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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021696
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】水分検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/04 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
G01N27/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124714
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】594185097
【氏名又は名称】伸和コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】加賀爪 努
(72)【発明者】
【氏名】▲鶴▼ 佳明
(72)【発明者】
【氏名】内田 実
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA05
2G060AC01
2G060AE12
2G060AF07
2G060AG01
2G060AG03
2G060AG05
2G060JA03
(57)【要約】
【課題】 帯式水分検知部と紐式水分検知部とを直列的に接続することによって、配置面積上の利点及び製造コスト上の利点を享受できる水分検知装置を提供することである。
【解決手段】 本発明は、正及び負の2本の剛体電極が互いに離間した状態で延在する帯式水分検知部と、正及び負の2本の柔軟電極が互いに離間した状態で延在する紐式水分検知部と、を備え、前記帯式水分検知部の前記2本の剛体電極は、各々が略直線状に延在しており、前記紐式水分検知部の前記2本の柔軟電極は、各々が水分透過性または吸水性の繊維によって被覆された後、互いに撚り合わされまたは隣接されており、前記帯式水分検知部の正の剛体電極の近位端は、前記紐式水分検知部の正の柔軟電極の遠位端と直列的に導通されており、前記帯式水分検知部の負の剛体電極の近位端は、前記紐式水分検知部の負の柔軟電極の遠位端と直列的に導通されていることを特徴とする水分検知装置である。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正及び負の2本の剛体電極が互いに離間した状態で延在する帯式水分検知部と、
正及び負の2本の柔軟電極が互いに離間した状態で延在する紐式水分検知部と、
を備え、
前記帯式水分検知部の前記2本の剛体電極は、各々が略直線状に延在しており、
前記紐式水分検知部の前記2本の柔軟電極は、各々が水分透過性または吸水性の繊維によって被覆された後、互いに撚り合わされまたは隣接されており、
前記帯式水分検知部の正の剛体電極の近位端は、前記紐式水分検知部の正の柔軟電極の遠位端と直列的に導通されており、
前記帯式水分検知部の負の剛体電極の近位端は、前記紐式水分検知部の負の柔軟電極の遠位端と直列的に導通されている
ことを特徴とする水分検知装置。
【請求項2】
前記紐式水分検知部の正の柔軟電極の近位端は、電流検知器に接続されるための正の中継線に導通されており、
前記紐式水分検知部の負の柔軟電極の近位端は、前記電流検知器に接続されるための負の中継線に導通されており、
前記正の中継線と前記負の中継線とは、1MΩ以上の抵抗器を介して互いに接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の水分検知装置。
【請求項3】
前記帯式水分検知部の正の剛体電極の遠位端は、電気的に開放状態であり、
前記帯式水分検知部の負の剛体電極の遠位端も、電気的に開放状態である
ことを特徴とする請求項2に記載の水分検知装置。
【請求項4】
正及び負の2本の剛体電極が互いに離間した状態で延在する帯式水分検知部と、
正及び負の2本の柔軟電極が互いに離間した状態で延在する紐式水分検知部と、
を備え、
前記帯式水分検知部の前記2本の剛体電極は、各々が略直線状に延在しており、
前記紐式水分検知部の前記2本の柔軟電極は、各々が水分透過性または吸水性の繊維によって被覆された後、互いに撚り合わされまたは隣接されており、
前記紐式水分検知部の正の柔軟電極の近位端は、前記帯式水分検知部の正の剛体電極の遠位端と直列的に導通されており、
