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特開2024-21676毛髪を処理する方法および毛髪を屈曲させる器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021676
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】毛髪を処理する方法および毛髪を屈曲させる器具
(51)【国際特許分類】
   A45D 19/02 20060101AFI20240208BHJP
   A45D 19/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A45D19/02 B
A45D19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124678
(22)【出願日】2022-08-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 開催名:Tongaliビジネスプランコンテスト(予選会)、開催年月日:令和4年5月28日、開催場所:名古屋大学ナショナル・イノベーション・コンプレックス(愛知県名古屋市千種区不老町1番)、オンライン 〔刊行物等〕開催名:Tongaliビジネスプランコンテスト(本選)、開催年月日:令和4年5月28日、開催場所:千種文化小劇場(愛知県名古屋市千種区千種3丁目6番10号)、オンライン 〔刊行物等〕企業への資料配布による公開、配布日:令和4年6月27日、配布先:株式会社博報堂プロダクツ 中部支社(愛知県名古屋市中区栄3-3-21 セントライズ栄12F)
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100179578
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100195062
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 涼子
(72)【発明者】
【氏名】武野 明義
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 綾音
(72)【発明者】
【氏名】郷 智彦
【テーマコード(参考)】
3B040
【Fターム(参考)】
3B040AE00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】毛髪処理液の効果の持続性を向上できる技術を提供する。
【解決手段】毛髪を処理する方法は、毛髪を、曲率半径10μm以上500μm以下、張力0.1MPa以上270MPa以下の条件で屈曲させる第1工程と、毛髪処理液を塗布する第2工程とを含み、毛髪を屈曲させる器具は、第1部材と第2部材とを備え、第1部材は、第1の方向に沿って延びるとともに第1の方向に垂直な第2の方向に突出する凸部を有し、第2部材は、第1の方向に沿って延びるとともに凸部の両側において毛髪を支持する一対の支持部を有し、第2の方向に沿った断面における凸部の曲率半径は10μm以上500μm以下であり、毛髪の長手方向が第1の方向と交わるように毛髪を第1部材と第2部材との間に挟み込むことによって、毛髪を30°以上120°以下の角度で屈曲させながら、毛髪に対して第1部材と第2部材とを長手方向に沿って移動させて用いられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪を処理する方法であって、
前記毛髪を、曲率半径10μm以上500μm以下、張力0.1MPa以上270MPa以下の条件で屈曲させる工程と、
前記毛髪に毛髪処理液を塗布する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記毛髪処理液は、染毛剤、染毛料、脱色剤、脱染剤、育毛剤、発毛剤、トリートメント剤、パーマ剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である、方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法において、さらに、
前記塗布する工程後、前記毛髪の温度が40℃以上150℃以下となるように前記毛髪を熱処理する工程を含む、方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の方法において、
前記屈曲させる工程は、前記毛髪の温度が40℃以上150℃以下の状態において実行される、方法。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の方法において、さらに、
前記屈曲させる工程の前に、水と界面活性剤を含む液体とのうちの少なくとも一方を前記毛髪に塗布する工程を含む、方法。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の方法において、
前記屈曲させる工程では、前記毛髪を30°以上120°以下の角度で屈曲させる、方法。
【請求項7】
毛髪を屈曲させる器具であって、
第1部材と、
第2部材と、
を備え、
前記第1部材は、
