(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002163
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/02 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
F25D23/02 306J
F25D23/02 306N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101203
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【弁理士】
【氏名又は名称】橋口 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【弁理士】
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 浩一
(72)【発明者】
【氏名】合野 一彰
【テーマコード(参考)】
3L102
【Fターム(参考)】
3L102JA01
3L102KA06
3L102KB05
3L102KB12
3L102KB15
3L102KB23
(57)【要約】
【課題】誤検出により扉が自動で開いてしまった場合にも扉を自動で閉じることのできる冷蔵庫を提供する。
【解決手段】実施形態の冷蔵庫は、貯蔵室を含む筐体と、前記筐体の開口に取り付けられた扉と、前記扉を開放する扉開放装置と、前記扉を閉じる扉閉装置と、音声指示を取得可能な音声指示取得部と、前記扉開放装置、前記扉閉装置、および前記音声指示取得部に接続された制御部と、を持つ。前記制御部は、前記音声指示取得部を通じて取得した扉開放指示に基づいて前記扉開放装置を駆動するとともに、開放された前記扉を閉じるための扉閉条件を満たす場合に前記扉閉装置を駆動する。前記扉閉条件は、前記扉が開放された状態で所定時間経過することを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室を含む筐体と、
前記筐体の開口に取り付けられた扉と、
前記扉を開放する扉開放装置と、
前記扉を閉じる扉閉装置と、
音声指示を取得可能な音声指示取得部と、
前記扉開放装置、前記扉閉装置、および前記音声指示取得部に接続された制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記音声指示取得部を通じて取得した扉開放指示に基づいて前記扉開放装置を駆動するとともに、開放された前記扉を閉じるための扉閉条件を満たす場合に前記扉閉装置を駆動し、
前記扉閉条件は、前記扉が開放された状態で所定時間経過することを含む、
冷蔵庫。
【請求項2】
前記扉に設けられ、使用者からの扉開放指示を受け付ける扉開放操作部を有し、
前記制御部は、前記扉開放操作部を通じて取得した前記扉開放指示に基づいて前記扉開放装置を駆動する、
請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記制御部は、前記扉閉装置を駆動する前に報知音を出力する、
請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記制御部は、使用者が前記扉を開いて前記貯蔵室を使用中であると判断できる場合に、前記扉が開放された状態を維持することが制限される開放制限時間を延長する、
請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記制御部は、前記音声指示取得部を通じて使用者の音声を取得した場合に、使用者が前記扉を開いて前記貯蔵室を使用中であると判断する、
請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記制御部は、前記扉の開度、または前記扉の開度の変化によって、前記使用者が前記扉を開いて前記貯蔵室を使用中であるか否かを判断する、
請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記扉に設けられ、使用者からの指示を受け付ける操作部を有し、
前記制御部は、前記操作部を通じて前記指示を取得した場合に、前記使用者が前記扉を開いて前記貯蔵室を使用中であると判断する、
請求項4に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザからの音声指示によって冷蔵室の扉が開く機能を備えた冷蔵庫が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような冷蔵庫では、使用者の日常会話などから誤って音声指示を検知してしまうなどして、ユーザの意図に反して扉が開いてしまい、扉が開放されたままになってしまう事態が生じ得る。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、誤検出により扉が自動で開いてしまった場合にも扉を自動で閉じることのできる冷蔵庫を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の冷蔵庫は、貯蔵室を含む筐体と、前記筐体の開口に取り付けられた扉と、前記扉を開放する扉開放装置と、前記扉を閉じる扉閉装置と、音声指示を取得可能な音声指示取得部と、前記扉開放装置、前記扉閉装置、および前記音声指示取得部に接続された制御部と、を持つ。前記制御部は、前記音声指示取得部を通じて取得した扉開放指示に基づいて前記扉開放装置を駆動するとともに、開放された前記扉を閉じるための扉閉条件を満たす場合に前記扉閉装置を駆動する。前記扉閉条件は、前記扉が開放された状態で所定時間経過することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態の冷蔵庫1を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1中に示された冷蔵庫1のII-II線に沿う断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態の冷蔵庫の天井部の構成を示す斜視分解図である。
【
図4】
図4は、冷蔵庫の機能構成の一部を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、右側冷蔵室扉の内部構造を示す概略図である。
【
図6】
図6は、取付部材の構成を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、右扉閉装置における扉回動機構の構成を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、右扉閉装置における扉回動機構の構成を示す断面図である。
【
図9】
図9は、駆動装置の構成を示す部品図である。
【
図10】
図10は、冷蔵室扉を庫内側の下方から見た斜視図である。
【
図11】
図11は、扉閉伝達機構の構成の一部を示す図である。
【
図12】
図12は、扉引込み用機構を構成する扉引込み用部材を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、変形例1の右扉閉装置の構成について示す斜視図である。
【
図14】
図14は、変形例1の右扉閉装置の構成を示す断面図である。
【
図15】
図15は、閉状態の右側冷蔵室扉を軸方向上方側から見た図である。
【
図16】
図16は、右側冷蔵室扉の第1開状態(開放角度θが例えば145°)を示す図である。
【
図17】
図17は、右側冷蔵室扉の第2開放状態(開放角度θが例えば90°)を示す図である。
【
図18】
図18は、右側冷蔵室扉の第3開放状態(開放角度θが例えば45°)を示す図である。
【
図19】
図19は、右側冷蔵室扉の閉状態(開放角度θが例えば0°)を示す図である。
【
図20】
図20は、駆動装置を横向きに設置する場合の概略構成図である。
【
図21】
図21は、駆動装置における減速機の他の構成を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の冷蔵庫を、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。本明細書では、冷蔵庫の正面に立つ使用者から冷蔵庫を見た方向を基準に、左右を定義している。また、冷蔵庫から見て冷蔵庫の正面に立つ使用者に近い側を「前」、遠い側を「後ろ」と定義し、冷蔵庫の前後方向とする。また、冷蔵庫1を
図1の姿勢で床面に設置した場合における重力方向に対する上下方向を、冷蔵庫1の上下方向とする。また、
図1の冷蔵庫1を前側から見た場合における左右方向を、冷蔵庫1の左右方向とする。
【0009】
<一実施形態>
[冷蔵庫の全体構成]
図1は、一実施形態の冷蔵庫1を示す斜視図である。
図2は、
図1中に示された冷蔵庫1のII-II線に沿う断面図である。
【0010】
以下、図面を参照し、本願発明における一実施形態の冷蔵庫1について説明する。
まず、冷蔵庫1の全体構成について説明する。
【0011】
本実施形態の冷蔵庫1は、扉を開放させる機構と、開放された扉を閉じる機構と、をそれぞれ別々に有している。
【0012】
図1および
図2に示すように、冷蔵庫1は、冷蔵庫本体MBと、冷蔵庫本体MB内に設けられる冷却ユニット30(
図2参照)と、扉開放装置41と、扉開放操作部42と、音響ユニット52と、庫内カメラ53(
図2参照)と、通信モジュール(無線通信部)61と、第1電源基板70とおよび第2電源基板80と、経過時間計測部101(
図4)と、扉閉装置130と、を備えている。
【0013】
<冷蔵庫本体>
冷蔵庫本体MBは、前面が開口した縦長矩形箱状の筐体10と、筐体10の開口側に開閉可能に取り付けられた複数の扉20と、を主体として構成されている。
【0014】
(筐体)
筐体10は、食材等を貯蔵可能な複数の貯蔵室11を有している。
筐体10は、上壁(天井部)10a、下壁10b、左側壁10c、右側壁10d、および後壁10eを有する。上壁10aおよび下壁10bは、略水平な面であって互いに対向している。左側壁10cおよび右側壁10dは、下壁10bの左右の端部から上方に起立し、上壁10aの左右の端部に繋がっている。後壁10eは、下壁10bの後端部から上方に起立し、上壁10aの後端部に繋がっている。
【0015】
筐体10は、
図2に示すように、筐体10の内面を形成する内箱10iと、内箱10iの外側に位置して筐体10の外面を形成する外箱10jと、これら内箱10iと外箱10jとの間に設けられた断熱材10kと、を含み、断熱性を有する。内箱10iと外箱10jとの間に配置される断熱材10kとしては、発泡ウレタンのような発泡断熱材や、より断熱性に優れた真空断熱材(VIP:Vacuum Insulation Panel)を含む。
【0016】
複数の貯蔵室11は、例えば、
図1に示すように、冷蔵室11A、チルド室11AA(
図2参照)、野菜室11B、製氷室11C、小冷凍室11D、および主冷凍室11Eを含む。本実施形態では、最上部に冷蔵室11Aが配置され、冷蔵室11Aの下方に野菜室11Bが配置され、野菜室11Bの下方に製氷室11Cおよび小冷凍室11Dが配置され、製氷室11Cおよび小冷凍室11Dの下方に主冷凍室11Eが配置されている。ただし、貯蔵室11の配置は、上記例に限定されない。各貯蔵室11に対する食材の出し入れは、筐体10の前面側に形成された開口を通じて行われる。
【0017】
(扉)
図1および
図2に示すように、複数の扉20は、上記複数の貯蔵室11を開閉可能に閉じる。複数の扉20は、例えば、冷蔵室11Aの開口を閉じる左右の冷蔵室扉20A(左側冷蔵室扉20Aa、右側冷蔵室扉20Abと、野菜室11Bの開口を閉じる野菜室扉20Bと、製氷室11Cの開口を閉じる製氷室扉20Cと、小冷凍室11Dの開口を閉じる小冷凍室扉20Dと、および主冷凍室11Eの開口を閉じる主冷凍室扉20Eと、を含む。
【0018】
複数の扉20のうち、筐体10の上側において左右に並ぶ一対の冷蔵室扉20Aは、ヒンジ(扉回転支持部)6A,6Bを介して、筐体10に対して回転可能に取り付けられている。
左側冷蔵室扉20Aaは、上下に配置された一対の左側ヒンジ6Aにより筐体10の左側に支持されている。右側冷蔵室扉20Abは、上下に配置された一対の右側ヒンジ6Bにより筐体10の右側に支持されている。
【0019】
一対の左側ヒンジ6Aのうち一方の左側ヒンジ6Aは、左側冷蔵室扉20Aaの外側端部の上方に位置し、左側冷蔵室扉20Aaの外側端部の下方に設けられた他方の左側ヒンジ6Aとともに左側冷蔵室扉20Aaを回転可能に支持する。左側冷蔵室扉20Aaは、一対の左側ヒンジ6Aの間において上下方向に延びる回転支軸Oaの軸回りに回転可能に構成されている。左側冷蔵室扉20Aaは、その上下に配置された一対のヒンジ6Aを介して、筐体10に開閉可能に設けられている。
【0020】
一対の右側ヒンジ6Bのうち一方の右側ヒンジ6Bは、右側冷蔵室扉20Abの外側端部の上方に位置し、右側冷蔵室扉20Abの外側端部の下方に設けられた他方の右側ヒンジ6Bとともに右側冷蔵室扉20Abを回転可能に支持する。右側冷蔵室扉20Abは、一対の右側ヒンジ6Bの間において上下方向に延びる回転支軸Obの軸回りに回転可能に構成されている。右側冷蔵室扉20Abは、その上下に配置された一対のヒンジ6Bを介して、筐体10に開閉可能に設けられている。
【0021】
扉20は、
図2に示すように、扉20の内面を形成する内側壁部20iと、扉20の外面を形成する外側壁部20jと、外側壁部20jの下端側に取り付けられる下側壁部20kと、これら内側壁部20iと外側壁部20jと下側壁部20kとによって囲まれる空間に設けられた断熱材10kと、を含み、断熱性を有する。
なお、本実施形態においては、外側壁部20jの下端側に、外側壁部20jとは別体の下側壁部20kが取り付けられているが、これらが一体に構成されていてもよい。
【0022】
<冷却ユニット>
図2に示すように、冷却ユニット30は、圧縮機31、冷蔵用冷却器32、冷蔵用ファン33、冷凍用冷却器34、および冷凍用ファン35を含む。
圧縮機31は、冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を、凝縮器およびキャピラリチューブなどを介して冷蔵用冷却器32および冷凍用冷却器34に供給する。
【0023】
冷蔵用冷却器32は、冷蔵室11Aの後方に設けられた第1ダクト空間D1に配置され、圧縮機31から供給される冷媒を用いて第1ダクト空間D1を流れる空気を冷却する。
【0024】
冷蔵用ファン33は、冷蔵用冷却器32により冷却された空気(冷気)を、冷蔵温度帯室(冷蔵室11A、チルド室11AA、および野菜室11B)と第1ダクト空間D1とで循環させる。これにより、冷蔵室11A、チルド室11AA、および野菜室11Bが冷却される。
【0025】
冷凍用冷却器34は、主冷凍室11Eの後方に設けられた第2ダクト空間D2に配置され、圧縮機31から供給される冷媒を用いて第2ダクト空間D2を流れる空気を冷却する。
【0026】
冷凍用ファン35は、冷凍用冷却器34により冷却された空気(冷気)を、冷凍温度帯室(製氷室11C、小冷凍室11D、および主冷凍室11E)と第2ダクト空間D2とで循環させる。これにより、製氷室11C、小冷凍室11D、および主冷凍室11Eが冷却される。
【0027】
なお、本明細書でいう「冷却ユニット」とは、上記構成に限定されず、除霜用のヒータや、結露抑制用のヒータなどの加熱装置も含み得る。
【0028】
<扉開放装置>
扉開放装置41は、冷蔵室扉20Aa、20Abが閉じた状態から開放角度(開度)が一定範囲内において、冷蔵室扉20Aa、20Abを開く力を伝達させる装置である。すなわち、扉開放装置41は、左側冷蔵室扉20Aaおよび右側冷蔵室扉20Abを自動で開放させる装置である。
【0029】
本実施形態の扉開放装置41は、筐体10の天井部に設けられる。筐体10に対して冷蔵室扉20Aa、20Abが閉じた状態を、冷蔵室扉20Aa、20Abの初期位置としたとき、扉開放装置41は、初期位置の冷蔵室扉20Aa、20Abを筐体10側から開放方向へ向かって押し出すことによって開放させる装置である。
【0030】
扉開放装置41は、例えば、左側冷蔵室扉20Aaを開放するための左扉開放装置41Aと、右側冷蔵室扉20Abを開放するための右扉開放装置41Bとを有する。
左扉開放装置41Aおよび右扉開放装置41Bは、例えば、扉を開放させるための駆動装置と、駆動装置を収容するための収容部材などのその他の部品と、を有する。
【0031】
本実施形態では、上記駆動装置として、例えば、電磁石が励磁されることで前方に押し出される可動鉄芯と、可動鉄芯の周囲に設けられた不図示の円筒状コイルと、を有し、円筒状コイルに電流を流すことで得られる電磁力によって円筒状コイルの内側に設置された可動鉄芯を可動させる、ソレノイド構造又はソレノイド方式を利用したものを用いている。
【0032】
左扉開放装置41Aおよび右扉開放装置41Bにおいては、上記ソレノイド構造又はソレノイド方式を利用した上記駆動装置により、円筒状コイルに電流を流すと発生する電磁力によって可動鉄心を直進運動させることで、冷蔵室扉20Aa,20Abを開放させることができる。ソレノイド構造又はソレノイド方式を利用した駆動装置を、ソレノイドアクチュエーターと呼ぶことがある。
【0033】
このような駆動装置により、電磁力によって円筒状コイルの内側の可動鉄芯が勢いよく前進することによって、冷蔵室扉20Aa,20Abを開く方向へ勢いよく押し出すことができる。なお、可動鉄芯による動力が冷蔵室扉20Aa,20Abへ伝達されるのは、可動鉄芯が冷蔵室扉20Aa,20Abに当接している間である。
【0034】
冷蔵室扉20Aa,20Abは、可動鉄芯による押圧力で開き、その後は押し出された力による慣性によって所定の角度まで開くように回動する。慣性の働きが弱くなると、冷蔵室扉20Aa,20Abの開放速度が減速する。このようにして、冷蔵室扉20Aa,20Abはある程度開放された状態とされる。
【0035】
すなわち、左扉開放装置41Aおよび右扉開放装置41Bは、冷蔵室扉20Aa,20Abの開放角度範囲全域に亘って作用するのではなく、冷蔵室扉20Aa,20Abに対して各々の開放に伴う初動動作を付与するためのものである。そのため、左扉開放装置41Aおよび右扉開放装置41Bは、冷蔵室扉20Aa,20Abを最も大きく開放した状態になるまで開くのではなく、使用者による開放動作や冷蔵庫1から食品等の取り出しあるいは収容作業がよりスムーズに行われるような角度で開放されればよい。上述した、冷蔵室扉20Aa,20Abがある程度開放された状態とは、例えば、使用者にとって使いやすい開放状態のことである。
【0036】
本実施形態の左扉開放装置41Aおよび右扉開放装置41Bにおいては、冷蔵室扉20Aの開放角度が一定範囲より大きくなった状態、例えば、冷蔵室扉20Aの開放角度が5°よりも大きくなった状態の冷蔵室扉20Aに対して、冷蔵室扉20Aをそれ以上開く力は伝達されない。
【0037】
具体的な構成として、本実施形態の左扉開放装置41Aおよび右扉開放装置41Bは、上記可動鉄芯としてのプランジャ41Pと、プランジャ41Pの周囲に設けられた不図示の上記円筒状コイルと、を有する。
円筒状コイルは、例えば、銅線からなる電線を螺旋状に密に巻いた形状をなす。
プランジャ41Pは、上記円筒状コイルの内側に設けられ、円筒状コイルに電流を流すと発生する電磁力を利用して直進運動する可動鉄芯である。プランジャ41Pが直進運動する方向は、冷蔵庫1の前後方向に一致する。
【0038】
左扉開放装置41Aは、筐体10の上壁10aのうち、左側冷蔵室扉20Aaと対向する位置に配置されている。右扉開放装置41Bは、筐体10の上壁10aのうち、右側冷蔵室扉20Abと対向する位置に配置されている。
【0039】
筐体10側に設けられた扉開放装置41は、冷蔵室扉20A側に設けられた扉開放操作部42と、不図示の電気配線及び第1電源基板70を通じて接続されている。左扉開放装置41Aは左扉開放操作部42Aに接続され、右扉開放装置41Bは右扉開放操作部42Bに接続される。
