(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021648
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】減圧弁
(51)【国際特許分類】
F16K 17/18 20060101AFI20240208BHJP
G05D 16/06 20060101ALI20240208BHJP
F16K 31/365 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F16K17/18
G05D16/06 C
F16K31/365
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124637
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】山口 賢二
【テーマコード(参考)】
3H056
3H060
5H316
【Fターム(参考)】
3H056AA01
3H056BB32
3H056CA07
3H056CB03
3H056CB06
3H060AA05
3H060BB10
3H060CC22
3H060DC05
3H060DC12
3H060DD04
5H316DD02
5H316DD11
5H316EE02
5H316EE10
5H316EE18
5H316FF02
5H316JJ01
(57)【要約】
【課題】小型化を促進できる減圧弁を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の減圧弁(1)は、一次圧の流体の圧力を、二次圧に減圧する減圧弁であって、前記流体が流入する流入口(2d)と、前記流体が流出する流出口(2e)と、を有する筐体(2)と、前記流入口と前記流出口をつなぐ流路(15)を開閉可能に移動するピントル(4)と、前記ピントルを前記流路が開く方向に押圧するダイヤフラム(8)と、内壁を摺動移動して、前記ダイヤフラムを押圧するピストン(10)と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次圧の流体の圧力を、二次圧に減圧する減圧弁であって、
前記流体が流入する流入口と、前記流体が流出する流出口と、を有する筐体と、
前記流入口と前記流出口をつなぐ流路を開閉可能に移動するピントルと、
前記ピントルを前記流路が開く方向に押圧するダイヤフラムと、
内壁を摺動移動して、前記ダイヤフラムを押圧するピストンと、を有することを特徴とする減圧弁。
【請求項2】
前記ダイヤフラムの外周縁部は、固定支持されており、
前記ダイヤフラムは、前記外周縁部よりも内側であって、前記ピストンと直接又は間接的に接する第1の面と、前記ピントルと直接又は間接的に接する第2の面と、を有することを特徴とする請求項1に記載の減圧弁。
【請求項3】
前記第1の面には、前記外周縁部よりも内側に環状凸部が形成されており、前記環状凸部の内側に、前記ピストンが直接又は間接的に接し、
前記第2の面には、前記外周縁部よりも内側に環状凹部が形成されており、前記環状凹部の内側に、前記ピントルが直接又は間接的に接する、ことを特徴とする請求項2に記載の減圧弁。
【請求項4】
前記ピストンは、前記ダイヤフラムの前記第1の面を押圧する押圧面を備えた押圧部と、前記押圧部と一体となり前記内壁に接する摺動面を備えた摺動部と、を有する、ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の減圧弁。
【請求項5】
前記ピントルは、前記ダイヤフラムの第2の面に、ピントル受けシートを介して間接的に接することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の減圧弁。
【請求項6】
前記筐体は、開口部を備え、
前記開口部の一方向から、前記ピントル、前記ダイヤフラム、及び、前記ピストンの順に組み立てられる、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の減圧弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
