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特開2024-21664壁高欄の据付用締結具収納ケーシングおよび据付用締結具収納空間の密閉手段
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  • 特開-壁高欄の据付用締結具収納ケーシングおよび据付用締結具収納空間の密閉手段 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021664
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】壁高欄の据付用締結具収納ケーシングおよび据付用締結具収納空間の密閉手段
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/10 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
E01D19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124658
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】稲村 康
(72)【発明者】
【氏名】安藤 敏史
(72)【発明者】
【氏名】阪井 光尚
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA21
2D059GG39
(57)【要約】
【課題】プレキャスト工法で製作される壁高欄において、設置時の工期の短縮を図るとともに、設置後の据付用締結具の点検・取替が簡単に行えるようにする。
【解決手段】道路の床版1にアンカーボルト(据付用締結具)5で固定される壁高欄2に、その前面に開口してアンカーボルト5の頭部を収納する据付用締結具収納空間3に嵌め込まれ、前面に開口部11aを有し、底面にアンカーボルト5の軸部が通過可能な貫通孔11bを有するケーシング本体11と、ケーシング本体11の前面の開口部11aを開閉する蓋12とを備えた収納ケーシング10を取り付けて、従来の行われていた収納空間3へのモルタル等の充填作業をなくすことにより、従来よりも設置時の工期短縮が図れ、設置後のアンカーボルト5の点検・取替作業も簡単に行えるようにした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁高欄の前面に開口して壁高欄の据付用締結具の頭部を収納する据付用締結具収納空間に嵌め込まれ、前面に開口部を有し、底面に前記据付用締結具の軸部が通過可能な貫通孔または切欠きを有するケーシング本体と、前記ケーシング本体の前面の開口部を開閉する蓋とを備えている壁高欄の据付用締結具収納ケーシング。
【請求項2】
前記蓋は、前記ケーシング本体の前面の開口部の周縁に設けられたフランジ部に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の壁高欄の据付用締結具収納ケーシング。
【請求項3】
前記ケーシング本体の前面の開口部の外周に、前記壁高欄の据付用締結具収納空間の内面との間を水封する止水部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の壁高欄の据付用締結具収納ケーシング。
【請求項4】
前記止水部材は、前記ケーシング本体の前面の開口部よりも前方に突出して、前記ケーシング本体と蓋との間を水封するようになっていることを特徴とする請求項3に記載の壁高欄の据付用締結具収納ケーシング。
【請求項5】
前記ケーシング本体は、その底面に前記据付用締結具の軸部が通過可能で後面側に開口する切欠きを有し、後面に前記底面の切欠きと連続する開口部が設けられるとともに、前記後面の開口部を塞ぐ後部壁が着脱可能に取り付けられており、前記後部壁を取り外すことにより、前記据付用締結具の頭部が後面の開口部を通って出入可能となるものであることを特徴とする請求項1に記載の壁高欄の据付用締結具収納ケーシング。
【請求項6】