【0040】
そして、例えば、扉開放操作部42を使用者が操作するなど、扉開放装置41の作動条件が満たされると、電気配線および第1電源基板70を通じて扉開放装置41のプランジャ41Pが前方に駆動する。プランジャ41Pが前方に駆動すると、冷蔵室扉20Aa、20Abが筐体10から離れる方向に押され、冷蔵室扉20Aa、20Abが開放される。
【0041】
左扉開放装置41Aおよび右扉開放装置41Bは、後述する第1電源基板70の制御部100(
図4)によって制御される。扉開放装置41は、後述する扉開放操作部42への使用者の操作だけでなく、音響ユニット52の音声指示取得部52gを通じて取得した使用者からの「扉開放指示(音声指示)」に基づく制御部100の制御によって駆動された場合であっても、プランジャ41Pを前方に押し出すことで冷蔵室扉20Aa,20Abを強制的に開くことができる。
【0042】
このように、左扉開放装置41Aおよび右扉開放装置41Bにおいて、冷蔵室扉20Aa、20Abが閉じた状態から開放角度が一定範囲内において扉を開く力を伝達させることに適した、上述のソレノイド構造及びソレノイド方式を利用した駆動装置を利用することで、プランジャ41Pを冷蔵室扉20Aへ向けて押し出す初期速度、すなわち、扉を開放する速度が速くなり、ギア伝達を利用した開放装置よりも、冷蔵室扉20Aa、20Abを迅速に開放させることが可能となる。このように、冷蔵室扉20Aa、20Abを素早く開くことが可能なため、従来よりも冷蔵庫1の使い勝手を向上させることができる。
【0043】
なお、扉開放装置41は、上述した構造例に限定されない。
例えば、プランジャ41Pは鉄に限られず、少なくとも一部に磁性体を有すれば可動芯体として適用できる。また、本実施形態では、可動鉄芯をプランジャ41Pとしているが、可動鉄芯に別の部材を固定したものをプランジャ41Pとしてもよい。
【0044】
また、本実施形態の扉開放装置41の駆動装置としては、可動鉄芯からなるプランジャ41Pの直進運動を駆動力として利用した直進型ソレノイドアクチュエーターに限定されない。例えば、プランジャ41Pの直進運動を回転運動に変換する機構を組み込んだソレノイドアクチュエーターであってもよい。このような回転型ソレノイドアクチュエーターは、コイルに通電することによって得られる直進力を回転運動に変換する構造となっており、回転運動の際に直進運動しながら僅かに回転する。一般的なモーターは、回転軸回りに任意の回転角度で一周以上、回転可能なであるのに対して、回転型のソレノイドアクチュエーターは、回転範囲が限定的である(一周しない)点においてモーターとは異なる。
【0045】
<扉開放操作部>
扉開放操作部42は、扉開放装置41を動作させる使用者の行動を受け付ける。
例えば、扉開放操作部42は、左扉開放装置41Aを動作させる使用者の行動を受け付ける左扉開放操作部42Aと、右扉開放装置41Bを動作させる使用者の行動を受け付ける右扉開放操作部42Bとを有する。
左扉開放装置41A、右扉開放装置41Bを動作させる使用者の行動には、例えば、冷蔵室扉20Aの表面に触れる使用者の接触操作や、冷蔵室扉20Aに近づけた使用者の手などの身体の所定の動作が含まれる。扉開放操作部42は、上記使用者の行動に基づいた、使用者からの扉開放指示を受け付ける。
【0046】
左扉開放操作部42Aは、左側冷蔵室扉20Aaに設けられ、左側冷蔵室扉20Aaの表面に触れる使用者の接触操作や、左側冷蔵室扉20Aaに近づけた使用者の手などの身体の所定の動作を検出可能な検出部を有する。身体の所定の動作とは、非接触で検出するための動作であり、例えば、手のひらを近づけるなどが挙げられる。予め、後述の記憶部126に所定の動作を記憶させておくことにより、他の動作を検出されないようにすることが可能である。記憶部126への所定の動作の登録は、冷蔵庫1の出荷前に予め登録されていてもよいし、使用者が冷蔵庫1を購入した後、使用者自身が決めた任意の動作を適宜登録するようにしてもよい。
左扉開放操作部42Aが使用者の接触操作や所定の動作を受け付けた場合、第1電源基板70の制御部100は、左扉開放装置41Aを動作させる。
【0047】
右扉開放操作部42Bは、右側冷蔵室扉20Abに設けられ、右側冷蔵室扉20Abの表面に触れる使用者の接触操作や、右側冷蔵室扉20Abに近づけた使用者の手などの身体の動作を検出可能な検出部を有する。右扉開放操作部42Bが使用者の操作や動作を受け付けた場合、第1電源基板70の制御部100は、右扉開放装置41Bを動作させる。
【0048】
左扉開放操作部42Aおよび右扉開放操作部42Bに設けられる検出部は、例えば、静電容量の変化を検出することで、冷蔵室扉20Aa、20Abの表面に触れる使用者の接触操作や、冷蔵室扉20Aa、20Abの表面に近づいた使用者の手などの身体の動作を検出する。
【0049】
<庫内カメラ>
図2に示す庫内カメラ53は、冷蔵室11A、チルド室11AA,野菜室11B、小冷凍室11D,主冷凍室11Eのうち1つ以上である貯蔵室11に設けられている。庫内カメラ53は、カメラ本体53aと、カメラ制御部53bとを有する。
カメラ本体53aは、貯蔵室11に収容された貯蔵物(食材)の画像を撮影する。
カメラ制御部53bは、カメラ本体53aを制御する。例えば、カメラ制御部53bは、所定の周期でカメラ本体53aを動作させ、貯蔵室11内の様子を撮影させる。
【0050】
庫内カメラ53は、例えば、冷蔵室11Aの天井面や側面などに設けられ、冷蔵室11Aとチルド室11AAとに対する食品の入出庫を検出する撮像装置である。庫内カメラ53は、例えば食品の移動方向を検出することで、食品の入庫であるか、食品の出庫であるかを検出する。なお、庫内カメラ53は、チルド室11AAに設けられ、チルド室11AAに対する食品の入出庫だけを検出してもよい。
【0051】
庫内カメラ53は、可視光領域に感度特性を有する通常のカメラでもよく、赤外光領域に感度特性を有する赤外線カメラでもよい。赤外線カメラは、食品の温度(例えば表面温度)を検出可能である。本実施形態では、食品の入出庫を検出する検出部として、庫内カメラ53を用いているが、これに限らず、超音波検出部などでもよい。また、チルド室温度検出部121によって食品の温度が検出される場合は、庫内カメラ53は省略されてもよい。
【0052】
<第1電源基板>
第1電源基板70は、
図1に示すように、例えば筐体10の上壁10aに設けられている。第1電源基板70は、外部の商用電源PS(
図3)から電源コード7を介して電力が供給され、冷蔵庫1の冷却運転に必要な電力を各所へ供給する電源基板である。例えば、第1電源基板70は、冷却ユニット30、扉開放装置41、扉開放操作部42、通信モジュール61、庫内カメラ53、扉閉装置130などへ電力を供給する。
【0053】
<第2電源基板>
第2電源基板80は、
図1に示すように、上述した第1電源基板70とともに筐体10の上壁10aに設けられている。第2電源基板80は、第1電源基板70よりも後方に位置し、当該第1電源基板70とは独立して設けられている。
第2電源基板80は、音を出力可能な音響ユニット52の主電源として機能する電源基板である。第2電源基板80は、電力供給線8(
図3)を介して第1電源基板70と接続されている。第2電源基板80は、第1電源基板70を通じて外部の商用電源PS(
図3)から供給された電力を、音響ユニット52に供給する。
【0054】
冷却ユニット30および情報機能ユニット等に電力を供給する第1電源基板70とは別に、音響ユニット52だけに電力を供給する第2電源基板80を備えることによって、音響ユニット52に故障が生じた場合でも、第1電源基板70の機能(冷蔵庫1の冷却機能)を維持できるとともに、第1電源基板70に接続された通信モジュール61を通じて外部の端末装置TDの画面などにおいて、冷蔵庫1の故障時用情報や、在庫情報を使用者が知ることができる。あるいは、使用者は、端末装置TDを操作することで、第1電源基板70の記憶部に記憶されている所定の情報を確認することができる。また、故障した音響ユニット52を交換するだけで済むため、手間とコストを削減できる。これにより、使用者の利便性の向上を図ることができる。
【0055】
<音響ユニット>
音響ユニット52は、冷蔵庫1の周囲に居る人の音声を認識することが可能である。また、音響ユニット52は、冷蔵庫1の周囲に居る人へ向けて音声を出力し、冷蔵庫1の情報やその他の音声を出力することが可能である。
音響ユニット52は、スピーカ(音響部)52a、アンプ基板52b、音声指示取得部52gおよび収容ケース52dを有する。
【0056】
(音声指示取得部)
音声指示取得部52gは、音声入力が可能なマイクであり、使用者からの各種操作に関する音声指示を取得する。音声指示取得部52gは、冷蔵室扉20Aa、20Abに設けられている。
【0057】
(スピーカ)
スピーカ52aは、平面視矩形状の薄型スピーカであり、前方放音面52abにおいて音を生成する。
【0058】
(アンプ基板)
アンプ基板52bは、回路基板90aと、回路基板90aに実装された複数の電気部品90bと、を有する。
図2に示した回路基板90aと複数の電気部品90bとにより、マイク制御部、マイク記憶部、スピーカ制御部、スピーカ記憶部、および無線通信用モジュールが実現される。
【0059】
アンプ基板52bは、不図示のマイク接続束線を介して音声指示取得部52gと接続されている。アンプ基板52bは、上記マイク制御部により音声指示取得部52gを制御する。アンプ基板52bは、上記マイク制御部により音声指示取得部52gのON、OFFを制御するとともに、音声指示取得部52gにおいて取得した使用者の音声データを第1電源基板70へと送信する。
【0060】
アンプ基板52bは、スピーカ接続束線90cを介してスピーカ52aと接続されている。アンプ基板52bは、上記スピーカ制御部によりスピーカ52aを制御する。アンプ基板52bは、例えば、スピーカ52aから出力させる音楽または/および音声を制御する。
【0061】
無線通信用モジュールは、外部の端末装置TDと無線で通信可能である。例えば、無線通信モジュールは、冷蔵庫1から所定範囲内(例えば冷蔵庫1と同じ住居内の少なくとも一部空間)に位置する端末装置TDと無線で直接に通信可能である。無線通信モジュールは、例えばBluetooth(登録商標)などの規格に準拠した近距離無線通信モジュールである。
【0062】
端末装置TDは、冷蔵庫1の使用者が所有する端末装置であり、スマートフォンまたはタブレット端末などである。
端末装置TDは、外部のネットワークNWを介してサーバ装置SDと通信可能である。端末装置TDでは、所定のアプリケーションプログラム(例えば、冷蔵庫1の遠隔操作用のプログラム)が事前にインストールされており、このプログラムが端末装置に搭載されたプロセッサにより実行されることで、所定の機能が実現される。例えば、端末装置TDは、冷蔵庫1から状態履歴情報を受信した場合、受信した状態履歴情報をサーバ装置SDに転送する。
【0063】
アンプ基板52bは、第2電源基板80から供給された電力を、スピーカ52a、音声指示取得部52gに供給する。これにより、スピーカ52aおよび音声指示取得部52gが動作可能になる。
【0064】
アンプ基板52bは、無線通信モジュールを通じて端末装置TDから受信した制御信号に基づき、音楽データおよび/または音声データを再生し、再生した音楽および/または音声をスピーカ52aから冷蔵庫1の外部に出力する。これにより、冷蔵庫1における必要な情報を使用者へと通知するだけでなく、使用者が選択した音楽および/または音声を所望のタイミングで聞くことができる。
【0065】
アンプ基板52bは、上記第1電源基板70と通信可能である。アンプ基板52bは、第1電源基板70と接続されている。第1電源基板70との通信方式としては、例えば、UART(Universal Asynchronous Receiver-Transceiver:非同期シリアル通信用送受信回路)等の通信インターフェースを使う方法がある。
【0066】
アンプ基板52bのスピーカ制御部は、第1電源基板70(制御部100)と通信することで、記憶部126(
図4)に記憶されている冷蔵庫1の所定の情報(状態履歴情報、故障時用情報、在庫情報など)を取得し、スピーカ記憶部に記憶させる。スピーカ記憶部には、第1電源基板70から取得した冷蔵庫1における所定の情報(状態履歴情報、故障時用情報、在庫情報など)や、これら情報に基づく音楽データおよび/または音声データが記憶される。
【0067】
スピーカ制御部は、例えば、スピーカ記憶部に記憶された冷蔵庫1における所定の情報(状態履歴情報、故障時用情報、在庫情報など)に基づく音楽データおよび/または音声データを再生し、再生した音楽および/または音声をスピーカ52aから冷蔵庫1の外部へ出力する。
【0068】
スピーカ52aからは、例えば、「扉が開いています」、「冷蔵室を強モードに変更しました」、「一気製氷モードに設定しました」などが音声通知される。これにより、冷蔵庫1の周囲にいる使用者は、冷蔵庫1における必要な情報を耳にし、知り得ることができる。
【0069】
また、スピーカ制御部は、例えば、スピーカ記憶部に記憶されている冷蔵庫1の所定の情報(状態履歴情報、故障時用情報、在庫情報など)に基づく音楽データ信号および/または音声データ信号を端末装置TDへと送信する。これにより、使用者は、冷蔵庫1における必要な情報を手元の端末装置TDにおいて確認することができる。
【0070】
アンプ基板52bのマイク制御部は、音声指示取得部52gを通じて取得した使用者の音声指示に基づく所定の指示情報をマイク記憶部に記憶させる。マイク制御部は、第1電源基板70(制御部100)と通信することで、マイク記憶部に記憶されている所定の指示情報を記憶部126(
図4)に記憶させる。指示情報としては、スピーカ52aの音声出力指示、冷蔵室扉20Aa、20Abの開閉指示に関する情報が含まれる。
【0071】
マイク制御部は、例えば、使用者からの所定の「呼びかけ言葉」に反応し、その後に続く音声指示を取得する。マイク制御部は、音声指示取得部52gを通じて使用者からの「呼びかけ言葉」を認識した場合に、その後に続く音声を使用者からの指示情報として取得する。
【0072】
<通信モジュール>
通信モジュール61は、外部の端末装置との間で遠距離通信が可能であり、冷蔵庫1と同じ住居に設置されたルータRと、無線または有線で通信可能である。通信モジュール61は、ルータR、不図示のモデム、およびインターネットなどの外部のネットワークNWを介して、外部のサーバ装置SD(例えばクラウドサーバ)と通信可能である。通信モジュール61は、冷蔵庫1の状態を示す情報をサーバ装置SDに送信する。また、通信モジュール61は、冷蔵庫1に対する遠隔操作の制御信号をサーバ装置SDから受信する。
【0073】
<経過時間計測部>
経過時間計測部101は、使用者による手動、あるいは扉開放装置41によって冷蔵室扉20Aが開放された後、冷蔵室扉20Aが開放されている時間(開放経過時間)を計測し、制御部100へ送信する。経過時間計測部101は、マイコンなどとともにコンピュータで構成される制御部100の一部であってもよい。
【0074】
<扉閉装置>
扉閉装置130は、
図1に示すように、開放されている冷蔵室扉20Aを自動で閉じる装置であって、筐体10側に設けられた扉開放装置41とは別に、冷蔵室扉20A側に設けられている。扉閉装置130は、扉開放装置41とは駆動源も別である。
【0075】
図1に示すように、扉閉装置130は、両方の扉をそれぞれ個別に自動で閉じる機能を有する。扉閉装置130は、例えば、左扉閉装置130Aと、右扉閉装置130Bとを有し、それぞれ独立して駆動可能である。左扉閉装置130Aおよび右扉閉装置130Bは、冷蔵室扉20Aが最大限開いた状態、すなわち、冷蔵室扉20Aの最大開放角度において動力を伝達できる装置である。冷蔵室扉20Aの開放角度が何度であっても、冷蔵室扉20Aを閉じることが可能である。
【0076】
左扉閉装置130Aおよび右扉閉装置130Bは、
図1に示すように、左側冷蔵室扉20Aaおよび右側冷蔵室扉20Abのそれぞれに内蔵されている。左扉閉装置130Aおよび右扉閉装置130Bは、左側冷蔵室扉20Aaおよび右側冷蔵室扉20Abのうちの幅方向一端側であって冷蔵庫1の幅方向で外側(左右両側)となる位置にそれぞれ配置されている。
【0077】
本実施形態では、左右両方の冷蔵室扉20Aに対してそれぞれ扉閉装置130が設けられているが、いずれか一方側の冷蔵室扉20Aだけに設けられていてもよい。特に、左側冷蔵室扉20Aaよりも扉が大きく、重量がある右側冷蔵室扉20Abに扉閉装置130が設けられていてもよい。
【0078】
扉閉装置130は、
図5に示すような扉回動機構131と、
図8に示すような扉引込み用機構132と、をそれぞれ備える。なお、
図5においては、右側冷蔵室扉20Abを示しており、当該右側冷蔵室扉20Abには、右扉閉装置130Bが搭載されている。
【0079】
左扉閉装置130Aおよび右扉閉装置130Bにおける各扉回動機構131は、冷蔵室扉20Aa、20Abを各回転支軸Oa,Obを中心にして、閉じる方向へ回動させる機能を有する。左扉閉装置130Aおよび右扉閉装置130Bにおける各扉回動機構131は、左扉閉装置130Aおよび右扉閉装置130Bのそれぞれに設けられる。これにより、各扉回動機構131は、冷蔵室扉20Aa、20Abをそれぞれ個別に、閉じる方向へ回動させることが可能である。なお、以下の説明において、回転支軸Oa,Obを単に回転支軸Oと言うこともある。
【0080】
扉引込み用機構132は、筐体10に対して所定の角度で開状態にある冷蔵室扉20Aa、20Abを筐体10側に引き込んで完全に閉じる機能を有する。
【0081】
[筐体の上壁側の構造]
次に、筐体10の上壁10aを上方(表側)から見た構造について詳しく述べる。
図3は、一実施形態の冷蔵庫の天井部の構成を示す斜視分解図である。
【0082】
図3に示すように、第1電源基板70および第2電源基板80は、筐体10の天井部分(上壁10a)に一部が埋め込まれるようにして設置された電源基板収容部2内に収容される。電源基板収容部2は、上側が開口した矩形の容器形状をなし、電源基板収容部用蓋部材2Aによって開口側が閉塞される。電源基板収容部用蓋部材2Aは、電源基板収容部2の開口側に着脱可能に取り付けられる。
【0083】
通信モジュール61、扉開放装置41および音響ユニット52は、筐体10の上壁10a(外箱10j)上に設置されている。通信モジュール61は、上壁10aのうち、第1電源基板70および第2電源基板80よりも前方で、筐体10の幅方向左側に配置されている。通信モジュール61は、左側冷蔵室扉20Aaを支持する左側ヒンジ6Aと前後方向で隣り合うようにして左側ヒンジ6Aの後方に設置されている。
【0084】
音響ユニット52は、
図1に示すように、筐体10の上壁10aに設けられている。音響ユニット52は、上壁10aのうち、第1電源基板70および第2電源基板80よりも前方で、筐体10の幅方向右側に配置されている。音響ユニット52は、右側冷蔵室扉20Abを支持する右側ヒンジ6Bの近傍に配置されている。音響ユニット52を通信モジュール61から離れた位置に配置することによって、互いの通信が干渉してノイズ等の影響が生じるのを抑制することができる。
【0085】
扉開放装置41は、通信モジュール61および音響ユニット52の間であって、筐体10の中央付近に互いに所定の間隔をおいて配置されている。左扉開放装置41Aは左側冷蔵室扉20Aaと対向し、右扉開放装置41Bは、右側冷蔵室扉20Abに対向する。
【0086】
音声指示取得部52gは、左扉開放装置41Aと右扉開放装置41Bとの間であって筐体10の中央に配置されている。
【0087】
これら通信モジュール61、扉開放装置41、音声指示取得部52gおよび音響ユニット52は、筐体10の上壁10aに取り付けられるカバー部材3によって覆われている。
【0088】
筐体10の上壁10aを構成する外箱10jと内箱10iとの間の空間には、
