(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021627
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】エレベータの安全装置
(51)【国際特許分類】
B66B 5/06 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B66B5/06 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124604
(22)【出願日】2022-08-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】鳥谷 昭之
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304EA24
3F304EB03
(57)【要約】
【課題】エレベータの可用性の低下を抑制することができるエレベータの安全装置を得る。
【解決手段】メインノード63は、上部基準位置スイッチ45からの信号と、下部基準位置スイッチ46からの信号と、かご42の走行方向に関する情報とに基づいて、かご42の走行速度が過大速度レベルに達しているかどうかを監視する。メインノード63には、過大速度レベルとして、第1速度レベルと第2速度レベルとが設定されている。第2速度レベルは、第1速度レベルよりも低いレベルである。メインノード63は、上部通信故障が検出された場合、かご42の上方向への走行に対して第2速度レベルを適用し、下部通信故障が検出された場合、かご42の下方向への走行に対して第2速度レベルを適用する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内に設置されている上部基準位置スイッチからの信号が入力される上部スイッチノード、
前記上部基準位置スイッチよりも下方において前記昇降路内に設置されている下部基準位置スイッチからの信号が入力される下部スイッチノード、
前記上部基準位置スイッチからの信号と、前記下部基準位置スイッチからの信号と、かごの走行方向に関する情報とに基づいて、前記かごの走行速度が過大速度レベルに達しているかどうかを監視する処理である監視処理を実行するメインノード、及び
前記上部スイッチノード及び前記下部スイッチノードと前記メインノードとを接続する通信ライン
を備え、
前記メインノードには、前記過大速度レベルとして、第1速度レベルと、前記第1速度レベルよりも低い第2速度レベルとが設定されており、
前記メインノードは、
前記メインノードと前記上部スイッチノードとの間の通信故障である上部通信故障の有無と、前記メインノードと前記下部スイッチノードとの間の通信故障である下部通信故障の有無とを監視し、
前記上部通信故障が検出された場合、前記かごの上方向への走行に対して前記第2速度レベルを適用して前記監視処理を実行し、
前記下部通信故障が検出された場合、前記かごの下方向への走行に対して前記第2速度レベルを適用して前記監視処理を実行する
エレベータの安全装置。
【請求項2】
前記メインノードは、
前記上部通信故障が検出されていない場合、前記かごの上方向への走行に対して前記第1速度レベルが適用された前記監視処理を維持し、
前記下部通信故障が検出されていない場合、前記かごの下方向への走行に対して前記第1速度レベルが適用された前記監視処理を維持する
請求項1に記載のエレベータの安全装置。
【請求項3】
前記メインノードは、前記第2速度レベルを適用して前記監視処理を実行している期間中の前記走行速度の最高値を、前記第2速度レベルよりも低い値に設定するように、前記かごの運行を管理する運行管理部に指示する
請求項1又は請求項2に記載のエレベータの安全装置。
【請求項4】
前記第2速度レベルは、前記昇降路の底部に設置されている緩衝器の許容衝突速度以下に設定されている
請求項1又は請求項2に記載のエレベータの安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータの安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータ装置では、かごの終端階からの距離に応じたかごの過大速度レベルが設定されており、かごが過大速度レベルを超えると、終端階強制減速装置により、かごが強制的に減速停止される(例えば、特許文献1)。また、従来のエレベータ安全システムでは、昇降路内の終端階スイッチからの信号が、安全バスを介してコントローラに送信されており、安全バスに通信異常が発生すると、エレベータが停止されることがある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4668186号公報
【特許文献2】特許第4601827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、システムの省配線化のため、上記のような従来のエレベータ装置に、従来のエレベータ安全システムのような安全バスが適用された場合において、安全バスの通信異常が発生すると、終端階強制減速装置による適正な監視が行えなくなる。そのため、かごを強制的に減速停止させる必要が生じ、その結果、エレベータの可用性が低下するおそれがあった。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するために為されたものであり、エレベータの可用性の低下を抑制することができるエレベータの安全装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベータの安全装置は、昇降路内に設置されている上部基準位置スイッチからの信号が入力される上部スイッチノード、上部基準位置スイッチよりも下方において昇降路内に設置されている下部基準位置スイッチからの信号が入力される下部スイッチノード、上部基準位置スイッチからの信号と、下部基準位置スイッチからの信号と、かごの走行方向に関する情報とに基づいて、かごの走行速度が過大速度レベルに達しているかどうかを監視する処理である監視処理を実行するメインノード、及び上部スイッチノード及び下部スイッチノードとメインノードとを接続する通信ラインを備え、メインノードには、過大速度レベルとして、第1速度レベルと、第1速度レベルよりも低い第2速度レベルとが設定されており、メインノードは、メインノードと上部スイッチノードとの間の通信故障である上部通信故障の有無と、メインノードと下部スイッチノードとの間の通信故障である下部通信故障の有無とを監視し、上部通信故障が検出された場合、かごの上方向への走行に対して第2速度レベルを適用して監視処理を実行し、下部通信故障が検出された場合、かごの下方向への走行に対して第2速度レベルを適用して監視処理を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るエレベータの安全装置によれば、エレベータの可用性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係るエレベータ装置を一部ブロックで示す概略の構成図である。