前記紐式水分検知部の負の柔軟電極の近位端は、前記帯式水分検知部の負の剛体電極の遠位端と直列的に導通されている
ことを特徴とする水分検知装置。
【請求項5】
前記帯式水分検知部の正の剛体電極の近位端は、電流検知器に接続されるための正の中継線に導通されており、
前記帯式水分検知部の負の剛体電極の近位端は、前記電流検知器に接続されるための負の中継線に導通されており、
前記正の中線継線と前記負の中継線とは、1MΩ以上の抵抗器を介して互いに接続されている
ことを特徴とする請求項4に記載の水分検知装置。
【請求項6】
前記紐式水分検知部の正の柔軟電極の遠位端は、電気的に開放状態であり、
前記紐式水分検知部の負の柔軟電極の遠位端も、電気的に開放状態である
ことを特徴とする請求項5に記載の水分検知装置。
【請求項7】
前記帯式水分検知部の前記2本の剛体電極の各々の背面側は、絶縁材料によって被覆されている
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の水分検知装置。
【請求項8】
ベース部材
を更に備え、
前記帯式水分検知部は、前記ベース部材の前面側に配置されており、
前記紐式水分検知部は、前記ベース部材の後面側と前面側とを1回または複数回往復するように巻き回されて配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の水分検知装置。
【請求項9】
クーラント貯蔵部と、
前記クーラント貯蔵部内にクーラントを投入するために開閉されるクーラント投入口と、
前記クーラント貯蔵部内に配置された請求項8に記載の水分検知装置と、
を備えたことを特徴とするクーラントタンク。
【請求項10】
前記ベース部材の前記前面側は、前記クーラント投入口に概ね正対するように配置されている
ことを特徴とする請求項9に記載のクーラントタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クーラント等の液体内に混入した水分を検知するための水分検知装置に関している。特には、クーラントタンク内に配置するのに好適な水分検知装置に関している。
【背景技術】
【0002】
クーラント等の液体内に混入した水分を検知するための水分検知装置は、従来より様々なタイプのものが開発され、市販されている。
【0003】
1つのタイプは、正及び負の2本の剛体電極が互いに離間した状態で延在する帯式水分検知部である。
【0004】
特許文献1(実用新案登録第1868389号)は、2条の裸導体(2本の剛体電極)が間隔をおいて平行配置された水検知用ケーブルを開示している。
【0005】
特許文献2(特許第3559179号)は、長尺の2本の導体が間隔をあけた状態で絶縁性樹脂で被覆された絶縁ケーブルからなる漏液検知体を開示している。当該漏液検知体においては、絶縁ケーブルの外側の被覆が部分的に除かれることで、両導体の外側面がそれぞれ露出され、且つ、絶縁ケーブルの内側の被覆が部分的に除かれることで、両導体の内側面がそれぞれ露出されている。
【0006】
もう1つのタイプは、水分透過性または吸水性の繊維で被覆された正及び負の2本の柔軟電極が互いに離間した状態及び/または撚り合わされた状態で延在する紐式水分検知部である。
【0007】
特許文献3(特許第5203306号)は、吸湿性(吸水性)の絶縁編組で被覆された2本の導体が間隔を開けて並列され、それらの2本の絶縁被覆導体を網目状の絶縁芯体によって一体化してなる漏液検知線を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第1868389号
【特許文献2】特許第3559179号
【特許文献3】特許第5203306号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
帯式水分検知装置は、2本の剛体電極に水滴が接触する時、2本の剛体電極間に直ちに電流が流れるため、水滴の存在を迅速に検知することができる。しかしながら、1つの水滴が2本の剛体電極に同時に接触することが条件となるため、検知できる水滴の大きさに下限があり、微小な水滴を検知することが難しい。
【0010】
紐式水分検知装置は、水分透過性または吸水性の繊維において集積される水滴(水分)が2本の柔軟電極間を電気的に導通させることによって水分が検知されるため、各々の水滴の大きさが小さい場合であっても水分を検知することができる。しかしながら、2本の柔軟電極を電気的に導通させるのに十分な水分が水分透過性または吸水性の繊維において集積されることが条件となるため、迅速に水分を検知することが難しい。