第1の方向に沿って延びるとともに、前記第1の方向に垂直な第2の方向に突出する凸部を有し、
前記第2部材は、
前記第1の方向に沿って延びるとともに、前記凸部の両側において前記毛髪を支持する一対の支持部を有し、
前記第2の方向に沿った断面における前記凸部の曲率半径は、10μm以上500μm以下であり、
前記毛髪の長手方向が前記第1の方向と交わるように前記毛髪を前記第1部材と前記第2部材との間に挟み込むことによって、前記毛髪を30°以上120°以下の角度で屈曲させながら、前記毛髪に対して前記第1部材と前記第2部材とを前記長手方向に沿って移動させて用いられる、
器具。
【請求項8】
請求項7に記載の器具において、
前記断面における前記凸部の角度が、5°以上90°以下である、器具。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の器具において、
前記第1部材と前記第2部材とが、前記第1の方向の端部において互いに接続されている、器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、毛髪を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、男性でも美容室を利用する割合が増え、頭髪の白髪染めに限らずファッション性を重視したヘアカラーの利用が活発となっている。一般に、ヘアカラーとして、第1剤に含有されるアルカリ剤と第2剤に含有される酸化剤等との酸化反応によって、毛髪を染色する酸化型の染毛剤が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2012/137877号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の染色方法では、2週間から1か月程度で退色が認められることがあり、染色の効果の持続性において改善の余地があった。このような課題は、毛髪を染色する場合に限らず、脱色、脱染、育毛、発毛、トリートメント、パーマ等、毛髪を処理する場合に共通する課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、毛髪を処理する方法が提供される。この方法は、前記毛髪を、曲率半径10μm以上500μm以下、張力0.1MPa以上270MPa以下の条件で屈曲させる工程と、前記毛髪に毛髪処理液を塗布する工程と、を含む。この形態の方法によれば、毛髪処理液の効果の持続性を向上できる。
【0007】
(2)上記(1)に記載の方法において、前記毛髪処理液は、染毛剤、染毛料、脱色剤、脱染剤、育毛剤、発毛剤、トリートメント剤、パーマ剤からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。この形態の方法によれば、毛髪処理液の効果の持続性を向上できる。
【0008】
(3)上記(1)または上記(2)に記載の方法において、さらに、前記塗布する工程後、前記毛髪の温度が40℃以上150℃以下となるように前記毛髪を熱処理する工程を含んでいてもよい。この形態の方法によれば、毛髪処理液の保持効果を高めることができるので、毛髪処理液の効果の持続性をさらに向上できる。
【0009】
(4)上記(1)から上記(3)までのいずれか一項に記載の方法において、前記屈曲させる工程は、前記毛髪の温度が40℃以上150℃以下の状態において実行されてもよい。この形態の方法によれば、毛髪処理液の浸透性を高めることができるので、毛髪処理液の効果の持続性をさらに向上できる。
【0010】
(5)上記(1)から上記(4)までのいずれか一項に記載の方法において、さらに、前記屈曲させる工程の前に、水と界面活性剤を含む液体とのうちの少なくとも一方を前記毛髪に塗布する工程を含んでいてもよい。この形態の方法によれば、界面自由エネルギーを低下させることができるので、毛髪処理液の浸透効果を高めることができ、この結果として、毛髪処理液の効果の持続性をさらに向上できる。
【0011】
(6)上記(1)から上記(5)までのいずれか一項に記載の方法において、前記屈曲させる工程では、前記毛髪を30°以上120°以下の角度で屈曲させてもよい。この形態の方法によれば、毛髪処理液の浸透性を高めることができるので、毛髪処理液の効果の持続性をさらに向上できる。
【0012】
(7)本発明の他の形態によれば、毛髪を屈曲させる器具が提供される。この器具は、第1部材と、第2部材と、を備え、前記第1部材は、第1の方向に沿って延びるとともに、前記第1の方向に垂直な第2の方向に突出する凸部を有し、前記第2部材は、前記第1の方向に沿って延びるとともに、前記凸部の両側において前記毛髪を支持する一対の支持部を有し、前記第2の方向に沿った断面における前記凸部の曲率半径は、10μm以上500μm以下であり、前記毛髪の長手方向が前記第1の方向と交わるように前記毛髪を前記第1部材と前記第2部材との間に挟み込むことによって、前記毛髪を30°以上120°以下の角度で屈曲させながら、前記毛髪に対して前記第1部材と前記第2部材とを前記長手方向に沿って移動させて用いられる。この形態の器具によれば、毛髪を容易に処理することができる。
【0013】
(8)上記(7)に記載の器具において、前記断面における前記凸部の角度が、5°以上90°以下であってもよい。この形態の器具によれば、器具の大きさが過度に大きくなることを抑制できる。
