(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021641
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/77 20110101AFI20240208BHJP
H01R 12/59 20110101ALI20240208BHJP
【FI】
H01R12/77
H01R12/59
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124627
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】木村 晃
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB45
5E223AC23
5E223BA01
5E223BA08
5E223BB12
5E223BB17
5E223CB20
5E223CB21
5E223CB26
5E223CB62
5E223CD02
5E223DA08
5E223EA03
5E223EA33
5E223EA36
(57)【要約】
【課題】フレキシブル導体が接続対象物の表面および裏面のいずれに露出していても、コンタクトを接続対象物のフレキシブル導体に電気的に接続することができるコネクタを提供する。
【解決手段】ワイヤスプリングからなるインナーコンタクト18は、プラグコンタクト13に接触する一対の接点部P1と、一対の押し付け部P2を有し、シート状導電部材15の一部が、嵌合軸に直交する方向において押し付け部P2と凹部13Cの内面との間に挟まれ、凹部13Cの内面がシート状導電部材15の表面に接触し、押し付け部P2がシート状導電部材15の裏面に接触することにより、プラグコンタクト13が直接シールド層15Dに電気的に接続され、また、インナーコンタクト18を介してシールド層15Fに電気的に接続される。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵌合軸に沿って延びる凹部を有する筒状の導電性のプラグコンタクトと、
前記凹部内に挿入され且つ屈曲されたワイヤスプリングからなる導電性のインナーコンタクトと
を備え、
前記インナーコンタクトは、前記嵌合軸に直交する方向に弾性変位可能で且つ前記凹部内で前記プラグコンタクトに接触する接点部と、前記嵌合軸に直交する方向に弾性変位可能で且つ前記凹部内に配置される押し付け部を有し、
少なくとも一方の面にフレキシブル導体が露出しているシート状の接続対象物の一部が、前記嵌合軸に直交する方向において前記押し付け部と前記凹部の内面との間に挟まれ、前記凹部の内面が前記接続対象物の表面に接触し、前記押し付け部が前記接続対象物の裏面に接触することにより、前記フレキシブル導体が前記接続対象物の表面に露出する場合は、前記プラグコンタクトが直接前記フレキシブル導体に電気的に接続され、前記フレキシブル導体が前記接続対象物の裏面に露出する場合は、前記プラグコンタクトが前記インナーコンタクトを介して前記フレキシブル導体に電気的に接続されるコネクタ。
【請求項2】
前記インナーコンタクトは、
前記嵌合軸を横切るように延びる水平部と、
前記水平部の両端にそれぞれ第1屈曲部および第2屈曲部を介して連結され且つ互いに交差しながら前記嵌合軸に対して斜めに延びる第1斜行部および第2斜行部と、
前記第1斜行部の先端および前記第2斜行部の先端にそれぞれ第3屈曲部および第4屈曲部を介して連結され且つ前記嵌合軸を挟んで互いに対向しながら前記嵌合軸に沿って前記水平部から離れる方向に延びる第1伸長部および第2伸長部と
を有する請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第1屈曲部および前記第2屈曲部が、それぞれ前記接点部を形成し、
前記第3屈曲部および前記第4屈曲部が、それぞれ前記押し付け部を形成する請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第1伸長部および前記第2伸長部は、互いに平行に延びている請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記第1伸長部および前記第2伸長部は、前記水平部から離れるほど互いに間隔が狭まるように前記嵌合軸に対して斜めに延びている請求項3に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記第1伸長部は、前記第2伸長部から離れる方向に突出するように屈曲された第1突出部を有し、
前記第2伸長部は、前記第1伸長部から離れる方向に突出するように屈曲された第2突出部を有し、
前記第1屈曲部および前記第2屈曲部が、それぞれ前記接点部を形成し、
前記第1突出部および前記第2突出部が、それぞれ前記押し付け部を形成する請求項2に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記第3屈曲部および前記第4屈曲部が、それぞれ前記接点部を形成し、
前記第1屈曲部および前記第2屈曲部が、それぞれ前記押し付け部を形成する請求項2に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記インナーコンタクトは、
前記嵌合軸を横切るように延びる水平部と、
前記水平部の一端に第1屈曲部を介して連結され且つ前記嵌合軸に沿って延びる第1伸長部と、
前記水平部の他端から前記嵌合軸に沿って延びる第2伸長部と、
前記第1伸長部の中間部において前記第2伸長部から離れる方向に突出するように屈曲された第1突出部と
を有する請求項1に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記第1屈曲部が、前記接点部を形成し、
前記第1突出部が、前記押し付け部を形成する請求項8に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記プラグコンタクトは、筒状部と、前記筒状部の一端に形成されたフランジとを有し、
前記凹部は、前記筒状部の内部からなる請求項1~9のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記接続対象物と前記プラグコンタクトと前記インナーコンタクトを保持するための絶縁性のハウジングを備え、
前記ハウジングは、
前記プラグコンタクトの前記筒状部が貫通し且つ前記フランジよりも小さいコンタクト用貫通孔が形成されたトップインシュレータと、