【0011】
本件発明者は、帯式水分検知装置と紐式水分検知装置との互いの欠点を補い合うべく、両方の検知装置を搭載することについて検討を進めてきた。そして、両者を直列的に接続することで電気導通回路を共通化できることを知見した。
【0012】
本発明は、以上の知見に基づいて創案されたものである。本発明の目的は、帯式水分検知部と紐式水分検知部とを直列的に接続することによって、配置面積上の利点及び製造コスト上の利点を享受できる水分検知装置を提供することである。また、本発明の他の目的は、そのような水分検知装置を備えたクーラントタンクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、正及び負の2本の剛体電極が互いに離間した状態で延在する帯式水分検知部と、正及び負の2本の柔軟電極が互いに離間した状態で延在する紐式水分検知部と、を備え、前記帯式水分検知部の前記2本の剛体電極は、各々が略直線状に延在しており、前記紐式水分検知部の前記2本の柔軟電極は、各々が水分透過性または吸水性の繊維によって被覆された後、互いに撚り合わされまたは隣接されており、前記帯式水分検知部の正の剛体電極の近位端は、前記紐式水分検知部の正の柔軟電極の遠位端と直列的に導通されており、前記帯式水分検知部の負の剛体電極の近位端は、前記紐式水分検知部の負の柔軟電極の遠位端と直列的に導通されていることを特徴とする水分検知装置である。
【0014】
本態様によれば、帯式水分検知部と紐式水分検知部とを直列的に接続することによって、配置面積上の利点及び製造コスト上の利点を享受することができる。
【0015】
この場合、好ましくは、前記紐式水分検知部の正の柔軟電極の近位端は、電流検知器に接続されるための正の中継線に導通され、前記紐式水分検知部の負の柔軟電極の近位端は、前記電流検知器に接続されるための負の中継線に導通され、前記正の中継線と前記負の中継線とは、1MΩ以上の抵抗器を介して互いに接続される。
【0016】
これによれば、帯式水分検知部の2本の剛体電極の遠位端を終端用ターミネータで接続しておく必要がないため、帯式水分検知部の配置に関する条件が更に緩和される。
【0017】
すなわち、前記帯式水分検知部の正の剛体電極の遠位端が電気的に開放状態であり、前記帯式水分検知部の負の剛体電極の遠位端も電気的に開放状態である、という態様を採用することができる。
【0018】
前述の態様は、紐式水分検知部の遠位側に帯式水分検知部を直列的に配置したものであるが、近位/遠位の関係を逆転させた態様も同様の効果をもたらし得る。
【0019】
すなわち、本発明の別の態様は、正及び負の2本の剛体電極が互いに離間した状態で延在する帯式水分検知部と、正及び負の2本の柔軟電極が互いに離間した状態で延在する紐式水分検知部と、を備え、前記帯式水分検知部の前記2本の剛体電極は、各々が略直線状に延在しており、前記紐式水分検知部の前記2本の柔軟電極は、各々が水分透過性または吸水性の繊維によって被覆された後、互いに撚り合わされまたは隣接されており、前記紐式水分検知部の正の柔軟電極の近位端は、前記帯式水分検知部の正の剛体電極の遠位端と直列的に導通されており、前記紐式水分検知部の負の柔軟電極の近位端は、前記帯式水分検知部の負の剛体電極の遠位端と直列的に導通されていることを特徴とする水分検知装置である。
【0020】
本態様によっても、帯式水分検知部と紐式水分検知部とを直列的に接続することによって、配置面積上の利点及び製造コスト上の利点を享受することができる。
【0021】
この場合、好ましくは、前記帯式水分検知部の正の剛体電極の近位端は、電流検知器に接続されるための正の中継線に導通され、前記帯式水分検知部の負の剛体電極の近位端は、前記電流検知器に接続されるための負の中継線に導通され、前記正の中線継線と前記負の中継線とは、1MΩ以上の抵抗器を介して互いに接続される。
【0022】
これによれば、紐式水分検知部の2本の柔軟電極の遠位端を終端用ターミネータで接続しておく必要がないため、紐式水分検知部の配置に関する条件が更に緩和される。
【0023】
すなわち、前記紐式水分検知部の正の柔軟電極の遠位端が電気的に開放状態であり、前記紐式水分検知部の負の柔軟電極の遠位端も電気的に開放状態である、という態様を採用することができる。
【0024】