前記ケーシング本体の底面の貫通孔または切欠きに据付用締結具の軸部が通された状態で、前記ケーシング本体の底面上に、少なくとも前記据付用締結具の軸部の周囲を覆う防水層が樹脂によって形成され、前記防水層の上面が水平面またはケーシング本体の前面に向かって下向きに傾斜する傾斜面であることを特徴とする請求項1に記載の壁高欄の据付用締結具収納ケーシング。
【請求項7】
壁高欄の前面に開口して壁高欄の据付用締結具の頭部を収納する据付用締結具収納空間を密閉する密閉手段であって、前記据付用締結具収納空間の開口を開閉する蓋部材を壁高欄に取り付け、前記蓋部材と据付用締結具収納空間の開口周縁部との間を止水状態にすることを特徴とする壁高欄の据付用締結具収納空間の密閉手段。
【請求項8】
前記蓋部材が壁高欄に対して着脱自在であることを特徴とする請求項7に記載の壁高欄の据付用締結具収納空間の密閉手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁高欄の据付用締結具の頭部を収納する据付用締結具収納空間に嵌め込まれる収納ケーシングと、据付用締結具収納空間の密閉手段に関する。
【背景技術】
【0002】
壁高欄は、道路橋や高速道路等における道路の側端に沿って設置され、道路からの自動車の飛び出しを防止する壁状の防護柵である。この壁高欄には、工場においてプレキャスト工法で製作され、設置現場でアンカーボルト等の据付用締結具により道路の床版に固定されるものがある。
【0003】
上記のように工場で製作される壁高欄は、その前面に開口して据付用締結具の頭部を収納する据付用締結具収納空間が長手方向に複数形成され、各据付用締結具収納空間から底面に貫通して据付用締結具の軸部を通す貫通孔があけられている。この壁高欄を設置現場で床版に固定する際には、通常、壁高欄を床版上で吊り上げた状態で、各貫通孔と床版に定着させた据付用締結具の位置合わせを行ったうえ、壁高欄を下降させて貫通孔に据付用締結具の軸部を通し、据付用締結具収納空間に突出した据付用締結具の頭部に支圧部材を取り付けてナットで締め付ける。そして、壁高欄の床版への固定が完了したら、その据付用締結具収納空間にモルタル等を充填する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6401696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1のように壁高欄を据付用締結具で固定した後、据付用締結具収納空間にモルタル等を充填する場合、モルタル等の打設作業者の不足や雨天による打設作業の延期等の理由により、設置に余分な日数がかかることがある。
【0006】
また、設置後の据付用締結具の点検・取替の際や、事故等で壁高欄自体の取替が必要となった際に、締結具収納空間に充填したモルタル等を除去するのに非常に手間がかかるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、プレキャスト工法で製作される壁高欄において、設置時の工期の短縮を図るとともに、設置後の据付用締結具の点検・取替が簡単に行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願の第1発明は、壁高欄の前面に開口して壁高欄の据付用締結具の頭部を収納する据付用締結具収納空間に嵌め込まれ、前面に開口部を有し、底面に前記据付用締結具の軸部が通過可能な貫通孔または切欠きを有するケーシング本体と、前記ケーシング本体の前面の開口部を開閉する蓋とを備えている構成(構成1)の壁高欄の据付用締結具収納ケーシングを提供する。
【0009】
上記構成1の据付用締結具収納ケーシングを用いれば、据付用締結具収納空間にモルタル等を充填する作業をなくすことができるので、壁高欄の設置時に作業者不足や天候に影響されることなく作業を進められるようになり、従来よりも工期の短縮が図れるようになる。また、壁高欄の設置後に据付用締結具の点検・取替等を行う際には、据付用締結具収納空間からモルタル等を除去する必要がなく、据付用締結具収納ケーシングの蓋を開くだけで簡単に作業できるようになる。
【0010】
上記構成1において、前記蓋は、前記ケーシング本体の前面の開口部の周縁に設けられたフランジ部に着脱自在に取り付けられているものとすることができる(構成2)。
【0011】