【
図2】上部スイッチノード通信パケット及び下部スイッチノード通信パケットの構成を示すブロック図である。
【
図3】かごの上方向への走行及びかごの下方向への走行に対してそれぞれ第1速度レベルが適用された場合におけるエレベータの運行状態を示す図である。
【
図4】上部通信故障が検出された場合におけるエレベータの運行状態を示す図である。
【
図5】下部通信故障が検出された場合におけるエレベータの運行状態を示す図である。
【
図6】
図1の安全装置が実行する処理フローを説明するためのアクティビティ図である。
【
図7】
図1の上部スイッチノード又は下部スイッチノードが実行する処理フローを説明するためのアクティビティ図である。
【
図8】
図1のメインノードが実行する処理フローを説明するためのアクティビティ図である。
【
図9】
図1のメインノードが実行する過大速度レベル演算の詳細を示すアクティビティ図である。
【
図10】かごの上方向への走行及びかごの下方向への走行に対してそれぞれ第2速度レベルが適用された場合におけるエレベータの運行状態を示す図である。
【
図11】実施の形態1のエレベータの安全装置の機能を実現する処理回路の第1の例を示す構成図である。
【
図12】実施の形態1のエレベータの安全装置の機能を実現する処理回路の第2の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るエレベータ装置を一部ブロックで示す概略の構成図である。エレベータ装置は、交流電源10、巻上機駆動装置20、巻上機30、昇降路機器40、運行管理装置50、及び安全装置60を備えている。
【0010】
交流電源10は、交流電圧を発生する。
【0011】
巻上機駆動装置20は、MC接点21、第1整流器22、インバータ23、第2整流器24、DC/DCコンバータ25、ブレーキ駆動回路26、及びBK接点27を有している。
【0012】
交流電源10からの交流電圧は、MC接点21及び第2整流器24に入力される。MC接点21は、コンタクタMCの主接点である。MC接点21は、交流電源10と第1整流器22との間に設けられている。第1整流器22は、交流電源10からの交流電圧を直流電圧に整流し、整流された直流電圧をインバータ23に出力する。インバータ23は、第1整流器22から出力された直流電圧を交流電圧に変換し、巻上機30に出力する。
【0013】
第2整流器24は、交流電源10からの交流電圧を直流電圧に整流し、整流された直流電圧をDC/DCコンバータ25に出力する。DC/DCコンバータ25は、第2整流器24により整流された直流電圧の電圧レベルを、ブレーキ駆動回路26の動作電圧レベルに変換する。ブレーキ駆動回路26は、巻上機30を制動させるための信号を巻上機30に出力する。BK接点27は、ブレーキ駆動回路26と巻上機30とを接続又は遮断する。
【0014】
巻上機30は、駆動シーブ31、モータ32、及びブレーキ33を有している。
【0015】
昇降路機器40は、懸架体41、かご42、釣合おもり43、スイッチカム44、上部基準位置スイッチ45、下部基準位置スイッチ46、ガバナエンコーダ47、かご緩衝器48、及び釣合おもり緩衝器49を有している。
【0016】
懸架体41は、駆動シーブ31に巻き掛けられている。懸架体41としては、複数本のロープ又は複数本のベルトが用いられている。懸架体41の第1端部には、かご42が接続されている。懸架体41の第2端部には、釣合おもり43が接続されている。かご42及び釣合おもり43は、懸架体41により昇降路4a内に吊り下げられており、駆動シーブ31を回転させることにより昇降路4a内を昇降する。
【0017】
上部基準位置スイッチ45は、昇降路4a内の上部基準位置に設置されている。下部基準位置スイッチ46は、昇降路4a内の下部基準位置に設置されている。下部基準位置は、上部基準位置よりも下方の位置である。
【0018】
上部基準位置スイッチ45は、第1スイッチ45a及び第2スイッチ45bを有している。第1スイッチ45aは、昇降路4a内の最上階部分の第1基準位置に設置されている。第2スイッチ45bは、第1基準位置よりも下方の第2基準位置に設置されている。
【0019】
下部基準位置スイッチ46は、第3スイッチ46a及び第4スイッチ46bを有している。第3スイッチ46aは、昇降路4a内の最下階部分の第3基準位置に設置されている。第4スイッチ46bは、第3基準位置よりも上方の第4基準位置に設置されている。
【0020】
かご42が下方より上昇して、かご42が第2基準位置に達すると、スイッチカム44が第2スイッチ45bに接触する。これにより、第2スイッチ45bの状態がON状態からOFF状態に変化する。さらに、かご42が上昇して、かご42が第1基準位置に達すると、スイッチカム44が第1スイッチ45aに接触する。これにより、第1スイッチ45aの状態がON状態からOFF状態に変化する。
【0021】
かご42が上方より下降して、かご42が第4基準位置に達すると、スイッチカム44が第4スイッチ46bに接触する。これにより、第4スイッチ46bの状態がON状態からOFF状態に変化する。さらに、かご42が下降して、かご42が第3基準位置に達すると、スイッチカム44が第3スイッチ46aに接触する。これにより、第3スイッチ46aの状態がON状態からOFF状態に変化する。
【0022】
ガバナエンコーダ47は、かご42の走行速度及びかご42の走行方向を検出する。
【0023】