前記インナーコンタクトを保持するための保持部を有するボトムインシュレータと
を有し、
前記コンタクト用貫通孔に前記プラグコンタクトの前記筒状部を貫通させると共に前記接続対象物と前記フランジを前記トップインシュレータと前記ボトムインシュレータとの間に挟むように前記トップインシュレータが前記ボトムインシュレータに固定される請求項10に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コネクタに係り、特に、少なくとも一方の面にフレキシブル導体が露出しているシート状の接続対象物に接続されるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、着用するだけで心拍数、体温等のユーザの生体情報を取得することができる、いわゆるスマート衣料が注目を浴びている。このスマート衣料は、計測箇所に配置された電極を備え、電極に計測機器としてのウエアラブルデバイスを電気的に接続することで、生体情報をウエアラブルデバイスに伝送することが可能となる。
電極とウエアラブルデバイスとの接続は、例えば、電極から引き出されたフレキシブル導体に接続されるコネクタを用いることにより行うことができる。
【0003】
この種のコネクタとして、例えば、特許文献1に、
図32に示されるようなコネクタが開示されている。コネクタは、フレキシブル基板1を間に挟んでフレキシブル基板1の両側に配置されたハウジング2およびベース部材3を有し、コンタクト4の筒状部4Aがハウジング2のコンタクト用貫通孔2Aに通され、コンタクト4のフランジ4Bがハウジング2とフレキシブル基板1の表面に露出するフレキシブル導体1Aとの間に挟まれる。
【0004】
この状態で、ベース部材3をハウジング2に向けて押し込むことで、
図33に示されるように、ベース部材3の突起3Aが、フレキシブル基板1を間に挟んでコンタクト4の突起収容部4Cに挿入され、突起収容部4Cの内面がフレキシブル導体1Aに所定の接触力で接触し、これによりコンタクト4がフレキシブル導体1Aに電気的に接続される。
また、
図32に示されるように、ベース部材3に突出形成されたハウジング固定用ポスト3Bをハウジング2のポスト収容部2Bに圧入することで、ハウジング2とベース部材3が、互いに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたコネクタにウエアラブルデバイスを嵌合することにより、フレキシブル導体からなる電極にウエアラブルデバイスを接続することができる。
しかしながら、フレキシブル導体1Bがフレキシブル基板1の裏面上に露出している場合には、特許文献1のコネクタでは、フレキシブル導体1Bをコンタクト4に電気的に接続することができないという問題がある。
【0007】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、フレキシブル導体が接続対象物の表面および裏面のいずれに露出していても、コンタクトを接続対象物のフレキシブル導体に電気的に接続することができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るコネクタは、
嵌合軸に沿って延びる凹部を有する筒状の導電性のプラグコンタクトと、
凹部内に挿入され且つ屈曲されたワイヤスプリングからなる導電性のインナーコンタクトと
を備え、
インナーコンタクトは、嵌合軸に直交する方向に弾性変位可能で且つ凹部内でプラグコンタクトに接触する接点部と、嵌合軸に直交する方向に弾性変位可能で且つ凹部内に配置される押し付け部を有し、
少なくとも一方の面にフレキシブル導体が露出しているシート状の接続対象物の一部が、嵌合軸に直交する方向において押し付け部と凹部の内面との間に挟まれ、凹部の内面が接続対象物の表面に接触し、押し付け部が接続対象物の裏面に接触することにより、フレキシブル導体が接続対象物の表面に露出する場合は、プラグコンタクトが直接フレキシブル導体に電気的に接続され、フレキシブル導体が接続対象物の裏面に露出する場合は、プラグコンタクトがインナーコンタクトを介してフレキシブル導体に電気的に接続されるものである。
【0009】
インナーコンタクトは、
嵌合軸を横切るように延びる水平部と、
水平部の両端にそれぞれ第1屈曲部および第2屈曲部を介して連結され且つ互いに交差しながら嵌合軸に対して斜めに延びる第1斜行部および第2斜行部と、
第1斜行部の先端および第2斜行部の先端にそれぞれ第3屈曲部および第4屈曲部を介して連結され且つ嵌合軸を挟んで互いに対向しながら嵌合軸に沿って水平部から離れる方向に延びる第1伸長部および第2伸長部と
を有するように構成することができる。
【0010】
第1屈曲部および第2屈曲部が、それぞれ接点部を形成し、第3屈曲部および第4屈曲部が、それぞれ押し付け部を形成することが好ましい。
第1伸長部および第2伸長部は、互いに平行に延びている、あるいは、水平部から離れるほど互いに間隔が狭まるように嵌合軸に対して斜めに延びていることが好ましい。
また、第1伸長部は、第2伸長部から離れる方向に突出するように屈曲された第1突出部を有し、第2伸長部は、第1伸長部から離れる方向に突出するように屈曲された第2突出部を有し、第1屈曲部および第2屈曲部が、それぞれ接点部を形成し、第1突出部および第2突出部が、それぞれ押し付け部を形成するようにしてもよい。
さらに、第3屈曲部および第4屈曲部が、それぞれ接点部を形成し、第1屈曲部および第2屈曲部が、それぞれ押し付け部を形成することもできる。
【0011】
インナーコンタクトは、
嵌合軸を横切るように延びる水平部と、
水平部の一端に第1屈曲部を介して連結され且つ嵌合軸に沿って延びる第1伸長部と、
水平部の他端から嵌合軸に沿って延びる第2伸長部と、
第1伸長部の中間部において第2伸長部から離れる方向に突出するように屈曲された第1突出部と
を有するように構成することもできる。
この場合、第1屈曲部が、接点部を形成し、第1突出部が、押し付け部を形成することができる。
【0012】
プラグコンタクトは、筒状部と、筒状部の一端に形成されたフランジとを有し、凹部は、筒状部の内部からなることが好ましい。
【0013】
接続対象物とプラグコンタクトとインナーコンタクトを保持するための絶縁性のハウジングを備え、
ハウジングは、
プラグコンタクトの筒状部が貫通し且つフランジよりも小さいコンタクト用貫通孔が形成されたトップインシュレータと、