減圧弁は、一次圧の流体の圧力を、二次圧に減圧する機能を有し、特許文献1から特許文献3に示すように、ダイヤフラムを用いた構造では、ダイヤフラムを変形させ、ダイヤフラムの上下の圧力をつり合わせて圧力調整を行う。
【0003】
特許文献1から特許文献3に示すように、ダイヤフラムの上側には、調圧スプリングを介して調圧ネジが設けられ、ダイヤフラムの下側には、流体の流入口と流出口との間をつなぐ流路を開閉可能なピントルが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-205992号公報
【特許文献2】特開2013-196399号公報
【特許文献3】特開2013-97712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1から特許文献3のいずれの構成においても、ダイヤフラムの中央には、穴が設けられ、その穴を通して、センターピースが配置されている。したがって、ダイヤフラムの変形とともに、センターピースが上下方向に移動する。センターピースは、ダイヤフラムを下面側から受ける基台と、基台の中心から上方に突き出す凸部とを備え、凸部は、ダイヤフラムの穴を通してダイヤフラムの上面から上方に突出した形状とされる。例えば、特許文献1を例にとると、凸部は、特許文献1の上側凸部31に該当し、基台は、特許文献1のダイヤフラム支承部32に該当する。
【0006】
ところで、既存の減圧弁は、大型化しており、小型化のニーズに適切に対応できない問題があった。例えば、減圧弁を酸素濃縮器に用いる場合、流量が小さく、小型化の要求があった。
【0007】
しかしながら、既存の減圧弁では、特許文献1から特許文献3に記載のように、ダイヤフラムの中央に穴を設け、この穴にセンターピースを通す形態であるため、構造的に小型化が困難であった。すなわち、部品点数が増えること、更には、センターピースは高さ方向に突き出す比較的大きな部品であるため、ダイヤフラム近辺の構造が複雑化し、大型化する傾向にあった。このため、既存の減圧弁の構造では、小型化に支障をきたした。
【0008】
そこで、本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、小型化を促進できる減圧弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における減圧弁は、一次圧の流体の圧力を、二次圧に減圧する減圧弁であって、前記流体が流入する流入口と、前記流体が流出する流出口と、を有する筐体と、前記流入口と前記流出口をつなぐ流路を開閉可能に移動するピントルと、前記ピントルを前記流路が開く方向に押圧するダイヤフラムと、内壁を摺動移動して、前記ダイヤフラムを押圧するピストンと、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の減圧弁の一態様は、前記ダイヤフラムの外周縁部は、固定支持されており、前記ダイヤフラムは、前記外周縁部よりも内側であって、前記ピストンと直接又は間接的に接する第1の面と、前記ピントルと直接又は間接的に接する第2の面と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の減圧弁の一態様は、前記第1の面には、前記外周縁部よりも内側に環状凸部が形成されており、前記環状凸部の内側に、前記ピストンが直接又は間接的に接し、前記第2の面には、前記外周縁部よりも内側に環状凹部が形成されており、前記環状凹部の内側に、前記ピントルが直接又は間接的に接する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の減圧弁の一態様は、前記ピストンは、前記ダイヤフラムの前記第1の面を押圧する押圧面を備えた押圧部と、前記押圧部と一体となり前記内壁に接する摺動面を備えた摺動部と、を有する、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の減圧弁の一態様は、前記ピントルは、前記ダイヤフラムの第2の面に、ピントル受けシートを介して間接的に接することを特徴とする。
【0014】