また、以上の各態様において、前記帯式水分検知部の前記2本の剛体電極の各々の背面側は、絶縁材料によって被覆されていることが好ましい。
【0025】
これによれば、帯式水分検知部の背面側を支持する部材に導電部材を使用しても、帯式水分検知部の水分検知性能に悪影響が生じることが防止される。
【0026】
帯式水分検知部及び紐式水分検知部を支持する部材としては、例えば、板状のベース部材が使用され得る。当該ベース部材の前面側を水分検知面とする場合、前記帯式水分検知部は前記ベース部材の前面側に配置されることが好ましく、前記紐式水分検知部は前記ベース部材の後面側と前面側とを1回または複数回往復するように巻き回されて配置されることが好ましい。
【0027】
更に、本発明は、クーラント貯蔵部と、前記クーラント貯蔵部内にクーラントを投入するために開閉されるクーラント投入口と、以上に説明された各特徴のいずれかを有すると共に前記クーラント貯蔵部内に配置された水分検知装置と、を備えたことを特徴とするクーラントタンクである。
【0028】
この場合、前記ベース部材の前記前面側は、前記クーラント投入口に概ね正対するように配置されていることが好ましい。
【0029】
これによれば、クーラント投入口を介してクーラント貯蔵部内に投入されるクーラント内の水分混入の有無を、より効果的に検知することができる。
【発明の効果】
【0030】
本態様によれば、帯式水分検知部と紐式水分検知部とを直列的に接続することによって、配置面積上の利点及び製造コスト上の利点を享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係る水分検知装置の帯式水分検知部の加工前(剛体電極の全外側面を露出する加工前)の状態を示す斜視図及び平面図である。
図2】本実施形態に係る水分検知装置の帯式水分検知部の加工後(剛体電極の全外側面を露出する加工後)の状態を示す斜視図及び平面図である。
図3】本実施形態に係る水分検知装置の紐式水分検知部の概略図(部分縦断面図)及び横断面図である。
図4】本実施形態に係る水分検知装置の紐式水分検知部の仕様を示す表である。
図5】本実施形態の帯式水分検知部と紐式水分検知部とを接続した状態を示す概略斜視図である。
図6】本実施形態の帯式水分検知部と紐式水分検知部とをベース部材に固定した状態を示す概略正面図である。
図7】本実施形態のベース部材の後面側を示す概略斜視図である。
図8】本実施形態に係るクーラントタンクを示す概略断面図である。
図9】本実施形態のコネクタ部材に接続される中継線について示す概略図である。
図10】変形例に係るクーラントタンクを示す概略断面図である。
図11図10のベース部材を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
【0033】
本実施形態に係る水分検知装置の帯式水分検知部は、市販品である漏液検知帯「形F03-16PE」(オムロン株式会社製)から加工されたものが用いられる。
【0034】
図1(a)は、本実施形態に係る水分検知装置の加工前(剛体電極の全外側面を露出する加工前)の帯式水分検知部10’を示す斜視図であり、図1(b)は、当該帯式水分検知部10’の平面図である。
【0035】
加工前の帯式水分検知部10’(漏液検知帯「形F03-16PE」)は、図1(a)及び図1(b)に示すように、正及び負の2本の剛体電極11、12(ステンレスSUS316)が互いに離間した状態で各々直線状に延在しており、全体的に絶縁性樹脂(ポリスチレン)で被覆されている。
【0036】
寸法例として、各剛体電極11、12は、幅が約2mm、高さが約0.3mmであり、互いに約4mm離間している。これらの電極11、12が、絶縁性樹脂によって、上下の突状部10pを含む領域の高さが1.7mmであって、その他の部分の高さが1.2mmであるように、上下左右対称の形態に被覆されている。
【0037】
そして、絶縁性樹脂の外側の被覆が部分的に(20mm周期で各々4mmの長さで)除かれることで、両剛体電極11、12の外側面11a、12aがそれぞれ部分的に露出されている。更に、当該露出外側面に対応する長さ位置で絶縁性樹脂の内側の被覆が部分的に除かれることで、両剛体電極11、12の内側面11b、12bがそれぞれ小窓状に部分的に露出されている。
【0038】
以上のような加工前の帯式水分検知部10’(漏液検知帯「形F03-16PE」)では、剛体電極11、12の部分的に露出された外側面11a、12a及び内側面11b、12bのみにおいて、水分検知(水滴検知)が可能である。