図3に示す筐体10の上壁10a(上面10ja)側に設置された、第1電源基板70から引き出された複数の配線束12と、第2電源基板80から引き出された配線束13と、が引き廻されている。
【0089】
複数の配線束12は、第1電源基板70と、通信モジュール61、扉開放装置41および音響ユニット52等にそれぞれ接続された複数の制御線を含み、第1電源基板70から通信モジュール61、扉開放装置41および音響ユニット52等のそれぞれに制御信号を伝達する。複数の配線束12は、第1電源基板70から通信モジュール61、扉開放装置41および音響ユニット52等に電力を供給する電力供給線を含んでいてもよい。
【0090】
複数の配線束13は、少なくとも第2電源基板80と音響ユニット52とに接続され、第2電源基板80から音響ユニット52へ電力を供給する。
【0091】
[制御機能]
図4は、冷蔵庫1の機能構成の一部を示すブロック図である。
以下の説明において、
図4の他に
図2を適宜参照する。
【0092】
第1電源基板70は、マイコンなどを有したコンピュータで構成される制御部100を備える。制御部100は、冷蔵庫1の全体を制御する。
【0093】
制御部100には、冷却ユニット30、冷蔵室温度検出部120、チルド室温度検出部121、外気温度検出部122、冷蔵室扉スイッチ123、チルド室扉スイッチ124、庫内カメラ53、記憶部126、扉開放装置41、扉開放操作部42、音響ユニット52、扉閉装置130、および経過時間計測部101が接続されている。
【0094】
冷却ユニット30の冷蔵用ファン33および圧縮機31は、制御部100からの指令に基づいて駆動する。
【0095】
庫内カメラ53のカメラ制御部53bは、カメラ本体53aにおいて撮影した画像データを第1電源基板70の制御部100に送信する。
【0096】
冷蔵室温度検出部120は、冷蔵室11Aに設けられ、冷蔵室11A内の空気温度を検出する。冷蔵室温度検出部120は、検出した冷蔵室11A内の空気温度データを制御部100に送信する。
【0097】
チルド室温度検出部121は、チルド室11AA(
図2)に設けられた非接触型の温度検出部である。チルド室温度検出部121は、チルド室11AA内の空気温度、チルド室11AA内の食品の温度(例えば食品の表面温度)、又はチルド室11AA内に配置されて食品が載せられる容器の温度を検出する。チルド室温度検出部121は、チルド室11AA内の空気温度、チルド室11AA内の食品の温度(例えば食品の表面温度)、チルド室11AA内に配置されて食品が載せられる容器の温度のうちのいずれか一つ、あるいは複数の温度のデータを制御部100に送信する。
【0098】
なお、チルド室温度検出部121は、上記容器と直接した直接接触型の温度検出部でもよい。以下では、冷蔵室11Aの空気温度を「冷蔵室温度」と称し、チルド室11AAの空気温度を「チルド室温度」と称する場合がある。
【0099】
なお、制御部100は、冷蔵室温度検出部120の検出結果と、予め求められている冷蔵室温度とチルド室温度との相関関係とに基づきチルド室温度を推定してもよい。
【0100】
なお、後述する庫内カメラ53によって食品の温度を検出する場合などでは、チルド室温度検出部121は省略されてもよい。
【0101】
外気温度検出部122は、冷蔵庫1の表面に設けられ、冷蔵庫1の外気温を検出する。なお、本明細書で「外気温」とは、冷蔵庫1の外部の温度を意味し、例えば冷蔵庫1が設置された屋内の気温を意味する。外気温度検出部122は、検出した冷蔵庫1の外気温のデータを制御部100に送信する。
【0102】
冷蔵室扉スイッチ123は、左側冷蔵室扉スイッチ123aと、右側冷蔵室扉スイッチ123bとを有する。冷蔵室扉スイッチ123は、上記左側冷蔵室扉スイッチ123aおよび右側冷蔵室扉スイッチ123bによって左側冷蔵室扉20Aaおよび右側冷蔵室扉20Abの開閉状態をそれぞれ検出し、制御部100へ送信する。
【0103】
具体的に、左側冷蔵室扉スイッチ123aは、左側冷蔵室扉20Aaと筐体10との間に設けられ、左側冷蔵室扉20Aaの開閉状態を検出する。右側冷蔵室扉スイッチ123bは、右側冷蔵室扉20Abと筐体10との間に設けられ、右側冷蔵室扉20Abの開閉状態を検出する。
【0104】
チルド室扉スイッチ124は、チルド室11AAに設けられ、チルド室扉11Aaの開閉状態を検出し、制御部100へ送信する。
【0105】
記憶部126は、冷蔵庫1の運転に必要なプログラムと各種情報を記憶している。記憶部126は、例えば、後述する制御モードにおいて利用する変換係数が記憶されている。この変換係数は、例えば、各種検出部が検出した検出結果を、温度制御に利用する変数に変換するための係数であり、記憶部126に予め登録されている。
【0106】
記憶部126は、所定の「呼びかけ言葉」、「扉閉操作指示に関する言葉」、「開放制限時間」、等を記憶している。冷蔵庫1に設置された音声指示取得部52gは、使用者が冷蔵庫1に向かって発した上記所定の「呼びかけ言葉」および「扉閉操作指示に関する言葉」を取得する。
【0107】
「呼びかけ言葉」は、使用者からの指示開始を認識する所定のトリガーワードとして予め設定した言葉である。つまり、「呼びかけ言葉」は、使用者からの指示を受け付けるための音声認識機能を起動するための条件として予め設定した言葉である。「呼びかけ言葉」としては、例えば、冷蔵庫1の名称や愛称など、冷蔵庫1を言葉が挙げられる。
【0108】
また、「扉閉操作指示に関する言葉」としては、例えば「閉じて」、「クローズ」、「開けて」、「オープン」など、使用者の指示内容を示す言葉が挙げられる。
【0109】
このような「呼びかけ言葉」および「扉閉操作指示に関する言葉」を予め設定しておくことによって、使用者の日常会話によって冷蔵室扉20Aの開動作が実行されてしまうのを抑制することができる。
【0110】
なお、制御部100が音声認識機能を起動するための条件としては、上記「呼びかけ言葉」に限られない。例えば、上記「呼びかけ言葉」に代えて、冷蔵庫1(筐体10、あるいは冷蔵室扉20A)に設けた不図示の扉閉操作部に対する操作によって、音声認識機能を起動してもよい。あるいは、外部端末から取得した情報に基づいて、音声認識機能を起動してもよい。外部端末から取得した情報としては、例えば、携帯電話においてアプリ起動が起動された場合や、冷蔵庫1に予め登録しておいた携帯電話が冷蔵庫1から所定距離以内に近づいた場合などが挙げられる。
【0111】
また、「開放制限時間」は、冷蔵室扉20Aが開放されてから閉じられずに開放された開放状態を維持することが制限される時間であって、予め設定された所定の時間である。経過時間計測部101は、実際に冷蔵室扉20Aが開放されている時間を計測する。制御部100は、実際の開放経過時間と、予め設定された上記「開放制限時間」とを比較する。
開放制限時間は適宜変更が可能であり、例えば、使用者が一般的に冷蔵庫1を使用する際に必要とする時間に設定されてもよいし、使用者が一般的に冷蔵庫1を使用する際に必要とする時間に対して多少の余裕をもった時間に設定されてもよいし、冷蔵室扉20Aの開放によって冷蔵庫1内の冷却温度が上昇して外気温との温度差が所定の温度差になるまでの時間に設定されてもよい。
本発明に係る扉閉条件の一つは、冷蔵室扉20Aが開放された状態で所定時間経過することである。すなわち、冷蔵室扉20Aが開放されている時間である開放経過時間が開放制限時間を超えることである。
制御部100は、例えば、筐体10に対する冷蔵室扉20Aa,20Abの開放角度θ(
図2)が所定の範囲内にあるときに、使用者からの音声指示(扉閉指示)を受け付けるようにしてもよい。音声指示を受け付け可能な冷蔵室扉20Aa,20Abの開放角度範囲としては、例えば、45°以上、145°以下の範囲内である。なお、本実施形態においては、冷蔵室扉20Aa、20Abを開くことが可能な最大の開放角度を145°としたが、これに限定されない。また、開放角度が45°以下であっても冷蔵室扉20Aa,20Abを閉める指示を受け付けるようにしてもよい。
【0112】
なお、冷蔵室扉20Aa,20Abの開放角度範囲は上記した範囲に限られず、適宜変更が可能である。
【0113】
制御部100は、扉開放操作部42において検出した使用者の操作に応じて出力された「操作信号」を取得した場合に、扉開放操作部42を駆動させて冷蔵室扉20Aa,20Abを開放する。
【0114】
あるいは、制御部100は、音響ユニット52の音声指示取得部52gを通じて使用者から所定の「呼びかけ言葉」を検出して、その後に続く使用者からの「扉開放指示(音声指示)」を取得した場合に、扉開放操作部42を駆動させて冷蔵室扉20Aa、20Abを開放する。
ここで、上記「扉開放指示」には、冷蔵室扉20Aa,20Abの開放を指示する扉開放指示、扉開放装置41A,41Bの駆動を指示する扉開放指示を含む。制御部100は、扉開放指示において、冷蔵室扉20Aa,20Abのうち、開放する冷蔵室扉20Aの指定があった場合は、その指定された冷蔵室扉20Aを開放する。一方、開放する冷蔵室扉20Aの指定がない場合は、左右両方の冷蔵室扉20Aa,20Abを開くようにしてもよい。
また、制御部100は、扉開放指示を出す使用者に対して、開放する冷蔵室扉20Aの指定を促す情報として、スピーカ52aから、例えば「どちらの扉を開きますか?」というような音声案内を出力してもよい。音声案内の内容は適宜設定可能である。
また、表示部を備える冷蔵庫1とした場合は、上記音声案内と同様の意味を示す表示などを出力しても良い。
【0115】
また、制御部100は、冷蔵室扉20Aa、20Abが開放状態にあるとき、開放された冷蔵室扉20Aa、20Abを閉じるための所定の「扉閉条件」を満たした場合に、扉閉装置130(左扉閉装置130A,右扉閉装置130B)をそれぞれ駆動させて冷蔵室扉20Aa、20Abを閉じる。
【0116】
上記「扉閉条件」としては、音声指示取得部52gを通じて使用者から音声による「扉閉指示」(以下、音声指示ともいう)を取得した場合、および冷蔵室扉20Aが開放された状態で所定時間を経過した場合のうちの少なくとも一つを含む。冷蔵室扉20Aが開放された状態で所定時間を経過した場合とは、具体的に、冷蔵室扉20Aが開放されている時間である開放経過時間が開放制限時間に達した場合(開放経過時間=開放制限時間)、あるいは、開放経過時間が開放制限時間を超えた場合(開放経過時間>開放制限時間)を含む。
【0117】
また、制御部100は、冷蔵室扉20Aa、20Abのそれぞれが上記「扉閉条件」を満たすか否かを判断する。
【0118】
すなわち制御部100は、音響ユニット52の音声指示取得部52gを通じて使用者から所定の「呼びかけ言葉」を検出して、その後に続く使用者からの「扉閉指示(音声指示:扉閉条件)」を取得した場合に、扉閉装置130における駆動装置133の回転駆動機(駆動源)133aを駆動させて、冷蔵室扉20Aを閉じる。本実施形態では、回転駆動源をモーター133aと呼ぶ。
【0119】
このとき、制御部100は、左側冷蔵室扉20Aa、および右側冷蔵室扉20Abの両方が開放されている状態で上記扉閉指示を取得した際、左右どちらの冷蔵室扉20Aを閉めるかの指定がなかった場合には、左側冷蔵室扉20Aa、右側冷蔵室扉20Abに対応した左扉閉装置130A、右扉閉装置130Bの各駆動装置133をそれぞれ独立して駆動させ、左側冷蔵室扉20Aaおよび右側冷蔵室扉20Abの両方を閉じるようにしてもよい。
左側冷蔵室扉20Aa、および右側冷蔵室扉20Abの両方が開放されている状態で、上記扉閉指示を取得した際、左右どちらの冷蔵室扉20Aを閉めるかの指定があった場合は、指定された冷蔵室扉20Aに対応したいずれかの扉閉装置130A,130Bの駆動装置133を駆動して、指定された左右いずれかの冷蔵室扉20Aを閉じるようにしてもよい。
【0120】
また、制御部100は、上記扉閉指示を取得した時点で、開放されている冷蔵室扉20Aが左側冷蔵室扉20Aa、および右側冷蔵室扉20Abのうちのいずれか一方だけの場合は、開放されている冷蔵室扉20Aに対応した扉閉装置130の駆動装置133を駆動させることによって、開放状態の冷蔵室扉20Aを閉じるようにしてもよい。
【0121】
このように、制御部100は、上記扉閉指示によって、左側冷蔵室扉20Aaおよび右側冷蔵室扉20Abの両方が閉じた状態にする。
【0122】
また、制御部100は、経過時間計測部101により冷蔵室扉20Aa、20Abの開放経過時間を計測し、記憶部126に予め記憶されている所定の「開放制限時間(扉閉条件)」を経過した場合に、扉閉装置130における駆動装置133のモーター133aを駆動させて、冷蔵室扉20Aを閉じる。
【0123】
具体的に、制御部100は、左側冷蔵室扉20Aa、および右側冷蔵室扉20Abの両方が開放されている場合は、「開放制限時間」をそれぞれ個別に計測し、それぞれが、予め設定された「開放制限時間」に達した場合、あるいは「開放制限時間」を超えた場合に、左側冷蔵室扉20Aa、右側冷蔵室扉20Abに対応した左扉閉装置130A、右扉閉装置130Bの各駆動装置133をそれぞれ独立に駆動させて、開放状態の冷蔵室扉20Aa、20Abをそれぞれ個別に閉じてもよい。
これにより、冷蔵室扉20Aa、20Ab毎の開放経過時間の計測や各扉閉装置130A,130Bを駆動するための制御が容易になる。
【0124】
また、例えば、開放された左側冷蔵室扉20Aaおよび右側冷蔵室扉20Abのうちいずれか一方が、予め設定された「開放制限時間」に達した場合、あるいは「開放制限時間」を超えた場合に、両方の扉を閉じるようにしてもよい。先に開放された冷蔵室扉20Aを基準に開放経過時間を計測することにより、先に開放された冷蔵室扉20Aが「開放制限時間」に達した場合、あるいは「開放制限時間」を超えた場合に、開放されている両方の冷蔵室扉20Aを迅速に閉じることが可能である。
【0125】
また、いずれか一方の冷蔵室扉20Aの開放経過時間が、予め設定された「開放制限時間」に達していても、他方の冷蔵室扉20Aの開放経過時間が、上記「開放制限時間」に達していない場合、他方の冷蔵室扉20Aは後から開かれたこととなり、使用者が、他方の冷蔵室扉20Aを開放した後、貯蔵物の出し入れを続けている可能性がある。そのため、片方の冷蔵室扉20Aの開放経過時間が上記「開放制限時間」を経過しただけではいずれの扉も閉じないようにしてもよい。これにより、まだ使用者が貯蔵物の出し入れを行っている最中であるにもかかわらず、冷蔵室扉20Aを閉じてしまうことを抑制することができる。
【0126】
この場合においても、左右の冷蔵室扉20Aの開放経過時間の計測を個別に計測する。左右の冷蔵室扉20Aの開放経過時間の計測を開始するタイミングとしては、先に開放された一方の冷蔵室扉20Aから計測を開始する。この一方の冷蔵室扉20Aが開放された状態のまま、他方の冷蔵室扉20Aも開放されたときは、他方の冷蔵室扉20Aが開放されたときから開放経過時間の計測を再び開始する。
【0127】
そして、後から開いた他方の冷蔵室扉20Aの開放経過時間も「開放制限時間」に達した場合、すなわち、両方の冷蔵室扉20Aの開放経過時間が「開放制限時間」に達したときに、左右両方の冷蔵室扉20Aを閉じるようにしてもよい。
【0128】
また、制御部100は、開放されている冷蔵室扉20Aが左側冷蔵室扉20Aa、および右側冷蔵室扉20Abのうちのいずれかが開放された場合は、開放された冷蔵室扉20Aの開放経過時間が「開放制限時間」に達した場合に、当該冷蔵室扉20Aに対応した扉閉装置130の駆動装置133を駆動させる。このようにして開放状態の冷蔵室扉20Aを閉じるようにしてもよい。
【0129】
また、制御部100は、左側冷蔵室扉20Aaおよび右側冷蔵室扉20Abの両方の開放経過時間を同時に計測してもよい。例えば、左側冷蔵室扉20Aaおよび右側冷蔵室扉20Abのうちいずれか一方が開放された場合、両方の扉が開放されていると仮定してその開放経過時間を計測する。開放経過時間は、左側冷蔵室扉20Aaおよび右側冷蔵室扉20Abの両方で共通する。開放された冷蔵室扉20Aの開放経過時間が、予め設定された「開放制限時間」に達した場合に、開放されている左側冷蔵室扉20Aaあるいは右側冷蔵室扉20Abを閉じるようにしてもよい。
【0130】
なお、左側冷蔵室扉20Aaおよび右側冷蔵室扉20Abの両方が開放された場合であっても、先に開放された冷蔵室扉20Aを基準にして左右両方の冷蔵室扉20Aの開放経過時間として計測し、先に開放された冷蔵室扉20Aが「開放制限時間」に達した際に、両方の冷蔵室扉20Aを閉じるようにしてもよい。これにより、両方の冷蔵室扉20Aを迅速に閉じることが可能である。この際、左側冷蔵室扉20Aaおよび右側冷蔵室扉20Abの両方を一緒に閉じてもよいし、片方ずつ閉じてもよい。
【0131】
<扉閉装置>
次に、本実施形態における扉閉装置130の具体的な構成について説明する。
本実施形態における扉閉装置130の左扉閉装置130Aおよび右扉閉装置130Bは、互いにほぼ同様の構造を有する。このため、以下では、右扉閉装置130Bの構造を中心に説明する。
【0132】
[右扉閉装置]
図5は、右側冷蔵室扉20Abの内部構造を示す概略図である。
図6は、取付部材135の構成を示す斜視図である。
【0133】
図5に示すように、右扉閉装置130Bは、右側冷蔵室扉20Abを構成する外側壁部20jのうちの右側側壁20jbに取り付けられている。また、右扉閉装置130Bは、右側冷蔵室扉20Abを筐体10に対して回転可能に支持している上下一対のヒンジ6Bのうち、下位側のヒンジ6B側に配置されている。
【0134】
右扉閉装置130Bは、取付部材135(
図6)を介して、冷蔵室扉20Aの外側壁部20jの右側側壁20jbに取り付けられている。取付部材135は、
図5および
図6に示すように、上下方向に沿って延びる補強部135aと、補強部135aの最下端に形成されたフランジ部135bと、を有する。
【0135】
補強部135aは、
図5に示した外側壁部20jの右側側壁20jbの上下方向の長さよりも短い。取付部材135は、外側壁部20jの上壁20jaおよび下側壁部20kから、上下の端部をそれぞれ離間させた状態で取り付けられているが、取付部材135の寸法や取付位置は適宜変更が可能である。例えば、上壁20jaおよび下側壁部20kのうちのいずれか一方に取付部材135の補強部135aを接触させた状態で取り付けられていてもよい。また、取付部材135の補強部135aの上下寸法を長くして、上壁20jaおよび下側壁部20kの両方に接触させた状態で補強部135aが取り付けられていてもよい。
【0136】
図6に示すように、フランジ部135bは、補強部135aに対して垂直に折り曲げられて形成されている。フランジ部135bには、板厚方向に貫通する貫通孔135cが形成されている。
貫通孔135cの中心は、駆動装置133の回転軸O133と一致する。
【0137】
右扉閉装置130Bは、
図5に示すように、扉回動機構131と、扉引込み用機構132と、を備える。
【0138】
(扉回動機構)
図7は、右扉閉装置130Bにおける扉回動機構131の構成を示す斜視図である。
図8は、右扉閉装置130Bにおける扉回動機構131の構成を示す断面図である。
【0139】
まず、右扉閉装置130Bにおける扉回動機構131の構成について詳述する。 右扉閉装置130Bにおける扉回動機構131は、右側冷蔵室扉20Abを閉めるように駆動する機構であって、右側冷蔵室扉20Abが最も大きく開放された状態から閉じるまで作用し、開放角度範囲の全体において右側冷蔵室扉20Abを回動させることが可能である。そのため、いずれの開放角度であっても右側冷蔵室扉20Abを閉じることが可能である。
【0140】
扉回動機構131は、
図7および
図8に示すように、駆動装置133と、駆動装置133に接続された扉閉伝達機構(扉閉伝達部)150(
図8)と、を有する。
駆動装置133長手方向は、冷蔵庫1の上下方向に一致する。扉閉伝達機構150は、駆動装置133の下端側に配置されている。
【0141】
(駆動装置)
図9は、駆動装置133の構成を示す部品図である。
図9に示すように、駆動装置133は、軸方向(Z方向)の一端(上端)側から順に、駆動機138と、減速機134と、を有している。
【0142】
