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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021709
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ラベル付きパルプモールドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21J 3/00 20060101AFI20240208BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
D21J3/00
B65D1/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124741
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000238005
【氏名又は名称】株式会社フジシールインターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 奈央子
(72)【発明者】
【氏名】八木 晴可
(72)【発明者】
【氏名】綿世 真弓
【テーマコード(参考)】
3E033
4L055
【Fターム(参考)】
3E033AA10
3E033BA10
3E033DA02
3E033DA09
3E033DE11
3E033EA09
3E033FA01
4L055BF08
4L055FA23
4L055GA05
(57)【要約】
【課題】表面の平滑性の向上が図られたラベル付きパルプモールドを製造する。
【解決手段】ラベル付きパルプモールドは、曲面部を有するパルプモールド2Aが抄造成形されかつ乾燥される工程と、パルプモールド2Aが1次プレスされることで粗成形される工程と、パルプモールド2Aとラベル3Aとが2次プレスされることでパルプモールド2Aの仕上げ成形とラベル3Aの貼り付けとが同時に行なわれる工程とを経て製造される。パルプモールド2Aの仕上げ成形とラベル3Aの貼り付けとが同時に行なわれる工程において、パルプモールド2Aのうちの、ラベル3Aの皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分に対応する部分が、これが位置しない部分に対応する部分よりも圧縮された状態とされることで、これが位置する部分のラベル3Aが、パルプモールド2A側に向けて入り込んだ状態となるように貼り付けられる。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラベルが準備される工程と、
複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を有するパルプモールドが抄造成形されかつ乾燥される工程と、
前記パルプモールドが1次プレスされることにより、前記パルプモールドの少なくとも一部が粗成形される工程と、
粗成形された前記パルプモールドに前記ラベルが積層された状態において前記ラベルおよび前記パルプモールドが2次プレスされることにより、前記パルプモールドの粗成形された部分の少なくとも一部に対する仕上げ成形と前記ラベルの貼り付けとが同時に行なわれる工程とを備え、
前記パルプモールドの粗成形された部分の少なくとも一部に対する仕上げ成形と前記ラベルの貼り付けとが同時に行なわれる工程において、少なくとも前記曲面部に対応する部分の前記ラベルに皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置し、前記皺および前記折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分に対応する部分の前記パルプモールドが、前記皺および前記折り重なりが位置しない部分に対応する部分の前記パルプモールドよりも圧縮された状態とされ、これにより、前記皺および前記折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分の前記ラベルが、前記パルプモールド側に向けて入り込んだ状態となるように、前記ラベルが前記パルプモールドに貼り付けられる、ラベル付きパルプモールドの製造方法。
【請求項2】
前記パルプモールドの1次プレスが、一対の1次プレス用型によって行なわれ、
前記ラベルおよび前記パルプモールドの2次プレスが、一対の2次プレス用型によって行なわれ、
前記一対の2次プレス用型の一方のプレス面が、前記パルプモールドの表面に凹部を形成するための凸状部を有し、
前記パルプモールドの仕上げ成形と前記ラベルの前記パルプモールドへの貼り付けとが同時に行なわれる工程において、前記パルプモールドの表面に前記凹部が形成されつつ、前記ラベルが、前記パルプモールドのうちの前記凹部に当該凹部に沿う形状で貼り付けられる第1領域と、前記パルプモールドのうちの前記凹部以外の部分に貼り付けられる第2領域とを含むように、前記ラベルが、前記パルプモールドに貼り付けられる、請求項1に記載のラベル付きパルプモールドの製造方法。
【請求項3】
前記ラベルが、光沢性を有する層およびデザイン印刷層の少なくともいずれかを含み、
前記パルプモールドの仕上げ成形と前記ラベルの前記パルプモールドへの貼り付けとが同時に行なわれる工程におけるプレス温度が、前記パルプモールドが粗成形される工程におけるプレス温度よりも低い、請求項1に記載のラベル付きパルプモールドの製造方法。
【請求項4】
前記ラベルが、光沢性を有する層およびデザイン印刷層の少なくともいずれかを含み、