本発明の減圧弁の一態様は、前記筐体は、開口部を備え、前記開口部の一方向から、前記ピントル、前記ダイヤフラム、及び、前記ピストンの順に組み立てられる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の減圧弁によれば、センターピースをなくし、ダイヤフラムを含む周辺の構造を簡素化でき、小型化を促進できる。これにより、本発明の減圧弁を、酸素濃縮器などの用途に効果的に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施の形態における減圧弁の断面図である。
【
図2】本実施の形態における減圧弁の分解斜視図である。
【
図3】本実施の形態における減圧弁の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0018】
<本実施の形態の減圧弁1の概要>
図1は、本実施の形態における減圧弁1の断面図であり、
図2は、本実施の形態における減圧弁1の分解斜視図であり、
図3は、本実施の形態における減圧弁1の斜視図(完成図)である。
【0019】
図1及び
図2に示すように、本実施の形態の減圧弁1は、筐体2、主弁スプリング3、ピントル4、各Oリング5a、5b、5c、ブッシュ6、ピントル受けシート7、ダイヤフラム8、ワッシャ9、ピストン10、調圧スプリング11、ボンネット12、調圧ネジ13、及び、ナット14を有して構成される。
【0020】
以下、主要部品について説明する。各図におけるX1-X2方向及びY1-Y2方向は、平面内にて直交する2方向を指し、Z1-Z2方向は、X1-X2方向及びY1-Y2方向に直交する高さ方向を指す。Z1方向は、上方向を示し、Z2方向は、下方向を示す。
【0021】
[筐体2]
図1から
図3に示すように、筐体2は、底面2aと、底面2aを囲む側壁面2bとを備えており、筐体2の内部には、上面側が開口した収納空間2cが形成されている。側壁面2bには、収納空間2cに通じる流入口2dと、流出口2eとが形成されている。流入口2dと流出口2eは、例えば、X1-X2方向に対向して配置される。また、側壁面2bのY1-Y2方向の両側には、取り付け部2fが外部に突出して設けられている。取り付け部2fにより、本実施の形態の減圧弁1を、所定の装置や任意の場所に設置することができる。なお、側壁面2bに対する流入口2d、流出口2e及び取り付け部2fの配置は、一例であり、
図1から
図3の配置に限定されるものではない。
【0022】
図1に示すように、収納空間2cは、下方側から上方に向けて(Z1方向に向けて)段階的に空間の広さが大きくなるように形成される。
【0023】
[ピントル4]
ピントル4は、流入口2dと流出口2eをつなぐ流路15を開閉可能に、上下方向(Z1-Z2方向)に移動する部材である。
【0024】
図1及び
図2に示すように、ピントル4は、台座4aと、台座4aの中心から上方(Z1方向)に平行に伸びる棒状の弁棒4bと、を有して構成される。
【0025】
図1に示すように、台座4aの底面には凹部4cが形成されており、この凹部4cと、筐体2の収納空間2cの底面との間に、主弁スプリング3が介在している。主弁スプリング3は、圧縮コイルばねである。凹部4cの幅は、ちょうど主弁スプリング3の幅と同程度であり、主弁スプリング3が凹部4cに挟まり固定支持される。
【0026】
台座4aの側面は、高さ方向(Z1-Z2方向)に平行に延出する垂直面であり、この垂直面は、後述するブッシュ6の内壁面を摺動する摺動面4dを構成する。また、摺動面4dに連続して上方には傾斜面4eが形成されており、これにより、組み立ての際、台座4aをブッシュ6の内壁面内にスムースに組み込むことができる。
【0027】
台座4aと弁棒4bとの間(弁棒4bの付け根部分)には、凹み4fが形成されており、この凹み4fに、Oリング5aが嵌り込み、固定される。
図1の状態では、ピントル4がOリング5aを介してブッシュ6に突き当たるように上方に移動しており、Oリング5aにより、流路15が塞がれている。
図1の状態からピントル4が、後述のダイヤフラム8からの押圧力を受けて下方(図示Z2方向)に移動すると、流路15が開放される。
【0028】
図1に示すように、弁棒4bは、台座4aから直線状に上方(図示Z1方向)に延びており、弁棒4bの先端が、ダイヤフラム8にピントル受けシート7を介して接している。