【0014】
(9)上記(7)または上記(8)に記載の器具において、前記第1部材と前記第2部材とが、前記第1の方向の端部において互いに接続されていてもよい。この形態の器具によれば、第1部材と第2部材との間に毛髪を容易に挟み込むことができるので、毛髪の処理効率を高めることができる。
【0015】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能である。例えば、毛髪を染色する方法、毛髪を脱色する方法、毛髪を脱染する方法、育毛方法、発毛方法、毛髪を処理するキット、毛髪を屈曲させる器具の製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】毛髪を処理する方法を示す工程図。
図2】毛髪を屈曲させる器具の概要を示す斜視図。
図3】第2実施形態としての毛髪を処理する方法を示す工程図。
図4】他の実施形態における器具の概略構成を示す斜視図。
図5】毛髪を処理するために用いた装置を示す説明図。
図6】色落ち試験の結果を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.第1実施形態
図1は、本開示の一実施形態としての、毛髪を処理する方法を示す工程図である。毛髪を処理する方法は、毛髪を、曲率半径10μm以上500μm以下、張力0.1MPa以上270MPa以下の条件で屈曲させる工程(P110)と、毛髪処理液を塗布する工程(P120)とを含む。本開示における毛髪は、特に限定されないが、例えば、ヒトの頭髪、髭、眉毛、すね毛等の体毛や、イヌやネコ等のペットの体毛、ウマやヒツジ等の家畜の体毛、その他の動物の体毛が挙げられる。また、本開示における毛髪には、人毛等の天然繊維によって形成されたウィッグ、エクステンション等も含まれる。
【0018】
毛髪を、上記条件で屈曲させる工程(以下、「第1工程」とも呼ぶ)では、毛髪を屈曲させる器具を用いて、毛髪を屈曲させる。毛髪を屈曲させる器具としては、上記の条件で毛髪を屈曲できる限り、特に限定されない。毛髪を屈曲させる器具の一例を、以下に示す。
【0019】
図2は、毛髪を屈曲させる器具の概要を示す斜視図である。器具100は、第1部材10と、第2部材20とを備える。第1部材10と第2部材20とは、後述するように、互いに対向するように組み合わせて用いられる。
【0020】
第1部材10は、凸部11と、一対の受部12とを有する。凸部11は、第1の方向D1に沿って延設されている。凸部11は、第1の方向D1に垂直な第2の方向D2に突出している。本開示における「垂直」には、90°に交わることに限らず、80°~100°の略垂直に交わることも含まれる。凸部11は、毛髪を局所的に曲げて、毛髪に張力を加える機能を有する。第2の方向D2に沿った断面、すなわち第1の方向D1に垂直な断面において、凸部11の曲率半径Rは、10μm以上500μm以下に形成されている。凸部11の曲率半径Rは、15μm以上400μm以下であることが好ましく、30μm以上300μm以下であることがより好ましく、50μm以上250μm以下であることがさらに好ましく、80μm以上200μm以下であることが特に好ましい。上記下限値以上とすることにより、毛髪が切断することや毛髪へのダメージを抑制できる。また、上記上限値以下とすることにより、毛髪処理液の浸透性を向上させることができる。凸部11の曲率半径Rは、処理を行う毛髪の種類や髪質、太さ等に応じて設定されてもよい。
【0021】
図2に示す例において、第2の方向D2に沿った断面における凸部11の角度θは、5°以上90°以下に形成されている。角度θは、5°以上90°以下であることが好ましく、10°以上80°以下であることがより好ましく、15°以上70°以下であることがさらに好ましい。上記下限値以上とすることにより、毛髪が切断することや毛髪へのダメージを抑制できる。また、上記上限値以下とすることにより、器具100の大きさが過度に大きくなることを抑制できる。
【0022】
一対の受部12は、凸部11の両端にそれぞれ連なって形成されている。一対の受部12は、第1の方向D1に沿って延びるとともに、凸部11と略平行に形成されている。一対の受部12は、器具100の使用状態において、後述する一対の支持部22と対向する。図2に示す例において、一対の受部12は、それぞれ凸部11に連なる略平坦な面によって形成されているが、任意の形状を有していてもよい。なお、一対の受部12は、省略されていてもよい。
【0023】
第2部材20は、連結部21と、一対の支持部22とを有する。連結部21は、一対の支持部22を互いに連結している。図2に示す例において、連結部21は、第1の方向D1に沿って延びて形成されており、器具100の使用状態において、凸部11と対向する。図2に示す例において、連結部21は、略平坦な面によって形成されているが、任意の形状を有していてもよい。連結部21は、例えば第1の方向D1の端部において一対の支持部22を互いに連結する等、任意の構成を有していてもよい。なお、連結部21は、省略されていてもよい。
【0024】