前記パルプモールドの仕上げ成形と前記ラベルの前記パルプモールドへの貼り付けとが同時に行なわれる工程におけるプレス時間が、前記パルプモールドが粗成形される工程におけるプレス時間よりも短い、請求項1に記載のラベル付きパルプモールドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベル付きパルプモールドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の低減の観点から、容器としてのパルプモールドに対するニーズが高まっている。また、パルプモールドに収容される商品が多様化していることから、その商品の形状に合わせてパルプモールドの形状も多様化しており、特に、立体的な形状を有しかつ美観に優れたパルプモールドが求められている。
【0003】
立体的な形状を有するパルプモールドの美観を向上させるための方法として、たとえば特開2002-201599号公報(特許文献1)や特開2002-138400号公報(特許文献2)には、デザインが施されたラベルを貼り付けることによって美観の向上が図られたラベル付きパルプモールドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-201599号公報
【特許文献2】特開2002-138400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラベル付きパルプモールドは、パルプモールドを成形しかつ乾燥させた後に、これにラベルを貼り付けることで製造することが一般的である。しかしながら、パルプモールドが曲面部を有する場合、当該曲面部に沿って貼り付けられた部分のラベルに生じる皺や折り重なりが原因となって、ラベル付きパルプモールドの表面の手触り感や美観が損なわれてしまう問題があった。
【0006】
ここで、パルプモールドを成形しかつ乾燥させる方法としては、網が張られた抄造成形用型の表面に堆積させたパルプスラリーを、加熱された型を用いてプレスしつつ乾燥させる、いわゆる湿式成形法が知られている。この方法は、パルプモールドの表面を平滑に仕上げることができる点において優れている一方で、当該パルプモールドの成形および乾燥に比較的長時間を要する問題を有している。
【0007】
この問題を解決する方法として、網が張られた抄造成形用型の表面に堆積させたパルプスラリーを、抄造成形用型から外して高温の炉内にて乾燥させる、いわゆる乾式成形法がある。この方法に従うことにより、比較的短時間でパルプモールドの成形および乾燥を行なうことが可能になる。
【0008】
一方で、乾式成形法に従って製造されたパルプモールドの表面には、上記網の跡やパルプ繊維の不規則な絡み合いに由来する凹凸が形成される。そのため、当該表面に、皺や折り重なりを生じさせることなくラベルを貼り付けることは容易ではなく、この問題は、パルプモールドの曲面部においてより顕著なものとなる。
【0009】
したがって、本発明は、上述した問題を解決すべくなされたものであり、表面の平滑性の向上が図られたラベル付きパルプモールドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に基づくラベル付きパルプモールドの製造方法は、ラベルが準備される工程と、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を有するパルプモールドが抄造成形されかつ乾燥される工程と、上記パルプモールドが1次プレスされることにより、上記パルプモールドの少なくとも一部が粗成形される工程と、粗成形された上記パルプモールドに上記ラベルが積層された状態において上記ラベルおよび上記パルプモールドが2次プレスされることにより、上記パルプモールドの粗成形された部分の少なくとも一部に対する仕上げ成形と上記ラベルの貼り付けとが同時に行なわれる工程とを備えている。上記パルプモールドの粗成形された部分の少なくとも一部に対する仕上げ成形と上記ラベルの貼り付けとが同時に行なわれる工程において、少なくとも上記曲面部に対応する部分の上記ラベルに皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置し、上記皺および上記折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分に対応する部分の上記パルプモールドが、上記皺および上記折り重なりが位置しない部分に対応する部分の上記パルプモールドよりも圧縮された状態とされ、これにより、上記皺および上記折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分の上記ラベルが、上記パルプモールド側に向けて入り込んだ状態となるように、上記ラベルが上記パルプモールドに貼り付けられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、表面の平滑性の向上が図られたラベル付きパルプモールドの製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係るラベル付きパルプモールドの製造方法に従って製造されたラベル付きパルプモールドの斜視図である。
図2図1に示すラベル付きパルプモールドの模式断面図および要部拡大断面図である。
図3図1に示すパルプモールドの平面図である。
図4図1に示すラベル付きパルプモールドの要部拡大断面図、および、図1に示すラベル付きパルプモールドとは異なる構成のラベルを備えるラベル付きパルプモールドの要部拡大断面図である。
図5】実施の形態1に係るラベル付きパルプモールドの製造方法を示すフロー図である。
図6図5に示す工程S2および工程S3を表わした模式断面図である。
図7図5に示す工程S4を表わした模式断面図である。