昇降路4aの底部には、かご緩衝器48及び釣合おもり緩衝器49が設置されている。かご緩衝器48は、かご42の真下に設けられている。釣合おもり緩衝器49は、釣合おもり43の真下に設けられている。また、かご緩衝器48及び釣合おもり緩衝器49としては、それぞれ油入緩衝器が用いられている。なお、本実施の形態では、かご緩衝器48と釣合おもり緩衝器49とは、互いに同一の性能を有している。
【0024】
かご緩衝器48及び釣合おもり緩衝器49には、それぞれ許容衝突速度が定められている。
【0025】
運行管理装置50は、運行管理部51、MCコイル52、BKコイル53、SF接点54、第1半導体スイッチ55、及び第2半導体スイッチ56を有している。MCコイル52は、コンタクタMCのコイルである。BKコイル53は、ブレーキリレーBKのコイルである。SF接点54は、安全リレーSFの主接点である。
【0026】
運行管理部51は、かご42の運行を管理する。具体的には、運行管理部51は、モータ駆動信号を生成し、生成されたモータ駆動信号をインバータ23に出力する。運行管理部51は、ブレーキ駆動信号を生成し、生成されたブレーキ駆動信号をブレーキ駆動回路26に出力する。
【0027】
運行管理部51は、コンタクタMCを制御するための制御信号を生成し、生成された制御信号を第1半導体スイッチ55に供給する。
【0028】
第1半導体スイッチ55がONにされている場合、MCコイル52に電流が流れているので、MC接点21は閉じた状態となっている。従って、この場合、モータ32に電力が供給される。これに対し、第1半導体スイッチ55がOFFにされている場合、MCコイル52に電流が流れていないので、MC接点21は開いた状態となっている。従って、この場合、モータ32への電力の供給は遮断される。
【0029】
運行管理部51は、ブレーキリレーBKを制御するための制御信号を生成し、生成された制御信号を第2半導体スイッチ56に供給する。
【0030】
第2半導体スイッチ56がONにされている場合、BKコイル53に電流が流れているので、BK接点27は閉じた状態となっている。従って、この場合、ブレーキ33に電力が供給される。これに対し、第2半導体スイッチ56がOFFにされている場合、BKコイル53に電流が流れていないので、BK接点27は開いた状態となっている。従って、この場合、ブレーキ33への電力の供給は遮断される。
【0031】
このようにして、運行管理装置50は、必要に応じて、モータ32及びブレーキ33への電力の供給を遮断する。モータ32は、電力の供給が遮断されると、駆動シーブ31への駆動力を失う。ブレーキ33は、電力の供給が遮断されると、駆動シーブ31に対する制動力を発生する。
【0032】
安全装置60は、上部スイッチノード61、下部スイッチノード62、メインノード63、通信ライン64、SFコイル65、及び第3半導体スイッチ66を有している。SFコイル65は、安全リレーSFのコイルである。
【0033】
上部スイッチノード61には、上部基準位置スイッチ45からの信号が入力されている。即ち、上部スイッチノード61には、第1スイッチ45aからの信号及び第2スイッチ45bからの信号が入力されている。上部スイッチノード61は、通信ライン64と接続されている。
【0034】
下部スイッチノード62には、下部基準位置スイッチ46からの信号が入力されている。即ち、下部スイッチノード62には、第3スイッチ46aからの信号及び第4スイッチ46bからの信号が入力されている。下部スイッチノード62は、通信ライン64と接続されている。
【0035】
メインノード63は、監視処理を実行する処理装置である。監視処理は、上部基準位置スイッチ45からの信号と、下部基準位置スイッチ46からの信号と、かご42の速度と走行方向に関する情報とに基づいて、かご42の走行速度が過大速度レベルに達しているかどうかを監視する処理である。かご42の速度と走行方向に関する情報は、ガバナエンコーダ47からメインノード63に送信されるようになっている。
【0036】
通信ライン64は、バス型の通信ラインである。メインノード63と上部スイッチノード61とは、通信ライン64を介して、シリアル通信プロトコルを用いて、相互にパケットを送受信することができるようになっている。同様に、メインノード63と下部スイッチノード62とは、通信ライン64を介して、シリアル通信プロトコルを用いて、相互にパケットを送受信することができるようになっている。
【0037】
メインノード63は、監視処理の結果、安全リレーSFを制御するための制御信号を生成し、生成された制御信号を第3半導体スイッチ66に供給する。
【0038】
第3半導体スイッチ66がONにされている場合、SFコイル65に電流が流れているので、SF接点54は閉じた状態となっている。従って、この場合、MCコイル52及びBKコイル53に電力が供給される。これに対し、第3半導体スイッチ66がOFFにされている場合、SFコイル65に電流が流れていないので、SF接点54は開いた状態となっている。従って、この場合、MCコイル52及びBKコイル53への電力の供給は遮断される。
【0039】
メインノード63には、かご42の過大速度レベルが設定されている。メインノード63は、かご42の走行速度が過大速度レベルを超えた場合、第3半導体スイッチ66をOFFにすることにより安全リレーSFを開放させる。これにより、モータ32への電力供給及びブレーキ33への電力供給が停止され、かご42は緊急停止される。
【0040】
メインノード63には、過大速度レベルとして、第1速度レベルと第2速度レベルとが設定されている。第2速度レベルは、第1速度レベルよりも低いレベルである。
【0041】
メインノード63は、上部通信故障の有無と、下部通信故障の有無とを監視する。上部通信故障は、メインノード63と上部スイッチノード61との間の通信故障である。下部通信故障は、メインノード63と下部スイッチノード62との間の通信故障である。
【0042】
メインノード63は、上部通信故障が検出されていない場合、かご42の上方向への走行に対して第1速度レベルが適用された監視処理を維持する。メインノード63は、下部通信故障が検出されていない場合、かご42の下方向への走行に対して第1速度レベルが適用された監視処理を維持する。
【0043】
図2は、上部スイッチノード通信パケット及び下部スイッチノード通信パケットの構成を示すブロック図である。上部スイッチノード通信パケット71は、