一対の支持部22は、第1の方向D1に沿って延びるとともに、凸部11の両側において毛髪を支持する。一対の支持部22は、器具100の使用状態において凸部11を挟むように設けられている。このため、第2の方向D2に沿った断面において、凸部11は、一対の支持部22の間に位置している。図2に示す例において、一対の支持部22は、連結部21にそれぞれ連なって形成されている。図2に示す例において、一対の支持部22は、一対の受部12と対向している。図2に示す例において、一対の支持部22は、凸部11が突出する方向とは反対の方向に突出して形成されている。なお、一対の支持部22は、例えば第1の方向D1に延設された一対の円筒部材やゴムローラー等、凸部11の両側において毛髪を支持することが可能な任意の構成を有していてもよい。
【0025】
図2に示す例において、第1部材10は、1つの凸部11を有しているが、複数の凸部11を有する態様であってもよい。この態様において、複数の凸部11は、互いに略平行に形成されていてもよい。また、図2に示す例において、第2部材20は、一対の支持部22を有しているが、複数対の支持部22を有する態様であってもよい。この態様において、複数対の支持部22は、互いに略平行に形成されていてもよい。一対の支持部22の数は、凸部11の数に応じて設定されていてもよい。
【0026】
第1部材10と第2部材20とは、樹脂材料や金属材料等の任意の材料によって形成されていてもよい。樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、ABS樹脂等が挙げられる。金属としては、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、鉄等が挙げられる。第1部材10と第2部材20とは、それぞれ2種以上の材料によって形成されていてもよく、互いに同じ材料によって形成されていてもよく、互いに異なる材料によって形成されていてもよい。
【0027】
器具100を使用する際、すなわち図1に示す第1工程(P110)では、毛髪の長手方向が第1の方向D1と交わるように毛髪を第1部材10と第2部材20との間に挟み込む。このとき、毛髪の長手方向が第1の方向D1と略垂直に交わるように毛髪を第1部材10と第2部材との間に挟み込むことが好ましい。そして、毛髪を30°以上120°以下の角度で屈曲させながら、毛髪に対して第1部材10と第2部材20とを長手方向に沿って移動させる。このとき、曲率半径10μm以上500μm以下、張力0.1MPa以上270MPa以下の条件で毛髪を局所的に屈曲させ、その屈曲させた箇所を長手方向に沿って移動させる。第1工程は、毛髪処理液の浸透性を向上させるために、複数回繰り返し実施されてもよい。
【0028】
第1工程における張力は、0.5MPa以上180MPa以下であることが好ましく、5MPa以上160MPa以下であることがより好ましく、30MPa以上140MPa以下であることがさらに好ましく、50MPa以上120MPa以下であることがより一層好ましい。上記下限値以上とすることにより、毛髪処理液の浸透性を向上させることができる。また、上記上限値以下とすることにより、毛髪の切断や毛髪へのダメージを抑制することができる。第1工程における張力は、毛髪処理液の浸透性を向上させる観点から、処理を行う毛髪の破断強度の40%以上に設定されることが好ましく、80%以上に設定されることがより好ましい。第1工程における張力は、毛髪の切断や毛髪へのダメージを抑制する観点から、処理を行う毛髪の破断強度の95%以下に設定されることが好ましく、90%以下に設定されることがより好ましい。破断強度は、毛髪に対して単純引張試験を行い、その結果として得られる応力ひずみ曲線に基づいて求めることができる。第1工程における張力は、処理を行う毛髪の種類や髪質、太さ、破断強度等に応じて設定されてもよい。第1工程における張力は、荷重を制御するための図示しない重りによって調整されてもよい。また、第1工程における張力は、図示しない制御装置によって制御されてもよい。
【0029】
第1工程では、毛髪を30°以上120°以下の角度で屈曲させることが好ましい。毛髪を30°以上120°以下の角度で屈曲させることにより、毛髪処理液の浸透性を高めることができる。毛髪の屈曲角度は、毛髪の切断や毛髪へのダメージを抑制する観点から、40°以上であることがより好ましく、50°以上であることがさらに好ましく、60°以上であることが特に好ましい。毛髪の屈曲角度は、毛髪処理液の浸透性を高める観点から、110°以下であることがより好ましく、100°以下であることがさらに好ましく、90°以下であることが特に好ましい。毛髪の屈曲角度は、処理を行う毛髪の種類や髪質、太さ等に応じて設定されてもよい。
【0030】
第1工程において第1部材10と第2部材20とを毛髪に対して移動させる速度は、毛髪処理液の浸透性を向上させる観点から、200mm/分以下であることが好ましく、150mm/分以下であることがより好ましく、100mm/分以下であることがさらに好ましく、80mm/分以下であることがより一層好ましく、60mm/分以下であることが特に好ましい。また、移動速度は、処理時間を短縮する観点から、20mm/分以上であることが好ましく、40mm/分以上であることがより好ましく、50mm/分以上であることがさらに好ましい。移動速度は、処理を行う毛髪の種類や髪質、太さ等に応じて設定されてもよい。また、移動速度は、毛髪を送り出すための図示しないモーターを含む装置や、図示しない速度制御機によって制御されてもよい。
【0031】