図8図5に示す工程S7を表わした模式断面図である。
図9図5に示す工程S8を表わした模式断面図である。
図10図5に示す工程S9を表わした模式断面図である。
図11図6に示す工程S10を表わした模式断面図である。
図12図6に示す工程S11を表わした模式断面図である。
図13図6に示す工程S12を表わした模式断面図である。
図14】実施の形態2に係るラベル付きパルプモールドの製造方法に従って製造されたラベル付きパルプモールドの斜視図である。
図15図14に示すラベル付きパルプモールドの模式断面図および要部拡大断面図である。
図16】実施の形態2に係るラベル付きパルプモールドの製造方法を示すフロー図である。
図17図16に示す工程S9B2および工程S10Bを表わした模式断面図である。
図18図16に示す工程S11Bを表わした模式断面図である。
図19図16に示す工程S12Bを表わした模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、ファンデーションおよびパフを収容可能に構成されたラベル付きパルプモールドに本発明を適用した場合を例示するものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るラベル付きパルプモールドの製造方法に従って製造されたラベル付きパルプモールドの形状および構成を示す図であり、図1(A)は、開閉可能な蓋になる上側容器部が閉じられた状態の斜視図、図1(B)は、上側容器部が開かれた状態の斜視図である。図2は、図1(A)に示す状態のラベル付きパルプモールドの形状および構成を示す図であり、図2(A)は、図1(A)中に示すIIA-IIA線に沿った模式断面図、図2(B)は、図2(A)の上側容器部近傍を拡大した要部拡大断面図である。図3は、図1に示すパルプモールドの平面図である。図4は、複数方向に湾曲した曲面からなる第1部分に貼り付けられたラベルに生じた折り重なり部を示したものである。図4(A)は、図1に示すラベル付きパルプモールドの要部拡大断面図であり、図4(B)は、図1に示すラベル付きパルプモールドとは異なる構成のラベルを備えるラベル付きパルプモールドの要部拡大断面図である。まず、これら図1ないし図4を参照して、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールドの製造方法に従って製造されたラベル付きパルプモールド1Aについて説明する。なお、図1においては、ラベル3Aに色を付している。
【0015】
図1および図2に示すように、ラベル付きパルプモールド1Aは、偏平形状の内容物であるファンデーションおよびパフを収容するための容器であり、パルプモールド2Aと、ラベル3Aとを備えている。
【0016】
パルプモールド2Aは、これが閉じられた状態において、全体として平面視略矩形状の外形を有しており、下面開口の上側容器部21と、上面開口の下側容器部22と、これら上側容器部21および下側容器部22を回動可能に連結するヒンジ部23とを有している。下側容器部22には、上側容器部21が閉じられた状態において当該上側容器部21に面する2つの凹状の収容部22aが設けられている。これら2つの収容部22aは、上側容器部21が閉じられた状態において、当該上側容器部21と共に、内容物としてのファンデーションおよびパフが収容される2つの収容空間20を規定する。
【0017】
図3に示すように、パルプモールド2Aの上側容器部21は、略平板状の部位と、その周囲に位置する湾曲状の部位とを含んでおり、これにより上側容器部21の内側表面には、凹形状の部位が設けられている。また、上側容器部21の外側表面の中央部は、略平面形状を有するように構成されており、上側容器部21の外側表面の周縁部の四隅は、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を含んでおり、当該四隅以外の上記周縁部には、一方向に湾曲した曲面からなる曲面部が位置している。
【0018】
説明の便宜上、上側容器部21のうちの上述した複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を第1部分Xと称し、それ以外の部分(すなわち、上述した略平面形状を有する部分、および、上記周縁部のうちの一方向に湾曲した曲面からなる曲面部)を第2部分Yと称する。なお、図3においては、理解を容易とするために、第1部分Xに濃い色を付すとともに、第2部分Yに薄い色を付している。
【0019】
パルプモールド2Aの原料としては、新聞紙、チラシ、中質紙、および上質紙等からなる印刷使用済み古紙に、湿式で離解、および精選等の処理を施すことによって得られる古紙パルプ、または、上記処理に加えて脱墨および漂白等の処理を施すことによって得られる脱墨古紙パルプ、もしくは晒パルプまたは未晒パルプ等のセルロースパルプが用いられる。パルプモールド2Aは、これらのパルプにサイズ剤、填料、染料、定着剤、および耐水化剤等が適宜添加されてなるパルプスラリーが、所望の形状に成形されることによって製作される。
【0020】
なお、上述した各種パルプに代えて、バージンパルプ、または、サトウキビの搾りかすであるバガスもしくは竹等の非木材系パルプが用いられてもよい。また、いずれのパルプにおいても、合成樹脂が少量(好ましくは5%以下程度)含まれていてもよい。
【0021】
図1および図2に示すように、ラベル3Aは、パルプモールド2Aの上側容器部21の外側表面の全面に貼り付けられたシート状のものであり、基材3aおよび当該基材3aの一方の主面に設けられた接着剤層3bを有している(特に図2(B)参照)。これにより、ラベル3Aの一対の主面のうちの一方である第2主面3(2)は、接着剤層3bによって規定され、他方である第1主面3(1)は、基材3aによって規定されている。