上記構成1または2においては、前記ケーシング本体の前面の開口部の外周に、前記壁高欄の据付用締結具収納空間の内面との間を水封する止水部材が設けられていることが好ましい(構成3)。このようにすれば、据付用締結具収納空間への雨水等の浸入を効果的に防止することができる。そして、前記止水部材が、前記ケーシング本体の前面の開口部よりも前方に突出して、前記ケーシング本体と蓋との間を水封するようになっていれば(構成4)、据付用締結具の腐食を防止することも兼ねることができるようになる。
【0012】
上記構成1乃至4のいずれかにおいて、前記ケーシング本体は、その底面に前記据付用締結具の軸部が通過可能で後面側に開口する切欠きを有し、後面に前記底面の切欠きと連続する開口部が設けられるとともに、前記後面の開口部を塞ぐ後部壁が着脱可能に取り付けられており、前記後部壁を取り外すことにより、前記据付用締結具の頭部が後面の開口部を通って出入可能となるものとすることができる(構成5)。このようにすれば、壁高欄への自動車の衝突等によって据付用締結具収納ケーシングの交換が必要となった際に、その蓋を開いてケーシング本体の後部壁を取り外すだけで、ケーシング本体を据付用締結具と干渉することなく前面側へスライドさせて取り出すことができ、交換作業を効率よく行えるようになる。
【0013】
さらに、上記構成1乃至5のいずれかにおいて、前記ケーシング本体の底面の貫通孔または切欠きに据付用締結具の軸部が通された状態で、前記ケーシング本体の底面上に、少なくとも前記据付用締結具の軸部の周囲を覆う防水層が樹脂によって形成され、前記防水層の上面が水平面またはケーシング本体の前面に向かって下向きに傾斜する傾斜面である構成を採用することができる(構成6)。この構成6は、道路のカーブ区間の内側の壁高欄に使用される据付用締結具収納ケーシングに特に有効に適用できる。すなわち、一般に、カーブ区間の内側の壁高欄では、据付用締結具収納空間の底面が前面側よりも奥側で低くなるように傾斜しているので、その空間に水分が存在する場合、据付用締結具が濡れるおそれがある。これに対して、構成6の据付用締結具収納ケーシングを使用すれば、水分が据付用締結具の周囲に滞留しにくくなり、ケーシング本体の底面と防水層との間の段差が前面側から据付用締結具周囲への水分の浸入を防ぐ役割を果たし、据付用締結具の濡れを防止できるようになる。
【0014】
また、本願の第2発明は、壁高欄の前面に開口して壁高欄の据付用締結具の頭部を収納する据付用締結具収納空間を密閉する密閉手段として、前記据付用締結具収納空間の開口を開閉する蓋部材を壁高欄に取り付け、前記蓋部材と据付用締結具収納空間の開口周縁部との間を止水状態にする構成(構成7)を採用した。
【0015】
上記構成7の据付用締結具収納空間の密閉手段を採用した場合でも、前記据付用締結具収納ケーシングを用いた場合と同様、据付用締結具収納空間へのモルタル等の充填が不要となるので、壁高欄設置時の工期短縮を図ることができ、壁高欄設置後の据付用締結具の点検・取替作業が簡単に行えるようになる。
【0016】
上記構成7においては、前記蓋部材が壁高欄に対して着脱自在であるものとすることができる(構成8)。
【発明の効果】
【0017】
本発明の壁高欄の据付用締結具収納ケーシングおよび据付用締結具収納空間の密閉手段は、上述したように、それぞれ据付用締結具収納空間へのモルタル等の充填を不要とするものであるから、これを採用した壁高欄では、従来よりも設置時の工期短縮を図ることができ、設置後の据付用締結具の点検・取替作業を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態の据付用締結具収納ケーシングを用いた壁高欄の設置状態の斜視図
図2図1の縦断側面図
図3図2の要部を拡大して示す縦断側面図
図4図1の据付用締結具収納ケーシングの変形例を示す縦断側面図
図5】第2実施形態の据付用締結具収納ケーシングを用いた壁高欄の設置状態の縦断側面図
図6図5のケーシング本体の後面側から見た分解斜視図