図1の上部スイッチノード61が送出する通信パケットである。下部スイッチノード通信パケット72は、
図1の下部スイッチノード62が送出する通信パケットである。
【0044】
上部スイッチノード通信パケット71は、パケット識別用ヘッダ73、上部基準位置スイッチ情報74、タイムスタンプ76、及び誤り訂正情報77を含んでいる。下部スイッチノード通信パケット72は、パケット識別用ヘッダ73、下部基準位置スイッチ情報75、タイムスタンプ76、及び誤り訂正情報77を含んでいる。
【0045】
パケット識別用ヘッダ73は、パケットを受信したノードにおいて、受信されたパケットが正規のパケットであるか否かを判定するために用いられる。タイムスタンプ76は、パケットが既定の時刻に送信されたか否かを判定するため、及びパケットが既定の周期において送信されたか否かを判定するために用いられる。誤り訂正情報77は、通信パケットのデータの完全性をチェックするための情報である。
【0046】
次に、メインノード63による監視処理について、より具体的に説明する。
図3は、かご42の上方向への走行及びかご42の下方向への走行に対してそれぞれ第1速度レベルが適用された場合におけるエレベータの運行状態を示す図である。即ち、
図3の例では、上部通信故障及び下部通信故障のいずれも検出されていない。
図3には、かご42が、途中階に停止することなく、最上階と最下階との間を往復している様子が示されている。以下、かご42の走行速度は、かご42の上方向への走行については、上方向を正の方向として、かご42の下方向への走行については、下方向を正の方向として説明する。
【0047】
かご42の上方向走行速度81は、最下階位置においてゼロであり、かご42の上昇とともに増加し、上方向最高速度に達する。その後、最上階位置の手前において、上方向走行速度81は減速され、最上階位置において、上方向走行速度81は、ゼロとなる。かご42の下方向走行速度83は、上方向走行速度81と同様に、最上階位置付近及び最下階位置付近を除き、下方向最高速度である。
【0048】
メインノード63において、最高速度監視が可能であり、且つ上部通信故障も下部通信故障も検出されていない場合、メインノード63は、上方向過大速度レベル82及び下方向過大速度レベル84を、ともに第1速度レベルに維持する。上方向過大速度レベル82は、かご42の上方向の走行における過大速度レベルである。下方向過大速度レベル84は、かご42の下方向の走行における過大速度レベルである。
【0049】
上方向の第1速度レベルは、かご42が、上方向最高速度以下の走行速度により走行可能に設定されている。上方向の第1速度レベルは、以下の式(1)により与えられる。
【0050】
V_os_up(X)=[2×d×(P_top-x+P_mrg)]1/2+V_mrg ・・・(1)
【0051】
ここで、V_os_up(X)は上方向の過大速度レベル、dは標準減速度、P_topは最上階位置、xはかご42の現在位置、P_mrgは位置マージン、V_mrgは速度マージンである。最上階位置P_topは、第1基準位置に対応した位置である。
【0052】
なお、上方向最高速度は、釣合おもり緩衝器49の許容衝突速度よりも高い速度に設定されている。また、第1速度レベルは、最上階位置P_topにおいて、釣合おもり緩衝器49の許容衝突速度以下となるように設定されている。
【0053】
下方向の第1速度レベルは、かご42が、下方向最高速度以下の走行速度により走行可能に設定されている。下方向の第1速度レベルは、以下の式(2)により与えられる。
【0054】
V_os_dn(X)=[2×d×(x-P_bot+P_mrg)]1/2+V_mrg ・・・(2)
【0055】
ここで、V_os_dn(X)は下方向の過大速度レベル、P_botは最下階位置である。最下階位置P_botは、第3基準位置に対応した位置である。
【0056】
なお、下方向最高速度は、かご緩衝器48の許容衝突速度よりも高い速度に設定されている。また、第1速度レベルは、最下階位置P_botにおいて、かご緩衝器48の許容衝突速度以下となるように設定されている。
【0057】
従って、エレベータ装置が正常である場合、かご42は、上方向過大速度レベル82と、下方向過大速度レベル84との範囲内において、上方向最高速度及び下方向最高速度による走行が可能である。
【0058】
一方、エレベータ装置に何らかの異常が発生して、かご42の走行速度が、上方向過大速度レベル82又は下方向過大速度レベル84を超えた場合、メインノード63は、安全リレーSFを開放させて、モータ32及びブレーキ33への電力供給を停止させる。
【0059】
次に、上部通信故障が検出された場合の監視処理について説明する。
図4は、上部通信故障が検出された場合におけるエレベータの運行状態を示す図である。
図4には、
図3と同様に、かご42が、途中階に停止することなく、最上階と最下階との間を往復している様子が示されている。なお、
図4に示した例では、下部通信故障は検出されていない。
【0060】
メインノード63は、上部通信故障が検出された場合、かご42の上方向への走行に対して第2速度レベルを適用して監視処理を実行する。第2速度レベルは、上方向最高速度よりも低いレベルであり、釣合おもり緩衝器49の許容衝突速度以下の一定値に設定されている。
【0061】
この場合、メインノード63は、かご42が上方向過大速度レベル86、即ち、第2速度レベルを超えないように、かご42の上方向走行速度の最高値を上方向制限速度以下に設定するように運行管理部51に指示する。上方向制限速度は、第2速度レベルよりも低く、且つ釣合おもり緩衝器49の許容衝突速度よりも低い速度である。メインノード63は、かご42の上方向走行速度の最高値を上方向制限速度以下とするように、運行管理部51に指示する。
【0062】
従って、故障時の上方向走行速度85は、最下階位置においてゼロであり、かご42の上昇とともに増加し、上方向制限速度に達する。故障時の上方向走行速度85は、上部通信故障が検出された場合におけるかご42の上方向走行速度である。その後、最上階位置の手前において、故障時の上方向走行速度85は減速され、最上階位置において、故障時の上方向走行速度85は、ゼロとなる。
【0063】
図4に示した例では、下部通信故障は検出されていないため、メインノード63は、かご42の下方向への走行に対して第1速度レベルが適用された監視処理を維持する。これにより、かご42は、下方向への走行においては、下方向最高速度により走行可能となる。
