(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021687
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】バイオマスの微粒化方法
(51)【国際特許分類】
B02C 19/00 20060101AFI20240208BHJP
B02C 25/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B02C19/00 101Z
B02C25/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124701
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】祖山 均
(72)【発明者】
【氏名】北川 尚美
(72)【発明者】
【氏名】廣森 浩祐
(72)【発明者】
【氏名】久慈 千栄子
【テーマコード(参考)】
4D067
【Fターム(参考)】
4D067CG03
4D067FF13
4D067FF15
4D067GA11
4D067GA14
4D067GA15
4D067GA17
4D067GB10
(57)【要約】
【課題】直径1mm以上のバイオマスを含有するバイオマススラリーを、バイオマスの濃度が20質量%以上であっても、流動キャビテーションで処理することができ、バイオナノファイバーやバイオマイクロクリスタルを製造することができるバイオマスの微粒化方法を提供する。
【解決手段】バイオマスを0.1~50質量%混濁させた液体を、0.5MPa~4MPaに加圧して、流路断面積が連続的に可変な絞り部に導入して流動キャビテーションを発生させ、その流動キャビテーションにより、液体中のバイオマスを粉砕および解繊する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを0.1~50質量%混濁させた液体を、0.5MPa~4MPaに加圧して、流路断面積が連続的に可変な絞り部に導入して流動キャビテーションを発生させ、その流動キャビテーションにより、前記液体中の前記バイオマスを粉砕および解繊することを特徴とするバイオマスの微粒化方法。
【請求項2】
前記絞り部の上流側圧力により、前記絞り部の前記流路断面積を制御することを特徴とする請求項1に記載のバイオマスの微粒化方法。
【請求項3】
前記絞り部の上流側圧力により前記絞り部の前記流路断面積を制御し、前記絞り部の下流側圧力により、前記絞り部の下流に設置した流量調節弁で、前記絞り部と前記流量調節弁との間の圧力を制御することを特徴とする請求項1に記載のバイオマスの微粒化方法。
【請求項4】
前記絞り部の上流側を2方向に分岐して、1方向を前記絞り部に連結し、他方向をばねにより保持力を制御できるピストンを有する容器に連結し、前記ピストンの位置により前記絞り部の開度を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のバイオマスの微粒化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料、医薬、食品、化粧分野におけるバイオナノファイバーやバイオマイクロクリスタル等を製造するためのバイオマスの微粒化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セルロースを0.25~2.0質量%含有する液体を、10MPaから400MPaの操作圧力での高圧分散機による処理により、平均繊維径を3.1nm~4.4nmにできることが報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、バイオマスの濃度が10~20質量%の分散流体を、100~245MPaでボール状または平板状のセラミック硬質体に噴射して、繊維径が100nm以下のナノファイバーが得られることが報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、アニオン変性セルロースを1~2.5質量%有する分散流体を、9MPaのキャビテーション噴流装置により処理して、アニオン変性セルロースナノファイバーが得られることが報告されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
