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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002162
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
H04R17/00 330G
H04R17/00 330J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101202
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】滝 辰哉
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019AA21
5D019BB02
5D019BB14
5D019EE01
5D019EE04
5D019FF01
5D019GG01
5D019GG05
(57)【要約】
【課題】超音波成分の残響を十分に低減することができる超音波トランスデューサを提供する。
【解決手段】超音波トランスデューサ1は、底部21及び筒形状の側部22を有し、収容空間Sを画成している音響整合部材2と、収容空間S内において、底部21上に配置されている圧電素子4と、収容空間S内において、圧電素子4上に配置されている発泡体6と、を備える。側部22の内面22aは、発泡体6と接している傾斜部24を有し、傾斜部24は、側部22の方向Dにおいて圧電素子4から離れるにつれて、外側に広がるように傾斜している。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部及び筒形状の側部を有し、収容空間を画成しているケースと、
前記収容空間内において、前記底部上に配置されている圧電素子と、
前記収容空間内において、前記圧電素子上に配置されている発泡体と、を備え、
前記側部の内面は、前記発泡体と接している傾斜部を有し、
前記傾斜部は、前記側部の軸方向において前記圧電素子から離れるにつれて、外側に広がるように傾斜している、
超音波トランスデューサ。
【請求項2】
前記圧電素子と前記発泡体との間に、空間が形成されている、
請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項3】
前記発泡体は、第一領域及び第二領域を有し、
前記第一領域は、前記傾斜部と接し、前記第二領域よりも高い密度を有している、
請求項1又は2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項4】
前記第一領域は、前記軸方向において前記圧電素子と前記第二領域との間に配置されている、
請求項3に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項5】
前記第二領域は、前記軸方向において前記第一領域よりも長い、
請求項3に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項6】
前記傾斜部は、前記側部の全周にわたって設けられている、
請求項1又は2に記載の超音波トランスデューサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、有底筒状のキャップ体と、キャップ体内部の底面に形成される圧電素子と、内部枠体と、制振材と、を備える超音波トランスデューサが記載されている。この超音波トランスデューサでは、超音波成分の残響が制振材によって抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2007/069609号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波トランスデューサには、超音波成分の残響の更なる低減が求められている。しかしながら、上述の超音波デバイスは、超音波成分の残響を十分に低減しがたい。
【0005】
本発明の一つの態様は、超音波成分の残響を十分に低減することができる超音波トランスデューサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの形態に係る超音波トランスデューサは、底部及び筒形状の側部を有し、収容空間を画成しているケースと、収容空間内において、底部上に配置されている圧電素子と、収容空間内において、圧電素子上に配置されている発泡体と、を備え、側部の内面は、発泡体と接している傾斜部を有し、傾斜部は、側部の軸方向において圧電素子から離れるにつれて、外側に広がるように傾斜している。
【0007】
上記一つの態様では、ケースの側部の傾斜部が発泡体と接していると共に、圧電素子から離れるにつれて外側に広がるように傾斜している。圧電素子から発せられた超音波成分は、発泡体に吸収された後、側部により反射されて圧電素子に戻り、残響となるおそれがある。上述の傾斜部により反射された超音波成分は、発泡体の内側に向かって反射され易い。よって、超音波成分の残響を十分に抑制することができる。