駆動機138と減速機134とは、同じ方向に延びている。駆動機138と減速機134とは、駆動装置133の長手方向に並んでいるとともに互いに隣り合って配置されている。駆動機138と減速機134とは、互いの回転軸が同軸をなし、互いに一体に構成されている。
【0143】
(駆動機)
駆動機138は、冷蔵室扉20Aを閉じる方向へ回動させるための駆動力(第一駆動力)を発生させるモーター(駆動源)133aを有する。モーター133aは、回転軸回りに回転する回転子であるローターと、内側に配置された回転子を回転させる力を発生する固定子であるステーターと、ローターの回転軸を支持する軸受であるベアリングと、を備える。モーター133aは、ローターおよびステーターのいずれか一方に設けられるコイルに電流を流すことで発生する磁界が、ローターおよびステーターのいずれか他方に設けられた磁石と反発あるいは引き合うことで回転する。
【0144】
モーター133aは、例えば、ステーターに巻かれたコイルに電流を流すことで発生する磁界が、ローターに設けられた磁石と反発あるいは引き合う力を利用して駆動する。モーター133aのコイルに流れる電流の方向を切り替えて磁力の向きを変えることによって、ローターの回転を制御し、動力が出力される。モーター133aは、ローターが一方向へ少なくとも2回転以上、連続して回転した動力が出力される構造をなす点で、上述したソレノイドアクチュエーターとは異なる。
以下、ローターの回転軸を、モーター133aの出力軸133Aと呼ぶ。
なお、駆動機138は、少なくともモーター133aを有していればよく、第1ベース部材133bおよびモーターシャフト133cは、駆動機138を構成する部材としてもよいし、減速機134を構成する部材としてもよい。
【0145】
(減速機)
減速機134は、駆動機138から入力される回転を減速して出色する減速機構を有している。減速機構は、モーター133aから入力される駆動力(第一駆動力)を減速して回転駆動力(第二駆動力)に変換する機構である。
本実施形態では、減速機構として遊星歯車減速機構を採用している。
【0146】
(遊星歯車減速機構)
遊星歯車減速機構は、上記駆動源である回転駆動機の回転軸に接続された駆動伝達部を中心として、その周囲に配置された複数の受動部自体がそれぞれの回転軸回りに回転しつつ、駆動伝達部の周方向へ各々移動する構造を持ち、回転駆動機から伝達される回転速度を、上記複数の受動部によって減速させることができる。
【0147】
遊星歯車減速機構の構造としては、例えば、回転駆動機の回転軸の回転が伝達されて回転するように設けられた太陽歯車(上記駆動伝達部)と、太陽歯車の回転径方向外側に設けられ、太陽歯車と噛み合って回転することにより太陽歯車の回転軸回りの周囲で回転軸の位置が移動するように設けられた少なくとも一つの遊星歯車と、太陽歯車の回転軸の延長上に回転軸が設けられ、遊星歯車が太陽歯車の周囲を移動する力が伝達されて回転する回転伝達部と、回転伝達部の回転に従って回転する軸部材と、を少なくとも備える。
遊星歯車減速機構は、上記各部を備えることで、回転軸の位置が固定された太陽歯車に入力された回転速度を、遊星歯車が太陽歯車の周囲で位置を移動する回転速度に変換して軸部材から出力する。
すなわち、太陽歯車が一回転するよりも遊星歯車が太陽歯車の周囲を一回転(一回り)する方が時間が掛かるように、互いに噛み合う太陽歯車と遊星歯車との歯数を設定することで、太陽歯車に入力された回転速度が減速されて出力される。太陽歯車と遊星歯車との歯数は、互いに異なるように設定する。
なお、遊星歯車の数は、単数でもよいし、複数でもよい。遊星歯車を複数用いる場合は、これら複数の遊星歯車自体が各々の回転軸回りに回転しながら、太陽歯車と噛み合って太陽歯車の周囲を同時に移動することによって、太陽歯車に入力された動力を減速して出力することができる。
【0148】
このように、複数の遊星歯車が太陽歯車の回転軸回りに移動することを利用して減速させる遊星歯車減速構成を用いることで、回転駆動機の回転軸と、遊星歯車減速機構の回転軸、具体的には、太陽歯車の回転軸とを同軸上に配置することができる。すなわち、回転駆動機の回転軸の延長上に、遊星歯車減速機構の回転軸が位置するように配置することによって、扉閉装置全体としての小型化が可能である。
【0149】
なお、減速機構としては、上述したような遊星歯車減速機構だけに限られず、サイクロ(商標登録)減速機構などのトロコイド系歯形を用いた内接式遊星歯車減速機、ハーモニックドライブ(商標登録)減速機構などを採用してもよい。これらの減速機構は、省スペースでも大きな減速比を得られるため、冷蔵室扉20A内に設置される駆動装置133の減速機構として好適である。これらトロコイド系歯形を用いた内接式遊星歯車減速機、ハーモニックドライブ(商標登録)減速機構の構成については後述する。
【0150】
まず、上述したような遊星歯車減速機構を含む本実施形態の減速機134の構成について述べる。
本実施形態の減速機134は、遊星歯車減速機構144と、遊星歯車減速機構144により減速された回転駆動力を上記扉閉伝達機構150へ伝達する減速後駆動力伝達部145と、を有する。
【0151】
遊星歯車減速機構144は、モーター133aから入力された回転数を減少させてトルクを増やす機能を有する。
【0152】
本実施形態の遊星歯車減速機構144は、モーター133aの出力軸133Aに接続されるとともに当該出力軸133Aの回転が伝達されて上記出力軸133Aとともに回転する太陽歯車(駆動伝達部)133f1と、太陽歯車133f1の周囲に配置されて太陽歯車133f1と噛み合って回転することにより、各回転軸が太陽歯車133f1の回転軸回りを移動するように設けられた複数の遊星歯車(受動部)133f2と、太陽歯車133f1と同軸に設けられ、複数の遊星歯車133f2が太陽歯車133f1の周囲を移動する力が伝達されて回転するキャリアドライブ(回転伝達部)133hと、キャリアドライブ133hの回転に従って回転するクランクシャフト(軸部材)133mと、を少なくとも有する。このような遊星歯車減速機構144は、複数の遊星歯車133f2が、モーター133aの出力軸133Aに接続された太陽歯車133f1の回転軸回りに移動することを利用して減速させる機構である。
【0153】
遊星歯車減速機構144は、モーターシャフト133cと、第1ベアリング133dと、複数のプラネットシャフト133gと、キャリアプレート133eと、第2ベース部材133iと、をさらに有する。
上記太陽歯車133f1および複数の遊星歯車133f2は、第2ベース部材133i内に収容される。なお、第2ベース部材133iは、遊星歯車減速機構144の一部品ではなく、減速後駆動力伝達部145の一部品としてもよい。
【0154】
(太陽歯車)
太陽歯車133f1は、モーター133aの出力軸133Aと同軸に配置され、モーターシャフト133c及び第1ベアリング133dを介してモーター133aの出力軸133Aの先端に、モーター133aと同軸に接続される。太陽歯車133f1には、モーター133aの出力軸133Aの回転が伝達される。太陽歯車133f1は、モーター133aの出力軸133Aとともに回転軸回りに回転する。太陽歯車133f1は、後述のモーターシャフト133cおよび第1ベアリング133dを介してモーター133aの出力軸133Aに接続されることから、当該太陽歯車133f1の回転軸回りに回転する方向は、モーター133aの出力軸133Aの回転方向と同じである。
【0155】
(遊星歯車)
複数の遊星歯車133f2は、太陽歯車133f1よりも当該太陽歯車133f1の回転径方向外側の位置において太陽歯車133f1と噛み合って回転するように設けられている。これら複数の遊星歯車133f2は、太陽歯車133f1の周方向に互いに等しい間隔をあけて配置されている。本実施形態では、例えば、4つの遊星歯車133f2が設けられているが、遊星歯車133f2の数はこれに限らない。複数の遊星歯車133f2どうしの回転軸は互いに平行であり、太陽歯車133f1の回転軸に平行である。
【0156】
これら複数の遊星歯車133f2は、太陽歯車133f1に噛み合った状態のまま当該太陽歯車133f1に伝達された駆動力によって、太陽歯車133f1の回転に伴って各々の回転軸回りに回転しつつ、太陽歯車133f1との噛み合い位置を変化させながら、各々の回転軸が太陽歯車133f1の周囲を同時に移動する。複数の遊星歯車133f2は、太陽歯車133f1の周りを周回する際、互いの配置間隔を変えることなく同じ方向へ移動する。すなわち、太陽歯車133f1に噛み合いながら当該太陽歯車133f1の周方向へ移動する複数の遊星歯車133f2どうしの位置関係は常に一定で変化しない。各遊星歯車133f2が各々の回転軸回りに回転する方向は、太陽歯車133f1の回転軸回り方向とは逆である。また、複数の遊星歯車133f2が太陽歯車133f1の周方向へ同時に移動する方向は、太陽歯車133f1の回転方向と同じである。
【0157】
このように、本実施形態の複数の遊星歯車133f2は、第2ベース部材133iの内周側に形成された不図示の内歯との間において、太陽歯車133f1に対する噛み合い位置を当該太陽歯車133f1の周方向へ変化させることにより、太陽歯車133f1の軸回りに所定の角度範囲で周回する。
【0158】
本実施形態では、複数の遊星歯車133f2が、これら複数の遊星歯車133f2と太陽歯車133f1を収容する第2ベース部材133iの内周側に形成された内歯に噛み合う構成を一例として挙げたが、太陽歯車133f1に噛み合う複数の遊星歯車133f2の姿勢を安定させる構成とすることができれば、上記構成に限られない。
すなわち、本実施形態の減速機構では、太陽歯車133f1に入力された回転速度を、遊星歯車133f2が太陽歯車133f1の周囲で位置を移動する回転速度に変換して出力することを利用して減速しており、第2ベース部材133iの内部に形成される内歯形状は各遊星歯車133f2の姿勢を安定させるために利用しているので、キャリアドライブ133hに接続される回転軸の位置を複数個所で回転自在に支持するなどして遊星歯車133f2の姿勢を安定させて回転できるようにすれば、第2ベース部材133iの内部に上記の内歯形状は設けなくてもよい。
【0159】
例えば、キャリアドライブ133hに相当する部材を用いて、上記実施形態と同様に、太陽歯車133f1の周囲を複数の遊星歯車133f2が移動する構成とすることで、太陽歯車133f1及び複数の遊星歯車133f2を収容する第2ベース部材133iの内部に、複数の遊星歯車133f2が同時に噛み合う内歯形状がなくても各遊星歯車133f2を安定して支えることができるので減速効果を得ることができる。
【0160】
(モーターシャフト)
モーターシャフト133cは、モーター133aの出力軸133Aに直接接続され、当該出力軸133Aとともに回転することによって、モーター133aの動力を太陽歯車133f1に伝達する。
【0161】
(第1ベアリング)
第1ベアリング133dは、モーター133aの出力軸133Aとともに回転するモーターシャフト133cを、上記出力軸133Aと同軸をなす位置において支持する。
【0162】
(プラネットシャフト)
複数のプラネットシャフト133gは、複数の遊星歯車133f2の各回転軸を構成し、各遊星歯車133f2と一体に取り付けられる。複数のプラネットシャフト133gは、複数の遊星歯車133f2とそれぞれ同軸に設けられ、各遊星歯車133f2とともにそれぞれの回転軸回りに回転する。各プラネットシャフト133gは、モーターシャフト133cの回転軸と同じ方向に延びている。プラネットシャフト133gは、本実施形態では4つ設けられており、遊星歯車133f2と同じ数が設けられる。
【0163】
複数のプラネットシャフト133gの各回転軸は、モーター133aの出力軸133Aと同軸をなす太陽歯車133f1の回転軸に平行し、太陽歯車133f1の径方向外側において太陽歯車133f1の周囲に配置されている。これら複数のプラネットシャフト133gは、一体とされた遊星歯車133f2とともに各々の回転軸回りに回転しながら、太陽歯車133f1に噛み合う遊星歯車133f2とともに太陽歯車133f1の周囲を同時に移動する。
これら複数のプラネットシャフト133gは、キャリアプレート133eとキャリアドライブ133hとによって支持される。
【0164】
(キャリアプレートおよびキャリアドライブ)
キャリアプレート133eとキャリアドライブ133hとは、円板形状を呈し、軸方向に所定の間隔をあけて配置されている。これらキャリアプレート133eとキャリアドライブ133hとの間には、太陽歯車133f1および複数の遊星歯車133f2が配置されている。すなわち、キャリアプレート133eおよびキャリアドライブ133hは、太陽歯車133f1と複数の遊星歯車133f2を介して軸方向で対向し、上記複数のプラネットシャフト133gを支持している。
【0165】
キャリアプレート133eおよびキャリアドライブ133hには、プラネットシャフト133gの両端部を支持するための支持孔がそれぞれ形成されている。支持孔は、キャリアプレート133e、キャリアドライブ133hの板厚方向を貫通する孔であってもよいし、板厚方向に貫通しない穴であってもよい。あるいはその他の支持構造であってもよく、これらキャリアプレート133eおよびキャリアドライブ133hに対して、複数のプラネットシャフト133gを支持できればよい。
【0166】
キャリアプレート133eおよびキャリアドライブ133hは、太陽歯車133f1と同軸に配置され、複数のプラネットシャフト133gを介して互いに連結されている。キャリアプレート133eおよびキャリアドライブ133hは、互いに一体となって、複数のプラネットシャフト133gおよび複数の遊星歯車133f2とともに、太陽歯車133f1の回転軸回りに回転可能である。これにより、キャリアプレート133eおよびキャリアドライブ133hは、太陽歯車133f1の動力によって回転する複数の遊星歯車133f2に設けられたプラネットシャフト133gを支持しながら、複数のプラネットシャフト133gおよび複数の遊星歯車133f2を太陽歯車133f1の周方向へ移動させることができる。
キャリアプレート133eおよびキャリアドライブ133hをモーター133aの出力軸133Aと同軸に配置することにより、各部材をより近づけて配置することが可能になるため、駆動装置133全体の小型化を図ることが可能となる。
【0167】
キャリアドライブ133hには、複数の遊星歯車133f2が太陽歯車133f1の軸回りに回転する力を伝達するクランクシャフト133mが出力軸として接続されている。クランクシャフト133mは、モーター133aの出力軸133Aと同軸に配置されている。
【0168】
なお、キャリアプレート(支持部)133eおよびキャリアドライブ(支持部)133hの形状は上記したような円形板状に限らない。例えば、中心から径方向外側へ向かって棒状に延びる複数の突出部を有した形状であってもよい。突出部の数は、遊星歯車133f2の数に等しい。また、各突出部の先端側に上記支持孔を設けることによって、キャリアプレート133eおよびキャリアドライブ133hにおける各突出部の先端側において複数の遊星歯車133f2を支持することができる。また、キャリアプレート133eおよびキャリアドライブ133hの形状は、平板状に限らない。
【0169】
また、本実施形態では、キャリアプレート133eおよびキャリアドライブ133hが一体となって、複数の遊星歯車133f2および複数のプラネットシャフト133gとともに太陽歯車133f1の回転軸回りに回転する構成となっているが、太陽歯車133f1に対して複数の遊星歯車133f2が噛み合った状態をキャリアドライブ133hによって安定的に維持することができれば、キャリアプレート133eは必ずしも必要ではない。例えば、複数のプラネットシャフト133gの各々の一端側がキャリアドライブ133hに支持された構成とする。これにより、モーター133aの回転軸回りに回転する太陽歯車133f1と噛み合って複数の遊星歯車133f2が太陽歯車133f1の周囲を移動することによってキャリアドライブ133hが回転し、太陽歯車133f1に入力された動力が減速されてクランクシャフト133mから出力される。
【0170】
(減速後駆動力伝達部)
減速後駆動力伝達部145は、遊星歯車減速機構144において減速した駆動力を扉閉伝達機構150へ伝達する機構である。減速後駆動力伝達部145は、減速機側シャフト133Bと、複数の伝達部材と、連結部材と、を有する。
【0171】
減速機側シャフト133Bは、駆動機138におけるモーター133aの出力軸133Aおよび遊星歯車減速機構144のモーターシャフト133cと同軸上に配置される。減速機側シャフト133Bは、軸方向に並ぶクランクシャフト133mと、クランクシャフト133rと、ドライブシャフト133tと、を有する。
【0172】
複数の伝達部材として、第2ベアリング133j、第3ベース部材133k、第1カップリングギア133n1、第1内歯歯車133L1、第1スペーサー133oと、第3ベアリング133p1、第2カップリングギア133n2、第4ベアリング133p2、第5ベアリング133p3、第3カップリングギア133n3、第4ベース部材133q、第2内歯歯車133L2、第6ベアリング133s、第4カップリングギア133n4、第7ベアリング133v1、第8ベアリング133v2、スペーサー133w、第9ベアリング133v3、ケース133x、およびプレート133yを有する。
【0173】
これらは、減速機側シャフト133Bに外装され、当該減速機側シャフト133Bの回転軸方向に並んで配置されている。このように、複数の伝達部材を同軸上に配置することによって、減速後駆動力伝達部145を細長い形状とすることができ、外形が大きくなるのを抑えることができる。
【0174】
また、上述した複数のベース部材133i、133j、133qどうしの外周面における少なくとも一部が、回転径方向において互いに一致していることが好ましい。本実施形態では、複数のベース部材133i、133j、133qは、軸方向から見た形状が略一致しており、
図7に示すように互いに連続した略円柱形状を構成している。
【0175】
連結部材は、上述した複数の伝達部材のうち複数のベース部材133i、133j、133qどうしを連結する。本実施形態は、連結部材として複数のタイロッド133uを有している。本実施形態では4本のタイロッド133uを備えているが、これに限られず、ベース部材133i、133j、133qどうしを正しい姿勢で連結できれば、タイロッド133uの数は少なくてもよい。複数のタイロッド133uは、互いに平行し、いずれも同じ方向に沿って延びている。複数のタイロッド133uは、減速機側シャフト133Bと同じ方向に延びている。複数のタイロッド133uは、減速機側シャフト133Bと同軸ではなく、クランクシャフト133rの周囲に配置されている。
【0176】
これら複数のタイロッド133uは、各ベース部材133i、133j、133qの厚さ方向に貫通するとともにベース部材133i、133j、133qどうしの間で互いに連通する複数の貫通孔内に挿入される。そして、複数のタイロッド133uにおける各々の先端が、例えば、第1ベース部材133bに形成されたねじ穴内にねじ込まれることによって、ベース部材133b、133i、133j、133qどうしを互いに連結している。これら複数のタイロッド133uによって互いに連結されたベース部材133b、133i、133j、133qが、減速機側シャフト133Bの回転軸回りに回転することはなく、取付部材135に対して固定されている。
【0177】
このような減速後駆動力伝達部145は、上記複数の伝達部材において回転を繋ぎながら、遊星歯車減速機構144で減速された駆動力を軸方向に伝達している。減速機側シャフト133Bの下端側には、
図10に示す後述の取付部136を介して、扉閉伝達機構150の駆動歯車134Abが取り付けられる。遊星歯車減速機構144によって減速されて増大されたトルクは、減速後駆動力伝達部145を介して、扉閉伝達機構150の駆動歯車134Abに伝達される。
【0178】