【0029】
図2に示すように、弁棒4bは、所定の径からなる細長い円柱状である。流路15の一部には、高さ方向(Z1-Z2方向)に延びる箇所があり、この箇所に、弁棒4bが入り込んでいるため、弁棒4bの径は、流路15の幅よりも小さく形成されており、流路15が弁棒4bにより完全に塞がれることはない。
【0030】
[ブッシュ6]
ブッシュ6は、筐体2の収納空間2c内に、各Oリング5b、5cを介して固定支持されている。
図1及び
図2に示すように、ブッシュ6の外面は、収納空間2cの内壁面に形成された段差に対向するように、上方に向かうほど幅寸法(径)が大きくなるように多段階で形成される。したがって、ブッシュ6を、Oリング5b、5cを介在させて収納空間2c内に組み込んだ際に、主弁スプリング3の収容空間がブッシュの6の下方に残るように、ブッシュ6は、収納空間2cの段差に係り、収納空間2cの途中位置で固定される。
【0031】
ブッシュ6が、収納空間2c内に組み込まれた際、ブッシュ6は、流入口2dから流出口2eに至る流路15を構成する。さらに、
図1に示すように、ブッシュ6の上面には、凹み部6aが形成されており、凹み部6aとダイヤフラム8との間に、感圧室16が設けられている。感圧室16と流路15との間は、連通孔6bを介して、つながっている。
【0032】
ブッシュ6の中心には、高さ方向(Z1-Z2方向)に平行に弁棒4bを通す細い貫通孔6cが形成されている。貫通孔6cは、流路15にまで至っている。貫通孔6cと弁棒4bの径は、ほぼ同じ大きさである。
【0033】
図1に示すように、弁棒4bは、ブッシュ6の下側から流路15を通って貫通孔6cに挿入され、更に、弁棒4bの先端は、感圧室16に突出し、ピントル受けシート7に当接している。ダイヤフラム8が下方向に変形すると、弁棒4bが下方向に押圧され、このとき、ブッシュ6の貫通孔6cの内壁面を摺動移動し、ピントル4全体が、ブッシュ6に対して下方向に移動する。
【0034】
[ダイヤフラム8]
ダイヤフラム8は、後述する調圧ネジ13からの圧力を受けて図示下方向に変形可能な薄板部材である。ダイヤフラム8は、
図2に示すように円形状であり、例えば、ダイヤフラム8の外周縁部8aよりも内側の上面側(第1の面:後述するピストン10が接する側)に環状凸部8bが形成されている。また、環状凸部8bと対向するダイヤフラム8の下面側(第2の面:ピントル4が対向する側)に環状凹部8cが形成されている。したがって、ダイヤフラム8は、全体的に、ほぼ一定の板厚で形成されている。
【0035】
ダイヤフラム8の材質を限定するものではないが、例えば、ダイヤフラム8は、ゴムの内部に基布が埋設された構造である。
【0036】
また、環状凸部8bの上面からの突出高さにより、ダイヤフラム8の下方向への変形量を変えることができる。本実施の形態では、突出高さを限定するものではないが、本実施の形態の減圧弁1を、例えば、流量の少ない酸素濃縮器に適用した場合、上面からの突出高さを1mm以下、具体的には、0mmよりも大きく1mm以下の範囲内に設定できる。
なお、
図1に示すダイヤフラム8の形態は、一例であり、例えば、ダイヤフラム8には、
図1に示す環状凸部8b及び環状凹部8cが形成されず、全体的にフラットな形状であってもよい。
【0037】
図1に示すように、ダイヤフラム8の外周縁部8aから環状凸部8b及び環状凹部8cまでの端部領域8dが、ブッシュ6と後述するボンネット12との間に、ワッシャ9を介して挟持されて固定支持される。
【0038】
ダイヤフラム8は、環状凸部8b及び環状凹部8cより内側の領域が、高さ方向(Z1-Z2方向)に変位する可動領域8eである。
【0039】
本実施の形態では、ダイヤフラム8の可動領域8eに、穴や凹部は形成されておらず、可動領域8e全体が平坦面で形成されている。すなわち、従来では、ダイヤフラム8の中央に穴を設け、この穴にセンターピースを通す構成が主流であったが、本実施の形態では、センターピースを用いる構成でないため、構成部品の低減を図ることができる。したがって、本実施の形態では、ダイヤフラム8の可動領域8eの下面に、ピントル受けシート7を介して、ピントル4の弁棒4bの先端が当接しており、変形したダイヤフラム8自体が、弁棒4bを下方向(Z2方向)に押圧する。なお、ピントル受けシート7は設けられていなくてもよく、この場合、ダイヤフラム8の下面にピントル4の弁棒4bの先端が直接接する。ただし、ピントル受けシート7を介して間接的に接する形態とすることで、ダイヤフラム8の耐久性の向上ができて好ましい。