インナーコンタクトを保持するための保持部を有するボトムインシュレータと
を有し、
コンタクト用貫通孔にプラグコンタクトの筒状部を貫通させると共に接続対象物とフランジをトップインシュレータとボトムインシュレータとの間に挟むようにトップインシュレータがボトムインシュレータに固定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、プラグコンタクトの凹部内に挿入されるインナーコンタクトは、屈曲されたワイヤスプリングからなり、嵌合軸に直交する方向に弾性変位可能で且つ凹部内でプラグコンタクトに接触する接点部と、嵌合軸に直交する方向に弾性変位可能で且つ凹部内に配置される押し付け部を有し、接続対象物の一部が、嵌合軸に直交する方向において、押し付け部と凹部の内面との間に挟まれ、凹部の内面が接続対象物の表面に接触し、押し付け部が接続対象物の裏面に接触することにより、フレキシブル導体が接続対象物の表面に露出する場合は、プラグコンタクトが直接フレキシブル導体に電気的に接続され、フレキシブル導体が接続対象物の裏面に露出する場合は、プラグコンタクトがインナーコンタクトを介してフレキシブル導体に電気的に接続されるので、フレキシブル導体が接続対象物の裏面に露出していても、コンタクトを接続対象物のフレキシブル導体に電気的に接続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態1に係るコネクタを示す斜視図である。
【
図2】実施の形態1に係るコネクタの分解斜視図である。
【
図3】実施の形態1のコネクタに用いられるトップインシュレータを示す斜視図である。
【
図4】実施の形態1のコネクタに用いられるボトムインシュレータを示す斜視図である。
【
図6】実施の形態1のコネクタに用いられるプラグコンタクトを示す斜視図である。
【
図7】実施の形態1のコネクタに用いられるプラグコンタクトを示す断面図である。
【
図8】実施の形態1のコネクタに接続される接続対象物を示す断面図である。
【
図9】実施の形態1のコネクタに接続される接続対象物を斜め上方から見た斜視図である。
【
図10】実施の形態1のコネクタに接続される接続対象物を斜め下方から見た斜視図である。
【
図11】実施の形態1のコネクタに用いられる補強シートを示す斜視図である。
【
図12】実施の形態1のコネクタに用いられるインナーコンタクトを示す正面図である。
【
図13】実施の形態1のコネクタに用いられるインナーコンタクトを示す平面図である。
【
図14】ボトムインシュレータに保持された実施の形態1におけるインナーコンタクトを示す斜視図である。
【
図15】接続対象物に接続された実施の形態1のコネクタにおけるインナーコンタクトが挿入されたプラグコンタクト内の状態を示す部分断面図である。
【
図16】接続対象物に接続された実施の形態1のコネクタにおける突起が挿入されたプラグコンタクト内の状態を示す部分断面図である。
【
図17】実施の形態2におけるインナーコンタクトを示す正面図である。
【
図18】実施の形態3におけるインナーコンタクトを示す正面図である。
【
図19】実施の形態3におけるインナーコンタクトを示す平面図である。
【
図20】ボトムインシュレータに保持された実施の形態3におけるインナーコンタクトを示す斜視図である。
【
図21】実施の形態3におけるインナーコンタクトが挿入されたプラグコンタクト内の状態を示す部分断面図である。
【
図22】実施の形態4におけるインナーコンタクトを示す正面図である。
【
図23】実施の形態4におけるインナーコンタクトを示す平面図である。
【
図24】ボトムインシュレータに保持された実施の形態4におけるインナーコンタクトを示す斜視図である。
【
図25】実施の形態4におけるインナーコンタクトが挿入されたプラグコンタクト内の状態を示す部分断面図である。
【
図26】実施の形態5におけるインナーコンタクトを示す正面図である。
【
図27】実施の形態5におけるインナーコンタクトを示す平面図である。
【
図28】実施の形態5のコネクタに用いられるボトムインシュレータを示す斜視図である。
【
図30】ボトムインシュレータに保持された実施の形態5におけるインナーコンタクトを示す斜視図である。
【
図31】実施の形態5におけるインナーコンタクトが挿入されたプラグコンタクト内の状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、実施の形態1に係るコネクタ11を示す。コネクタ11は、例えば、ウエアラブルデバイスを嵌合するための衣服側コネクタとして使用されるもので、絶縁性材料からなるハウジング12を有している。ハウジング12には、4つのプラグコンタクト13が保持され、さらに、ハウジング12により、補強シート14とシート状導電部材15が互いに重ねられた状態で保持されている。シート状導電部材15は、コネクタ11が接続される接続対象物を構成している。
4つのプラグコンタクト13は、互いに平行な2列に配列された状態で、シート状導電部材15に対して垂直に突出するように配置されている。
【0017】
ここで、便宜上、補強シート14およびシート状導電部材15がXY面に沿って延び、4つのプラグコンタクト13の配列方向をY方向、4つのプラグコンタクト13がそれぞれ突出する方向を+Z方向と呼ぶことにする。Z方向は、コネクタ11が相手側コネクタと嵌合する嵌合方向となる。
【0018】
図2は、コネクタ11の分解斜視図である。コネクタ11は、トップインシュレータ16およびボトムインシュレータ17を有しており、これらトップインシュレータ16およびボトムインシュレータ17によりハウジング12が構成されている。
【0019】
トップインシュレータ16の-Z方向側に補強シート14が配置され、補強シート14の-Z方向側に4つのプラグコンタクト13が配置され、4つのプラグコンタクト13の-Z方向側にシート状導電部材15が配置されている。さらに、シート状導電部材15の-Z方向側に1つのインナーコンタクト18が配置され、インナーコンタクト18の-Z方向側にボトムインシュレータ17が配置されている。インナーコンタクト18は、4つのプラグコンタクト13のうち、-X方向側で且つ-Y方向側に位置する1つのプラグコンタクト13に対応している。
【0020】
図3に示されるように、トップインシュレータ16は、+Z方向に向かって開いている凹部16Aと、凹部16A内に形成された4つのコンタクト用貫通孔16Bを有している。凹部16Aは、図示しない相手側コネクタの一部が収容される相手側コネクタ収容部を構成するものであり、4つのコンタクト用貫通孔16Bは、4つのプラグコンタクト13に対応している。また、トップインシュレータ16の-Z方向を向いた面に、それぞれ-Z方向に突出する複数のボス16Cが形成されている。