また、本発明者らは、バガスなどのサトウキビや甜菜、キャッサバ等から糖やデンプンを絞った滓を粉砕して、長径500μm未満とした粉砕バガスを混入した5質量%のバガススラリーを、ポンプで1.0MPaに加圧してベンチュリ管に導入し、発生させた流動キャビテーションで処理することで、バガス片をほぐして細くすれば糖化収率が向上することを報告している(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
また、本発明者らは、ベンチュリ管を用いた流動キャビテーションでセルロースを解繊する場合には、キャビテーションが発生しないベンチュリ管中心部をセルロースが通過する可能性があることから、粒径80μm程度のセルロース粒子を0.5質量%含有する液体を流動キャビテーションで処理した結果、絞り部直径が1mmのベンチュリ管よりも、絞り部直径が0.7mmのベンチュリ管のほうが、解繊の効率が15.6倍良いことを報告している(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
また、本発明者らは、ベンチュリ管の絞り部の下流側に設置した流量調節弁により、絞り部と当該流量調節弁との間の圧力の制御により、流動キャビテーションの強さを強力化できることを報告している(例えば、非特許文献2参照)。
【0008】
なお、本発明者らは、バタフライ弁下流に、強力な衝撃力を生じる高壊食性渦キャビテーションが発生することを報告している(例えば、非特許文献3参照)。
【0009】
また、ボール弁をある開度以下に絞った状態において液体を流した場合、圧力、流速等によってはキャビテーションが発生することから、キャビテーションによる騒音や振動、壊食を抑制するために、キャビテーションを抑制する形状が報告されている(例えば、特許文献5参照)。
【0010】
また、ボール弁の孔を小径にして複数設けることにより、ボール弁でキャビテーションを発生させるとともに、ボール弁の開度により、キャビテーションの発生量を制御する方法が報告されている(例えば、特許文献6参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第5108587号公報
【特許文献2】特許第5248158号公報
【特許文献3】特許第6737978号公報
【特許文献4】特開2021-73895号公報
【特許文献5】実全平03-000386号公報
【特許文献6】特開平09-133226号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】祖山均、「ベンチュリ管を用いた流動キャビテーションによるセルロースの解繊における絞り部口径の影響」、混相流シンポジウム2021講演論文集、2021年、E0144
【非特許文献2】Hitoshi Soyama, “Luminescence intensity of vortex Cavitation in a Venturi tube changing with cavitation”, Ultrasonics Sonochemistry, 2021, Vol. 71, 105389
【非特許文献3】祖山均ほか、「バタフライ弁まわりの高壊食性 渦キャビテーションの高速写真観察」、日本機械学会論文集B編、1994年、60巻、1133-1138頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に記載されている方法では、セルロースの濃度が0.25~2.0質量%であり、20質量%以上の高濃度のバイオマススラリーは処理できず、また、操作圧力として10MPa以上が必要であるという課題があった。
【0014】
特許文献2に記載されている方法では、実施例でのオリフィスノズル径が0.5mmであり、分散流体を高圧噴射するノズル直径としては、0.1~0.8mm程度であることから、直径1mmを超えるバイオマス粒子を処理することはできず、また、100MPa以上の噴射圧力が必要であるという課題があった。
【0015】
特許文献3に記載されている方法では、アニオン変性セルロースの濃度が1~2.5質量%であり、20質量%以上の高濃度のバイオマススラリーは処理できず、9MPa程度の噴射圧力が必要であるという課題があった。
【0016】
特許文献4、非特許文献1および2に記載の、本発明者らが先に開発した方法では、比較的低い圧力で発生させた流動キャビテーションを利用するものであるが、バガスを粉砕した後に篩分して、粉砕バガスの長径を0~500μmにする必要があり、非特許文献1に記載されているように、ベンチュリ管の絞り部の直径を0.7mm程度にするのが望ましいので、ベンチュリ管が閉塞する危険性があるという課題があった。
【0017】