【0064】
次に、下部通信故障が検出された場合の監視処理について説明する。
図5は、下部通信故障が検出された場合におけるエレベータの運行状態を示す図である。
図5には、
図3と同様に、かご42が、途中階に停止することなく、最上階と最下階との間を往復している様子が示されている。なお、
図5に示した例では、上部通信故障は検出されていない。
【0065】
メインノード63は、下部通信故障が検出された場合、かご42の下方向への走行に対して第2速度レベルを適用して監視処理を実行する。第2速度レベルは、下方向最高速度よりも低いレベルであり、かご緩衝器48の許容衝突速度以下の一定値に設定されている。
【0066】
この場合、メインノード63は、かご42が下方向過大速度レベル88、即ち、第2速度レベルを超えないように、かご42の下方向走行速度の最高値を下方向制限速度以下に設定するように運行管理部51に指示する。下方向制限速度は、第2速度レベルよりも低く、且つかご緩衝器48の許容衝突速度よりも低い速度である。メインノード63は、かご42の下方向走行速度の最高値を下方向制限速度以下とするように、運行管理部51に指示する。
【0067】
従って、故障時の下方向走行速度87は、最上階位置においてゼロであり、かご42の下降とともに増加し、下方向制限速度に達する。故障時の下方向走行速度87は、下部通信故障が検出された場合におけるかご42の下方向走行速度である。その後、最下階位置の手前において、故障時の下方向走行速度87は減速され、最下階位置において、故障時の下方向走行速度87は、ゼロとなる。
【0068】
図5に示した例では、上部通信故障は検出されていないため、メインノード63は、かご42の上方向への走行に対して第1速度レベルが適用された監視処理を維持する。これにより、かご42は、上方向への走行においては、上方向最高速度により走行可能となる。
【0069】
次に、安全装置60が実行する処理の流れについて、より具体的に説明する。
図6は、
図1の安全装置60が実行する処理フローを説明するためのアクティビティ図である。ノードN101において、安全装置60の電源がONにされると、安全装置60の処理が開始される。
【0070】
上部スイッチノード61は、ノードN102において、上部基準位置スイッチ45からの信号に基づいて、上部スイッチノード処理を実行し、ノードN104に上部スイッチノード通信パケット71を送信する。
【0071】
下部スイッチノード62は、ノードN103において、下部基準位置スイッチ46からの信号に基づいて、下部スイッチノード処理を実行し、ノードN104に下部スイッチノード通信パケット72を送信する。
【0072】
メインノード63は、ノードN104において、上部スイッチノード通信パケット71、下部スイッチノード通信パケット72、及びガバナエンコーダ47からの信号に基づいて、メインノード処理を実行し、安全リレー遮断指令を出力する。ノードN105において、安全装置60の電源がOFFにされると、ノードN106において、安全装置60が実行するすべての処理が終了される。
【0073】
図7は、
図1の上部スイッチノード61が実行する処理フローを説明するためのアクティビティ図である。ノードN201において、安全装置60の電源がONにされると、上部スイッチノード61の処理が開始される。
図7の処理は、ノードN202の一定の制御周期毎に繰り返し実行されるようになっている。
【0074】
上部スイッチノード61は、ノードN203において、上部基準位置スイッチ45からの信号に基づいて、スイッチ状態検出処理を実行し、上部基準位置スイッチ状態の情報を生成する。上部基準位置スイッチ状態の情報とは、第1スイッチ45a及び第2スイッチ45bの各スイッチのON状態又はOFF状態についての情報である。
【0075】
次いで、上部スイッチノード61は、ノードN204において、上部基準位置スイッチ状態の情報に基づいて、ノード間通信処理を実行し、上部スイッチノード通信パケット71を生成する。即ち、ノード間通信処理は、生成された上部基準位置スイッチ状態を、スイッチノード通信パケットにエンコードする処理である。
【0076】
次いで、上部スイッチノード61は、ノードN205において、本処理を一旦終了する。
【0077】
下部スイッチノード62の処理については、
図7の処理と同様であるため、その説明は省略する。なお、下部スイッチノード62の処理においては、
図7に示された「上部基準位置」は「下部基準位置」と、「上部スイッチノード」は「下部スイッチノード」と、それぞれ読み替えられる。
【0078】
図8は、
図1のメインノード63が実行する処理フローを説明するためのアクティビティ図である。ノードN301において、安全装置60の電源がONにされると、メインノード63の処理が開始される。
図8の処理は、ノードN302の一定の制御周期毎に繰り返し実行されるようになっている。
【0079】
メインノード63は、ノードN303において、上部スイッチノード通信パケット71と、下部スイッチノード通信パケット72とに基づいて、ノード間通信処理を実行する。メインノード63は、ノード間通信処理を実行することにより、基準位置スイッチ状態の情報を生成する。即ち、メインノード63は、上部スイッチノード通信パケット71をデコードするとともに、下部スイッチノード通信パケット72をデコードして、基準位置スイッチ状態の情報を生成する。基準位置スイッチ状態の情報とは、第1スイッチ45a、第2スイッチ45b、第3スイッチ46a、及び第4スイッチ46bの各スイッチのON状態又はOFF状態についての情報である。
【0080】
また、メインノード63は、ノードN303において、上部スイッチノード通信パケット71及び下部スイッチノード通信パケット72の各パケット識別用ヘッダ73、各タイムスタンプ76、及び各誤り訂正情報77に基づいて、通信故障情報を生成する。
【0081】
次いで、メインノード63は、ノードN304において、基準位置スイッチ状態の情報に基づいて、基準位置スイッチの状態を入力する。
【0082】
次いで、メインノード63は、ノードN305において、「スイッチ検出」があったか否かを判定する。スイッチ検出があるとは、上部基準位置スイッチ45の各スイッチの状態及び下部基準位置スイッチ46の各スイッチにおける状態がON状態からOFF状態に変化することである。