【0021】
図4に示されるように、ボトムインシュレータ17は、平板部17Aを有し、平板部17Aに、それぞれ+Z方向に向かって開いている4つの円形の凹部17Bが形成されている。4つの凹部17Bは、4つのプラグコンタクト13に対応している。4つの凹部17Bのうち、-X方向側で且つ-Y方向側に位置する1つの凹部17Bには、+Z方向に突出する突起17Cが形成され、他の3つの凹部17Bには、それぞれ+Z方向に突出する3つの突起17Dが形成されている。
また、平板部17Aには、トップインシュレータ16の複数のボス16Cに対応する複数の貫通孔17Eが形成されている。
【0022】
図5に示されるように、ボトムインシュレータ17の-X方向側で且つ-Y方向側に位置する凹部17Bに形成された突起17Cは、Z方向に延びるほぼ正六角柱の形状を有している。突起17Cの+Y方向を向いた側面と-Y方向を向いた側面に、それぞれZ方向に延びる一対の溝17Fが形成され、これら一対の溝17Fにより、インナーコンタクト18を保持する保持部が形成されている。
他の3つの凹部17Bに形成されている突起17Dは、一対の溝17Fを有していない点を除いて、突起17Cと同様の構造を有している。
【0023】
4つのプラグコンタクト13は、それぞれ、金属等の導電性材料から形成され、トップインシュレータ16の凹部16Aに図示しない相手側コネクタの一部が収容された場合に、相手側コネクタの対応するコンタクトに接続されるものである。
図6に示されるように、プラグコンタクト13は、嵌合軸Cに沿ってZ方向に延びる円筒形状の筒状部13Aと、筒状部13Aの-Z方向端部からXY面に沿って延びるフランジ13Bを有している。また、
図7に示されるように、筒状部13Aの内部には、-Z方向に向かって開放された凹部13Cが形成されている。
【0024】
なお、4つのプラグコンタクト13のうち、-X方向側で且つ-Y方向側に位置する1つのプラグコンタクト13は、グランド電位に接続されてシールド端子として使用され、残る3つのプラグコンタクト13は、それぞれ、電気信号を伝送するための信号端子として使用される。
【0025】
図8に示されるように、シート状導電部材15は、絶縁性材料からなるシート本体15Aを有し、シート本体15Aの+Z方向を向いた表面上に、フレキシブル導体から形成された信号配線層15B、絶縁層15C、フレキシブル導体から形成されたシールド層15Dおよび絶縁層15Eが順次積層され、シート本体15Aの-Z方向を向いた裏面上に、フレキシブル導体から形成されたシールド層15Fおよび絶縁層15Gが順次積層された多層構造を有している。
【0026】
図9に示されるように、シート状導電部材15の+Z方向を向いた表面上に4つのプラグコンタクト13を配置するための4つのコンタクト配置領域15Hが区画されている。4つのコンタクト配置領域15Hのうち、-X方向側で且つ-Y方向側に位置する1つのコンタクト配置領域15Hは、シールド端子として使用されるプラグコンタクト13が配置される領域R1を形成し、残る3つのコンタクト配置領域15Hは、信号端子として使用されるプラグコンタクト13が配置される領域R2を形成している。
【0027】
シールド端子となるプラグコンタクト13が配置される領域R1においては、絶縁層15Eが除去されることにより、シールド層15Dが+Z方向に向けて露出している。信号端子となる3つのプラグコンタクト13が配置される領域R2においては、それぞれ、絶縁層15E、シールド層15Dおよび絶縁層15Cが除去されることにより、信号配線層15Bが+Z方向に向けて露出している。領域R1およびR2以外の領域には、絶縁層15Eが露出している。
また、すべての領域R1、R2において、シート状導電部材15をZ方向に貫通する複数の切り込み15Jが形成されている。
【0028】
切り込み15Jは、シート状導電部材15をZ方向に貫通しているので、
図10に示されるように、シート状導電部材15の-Z方向を向いた裏面にも、1つの領域R1および3つの領域R2に対応する位置に、それそれ、切り込み15Jが見えている。
シート状導電部材15の-Z方向を向いた裏面においては、領域R1に対応する位置にのみ、絶縁層15Gが除去されることにより、シールド層15Fが露出し、それ以外の領域には、絶縁層15Gが露出している。
また、シート状導電部材15の周縁部には、トップインシュレータ16の複数のボス16Cに対応する複数の貫通孔15Kが形成されている。
【0029】
図11に示されるように、補強シート14は、コネクタ11が実装される図示しない衣服等の実装対象物を補強するためのもので、絶縁性材料からなり、中央に形成された開口部14Aを有している。さらに、補強シート14の開口部14Aの周縁に沿って,トップインシュレータ16の複数のボス16Cに対応する複数の切り欠き14Bが形成されている。
【0030】
図12および
図13にインナーコンタクト18の構成を示す。インナーコンタクト18は、金属等の導電性材料により形成され且つ屈曲されたワイヤスプリングからなり、嵌合軸Cを横切るようにY方向に延び且つ両端がそれぞれ-Z方向に向かって湾曲する水平部18Aを有している。
【0031】
水平部18Aの-Y方向端部および+Y方向端部にそれぞれ第1屈曲部18Bおよび第2屈曲部18Cを介して第1斜行部18Dおよび第2斜行部18Eが連結されている。第1斜行部18Dは、第1屈曲部18Bから+Y方向で且つ-Z方向に向かって直線状に延び、第2斜行部18Eは、第2屈曲部18Cから-Y方向で且つ-Z方向に向かって直線状に延びており、これら第1斜行部18Dおよび第2斜行部18Eは、互いに交差しながら嵌合軸Cに対して斜めに延びている。
【0032】
さらに、第1斜行部18Dの先端および第2斜行部18Eの先端にそれぞれ第3屈曲部18Fおよび第4屈曲部18Gを介して第1伸長部18Hおよび第2伸長部18Jが連結されている。第1伸長部18Hおよび第2伸長部18Jは、嵌合軸Cを挟んで互いにY方向に対向し、-Z方向に向かうほどY方向の間隔が狭まるように嵌合軸Cに対して斜めに延びている。
【0033】
第1屈曲部18Bおよび第2屈曲部18Cの互いに反対方向を向いた外面により一対の接点部P1が形成され、第3屈曲部18Fおよび第4屈曲部18Gの互いに反対方向を向いた外面により一対の押し付け部P2が形成されている。