【0040】
[ピストン10]
図1に示すように、ダイヤフラム8の上面に、ピストン10が接して配置される。ピストン10は、ダイヤフラム8を下方向(図示Z2方向)に押圧するためのサポート部材である。
【0041】
図1に示すように、ピストン10の側端面(摺動面10c)は、後述するボンネット12の内壁面12cに接しており、この内壁面12cを上下方向(図示Z1-Z2方向)に摺動可能に支持されている。したがって、ピストン10を安定して上下方向に摺動させることができる。ピストン10の摺動面10c及び、ボンネット12の内壁面12cは、いずれも高さ方向に平行な垂直面で形成される。
【0042】
図1に示すように、ピストン10は、ダイヤフラム8の環状凸部8bより内側に位置する可動領域8eの上面に接し、該可動領域8eを押圧する押圧面10aを備えた押圧部10bと、該押圧部10bと一体となりボンネット12の内壁面12cに接する摺動面10cを備えた摺動部10dと、を有して構成される。これにより、ピストン10を下方向に摺動移動させながら、ダイヤフラム8の可動領域8eを下方向に押圧することができる。
図1に示すように、ピストン10の押圧面10aの図示X1-X2方向への幅は、可動領域8eの幅とほぼ同じ大きさであり、可動領域8e全体がピストン10の押圧面10aから押圧力を受けて下方向に変形できるようになっている。
【0043】
[調圧スプリング11]
図1に示すように、ピストン10と後述する調圧ネジ13との間に、付勢部材としての調圧スプリング11が配置される。調圧スプリング11は、圧縮コイルばねである。調圧スプリング11の外径は、d1である。なお、付勢部材としては、調圧スプリング11に限定されるものではないが、製造コストや耐久性の観点などから、調圧スプリング11を選択することが好ましい。
【0044】
図1に示すように、ピストン10の上面には、押圧部10bと摺動部10dとの間に段差10eが設けられており、この段差10eに調圧スプリング11の下端部が位置決めされている。これにより、調圧スプリング11を安定して配置することができる。
【0045】
[ボンネット12]
ボンネット12は、筐体2の開口した上面側に位置する蓋体として機能する。
図1から
図3に示すように、ボンネット12は、蓋体12aと、蓋体12aの上面に位置して蓋体12aよりも小径の円筒部12bとを、有して構成される。蓋体12aの内部は、円筒部12bの貫通孔に通じる空洞になっている。蓋体12aに形成された空洞は、円筒部12bに形成された貫通孔よりも広い空間となっている。
【0046】
図1に示すように、ボンネット12が、筐体2の開口側に組み込まれた状態では、ダイヤフラム8がブッシュ6との間で挟持され、また、ダイヤフラム8の上面に配置されたピストン10の摺動面10cが、ボンネット12の蓋体12aに形成された内壁面12cに接する。
【0047】
図1及び
図2に示すように、ボンネット12の円筒部12bに形成された雌ネジ面としての内壁面12dに調圧ネジ13が挿入されている。これにより、調圧ネジ13のネジを回しながら調圧ネジ13を円筒部12bの下方向(図示Z2方向)に向けて所定量だけ押し込むことができる。これにより、
図1に示す、ピストン10と調圧ネジ13との間に介在する調圧スプリング11が圧縮されるとともに、ダイヤフラム8を下方向に変形させることができる。実際には、ナット14を回すことで、同時に調圧ネジ13を回転させながら、円筒部12b内に所定量押し込むことができる。
【0048】
[調圧ネジ13]
調圧ネジ13は、調圧スプリング11を介して、ピストン10に圧力を加える。
図1及び
図2に示すように、調圧ネジ13は、略円柱形であり、該調圧ネジ13の調圧スプリング11に向く先端部13a(下方向(図示Z2方向)の端部)は、軸中心Oに向けて先細るように断面両端が傾斜している。「軸中心O」とは、長手方向(図示Z1-Z2方向)に向けての幅中心を意味する。傾斜面13dは、断面両端において同じ傾斜角で形成される。
【0049】