【0022】
なお、ラベル3Aの平面視した場合の外形は、パルプモールド2Aの上側容器部21の外形に合わせて適宜変更されてもよく、たとえば、略円形状、略楕円形状、多角形状等であってもよい。
【0023】
基材3aとしては、純白洋紙や晒クラフト紙、未晒クラフト紙等の紙、合成紙、透明性を有するセロファン、およびプラスチックフィルム等が用いられる。基材3aに用いられる上記紙の米坪は、たとえば20g/m2以上100g/m2以下であることが好ましい。基材3aに用いられる上記セロファンの厚みは、たとえば20μm以上50μm以下であることが好ましい。基材3aに用いられるプラスチックフィルムとしては、たとえばポリエチレンテレフタレートやポリ乳酸等のポリエステル系、ポリプロピレンや高密度ポリエチレン等のポリオレフィン系、スチレンブタジエン共重合体等のスチレン系のフィルムであって、厚みが10μm以上80μm以下のものが挙げられる。
【0024】
なお、基材3aは、デザイン印刷層を含んでいてもよい。この場合、基材3aは、たとえば、ベースとなる層としての紙や合成紙、セロファン、プラスチックフィルム等の一対の主面のうちの接着剤層3bとは反対側に位置する主面に、デザイン印刷層が施されたものによって構成される。
【0025】
また、基材3aは、光沢性を有する層を含んでいてもよい。この場合、基材3aは、たとえば、ベースとなる層としての紙や合成紙の一対の主面のうちの接着剤層3bとは反対側に位置する主面に、光沢性を有する層としての印刷層やコーティング層が施されたものによって構成される。光沢性を有する層は、透明性を有する樹脂コーティングや、金属光沢として、特に、アルミニウム粒子を含む金色や銀色のベタ印刷が施された部材からなる層、金属箔を転写した紙、蒸着紙およびホイル紙等の金属光沢を有する部材からなる層が好ましい。
【0026】
また、光沢性を有する層を含む基材3aは、ベースとなりかつ透明性および光沢性を有する層と、デザイン印刷層とによって構成されるものでもよい。より具体的には、基材3aは、ベースとなりかつ透明性および光沢性を有する層としてのセロファンやプラスチックフィルムの一対の主面のうちの接着剤層3b側に位置する主面に、デザイン印刷層が施されたものによって構成されるものでもよい。
【0027】
接着剤層3bは、透明性を有しかつ熱接着性を有するものであることが好ましい。具体的には、接着剤層3bは、熱接着性を有する樹脂である、低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene(LDPE))、エチレン酢酸ビニル共重合体(Ethylene-Vinyl Acetate(EVA))、エチレンアクリル酸共重合体、塩素化ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を主成分とするものであることが好ましいが、その他アクリル系樹脂、スチレンブタジエン共重合体、ウレタン系樹脂、アイオノマー等からなりかつ良好な接着性を有する樹脂等であってもよい。
【0028】
さらに、接着剤層3bは、植物由来の原料を用いたPBS(Poly Butylene Succinate)やPLA(Poly Lactic Acid)等の生分解性樹脂であってもよく、このようにすれば、石油由来材料の使用を抑制することができる。ここで、接着剤層3bは、粘着付与剤や滑剤等が添加されたものであってもよい。
【0029】
なお、接着剤層3bは、熱接着性を有するもの以外のものでもよい。具体的には、接着剤層3bとして、水の塗布や加湿によって活性化することで接着性が生じる再湿性接着剤が用いられてもよい。再湿性接着剤としては、ポリビニルアルコール樹脂や水溶性アクリル系樹脂、天然ゴム、カゼイン等からなるものが挙げられる。
【0030】
また、接着剤層3bとして、接着剤含有マイクロカプセルからなるものが用いられてもよい。このように構成された接着剤層3bは、加圧プレスされることでマイクロカプセルが破裂し、これによって露出した接着剤によって接着性が生じることになる。
【0031】
接着剤層3bを基材3aの主面に設ける手法としては、接着剤層3bを構成する上述した熱接着性を有する樹脂等を押出しラミネートによって基材3aにコーティングする手法でもよく、溶液もしくはエマルジョンの状態とした当該樹脂等を基材3aにコーティングして乾燥させる手法等でもよい。なお、接着剤層3bの厚みは、0.5μm以上20μm以下であることが好ましい。
【0032】
図1ないし図3に示すように、ラベル3Aは、接着剤層3bを介して上側容器部21のうちの複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部である第1部分Xと、それ以外の部分である第2部分Yとを含む外側表面の全面に貼り付けられている。
【0033】
ここで、第1部分Xは、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部であることから、何らの手当ても行なわずにラベル3Aが当該第1部分Xに貼り付けられた場合には、ラベル3Aが皺になったり、折り重なったりしやすくなる。この点、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aにあっては、第1部分Xに対応する部分において皺や折り重なりが生じたラベル3Aの厚みが、柔らかさを有するパルプモールド2Aの厚みに吸収された状態で貼り付けられることにより、上述した問題の解決が図られている。
【0034】