【0034】
一対の接点部P1のY方向の間隔は、インナーコンタクト18がプラグコンタクト13の凹部13C内に挿入された場合に一対の接点部P1が接触する部分の凹部13Cの内径よりもわずかに大きく設定されている。
このため、インナーコンタクト18をプラグコンタクト13の凹部13C内に挿入すると、一対の接点部P1は、嵌合軸Cに向かう方向に弾性変位しつつ、所定の接触圧で凹部13Cの内面に接触する。
【0035】
また、一対の押し付け部P2のY方向の間隔は、インナーコンタクト18がプラグコンタクト13の凹部13C内に挿入された場合に一対の押し付け部P2が接触する部分の凹部13Cの内径からシート状導電部材15の厚さの2倍を減じた値よりもわずかに大きく設定されている。
このため、シート状導電部材15を押し込みながらインナーコンタクト18をプラグコンタクト13の凹部13C内に挿入すると、一対の押し付け部P2は、嵌合軸Cに向かう方向に弾性変位し、シート状導電部材15を所定の接触圧で凹部13Cの内面に押し付けることとなる。
【0036】
図14に示されるように、インナーコンタクト18は、第1伸長部18Hおよび第2伸長部18Jを、ボトムインシュレータ17の突起17Cの一対の溝17Fに挿入することにより、ボトムインシュレータ17に保持される。
【0037】
トップインシュレータ16の4つのコンタクト用貫通孔16Bと、4つのプラグコンタクト13と、シート状導電部材15の4つのコンタクト配置領域15Hと、ボトムインシュレータ17の4つの凹部17Bは、互いにZ方向に整列する位置に配置されている。
インナーコンタクト18は、シート状導電部材15の4つのコンタクト配置領域15Hのうち、領域R1を形成する、-X方向側で且つ-Y方向側に位置するコンタクト配置領域15Hと、ボトムインシュレータ17の4つの凹部17Bのうち、突起17Cが形成されている、-X方向側で且つ-Y方向側に位置する凹部17Bに対して、Z方向に整列する位置に配置されている。
【0038】
また、トップインシュレータ16の複数のボス16Cと、補強シート14の複数の切り欠き14Bと、シート状導電部材15の複数の貫通孔15Kと、ボトムインシュレータ17の複数の貫通孔17Eは、互いにZ方向に整列する位置に配置されている。
【0039】
コネクタ11を組み立てる際には、まず、
図14に示されるように、インナーコンタクト18の第1伸長部18Hおよび第2伸長部18Jを、ボトムインシュレータ17の突起17Cの一対の溝17Fに挿入することにより、インナーコンタクト18がボトムインシュレータ17に保持される。
【0040】
次に、トップインシュレータ16の複数のボス16Cが補強シート14の複数の切り欠き14Bに挿入される。このとき、トップインシュレータ16の4つのコンタクト用貫通孔16Bは、補強シート14の開口部14A内に位置している。
さらに、トップインシュレータ16の4つのコンタクト用貫通孔16Bにそれぞれ対応するプラグコンタクト13の筒状部13Aが-Z方向から挿入され、シート状導電部材15を間に挟んで、ボトムインシュレータ17がトップインシュレータ16に向けて+Z方向に押し付けられる。
【0041】
このとき、それぞれのプラグコンタクト13のフランジ13Bが、シート状導電部材15の対応するコンタクト配置領域15Aの上に位置し、ボトムインシュレータ17の突起17Cに保持されているインナーコンタクト18がシート状導電部材15の領域R1を押し込みながら、対応するプラグコンタクト13の凹部13Cに挿入され、また、ボトムインシュレータ17の3つの突起17Dが、それぞれシート状導電部材15の領域R2を押し込みながら、対応するプラグコンタクト13の凹部13Cに挿入される。
【0042】
なお、シート状導電部材15の4つのコンタクト配置領域15Aには、それぞれ、複数の切り込み15Jが形成されているため、インナーコンタクト18および3つの突起17Dは、それぞれ、対応するコンタクト配置領域15Aの複数の切り込み15Jを開きつつプラグコンタクト13の凹部13Cに挿入される。
【0043】
また、ボトムインシュレータ17をトップインシュレータ16に押し付けることにより、トップインシュレータ16の複数のボス16Cが、補強シート14の複数の切り欠き14B、シート状導電部材15の複数の貫通孔15Kおよびボトムインシュレータ17の複数の貫通孔17Eを順次貫通する。そして、ボトムインシュレータ17の-Z方向側に突出する複数のボス16Cの先端を熱変形させることにより、トップインシュレータ16とボトムインシュレータ17が互いに固定され、コネクタ11の組み立てが完了する。
【0044】
なお、それぞれのプラグコンタクト13は、フランジ13Bがトップインシュレータ16とボトムインシュレータ17の間に挟まれることによりトップインシュレータ16およびボトムインシュレータ17に固定されている。
【0045】
図15に示されるように、シールド端子として使用されるプラグコンタクト13においては、インナーコンタクト18がシート状導電部材15の領域R1を押し込みながらプラグコンタクト13の凹部13Cに挿入される。これにより、インナーコンタクト18の一対の接点部P1がプラグコンタクト13の凹部13Cの内面に押し付けられ、インナーコンタクト18がプラグコンタクト13に電気的に接続される。
また、インナーコンタクト18によりプラグコンタクト13の凹部13C内に押し込まれたシート状導電部材15は、インナーコンタクト18の一対の押し付け部P2により、プラグコンタクト13の凹部13Cの内面に向けて押し付けられる。
【0046】
ここで、
図9および
図10に示されるように、シールド端子として使用されるプラグコンタクト13が配置されるシート状導電部材15の表面の領域R1にはシールド層15Dが露出し、シート状導電部材15の裏面には、領域R1に対応する位置にシールド層15Fが露出している。
従って、シート状導電部材15の表面のシールド層15Dがプラグコンタクト13の凹部13CのY方向を向いた内面に所定の接触圧で接触し、また、シート状導電部材15の裏面のシールド層15Fがインナーコンタクト18の押し付け部P2に所定の接触圧で接触する。
【0047】
これにより、シート状導電部材15の表面に露出しているシールド層15Dは、直接プラグコンタクト13に電気的に接続され、シート状導電部材15の裏面に露出しているシールド層15Fは、インナーコンタクト18を介してプラグコンタクト13に電気的に接続される。すなわち、シールド層15Dおよび15Fの双方が、シールド端子として使用されるプラグコンタクト13に接続されることとなる。