図1に示すように、調圧ネジ13は、一定の径で形成された円柱部13bと、円柱部13bの先端に位置して略切頭錐体状を成す先端部13aと、を有して構成される。円柱部13bの外周面13cと先端部13aの傾斜面13dとが連続して形成されている。先端部13aの最大幅(円柱部13bの外径)は、d2である。
【0050】
調圧スプリング11の外径d1<調圧ネジ13の先端部13aの最大幅d2であるため、
図1に示すように、調圧スプリング11の上端部は、調圧ネジ13の傾斜面13dに当接している。そして、調圧ネジ13の先端部13aの最小幅d3<調圧スプリング11の外径d1であるため、調圧ネジ13の先端部13aの一部は、調圧スプリング11の内側に配置される(入り込んでいる)。このため、調圧スプリング11をピストン10と調圧ネジ13との間に組み込んだ際、調圧スプリング11の上端部が、調圧ネジ13の先端部13aの傾斜面13d上を、調圧スプリング11の軸中心Oと、調圧ネジ13の軸中心Oとが一致するように移動しながら位置合わせされる。したがって、調圧スプリング11と調圧ネジ13との間の中心位置合わせを容易にでき、位置ずれを抑制できる。このとき、調圧ネジ13の先端部13aの一部が、調圧スプリング11の内側に入り込むことで、調圧スプリング11と調圧ネジ13との位置関係が安定化する。この結果、調圧ネジ13が下方向に押し込まれたときに、調圧スプリング11を介してピストン10に軸中心Oから均等な位置に圧力を加えることができ、したがって、ピストン10を高さ方向に安定して移動させることができ、ダイヤフラム8の可動領域8eを、調圧ネジ13の押し込み量に合わせて、適切に変形させることができる。
【0051】
<本実施の形態の減圧弁1の動作について>
減圧弁1は、一次圧である高い圧力を、二次圧としての低い圧力に下げるための装置である。ダイヤフラム8を境として調圧スプリング11側からの押圧力と、二次圧の力との、上下の力のバランスが調整されることで、二次圧が設定される。
【0052】
図1は、調圧ネジ13を下方向(図示Z2方向)に押し込む前の状態を示しており、調圧スプリング11からダイヤフラム8に作用する押圧力は、ゼロである。この結果、ピントル4が最上位置に上がった状態にあり、ピントル4により、流入口2dと流出口2e間をつなぐ流路15が塞がれた状態である。
【0053】
図1の初期状態から、調圧ネジ13を下方向に押し込むと、調圧スプリング11が圧縮されてピストン10が押圧力を受ける。このとき、ピストン10は、ボンネット12に摺動面10cを介して接しており、したがって、ピストン10は、ボンネット12の内壁面12c上を下方向に摺動移動する。ピストン10の摺動移動に伴い、ダイヤフラム8の可動領域8eが下方向(図示Z2方向)に押圧力を受けて変形する。ダイヤフラム8の変形に伴い、ダイヤフラム8にピントル受けシート7を介して接するピントル4の弁棒4bが図示下方向に押され、これにより、流入口2dと流出口2e間をつなぐ流路15が開いた状態になる。
【0054】
流入口2dからガス(流体)を流すと、流路15を通って、流出口2eから排出される。ピントル4の存在により、流路15が狭くなっているため、流入口2dからの一次圧は、流出口2eから減圧された二次圧として流出する。このとき、ガスは、感圧室16にも流入し、ダイヤフラム8を上方(図示Z1方向)に押し上げる方向に作用する。ダイヤフラム8が押し上げられることで、ピントル4が上方に移動し、ダイヤフラム8の上下の力のバランスがつり合い、流出口2eからの二次圧が安定する。二次圧を測定しながら、調圧ネジ13の押し込み量を調整することで、必要とする二次圧を安定して得ることができる。
【0055】
<本実施の形態における減圧弁1の特徴的構成について>
従来における減圧弁1において、ダイヤフラム8の中央に穴を設け、この穴にセンターピースを通し、センターピースにより、ピントル4を押圧する形態が主流であった。
【0056】
しかしながら、センターピースを設けることで部品点数が増え、またセンターピースは、ダイヤフラム8よりも高さ方向(図示Z1-Z2方向)に厚みを有する構成であり、この結果、減圧弁1の小型化を効果的に促進できない問題があった。また、従来の構成では、ダイヤフラム8に穴を設けなければならず、しかも、この穴をセンターピースにより確実にふさぐ必要があり、構造が複雑化し、また製造コストも高くなった。