【0039】
これに対して、本実施形態の目的を考慮すると、水分検知領域はより広い方が好都合である。このため、本実施形態の帯式水分検知部10は、絶縁性樹脂を更に除去することによって、水分検知領域を広げている。
【0040】
具体的には、絶縁性樹脂の外側の被覆が完全に除かれることで、両剛体電極11、12の外側面11a、12aの全体が露出されている。
【0041】
図2(a)は、本実施形態に係る水分検知装置の加工後(剛体電極の全外側面を露出する加工後)の帯式水分検知部10を示す斜視図であり、図2(b)は、当該帯式水分検知部10の図2(a)の平面図である。
【0042】
以上のような帯式水分検知部10によれば、剛体電極11、12の外側面11a、12aの全体が露出されているため、任意の長さ位置において水分検知(水滴検知)が可能である(但し、両外側面11a、12aに亘るような大きな水滴検知に限られる)。
【0043】
次に、本実施形態に係る水分検知装置の紐式水分検知部は、市販品である非発色型漏水センサ「AD-S」(タツタ電線株式会社製)が用いられる。
【0044】
図3(a)は、本実施形態に係る水分検知装置の紐式水分検知部20の概略図(部分縦断面図)であり、図3(b)は、当該紐式水分検知部20の横断面図である。
【0045】
紐式水分検知部20(非発色型漏水センサ「AD-S」)は、図3(a)及び図3(b)に示すように、正及び負の2本の柔軟電極21、22(錫メッキ軟銅撚り線0.33mm2 :素線径0.18mm×13本)が内側水分透過性繊維23(内部編組、ポリエチレン)によって被覆されて互いに撚り合わされた状態で延在しており、全体的に外側水分透過性繊維24(外部編組、ポリエステル)で被覆されている。
【0046】
図4は、本実施形態の紐式水分検知部20の仕様を示す表である(タツタ電線株式会社が公表している非発色型漏水センサ「AD-S」の仕様である(https://www.tatsuta.co.jp/assets/pdf/products/sensor_medical/ad_s.pdf))。
【0047】
次に、図5は、本実施形態の帯式水分検知部10と紐式水分検知部20とを接続した状態を示す概略斜視図である。
【0048】
図5に示すように、帯式水分検知部10の正の剛体電極11の近位端は、圧着端子31を介して、紐式水分検知部20の正の柔軟電極21の遠位端と直列的に接続(導通)されており、帯式水分検知部10の負の剛体電極12の近位端は、圧着端子32を介して、紐式水分検知部20の負の柔軟電極22の遠位端と直列的に接続(導通)されている。圧着端子31、32(接続部分)は、それぞれ局所熱収縮チューブ33、34によって保護された後、更にそれらの全体が大型熱収縮チューブ35によって二重保護されている。
【0049】
また、図5に示すように、帯式水分検知部10の遠位端(帯式水分検知部10の正の剛体電極11の遠位端、及び、帯式水分検知部10の負の剛体電極12の遠位端)は、大型熱収縮チューブ36で保護されている。
【0050】
そして、本実施形態では、帯式水分検知部10の正の剛体電極11の遠位端は、電気的に開放状態であり、帯式水分検知部10の負の剛体電極12の遠位端も、電気的に開放状態である
【0051】
更に、図5に示すように、紐式水分検知部20の近位端(紐式水分検知部20の正の柔軟電極21の近位端、及び、紐式水分検知部20の負の柔軟電極22の近位端)は、熱収縮チューブ37で保護され、且つ、コネクタ部材38に接続されている。
【0052】
次に、図6は、本実施形態の帯式水分検知部10と紐式水分検知部20とをベース部材40に固定した状態を示す概略正面図であり、図7は、本実施形態のベース部材40の後面側を示す概略斜視図である。
【0053】
図6及び図7に示すように、本実施形態のベース部材40は、SUSからなる略長方形の板部材であり、略鉛直方向に垂下するように、クーラントタンク60(図8参照)の蓋部材50の底面側に溶接接続されている。
【0054】
また、本実施形態のベース部材40の上方部には、紐式水分検知部20を当該ベース部材40に縦方向(鉛直方向)に巻き回すための折り返し部として、横長の開口部41が設けられている。
【0055】
更に、当該横長の開口部41よりも上方に、一対の丸孔42、43が設けられていて、当該丸孔42、43を通るように結束バンド44が設けられている。そして、当該結束バンド44が、帯式水分検知部10の遠位端側の領域(但し大型熱収縮チューブ36より近位側の領域)を、ベース部材40に固定している。これにより、帯式水分検知部10及び大型熱収縮チューブ35までが、ベース部材40の前面側に配置されている。