本実施形態の減速機134では、遊星歯車減速機構144と減速後駆動力伝達部145とが同軸上で互いに隣り合う位置に配置された構成をなす。さらに減速機134は、駆動機138のモーター133aの出力軸(第一回転軸)133Aとも同軸に配置され、駆動機138のモーター133aの出力軸133Aが延びる方向において駆動機138と隣り合う位置に配置されることから、駆動装置133全体の更なる小型化を図ることができる。また、上記構成とすることにより、本実施形態では、駆動装置133の全体が軸方向に細長い形状となっている。すなわち、駆動機138のハウジング138aと、減速機134のハウジング134aとは、互いに略同じ円柱形状をなし、互いの外周面どうしが長さ方向で連なった細長い外形とされている。このような形状とすることによって、扉内での占有スペースを少なくすることができるので、広い断熱空間を確保することができる。
なお、減速機134のハウジング134aは、上記複数のベース部材133i、133j、133qを含んで構成される。
【0179】
このように、本実施形態では、減速機134において遊星歯車減速機構144を利用することで、駆動機138のモーター133aの出力軸(第一回転軸)133Aと、減速機134の回転軸(第二回転軸)、すなわち遊星歯車減速機構144および減速後駆動力伝達部145の各回転軸と、を同軸上に配置した構成とすることができ、入力から出力までの減速を同軸で行うことができる。
【0180】
これにより、モーター133aの回転軸と、減速機134の回転軸と、を互いに接近させて配置させることができるとともに、減速後駆動力伝達部145の各部品、すなわち減速の過程で回転伝達に関係する各部品を伝達方向へ離間することなく、互いに近接して配置することができる。その結果、さらに小型な扉閉装置とすることができる。
【0181】
また、上述したように、駆動機138から、減速機134、および筐体10側の固定歯車134Cを含む扉閉伝達機構150までの各部を、駆動機138側の回転軸と同一または近接して配置する構成とすることで、各扉閉装置130A,130Bをそれぞれ対応する冷蔵室扉20Aに配置するにあたって、冷蔵室扉20Abの上下左右の4つの端辺部のうちいずれか一つの端辺部にまとめて設けることができる。
【0182】
また、上述した構成とすることで、駆動装置133の全体としての形状を、軸方向に長さを有する細長い形状とすることができるので、駆動装置133が扉内で占有する領域を最小にすることが可能である。その結果、扉内に断熱材を配置する空間を十分に確保することが可能となり、冷蔵室扉20A内に配置する断熱材10kの量を増やすことが可能である。
【0183】
ここで、互いに同軸をなすモーター133aの出力軸133A及び減速機側シャフト133Bが、右側冷蔵室扉20Abの回転支軸Obと同軸となるように駆動装置133を設けることもできるが、本実施形態では、回転支軸Obの同軸上にはなく、当該回転支軸Obに対して垂直な方向へずれている。
【0184】
このように本実施形態では、モーター133aや減速機134をこれらの回転軸が、右側冷蔵室扉20Abの回転支軸Obとは異なる位置となるように、扉内に駆動装置133を設けることができるので、上記モーター133aや減速機134の回転軸を、右側冷蔵室扉20Abの回転支軸Obと同じ位置に設ける場合に比べて、扉内での部品配置の自由度を高めることができる。その結果、ヒンジ6Bの回転支軸Obの軸まわりにおける冷蔵室扉20Abの形状を大きく変更することないため、扉内に駆動装置133を設けやすくなる。
【0185】
本実施形態の駆動装置133は、その長さ方向を冷蔵室扉20Abの回転支軸Obに平行にした状態で縦置きに設置される。すなわち、モーター133aの出力軸133Aおよび遊星歯車減速機構144の回転軸が回転支軸Obに平行した姿勢で設置される。
【0186】
駆動装置133は、上述した取付部材135を介して右側冷蔵室扉20Abを構成する外側壁部20jの右側側壁20jbに取り付けられている。駆動装置133は、その回転軸O133を取付部材135のフランジ部135bに形成された貫通孔135cに挿通させるとともに、上述したケース133xとプレート133yとの間に取付部材135のフランジ部135bを挟み込んだ状態で取付部材135に固定されている。
【0187】
減速機側シャフト133Bは、モーター133aの回転方向に沿ってモーター133aの出力軸133Aの回転軸回りに回転する。駆動装置133は、モーター133aを正転(軸方向上方側から見て反時計回りに回転:
図12)させることで、モーター133aの出力軸133Aに接続される減速機側シャフト133Bが同じ方向に回転し、右側冷蔵室扉20Abを閉じる方向に回動させることが可能である。
また、本実施形態の駆動装置133は、右側冷蔵室扉20Abを開く方向へ回動させる動作には寄与しない。
なお、上記に限られず、駆動装置133は、右側冷蔵室扉20Abを開く方向へ回動させるように駆動してもよい。
【0188】
(扉閉伝達機構)
図10は、冷蔵室扉20Aを庫内側の下方から見た斜視図である。
図11は、扉閉伝達機構150の構成の一部を示す図である。
【0189】
扉閉伝達機構150は、モーター133aによって減速された回転駆動力が伝達されるように設けられる。扉閉伝達機構150は、駆動装置133から伝達された駆動力(第一駆動力)を冷蔵室扉20Aへとさらに伝達する。
図10に示すように、扉閉伝達機構150は、冷蔵室扉20Aの外部であって下側壁部20kの下面に取り付けられている。
【0190】
扉閉伝達機構150は、冷蔵室扉20Aの回転支軸Oに固定された固定歯車(固定受動部)134Cと、モーター133aからの駆動力が減速されて伝達される駆動歯車(回転駆動部)134Abと、ワンウェイクラッチ部140B(
図11)と、を有する。駆動歯車134Abは、筐体10側に固定された固定歯車134Cに噛み合う。
【0191】
(固定歯車)
固定歯車134Cは、駆動歯車134Abよりも歯先円直径が大きく形成された外歯歯車からなる。固定歯車134Cは、筐体10に取り付けられたヒンジ6Bを介して筐体10側に固定されている。固定歯車134Cは、ヒンジ6Bの貫通孔(不図示)に挿通される取付部137を介して右側冷蔵室扉20Abに係合している。
図8に示すように、固定歯車134Cの中心軸(第二軸)O2は、右側冷蔵室扉20Abの回転支軸Obと一致するとともに、駆動装置133におけるモーター133aの出力軸133Aと平行である。
【0192】
固定歯車134Cは、冷蔵室扉20Aに設けられた駆動装置133からの回転駆動力を筐体10側で受ける円形歯車であって、当該固定歯車134Cの中心軸O2と一致する上記回転支軸Obから同じ距離で受けられる受動面134Ca(駆動歯車134Abに噛み合う複数の歯が形成されている面)を有する。
【0193】
(駆動歯車)
駆動歯車134Abは、減速機側シャフト133Bの下端側に取り付けられており、駆動装置133からの回転駆動が減速されて伝達される。駆動歯車134Abは、下側壁部20kよりも軸方向外側の外部に位置し、取付部136を介して冷蔵室扉20Aの下側壁部20kに対してその回転軸回りに回転可能に取り付けられている。
【0194】
駆動歯車134Abは、駆動装置133からの駆動力を筐体10側に伝達する歯車である。また、駆動歯車134Abは、減速機側シャフト133Bの回転軸から同じ距離で設けられる伝達面134d(固定歯車134Cに噛み合う複数の歯が形成されている面)を有し、減速機側シャフト133Bと同軸をなして減速機側シャフト133Bと同じ方向に回転される。ここで、駆動装置133の回転軸O133は、モーター133aの出力軸133Aの回転軸と、減速機側シャフト133Bの回転軸とを含む。
【0195】
冷蔵室扉20A側に取り付けられた駆動歯車134Abと、筐体10側に固定された固定歯車134Cとは、互いの中心線を平行にし、水平方向で隣り合う位置で互いに噛み合っている。すなわち、駆動歯車134Abの回転軸と、固定歯車134Cの中心軸とは、異なる位置に配置され、互いに同じ方向へ延びている。
【0196】
駆動歯車134Abは、後述のワンウェイクラッチ部140Aによって、モーター133aの回転力が伝達されているとき、減速機側シャフト133Bとともに回転軸回りに回転しつつ、右側冷蔵室扉20Abに固定された固定歯車134Cに対する噛み合い箇所を変化させるように、駆動歯車134Ab及び減速機側シャフト133Bが固定歯車134Cの周囲を回転移動する。すなわち、駆動歯車134Ab及び減速機側シャフト133Bの位置が固定歯車134Cの周方向へ移動する。
【0197】
このように、駆動歯車(回転駆動部)134Abが減速機側シャフト133Bとともに当該駆動歯車134Abの回転軸回りに回転しつつ、固定歯車(固定受動部)134Cの一方側(矢印E側)へ固定歯車134Cとの噛み合い位置を変化させながら、固定歯車134Cの周囲を移動することによって、右側冷蔵室扉20Abを閉じる方向へ回動させることが可能となる。
【0198】
これにより、扉(冷蔵室扉20A)側から筐体10側に駆動装置133の回転力を伝えることができ、扉(冷蔵室扉20A)側に設けた駆動装置133によって扉(冷蔵室扉20A)を回転させることが可能となる。
【0199】
また、駆動装置133をその回転軸O133、すなわち駆動機138の回転軸と減速機134の回転軸とが冷蔵室扉20Aa,20Abの回転支軸Oa,Obと同じ方向となるように設けた場合に部品の簡素化が図られる。
【0200】
一方、後述のワンウェイクラッチ部140Aによって、固定歯車134Cに対して駆動歯車134Abの回転がフリーになった状態で固定歯車134Cの他方側(矢印F側)へ回動することによって、右側冷蔵室扉20Abを開くことが可能となる。
【0201】
(ワンウェイクラッチ部)
ワンウェイクラッチ部140Bは、
図8および
図12に示すように、上述した減速機側シャフト133Bの回転力を一方向に伝達するクラッチ機構である。
【0202】
本実施形態のワンウェイクラッチ部140Bは、減速機側シャフト133Bが正転(軸方向上方側から見たときに反時計回りに回転)したときに減速機側シャフト133Bの回転力を駆動歯車134Abに伝達するとともに、減速機側シャフト133Bが逆転(軸方向上方側から見たときに時計回りに回転)したときには減速機側シャフト133Bの回転力を駆動歯車134Abには伝達を遮断する機能を有する。
【0203】
ワンウェイクラッチ部140Bは、駆動歯車134Abの基部134cと、基部134cの内側に配置されたクラッチ部142と、を有している。
クラッチ部142としては、既存の構成を適宜採用することができる。
駆動歯車134Abの基部134cの内側には、クラッチ部142が係合可能な伝達面134d(
図8)が形成されている。
【0204】
駆動歯車134Abは、ワンウェイクラッチ部140Bを介して上述した減速機側シャフト133Bに連結されており、ワンウェイクラッチ部140Bによって減速機側シャフト133Bの一方の回転方向に回転力を伝達する。
【0205】
このようなワンウェイクラッチ部140Bにおいては、右側冷蔵室扉20Abを閉状態にするために減速機側シャフト133Bが正転(軸方向上方側から見たときに反時計回りに回転)すると、駆動歯車134Abの基部134cとクラッチ部142とが係合して、上述のワンウェイクラッチ部140Aにおいて制御された上記トルクが駆動歯車134Abに伝達され、回転制御された減速機側シャフト133Bの回転に伴って、上記駆動歯車134Aaと同じ方向へ駆動歯車134Abも正転する。
固定歯車134Cに噛み合う駆動歯車134Abが正転しながら固定歯車134Cの周方向へ移動することによって、固定歯車134Cが取り付けられた右側冷蔵室扉20Abが回転支軸Obを中心にして閉じる方向へ回動する。
【0206】
一方、扉開放装置41の動作によって右側冷蔵室扉20Abが開放されるときには、右側冷蔵室扉20Abが回転支軸Obを中心に開く方向へ回動される。右側冷蔵室扉20Abの開方向への回動に伴って、ワンウェイクラッチ部140Bによって駆動歯車134Abの回転が自由になる。つまり、駆動歯車134Abの基部134cとクラッチ部141との噛み合いが外れて駆動歯車134Abが減速機側シャフト133Bに対して空転する。このようにして、右側冷蔵室扉20Abを開放させることが可能である。
【0207】
(扉引込み用機構)
次に、扉引込み用機構132の構成について詳述する。
図12は、扉引込み用機構132を構成する扉引込み用部材132Aを示す斜視図である。
扉引込み用機構132は、上述した扉回動機構131(
図8)とともに右扉閉装置130Bを構成する。扉引込み用機構132は、右側冷蔵室扉20Abを最終的に閉める段階で機能する。つまり、扉引込み用機構132は、扉回動機構131に代わって右側冷蔵室扉20Abを閉じる機構である。
【0208】
扉引込み用機構132は、扉引込み用部材132Aと、当該扉引込み用部材132Aとヒンジ6Bとを繋ぐばね(不図示)と、によって構成される。
【0209】
扉引込み用部材132Aは、
図8および
図10に示すように、固定歯車134Cとともに冷蔵室扉20Aの下側の外部に取り付けられている。扉引込み用部材132Aは、一方向に長さを有し、冷蔵室扉20Aの幅方向に長さ方向を沿わせた状態で取り付けられる。
【0210】
図12に示すように、扉引込み用部材132Aの長さ方向の一端側には、湾曲部132aが形成され、他端側には上方へと突出する筒状凸部132bが形成されている。
筒状凸部132bは、上面132cから垂直に突出し、所定の高さで形成されている。筒状凸部132bは、上端側が閉塞され、下端側が開放されている。すなわち、筒状凸部132bの内部には、下方に開口する穴部132dが形成されている。穴部132dは、ヒンジ6Bの貫通孔6bに連通可能である。
【0211】
扉引込み用部材132Aは、
図8に示すように、上記筒状凸部132bが下側壁部20kに形成された穴部20kb内に挿入されることで、冷蔵室扉20Aに対して位置決めされる。筒状凸部132bの内側(穴部132d)には、上記固定歯車134Cを下側のヒンジ6Bを介して右側冷蔵室扉20Abに取り付ける(固定する)ための取付部137が挿入される。取付部137は、長さ方向の一部がヒンジ6Bの貫通孔6bに係止する形状をなすため、固定歯車134Cをヒンジ6Bを介して右側冷蔵室扉20Abに固定できる。
【0212】
図12に示すように、扉引込み用部材132Aの長さ方向の中央には、板厚方向に貫通する貫通孔132eが形成されている。貫通孔132eは、下側壁部20kに形成された貫通孔20ke(
図8)に連通する。
【0213】
減速機側シャフト133Bの下端側には、駆動歯車134Abが、右側冷蔵室扉20Abの下方側からその基部134cを扉引込み用部材132Aの貫通孔132e内に部分的に挿入させた状態で取り付けられている。つまり、扉引込み用部材132Aの貫通孔132e内にはワンウェイクラッチ部140Bが配置されている。
【0214】
扉引込み用部材132Aの湾曲部132aはU字形状を呈し、その先端部132fがヒンジ6Bの突出部6fに係合可能である。扉引込み用部材132Aの先端部132fは、筐体10に取り付けられたヒンジ6Bの突出部6fに対して水平方向から係合する。扉引込み用部材132Aは、右側冷蔵室扉20Abの開放角度θが所定の角度(例えば、5°~45°程度)のとき、湾曲部132aの先端部132fがヒンジ6Bの突出部6fに係合可能である。
【0215】
扉引込み用機構132は、駆動装置133による右側冷蔵室扉20Abの回動作用に替わって作用する。このような扉引込み用機構132においては、制御部100によって制御される扉回動機構131によって右側冷蔵室扉20Abが閉じる方向へ回動されて、右側冷蔵室扉20Abの開放角度θが上記所定の角度(扉引込み動作範囲)になると、まず、扉引込み用部材132Aの湾曲部132aの先端部132fがヒンジ6Bの突出部6fに当接する。
【0216】
この際、先端部132fは、突出部6fのうち、冷蔵室扉20Abに対向する側を向く第1面6f1に当接する。その後、さらに、制御部100によって駆動制御された扉回動機構131によって右側冷蔵室扉20Abの回動が進むと、扉引込み用部材132Aの先端部132fがヒンジ6Bの突出部6fの頂部6gを乗り越えて、突出部6fのうちの筐体10側を向く第2面6f2へと移動して当該第2面6f2に当接する。
【0217】
扉引込み用部材132Aの先端部132fがヒンジ6側の第2面6f2側へ移動する際に、右側冷蔵室扉20Abが筐体10側へと自動的に引き込まれる。扉引込み用部材132Aの先端部132fと、ヒンジ6Bの突出部6fとの係合状態は、不図示の上記ばねの引張力(弾性復元力)によって維持される。
【0218】
右側冷蔵室扉20Abを閉じる際、制御部100は、扉引込み用部材132Aの先端部132fがヒンジ6Bの突出部6fの頂部6gを乗り越えるまで扉回動機構131を駆動制御する。また、制御部100は、扉引込み用部材132Aの先端部132fがヒンジ6Bの突出部6fの頂部6gを乗り越えた後、所定時間が経過するまで扉回動機構131を駆動制御してもよい。
【0219】
例えば、右側冷蔵室扉20Abが上記扉引込み動作範囲に入ったとき、すなわち右側冷蔵室扉20Abの開放角度θが所定の角度(例えば、5°~45°程度)になった直後に扉回動機構131の駆動制御を停止してしまうと、右側冷蔵室扉20Abが閉めきれない事態が生じるおそれがある。扉閉動作が不十分になる原因としては、例えば、扉引込み用機構132のばね力の低下やチルド室が開放されている(半ドア状態)場合が考えられる。
【0220】
このため、制御部100は、冷蔵室扉20Aに対する扉閉動作を実行したにもかかわらず完全に閉めきることができなかった場合に所定の対処を行う。例えば、扉閉装置130のモーター133aの回転数を上げたり、減速機134における各歯車のギア比によるトルク増大を図ることによって、扉引込み用部材132Aの先端部132fがヒンジ6Bの突出部6fの頂部6gを乗り越えた後、所定時間が経過するまで扉回動機構131を駆動制御してもよい。
【0221】
具体的には、扉回動機構131によって回動可能な冷蔵室扉20Abの開放角度範囲(45°以上、145°以下)の下限側と、扉引込み用機構132によって回動可能な冷蔵室扉20Abの回動角度(5°以上、45°以下)の上限側とを部分的に重複させてもよい。
例えば、扉回動機構131による冷蔵室扉20Abの回動範囲の下限角度を、40°まで広げてもよい。あるいは、扉引込み用機構132による冷蔵室扉20Abの引き込み範囲の上限角度を50°まで広げてもよい。
【0222】
扉回動機構131による回動角度範囲と、扉引込み用機構132による回動角度範囲との重複領域については、所望とする冷蔵室扉20Abの回動速度に応じて適宜変更が可能である。つまり、扉回動機構131から扉引込み用機構132へ切り変わるタイミングが遅くなると、扉回動機構131の作用によって扉閉動作の勢いが増してしまうおそれがあることから、扉回動機構131から扉引込み用機構132へ切り変わるタイミングを適宜調整してもよい。
【0223】
扉回動機構131から扉引込み用機構132へ切り変わるタイミングとしては、例えば、扉回動機構131による扉閉の駆動を、冷蔵室扉20Abの開放角度が0°、すなわち冷蔵室扉20Abを閉めきる前に停止させて、扉引込み用機構132へと切り変わるようにしてもよい。
これにより、扉回動機構131と扉引込み用機構132との相乗効果によって、冷蔵室扉20Abの回動速度が過大になるのを防ぐことが可能となり、静かに閉めきることができる。
【0224】
また、扉引込み用機構132における扉引込み用部材132Aの先端部132fがヒンジ6Bの突出部6fの頂部6gを乗り越える際に、扉回動機構131におけるモーター133aの回転数を高めてギア比によるトルク増大を図ってもよい。これにより、冷蔵室扉20Abを閉じるために必要な扉閉力を確保することができる。
【0225】