第1工程は、毛髪の温度が40℃以上150℃以下の状態において実行されてもよい。毛髪の温度を制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、ドライヤーや加温機(ローラーボール)、遠赤外線促進機等を用いてもよい。第1工程における毛髪の温度は、毛髪処理液の浸透効果を高める観点から、20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましい。また、第1工程における毛髪の温度は、毛髪のダメージを抑制する観点から、120℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。第1工程における毛髪の温度は、処理を行う毛髪の種類や髪質、太さ等に応じて設定されてもよい。
【0032】
毛髪に毛髪処理液を塗布する工程(以下、「第2工程」とも呼ぶ)では、毛髪に毛髪処理液を塗布する。毛髪処理液としては、特に限定されないが、例えば、染毛剤、染毛料、脱色剤、脱染剤、育毛剤、発毛剤、トリートメント剤、パーマ剤等が挙げられる。
【0033】
染毛剤としては、特に限定されないが、例えば、酸化染毛剤や非酸化染毛剤が挙げられる。酸化染毛剤としては、特に限定されないが、例えば、パラフェニレンジアミン、メタアミノフェノール、パラアミノフェノール、トルエン-2,5-ジアミン等の酸化染料を含む1剤と、過酸化水素を含む2剤とを混合して使用するものが挙げられる。非酸化染毛剤としては、特に限定されないが、例えば、タンニン酸、ピロガロール等の多価フェノールを含む1剤を毛髪に塗布した後に、硫酸第一鉄等を含む2剤を毛髪に塗布して用いるものが挙げられる。
【0034】
染毛料としては、特に限定されないが、例えば、黒色401号等の酸性染料を含み、酸性下で毛髪を染めるものや、塩基性茶16等の染料を含み、弱酸性~弱アルカリ性下で毛髪を染めるものや、顔料等の着色料を含むものが挙げられる。脱色剤としては、特に限定されないが、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩や、過酸化水素を含むことによって、毛髪のメラニン色素を分解するものが挙げられる。脱染剤としては、特に限定されないが、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩と、過酸化水素とを含むことにより、毛髪に残存する色素を分解するものが挙げられる。
【0035】
育毛剤としては、特に限定されないが、例えば、アデノシン、塩化カルプロニウム、センブリエキス、t-フラバノン、ペンタデカン、ビタミンB5(パントテニルエチルエーテル)、ヒノキチオール等の育毛成分を含むものが挙げられる。発毛剤としては、特に限定されないが、例えば、ミノキシジル等の発毛促進成分を含むものが挙げられる。トリートメント剤としては、特に限定されないが、例えば、カチオン界面活性剤を含むものが挙げられる。パーマ剤としては、特に限定されないが、例えば、チオグリコール酸やシステイン等の還元剤を含む1剤と、臭素酸塩や過酸化水素等の酸化剤を含む2剤とを用いるものが挙げられる。
【0036】
毛髪処理液には、他の任意の成分が含まれていてもよい。他の任意の成分としては、特に限定されないが、例えば、ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン群、亜鉛、鉄、カルシウム、カリウム等のミネラル群、シアバターやホホバオイル等の植物性オイル、界面活性剤、シリコン、アミノ酸、ポリペプチド、セラミド、イソフラボン、タンパク質、ケラチン、シスチン、コラーゲン等が挙げられる。毛髪処理液は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、毛髪処理液の形態は、液状に限らず、クリーム状、乳液状、ジェル状、エアゾール状、泡状等であってもよい。
【0037】
第2工程は、第1工程後に実施されてもよく、第1工程と同時に実施されてもよい。第1工程と同時に実施されることにより、毛髪処理液の浸透効果を高めることができる。また、第1工程と同時に実施されることにより、毛髪の処理時間を短縮できる。第1工程の実行後に第2工程を実施する場合、第1工程後すみやかに第2工程を実施することが好ましい。本実施形態の毛髪を処理する方法は、第2工程の実施完了により、完了する。
【0038】
以上説明した第1実施形態の毛髪を処理する方法によれば、曲率半径10μm以上500μm以下、張力0.1MPa以上270MPa以下の条件で毛髪を屈曲させる工程を含むことによって、毛髪処理液の効果の持続性を向上できる。このメカニズムは定かではないが、以下のようなメカニズムが推定される。すなわち、毛髪を局所的に曲げることによって、高分子フィルム等を曲げた時に生じるクレージング現象(白化現象)と同様の状態が毛髪に生じることが推定される。毛髪に局所的な曲げを形成し、この曲げを長手方向に沿って移動させることにより、毛髪の長手方向の全体に亘ってクレーズが生じ得る。毛髪がクレーズによってナノ多孔状態になると、その多孔に毛髪処理液が浸透して保持されると考えられる。したがって、例えばヘアカラーの場合、従来のヘアカラーが化学的な反応により染色を行うものであるのに対し、本実施形態の毛髪処理方法では、毛髪を多孔化して色素等の薬剤を浸透させた後に閉じ込める物理的な方法であるといえる。この結果として、ヘアカラー等の毛髪処理液の効果の持続性を向上できると考えられる。なお、以降の説明では、上記推定メカニズムに基づいて、第1工程の処理を「多孔化処理」とも呼ぶ。