【0056】
大型熱収縮チューブ35から延在する紐式水分検知部20は、ベース部材40の下端において折り返されてベース部材40の後面側(裏面側)を通った後、横長の開口部41において折り返されてベース部材40の前面側に現われる。そして、帯式水分検知部10の隣に略平行に並ぶように縦方向(鉛直方向)に巻き回された後、ベース部材40の下端において再び折り返されてベース部材40の後面側(裏面側)を通った後、横長の開口部41において再び折り返されてベース部材40の前面側に再び現われる。
【0057】
この巻き回しが4~8往復程度繰り返された後、紐式水分検知部20は、最後はベース部材40の後面側(裏面側)において帯式水分検知部10の上方部の真裏に対応する位置を上向きに通過し、2本の結束バンド44、47に固定されながらこれらを更に通過して、蓋部材50の嵌合孔52内に嵌合されたコネクタ部材38に至る。
【0058】
本実施形態において、結束バンド47は、結束バンド44よりも上方に設けられている。具体的には、一対の丸孔42、43よりも上方に、更に一対の丸孔45、46が設けられていて、当該丸孔45、46を通るように結束バンド47が設けられている。
【0059】
次に、図8は、本実施形態に係るクーラントタンク60を示す概略断面図である。
【0060】
本実施形態のクーラントタンク60は、クーラントが貯蔵されるクーラント貯蔵部61を画定するタンク装置であり、クーラント貯蔵部61には、クーラントを投入するために開閉されるクーラント投入口62が設けられている。
【0061】
そして、図1乃至図7を参照して説明されてきた本実施形態の水分検知装置1が、ベース部材40の前面側がクーラント投入口62に概ね正対するような位置関係で、クーラント貯蔵部61内に配置されている。
【0062】
本実施形態では、蓋部材50のネジ孔51を利用して、固定ネジ53によって蓋部材50がクーラントタンク60の上面に固定されることによって、前記の位置関係が容易に実現されるようになっている。
【0063】
次に、図9は、コネクタ部材38の近位側に接続される中継線70を示す概略図である。
【0064】
図9に示すように、紐式水分検知部20の正の柔軟電極21の近位端は、不図示の電流検知器に接続されるための正の中継線71に接続(導通)されており、紐式水分検知部20の負の柔軟電極22の近位端は、電流検知器に接続されるための負の中継線72に接続(導通)されている。
【0065】
そして、図9に示すように、正の中継線71と負の中継線72とは、直列接続された第1抵抗器73及び第2抵抗器74を介して互いに接続されており、第1抵抗器73と第2抵抗器74との間の電位がグランド電位とされている(接地されている)。本実施形態では、第1抵抗器73及び第2抵抗器74は、それぞれ2.2MΩである(本件発明者の知見によれば、両者の合計が1MΩ以上であれば実用に足る)。
【0066】
次に、本実施形態の水分検知装置1の作用について説明する。
【0067】
帯式水分検知部10及び紐式水分検知部20の周囲に水分が存在しない場合には、正の電極(中継線71、柔軟電極21、剛体電極11)と負の電極(中継線72、柔軟電極22、剛体電極12)との間に流れる電流は、図9の白三角矢印に示すように、第1抵抗器73及び第2抵抗器74を通る回路を経由する。このため、当該電流は、非常に微弱である。この非常に低い電流状態を電流検知器がモニタリングすることで、水分が存在しない状態の把握を継続することができる。
【0068】
一方、帯式水分検知部10及び紐式水分検知部20の周囲に水分が存在して、当該水分によって正の電極(中継線71、柔軟電極21、剛体電極11)と負の電極(中継線72、柔軟電極22、剛体電極12)との間が導通されると、図9の黒三角矢印に示す経路を電流が流れる。この電流は、ある程度の大きさを有する。この電流を電流検知器が検知することで、クーラント内の水分の存在を検知することができる。
【0069】