また、両開き扉、いわゆるフレンチ扉を備えた冷蔵庫1においては、左側冷蔵室扉20Aaおよび右側冷蔵室扉20Abのいずれか一方に図示略の回転縦仕切部が設けられている。回転縦仕切部は、左右扉の隙間から冷気が漏れ出るのを防ぐためのもので、左側冷蔵室扉20Aaおよび右側冷蔵室扉20Abが閉状態のときに、これら左右扉の間に位置する。回転縦仕切部は、上下方向に沿って延びる回転軸と、冷蔵室扉20Aの側壁に対向するとともに回転軸の軸回りに回転可能な縦仕切板と、縦仕切板を回転軸の軸回りに回転させるばね部材と、を有する。
【0226】
回転仕切板は、ばね部材の弾性力によって、扉が開放された状態と扉を閉じた状態とで上記回転軸の軸回りに回転し、倒れたり起きたりする。つまり、扉が閉じられると、ばね力に抗して回転仕切板は起きた状態(板面が前後に向いた状態)となり、左右扉の間の隙間を庫内側から覆うようにして閉じる。一方、扉が開かれると、回転仕切板は、ばね部材の復元力によって側壁側に引っ張られて倒れた状態(板面が側壁に対向した状態)となり、使用者による扉を開閉する際の妨げになるのを抑制できる構成となっている。
【0227】
このため、扉が閉じられる際に、回転仕切板が倒れた状態にするためにばね力に抗する扉閉力が必要となる。そのため、扉回動機構131におけるモーター133aのトルク、回転数、減速比を、上記ばね力を考慮した値にそれぞれ設定することで、扉を閉じるために必要な扉閉力を確保するようにしてもよい。本実施形態では、扉閉力は、扉引込み用機構132におけるばね部材の復元力と、回転縦仕切部におけるばね部材の復元力の合計よりも大きく設定する。
【0228】
なお、回転縦仕切部が設けられている一方の扉は、回転縦仕切部が設けられていない他方の扉よりも扉閉力が大きく設定される。
【0229】
また、扉引込み用機構132のばね部材(不図示)および回転縦仕切部のばね部材のうちのいずれか一方の復元力が最大となる冷蔵室扉20Abの開放角度よりも、冷蔵室扉20Abの開放角度が小さくなるまでは、扉回動機構131による扉閉の駆動を継続することで、扉閉の回動動作がスムーズに行われる。
【0230】
また、例えば、扉回動機構131による回動範囲の下限領域において、モーター133aの回転速度を低下させてもよい。これにより、冷蔵室扉20Abが勢いよく閉まるのを防ぐことが可能である。
【0231】
また、扉回動機構131による冷蔵室扉20Abの回動速度は、閉じ終わりのときに低下させるのではなくその他の開放角度範囲において低下させてもよいし、全ての開放角度において一定の速度であってもよい。
【0232】
このように、本実施形態では、右側冷蔵室扉20Abが所定角度になるまでは扉回動機構131によって閉め、その後、扉引込み用機構132に切り替えて閉じる構成となっている。これにより、扉引込み用機構132における扉引込み用部材132Aの先端部132fがヒンジ6B側の突出部6fの頂部6gをスムーズに乗り越えることができ、その後、モーター133aの回転力に代わってばねの引張力によって右側冷蔵室扉20Abを筐体10側に引き込むことができる。このような扉引込み用機構132の作用によって、右側冷蔵室扉20Abを閉めきることが可能である。
【0233】
これにより、右側冷蔵室扉20Abの閉め忘れなどを抑制することができるので、半ドア状態が続いて冷却効率が低下したり庫内に結露が生じたりしてしまうのを防ぐことができる。
【0234】
また、動力を不要とした扉引込み用機構132を用いることで、扉回動機構131の駆動制御が容易になる。例えば、右側冷蔵室扉20Abを扉回動機構131の駆動で閉じようとした場合、冷蔵室扉20Abの回動速度を閉じ初めと終わりとで適宜調整することによって、冷蔵室扉20Abの迅速な閉回動と、指はさみ等を抑制することが可能である。つまり、閉じ終わりの段階では右側冷蔵室扉20Abがゆっくり回動するようにモーター133aを駆動制御することによって、使用者の指はさみ等を抑制することができる。
【0235】
このようにして、右扉閉装置130Bが構成されている。
なお、上述したように、左側冷蔵室扉20Aa側に設けられる左扉閉装置130Aについて、上述した右扉閉装置130Bと略同様の構成をなす。
【0236】
本実施形態の扉閉装置130(左扉閉装置130A、右扉閉装置130B)は、冷蔵室扉20A(左側冷蔵室扉20Aa、右側冷蔵室扉20Ab)内にそれぞれ内蔵されている。
冷蔵室扉20A内には、扉閉装置130の他に、扉の断熱性を確保するための断熱材10kが設けられるが、この断熱材10kを扉閉装置130よりも筐体10(内側壁部20i)側にも配置してもよい。すなわち、冷蔵室扉20A内において、断熱材10kを扉閉装置130よりも貯蔵室11に近い側に配置することによって、貯蔵室11に対する断熱性を確保することができる。
【0237】
特に、発泡断熱材や真空断熱材を含む断熱材10kの場合、発泡断熱材よりも断熱性に優れた真空断熱材を、冷蔵室扉20Aの内側壁部20iと扉閉装置130との間に配置することによって庫内側の断熱性を確保できる。
【0238】
また、冷蔵室扉20Aの内側に断熱材10kを設けることで、扉閉装置130に対する断熱性を確保することができ、筐体10側の冷気によって扉閉装置130の駆動装置133が冷えすぎるのを防ぐことができる。
【0239】
また、断熱材10kによって、冷蔵室扉20A内の温度と外気温との差を小さくすることができるので、扉閉装置130が配置された冷蔵室扉20A内に結露が生じるのを抑制することが可能である。
【0240】
また、冷蔵室扉20Aの内側に、扉閉装置130と断熱材10kとを設ける本実施形態の構成において、十分な断熱性を確保するために必要な量の断熱材10kを収容する必要がある場合に、扉全体、あるいは部分的に扉の厚さを増やした扉形状としてもよい。
また、例えば、扉閉装置130が配置されている部分の冷蔵室扉20Aの厚さを増やした扉形状とすることによって、本実施形態特有の外観性を確保してもよい。
【0241】
また、本実施形態のように、発泡断熱材とともにこれよりも断熱性の高い真空断熱材を利用することで、扉閉装置130近傍の断熱性を確保しつつ、扉の厚さが増加するのを防ぐことも可能である。
【0242】
本実施形態の冷蔵庫1では、筐体10側に設けた扉開放装置41とは別に、扉閉装置130(左扉閉装置130A、右扉閉装置130B)を備えている。扉閉装置130は、冷蔵室扉20A(左側冷蔵室扉20Aa、右側冷蔵室扉20Ab)側に設けられており、冷蔵室扉20Aの開閉を自動で行うことが可能である。
このように、冷蔵室扉20Aを開放させる機構(扉開放装置41)と、冷蔵室扉20Aを閉じる機構(扉閉装置130)とを、筐体10あるいは冷蔵室扉20Aに別々に設け、冷蔵室扉20Aの開閉動作にそれぞれに適した機構を用いることによって、従来よりも操作性を向上させることができ、使用者にとって使い勝手のよい冷蔵庫1が得られる。
【0243】
本実施形態では、使用者が冷蔵庫1の近くにいない場合であっても、所定の扉閉条件を満たした場合に扉閉装置130を駆動することによって、各冷蔵室扉20Aを閉じることができる。ここで、所定の扉閉条件を満たす場合とは、上述したように、音声指示取得部52gを通じて取得した使用者からの音声指示(扉閉指示)および開放制限時間のうちの少なくとも一つを満たした場合である。
【0244】
このように、自動的に冷蔵室扉20Aを閉じる機能によって、冷蔵室扉20Aの閉め忘れを抑制できるとともに、誤動作や誤操作などによって冷蔵室扉20Aが開放されてしまった場合であっても、開放状態が長時間続いてしまうのを防ぐことができる。
【0245】
冷蔵室扉20A側に設けられた駆動装置133の駆動力を筐体10側に伝達する位置は、冷蔵室扉20Aの上下方向における中央よりも上下いずれかに離れた側(筐体10側:冷蔵室扉20Aの回転軸に沿う方向において冷蔵室扉20Aから離れる側、上端側あるいは下端側)で行うこととなる。
【0246】
本実施形態の扉閉装置130(左扉閉装置130A、右扉閉装置130B)は、冷蔵室扉20A(左側冷蔵室扉20Aa、右側冷蔵室扉20Ab)の下部に配置され、各冷蔵室扉20Aa、20Abの下側に取り付けられたヒンジ6A,6B側にそれぞれ設けられている。
【0247】
なお、左扉閉装置130A、右扉閉装置130Bを、左側冷蔵室扉20Aa、右側冷蔵室扉20Abの上側にそれぞれ取り付けられたヒンジ6A,6B側に設けてもよいが、上側に取り付けられたヒンジ6A,6B側に扉閉装置130を設ける場合は、扉開放操作部42の配線とは別に配線を引き廻す必要がある。このため、装置構造が複雑になって手間がかかる他、各冷蔵室扉20Aa、20Abの重量に起因する不具合などが生じる。このような課題を抑制するために、本実施形態の左扉閉装置130Aおよび右扉閉装置130Bは、冷蔵室扉20Aa、20Abの下側に取り付けられたヒンジ6A,6B側に設けてもよい。
【0248】
具体的な不具合としては、例えば、冷蔵室扉20Aの重量によって筐体10に対して冷蔵室扉20Aが下がり、歯車同士の噛み合わせ位置(設計上の位置)がずれてしまうことが考えられる。このような取付位置の誤差や経年劣化などがあった場合、冷蔵室扉20A(駆動装置133)側の駆動力を筐体10側へ伝達できなくなるおそれがある。
【0249】
そのため、冷蔵室扉20Aの下位のヒンジ6A,6B側に扉閉装置130をそれぞれ設けておくことで、ヒンジ6A,6Bを介して筐体10側に固定された固定歯車134Cにおいて駆動装置133の駆動力を受けることができ、歯車どうしの噛み合わせ状態を長期的に維持することが可能となり、冷蔵室扉20A側の駆動力を筐体側へ良好に伝達することが可能である。
【0250】
また、冷蔵室扉20Aa、20Abの下位に設けられたヒンジ6A,6B側に扉閉装置130A,130Bを寄せて設けることによって、各冷蔵室扉20Aa、20Ab内の断熱空間を確保することが可能である。
【0251】
また、冷蔵室扉20Aの下部に扉閉装置130を設けておくことで、扉開放操作部42の配線と同じ経路で配線処理することが可能であるため、組み立て作業が容易である。
【0252】
また、従来は、冷蔵庫の多機能化に伴って様々な装置を筐体10の天井部に配置していたが、本実施形態では、扉閉装置130を冷蔵室扉20Aに設けることによって、筐体10の天井部に配置する装置等の増加を抑制することができる。これにより、天井部における装置配置の空間制約の問題を解消することができるとともに、筐体10の天井部における美観の低下を防ぐことができる。
【0253】
また、本実施形態では、音声による扉開閉指示が可能であるため、食材等を手に持っている場合など、手動での扉開閉動作や、手を含む身体によって扉開放操作部42を操作できない場合にも、冷蔵室扉20Aを使用者の所望のタイミングで開閉させることが可能である。
【0254】
また、音声指示によって冷蔵室扉20Aを開放した場合にも、時間経過を含む上述した所定の扉閉条件を満たした場合にモーター133aを駆動することで、開放された冷蔵室扉20Aを閉じるようにしてもよい。これにより、使用者の意図に反して冷蔵室扉20Aが開いたままになってしまうのを防ぐことができる。
【0255】
<扉閉装置の変形例>
次に、本発明に係る扉閉装置の変形例の構成について述べる。
ここでは、右側冷蔵室扉20Abに設けられる右扉閉装置230Bの構成について図面を参照して説明する。以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳述する。
【0256】
なお、上記実施形態と同様に、左側冷蔵室扉20Aaに設けられる左扉閉装置の構成は、右扉閉装置230Bの構成と同様であるため、ここでは、右扉閉装置230Bの構成を例に挙げて説明する。
【0257】
図13は、変形例1の右扉閉装置230Bの構成について示す斜視図である。
図14は、変形例1の右扉閉装置230Bの構成を示す断面図である。
図15は、閉状態の右側冷蔵室扉20Abを軸方向上方側から見た図である。
【0258】
図13および
図14に示すように、変形例1の右扉閉装置230Bは、扉回動機構231と、扉引込み用機構132と、を有する。
扉回動機構231は、上述した駆動装置133と、歯車機構250と、を有する。
【0259】
変形例1において、歯車機構250は、駆動装置133の下端側に設けられ、駆動装置133とともに右側冷蔵室扉20Abの内部に設置されている。
【0260】
歯車機構250は、
図13に示すように、固定歯車(第二歯車:歯車)234Bと、駆動歯車134Aaと、ワンウェイクラッチ部140Aと、を有する。
【0261】
(固定歯車)
固定歯車234Cは、冷蔵室扉20Abの回転支軸Oaと同軸に設けられている。固定歯車234Cは、取付部材135のフランジ部135bと下側壁部20kとの間に配置され、これらフランジ部135bおよび下側壁部20kに対して固定される。固定歯車234Cは、フランジ部135bの貫通孔135c(
図14)内に挿通される取付軸部139に装着されている。取付軸部139の中心線は冷蔵室扉20Abの回転支軸Oaに一致する。
【0262】
固定歯車234Cは、
図15に示すように、扇型セクター歯車からなる。固定歯車234Cは、右側冷蔵室扉20Abの開放角度範囲に基づく扇形状で形成されている。このような扇形状の固定歯車234Cを採用することによって、右側冷蔵室扉20Abの内部における固定歯車234Cの配置スペースを最小限にすることができる。
【0263】
(駆動歯車)
駆動歯車134Aaは、
図13および
図14に示すように、減速機側シャフト133Bの下端側に取り付けられており、減速機側シャフト133Bと同軸をなす。駆動歯車134Aaは、駆動装置133の軸方向のうち固定歯車234Cと水平方向で噛み合う位置に設けられている。駆動歯車134Aaは、減速機側シャフト133Bの回転方向と同じ方向に回転する。駆動歯車134Aaは、固定歯車234Cに噛み合った状態で、減速機側シャフト133Bとともに当該減速機側シャフト133Bの回転軸回りに回転しながら固定歯車234Cの周方向を往復回動する。これに伴って冷蔵室扉20Abが開閉する。
本例における駆動歯車134Aaは、上述した駆動歯車134Abと同様の歯車形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。
【0264】
(ワンウェイクラッチ部)
ワンウェイクラッチ部140Aは、
図14および
図15に示すように、上述した駆動装置133からの回転力を一方向に伝達するクラッチ機構である。
【0265】
本例におけるワンウェイクラッチ部140Aは、減速機側シャフト133Bが正転したとき、つまり、軸方向上方側から見たときに反時計回りに回転したときに、減速機側シャフト133Bの回転力を駆動歯車134Aaに伝達する。また、ワンウェイクラッチ部140Aは、減速機側シャフト133Bが逆転したとき、つまり、軸方向上方側から見たときに時計回りに回転したときには、減速機側シャフト133Bの回転力を駆動歯車134Aaには伝達しない機能を有する。
【0266】
本例におけるワンウェイクラッチ部140Aは、上述したワンウェイクラッチ部140Bと同様の構成をなすが、これに限らず、異なる種類のワンウェイクラッチ構造であってもよい。
【0267】
<変形例における右扉閉装置の動作>
次に、変形例における右扉閉装置230Bによる右側冷蔵室扉20Abの開閉動作について説明する。
なお、以下においては、
図16~
図18を用いて変形例における右扉閉装置230Bについて説明するが、上述した本実施形態の右扉閉装置130Bの動作も略同様であり、変形例における固定歯車234Cは上記固定歯車134Cに置き換えるとともに、変形例における駆動歯車134Aaを上記駆動歯車134Abに置き換えることで、右扉閉装置130Bの動作説明とすることが可能である。
【0268】
図16、
図17、
図18は、変形例における右扉閉装置230Bを備える右側冷蔵室扉20Abを軸方向上方側から見た断面図である。
図16は、右側冷蔵室扉20Abの第1開状態(開放角度θが例えば145°)を示す図である。
図17は、右側冷蔵室扉20Abの第2開放状態(開放角度θが例えば90°)を示す図である。
図18は、右側冷蔵室扉20Abの第3開放状態(開放角度θが例えば45°)を示す図である。
図19は、右側冷蔵室扉20Abの閉状態(開放角度θが例えば0°)を示す図である。
【0269】
ここで、第1開放状態とは、例えば、右側冷蔵室扉20Abの開放角度θが145°のときを含み、筐体10に対して右側冷蔵室扉20Abが最も開放された状態のことを言う。第2開放状態とは、例えば、右側冷蔵室扉20Abの開放角度θが90°のときを含み、第3開放状態とは、例えば、右側冷蔵室扉20Abの開放角度θが45°のときを含む。また、閉状態とは、例えば、右側冷蔵室扉20Abの開放角度θが0°のときを含み、筐体10に対して右側冷蔵室扉20Abが閉じられた状態のことを言う。
【0270】
なお、上述したように、
図16~
図18に示す右側冷蔵室扉20Abの各開放状態における開放角度θは一例である。
【0271】
図16~
図19に示すように、右扉閉装置230Bは、扉回動機構231により開放状態の右側冷蔵室扉20Abを回転支軸Obの軸回りに回動させて閉じる。
【0272】
右側冷蔵室扉20Abが
図16に示すような開放状態の場合、駆動歯車134Aaが、扇型の固定歯車234Cの他端234b2側に噛み合っている。
【0273】
図17および
図18に示すように、駆動歯車134Aaが正転(軸方向上方側から見て反時計回りに回転)することによって、固定歯車234Cの他端234b2側から一端234b1側へ向かって、固定歯車234Cに対する駆動歯車134Aaの噛み合い位置が周方向に漸次変化し、これに伴って右側冷蔵室扉20Abが閉じる方向に回動する。
【0274】
そして、
図19に示すように、駆動歯車134Aaが扇型の固定歯車234Cの一端234b1側に達すると、右側冷蔵室扉20Abが筐体10に対して閉じた状態になる。
このようにして、本例における右扉閉装置230Bの扉回動機構231によって右側冷蔵室扉20Abを自動で閉じることができる。
【0275】
一方、右扉閉装置230Bによる扉閉動作中に、使用者によって右側冷蔵室扉20Abが手動で閉じられた場合(右扉閉装置230Bに所定以上の負荷がかかった場合)には、モーター133aへの印加電圧を停止することによって、駆動歯車134Aaの回転をフリーにしてもよい。
つまり、使用者による閉動作によって右側冷蔵室扉20Abが閉じる方向へ回動されると、固定歯車234Cが冷蔵室扉20Aaとともに回転支軸Obの軸回りに回動し、これに噛み合う駆動歯車134Aaが逆転(軸方向上方側から見たときに時計回りに空転)する。
このように、駆動歯車134Aaが回転自在になることで、モーター133aの動力によらず、使用者自身で右側冷蔵室扉20Abを閉めることができる。
【0276】
この際、制御部100は、例えば、モーター133aの駆動電流を回転数との比較によるフィードバック制御によって、使用者の閉動作による右側冷蔵室扉20Abの開放角度の変化を検知することが可能である。
あるいは、使用者が手動で冷蔵室扉20Abを開閉する力を検出するセンサを設けておくことにより、制御部100は、冷蔵室扉20Abに対して外部から作用する力によって変化する冷蔵室扉20Abの開放角度の変化を検知することができる。
【0277】
また、上述した扉開放装置41によって右側冷蔵室扉20Abが開放される場合、あるいは、手動によって右側冷蔵室扉20Abが開放される場合(右扉閉装置230Bに所定以上の負荷がかかった場合)には、固定歯車234Cが右側冷蔵室扉20Abとともに回転支軸Obを中心にして逆転(軸方向上方側から見て反時計回りに空転)する。
このように、駆動歯車134Aaが回転自在になることで、扉開放装置41によって右側冷蔵室扉20Abが開放方向へ回動されて開放される、または、手動による開放が可能となる。
【0278】
また、このような右扉閉装置230Bは、扉回動機構231の全体を右側冷蔵室扉20Abの内部に配置することができるので、右側冷蔵室扉20Abの下端側には扉引込み用機構132を取り付けることで、扉引込み用機構132の構成を簡略化できるとともに、右側冷蔵室扉20Abに対する扉引込み用機構132の取り付け作業を簡単にできる。