【0057】
そこで、本実施の形態の減圧弁1は、ダイヤフラム8の中央に、センターピースを通す穴が形成されておらず、ダイヤフラム8が変形した際、ダイヤフラム8の可動領域8e自体が、ピントル4の弁棒4bを下方向に押圧する。このように、本実施の形態では、従来のようにセンターピースが設けられておらず、部品点数を減らすことができる。また、本実施の形態では、センターピースが不要となることで、高さ方向への厚みを小さくできる。さらに、本実施の形態では、ダイヤフラム8に穴を形成することが不要となり、ダイヤフラムの製造を容易化できる。またダイヤフラム8を筐体内部で固定支持するシンプルな構造により、ダイヤフラム8の上下の空間を確実に分離することができる。
【0058】
さらに、本実施の形態では、ダイヤフラム8を押圧し変形させるピストン10がダイヤフラム8の上面に接して配置される。ピストン10には、ダイヤフラム8の可動領域8eの全域に接する押圧面10aを備えた押圧部10bが設けられる。そして、ピストン10は、ボンネット12の内壁面12cと接する摺動面10cを備えており、ピストン10は、ボンネット12の内壁面12c上を摺動移動し、ダイヤフラム8を図示下方向(図示Z2方向)に安定して押圧することができる。このため、本実施の形態では、ダイヤフラム8を精度良く安定して変形させることができる。
【0059】
以上により、本実施の形態の減圧弁1によれば、部品点数を少なくでき、小型化を促進できる。本実施の形態では、ダイヤフラム近辺の構造をシンプルな構造にできるが、摺動移動するピストン10により、ダイヤフラム8を押圧する構造とすることで、ダイヤフラム8を安定して変形させることができ、小型化とともに、流量調整を精度よく且つ安定して行うことができる。
【0060】
本実施の形態におけるダイヤフラム8は、外周縁部8aが、固定支持されており、外周縁部8aよりも内側であって、ピストン10と接する上面(第1の面)と、ピントル4と直接又は間接的に接する下面(第2の面)と、を有する。これにより、ピストン10からの押圧力を適切にダイヤフラム8で受けることができ、そして、ダイヤフラム8の変形により、ピントル4を適切に下方向へ移動させることができ、このような動作を少ない部品点数で且つシンプルな構造で精度よく実行できる。
【0061】
また、本実施の形態におけるダイヤフラム8は、例えば、外周縁部8aよりも内側であって、ピストン10と対向する上面に形成された環状凸部8b、及びピントル4と対向する下面に形成された環状凹部8cを有する。
図1に示すように、ダイヤフラム8の外周縁部8aは、ブッシュ6とボンネット12の間に固定支持されており、環状凸部8b及び環状凹部8cより内側の可動領域8eの上下面がそれぞれ、ピストン10及びピントル4と接している。これにより、ダイヤフラム8の変形をより安定化でき、ピストン10の押圧によるダイヤフラム8の変形と、ダイヤフラム8の変形によるピントル4の下方向への移動とを、より精度よく実行できる。
【0062】
また、本実施の形態では、ピストン10は、ダイヤフラム8の可動領域8eを押圧する押圧面10aを備えた押圧部10bと、該押圧部10bと一体となり、ボンネット12の内壁面12cに接する摺動面10cを備えた摺動部10dと、を有する。これにより、ピストン10は、調圧ネジ13からの圧力を受けて下方向(図示Z2方向)に移動する際、摺動移動しながらダイヤフラム8の可動領域8eの全域を一定圧で押圧できる。したがって、ダイヤフラム8の可動領域8eを安定して変形させることができ、流量調整を高精度に且つ安定して行うことが可能である。
【0063】
<本実施の形態の減圧弁1の組み立て>
図2に示すように、筐体2は上面が開口しており、筐体2の上面側から、順に各構成部材を組み立てることができる。例えば、各構成部材を、
図2に示す並び順に筐体2内に組み込んでいくことで、簡単にかつ迅速に、
図3に示す減圧弁1を完成することができる。このように、本実施の形態では、減圧弁1を一方向から組み立てることができ、これにより組み立て工数を減らすことができ、生産効率を向上させることができる。特に、本実施の形態では、減圧弁1を小型化できるが、一方向からの組み立てにより、サイズの小さい各構成部材を効率よく組み立てることができ、小型化に寄与できる。