図7】実施形態の据付用締結具収納空間の密閉手段を用いた壁高欄の設置状態の縦断側面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。図1は、道路の床版1に第1実施形態の据付用締結具収納ケーシング(以下、単に「収納ケーシング」とも称する。)10を用いた壁高欄2を設置した状態を示す。この壁高欄2は、工場においてプレキャスト工法で製作されたもので、横長の壁状のブロック体であり、前面(道路側の面)の下端側に断面直角三角形状のハンチ部2aが形成されている。
【0020】
また、壁高欄2は、図1および図2に示すように、その前面の高さ方向中央部とハンチ部2aとに跨る位置に開口し、収納ケーシング10が配置される据付用締結具収納空間(以下、単に「収納空間」とも称する。)3が、長手方向に所定間隔で形成されている。そして、それぞれの収納空間3の下面から壁高欄2の底面に貫通するボルト孔4が2つずつあけられており、各ボルト孔4に床版1に定着させたアンカーボルト(据付用締結具)5の軸部が通され、そのアンカーボルト5の頭部が収納ケーシング10内の収納空間3に収納されるようになっている。また、収納ケーシング10には、各アンカーボルト5の頭部の外周に装着される支圧部材6と、アンカーボルト5にねじ結合して支圧部材6を締め付けるナット7も収納されることになる。なお、アンカーボルト5の頭部には耐水性を付与するためのカバーが装着される場合もある。
【0021】
収納ケーシング10は、図1乃至図3に示すように、収納空間3に嵌め込まれ、前面に開口部11aを有するケーシング本体11と、そのケーシング本体11の開口部11aを開閉する蓋12とを備えている。ケーシング本体11および蓋12はステンレス鋼製である。
【0022】
ケーシング本体11は、全体としての形状が収納空間3とほぼ同じで、その前面の開口部11aの縦縁が壁高欄2の前面形状に沿うように屈曲しており、その底面には2本のアンカーボルト5の軸部がともに通過可能な貫通孔11bがあけられている。なお、貫通孔11bはケーシング本体11の底面の一辺に開口する切欠きに変更することもできる。また、前面の開口部11aの周縁には、蓋12を取り付けるための内向きのフランジ部11cが設けられている。
【0023】
蓋12は、前面視矩形で、壁高欄2の前面形状に沿うように屈曲し、収納空間3の開口に嵌まり込む板状部材であり、その周縁部を複数のボルト13でケーシング本体11のフランジ部11cに着脱自在に取り付けられている。
【0024】
ここで、ケーシング本体11は、収納空間3の奥側の内面に突き当てて位置決めしたときに、そのフランジ部11cが収納空間3の開口縁よりもわずかに奥側に位置する奥行寸法としている。また、蓋12のボルト13を通す孔の周縁部を背面側へ突出させ、それによって蓋12の前面側に形成された凹部にボルト13の頭部が入り込むようにしている。これにより、収納ケーシング10の取付後は、蓋12の前面が壁高欄2の前面と面一になり、蓋12を取り付けるボルト13の頭部も壁高欄2の前面から突出しないようになっている。
【0025】
また、ケーシング本体11の前面の開口部11aの外周には、全周にわたって収納空間3の内面との間を水封する止水部材としてのゴムスポンジ14が設けられている。さらに、ゴムスポンジ14はケーシング本体11の前面の開口部11aよりも前方に突出して、ケーシング本体11のフランジ部11cの前面側へ折り曲げられており、そのゴムスポンジ14の折り曲げ部14aを挟む状態で蓋12の周縁部がケーシング本体11のフランジ部11cに固定されることにより、ケーシング本体11と蓋12との間も水封される。
【0026】
また、ケーシング本体11の前面の開口部11aの底面側外周には、ゴムスポンジ14の下面に収納空間3の底面との間に挟まれる透水性シート15が設けられており、収納空間3に雨水等が浸入しても、その水分が透水性シート15を通して外部へ排出されるようになっている。
【0027】
次に、この収納ケーシング10を用いた壁高欄2の設置現場での施工手順について説明する。この壁高欄2を設置する際は、予め収納空間3に収納ケーシング10を嵌め込んで蓋12を取り外し、ケーシング本体11を押し込んで位置決めしておく。この状態の壁高欄2を床版1上で吊り上げ、壁高欄2のボルト孔4と床版1に定着させたアンカーボルト5の位置合わせを行ったうえで、壁高欄2を下降させてボルト孔4とケーシング本体11の貫通孔11bにアンカーボルト5の軸部を通し、アンカーボルト5の頭部を収納ケーシング10内の収納空間3に収納する。そして、アンカーボルト5の頭部の外周に支圧部材6を装着し、その支圧部材6をナット7で締め付けることにより壁高欄2を床版1に固定する。その後、収納ケーシング10のケーシング本体11に蓋12をボルト締めして取り付ければ施工が完了する。