以上の通り、本実施形態の水分検知装置1によれば、帯式水分検知部10の正の剛体電極11の近位端が紐式水分検知部20の正の柔軟電極21の遠位端と直列的に導通されており、帯式水分検知部10の負の剛体電極12の近位端が紐式水分検知部20の負の柔軟電極22の遠位端と直列的に導通されている。このため、比較的大きな水滴であれば帯式水分検知部10が迅速に検知するという利点と比較的小さな水滴であっても紐式水分検知部20が補完的に検知するという利点との両方を得ることができる一方で、水分検知装置1の配置における柔軟性が高く(配置の自由度が高く)、また、水分検知装置1の製造コストも抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態の水分検知装置1によれば、紐式水分検知部20の正の柔軟電極21の近位端が電流検知器に接続されるための正の中継線71に導通され、紐式水分検知部20の負の柔軟電極22の近位端が電流検知器に接続されるための負の中継線72に導通され、正の中継線71と負の中継線72とが第1抵抗器73及び第2抵抗器74を介して互いに接続されている。これにより、帯式水分検知部10の2本の剛体電極11、12の遠位端を終端用ターミネータで接続しておく必要がなく、帯式水分検知部10の配置に関する条件が更に緩和されている。
【0071】
具体的には、本実施形態の水分検知装置1では、帯式水分検知部10の正の剛体電極11の遠位端が電気的に開放状態とされ、帯式水分検知部10の負の剛体電極12の遠位端も電気的に開放状態とされている。
【0072】
また、本実施形態の水分検知装置1では、帯式水分検知部10の2本の剛体電極11、12の各々の背面側は、絶縁材料によって被覆されたままとなっている。これにより、帯式水分検知部10の背面側を支持するベース部材40の材料にSUS(あるいは他の金属等の導電部材)を採用しても、帯式水分検知部10の水分検知性能に悪影響が生じることが防止される。更に、帯式水分検知部10における突状部10pの存在も、誤導通の防止に貢献している。
【0073】
また、本実施形態の水分検知装置1では、ベース部材40の前面側を水分検知面として、帯式水分検知部10がベース部材40の前面側に配置されると共に、紐式水分検知部20がベース部材40の前面側において帯式水分検知部10の隣に略平行に並ぶように複数回巻き回されて配置されている。これにより、広くて効果的な水分検知領域が提供されている。
【0074】
更に、本実施形態のクーラントタンク60によれば、ベース部材40の前面側がクーラント投入口62に概ね正対するように配置されているため、クーラント投入口62を介してクーラント貯蔵部61内に投入されるクーラント内の水分混入の有無を、より効果的に検知することができる。
【0075】
(変形例1)
前述の実施形態では、ベース部材40がクーラントタンク60の蓋部材50の底面側に溶接接続されていたが、本発明は当該態様に限定されない。
【0076】
図10は、変形例に係るクーラントタンクを示す概略断面図であり、図11は、図10のベース部材140を示す概略斜視図である。
【0077】
例えば、図10に示すように、ベース部材140が、クーラント貯蔵部61の底面上に立設された仕切板80に固定されてもよい。この場合、コネクタ部材38も、図10に示すように、蓋部材50の嵌合孔52内に嵌合される代わりに、クーラントタンク60の上壁内に嵌合されてもよい。
【0078】
図10及び図11に示す変形例では、紐式水分検知部20は、ベース部材140の後面側(裏面側)において帯式水分検知部10の上方部の真裏に対応する位置を上向きに通過した後、横長の開口部141を通って前面側に現われて、更に上向きに延びてコネクタ部材38に至る。
【0079】
また、図10及び図11に示す変形例では、横長の開口部141よりも上方に、一対の丸孔142、143が設けられていて、当該丸孔142、143を通るように結束バンド144が設けられている。そして、当該結束バンド144が、帯式水分検知部10の遠位端側の領域(大型熱収縮チューブ36の領域)を、ベース部材140に固定している。
【0080】
また、前述の実施形態では、ベース部材40の延在方向が鉛直方向とされていたが、本発明は当該態様に限定されない。
【0081】
例えば、図10に示すように、ベース部材140が、仕切板80に固定された上方部に対して下方部がクーラント投入口62に向かって鋭角方向に屈曲する形態となっていて、帯式水分検知部10及び紐式水分検知部20が当該下方部(屈曲部)の前面に配置されていてもよい。
【0082】
これによれば、クーラント投入口62からのクーラントの投入方向が、帯式水分検知部10及び紐式水分検知部20(ベース部材140の屈曲部)に対して垂直であるため、より効果的にクーラント内の水分検知を実施することができる。
【0083】
(変形例2)