【0064】
<本実施の形態の減圧弁1のそのほかの特徴的構成>
本実施の形態では、調圧スプリング11が接する調圧ネジ13の先端部13aは、軸中心Oに向けて先細るように傾斜する傾斜面13dを有している。そして、調圧スプリング11及び調圧ネジ13を組み立てた際に、
図1に示すように、調圧ネジ13の先端部13aの一部が、調圧スプリング11の上端部の内側に入り込みながら、調圧スプリング11が傾斜面13dに接して位置決めされる。このとき、調圧スプリング11は、傾斜面13dに倣って、調圧スプリング11の断面上端の双方が、各傾斜面13dに当接するように位置決めされるため、ずれを補正でき、したがって、調圧スプリング11の軸中心Oと、調圧ネジ13の軸中心Oとが一致するように位置決めを容易に行うことができる。
【0065】
また、本実施の形態では、調圧ネジ13は、後端部(上端)13eから先端部13aに向けて、一定幅で形成された外周面13cと、外周面13cと連続して形成された傾斜面13dと、を備える形状で形成でき、調圧ネジ13の両側に張り出したスプリング受けを設ける必要がない。このため、生産コストの低減を図ることができ、また小型化に寄与できる。特に、本実施の形態では、調圧ネジ13として既存の市販ネジを用いることも可能であり、生産コストの低減及び小型化を効果的に促進できる。
なお、調圧ネジ13の外周面13cは、ネジ面であり、外周面13cが「一定幅」とは、
図1に示す断面両端においてZ1-Z2方向に連なる多数のネジ山頂部をつなげた仮想両側面間の幅を指す。
【0066】
<減圧弁1の用途及び小型化について>
本実施の形態の減圧弁1の用途を限定するものではないが、本実施の形態では、減圧弁1の小型化を促進でき、流量が小さい、例えば、在宅医療用の酸素濃縮器などに適用できる。
【0067】
本実施の形態では、減圧弁1の小型化のために、センターピースを設けずに、ダイヤフラムが直接あるいは間接的にピントル4の弁棒4bを押圧する構成としている。このとき、ダイヤフラム8の薄型化とともにダイヤフラム8の環状凸部8bの突出寸法を小さくする。あるいは、ダイヤフラム8に環状凸部8bを形成せず、ダイヤフラム8をフラット形状とする。このとき、ダイヤフラム8の耐久性向上のために、ゴムの内部に基布が埋設された構造とすることが好適である。
【0068】
さらに、減圧弁1の小型化のために、調圧ネジ13に両側に張り出すスプリング受けを設けず、ストレート形状の調圧ネジの先端部13aの傾斜面13dに調圧スプリング11が当接する構造とした。これにより、調圧ネジ13及び調圧スプリング11を従来より小さくできる。さらに、このように、ダイヤフラム8近辺の構造、及び、調圧ネジ13及び調圧スプリング11を有する押圧機構、を改良することで、減圧弁1の小型化を効果的に促進できる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の減圧弁によれば、部品点数を少なくでき、小型化に寄与できる。したがって、流量が小さい、例えば、在宅医療用の酸素濃縮器などに適用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 :減圧弁
2 :筐体
2a :底面
2b :側壁面
2c :収納空間
2d :流入口
2e :流出口
3 :主弁スプリング
4 :ピントル
4a :台座
4b :弁棒
4c :凹部
4d :摺動面
4e :傾斜面
4f :凹み
5a~5c :Oリング
6 :ブッシュ
6a :凹み部
6b :連通孔
6c :貫通孔
7 :ピントル受けシート
8 :ダイヤフラム
8a :外周縁部
8b :環状凸部
8c :環状凹部
8d :端部領域
8e :可動領域
10 :ピストン
10a :押圧面
10b :押圧部
10c :摺動面
10d :摺動部
10e :段差
11 :調圧スプリング
12 :ボンネット
12a :蓋体
12b :円筒部
12c、12d :内壁面
13 :調圧ネジ
13a :先端部
13b :円柱部
13c :外周面
13d :傾斜面
13e :後端部
14 :ナット
15 :流路
16 :感圧室
O :軸中心
d1 :外径
d2 :最大幅
d3 :最小幅