具体的には、図4(A)に示すように、ラベル3Aの折り重なりが位置する部分に対応する部分のパルプモールド2Aは、当該折り重なりが位置しない部分に対応する部分のパルプモールド2Aよりも圧縮された状態とされている。これにより、折り重なりが位置する部分のラベル3Aが、パルプモールド2A側に向けて入り込んだ状態となるように、ラベル3Aがパルプモールド2Aに貼り付けられている。
【0035】
より具体的には、第1部分Xに貼り付けられたラベル3Aに生じた折り重なり部分においては、パルプモールド2Aのうちの、ラベル3Aに生じた折り重なりに対応する部分の表面が、これらに対応しない部分の表面よりも後退することになる。これにより、パルプモールド2Aの表面には段差部21cが形成されることになり、ラベル3Aの折り重なりは、段差部21cに入り込んだ状態でパルプモールド2Aの表面に貼り付けられることになる。その結果、折り重なりが生じたラベル3Aの厚みは、柔らかさを有するパルプモールド2Aの厚みに吸収されることになる。なお、このような構成は、ラベル3Aに生じた皺が位置する部分においても同様である。また、第1部分Xにおいて生じた皺や折り重なりの影響によって当該第1部分Xの近傍に貼り付けられたラベル3Aにおいて皺や折り重なりが生じた部分においても同様である。
【0036】
したがって、このように構成した場合には、ラベル3Aに皺や折り重なりが生じることで発生するラベル3Aの厚みの増加が段差部21cによって吸収されることになるため、これら皺や折り重なりを目立たなくさせることができるばかりでなく、ラベル付きパルプモールド1Aの表面を平滑化できることになる。
【0037】
ここで、ラベルの皺や折り重なりをさらに目立たなくさせるために、接着剤層が基材3aの一対の主面の一方にのみ設けられているラベル3Aの代わりに、接着剤層が基材3aの一対の主面の両方に設けられたラベル3A’が用いられてもよい。具体的には、ラベル3A’は、当該ラベル3A’のパルプモールド2A側に位置する第2主面3(2)が、接着剤層3bによって規定されるとともに、他方である第1主面3(1)もまた、接着剤層3b’によって規定されることとなるように構成される。
【0038】
当該ラベル3A’が用いられた場合には、図4(B)に示すように、第1部分Xに貼り付けられたラベル3A’に生じた折り重なり部分においては、第2主面3(2)のうちの折り重なりを規定する部分同士が、接着剤層3bを介して接着されるとともに、第1主面3(1)のうちの折り重なりを規定する部分同士が、接着剤層3b’を介して接着されることになる。これにより、皺や折り重なりが捲れることを防止することができるため、ラベルの皺や折り重なりをさらに目立たなくさせることができる。ここで、図4(B)においては、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aと区別するため、ラベル3A’が用いられたラベル付きパルプモールドには、符号1A’を付している。
【0039】
なお、ラベル3A’が用いられたラベル付きパルプモールド1A’が製造される場合には、後述するプレス用第2型110(図11等参照)のラベル3A’に面する側の表面には、離型性に優れたポリテトラフルオロエチレン系樹脂等によるコーティングが施されていることが好ましい。これにより、ラベル3A’の表面が、プレス用第2型110に接着することを防止することができる。
【0040】
また、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aにあっては、第1部分Xに対応する部分のラベル3Aに所定のデザインを施し、さらに、第1部分Xに対応する部分のラベル3Aの絞り率が所定の値となるように当該ラベル3Aを貼り付けることにより、上述したラベル3Aの皺や折り重なりの問題の解決を図ることができる。
【0041】
図1および図3に示すように、ラベル3Aのうちの第1部分Xに対応する部分には、当該ラベル3Aの皺や折り重なりが目立ちにくいようなデザインが施されてもよい。このようなデザインとしては、たとえば、木目調、石目調、石垣模様、岩肌模様、大理石模様、空模様、砂地柄、波柄、織物柄、小花柄、草花柄、樹木柄、唐草模様、小紋柄、ボタニカル柄、ペイズリー柄、カモフラージュ柄、ドット柄、水彩柄、およびマーブル模様等が挙げられ、ラベル3Aのうちの第1部分Xに対応する部分には、これらのうちのいずれかのデザインが施されることが好ましい。
【0042】
ここで、木目調は材木の断面に表れる年輪、繊維、導管等で成された模様、石目調は天然石やレンガの地肌を表した模様、石垣模様は城壁等に様々な形状の石が積み重ねられた雰囲気を表した模様、空模様は様々な雲が青空に浮かんでいる景色や曇り空を表した模様、波柄は波立つ海原や波紋を表した柄、織物柄は綿や麻の糸を織ったり藁や竹を編んだ風合いを表した柄、ドット柄は水玉模様を含みシャンプードット、バブルドット、コインドット、ランダムドットと呼ばれる柄、水彩柄は水彩絵の具で濃淡を描いた雰囲気のある柄である。
【0043】
ラベル3Aのうちの第1部分Xに対応する部分に施されるデザインは、上記のデザインに限られず、ラベル3Aの皺や折り重なりが目立ちにくいようなデザインであればよい。すなわち、ラベル3Aのうちの第1部分Xに対応する部分に施されるデザインは、上述したデザイン以外にも、たとえば、パルプモールドの地模様と同一の模様、自然物を散在させたようなデザイン、および、実質的に同一の単位デザインが繰り返し並ぶように配置された連続柄のうちのいずれかとすることができる。
【0044】
ここで、パルプモールドの地模様と同一の模様とは、パルプモールドを構成する紙やパルプの種々の微細な繊維が不規則に絡み合うことによってパルプモールドの表面に現れる模様のことである。また、実質的に同一の単位デザインには、大きさ、形状、および色彩が完全に同一の単位デザインだけではなく、大きさ、形状、および色彩のうち少なくとも1つが同一ではない単位デザインが含まれていてもよい。実質的に同一の単位デザインには、たとえば、種類が異なる花や植物であっても、そのそれぞれを単位デザインとして配置したものが含まれてもよい。