【0083】
「スイッチ検出」があった場合、メインノード63は、ノードN306において、スイッチの位置を「かご位置」に設定する。
【0084】
次いで、メインノード63は、ノードN307において、ガバナエンコーダ47からの信号に基づいて、かご移動量を演算する。演算されたかご移動量は、ノード306において設定されたかご位置に加算される。
【0085】
また、メインノード63は、ノードN308において、ガバナエンコーダ47からの信号に基づいて、かご速度を演算する。
【0086】
次いで、メインノード63は、ノードN309において、かご位置と通信故障情報とに基づいて、上方向の過大速度レベル及び下方向の過大速度レベルを演算する。
【0087】
次いで、メインノード63は、ノードN310において、かご速度と、上方向の過大速度レベルと、下方向の過大速度レベルとに基づいて、かご42の走行速度が過大速度以上となっているかどうかを検出する。メインノード63は、かご42の走行速度が過大速度以上となっていることを検出すると、かご過大速度検出状態の情報を生成する。
【0088】
次いで、メインノード63は、ノードN311において、かご過大速度検出状態の情報に基づいて、安全出力処理を実行し、安全リレー遮断指令を生成する。次いで、メインノード63は、ノードN312において、本処理を一旦終了する。
【0089】
一方、ノードN305において、「スイッチ検出」がない場合、メインノード63は、かご位置をスイッチ位置に設定せずに、ノードN307において、かご移動量を演算するとともに、ノードN308において、かご速度を演算する。
【0090】
図9は、
図1のメインノード63が実行する過大速度レベル演算の詳細を示すアクティビティ図である。ノードN401において、安全装置60の電源がONにされると、メインノード63の処理が開始される。
【0091】
メインノード63は、ノードN402において、最高速度監視が可能であるか否かを判定する。最高速度監視が可能な状態であるとは、エレベータ装置に異常がなく、過大速度レベルとして第1速度レベルを適用可能な状態のことである。最高速度監視が可能である場合、メインノード63は、ノードN403において、通信故障情報に基づいて、上部スイッチノード通信故障状態を検出する。
【0092】
次いで、メインノード63は、ノードN404において、上部スイッチノード61に通信故障が発生しているか否かを判定する。通信故障が発生していない場合、即ち、通信正常である場合、メインノード63は、ノードN405において、かご位置の情報に基づいて、上方向の過大速度レベルとして第1速度レベルが適用された監視処理を維持する。
【0093】
次いで、メインノード63は、ノードN406において、最高速度監視が可能であるか否かを判定する。最高速度監視が可能である場合、メインノード63は、ノードN407において、通信故障情報に基づいて、下部スイッチノード通信故障状態を検出する。
【0094】
次いで、メインノード63は、ノードN408において、下部スイッチノード62に通信故障が発生しているか否かを判定する。通信故障が発生していない場合、即ち、通信正常である場合、メインノード63は、ノードN409において、かご位置の情報に基づいて、下方向の過大速度レベルとして第1速度レベルが適用された監視処理を維持する。
【0095】
次いで、メインノード63は、ノードN410において、本処理を一旦終了する。
【0096】
一方、ノードN402において、最高速度監視が不可であると判定された場合、メインノード63は、ノードN411において、上方向の過大速度レベルとして第2速度レベルを適用する。また、ノードN406において、最高速度監視が不可であると判定された場合、メインノード63は、ノードN412において、下方向の過大速度レベルとして第2速度レベルを適用する。
【0097】
また、ノードN404において、上部スイッチノード61に通信故障が発生していると判定された場合、メインノード63は、ノードN411において、上方向の過大速度レベルとして第2速度レベルを適用する。また、ノードN408において、下部スイッチノード62に通信故障が発生していると判定された場合、メインノード63は、ノードN412において、下方向の過大速度レベルとして第2速度レベルを適用する。
【0098】
このように、実施の形態1に係るエレベータの安全装置60は、上部スイッチノード61、下部スイッチノード62、メインノード63、及び通信ライン64を備えている。上部スイッチノード61は、上部基準位置スイッチ45からの信号が入力されている。上部基準位置スイッチ45は、昇降路4a内に設置されている。下部スイッチノード62は、下部基準位置スイッチ46からの信号が入力されている。下部基準位置スイッチ46は、上部基準位置スイッチ45よりも下方において、昇降路4a内に設置されている。
【0099】
メインノード63は、監視処理を実行する。監視処理は、上部基準位置スイッチ45からの信号と、下部基準位置スイッチ46からの信号と、かご42の走行方向に関する情報とに基づいて、かご42の走行速度が過大速度レベルに達しているかどうかを監視する処理である。通信ライン64は、上部スイッチノード61及び下部スイッチノード62と、メインノード63とを接続する。
【0100】
メインノード63には、過大速度レベルとして、第1速度レベルと、第2速度レベルとが設定されている。第2速度レベルは、第1速度レベルよりも低いレベルである。
【0101】
メインノード63は、上部通信故障の有無と、下部通信故障の有無とを監視する。上部通信故障は、メインノード63と上部スイッチノード61との間の通信故障である。下部通信故障は、メインノード63と下部スイッチノード62との間の通信故障である。
【0102】
メインノード63は、上部通信故障が検出された場合、かご42の上方向への走行に対して第2速度レベルを適用して監視処理を実行する。メインノード63は、下部通信故障が検出された場合、かご42の下方向への走行に対して第2速度レベルを適用して監視処理を実行する。
【0103】
これによれば、上部通信故障又は下部通信故障が検出された場合であっても、エレベータが緊急停止されずに、監視処理が継続される。従って、エレベータの可用性の低下を抑制することができる。
【0104】