【0008】
上記一つの態様では、圧電素子と発泡体との間に、空間が形成されていてもよい。この場合、圧電素子の振動が発泡体により阻害されることが抑制される。
【0009】
上記一つの態様では、発泡体は、第一領域及び第二領域を有し、第一領域は、傾斜部と接し、第二領域よりも高い密度を有していてもよい。この場合、第一領域により制振効果が奏されると共に、第二領域により吸音効果が奏される。
【0010】
上記一つの態様では、第一領域は、軸方向において圧電素子と第二領域との間に配置されていてもよい。この場合、第二領域が圧電素子と第一領域との間に配置されている構成に比べて、第二領域による吸音効果を維持しながら、第一領域による制振効果を向上させることができる。
【0011】
上記一つの態様では、第二領域は、軸方向において第一領域よりも長くてもよい。この場合、第一領域による制振効果を維持しながら、第二領域による吸音効果を向上させることができる。
【0012】
上記一つの態様では、傾斜部は、側部の全周にわたって設けられていてもよい。この場合、圧電素子から発せられた超音波成分が傾斜部により反射され易いので、超音波成分の残響を一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一つの態様によれば、超音波成分の残響を十分に低減することができる超音波トランスデューサが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第一実施形態に係る超音波トランスデューサを示す斜視図である。
図2図2は、超音波トランスデューサの分解斜視図である。
図3図3は、超音波トランスデューサの断面図である。
図4図4は、ケースの平面図である。
図5図5(a)は圧電素子の底面図であり、図5(b)は圧電素子の側面図であり、図5(c)は圧電素子の平面図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、超音波成分の反射についての説明図である。
図7図7は、第二実施形態に係る超音波トランスデューサの断面図である。
図8図8は、第三実施形態に係る超音波トランスデューサの断面図である。
図9図9は、第四実施形態に係る超音波トランスデューサのケースの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0016】
(第一実施形態)
図1図5を参照して、第一実施形態に係る超音波トランスデューサ1の構成を説明する。超音波トランスデューサ1は、音響整合部材2(ケース)と、圧電素子4と、発泡体6と、不図示の配線部材と、を備える。
【0017】
超音波トランスデューサ1は、圧電素子4によって、超音波を発する、又は、受けた超音波を検出する超音波送受装置である。超音波トランスデューサ1が超音波を発する場合には、たとえば、圧電素子4に交流電圧が印加され、当該交流電圧によって圧電素子4が連続的に変位する。圧電素子4の変位に応じて、超音波トランスデューサ1から超音波が発せられる。超音波トランスデューサ1が超音波を検出する場合には、たとえば、受けた超音波に起因する圧電素子4の変位によって圧電素子4に起電力が発生する。起電力の発生によって超音波を受けたか否かが検出され、発生した起電力の大きさによって超音波の音圧又は音圧レベルなどが検出される。超音波トランスデューサ1は、たとえば、車載用超音波センサ、ガスセンサとして用いられる。
【0018】
音響整合部材2は、収容空間Sを画成しているケースを構成する。収容空間Sには、圧電素子4及び発泡体6が収容されている。音響整合部材2は、少なくとも圧電素子4の一部を覆って、圧電素子4の音響インピーダンスを補整する。音響整合部材2は、その形状、構造、及び材料によって、圧電素子4の音響インピーダンスと、音響整合部材2の周囲に存在する媒質のインピーダンスとの整合を図る。媒質は、たとえば、空気又は空気以外のガスを含む。
【0019】
音響整合部材2は、有底筒状を呈している。音響整合部材2は、底部21及び側部22を有している。本実施形態では、底部21及び側部22は、一部材として一体に形成されている。音響整合部材2は、たとえば、アルミニウム等の金属からなる。音響整合部材2が金属からなる構成では、音響整合部材2が樹脂からなる構成に比べて、音響整合部材2が振動し易いので、超音波の送受信感度を向上させることができる。音響整合部材2は、たとえば、エポキシ等の樹脂からなってもよい。音響整合部材2が樹脂からなる構成によれば、音響整合部材2が金属からなる構成に比べて、音響整合部材2の残響成分が抑制され易い。よって、超音波成分の残響を十分に低減することができる。
【0020】
底部21は、円盤形状を呈している。底部21は、圧電素子4の変位に応じて超音波を発する、又は、外部からの超音波を受けて圧電素子4に振動を伝達する部分である。底部21は、収容空間Sに臨むように位置している内面21aと、上記媒質に臨むように位置している外面21bと、を有している。内面21aと外面21bとは、図3にも示されているように、方向Dで互いに対向している。本実施形態では、方向Dは、内面21aに直交する方向と一致していると共に、外面21bに直交する方向と一致している。