【0028】
この収納ケーシング10は、上記の構成であり、壁高欄2の収納空間3に嵌め込まれるケーシング本体11と、その前面の開口部11aを開閉する蓋12とを備えているので、従来行われていた収納空間3へのモルタル等の充填作業をなくすことができる。
【0029】
したがって、この収納ケーシング10を用いた壁高欄2は、設置時に作業者不足や天候に影響されることなく作業を進められるようになり、従来よりも工期の短縮を図ることができる。また、設置後にアンカーボルト5の点検・取替を行う際には、収納空間3からモルタル等を除去する必要がなく、収納ケーシング10の蓋12を取り外すだけで簡単に作業することができる。
【0030】
また、ケーシング本体11の前面の開口部11aの外周と壁高欄2の収納空間3の内面との間、および蓋12の周縁部とケーシング本体11のフランジ部11cとの間がゴムスポンジ14で水封されており、収納空間3へ雨水等が浸入するおそれが少ないうえ、雨水等が浸入した場合でも、その水分はケーシング本体11の前面の開口部11aの底面側外周に設けられた透水性シート15を通して外部へ排出されるので、アンカーボルト5、支圧部材6およびナット7の腐食を防止することができる。
【0031】
ここで、この第1実施形態の収納ケーシングを用いた場合の壁高欄の施工手順は、上述のように、壁高欄にケーシング本体を取り付けた後に、壁高欄をアンカーボルトで床版に固定して蓋を取り付けることになるが、例えばケーシング本体を収納空間のアンカーボルトよりも開口側にのみ配置されるように短くすれば、壁高欄を床版に固定した後に、壁高欄へのケーシング本体と蓋の取り付けを行うことができる。あるいは、ケーシング本体を前後で分割して、壁高欄をケーシング本体の後部のみを取り付けた状態で床版に固定した後、ケーシング本体の前部と蓋を取り付けるようにすることもできる。
【0032】
また、上述した第1実施形態では、収納ケーシングの蓋の周縁部を全周にわたってケーシング本体にボルト止めしたが、蓋はケーシング本体に揺動自在に取り付けられるものとすることもできる。
【0033】
図4は第1実施形態の収納ケーシング10の変形例を示す。この変形例では、ケーシング本体11の底面の貫通孔11bにアンカーボルト5の軸部が通された状態で、ケーシング本体11の底面上にアンカーボルト5の軸部および支圧部材6の周囲を覆う防水層16が形成されている。その防水層16は、ケーシング本体11の前面近傍の底面上に配置された断面L字形の棒状の仕切り17とケーシング本体11の両側面および後面とによって区画された領域に、溶剤により液状化させたシリコン樹脂を流し込んで固化させたものであり、収納空間3の底面が前面側よりも奥側で低くなるように傾斜している場合でも、上面が水平面またはケーシング本体11の前面に向かって下向きに傾斜する傾斜面となるように形成される。
【0034】
この変形例の収納ケーシング10を使用した壁高欄2は、道路のカーブ区間の内側に設置され、その収納空間3の底面が前面側よりも奥側で低くなるように傾斜している場合でも、収納空間3内の水分がアンカーボルト5の周囲に滞留しにくくなるし、ケーシング本体11の底面と防水層16(仕切り17)との間の段差が前面側からアンカーボルト5周囲への水分の浸入を防ぐ役割を果たすようになるので、アンカーボルト5の濡れを効果的に防止することができる。
【0035】
ここで、防水層を形成する材料は、この変形例のようなシリコン樹脂に限らず、固化して防水性能を発揮できるものであればよい。また、仕切りの形状は、この変形例のような断面L字形の棒状のほか、角棒状等、任意に選択できる。
【0036】
図5は、第2実施形態の収納ケーシング10を用いた壁高欄2の設置状態を示す。この第2実施形態は、第1実施形態の図1乃至図3の例をベースとして、そのケーシング本体11の構成の一部を変更したもので、第1実施形態と同じ機能の部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【0037】