【0039】
本実施形態の方法によれば、毛髪処理液の効果の持続性を向上できるので、美容室等に通う頻度を低くでき、利用者の利便性を向上できる。また、本実施形態の方法によれば、毛髪処理液として毛髪や皮膚へのダメージの大きい薬剤の使用量を軽減でき、またはそのような薬剤を使用しないようにできる。この結果として、毛髪や皮膚へのダメージを抑制できる。また、本実施形態の方法によれば、毛髪処理液としてアレルギーを引き起こす可能性のある薬剤の使用量を軽減でき、またはそのような薬剤を使用しないようにできる結果として、薬剤アレルギーがある利用者にも毛髪の処理を行うことができる。
【0040】
また、本実施形態の方法によれば、毛髪の処理に要する工数が増加することを抑制できるので、毛髪の処理に要するコストが増大することを抑制できる。また、本実施形態の方法によれば、毛髪の処理に要する時間を短くできるので、利用者の利便性を向上できる。また、本実施形態の方法によれば、容易に毛髪を処理できるので、毛髪処理の省力化を図ることができる。この結果として、美容室や理容室等における利用に限らず、セルフヘアカラー等の被適用者自身により毛髪を処理する際にも利用できる。また、本実施形態の方法によれば、ヒトの毛髪に限らず、動物の毛に対しても利用できる。また、本実施形態の方法を繰り返し実施することにより、染色後に脱色を行い、さらに染色を行う等、再カラーリングを容易に行うことができる。
【0041】
B.第2実施形態
図3は、第2実施形態としての毛髪を処理する方法を示す工程図である。第2実施形態の方法は、毛髪を上記条件で屈曲させる第1工程(P110)の前に、水と界面活性剤を含む液体とのうちの少なくとも一方を塗布する工程(P100)をさらに含む。また、第2実施形態の方法は、毛髪に毛髪処理液を塗布する第2工程(P120)の後に、毛髪の温度が40℃以上150℃以下となるように毛髪を熱処理する工程(P130)をさらに含む。その他の工程については、第1実施形態の方法と同様であるため、その詳細な説明を省略する。以下の説明では、水と界面活性剤を含む液体とのうちの少なくとも一方を塗布する工程(P100)を、「前工程」とも呼び、毛髪の温度が40℃以上150℃以下となるように毛髪を熱処理する工程(P130)を、「第3工程」とも呼ぶ。なお、前工程と第3工程とは、いずれか一方が省略されてもよい。
【0042】
前工程では、水と界面活性剤を含む液体とのうちの少なくとも一方を、毛髪に塗布する。界面活性剤を含む液体としては、特に限定されないが、例えば、石鹸水、アルコール、化粧水、乳液、保湿液、美容液等が挙げられる。水と界面活性剤を含む液体とのうちの少なくとも一方を毛髪に塗布することによって、表面張力を調整して界面自由エネルギーを低下させることができるので、毛髪処理液の浸透効果を高めることができる。また、水と界面活性剤を含む液体とのうちの少なくとも一方を毛髪に塗布することによって、第1工程において毛髪を処理する器具によって発生する摩擦力を低減できるため、処理効率の低下を抑制できる。
【0043】
第3工程では、毛髪の温度が40℃以上150℃以下となるように毛髪を熱処理する。熱処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、ドライヤーや加温機(ローラーボール)、遠赤外線促進機等を用いてもよい。第3工程を行うことによって、毛髪処理液の保持効果を高めることができるので、毛髪処理液の効果の持続性をさらに向上できる。このメカニズムは定かではないが、以下のようなメカニズムが推定される。すなわち、第1工程により多孔化した毛髪の孔が、第3工程の熱処理によって収縮し、毛髪処理液が孔の内部に固定されることが推定される。以降の説明では、多孔化した毛髪の孔が熱によって閉じることおよびその熱処理を、「ヒーリング」とも呼ぶ。
【0044】
第3工程における毛髪の温度は、多孔化した毛髪の孔を十分に収縮させる観点から、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。また、第3工程における毛髪の温度は、毛髪のダメージを抑制する観点から、120℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。第3工程は、多孔化した毛髪の孔を十分に収縮させる観点から、5分以上であることが好ましく、10分以上であることがより好ましく、15分以上であることがさらに好ましい。また、第3工程は、処理に要する時間が過度に長くなることを抑制する観点から、30分以下であることが好ましく、20分以下であることがより好ましい。第3工程における毛髪の温度や熱処理の時間は、処理を行う毛髪の種類や髪質、太さ等に応じて設定されてもよい。
【0045】