【0021】
内面21a及び外面21bは、方向Dから見て、たとえば、円形状を呈している。本実施形態では、内面21aは略平坦である。外面21bは、超音波トランスデューサ1における超音波の発信面及び受信面を構成している。底部21には、テーパー部21cが設けられている。テーパー部21cは、内面21aから外面21b側に向かって先細りになっている。
【0022】
側部22は、筒形状を呈している。本実施形態では、側部22は、円筒形状を呈している。側部22は、底部21から、側部22の軸方向に延在している。本実施形態では、側部22は、方向Dに延在している。つまり、側部22の軸方向は、方向Dと一致している。側部22は、収容空間Sに臨むように位置している内面22aと、上記媒質に臨むように位置している外面22bと、を有している。内面22aと外面22bとは、図3にも示されているように、方向Dに直交する方向において互いに対向している。内面22aは、内面21aと共に、収容空間Sを規定している。
【0023】
側部22の内面22aは、方向Dに対して平行な平行部23と、方向Dに対して傾斜している傾斜部24と、を有している。平行部23及び傾斜部24は、方向Dにおいて隣り合っている。傾斜部24は、方向Dにおいて、底部21の内面21aと平行部23との間に配置されている。傾斜部24は、内面21aと平行部23とを接続している。平行部23及び傾斜部24は、いずれも側部22の全周にわたって設けられている。平行部23及び傾斜部24は、いずれも発泡体6と接している。平行部23の方向Dの長さは、たとえば、傾斜部24の方向Dの長さよりも長い。
【0024】
傾斜部24は、方向Dにおいて圧電素子4から離れるにつれて、外側に広がるように傾斜している。本実施形態では、傾斜部24は、底部21の内面21aに接続されている。よって、傾斜部24は、方向Dにおいて底部21の内面21aから離れるにつれて、外側に広がるように傾斜している。傾斜部24は、テーパー形状を有している。
【0025】
平行部23は、内面22aのうち、傾斜部24以外の部分全体に設けられている。本実施形態では、側部22の外面22bは、方向Dに対して平行である。よって、平行部23では、側部22の厚さ(内面22a及び外面22b間の長さ)は、均一である。傾斜部24では、側部22の厚さは、方向Dにおいて底部21の内面21aから離れるにつれて薄くなる。
【0026】
圧電素子4は、収容空間S内において、底部21の内面21a上に配置されている。圧電素子4は、収容空間Sに配置されている。圧電素子4は、内面21aに接着部材(不図示)で固定されている。圧電素子4は、側部22の内面22aから離間して設けられている。
【0027】
図5に示されるように、圧電素子4は、圧電素体40と、一対の電極41,42と、を有している。圧電素体40は、円板形状を呈している。圧電素体40は、互いに対向している一対の主面40a,40bと、主面40aと主面40bとを連結している側面40cと、を有している。一対の主面40a,40bは、方向Dで互いに対向している。主面40a,40bは、円形状を呈している。
【0028】
圧電素体40は、複数の圧電体層(不図示)が積層されて構成されている。各圧電体層は、圧電材料からなる。本実施形態では、各圧電体層は、圧電セラミック材料からなる。圧電セラミック材料には、たとえば、PZT[Pb(Zr,Ti)O]、PT(PbTiO)、PLZT[(Pb,La)(Zr,Ti)O]、又はチタン酸バリウム(BaTiO)が用いられる。各圧電体層は、たとえば、上述した圧電セラミック材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。実際の圧電素体40では、各圧電体層は、各圧電体層の間の境界が認識できない程度に一体化されている。圧電素体40内には、複数の内部電極(不図示)が配置されていてもよい。各内部電極は、導電性材料からなる。導電性材料には、たとえば、Ag、Pd、又はAg-Pd合金が用いられる。
【0029】
電極41は、主面40a、主面40b、及び側面40cに配置されている。電極41は、主面40a、側面40c及び主面40bにわたって配置されている。電極41は、電極部分41a、電極部分41b、及び電極部分41cを含んでいる。電極部分41aは、主面40aに配置され、略円形状を呈している。電極部分41bは、主面40bに配置されている。電極部分41cは、側面40cに配置され、電極部分41aと電極部分41bとを接続している。電極42は、電極部分41bから離間して主面40bに配置されている。電極42は、円形が一部切り欠かれた形状を呈している。
【0030】
電極41と電極42とは、互いに離間している。主面40a,40bの対向方向(方向D)から見て、電極部分41bの面積は、電極42の面積より小さい。電極41及び電極42は、導電性材料からなる。導電性材料には、たとえば、Ag、Pd、又はAg-Pd合金が用いられる。電極41及び電極42は、たとえば、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。