なお、非特許文献3に記載のように、バタフライ弁などの流量調節弁において流動キャビテーションが発生することは知られているが、キャビテーションによる振動や損傷対策が主であり、キャビテーションを積極的に利用することはない。特許文献5に記載のように、ボール弁の場合も、キャビテーションによる壊食や振動の抑制が主であり、また、特許文献6に記載のように、キャビテーション発生に用いる方法では、弁体の複数個の小孔の数を開度によって調整するものであり、バイオマスなどの固体物を処理する場合には、小孔が閉塞してしまうために処理することができない。
【0018】
本発明の目的は、直径1mm以上のバイオマスを含有するバイオマススラリーを、バイオマスの濃度が20質量%以上であっても、流動キャビテーションで処理することができ、バイオナノファイバーやバイオマイクロクリスタルを製造することができるバイオマスの微粒化方法を提供することにある。また、本発明は、バイオマススラリーを粉砕や篩分することなく、安価で簡便な方法で効率よく流動キャビテーションで処理することができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を行った。具体的には、オリフィスやノズル、ベンチュリ管などで流動キャビテーションを発生させる場合には、絞り部断面積が不変であるが、絞り部断面積を変えて流動キャビテーションを発生させれば、高濃度のバイオマスを混濁した液体を流動キャビテーションで処理できる可能性があることに着目して検討を行った。しかし、バタフライ弁は、流路断面積が狭い場合には、開度の角度の変化に対して流路断面積の変化が大きく、流動キャビテーションの発生量の制御には不適であることが判明した。流量調節弁などを用いた流動キャビテーションの発生に関して、さらに検討を進めた結果、流路断面積が連続的に可変な絞り部を用いて流動キャビテーションを発生させた場合には、1mm以上のバイオマス粒子を含有し、バイオマスの濃度が20質量%以上の混濁液も処理できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
すなわち、本発明に係るバイオマスの微粒化方法は、バイオマスを混濁させた液体を、0.5MPa~4MPaに加圧して、流路断面積が連続的に可変な絞り部に導入して流動キャビテーションを発生させ、その流動キャビテーションにより、前記液体中の前記バイオマスを粉砕および解繊することを特徴とする。
【0021】
本発明に係るバイオマスの微粒化方法は、前記絞り部の上流側圧力により、前記絞り部の前記流路断面積を制御してもよい。また、前記絞り部の上流側圧力により前記絞り部の前記流路断面積を制御し、前記絞り部の下流側圧力により、前記絞り部の下流に設置した流量調節弁で、前記絞り部と前記流量調節弁との間の圧力を制御してもよい。また、前記絞り部の上流側を2方向に分岐して、1方向を前記絞り部に連結し、他方向をばねにより保持力を制御できるピストンを有する容器に連結し、前記ピストンの位置により前記絞り部の開度を制御してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、直径1mm以上のバイオマスを含有するバイオマススラリーを、バイオマスの濃度が20質量%以上であっても、流動キャビテーションで処理することができ、バイオナノファイバーやバイオマイクロクリスタルを製造することができるバイオマスの微粒化方法を提供することができる。これにより、バイオマス粒子を、繊維径1μm以下のサブマイクロファイバーやサブマイクロクリスタルに解繊および粉砕して、材料としての利用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態のバイオマスの微粒化方法の、流路断面積が連続的に可変な絞り部を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態のバイオマスの微粒化方法の、流路断面積が連続的に可変な絞り部の第1の変形例を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態のバイオマスの微粒化方法の、流路断面積が連続的に可変な絞り部の第2の変形例を示す断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態のバイオマスの微粒化方法の、流路断面積が連続的に可変な絞り部に、ピストンの位置により弁体の開度を制御するユニットが組み込まれた絞り部を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態のバイオマスの微粒化方法の、流路断面積が連続的に可変な絞り部を用いた流動キャビテーションによるバイオマスの微粒化装置の概略構成を示す正面図である。
