルM1に入力する。これにより、推奨データD6が得られる。
【0047】
ステップS13において、出力部45が推奨データD6を第1システム11に出力する。
ステップS14において、表示部29が推奨データD6を表示する。ユーザーは、表示部29に表示される推奨データD6を確認することによって、印刷予定の布帛99に対して適切な印刷液を選定できる。
【0048】
<印刷システムの作用及び効果>
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)第2システム12は、機械学習によって学習済みのモデルであって、取得部44が取得した印刷前観察データD3が入力されることによって、印刷前観察データD3が示す布帛99に対して推奨する印刷液である推奨液の物性パラメーターを出力するモデルM1を記憶する記憶部43を備える。
【0049】
印刷前観察データD3には、布帛99に関する情報が含まれる。したがって、上記構成によれば、印刷前観察データD3に基づいて、印刷前観察データD3が示す布帛99に印刷を実行するにあたって、推奨する印刷液の物性パラメーター、すなわち推奨液の物性パラメーターをユーザーに提示できる。これにより、ユーザーは、布帛99に対して適切な印刷液を選定できる。
【0050】
(2)推奨液の物性パラメーターは、推奨液の粘性、推奨液の表面張力、及び、布帛99に対する推奨液の接触角の少なくとも1つを含む。
推奨液の粘性、表面張力、布帛99に対する接触角は、布帛99に対する推奨液の浸透性に影響する。したがって、上記構成によれば、ユーザーは、第2システム12によって提示された推奨液の物性パラメーターをもとに印刷液を選定することによって、布帛99に対して適切な印刷を実行できる。
【0051】
(3)取得部44は、複数の第1システム11のそれぞれから印刷前観察データD3を取得する。出力部45は、複数の第1システム11のうち、モデルM1に入力された印刷前観察データD3の取得元である第1システム11に対して、モデルM1が出力した印刷液の物性パラメーターを示すデータを出力する。上記構成によれば、印刷システム10は、複数の第1システム11のそれぞれに、布帛99に対して推奨する印刷液の物性パラメーターを提示できる。
【0052】
(4)第1システム11は、推奨データD6を表示する表示部29を備える。
上記構成によれば、ユーザーは、表示部29を確認することによって、推奨される物性パラメーターを有する印刷液を選定できる。
【0053】
<変更例>
上記実施例は、以下のように変更して実施できる。上記実施例及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0054】
・モデルM1は、制御回路42とは別の回路が教師データを用いて訓練モデルに機械学習させることによって構築されてもよい。
・制御回路42が、観察データD2及び目標画像データD5に含まれる画像を、画像解析してもよい。すなわち、制御部31に代えて、制御回路42が布帛99の特徴量を抽出してもよいし、画質を評価してもよい。
【0055】
・推奨データD6が示す印刷液の物性パラメーターに基づいて、制御部31が印刷液を選定してもよい。この場合、表示部29は、制御部31が選定した印刷液を示す情報を推奨データD6として表示してもよい。
【0056】
<技術的思想>
以下に、上述した実施例及び変更例から把握される技術的思想及びその作用効果を記載する。
【0057】
(A)印刷システムは、印刷液を布帛に吐出することによって前記布帛に印刷する印刷部と、前記布帛を観察することによって観察データを取得する観察部と、を含む少なくとも1つの第1システムと、前記少なくとも1つの第1システムとネットワークを介して通信するシステムであって、印刷前の前記布帛を前記観察部が観察することによって得られた印刷前観察データを取得する取得部と、機械学習によって学習済みのモデルであって、前記取得部が取得した前記印刷前観察データが入力されることによって、前記印刷前観察データが示す前記布帛に対して推奨される印刷液である推奨液の物性パラメーターを出力する前記モデルを記憶する記憶部と、前記モデルが出力した前記物性パラメーターを示す推奨データを、前記少なくとも1つの第1システムに出力する出力部と、を含むシステムである第2システムと、を備える。
【0058】
印刷前観察データには、布帛に関する情報が含まれる。したがって、上記構成によれば、印刷前観察データに基づいて、印刷前観察データが示す布帛に印刷を実行するにあたって、推奨する印刷液の物性パラメーターをユーザーに提示できる。これにより、ユーザーは、布帛に対して適切な印刷液を選定できる。
【0059】
(B)上記印刷システムにおいて、前記物性パラメーターは、前記推奨液の粘性、前記推奨液の表面張力、及び、前記布帛に対する前記推奨液の接触角の少なくとも1つを含んでもよい。
【0060】
推奨液の粘性、表面張力、布帛に対する接触角は、布帛に対する印刷液の浸透性に影響する。したがって、上記構成によれば、ユーザーは、第2システムによって提示された推奨液の物性パラメーターをもとに印刷液を選定することによって、布帛に対して適切な印刷を実行できる。
【0061】
(C)上記印刷システムにおいて、前記少なくとも1つの第1システムは、複数の第1システムのうちの1つであり、前記取得部は、前記複数の第1システムのそれぞれから前記印刷前観察データを取得し、前記出力部は、前記複数の第1システムのうち、前記モデルに入力された前記印刷前観察データの取得元である第1システムに対して、前記モデルが出力した前記推奨データを出力してもよい。上記構成によれば、印刷システムは、複数の第1システムのそれぞれに、布帛に対して推奨する印刷液の物性パラメーターを提示できる。
【0062】
(D)上記印刷システムにおいて、前記少なくとも1つの第1システムは、前記推奨データを表示する表示部を備えてもよい。
上記構成によれば、ユーザーは、表示部を確認することによって、推奨される物性パラメーターを有する印刷液を選定できる。
【符号の説明】
【0063】
10…印刷システム、11…第1システム、12…第2システム、21…印刷装置、22…印刷部、23…ヘッド、24…ノズル、25…キャリッジ、26…カートリッジ、27…ICチップ、28…観察部、29…表示部、30…操作部、31…制御部、41…サーバー装置、42…制御回路、43…記憶部、44…取得部、45…出力部、99…布帛、D1…印刷液データ、D2…観察データ、D3…印刷前観察データ、D4…印刷後観察データ、D5…目標画像データ、D6…推奨データ、DS…データセット、M1…モデル。
図1
図2