【0031】
発泡体6は、収容空間Sにおいて、圧電素子4上に配置されている。発泡体6は、制振材及び吸音材として機能する。発泡体6は、厚さ方向(方向D)において互いに対向している第一面6a及び第二面6bを有している。第一面6aは、圧電素子4の主面40bと方向Dにおいて対向している。本実施形態では、第一面6aは、圧電素子4と接している。第一面6aは、圧電素子4に圧接されていてもよい。第二面6bは、側部22の先端と同じ高さに位置している。
【0032】
発泡体6は、第一領域R1及び第二領域R2を有している。第一領域R1は、第一面6aを含み、傾斜部24と接している。第二領域R2は、第二面6bを含み、平行部23と接している。第一領域R1は、方向Dにおいて、圧電素子4と第二領域R2との間に配置されている。第二領域R2の厚さt2は、第一領域R1の厚さt1よりも厚い。すなわち、第二領域R2は、方向Dにおいて、第一領域R1よりも長い。
【0033】
発泡体6は、たとえば、シリコンスポンジである。発泡体6は、熱可塑性樹脂を主体とする発泡体であってもよい。熱可塑性樹脂は、たとえば、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)を含む。発泡体6は、導電性を有さない。発泡体6は、圧縮可能に構成されている。発泡体6は、吸音効果及び制振効果を有する。発泡体6が圧縮されて密度が高まると、吸音効果が低下し、制振効果が向上する。
【0034】
発泡体6は、たとえば、図2に示されるように、収容空間Sに収容されていない状態では円柱形状を呈している。この状態の発泡体6は、側部22の平行部23の内径と同等以上の直径、すなわち、傾斜部24の内径よりも大きな直径を有する。よって、発泡体6が収容空間Sに収容された状態において、少なくとも第一領域R1は傾斜部24により圧縮される。第二領域R2が平行部23により圧縮される場合でも、少なくとも、第一領域R1の密度は、第二領域R2の密度よりも高くなる。
【0035】
配線部材は、圧電素子4と電気的に接続されている。配線部材は、例えば、一対のリード線であり、圧電素子4の電極41及び電極42と電気的に接続されている。配線部材は、例えば、方向Dから見て発泡体6の中央部に設けられた貫通孔を通じて、音響整合部材2の外側に引き出されている。配線部材は、フレキシブル基板により構成されていてもよい。フレキシブル基板は、たとえば、フレキシブルプリント基板(FPC)又はフレキシブルフラットケーブル(FFC)である。
【0036】
図6を参照して、第一実施形態に係る超音波トランスデューサ1の効果について説明する。図6(a)に示されるように、比較例に係る超音波トランスデューサ100では、側部22の内面22aが傾斜部24を有さず平行部23のみからなる。超音波トランスデューサ100では、圧電素子4から発せられ、発泡体6に吸収された超音波成分は、内面22aにより反射されて圧電素子4に戻り、残響となり易い。
【0037】
これに対し、超音波トランスデューサ1では、側部22の内面22aが傾斜部24を有する。よって、図6(b)に示されるように、内面22aにより反射された超音波成分は、再び発泡体6の内側に向かい易い。よって、超音波トランスデューサ1によれば、超音波成分の残響を十分に抑制することができる。
【0038】
発泡体6は、高密度の第一領域R1及び低密度の第二領域R2を有している。よって、発泡体6では、第一領域R1により制振効果が奏されると共に、第二領域R2により吸音効果が奏される。第一領域R1は、方向Dにおいて圧電素子4と第二領域R2との間に配置されている。これにより、第二領域R2が方向Dにおいて圧電素子4と第一領域R1との間に配置されている構成に比べて、第二領域R2による吸音効果を維持しながら、第一領域R1による制振効果を向上させることができる。第二領域R2の厚さt2は、第一領域R1の厚さt1よりも厚い。よって、第一領域R1による制振効果を維持しながら、第二領域R2による吸音効果を向上させることができる。
【0039】
側部22は傾斜部24を含めて一部材として一体で形成されているので、側部22が複数の部材の組み合わせにより構成されている場合に比べて、側部22から内部に伝わる振動が生じ難い。
【0040】
(第二実施形態)
図7は、第二実施形態に係る超音波トランスデューサの断面図である。図7に示される第二実施形態に係る超音波トランスデューサ1Aと、超音波トランスデューサ1との主な相違点は、側部22が互いに別部材である第一部材25及び第二部材26を有する点である。第一部材25及び底部21は、一部材として一体に形成されている。第一部材25は、均一な厚さを有する円筒形状を呈している。第一部材25の内面の一部は、側部22の内面22aのうちの平行部23を構成している。
【0041】