【0045】
また、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aにあっては、ラベル3Aがプレスによってパルプモールド2Aに貼り付けられることにより、当該ラベル3Aのうちの第1部分Xに対応する部分が、10%以上50%以下の絞り率で当該第1部分Xに貼り付けられており、ラベル3Aのうちの第2部分Yに対応する部分が、10%未満の絞り率で当該第2部分Yに貼り付けられている。
【0046】
絞り率とは、パルプモールド2Aに貼り付けられるラベル3Aの周長と、パルプモールド2Aのうち当該ラベル3Aが貼り付けられる領域の周長とによって算出することができる。パルプモールド2Aのうち当該ラベル3Aが貼り付けられる領域のある位置で測定した周長をP1とし、パルプモールド2Aに貼り付けられるラベル3AのうちP1の測定位置に相当する位置の周長をP2とした場合、絞り率は以下に示す式1により算出される。なお、絞り率の算出においては、P2をたとえば2mmにする等、短い単位で算出することが好ましい。
【0047】
(式1) 絞り率=100-(P1/P2×100)
【0048】
図5は、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールドの製造方法を示すフロー図であり、図6ないし図13は、図5に示す工程の一部を表わした模式断面図である。次に、これら図5ないし図13を参照して、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aの製造方法について具体的に説明する。
【0049】
ここで、図6は、図1(B)中に示すVI-VI線に対応した位置のパルプモールド2Aに対応する後述する抄造成形用型201等の各装置の断面を表わした図である。図7ないし図13においても、用いられる型は異なるものの、同様の位置のパルプモールド2A等の断面を表わしている。また、図11ないし図13においては、上記位置のパルプモールド2A等に加えて、同様の位置のラベル3Aの断面も表している。
【0050】
図5に示すように、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aの製造方法は、大きく分けて、ラベル3Aが準備される工程、パルプモールド2Aが抄造成形されかつ乾燥される工程、抄造成形されかつ乾燥されたパルプモールド2Aが粗成形される工程、および、粗成形されたパルプモールド2Aの仕上げ成形とラベル3Aのパルプモールド2Aへの貼り付けとが同時に行なわれる工程を備えている。
【0051】
ラベル付きパルプモールド1Aの製造方法においては、まず、パルプモールド2Aの上側容器部21の外側表面の全面を覆うことが可能な大きさの外形を有するラベル3Aが準備される(工程S1)。
【0052】
次に、図5および図6に示すように、抄造成形用型201が材料槽204へ浸漬される(工程S2)。
【0053】
より具体的には、図6に示すように、抄造成形用型201と、網202とが準備され、抄造成形用型201に網202が張られた状態において、抄造成形用型201と網202とが、パルプスラリー203が充填された材料槽204の中に浸漬される。抄造成形用型201は、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を有するパルプモールド2Aの形状に沿う形状を有するとともに、その一対の主面を貫通する吸引用貫通孔が多数設けられたものである。網202は、抄造成形用型201の一対の主面の一方に張られるものである。
【0054】
次に、図5および図6に示すように、抄造成形用型201へパルプスラリー203が吸引される(工程S3)。
【0055】
より具体的には、図6に示すように、抄造成形用型201の網202が張られた側の主面とは反対側の主面が位置する側から、パルプスラリー203の吸引が行なわれる。これにより、網202の表面には、パルプスラリー203が吸い付けられて堆積される。
【0056】
次に、図5および図7に示すように、材料槽204から抄造成形用型201が取り出される(工程S4)。この状態における抄造成形用型201の網202が張られた側の主面上には、堆積されたパルプスラリー203からなるパルプモールド2Aが形成されている。
【0057】
次に、図5に示すように、抄造成形用型201からパルプモールド2Aが取り出される(工程S5)。
【0058】
次に、図5に示すように、パルプモールド2Aが乾燥される(工程S6)。より具体的には、パルプモールド2Aが、高温の乾燥炉内に投入されることによって乾燥される。
【0059】
工程S2~S6を経て抄造成形されかつ乾燥されたパルプモールド2Aは、製品としてのラベル付きパルプモールド1Aを構成するパルプモールド2Aに比べ、柔らかく、かつ、厚みが相当程度に大きなものとなる。さらに、この状態におけるパルプモールド2Aは、厚みが不均一な状態で乾燥されることに起因して歪に変形したり、また、その表面には、厚みの不均一性やパルプ繊維の不規則な絡み合い等に起因する凹凸が形成されたりしている。さらに、網202に面する側の上記表面には、当該網202の跡に起因する凹凸もまた形成されている。
【0060】
次に、図5および図8に示すように、上側容器部21が開かれた状態におけるパルプモールド2Aの形状に沿う形状を有するプレス用第1型100に、パルプモールド2Aが載置される(工程S7)。
【0061】