第2工程の後、第3工程までの間に、毛髪処理液の塗布状態を保持する工程をさらに備えていてもよい。この工程は、毛髪を風乾する工程によって実現されてもよい。この工程では、毛髪を室温程度の風で乾かすことが想定される。毛髪を風乾する方法としては、特に限定されないが、例えば、ドライヤーや送風機を用いてもよい。塗布状態を保持する工程をさらに備えることにより、毛髪処理液の浸透効果を高めることができる。毛髪処理液の塗布状態を保持する工程は、毛髪処理液を十分に浸透させる観点から、5分以上であることが好ましく、10分以上であることがより好ましい。また、毛髪処理液の塗布状態を保持する工程は、処理に要する時間が過度に長くなることを抑制する観点から、30分以下であることが好ましく、15分以下であることがより好ましい。毛髪処理液の塗布状態を保持する時間は、処理を行う毛髪の種類や髪質、太さ等に応じて設定されてもよい。
【0046】
毛髪処理液の塗布状態を保持する工程の後、第3工程までの間に、または、第3工程の後に、毛髪処理液の余剰分を除去する工程をさらに備えていてもよい。この工程では、毛髪処理液の余剰分を、水や洗浄剤等を用いて洗い流すことや、タオルや布等を用いて拭い取ること等が想定される。
【0047】
C.他の実施形態
図4は、他の実施形態における器具100aの概略構成を示す斜視図である。上記実施形態における器具100の構成は、あくまで一例であり、種々変更可能である。例えば、図4に示す器具100aのように、第1部材10と第2部材20とが、第1の方向D1の端部において互いに接続されていてもよい。このような構成によれば、第1部材10と第2部材20との間に毛髪をより容易に挟み込むことができる。この結果として、毛髪を屈曲させる処理の効率をより高めることができ、また、使い勝手を向上できる。また、毛髪を屈曲させる器具100は、毛髪に所定の張力を加えるための機構を備えていてもよい。このような機構は、例えば、第1部材10と第2部材20との間に設けられた図示しないバネや弾性部材、磁石等によって実現されてもよく、テコの原理を利用して実現されてもよい。このような構成によれば、毛髪に加える張力の値が変動することを抑制できる。
【実施例0048】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
1.試料および材料
毛髪として、太さ約200μmの馬毛を用いた。馬毛を約40cmの長さに切り出し、約200本の束にまとめて実施例および比較例の試料とした。毛髪処理液として、以下の染毛剤を用いた。色落ち試験の洗浄剤として、以下のシャンプーを用いた。
【0050】
<染毛剤>
ビューティーンメイクアップカラー ワイルドレッド(ホーユー株式会社製)
・1剤
有効成分:5-アミノオルトクレゾール、2,6-ジアミノピリジン、1-ヒドロキシエチル-4、5-ジアミノピラゾール硫酸塩
その他の成分:HEDTA・3Na2水塩、PG、POEオレイルエーテル、POE・ジメチコン共重合体、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、アスコルビン酸、強アンモニア水、高重合PEG、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ステアルトリモニウムクロリド、セタノール、タウリン、ツバキ油、テアニン、ヒマワリ油-1、ポリ塩化ジメチルジメチレンピロリジニウム液、無水亜硫酸Na、モノエタノールアミン、香料
・2剤
有効成分:過酸化水素水
その他の成分:POEセチルエーテル、POE(21)ラウリルエーテル、アルキルグリコシド、クエン酸、ステアリルアルコール、ステアルトリモニウムクロリド、セタノール、パルミチン酸、フェノキシエタノール、ラウリルアルコール、ラウリルジメチルベタイン
【0051】
<シャンプー>
エッセンシャルシャンプーsR(花王株式会社製)
成分:水、ラウレス硫酸アンモニウム、エタノール、ジステアリン酸グリコール、ラウリルヒドロキシスルタイン、ラウラミドプロピルベタイン、リンゴ酸、ヒマワリ種子油、ラノリン脂肪酸、コハク酸2Na、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、PPG-2ヒドロキシプロピルトリモニウムセルロース、PPG-3カプリリルエーテル、PPG-7、コカミドMEA、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、イソデシルグリセリルエーテル、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-52、ラウレス-4、ラウレス-4カルボン酸Na、ラウレス-16、ラウレス-23、ラウレス硫酸Na、ステアロキシプロピルジメチルアミン、(ビスイソブチルPEG-14/アモジメチコン)コポリマー、ジメチコン、水酸化Na、安息香酸Na、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、香料
【0052】
2.毛髪の処理
図5は、毛髪を処理するために用いた装置を示す説明図である。図5では、図示の便宜上、装置200の一部を抜き出して示している。図5に示す装置200は、刃210と、4つのローラー220とを有している。なお、図5では、説明の便宜上、処理対象の毛髪Hが図示されている。毛髪Hには、荷重を制御するための図示しない重りが接続されている。
【0053】