第二部材26は、底部21の内面21a上、かつ、第一部材25の内側に配置されている。第二部材26は、方向Dにおいて底部21の内面21aから離れるにつれて、厚さが薄くなる円筒形状を呈している。第二部材26の外面は、方向Dに平行であり、第一部材25の内面と接して設けられている。第二部材26の内面は、側部22の内面22aのうちの傾斜部24を構成している。第二部材26は、たとえば、第一部材25及び底部21に接着部材により固定されていてもよい。第二部材26は、第一部材25と同じ材料により形成されていてもよいし、異なる材料により形成されていてもよい。
【0042】
超音波トランスデューサ1Aにおいても、側部22の内面22aが傾斜部24を有するので、超音波成分の残響を十分に抑制することができる。超音波トランスデューサ1Aでは、側部22は、底部21及び側部22の第一部材25とは、別体として設けられた第二部材26を含んでいる。側部22がこのような別部材を含むことにより、側部22の強度を向上させることができる。
【0043】
(第三実施形態)
図8は、第三実施形態に係る超音波トランスデューサの断面図である。図8に示される第三実施形態に係る超音波トランスデューサ1Bと、超音波トランスデューサ1との主な相違点は、圧電素子4と発泡体6との間に、空間S1が形成されている点である。超音波トランスデューサ1Bでは、発泡体6は空間S1を挟んで圧電素子4から離間している。発泡体6は、圧電素子4に当接していないので、圧電素子4の振動が発泡体6により阻害されることが抑制される。空間S1の厚さは、例えば、第一領域R1の厚さt1及び第二領域R2の厚さt2よりも小さい。
【0044】
超音波トランスデューサ1Bにおいても、側部22の内面22aが傾斜部24を有するので、超音波成分の残響を十分に抑制することができる。
【0045】
(第四実施形態)
図9は、第三実施形態に係る超音波トランスデューサの断面図である。図9に示される第三実施形態に係る超音波トランスデューサ1Cと、超音波トランスデューサ1との主な相違点は、傾斜部24が側部22の全周に設けられていない点である。超音波トランスデューサ1Cでは、側部22の内面22aは、方向Dに直交する方向で互いに対向している一対の傾斜部24を有している。各傾斜部24は、側部22の全周の約1/4の長さにわたって設けられている。各傾斜部24は、側部22の周方向において平行部23と隣り合って設けられている。
【0046】
超音波トランスデューサ1Cでは、側部22の内面22aが傾斜部24を有するので、超音波成分の残響を十分に抑制することができる。超音波トランスデューサ1Cでは、傾斜部24が側部22の全周には設けられていないので、超音波トランスデューサ1に比べて、圧電素子4が配置されている内面21aの振動を抑制し難い。超音波トランスデューサ1Cでは、傾斜部24の数は2つであるが、1つでもよいし、3つ以上であってもよい。また、一対の傾斜部24は、方向Dに直交する方向で互いに対向して設けられているが、傾斜部24の設けられる位置は、これに限られない。
【0047】
以上、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、第一領域R1の密度、及び、第二領域R2の密度は、同等であってもよい。発泡体6が収容空間Sに収容されていない状態において、発泡体6が収容空間Sと同等の形状を有していれば、発泡体6が収容空間Sに収容された状態において、第一領域R1の密度、及び、第二領域R2の密度を同等とすることができる。上記実施形態及び変形例は、適宜組み合わされてもよい。
【0048】
上述した実施形態及び変形例の記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す態様の開示を含んでいる。
(付記1)
底部及び筒状の側部を有し、収容空間を画成しているケースと、
前記収容空間内において、前記底部上に配置されている圧電素子と、
前記収容空間内において、前記圧電素子上に配置されている発泡体と、を備え、
前記側部は、前記発泡体と接している傾斜部を有し、
前記傾斜部は、前記側部の軸方向において前記圧電素子から離れるにつれて、外側に広がるように傾斜している、
超音波トランスデューサ。
(付記2)
前記圧電素子と前記発泡体との間に、空間が形成されている、
付記1に記載の超音波トランスデューサ。
(付記3)
前記発泡体は、第一領域及び第二領域を有し、
前記第一領域は、前記傾斜部と接し、前記第二領域よりも高い密度を有している、
付記1又は2に記載の超音波トランスデューサ。
(付記4)
前記第一領域は、前記軸方向において前記圧電素子と前記第二領域との間に配置されている、
付記3に記載の超音波トランスデューサ。
(付記5)
前記第二領域は、前記軸方向において前記第一領域よりも長い、
付記3又は4に記載の超音波トランスデューサ。
(付記6)
前記第一領域は、前記軸方向において前記圧電素子と前記第二領域との間に配置されている、
付記1~5のいずれか一つに記載の超音波トランスデューサ。
【符号の説明】
【0049】
1,1A,1B,1C…超音波トランスデューサ、2…音響整合部材、4…圧電素子、6…発泡体、21…底部、22…側部、22a…内面、24…傾斜部、R1…第一領域、R2…第二領域、S…収容空間、S1…空間。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9