ここで、パルプモールド2Aの形状に沿う形状とは、製品としてのラベル付きパルプモールド1Aの形状に実質的に沿う形状のことを意味しており、後述するパルプモールド2Aがプレス用第2型110によって1次プレスされる工程(工程S8)の前のパルプモールド2Aの形状と完全に一致した形状を意味するものではない。すなわち、パルプモールド2Aの形状に沿う形状とは、後述する工程S11においてラベル3Aと共にプレス用第2型110によって2次プレスされた後の(すなわち、2次プレスによって圧縮変形した後の)パルプモールド2Aおよびこれに貼り付けられたラベル3Aに沿う形状を意味している。
【0062】
図8に示すように、プレス用第1型100には、その一対の主面のうちの一方から突出するように、第1凸状部101および第2凸状部102が設けられている。第1凸状部101は、パルプモールド2Aの上側容器部21に含まれる凹形状の部位に沿う形状を有しており、第2凸状部102は、パルプモールド2Aの下側容器部22の収容部22aに沿う形状を有している。
【0063】
パルプモールド2Aは、上側容器部21に含まれる凹形状の部位が第1凸状部101に当接するとともに、下側容器部22の収容部22aが第2凸状部102に当接するように、上側容器部21が開かれた状態でプレス用第1型100に載置される。
【0064】
次に、図5および図9に示すように、パルプモールド2Aが、プレス用第1型100およびプレス用第2型110によって1次プレスされる(工程S8)。
【0065】
具体的には、図9に示すように、パルプモールド2Aの形状に沿う形状を有するプレス用第2型110が、プレス用第1型100に向けて(すなわち、図9中に示す矢印AR1方向に向けて)移動することにより、パルプモールド2Aが、プレス用第2型110によって1次プレスされる。
【0066】
ここで、パルプモールド2Aの形状に沿う形状とは、製品としてのラベル付きパルプモールド1Aの形状に実質的に沿う形状のことを意味しており、当該工程S8の前のパルプモールド2Aの形状と完全に一致した形状を意味するものではない。すなわち、パルプモールド2Aの形状に沿う形状とは、後述する工程S11においてラベル3Aと共にプレス用第2型110によって2次プレスされた後の(すなわち、2次プレスによって圧縮変形した後の)パルプモールド2Aおよびこれに貼り付けられたラベル3Aに沿う形状を意味している。
【0067】
プレス用第2型110のプレス面には、第1凹状部111および第2凹状部112が設けられている。第1凹状部111は、パルプモールド2Aの上側容器部21に含まれる凹形状の部位の外側表面(すなわち、図9中に示す上側の表面)に沿う形状を有している。第2凹状部112は、パルプモールド2Aの下側容器部22の収容部22aの外側表面(すなわち、図9中に示す上側の表面)に沿う形状を有している。
【0068】
プレス用第2型110による1次プレスは、プレス温度が概ね80℃以上150℃以下であることが好ましい。その際、プレス用第1型100も同程度に加熱されていてもよい。プレス時間は、1秒以上5秒以下程度であることが好ましく、プレス圧力は、後述する2次プレスにおけるプレス圧力よりも小さくされることが好ましい。
【0069】
なお、1次プレスにおけるプレス温度、プレス時間およびプレス圧力は、後述する2次プレスにおけるプレス温度、プレス時間およびプレス圧力との関係性や、基材3aの耐熱性、接着剤層3bの接着温度等によって適宜変更されるものである。
【0070】
1次プレスによって粗成形されたパルプモールド2Aは、1次プレス前の状態に比べて、硬く、薄く、その表面が平滑化したものとなる。一例として、1次プレス前において厚みが0.8mm以上3.0mm以下あるいは1.5mm以上2.5mm以下のパルプモールド2Aは、当該1次プレスによって厚みが0.6mm以上2.5mm以下等になる。
【0071】
次に、図5および図10に示すように、プレス用第2型110によるパルプモールド2Aの1次プレスが解除される(工程S9)。具体的には、図10に示すように、プレス用第2型110が1次プレス前の位置に後退する(すなわち、図10中に示す矢印AR2方向に向けて移動する)ことにより、プレス用第2型110によるパルプモールド2Aの1次プレスが解除される。
【0072】
次に、図5および図11に示すように、ラベル3Aが、パルプモールド2Aに対して位置決めされて配置される(工程S10)。
【0073】
具体的には、図11に示すように、パルプモールド2Aがプレス用第1型100に載置された状態において、ラベル3Aが、接着剤層3bが設けられた第2主面3(2)がパルプモールド2Aの上側容器部21に面し、かつ、後述するパルプモールド2Aおよびラベル3Aがプレス用第2型110によって2次プレスされる工程(工程S11)において上側容器部21の外側表面の全面を覆うこととなるように、パルプモールド2Aの上側容器部21に対して位置決めされて配置される。これにより、ラベル3Aは、プレス用第1型100とプレス用第2型110との間に配置されることになる。
【0074】
次に、図5および図12に示すように、パルプモールド2Aおよびラベル3Aが、プレス用第1型100およびプレス用第2型110によって2次プレスされる(工程S11)。
【0075】
具体的には、図12に示すように、ラベル3Aがパルプモールド2Aに対して位置決めされた状態において、プレス用第2型110がプレス用第1型100に向けて(すなわち、図12中に示す矢印AR3方向に向けて)移動することにより、パルプモールド2Aおよびラベル3Aが、プレス用第2型110によって2次プレスされる。
【0076】