【0279】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を上述の実施形態に限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0280】
また、実施形態および変形例における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。
【0281】
例えば、扉閉装置130,230は、上述した構造に限られない。
例えば、扉閉装置130,230は、冷蔵室扉20Aおよび筐体10のいずれか一方に設けられる、長さ方向に複数の歯を有する平板と、これら複数の歯に噛み合うとともに軸回りに回転する円形歯車と、一端側が円形歯車の回転軸に接続され、他端側が冷蔵室扉20Aおよび筐体10のいずれか他方に接続された連結部と、を有する扉回動機構131を備えていてもよい。
【0282】
例えば、このような扉回動機構131として、いわゆるリンク機構を有していてもよい。リンク機構は、例えば、冷蔵室扉20Aに設けられる平板(ラック)および円形歯車と、冷蔵室扉20Aと筐体10とを連結する連結部と、を有する構成であってもよい。
【0283】
平板は、長さ方向に複数の歯を有し、例えば、冷蔵庫の幅方向に沿って取り付けられている。
円形歯車は、外歯歯車であって、平板の複数の歯に噛み合う。円形歯車の回転軸は、平板の長さ方向に直交する。円形歯車は、例えば、モーターによって回転する構成であってもよいし、ばね等の弾性部材を用いて回転する構成であってもよい。
連結部は、例えば、一対の棒状部の一端側どうしを回動自在に連結したく字状を呈するリンク部材からなる。連結部は、上記リンク部材の一端側が冷蔵室扉20A側の円形歯車の回転軸に接続され、他端側が筐体10側に接続されている。
【0284】
平板に噛み合う円形歯車が軸回りに回転しながら平板の長さ方向に移動することによって、連結部における一対の棒状部どうしの開放角度が変化し、冷蔵室扉20Aを開閉させることが可能である。
【0285】
なお、リンク機構からなる扉閉装置は、少なくとも上記リンク部材を覆う蓋部材を有してもよい。これにより、冷蔵室扉20Aの開閉動作、すなわち上記リンク部材の回動に伴う一対の棒状部どうしの間に使用者の指などが挟まってしまうのを防ぐことができる。また、蓋部材を設けることによって扉閉装置の美観が低下するのを防ぐことができる。
【0286】
なお、リンク機構からなる扉閉装置としては、上記構成に限られず、平板および円形歯車が筐体10側に設けられた構成であってもよい。
【0287】
また、上述した実施形態では、扉閉装置130が扉引込み用機構132を有する構成について述べたが、扉閉装置130は扉回動機構131だけを有する構成であってもよい。この場合、冷蔵室扉20Aが完全に閉じるまで駆動装置133を駆動させるようにする。この際、例えば、冷蔵室扉20Aが完全に閉じる直前に当該扉の回動が減速されるように駆動装置133の回転数を制御してもよい。あるいは、最後まで冷蔵室扉20Aを一定の速度で閉じてもよい。
【0288】
このように、扉閉装置130として扉回動機構131だけを備える構成は、冷蔵室扉20Aの重量が軽い場合、例えば、右側冷蔵室扉20Abよりも重量の軽い左側冷蔵室扉20Aaに扉閉装置130が設けられる場合などにおいて好適であり、駆動装置133および扉引込み用機構132の両方の機能によって扉を閉じる際の回動動作に必要以上の勢いがついてしまうのを防ぐことができる。
【0289】
また、上述した実施形態では、扉開放装置41が筐体10側、扉閉装置130が冷蔵室扉20A側に設けられた構成を記載したが、この構成に限られない。
例えば、扉開放装置41および扉閉装置130の両方が筐体10側に設けられていてもよい。また、扉開放装置41および扉閉装置130の両方が冷蔵室扉20A側に設けられていてもよい。また、扉開放装置41が冷蔵室扉20A側、扉閉装置130が筐体10側に設けられていてもよい。扉閉装置130を筐体10側に設けることによって使用者から離れた位置に配置することができるので、駆動音の煩わしさを低減できる。
【0290】
駆動装置133の構成としては、上述した構成に限られず、適宜変更が可能である。
駆動装置133は、冷蔵室扉20Aの内部に断熱材10kとともに収容されることから、限られた装置サイズ、電圧での駆動力を確保する必要がある。所望とする駆動力を確保することができれば、駆動装置133として他の構成を採用してもよい。
【0291】
上記実施形態では、駆動装置133の減速機134が遊星歯車減速機構144を有する構成について述べたが、この構成に限られず、冷蔵室扉20A側から筐体10側へ回転を伝達する構成を遊星歯車化することができれば、他の構成であってもよい。
【0292】
本実施形態の駆動装置133は、モーター133aと減速機134とが同軸上に配置されており、駆動装置133における入力側の回転軸、すなわちモーター133aの回転軸(第一回転軸)に対して、出力側(減速機134)の回転軸(第二回転軸)が同じ方向をなす構成とされている。つまり、モーター133aの回転軸(第一回転軸)と、減速機134の回転軸(第二回転軸)とが平行した構成である。このような構成とすることによって、冷蔵室扉20Aの下位側において駆動装置133を設置するための領域を小さくすることができるので、より大きな断熱空間を確保することができる。
【0293】
また、遊星歯車減速機構としては、上述した遊星歯車減速機構144の構成に限られない。
回転駆動機に備わる駆動軸の回転が伝達して回転するように設けられた太陽歯車と、太陽歯車の回転径方向外側に設けられ、太陽歯車と噛み合って回転することにより回転軸の位置が太陽歯車の回転軸回りに移動するように設けられた少なくとも一つの遊星歯車と、太陽歯車の回転軸の延長上に回転軸が設けられ、遊星歯車が太陽歯車の周囲を移動する力が伝達されて回転する回転伝達部と、回転伝達部の回転に従って回転する軸部材と、を少なくとも備え、回転軸の位置が固定された太陽歯車に入力された回転速度を、遊星歯車が太陽歯車の周囲で位置を移動する回転速度に変換して軸部材から出力される構成であれば、上述した構造に限られず、適宜変更が可能である。
【0294】
減速機134として、本実施形態で用いた遊星歯車減速機構の他、例えば、上記トロコイド系歯形を用いた内接式遊星歯車減速機、波動歯車減速機構、差動歯車減速機構、あるいは、その他の減速機構を採用してもよい。トロコイド系歯形を用いた内接式遊星歯車減速機としては、サイクロ(商標登録)減速機が挙げられる。波動歯車減速機としては、ハーモニックドライブ(商標登録)減速機が挙げられる。
【0295】
<トロコイド系歯形を用いた内接式遊星歯車減速機>
トロコイド系歯形、すなわちトロコイド曲線を有する歯車を用いた内接式遊星歯車減速機は、他の回転部と接する外周部に対して回転軸の位置が偏心した偏心部材を設け、偏心部材の回転軸の位置が移動することを利用して減速する機構であって、例えば、サイクロ(商標登録)減速機が挙げられる。
サイクロ(商標登録)減速機は、例えば、1枚歯数差遊星歯車機構および等速度内歯歯車機構の2つの機構を組み合わせることで構成される。
【0296】
1枚歯数差遊星歯車機構は、入力軸に接続され外周に円弧歯形を有する遊星歯車と、遊星歯車の径方向外側に配置され遊星歯車の歯数と異なる固定太陽歯車と、を有する、1枚歯数差の内接式遊星歯車である。
【0297】
等速度内歯歯車機構は、入力軸に接続されるとともに外周に円弧歯形を有する遊星歯車と、遊星歯車に形成された複数の貫通孔内に配置された複数の内ピンと、を有する歯車機構である。複数の内ピンは、入力軸の中心と同心円上に位置し、互いに等しい間隔で配置されている。
【0298】
サイクロ(商標登録)減速機は、上記2つの機構を組み合わせることによって構成される構成であり、例えば、回転駆動機であるモーター133aの回転軸に接続される入力軸と、入力軸に接続される偏心体と、偏心体の外周に配置される偏心軸受け部と、外周に円弧曲線を有する1つ又は複数の遊星歯車(曲線板)と、遊星歯車の外側に配置された複数の外ピンと、遊星歯車に形成された複数の貫通孔内に配置される複数の内ピンと、出力軸と、を備える構成であってもよい。
【0299】
このようなサイクロ(商標登録)減速機構を利用して、減速機134の回転軸(第二回転軸)が、モーター133aの回転軸(第一回転軸)と同軸をなすように、減速機134と駆動機138とを軸方向に並べて配置してもよい。
【0300】
<波動歯車減速機構>
また、波動歯車減速機構は、例えば、回転中心に向かう内周側に噛み合わせ部を有する内周伝達部と、内周伝達部の内側に配置され、内周伝達部に接して内周伝達部とは異なる周期で回転する形状の噛み合わせ部を有する外周伝達部と、を備え、回転の伝達過程で、内周伝達部と外周伝達部との回転速度の違いを利用して減速する機構である。
【0301】
このような波動歯車減速機構の1つである、ハーモニックドライブ(商標登録)は、例えば、モーター軸に接続される楕円板(ウェーブジェネレータ:W/J)と、楕円板の径方向外側に配置されるとともに外周に歯を有する外歯歯車(フレクスプライン:F/S)と、楕円板及び外歯歯車の径方向外側に配置され且つ内周に歯を有する真円状の内歯歯車(サーキュラ・スプライン:C/S)と、を少なくとも備える。なお、外歯歯車は上記外周伝達部に相当し、内歯歯車は上記内周伝達部に相当する。
ハーモニックドライブ(商標登録)は、真円とは異なる外周部の形状を持つ異形状部材からなる楕円板を一方向に回転させると外歯歯車が弾性変形し、内歯歯車に対する外歯歯車の噛み合い位置が順次移動する。このような、楕円板と、真円状の内歯歯車の回転の差動を利用して減速する波動歯車減速機構を利用して、減速機134の回転軸がモーター133aの回転軸と同軸をなすように、減速機134と駆動機138とを軸方向に並べて配置してもよい。
【0302】
<差動歯車減速機構>
上述した波動歯車減速機構の他にも、回転中心に向かう内周側に噛み合わせ部を有する内周伝達部と、内周伝達部の内側に配置され、内周伝達部に接して内周伝達部とは異なる周期で回転する形状の噛み合わせ部を有する外周伝達部と、を備え、回転の伝達過程で、内周伝達部と外周伝達部との回転速度の違いを利用して減速する機構として、差動遊星歯車減速機構が挙げられる。
このような差動遊星歯車減速機構の1つである、不思議遊星歯車減速機構は、1つの軸に取り付けられた歯数の異なる2つの歯車として転位歯車を用い、これら転位歯車を共通の歯車にかみ合わせることによって、高い減速率を得ることができる機構である。このような不思議遊星歯車減速機構を利用して、減速機134の回転軸がモーター133aの回転軸と同軸をなすように、減速機134と駆動機138とを軸方向に並べて配置してもよい。
【0303】
また、その他の減速機構として、例えば、モーターなどの回転駆動機に備わる駆動軸の回転が伝達して回転するように設けられた駆動歯車と、駆動歯車の回転径方向に離間して設けられ、駆動歯車と噛み合って回転する中間歯車と、回転中心に向かって設けられた内歯によって中間歯車と噛み合って回転する内歯歯車と、内歯歯車と一体となって回転するように設けられた回転出力部と、を備え、駆動歯車に入力された回転が減速されて回転出力部の回転によって出力される機構を採用してもよい。
回転出力部の出力回転軸は内歯歯車の回転軸と同一であり、内歯歯車の歯面の内側空間を避けて内歯歯車の歯面から出力回転軸まで延びる形状部を有する。
【0304】
上記回転出力部は、駆動歯車及び中間歯車を収容する円形状の収容体であって、内側に上記内歯歯車が一体に組み込まれる。このような回転出力部が、内歯歯車と一体となって当該回転出力部の回転軸の軸回りに回転することによって、駆動歯車に入力された回転が減速されて、上記出力回転軸から出力される。駆動歯車と内歯歯車との間に位置する中間歯車は、当該中間歯車の取付位置から移動することなく、その取付位置において当該中間歯車の回転軸回りに回転する。すなわち、中間歯車は、駆動歯車の周囲を移動せず、所定の取付位置においてその回転軸回りに回転する。上述したように、中間歯車の回転に伴って内歯歯車と回転出力部とが一体となって回転することで減速作用が得られ、回転出力部側から出力される回転が減速される。
なお、回転出力部は、内周面に内歯が形成された構成であってもよい。
【0305】
上記の構造の減速機構について、駆動歯車および回転出力部への入力と出力とを逆にして利用してもよい。すなわち、モーターなどの回転駆動機に備わる駆動軸の回転が伝達して回転するように設けられた駆動歯車を、回転中心に向かう面に歯面を設けた内歯型駆動歯車とし、回転出力部となる歯車を回転中心から離れる側に向かう面に歯面を設けた外歯型回転出力部とする。そして、内歯型駆動歯車と外歯型回転出力部との間に、これらの回転径方向に離間して設けられて内歯型駆動歯車および外歯型回転出力部と噛み合って回転する中間歯車を設けて、各部の1回転辺りの歯数の違いを利用して減速させる。
もちろん、先に説明した外歯型の駆動歯車を利用する場合と、後に説明した内歯型駆動歯車を利用する場合とのどちらも、入力された回転が減速されて出力されるように、各部の1回転辺りの歯数を設定する。
【0306】
上述したようないずれかの減速機構を採用した場合でも、遊星歯車減速機構を採用した上記実施形態と同様に、駆動機138の出力側の回転軸と、減速機134の入力側の回転軸とを同軸に配置することができるため、駆動装置133全体の外形を軸方向に細長い形状にすることが可能である。これにより、扉内での駆動装置133の占有スペースを少なくすることができ、広い断熱空間を確保することができる。
【0307】
また、本実施形態において、冷蔵室扉20A内に設置される駆動装置133の取り付け姿勢は、適宜変更が可能である。
上述した実施形態では、冷蔵室扉20A内において駆動装置133が縦向きの姿勢で取り付けられている。つまり、駆動装置133の回転軸O133、すなわちモーター133aの回転軸および減速機134の回転軸が上下方向に沿っており、冷蔵室扉20Aの回転支軸と平行しているが、駆動装置133の設置姿勢は縦向きに限らない。
【0308】
図20は、駆動装置133を横向きに設置する場合の概略構成図である。
図20に示すように、例えば、横方向に並ぶモーターおよび減速機を有する駆動装置133が横向きの姿勢で冷蔵室扉20A内に設置されていてもよい。これにより、冷蔵室扉20Aの下辺に沿って駆動装置133を配置することができるので、これよりも上方側の冷蔵室扉20A内の空間に断熱材10kを十分な量で配置することが可能である。
【0309】
図20に示すように、駆動装置133が横向きの姿勢で取り付けられる場合、駆動装置133の回転軸O133は、冷蔵室扉20Aの上下方向に延びる回転支軸Oに対して交差し、冷蔵室扉20Aの下辺部に沿った幅方向に延びる。すなわち、駆動機138の回転軸(第一回転軸)と、駆動機138から駆動力(第一駆動力)が伝達される減速機134の回転軸(第二回転軸)が、上記回転支軸Oに対して交差し、冷蔵室扉20Aの下辺部に沿った幅方向に延びている。そのため、駆動装置133の減速機134としては、横方向に延びる回転軸O133の回転を、縦方向すなわち上下方向に延びる回転支軸Ob側に伝達する歯車機構151を有していてもよい。
【0310】
歯車機構151は、例えば、回転軸が互いに交わる歯車151A、151Bを有する。回転軸が互いに交わる歯車151A、151Bとして、例えば、かさ歯車などのような、複数の歯車の歯面が互いに斜めに接して噛み合わされる形状の歯車を採用することができ、これらによって伝達方向を変換する歯車機構151とすることができる。歯車151A、151Bは、互いの中心軸が交差する位置において一致する。
【0311】
また、減速機134として、上記歯車機構151を構成する2つの歯車151A,151Bのうち一方の歯車を固定歯車としてもよい。駆動する一方の歯車(回転駆動部)151Aの回転軸と、固定された他方の歯車151Bの回転軸と、は互いに交差する方向へ延びる。このように、歯車機構151でトルクの伝達方向を変換する部分で筐体10側に伝達してもよい。
【0312】
ここで、駆動装置133が横向きの姿勢で取り付けられる場合、冷蔵室扉20Aの下辺部に設けられた凹状の手掛け部の位置と、駆動装置133の位置とが、高さ方向において(上下方向から見て)、少なくとも一部が重なるように配置されていてもよい。手掛け部は、使用者が手動で冷蔵室扉20Aを開閉させる際に指を挿入させる箇所である。
また、駆動装置133が横向きの姿勢で取り付けられる場合、冷蔵室扉20Aの幅方向において、駆動装置133が冷蔵室扉20Aの回転支軸O側に配置され、手掛け部が冷蔵室扉20Aの開放端側に配置されていてもよい。
【0313】
図21は、駆動装置133における減速機134Bの他の構成を示す概略構成図である。
図21に示すように、減速機134Bとして、ギア比の異なる多数の平歯車152a~152dを水平方向に並ぶように噛み合わせた平行軸歯車機構152を採用してもよい。多数の平歯車152a~152dのうちの一つの平歯車152aをモーター133aの回転軸に接続し、この平歯車152aに噛み合う他の平歯車152b、152c、152dのギア比によってモーター133aの回転数を減らして増大したトルクを、駆動歯車134Aaを介して固定歯車134Cに伝達されるようにしてもよい。
【0314】
このように、減速機134として、かさ歯車や多数の平歯車を備える機構を採用することによって、所望の駆動力を確保しつつ、減速機134の巨大化を抑制することが可能である。また、減速機134を含む駆動装置133の美観を損ねることなく冷蔵室扉20Abの断熱空間を確保することが可能である。特に、必要トルクを確保するために多数の歯車を利用した構成とすることによって小型化でき、設置空間の節約に効果的である。
【0315】
また、駆動伝達方向を変換する減速機134としては、上記以外にも、例えば、ねじ状の円筒歯車からなるウォームと、これと噛み合う歯数の多い歯車からなるウォームホイールと、を有する食い違い歯車機構を採用してもよい。ウォームの回転軸と、ウォームホイールの回転軸とは、互いに交わることなく直交する。このような食い違い歯車機構を採用することによって、減速機の小型化を図るようにしてもよい。
【0316】
また、ワンウェイクラッチ部140A,140Bとして、上述した以外の異なる種類のワンウェイクラッチ構造を採用してもよい。
例えば、ステッピングモーターのように、モーター133aが回転していない間に、モーター133aの駆動軸の回転に負荷がかかるような種類のモーターを使用する場合は、駆動力の伝達を遮断する機構を有していてもよい。これにより、扉閉装置130の停止中は、モーター133aの駆動力の伝達を遮断することで、扉閉装置130の停止中に、扉閉装置130による回動の負荷が歯車機構151にかかることなく冷蔵室扉20Abを手動で開閉することができる。
駆動力の伝達を遮断する機構としては、例えば、車のクラッチ(動力伝達切替機構)に採用されるような物理機構であってもよいし、電磁クラッチでもよい。
【0317】
また、減速機134を含む伝達過程において、歯すじがつる巻線状の一対のはすば歯車や、やまば歯車を用いた機構を採用してもよい。
【0318】
また、上述した実施形態では、扉開放操作部42が冷蔵室扉20Aの前面側に設けられているが、冷蔵室扉20Aの開放端側の側面や下面側に設けられていてもよい。
【0319】
上述した実施形態では、筐体10の天井部に設けられた扉開放装置41によって冷蔵室扉20Aを開放させる構成となっているが、扉開放装置41に代って冷蔵室扉20Aに設けられた扉閉装置130によって冷蔵室扉20Aを開放させるようにしてもよい。これにより、筐体10の天井部に設けていた扉開放装置41を省くことが可能となり、天井部に配置する装置の増加を抑制することができる。
【0320】
上述した実施形態では、冷蔵室扉20A内に断熱材10kとともに駆動装置133を設けることによって、駆動装置133に対する断熱性を確保する構成となっているが、駆動装置133に対する断熱性を確保する構成はこれに限らない。
【0321】
例えば、冷蔵室扉20A内に、駆動装置133が冷却されてしまうのを抑制するための加熱装置を設けてもよい。この場合、駆動装置133の近傍であるとともに、冷蔵室扉20Aの庫内側から離れた位置にヒータを配置してもよい。また、駆動装置133および加熱装置よりも庫内側に真空断熱材を配置することによって庫内側の断熱性を確保し、加熱装置による庫内温度の上昇を防ぐようにしてもよい。