また、メインノード63は、上部通信故障が検出されていない場合、かご42の上方向への走行に対して第1速度レベルが適用された監視処理を維持する。メインノード63は、下部通信故障が検出されていない場合、かご42の下方向への走行に対して第1速度レベルが適用された監視処理を維持する。
【0105】
これによれば、通信故障が発生しているスイッチノードに対応する基準位置スイッチから、通信故障が検出されていないスイッチノードに対応する基準位置スイッチへ向かう方向への走行に対して、第1速度レベルが適用された監視処理が維持される。従って、エレベータの可用性の低下をさらに抑制することができる。
【0106】
また、メインノード63は、第2速度レベルを適用して監視処理を実行している期間中の走行速度の最高値を、第2速度レベルよりも低い値に設定するように運行管理部51に指示する。
【0107】
これによれば、第2速度レベルが適用された監視処理が実行されている間に、かご42の走行速度が、第2速度レベルを超えて、エレベータが緊急停止される事態が回避される。従って、エレベータの可用性の低下をさらに抑制することができる。
【0108】
また、第2速度レベルは、かご緩衝器48及び釣合おもり緩衝器49の許容衝突速度以下に設定されている。かご緩衝器48及び釣合おもり緩衝器49は、昇降路4aの底部に設置されている。
【0109】
これによれば、第2速度レベルにより監視処理が実行されている場合に、エレベータを緊急停止させる事態に陥っても、かご42が許容衝突速度を超えて緩衝器に衝突する可能性を低減することができる。
【0110】
なお、実施の形態1では、上部通信故障が検出された場合には、かご42の上方向への走行に対してのみ第2速度レベルを適用させ、下部通信故障が検出された場合には、かご42の下方向への走行に対してのみ第2速度レベルを適用させていた。しかし、メインノード63は、上部通信故障及び下部通信故障のいずれか一方が検出された場合、かご42の上方向への走行及びかご42の下方向への走行に対してそれぞれ第2速度レベルを適用してもよい。
【0111】
図10は、かご42の上方向への走行及びかご42の下方向への走行に対してそれぞれ第2速度レベルが適用された場合におけるエレベータの運行状態を示す図である。
図10の例では、上部通信故障及び下部通信故障の少なくともいずれか一方が検出されている。
【0112】
この場合、メインノード63は、かご42が第2速度レベルを超えないように、かご42の上方向走行速度の最高値を上方向制限速度以下に設定する。また、メインノード63は、かご42が第2速度レベルを超えないように、かご42の下方向走行速度の最高値を下方向制限速度以下に設定する。
【0113】
また、第1速度レベルは、式(1)及び式(2)により示されたレベルに限定されない。かご42の上方向の走行に対しては、第1速度レベルは、最上階位置において、釣合おもり緩衝器49の許容衝突速度以下に設定され、途中階位置において、上方向最高速度よりも高い速度に設定されればよい。かご42の下方向の走行に対しては、第1速度レベルは、最下階位置において、かご緩衝器48の許容衝突速度以下に設定され、途中階位置において、下方向最高速度よりも高い速度に設定されればよい。
【0114】
また、かご42の上方向の走行に対する第1速度レベルと、かご42の下方向の走行に対する第1速度レベルとは必ずしも対称形でなくてもよい。また、かご42の上方向の走行に対する第2速度レベルと、かご42の下方向の走行に対する第2速度レベルとは必ずしも対称形でなくてもよい。例えば、かご緩衝器48の許容衝突速度と釣合おもり緩衝器49の許容衝突速度とが、互いに異なっていてもよい。
【0115】
また、上部基準位置スイッチ45及び下部基準位置スイッチ46は、それぞれ2つの基準位置スイッチを有していたが、それぞれ、少なくとも1つのスイッチを有していればよい。
【0116】
また、上部基準位置スイッチ45が複数のスイッチを有している場合、上部スイッチノード61は、複数のスイッチからの信号を集約して入力すればよい。また、下部基準位置スイッチ46が複数のスイッチを有している場合、下部スイッチノード62は、複数のスイッチからの信号を集約して入力すればよい。
【0117】
また、最下階位置P_botは、第3基準位置に対応していたが、最下階位置P_botは、必ずしも第3基準位置と対応している必要はない。最下階位置P_botと第3基準位置とは、昇降路4a下方の終端ゾーンにおいて、互いに独立に設定されていてもよい。
【0118】
また、メインノード63と上部スイッチノード61との間の通信及びメインノード63と下部スイッチノード62との間の通信は、シリアル通信に限定されない。
【0119】
また、通信ライン64は、バス型の通信ラインに限定されない。
【0120】
また、通信パケットの構成は、
図2に示した例に特に限定されない。
【0121】
また、交流電源10の構成、巻上機駆動装置20の構成、及び巻上機30の構成は、
図1に示した構成に限定されない。
【0122】
また、かご緩衝器48及び釣合おもり緩衝器49には、ばね緩衝器又は緩衝材が用いられてもよい。
【0123】
また、かご緩衝器48及び釣合おもり緩衝器49の設置場所は、昇降路4aの底部に限定されず、昇降路4aの上部、かご42、又は釣合おもり43であってもよい。
【0124】
また、エレベータのタイプは、
図1に示したタイプに限定されるものではなく、例えば、2:1ローピング方式のエレベータであってもよい。
【0125】
また、実施の形態1のエレベータの安全装置60の機能は、処理回路によって実現される。
図11は、実施の形態1のエレベータの安全装置60の機能を実現する処理回路の第1の例を示す構成図である。第1の例の処理回路100は、専用のハードウェアである。
【0126】
また、処理回路100は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものが該当する。
【0127】
また、
図12は、実施の形態1のエレベータの安全装置60の機能を実現する処理回路の第2の例を示す構成図である。第2の例の処理回路200は、プロセッサ201及びメモリ202を備えている。
【0128】