【0048】
また、このとき、
図5に示されるように、インナーコンタクト18が保持されているボトムインシュレータ17の突起17Cは、Z方向に延びるほぼ正六角柱の形状を有しているので、正六角柱の角部の側面とプラグコンタクト13の凹部13Cの内面との間にもシート状導電部材15が挟まれる。このため、シート状導電部材15の表面に露出しているシールド層15Dは、インナーコンタクト18の一対の押し付け部P2によりプラグコンタクト13の凹部13Cの内面に押し付けられるだけでなく、突起17Cの角部の側面によってもプラグコンタクト13の凹部13Cの内面に所定の接触圧で接触し、プラグコンタクト13に電気的に接続される。
なお、突起17Cは、ほぼ正六角柱の形状に限るものではなく、例えば、円柱形状とすることもできる。
【0049】
このように、コネクタ11によれば、インナーコンタクト18を用いることにより、シート状導電部材15の表面側に配置されたシールド層15Dと裏面側に配置されたシールド層15Fの双方を、領域R1に配置された1つのプラグコンタクト13に電気的に接続することが可能となる。
【0050】
一方、シート状導電部材15の表面上に区画された4つのコンタクト配置領域15Aのうち、信号端子として使用される3つのプラグコンタクト13が配置される3つの領域R2においては、
図16に示されるように、ボトムインシュレータ17の突起17Dが、シート状導電部材15の領域R2を押し込みながら、プラグコンタクト13の凹部13Cに挿入される。ここで、シート状導電部材15の表面の領域R2には、
図9に示されるように、信号配線層15Bが露出しているため、突起17Dの側面とプラグコンタクト13の凹部13Cの内面との間にシート状導電部材15が挟まれ、信号配線層15Bがプラグコンタクト13の凹部13Cの内面に所定の接触圧で接触して、領域R2に配置されたプラグコンタクト13に電気的に接続される。
【0051】
なお、信号配線層15Bには所定のパターニングが施されており、3つの領域R2に配置される3つのプラグコンタクト13に、それぞれ信号配線層15Bから形成され且つ互いに絶縁された3つの配線が接続されている。
図8に示されるように、信号配線層15Bは、シート状導電部材15の表面側に配置されたシールド層15Dおよび裏面側に配置されたシールド層15Fから絶縁された状態でこれらシールド層15Dおよび15Fの間に積層されているため、領域R1に配置され且つシールド層15Dおよびシールド層15Fに接続されたプラグコンタクト13をグランド電位に接続することで、信号配線層15Bに対するシールド効果が発揮され、電磁波等による外乱の影響を抑制した高精度の信号伝送を行うことが可能となる。
【0052】
実施の形態1のコネクタ11では、ボトムインシュレータ17とトップインシュレータ16との間に補強シート14が配置されているが、コネクタ11が取り付けられる衣服等の実装対象物を補強する必要がない場合には、補強シート14を省略することができる。
【0053】
実施の形態2
図17に、実施の形態2に係るコネクタで用いられるインナーコンタクト28を示す。このインナーコンタクト28は、実施の形態1で用いられ且つ
図12に示されるインナーコンタクト18において、嵌合軸Cに対して斜めに延びている第1伸長部18Hおよび第2伸長部18Jの代わりに、嵌合軸Cに沿って互いに平行に延びる第1伸長部28Hおよび第2伸長部28Jを有するものであり、その他の構成はインナーコンタクト18と同様である。
【0054】
すなわち、インナーコンタクト28は、水平部18Aと、水平部18Aの-Y方向端部および+Y方向端部にそれぞれ第1屈曲部18Bおよび第2屈曲部18Cを介して連結された第1斜行部18Dおよび第2斜行部18Eを有し、第1斜行部18Dの先端および第2斜行部18Eの先端にそれぞれ第3屈曲部18Fおよび第4屈曲部18Gを介して第1伸長部28Hおよび第2伸長部28Jが連結されている。インナーコンタクト18と同様に、第1屈曲部18Bおよび第2屈曲部18Cの互いに反対方向を向いた外面により一対の接点部P1が形成され、第3屈曲部18Fおよび第4屈曲部18Gの互いに反対方向を向いた外面により一対の押し付け部P2が形成されている。
【0055】
このインナーコンタクト28も、実施の形態1におけるインナーコンタクト18と同様に、
図5に示される突起17Cの一対の溝17Fに第1伸長部28Hおよび第2伸長部28Jを挿入することにより、ボトムインシュレータ17に保持することができる。
実施の形態1に係るコネクタ11において、インナーコンタクト18の代わりに
図17に示されるインナーコンタクト28を用いても、同様にして、シート状導電部材15の表面側に配置されたシールド層15Dと裏面側に配置されたシールド層15Fの双方を、領域R1に配置された1つのプラグコンタクト13に電気的に接続することが可能となる。
【0056】
実施の形態3
図18および
図19に、実施の形態3に係るコネクタで用いられるインナーコンタクト38を示す。このインナーコンタクト38は、実施の形態1で用いられ且つ
図12に示されるインナーコンタクト18において、嵌合軸Cに対して斜めに延びている第1伸長部18Hおよび第2伸長部18Jの代わりに、嵌合軸Cに沿って延びる第1伸長部38Hおよび第2伸長部38Jと、第1伸長部38Hの中間部において第2伸長部38Jから離れる方向に突出するように屈曲された第1突出部38Kと、第2伸長部38Jの中間部において第1伸長部38Hから離れる方向に突出するように屈曲された第2突出部38Lを有するものであり、その他の構成はインナーコンタクト18と同様である。
【0057】
すなわち、インナーコンタクト38は、水平部18Aと、水平部18Aの-Y方向端部および+Y方向端部にそれぞれ第1屈曲部18Bおよび第2屈曲部18Cを介して連結された第1斜行部18Dおよび第2斜行部18Eを有し、第1斜行部18Dの先端および第2斜行部18Eの先端にそれぞれ第3屈曲部18Fおよび第4屈曲部18Gを介して第1伸長部38Hおよび第2伸長部38Jが連結され、さらに、第1伸長部38Hおよび第2伸長部38Jの中間部にそれぞれ第1突出部38Kおよび第2突出部38Lが形成されている。
【0058】
インナーコンタクト38においては、第1屈曲部18Bおよび第2屈曲部18Cの互いに反対方向を向いた外面により一対の接点部P1が形成され、第1突出部38Kおよび第2突出部38Lの互いに反対方向を向いた外面により一対の押し付け部P2が形成されている。