刃210は、図2に示す器具100における凸部11に相当し、毛髪Hに局所的な曲げによる張力を加える。4つのローラー220のうち、紙面上側に示す2つのローラー220は、図2に示す器具100における一対の受部12に相当し、紙面下側に示す2つのローラー220は、図2に示す器具100における一対の支持部22に相当する。4つのローラー220は、毛髪Hを滑らないように固定するとともに、図5において曲線の矢印で示される方向にそれぞれ回転することにより、処理方向に毛髪Hを送り出す。ローラー220は、図示しない速度制御機に接続されており、回転速度が変更可能に構成されている。装置200の利用者は、ローラー220の回転速度を変えることにより、毛髪Hの処理速度を任意に変更することができる。装置200は、ローラー220が速度制御機に接続されていることにより、毛髪Hを定速で送り出すことができる。また、装置200の利用者は、図示しない重りの重さを調整することにより、処理荷重を調整できる。また、装置200の利用者は、刃210の毛髪H側への押し込み具合を調整することによって、毛髪Hを屈曲させる角度φを調整できる。処理荷重と角度φとを調整できる結果として、毛髪Hにかかる曲げ応力を調整することができる。
【0054】
(1)第1工程(毛髪の多孔化処理)
実施例における毛髪の処理の具体的内容を以下に説明する。実施例の試料を、図5に示す装置200に設置した。毛髪Hの一端に荷重をかけ、ローラー220で挟み込むことで固定した。装置200を作動させることによりローラー220を回転させ、毛髪Hに生じる局所的な曲げを毛髪Hの長手方向に沿って移動させることで試料全体を処理した。刃210としてステンレス鋼製の刃を使用した。刃先の角度θは26.3°、刃先の曲率半径Rは100μmであった。試料の屈曲角度φを90°、ローラーの回転速度を20mm/minとした。また、荷重を0.95MPaとして試料に張力を加えた。多孔化処理は、室温、空気中で行い、処理回数は2回とした。
【0055】
(2)第2工程(毛髪の染色処理)
1剤40gと2剤88mLとを蓋付きの容器に入れ、その後、容器を上下に30回振ることにより1剤と2剤とを混合した。この混合液(毛髪処理液)を、多孔化処理を行った試料(実施例)と、多孔化処理を行わなかった試料(比較例)とにそれぞれ塗布した。塗布する試料は、乾燥状態とした。毛髪処理液の塗布は、室温、空気中で行った。毛髪処理液の塗布後、25分間放置して薬液を浸透させた。その後、毛髪の表面に付着した薬液を水で洗浄した後、ドライヤーを用いて100℃の熱風を毛髪に10分間あてて乾燥させた。なお、この乾燥は、実施例の試料においてヒーリングに相当する。
【0056】
3.色落ち試験
実施例および比較例において、毛髪の洗浄を1か月間行うことを想定して、染色後の試料を30回シャンプーした。1回あたりシャンプーをワンプッシュ(約3mL)用い、試料全体に十分に揉みこんだ後、水で洗浄し、その後、水気を軽く拭き取った。この操作を30回繰り返した。試料を乾燥させた後、以下の方法により試料の色を比較することにより、色落ち具合を調べた。
【0057】
図6は、色落ち試験の結果を示す説明図である。図6では、実施例および比較例の毛髪について、色落ち試験前後の写真をそれぞれ示している。また、各写真における毛髪の色番号(6桁のHTMLカラーコード)およびRGBを、表1に示す。なお、毛髪の色番号は、ウェブサイト「カラーサイト.com」の「画像の色解析」(https://www.color-site.com/image_pickers)によって調べた。
【0058】
【表1】
【0059】
図6および表1に示す結果から、以下のことがわかった。すなわち、多孔化処理を行った実施例の毛髪は、多孔化処理を行わなかった比較例の毛髪と比べて、1か月間分に相当するシャンプーの色落ち試験後における色の変化が少なく、色の持続性が大きく向上することがわかった。このことは、毛髪に局所的な曲げを加えたことにより、図5に示す刃210に接する側とは反対側、すなわち曲げの外側における繊維が引っ張られて微細な隙間が形成され、その隙間に薬液が浸透しやすくなった結果だと考えられる。さらに、実施例の毛髪では、隙間の中に含浸された薬液が、ヒーリングによって流出しにくくなり、この結果として、色の持続性に大きな差が生じたと考えられる。
【0060】
4.毛髪を屈曲させる器具の作製例
3Dプリンターを用いて、毛髪を屈曲させる器具を作製した。作図ソフトとして、Autodesk Fusion 360およびPreformを用いた。3Dプリンターとして光造形方式のformlabs Form 3+、専用洗浄機としてForm Wash、専用二次硬化機としてForm Cureを用いた(いずれもFormlabs INC.製)。樹脂として以下に示すClear Resinを用いた。
【0061】
<3Dプリンターレジン>
Clear Resin(Formlabs INC.製)
成分:ウレタンジメタクリレート(55-75質量%)、メタクリレートモノマー(15-25質量%)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(<0.9質量%)
【0062】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
10…第1部材、11…凸部、12…受部、20…第2部材、21…連結部、22…支持部、100、100a…器具、200…装置、210…刃、220…ローラー、D1…第1の方向、H…毛髪、R…曲率半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6