また、前述の実施形態は、紐式水分検知部20の遠位側に帯式水分検知部10を直列的に配置したものであるが、近位/遠位の関係を逆転させた態様も同様の効果をもたらし得る。
【0084】
すなわち、ある変形例の水分検知装置は、正及び負の2本の剛体電極(11、12)が互いに離間した状態で延在する帯式水分検知部(10)と、正及び負の2本の柔軟電極(21、22)が互いに離間した状態で延在する紐式水分検知部(20)と、を備え、帯式水分検知部(10)の2本の剛体電極(11、12)は、各々が略直線状に延在しており、紐式水分検知部(20)の2本の柔軟電極(21、22)は、各々が水分透過性または吸水性の繊維によって被覆された後、互いに撚り合わされ(または隣接され)ており、紐式水分検知部(20)の正の柔軟電極(21)の近位端が、帯式水分検知部(10)の正の剛体電極(11)の遠位端と直列的に導通されており、紐式水分検知部(20)の負の柔軟電極(22)の近位端が、帯式水分検知部(10)の負の剛体電極(12)の遠位端と直列的に導通されている。
【0085】
当該変形例の水分検知装置によっても、帯式水分検知部(10)と紐式水分検知部(20)とを直列的に接続することによって、配置面積上の利点及び製造コスト上の利点を享受することができる。
【0086】
この場合、好ましくは、帯式水分検知部(10)の正の剛体電極(11)の近位端が、電流検知器に接続されるための正の中継線(71)に導通され、帯式水分検知部(10)の負の剛体電極(12)の近位端が、電流検知器に接続されるための負の中継線(72)に導通され、正の中線継線(71)と負の中継線(72)とが、1MΩ以上の抵抗器を介して互いに接続される。
【0087】
これによれば、紐式水分検知部(20)の2本の柔軟電極(21、22)の遠位端を終端用ターミネータで接続しておく必要がないため、紐式水分検知部(20)の配置に関する条件が更に緩和される。
【0088】
すなわち、紐式水分検知部(20)の正の柔軟電極(21)の遠位端が電気的に開放状態であり、紐式水分検知部(20)の負の柔軟電極(22)の遠位端も電気的に開放状態である、という態様を採用することができる。
【0089】
(変形例3)
前述の実施形態及び変形例1~2において、帯式水分検知部(10)は、市販品である漏液検知帯「形F03-16PE」(オムロン株式会社製)から加工されたものが用いられているが、本発明は当該態様に限定されない。
【0090】
例えば、帯式水分検知部(10)として、特許文献1(実用新案登録第1868389号)に記載されたタイプのものが採用されてもよいし、他の公知の(例えば市販の)帯式水分検知装置が採用されてもよい。
【0091】
(変形例4)
前述の実施形態及び変形例1~2において、紐式水分検知部(20)は、市販品である非発色型漏水センサ「AD-S」(タツタ電線株式会社製)が用いられているが、本発明は当該態様に限定されない。
【0092】
例えば、紐式水分検知部(20)として、市販品である漏水検知帯「形F03-16SF」(オムロン株式会社製)、あるいは、市販品である漏水検知帯「形F03-16SFC」(オムロン株式会社製)が採用されてもよいし、他の公知の(例えば市販の)紐式水分検知装置が採用されてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 水分検知装置
10 帯式水分検知部
10p 突状部
10’ 帯式水分検知部(剛体電極11、12の外側面を露出する加工前)
11 正の剛体電極
11a 外側面
11b 内側面
12 負の剛体電極
12a 外側面
12b 内側面
20 紐式水分検知部
21 正の柔軟電極
22 負の柔軟電極
23 内側水分透過性繊維
24 外側水分透過性繊維
31 圧着端子
32 圧着端子
33 局所熱収縮チューブ
34 局所熱収縮チューブ
35 大型熱収縮チューブ
36 大型熱収縮チューブ
37 熱収縮チューブ
38 コネクタ部材
40 ベース部材
41 横長の開口部
42 丸孔
43 丸孔
44 結束バンド
45 丸孔
46 丸孔
47 結束バンド
50 蓋部材
51 ネジ孔
52 嵌合孔
53 固定ネジ
60 クーラントタンク
61 クーラント貯蔵部
62 クーラント投入口
70 中継線
71 正の中継線
72 負の中継線
73 第1抵抗器
74 第2抵抗器
80 仕切板
140 ベース部材
141 開口部
142 丸孔
143 丸孔
144 結束バンド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11