処理回路200では、エレベータの安全装置60の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリ202に格納される。プロセッサ201は、メモリ202に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、機能を実現する。
【0129】
メモリ202に格納されたプログラムは、上述した各部の手順又は方法をコンピュータに実行させるものであるとも言える。ここで、メモリ202とは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリである。また、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等も、メモリ202に該当する。
【0130】
なお、上述したエレベータの安全装置60の機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェア又はファームウェアで実現するようにしてもよい。
【0131】
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、上述したエレベータの安全装置60の機能を実現することができる。
【0132】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0133】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0134】
(付記1)
昇降路内に設置されている上部基準位置スイッチからの信号が入力される上部スイッチノード、
前記上部基準位置スイッチよりも下方において前記昇降路内に設置されている下部基準位置スイッチからの信号が入力される下部スイッチノード、
前記上部基準位置スイッチからの信号と、前記下部基準位置スイッチからの信号と、かごの走行方向に関する情報とに基づいて、前記かごの走行速度が過大速度レベルに達しているかどうかを監視する処理である監視処理を実行するメインノード、及び
前記上部スイッチノード及び前記下部スイッチノードと前記メインノードとを接続する通信ライン
を備え、
前記メインノードには、前記過大速度レベルとして、第1速度レベルと、前記第1速度レベルよりも低い第2速度レベルとが設定されており、
前記メインノードは、
前記メインノードと前記上部スイッチノードとの間の通信故障である上部通信故障の有無と、前記メインノードと前記下部スイッチノードとの間の通信故障である下部通信故障の有無とを監視し、
前記上部通信故障が検出された場合、前記かごの上方向への走行に対して前記第2速度レベルを適用して前記監視処理を実行し、
前記下部通信故障が検出された場合、前記かごの下方向への走行に対して前記第2速度レベルを適用して前記監視処理を実行する
エレベータの安全装置。
(付記2)
前記メインノードは、
前記上部通信故障が検出されていない場合、前記かごの上方向への走行に対して前記第1速度レベルが適用された前記監視処理を維持し、
前記下部通信故障が検出されていない場合、前記かごの下方向への走行に対して前記第1速度レベルが適用された前記監視処理を維持する
付記1に記載のエレベータの安全装置。
(付記3)
前記メインノードは、前記第2速度レベルを適用して前記監視処理を実行している期間中の前記走行速度の最高値を、前記第2速度レベルよりも低い値に設定するように、前記かごの運行を管理する運行管理部に指示する
付記1又は付記2に記載のエレベータの安全装置。
(付記4)
前記第2速度レベルは、前記昇降路の底部に設置されている緩衝器の許容衝突速度以下に設定されている
付記1から付記3までのいずれか1項に記載のエレベータの安全装置。
【符号の説明】
【0135】
4a 昇降路、42 かご、45 上部基準位置スイッチ、46 下部基準位置スイッチ、48 かご緩衝器、49 釣合おもり緩衝器、60 安全装置、61 上部スイッチノード、62 下部スイッチノード、63 メインノード、64 通信ライン。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内に設置されている上部基準位置スイッチからの信号が入力される上部スイッチノード、
前記上部基準位置スイッチよりも下方において前記昇降路内に設置されている下部基準位置スイッチからの信号が入力される下部スイッチノード、
前記上部基準位置スイッチからの信号と、前記下部基準位置スイッチからの信号と、かごの走行方向に関する情報とに基づいて、前記かごの走行速度が過大速度レベルに達しているかどうかを監視する処理である監視処理を実行するメインノード、及び
前記上部スイッチノード及び前記下部スイッチノードと前記メインノードとを接続する通信ライン
を備え、
前記メインノードには、前記過大速度レベルとして、第1速度レベルと、前記第1速度レベルよりも低い第2速度レベルとが設定されており、
前記メインノードは、
前記メインノードと前記上部スイッチノードとの間の通信故障である上部通信故障の有無と、前記メインノードと前記下部スイッチノードとの間の通信故障である下部通信故障の有無とを監視し、
前記上部通信故障が検出された場合、前記かごの上方向への走行に対して前記第2速度レベルを適用して前記監視処理を実行し、
前記下部通信故障が検出された場合、前記かごの下方向への走行に対して前記第2速度レベルを適用して前記監視処理を実行する
エレベータの安全装置。
【請求項2】
前記メインノードは、
前記上部通信故障が検出されていない場合、前記かごの上方向への走行に対して前記第1速度レベルが適用された前記監視処理を維持し、
前記下部通信故障が検出されていない場合、前記かごの下方向への走行に対して前記第1速度レベルが適用された前記監視処理を維持する
請求項1に記載のエレベータの安全装置。
【請求項3】
前記メインノードは、前記第2速度レベルを適用して前記監視処理を実行している期間中の前記走行速度の最高値を、前記第2速度レベルよりも低い値に設定するように、前記かごの運行を管理する運行管理部に指示する
請求項1又は請求項2に記載のエレベータの安全装置。
【請求項4】
前記かごの上方向への走行に対して適用される前記第2速度レベルは、前記昇降路の底部に設置されている釣合おもり緩衝器の許容衝突速度以下に設定されており、
前記かごの下方向への走行に対して適用される前記第2速度レベルは、前記昇降路の底部に設置されているかご緩衝器の許容衝突速度以下に設定されている、
請求項1又は請求項2に記載のエレベータの安全装置。