【0059】
このインナーコンタクト38も、実施の形態1におけるインナーコンタクト18と同様に、
図20に示されるように、突起17Cの一対の溝17Fに第1伸長部38Hおよび第2伸長部38Jを挿入することにより、ボトムインシュレータ17に保持することができる。
【0060】
インナーコンタクト38がプラグコンタクト13の凹部13C内に挿入されると、
図21に示されるように、インナーコンタクト38の一対の接点部P1がプラグコンタクト13の凹部13Cの内面に押し付けられることにより、インナーコンタクト38がプラグコンタクト13に電気的に接続される。また、第1突出部38Kおよび第2突出部38Lに形成されている一対の押し付け部P2が、それぞれプラグコンタクト13の凹部13Cの内面に対向する状態となる。
【0061】
図21では、シート状導電部材15の図示が省略されているが、インナーコンタクト38がシート状導電部材15の領域R1を押し込みながら、対応するプラグコンタクト13の凹部13Cに挿入されると、凹部13C内に押し込まれたシート状導電部材15は、インナーコンタクト38の一対の押し付け部P2により、プラグコンタクト13の凹部13Cの内面に向けて押し付けられる。
【0062】
従って、実施の形態1に係るコネクタ11において、インナーコンタクト18の代わりに
図18および
図19に示されるインナーコンタクト38を用いても、同様にして、シート状導電部材15の表面側に配置されたシールド層15Dと裏面側に配置されたシールド層15Fの双方を、領域R1に配置された1つのプラグコンタクト13に電気的に接続することが可能となる。
【0063】
実施の形態4
図22および
図23に、実施の形態4に係るコネクタで用いられるインナーコンタクト48を示す。このインナーコンタクト48は、金属等の導電性材料により形成され且つ屈曲されたワイヤスプリングからなり、嵌合軸Cを横切るようにY方向に延び且つ両端がそれぞれ-Z方向に向かって湾曲する水平部48Aを有している。
【0064】
水平部48Aの+Y方向端部に第1屈曲部48Bを介して、嵌合軸Cに沿って延びる第1伸長部48Cが連結され、第1伸長部48Cの中間部に第1突出部48Dが形成されている。また、水平部48Aの-Y方向端部に第2伸長部48Eが連結され、第2伸長部48Eの先端に第2屈曲部48Fを介して第3伸長部48Gが連結されている。
第1突出部48Dは、第2伸長部48Eから離れるように+Y方向に突出している。
また、第2伸長部48Eは、-Z方向に向かうほど第1伸長部48Cから離れるように嵌合軸Cに対してわずかに傾斜しており、第3伸長部48Gは、-Z方向に向かうほど第1伸長部48Cに近づくように嵌合軸Cに対してわずかに傾斜している。
【0065】
第1屈曲部48Bの+Y方向を向いた外面により1つの接点部P1が形成され、第1突出部48Dの+Y方向を向いた外面により1つの押し付け部P2が形成されている。このように、インナーコンタクト48は、実施の形態1~3におけるインナーコンタクト18、28、38と相違して、互いに交差する部分を有しておらず、ただ一つの接点部P1とただ1つの押し付け部P2を有している。
【0066】
このインナーコンタクト48も、実施の形態1におけるインナーコンタクト18と同様に、
図24に示されるように、突起17Cの一対の溝17Fに第1伸長部48Cおよび第3伸長部48Gを挿入することにより、ボトムインシュレータ17に保持することができる。
【0067】
インナーコンタクト48がプラグコンタクト13の凹部13C内に挿入されると、
図25に示されるように、第1屈曲部48Bに形成されている1つの接点部P1がプラグコンタクト13の凹部13Cの+Y方向側の内面に接触し、インナーコンタクト48がプラグコンタクト13に電気的に接続される。また、第1突出部48Dに形成されている1つの押し付け部P2が、プラグコンタクト13の凹部13Cの+Y方向側の内面に対向する状態となる。
【0068】
図25では、シート状導電部材15の図示が省略されているが、インナーコンタクト48がシート状導電部材15の領域R1を押し込みながら、対応するプラグコンタクト13の凹部13Cに挿入されると、凹部13C内に押し込まれたシート状導電部材15は、インナーコンタクト48の押し付け部P2により、プラグコンタクト13の凹部13Cの内面に向けて押し付けられる。
【0069】
従って、実施の形態1に係るコネクタ11において、インナーコンタクト18の代わりに
図22および
図23に示されるインナーコンタクト48を用いても、同様にして、シート状導電部材15の表面側に配置されたシールド層15Dと裏面側に配置されたシールド層15Fの双方を、領域R1に配置された1つのプラグコンタクト13に電気的に接続することが可能となる。
【0070】
実施の形態5
図26および
図27に、実施の形態5に係るコネクタで用いられるインナーコンタクト58を示す。このインナーコンタクト58は、実施の形態1で用いられ且つ
図12に示されるインナーコンタクト18に類似した形状を有するものの、インナーコンタクト18に対して上下逆さの姿勢を有している。
【0071】
すなわち、インナーコンタクト58は、インナーコンタクト58の-Z方向端部に配置された水平部58Aを有している。水平部58Aは、嵌合軸Cを横切るようにY方向に延び且つ両端がそれぞれ+Z方向に向かって湾曲しており、水平部58Aの-Y方向端部および+Y方向端部にそれぞれ第1屈曲部58Bおよび第2屈曲部58Cを介して第1斜行部58Dおよび第2斜行部58Eが連結されている。第1斜行部58Dは、第1屈曲部58Bから+Y方向で且つ+Z方向に向かって直線状に延び、第2斜行部58Eは、第2屈曲部58Cから-Y方向で且つ+Z方向に向かって直線状に延びており、これら第1斜行部58Dおよび第2斜行部58Eは、互いに交差しながら嵌合軸Cに対して斜めに延びている。
【0072】
さらに、第1斜行部58Dの先端および第2斜行部58Eの先端にそれぞれ第3屈曲部58Fおよび第4屈曲部58Gを介して第1伸長部58Hおよび第2伸長部58Jが連結されている。第1伸長部58Hおよび第2伸長部58Jは、嵌合軸Cを挟んで互いにY方向に対向し、+Z方向に向かうほどY方向の間隔が狭まるように嵌合軸Cに対して斜めに延びており、+Z方向に向かって互いに開放されている。
【0073】
第3屈曲部58Fおよび第4屈曲部58Gの互いに反対方向を向いた外面により一対の接点部P1が形成され、第1屈曲部58Bおよび第2屈曲部58Cの互いに反対方向を向いた外面により一対の押し付け部P2が形成されている。