第2実施形態のケーシング本体11は、図5および図6に示すように、第1実施形態の底面の貫通孔11bの代わりに、アンカーボルト5の軸部が通過可能で後面側に開口する切欠き11dを有し、後面に底面の切欠き11dと連続する開口部11eが設けられている。また、後面の開口部11eと底面の切欠き11dの一部を塞ぐ後部壁11fが、その周縁部を複数のボルト18で着脱可能に取り付けられており、この後部壁11fを取り外すと、アンカーボルト5の頭部が後面の開口部11eを通って出入可能となる。
【0038】
したがって、第2実施形態の収納ケーシング10を使用した壁高欄2では、自動車の衝突等によって収納ケーシング10の交換が必要となった場合でも、その蓋12とケーシング本体11の後部壁11fを取り外すだけで、ケーシング本体11をアンカーボルト5および支圧部材6と干渉することなく前面側へスライドさせて取り出すことができ、交換作業を効率よく行うことができる。
【0039】
図7は壁高欄2の収納空間3を蓋部材20のみで密閉する密閉手段の実施形態を示す。この実施形態の密閉手段の蓋部材20は、収納空間3の開口よりも大きく形成され、その周縁部の背面に止水部材としてのゴムスポンジ21が取り付けられている。そして、この蓋部材20の周縁部をゴムスポンジ21とともに収納空間3の開口縁の全周に設けられたザグリ状の凹部8に嵌め込み、蓋部材20の周縁部の前面から凹部8の底面にあけた穴にコンクリートボルト22をねじ込むことにより、蓋部材20で収納空間3を密閉するようになっている。したがって、蓋部材20を壁高欄2に対して脱着することにより、収納空間3の開口を開閉することができる。
【0040】
ここで、蓋部材20は、前述の収納ケーシング10の蓋12と同様、コンクリートボルト22を通す孔の周縁に形成された凹部にコンクリートボルト22の頭部が入り込むようになっている。これにより、蓋部材20取付後は、その前面が壁高欄2の前面と面一になり、コンクリートボルト22の頭部も壁高欄2の前面から突出しないようになっている。
【0041】
なお、この密閉手段を用いた場合の壁高欄2の施工手順は、壁高欄2を床版1に固定した後に、壁高欄2への蓋部材20の取り付けを行うことになる。
【0042】
そして、この密閉手段を用いた壁高欄2も、前述の収納ケーシング10を用いたものと同様、収納空間3へのモルタル等の充填作業が不要となるので、設置時の工期短縮を図ることができ、設置後のアンカーボルト5の点検・取替作業を簡単に行うことができる。
【0043】
また、蓋部材20と収納空間3の開口周縁部との間がゴムスポンジ21により止水状態となるので、収納空間3へ雨水等が浸入するおそれが少なく、アンカーボルト5、支圧部材6およびナット7の腐食を防止することができる。
【0044】
また、図示は省略するが、この壁高欄2でも、前述の図4に示した収納ケーシング10の変形例と同様の防水層を収納空間3の底面上に形成して、アンカーボルト5の濡れを防止することができる。
【0045】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0046】
例えば、実施形態の収納ケーシングを用いる場合、その蓋をケーシング本体のフランジ部に取り付けず、実施形態の密閉手段の蓋部材と同様に、壁高欄の収納空間の開口縁部に取り付けるようにしてもよい。
【0047】
また、据付用締結具は各実施形態のようなアンカーボルトに限らず、壁高欄を床版に固定するものであればよいし、各実施形態のゴムスポンジは他の止水部材に代えることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 床版
2 壁高欄
3 据付用締結具収納空間
4 ボルト孔
5 アンカーボルト(据付用締結具)
6 支圧部材
7 ナット
10 据付用締結具収納ケーシング
11 ケーシング本体
11a 開口部
11b 貫通孔
11c フランジ部
11d 切欠き
11e 開口部
11f 後部壁
12 蓋
14、21 ゴムスポンジ(止水部材)
15 透水性シート
16 防水層
17 仕切り
20 蓋部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7