【0322】
また、冷蔵室扉20Aを開閉させる動作としては、扉閉装置130による駆動開閉と、使用者自身が行う手動開閉とがある。
【0323】
例えば、上述した所定の扉閉条件を満たした場合に、モーター133aに電圧を印加して、ワンウェイクラッチ部140A,140Bによる駆動力の伝達を可能な状態にし、上記扉閉条件を満たしていない場合は、モーター133aへの電圧印加を停止して、ワンウェイクラッチ部140A,140Bによる駆動力の伝達を遮断した状態にしておくことによって、手動による開閉動作を可能にしておくことができる。
【0324】
あるいは、上記扉閉条件を満たしていない間は、モーター133aに電圧を印加して、ワンウェイクラッチ部140A,140Bによる駆動力の伝達を可能な状態にしておき、開状態とされた冷蔵室扉20Aの開放角度の変化を検出した場合に、モーター133aへの電圧印加を停止して、ワンウェイクラッチ部140A,140Bによる駆動力の伝達を遮断することによって、手動による閉動作を可能にすることができる。
なお、手動による閉動作中は、モーター133aへの電圧印加は停止しておく。
【0325】
あるいは、上記扉閉条件を満たしていない間は、モーター133aへ電圧を印加して、ワンウェイクラッチ部140A,140Bによる駆動力の伝達を可能な状態にしておき、開状態とされた冷蔵室扉20Aの開放角度の変化を検出した場合に、モーター133aへの電圧印加を停止して、ワンウェイクラッチ部140A,140Bによる駆動力の伝達を遮断する。そして、開状態の冷蔵室扉20Aの角度変化が所定時間検出されなかった場合には、再び、モーター133aへ電圧を印加して、ワンウェイクラッチ部140A,140Bによる駆動力の伝達を可能な状態にし、扉閉装置130による扉閉動作を可能な状態にしてもよい。
このようにして、駆動開閉と手動開閉との両立を図る制御を行うようにしてもよい。
【0326】
また、使用者からの音声指示を取得する経路として、冷蔵庫1の上部に設けられた音声指示取得部52gを通じて使用者の音声指示を直接取得する経路の他に、スマートスピーカや携帯電話の音声認識機能を使用して取得する経路であってもよい。
例えば、音声指示取得部52gの無線通信用モジュールと、携帯電話やスマートスピーカなどの外部端末と、が通信することによって、外部端末において認識した使用者の音声指示を取得することができる。
携帯電話との通信経路は特に問わない。近距離無線通信を使用してもよいし、携帯電話会社が提供するサーバ経由のモバイルデータ通信や、無線LANを用いたインターネット通信等であってもよい。
【0327】
また、冷蔵庫1と携帯電話とを連携させることによって、使用者が冷蔵庫1から離れた場所にいる場合であっても、アプリ等を利用して冷蔵室扉20Aの開閉状態を見守る見守り機能を実現することが可能となる。また、冷蔵室扉20Aを開閉させるだけでなく、閉状態でロックするなどの遠隔操作を行うことも可能になる。
【0328】
また、冷蔵庫1と携帯電話とを連携させることによって、冷蔵室扉20Aの自動扉開閉指示を、アプリ上でその都度実施するか、音声指示で行うかを予め選択することが可能である。また、扉開放操作部42の照明の明るさや、所定時間開放されている場合において自動扉閉に関する詳細を設定することが可能である。詳細設定の内容としては、例えば、扉閉までの時間や扉開放ブザー(報知音)、自動扉閉実施の通知などが考えられる。
【0329】
なお、制御部100は、上記「開放制限時間」を経過した場合に、まず、スピーカ52aから扉開放ブザーを使用者へ向けて事前に出力して、その後、扉閉装置130の駆動装置133を駆動させて冷蔵室扉20Aを閉じるようにしてもよい。冷蔵室扉20Aが勝手に閉まると使用者が驚く可能性があるため、冷蔵室扉20Aを閉じる前に使用者へ向けて扉開放ブザーを出力しておいてもよい。
【0330】
あるいは、扉開放ブザーを出力せず、扉開放ブザーを出力したときと同程度のタイミングで冷蔵室扉20Aを閉じるようにしてもよい。
これに限られず、扉開放ブザーを出力しないようにしてもよい。その場合は、扉開放ブザーを出力するタイミングに代えて、冷蔵室扉20Aを閉めるタイミングを設定してもよい。
【0331】
また、扉閉装置130によって冷蔵室扉20Aを閉じている間は、扉閉通知音、あるいは扉閉通知音声を使用者へ向けて出力してもよい。
【0332】
これにより、使用者は、冷蔵室扉20Aが所定時間を過ぎて開放されていることを認識できるとともに、使用者が近くに居ないなど、冷蔵室扉20Aを閉じることができない場合であっても自動で冷蔵室扉20Aを閉じることができるので、冷蔵室扉20Aが開放状態のままになるのを防ぐことができる。
【0333】
なお、上記開放ブザーの出力タイミングや回数は適宜設定することが可能であり、例えば、所定の時間を経過してもなお扉が開放されている場合に、1回目開放ブザーを出力し、その後、所定時間経過時に、2回目開放ブザーを出力し、それでもまだ冷蔵室扉20Aが開放されている場合に、駆動装置133の駆動によって冷蔵室扉20Aを自動で閉じるように制御してもよい。開放ブザーを出力する回数や音量等などは適宜変更が可能である。
【0334】
また、使用者は、所定の扉閉条件である「開放制限時間」を経過してもなお冷蔵庫1を使用する場合がある。そのため、制御部100は、例えば、冷蔵室扉スイッチ123によって冷蔵室扉20Aが大きく開いた状態、例えば、冷蔵室扉20Aの開放角度が所定の角度以上であることを検知した場合は、使用者が冷蔵庫1の冷蔵室扉20Aを開いて冷蔵室(貯蔵室)11Aを使用中である可能性が高いと判断し、使用者の意図とは異なるタイミングで冷蔵室扉20Aを閉じるのを防ぐために、上記「開放制限時間」を所定時間延長してもよい。
ここで、冷蔵室扉20Aが大きく開いた状態とは、冷蔵室扉20Aの開放角度が60°以上のときをいう。
また、予め設定された「開放制限時間」を経過してもなお冷蔵室扉20Aが開放されている場合は、再度、開放経過時間を計測し、「開放制限時間」と比較してもよい。
また、「開放制限時間」を一度延長した後に、再度、扉開放時間の計測を行う場合は、再計測した扉開放時間と比較するための上記「開放制限時間」を変更してもよい。
なお、上記使用中には、冷蔵室11Aだけでなく、各冷蔵室扉20Aの内側に設けられた各扉収容部14(
図2)への使用も含まれる。
【0335】
また、制御部100は、扉開放操作部42に対する使用者の接触や近接を含む、使用者からの入力操作(扉開放指示操作)を検出することによって扉開放装置41により冷蔵室扉20Aを開放した場合は、使用者が冷蔵庫1の近くにいて、冷蔵庫1の冷蔵室11Aを使用中である可能性が高いと判断できるため、上記「開放制限時間」を所定時間延長し、冷蔵室扉20Abを開けたままにしてもよい。
【0336】
また、制御部100は、扉開放操作部42に対する使用者の操作だけでなく、冷蔵庫1に設けられた、温度調整や製氷に関する指示などを実行するために設けられた他の操作部に対する使用者の操作があった場合は、使用者が冷蔵庫1の近くにいて、冷蔵室(貯蔵室)11Aを使用中である可能性が高いと判断できるため、上記「開放制限時間」を所定時間延長し、冷蔵室扉20Abを開けたままにしてもよい。
【0337】
また、上記以外にも、使用者が冷蔵庫1の冷蔵室扉20Aを開いて冷蔵室11Aを使用中であることを判断する検出手法として、例えば、赤外線検出部によって使用者を検出した場合に、冷蔵庫1の近くの使用者が冷蔵室扉20Aを開いて冷蔵室11Aを使用中であると判断し、上記「開放制限時間」を所定時間延長し、冷蔵室扉20Abを開けたままにしてもよい。
また、携帯電話による近距離無線通信が成立している場合に、使用者が近くにいて冷蔵室扉20Aを開いて冷蔵室11Aを使用中であると判断し、上記「開放制限時間」を所定時間延長し、冷蔵室扉20Abを開けたままにしてもよい。
なお、携帯電話による近距離無線通信が成立する距離(冷蔵庫1から携帯電話までの所定の距離)を予め設定しておいてもよい。
【0338】
また、開放状態の冷蔵室扉20Aの開放角度が変化したことを検出することで、使用者が冷蔵庫1の冷蔵室扉20Aを開いて冷蔵室(貯蔵室)11Aを使用中であると判断し、上記「開放制限時間」を所定時間延長し、冷蔵室扉20Abを開けたままにしてもよい。
【0339】
また、音声指示取得部52gを通じて使用者の音声を取得した場合は、使用者が冷蔵庫1の冷蔵室扉20Aを開いて冷蔵室(貯蔵室)11Aを使用中であると判断し、上記「開放制限時間」を所定時間延長し、冷蔵室扉20Abを開けたままにしてもよい。あるいは、上記幾つかの検出手法を組み合わせて判断してもよい。
【0340】
また、「開放制限時間」が経過した後に、使用者が冷蔵室扉20Aを開いた状態のまま冷蔵室11Aを使用中であることを判断できない場合に、使用者が冷蔵庫1から離れたと判断して冷蔵室扉20Aを閉じるようにする。使用中であることを判断できない場合とは、例えば、上記赤外線検出部により冷蔵庫近くの使用者を検出できない場合、携帯電話との近距離無線通信が途絶えた場合、冷蔵室扉20Aの開放角度が一定期間変化しない場合、使用者の音声を音声指示取得部52gによって一定期間取得されない場合などが挙げられる。
【0341】
本実施形態では、上記したいずれか一つの条件、あるいはいくつかの条件を満たした場合に、使用者が冷蔵庫1の近くから離れたと判断して冷蔵室扉20Aを閉めてもよい。
【0342】
また、制御部100は、音声指示によって冷蔵室扉20Aを開放した場合も、上述した所定の扉閉条件を満たした場合に、扉閉装置130のモーター133aを駆動して冷蔵室扉20Aを閉じることができる。また、その際、扉開放操作部42の操作によって冷蔵室扉20Aを開放した場合と同様に、扉閉装置130を駆動する前、すなわち冷蔵室扉20Aを閉じる前に使用者に向けて扉開放ブザーを適宜出力してもよい。
【0343】
また、制御部100は、記憶部126に予め記憶(設定登録)されている使用者の声紋データと、音声指示取得部52gを通じて取得した人物の音声データと、を照合させて、音声指示を行った人物が使用者であると判断できた場合に、冷蔵室扉20Aを開閉させてもよい。このような声紋認識システムを利用することにより、非設定の人物の音声による誤作動を防ぐことができる。なお、記憶部126には、複数の使用者の声紋データの登録が可能である。
【0344】
上述した実施形態の冷蔵庫1は、扉開放操作部42により、使用者による接触および近接を検出することによって冷蔵室扉20Aを開放させる開扉機能を有するが、使用者による接触および近接を検出することによって冷蔵室扉20Aを閉じる扉閉機能を有していてもよい。
【0345】
例えば、扉開放操作部42の近傍に扉閉操作部を設けておき、使用者が扉閉操作部に軽く触れることで扉を閉じる機能を有していてもよい。
この場合、開放状態の冷蔵室扉20Aが開放状態であるときに、使用者が操作、あるいは接触しやすい位置に扉閉操作部を配置してもよい。開放状態の冷蔵室扉20Aが開放状態であるときに、使用者が操作、あるいは接触しやすい位置とは、例えば、冷蔵室扉20Aの回転支軸Oa、Obとは反対側の開放端側に寄った位置における冷蔵室扉20Aの側壁や底壁、あるいは庫内側を向く面などが挙げられる。
例えば、冷蔵室扉20Aの開放端側の扉側面に扉閉操作部を配置してもよいし、冷蔵室扉20Aの庫内側に扉閉操作部を配置してもよい。冷蔵室扉20Aの庫内(内側壁部20i:
図2)側に扉閉操作部を配置する場合、例えば、内側壁部20iのうち開放端側に扉閉装置を配置してもよいし、下端側に扉閉装置を配置してもよい。
あるいは、扉開放操作部42に扉閉機能も付与させ、扉開放操作部42が扉閉操作部を兼用する仕組みとすることで、装置構造の複雑化を防いでもよい。
【0346】
このように、冷蔵庫1が扉開放機能だけでなく扉閉機能を有する扉開閉操作部を備える場合は、冷蔵室扉スイッチ123によって冷蔵室扉20Aが開状態であることを検知している間に、扉開閉操作部に対する使用者の接触や身体近接が検出された場合には、扉閉装置130,230を駆動することによって冷蔵室扉20Aを閉じるようにしてもよい。
【0347】
また、冷蔵室扉スイッチ123によって冷蔵室扉20Aが閉状態であることを検出している間に、扉開閉操作部に対する使用者の接触や身体近接が検出されたときには、扉開放装置41を駆動することによって冷蔵室扉20Aを開放させるようにしてもよい。
【0348】
さらに、冷蔵室扉スイッチ123によって冷蔵室扉20Aが開状態であることを検知している間に、音声指示取得部52gを通じて使用者から扉を閉状態にする音声指示を取得した場合には、扉閉装置130,230を駆動することによって冷蔵室扉20Aを閉じる方向へ回動させてもよい。冷蔵室扉20Aを閉じている間に、扉操作部に対する操作が検出された場合には、冷蔵室扉20Aの回動を一旦停止させてもよい。
【0349】
また、冷蔵室扉スイッチ123によって冷蔵室扉20Aが閉状態であることを検出している間に、音声指示取得部52gを通じて使用者から扉を開状態にする扉開放指示を検出した場合には、扉開放装置41を駆動することによって冷蔵室扉20Aを開放させてもよい。冷蔵室扉20Aが開放されている間に、扉開閉操作部を通じて扉閉指示が検出された場合には、駆動装置133への電力供給を停止することによって冷蔵室扉20Aの回動を一旦停止させるようにしてもよい。
【0350】
さらに、冷蔵室扉スイッチ123によって冷蔵室扉20Aが開状態であることを検知している間に、扉開閉操作部に対する使用者の操作が検出された場合には、扉閉装置130,230を駆動することによって冷蔵室扉20Aを閉じる方向に回動させてもよい。冷蔵室扉20Aを閉じている間に、音声指示取得部52gを通じて使用者から開扉指示を取得した場合には、駆動装置133への電力供給を停止することによって、冷蔵室扉20Aの回動を一旦停止させるようにしてもよい。
【0351】
また、冷蔵室扉スイッチ123によって冷蔵室扉20Aが閉状態であることを検出している間に、扉開閉操作部に対する使用者の操作が検出された場合には、扉開放装置41を動作させることによって冷蔵室扉20Aを開放してもよい。冷蔵室扉20Aが開放されている間に、音声指示取得部52gを通じて使用者から扉を閉状態にする音声指示を取得した場合には、モーター133aの駆動を停止して冷蔵室扉20Aの回動を一旦停止させてもよい。
【0352】
このように、扉の開閉に関する異なる指示が短時間の間に連続してなされた場合は、冷蔵室扉20Aの回動(開閉動作)を一旦停止させ、その後に、扉開閉操作部への扉閉指示、あるいは音声による扉閉指示のいずれかを検出した場合には、扉閉装置130によって冷蔵室扉20Aを再び回動させて閉じるようにしてもよい。
【0353】
また、使用者は、開放状態で一旦停止された冷蔵室扉20Aを手動で開閉させることも可能である。
これにより、扉開閉操作部によってなされた開閉指示と、音声指示取得部52gを通じて取得した音声による開閉指示とが短時間の間に連続して行われた場合も対応することが可能である。
【0354】
また、制御部100は、冷蔵室扉20Aを開放している間は扉閉指示のみを受け付けるようにし、開扉指示については受け付けないようにしてもよい。
同様に、冷蔵室扉20Aを閉じている間は、扉開放指示のみを受け付けるようにし、扉閉指示については受け付けないようにしてもよい。
【0355】
また、例えば、上述した実施形態では、所定の扉閉条件として、「開放制限時間」を経過した場合に、駆動装置133を駆動させて冷蔵室扉20Aを閉じる方向に回動させる機能を有するが、使用者からの「扉閉指示(音声指示)」を扉閉条件として扉閉装置130の駆動装置133を駆動させる機能を有していてもよい。この際、扉閉装置130は、音声指示取得部52gを通じて取得した、使用者からの「扉閉指示(音声指示)」に基づいて駆動する。
【0356】
また、制御部100は、冷蔵室扉20Aが閉じている間は使用者からの扉閉指示を受け付けず、冷蔵室扉20Aが開いている間は使用者からの開扉指示を受け付けないように制御してもよい。
これにより、使用者からの指示が重複してしまうのを防ぐことができる。
【0357】
また、制御部100は、冷蔵室扉20Aの開閉動作中に使用者による手動開閉を検知した場合に、冷蔵室扉20Aの開閉動作を停止させる。冷蔵室扉20Aを自動開閉している間に、使用者が冷蔵室扉20Aを開閉したこと(冷蔵室扉20Aの角度変化)を検知する手法としては、例えば、駆動装置133のフィードバック制御を利用することが考えられる。駆動装置133における駆動電流と回転数との比較などを行ってもよいし、駆動装置133の駆動力の伝達をカットしてもよい。
【0358】
また、制御部100は、開扉指示を受け付けた場合に、冷蔵用ファン33および冷凍用ファン35のうちの少なくともいずれか一つを停止、あるいは回転数を減らすことによって、冷蔵庫1の静音化を促進している。使用者からの開扉指示をもって上記ファンの駆動を停止、あるいは低回転にすることによって、早く静音化することが可能である。
【0359】
また、制御部100は、音声による扉閉指示か、扉開放操作部42からの扉閉指示かによって、扉閉装置130によって自動で閉じるまでの時間を異ならせてもよい。例えば、扉開放操作部42からの扉閉指示の場合は、使用者が近くにいると判断できるため、閉じるまでの時間、すなわち上記開放制限時間を延長してもよい。
【0360】
また、上記実施形態では、左右の冷蔵室扉20Aa,20Ab内に扉閉装置130を備える構成であるが、冷蔵庫1における他の扉20に扉閉装置130を採用してもよい。
【0361】
図22は、片開き型の冷蔵庫1Aを示す図である。
上記実施形態では、一対の冷蔵室扉20Aを備えた両開き型(フレンチ扉)の冷蔵庫について述べたが、
図22に示すように冷蔵室扉20Aを1つ備えた片開きの冷蔵庫であってもよい。
【0362】
以下、冷蔵庫1について付記する。
(A1)
前記扉閉装置は、
前記扉を閉じる方向へ回動させるための駆動力を発生させる駆動源と、
前記駆動源からの駆動力が伝達されるように設けられた扉閉伝達部と、
前記駆動源から伝達される回転速度を減速させる、遊星歯車減速機構、トロコイド曲線を有する歯形を用いた内接式遊星歯車減速機構、波動歯車減速機のうちのいずれか一つと、を備えている、冷蔵庫。
【0363】
(A2)
前記遊星歯車減速機構は、
前記駆動源の回転軸に接続された駆動伝達部と、
前記駆動伝達部を中心としてその周囲に配置された複数の受動部と、を備え、
前記複数の受動部は、各々の回転軸回りに回転しつつ駆動伝達部の周方向へともに移動する、冷蔵庫。
【0364】
(A3)
前記トロコイド系歯形を用いた内接式遊星歯車減速機は、
前記駆動源の前記回転軸に接続され前記回転軸に対して偏心した偏心体と、
前記偏心体の径方向外側に配置され外周に円弧曲線を有する曲線板と、
前記偏心体と前記曲線板との間に配置される軸受部と、
前記曲線版に形成された複数の貫通孔内に形成される複数の内棒と、
前記曲線版の径方向外側に配置された複数の外棒と、
を備える、冷蔵庫。
【0365】
(A4)
前記波動歯車減速機は、
前記駆動源の前記回転軸に接続される楕円板と、
前記楕円板の径方向外側に配置されるとともに外歯を有する外歯歯車と、
前記楕円板及び前記外歯歯車の径方向外側に配置され且つ内歯を有する内歯歯車と、
を備える、冷蔵庫。
【符号の説明】
【0366】
1,1A…冷蔵庫、6A,6B…ヒンジ(扉回転支持部)、10…筐体、10a…上壁(天井部)、11…貯蔵室、20…扉、41…扉開放装置、42…扉開放操作部、52g…音声指示取得部、130(130A),230(230B)…扉閉装置、131,231…扉回動機構、133a…モーター(駆動源)、133m…クランクシャフト(軸部材)、134(134A,134B)…減速機、134d…伝達面、134Ab…駆動歯車(回転駆動部)、134C…固定歯車(固定受動部)、134Ca…受動面、150…扉閉伝達機構(扉閉伝達部)、151A…歯車、O1…駆動歯車の回転軸、O2…固定歯車の中心軸、Oa、Ob…回転支軸(扉の回転軸)