【
図6】本発明の実施の形態のバイオマスの微粒化方法の、流動キャビテーション処理前のバイオマスの状態を示す顕微鏡写真である。
【
図7】本発明の実施の形態のバイオマスの微粒化方法の、流動キャビテーション処理後のバイオマス混濁液の上澄み液のバイオマスの状態を示す顕微鏡写真である。
【
図8】本発明の実施の形態のバイオマスの微粒化方法の、流動キャビテーション処理後のバイオマス混濁液の沈殿物のバイオマスの状態を示す顕微鏡写真である。
【
図9】本発明の実施の形態のバイオマスの微粒化方法の、流路断面積が連続的に可変な絞り部の下流に発生させた流動キャビテーションの様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の実施の形態で使用されるバイオマスは、コーヒー滓やお茶殻、割れや焦げのあるポテトチップスの規格外品などの食品製造の際の食品廃棄物や、木材チップ、バガス等である。
【0025】
バイオマスは、水や、アルコールを1~40質量%含有した水に、0.5~40質量%投入して混濁液として使用する。バイオマスの粒子径が2mm以下の場合はそのまま使用し、粒子径が2mm以上の場合は、長径が1mm以下になるように粉砕するのが望ましい。アルカリ処理効果を併用してバイオマスの解繊効果を高めるために、バイオマスを投入する液体には、アルカリ水溶液を用いてもよい。
【0026】
本発明の実施の形態での絞り部は、
図1に示すように、ケーシング1内に設置した弁体2が主流方向に対して直交もしくは斜めに移動して、絞り部の流路断面積を連続的に変更可能なものである。
図2は、本発明の絞り部の他の実施形態を示しており、弁体4がケーシング3内で弁体軸5を中心に回転して、絞り部の流路断面積を連続的に変更可能なものである。ベルヌーイの定理から、流路断面積の小さいところでは、液体の流速が大となり、静圧は低下する。また、ランキン渦として知られているように、流体の渦の中心部の圧力は低下する。この静圧の低下ならびに渦中心の圧力低下により、液体の圧力が飽和蒸気圧まで達すると、水は水中の微細気泡などを核として気体に相変化して泡が発生する。この相変化現象をキャビテーションと呼ぶ。流速低下および渦度低下により、圧力が増大すると、気体が液体に相変化して泡が圧潰し、さらに再膨張する。この再膨張時に衝撃波を生じる。本発明は、この相変化による急激な体積膨張と収縮、ならびに衝撃波の衝撃圧でバイオマスを粉砕するものである。本発明の実施の形態で使用される絞り部は、絞り部の下流のせん断流れ場において大きな渦を発生させるために、絞り部は主流方向に対して偏向していることが望ましい。
【0027】
図1の絞り部における角度θ
1は、キャビテーションが弁体2からはく離した渦内で大きく発達するためには、0~90degが望ましく、角度θ
2は、キャビテーションがケーシング1や弁体2に損傷を生じないためには、0~90degが望ましい。
図2の絞り部における角度θ
3およびθ
4は、キャビテーションが弁体4からはく離した渦内で大きく発達するためには、0~90degが望ましく、角度θ
5は、キャビテーションがケーシング3や弁体4に損傷を生じないためには、0~90degが望ましい。ケーシング1およびケーシング3の内面形状は、平面であっても、曲面であってもよい。弁体2および弁体4の形状は、平面であっても、曲面であってもよい。
図1および
図2の実施形態において、弁体2および弁体4が、単数であっても複数であってもよい。
【0028】
図3には、流路断面積が連続的に可変な絞り部の一例を示す。この絞り部は、ケーシング6a内に設置した、円柱状の一部もしくは半球状の一部の形状を持つ弁体7が、弁体軸8を中心に回転して絞り部の流路断面積を連続的に変更する。
図3の絞り部における角度θ
6は、キャビテーションが弁体7からはく離した渦内で大きく発達するためには、0~90degが望ましく、角度θ
7は、キャビテーションがケーシング6aや弁体7に損傷を生じないためには、0~90degが望ましい。弁体7は、単数であっても複数であってもよい。
【0029】
図4には、絞り部上流にピストンを有する、流路断面積を連続的に可変な絞り部の一例を示す。ピストン10は、ばね14aと、ばね14bと、ばねの仕切り板12に保持されたOリング11とを有し、バイオマス混濁液に接している。仕切り板12の位置が主流から押し出される方向に移動する場合は、リンク9a、リンク9b、リンク9cを介して、絞り部の流路断面積を増大する方向に弁体軸8を回転するように取り付けられている。なお、ばね14bはボルト13に接しており、ボルト13の位置により、ばね14aおよびばね14bの長さを制御してピストンを支える力を調節し、仕切り板12が移動するバイオマス混濁液の圧力を制御する。なお、通常のいわゆる安全弁は、圧力調節時の流路断面積が狭いために、バイオマスを含有した混濁液では動作しない。