【0074】
実施の形態5に係るコネクタで用いられるボトムインシュレータ57を
図28に示す。ボトムインシュレータ57は、実施の形態1で用いられ且つ
図4に示されるボトムインシュレータ17において、突起17Cの代わりに突起57Cを有するものであり、その他の構成はボトムインシュレータ17と同様である。
すなわち、ボトムインシュレータ57は、4つの円形の凹部17Bが形成された平板部17Aを有し、4つの凹部17Bのうち、-X方向側で且つ-Y方向側に位置する1つの凹部17Bに、+Z方向に突出する突起57Cが形成され、他の3つの凹部17Bには、それぞれ+Z方向に突出する3つの突起17Dが形成されている。
【0075】
突起57Cは、
図29に示されるように、Z方向に延びるほぼ正六角柱の形状を有し、突起57CをY方向に横切る溝57Fが形成され、この溝57Fにより、インナーコンタクト58を保持する保持部が形成されている。
図30に示されるように、突起57Cの溝57Fに水平部58Aと第1屈曲部58Bおよび第2屈曲部58Cを挿入することにより、インナーコンタクト58をボトムインシュレータ57に保持することができる。
【0076】
インナーコンタクト58がプラグコンタクト13の凹部13C内に挿入されると、
図31に示されるように、インナーコンタクト58の一対の接点部P1がプラグコンタクト13の凹部13Cの内面に押し付けられることにより、インナーコンタクト58がプラグコンタクト13に電気的に接続される。また、インナーコンタクト58の一対の押し付け部P2が、それぞれプラグコンタクト13の凹部13Cの内面に対向する状態となる。
【0077】
図31では、シート状導電部材15の図示が省略されているが、インナーコンタクト58がシート状導電部材15の領域R1を押し込みながら、対応するプラグコンタクト13の凹部13Cに挿入されると、凹部13C内に押し込まれたシート状導電部材15は、インナーコンタクト58の一対の押し付け部P2により、プラグコンタクト13の凹部13Cの内面に向けて押し付けられる。
【0078】
従って、実施の形態1に係るコネクタ11において、ボトムインシュレータ17およびインナーコンタクト18の代わりに
図28に示されるボトムインシュレータ57と
図26および
図27に示されるインナーコンタクト58を用いても、同様にして、シート状導電部材15の表面側に配置されたシールド層15Dと裏面側に配置されたシールド層15Fの双方を、領域R1に配置された1つのプラグコンタクト13に電気的に接続することが可能となる。
【0079】
実施の形態5におけるインナーコンタクト58は、+Z方向に向かって互いに開放されている第1伸長部58Hおよび第2伸長部58Jに連結された第3屈曲部58Fおよび第4屈曲部58Gに一対の接点部P1が形成されているため、インナーコンタクト58の作製時の寸法公差がばらついた場合であっても、プラグコンタクト13の凹部13Cの内面に対する一対の接点部P1の接触力の変動が少なくて済む。
【0080】
上記の実施の形態1~5で用いられるインナーコンタクト18、28、38、48、58は、例えば金属ワイヤをフォーミング加工することにより、複雑な製造装置を要することなく、容易に且つ安価に作製することができる。
また、接続対象物となるシート状導電部材15の厚さが異なる場合においても、フォーミング加工を調整するだけで、シート状導電部材15に対応し得るインナーコンタクト18、28、38、48、58を容易に得ることが可能となる。
【0081】
なお、上記の実施の形態1~5では、シート状導電部材15の領域R1に配置されたプラグコンタクト13が、シート状導電部材15の表面側に露出しているシールド層15Dとシート状導電部材15の裏面側に露出しているシールド層15Fの双方に接続されているが、例えば、シート状導電部材15の裏面側に露出しているシールド層15Fのみを領域R1に配置されたプラグコンタクト13に接続することもできる。
【0082】
上記の実施の形態1~5において用いられるシート状導電部材15は、
図8に示される多層構造を有しているが、これに限るものではなく、シート本体の少なくとも一方の面側に配置されたフレキシブル導体を有するものであればよい。
また、上記の実施の形態1~5では、シート状導電部材15のシールド層15Dおよびシールド層15Fからなる2層の導電層が、シールド端子として使用される1つのプラグコンタクト13に接続されるが、これに限るものではなく、3層以上の導電層を1つのプラグコンタクト13に接続することもできる。
【0083】
また、上記の実施の形態1~5に係るコネクタ11は、シールド端子として使用されるコンタクトと信号端子として使用されるコンタクトを含む4つのプラグコンタクト13を有しているが、プラグコンタクト13の個数に限定されるものではなく、少なくとも、シート状導電部材15のシート本体の表面側または裏面側に配置されたフレキシブル導体に電気的に接続される1つのプラグコンタクト13を有していればよい。
【符号の説明】
【0084】
1 フレキシブル基板、1A フレキシブル導体、2 ハウジング、2A コンタクト用貫通孔、2B ポスト収容部、3 ベース部材、3A 突起、3B ハウジング固定用ポスト、4 コンタクト、4A 筒状部、4B フランジ、4C 突起収容部、11 コネクタ、12 ハウジング、13 プラグコンタクト、13A 筒状部、13B 第1フランジ、13C 凹部、14 補強シート、14A 開口部、14B 切り欠き、15 シート状導電部材、15A シート本体、15B 信号配線層、15C,15E,15G 絶縁層、15D,15F シールド層、15H コンタクト配置領域、15J 切り込み、15K 貫通孔、16 トップインシュレータ、16A 凹部、16B コンタクト用貫通孔、16C ボス、17 ボトムインシュレータ、17A 平板部、17B 凹部、17C,17D,57C 突起、17E 貫通孔、17F,57F 溝、18,28,38,48,58 インナーコンタクト、18A,48A,58A 水平部、18B,48B,58B 第1屈曲部、18C,48F,58C 第2屈曲部、18D,58D 第1斜行部、18E,58E 第2斜行部、18F,58F 第3屈曲部、18G,58G 第4屈曲部、18H,28H,38H,48C,58H 第1伸長部、18J,28J,38J,48E,58J 第2伸長部、38K,48D 第1突出部、38L 第2突出部、48G 第3伸長部、C 嵌合軸、R1,R2 領域、P1 接点部、P2 押し付け部。