【0030】
バイオマスを含有した混濁液を流動キャビテーションで処理する装置は、混濁液を投入する水槽、混濁液を加圧する機構、流動キャビテーションを発生させる流路断面積が連続的に可変な絞り部、絞り部上流側圧力計、絞り部下流側圧力計、絞り部下流側の圧力調整用流量制御弁、絞り部から水槽への回流ラインが必要である。
【0031】
流動キャビテーション処理装置の一例を、
図5に示す。この装置は、バイオマス混濁液の受槽と流動キャビテーション処理されたバイオマス混濁液の受槽とを兼ねた槽15と、槽15内のバイオマス混濁液を吸引して絞り部に送る加圧ポンプ16と、槽15から加圧ポンプへの吸入管17と、加圧した圧力を計測する圧力計18と、流路断面積が連続的に可変な絞り部19と、圧力計18の圧力により絞り部19の流路断面積を制御する制御部20と、絞り部19の下流側圧力を制御する流量制御弁21と、絞り部19の下流側圧力を計測する圧力計22と、絞り部19から槽15への配管23と、槽15からの排出管24とからなっている。なお、図示されていないが、槽15には水温を一定に保つための投げ込み式チラーが設置されている。絞り部19は、加圧ポンプ16からの吐出管に対して、単数であっても、あるいは並列もしくは直列に複数を用いてもよい。
【0032】
水槽15に投入されたバイオマス混濁液は、加圧ポンプ16への吸入管17を通って加圧ポンプ16に供給され、加圧ポンプ16により加圧されて絞り部19を通過し、バイオマスが粉砕されて、槽15に戻る。そして、吸入管17からまた吸引されて、循環が繰り返され、バイオマスの粉砕が所定の程度まで進行したら排出管24から取り出される。この取り出しは連続的でも間欠的でもよい。
【0033】
図5の制御部20は、電気的な伝達方式であっても、機械的な伝達方式であっても、あるいは両方式を併用した方法であってもよい。
【0034】
流動キャビテーションで処理されるバイオマスの懸濁液のバイオマスの濃度は、0.1~50質量%程度が適当である。流動キャビテーション条件としては、絞り部19の上流側の相対圧力は0.5MPa~4MPa程度、絞り部19の下流側の絶対圧力は、上流側の絶対圧力の30%~50%程度が適当である。
【実施例0035】
バイオマスには、タンザニア産およびコロンビア産を混合したキリマンジェロブレンドの、アラビカコーヒー豆の紙フィルタドリップ用コーヒー粉末を用いた。バイオマス300gをエタノール30%水溶液3Lに投入してバイオマス混濁液を得た。
【0036】
絞り部19には、流路断面積が0~36mm2の範囲で連続的に変更可能なものを使用し、加圧ポンプ16で3MPaに加圧して、絞り部19の下流側圧力は大気圧として、20℃で循環させた。流路断面積を0.38mm2近傍として、絞り部19の上流側圧力が3.2MPaを上回ったときは流路断面積を大きくし、2.8MPaを下回ったときは流路断面積を小さくして、3時間循環させた。3時間循環させた後、24時間静置貯留し、上澄み液と沈殿物とをそれぞれ凍結乾燥させて、電子顕微鏡で観察した。
【0037】
図6には、流動キャビテーションで処理する前のバイオマスの顕微鏡写真を示し、
図7には、流動キャビテーションで処理した後の上澄み液を凍結乾燥して得られた粉末の電子顕微鏡写真を示し、
図8には、流動キャビテーションで処理した後の沈殿物を凍結乾燥して得られた粉末の電子顕微鏡写真を示す。
図6に示すように、流動キャビテーションで処理する前のバイオマスは1mm以上の大きさであった。流動キャビテーションで処理すると、
図7に示すようなサブマイクロオーダのバイオクリスタルや、
図8に示すようなサブマイクロオーダのバイオファイバが得られた。
【0038】
図9には、試料液体を水とし、弁体の下流側のケーシングの一部をアクリル製にしてキャビテーションの発生状況を、せん光1.5μsのキセノンフラッシュランプを用いて撮影した様子を示す。絞り部19の流路断面積は0.38mm
2とし、加圧ポンプ16で3MPaに加圧して、絞り部19の下流側圧力は大気圧とした。
図9中、白く見えているのがキャビテーションである。弁体の下流に渦キャビテーションが認められた。
本発明により、従来、飼料や燃料に利用されていた食品廃棄物やバガスを、各種発酵の糖源として広く利用できるばかりでなく、木材チップ等からのセルロースナノファイバーを製造できる。