プレス用第2型110によって2次プレスされることにより、パルプモールド2Aおよびラベル3Aは、積層された状態でプレス用第1型100およびプレス用第2型110によって挟み込まれる。これにより、パルプモールド2Aが仕上げ成形されると同時に、ラベル3Aが、上側容器部21の外側表面の全面を覆うように、第2主面3(2)側に設けられた熱接着性の接着剤層3bを介して当該上側容器部21に貼り付けられる。
【0077】
また、ラベル3Aが2次プレスによってパルプモールド2Aに貼り付けられることにより、パルプモールド2Aの上側容器部21の第1部分Xのうちの、ラベル3Aの皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分に対応する部分は、これが位置しない部分に対応する部分のパルプモールド2Aよりも圧縮された状態とされる。これにより、皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分のラベル3Aが、パルプモールド2A側に向けて入り込んだ状態となるように、ラベル3Aがパルプモールド2Aに貼り付けられることとなる。
【0078】
さらに、ラベル3Aが2次プレスによってパルプモールド2Aに貼り付けられることにより、上側容器部21の第1部分Xに対応する部分のラベル3Aが、皺や折り重なりを生じさせながら10%以上50%以下の絞り率で当該第1部分Xに貼り付けられるとともに、上側容器部21の第2部分Yに対応する部分のラベル3Aが、10%未満の絞り率で当該第2部分Yに貼り付けられることとなる。
【0079】
プレス用第2型110による2次プレスは、プレス温度が概ね70℃以上100℃以下であることが好ましい。その際、プレス用第1型100も同程度に加熱されていてもよい。プレス時間は、1秒以上3秒以下程度であることが好ましく、プレス圧力は、上述した1次プレスにおけるプレス圧力よりも大きくされることが好ましい。
【0080】
すなわち、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aの製造方法にあっては、2次プレスにおけるプレス温度は、1次プレスにおけるプレス温度よりも低くされる。また、2次プレスが行なわれる工程におけるプレス時間は、1次プレスが行なわれる工程におけるプレス時間よりも短くされ、2次プレスにおけるプレス圧力は、1次プレスにおけるプレス圧力よりも大きくされる。
【0081】
なお、2次プレスにおけるプレス温度、プレス時間およびプレス圧力は、上述した1次プレスにおけるプレス温度、プレス時間およびプレス圧力との関係性や、基材3aの耐熱性、接着剤層3bの接着温度等によって適宜変更されるものである。
【0082】
2次プレスによって仕上げ成形されたパルプモールド2Aは、2次プレス前の状態に比べて、硬く、薄く、その表面が平滑化したものとなる。一例として、2次プレス前において厚みが0.6mm以上2.5mm以下のパルプモールド2Aは、当該2次プレスによって厚みが0.4mm以上2.0mm以下等になる。
【0083】
次に、図5および図13に示すように、プレス用第2型110による2次プレスが解除される(工程S12)。具体的には、図13に示すように、プレス用第2型110が2次プレス前の位置に後退する(すなわち、図13中に示す矢印AR4方向に向けて移動する)ことにより、プレス用第2型110によるパルプモールド2Aおよびラベル3Aの2次プレスが解除される。
【0084】
次に、図5に示すように、プレス用第1型100からラベル付きパルプモールド1Aが取り出される(工程S13)。取り出されたラベル付きパルプモールド1Aには、さらに、その外縁部分に位置する図示しない余剰部分を除去することで当該ラベル付きパルプモールド1Aを最終形状に仕上げるための抜き加工が施される。これにより、図1ないし図4において示したラベル付きパルプモールド1Aが製造されることになる。
【0085】
ここで、抄造成形されかつ乾燥された後の状態におけるパルプモールド2A(すなわち、上記工程S6後の状態におけるパルプモールド2A)のうちの、上側容器部21の第1部分Xに対応する部分は、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部である。また、上記状態におけるパルプモールド2Aは、上述したように、その表面に、厚みの不均一性や網202の跡、パルプ繊維の不規則な絡み合い等に由来する凹凸が形成されている。
【0086】
そのため、何らの手当ても行なわずに、ラベル3Aが上記状態におけるパルプモールド2Aの第1部分Xに貼り付けられた場合には、ラベル3Aが破れたり、皺が生じたり、不均一な凹凸の跡がラベル3Aの表面に生じたりし易くなる。また、上記状態におけるパルプモールド2Aは歪んだ形状をしているため、これに対してラベル3Aを貼り付けることは容易ではない。さらに、網202の跡が形成されている側のパルプモールド2Aの表面にラベル3Aが貼り付けられた場合には、網202の跡がラベル3Aにも形成され易くなる。
【0087】
この点、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aの製造方法においては、上述したように、パルプモールド2Aが1次プレスされることで粗成形された後に、ラベル3Aおよびパルプモールド2Aが2次プレスされることにより、パルプモールド2Aの仕上げ成形とラベル3Aのパルプモールド2Aへの貼り付けとが同時に行なわれる。このように製造することにより、ラベル付きパルプモールド1Aの表面の平滑性を大幅に向上させることができる。
【0088】
すなわち、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aの製造方法においては、ラベル3Aの貼り付けが行なわれる前に、パルプモールド2Aが1次プレスされることで粗成形される。これにより、パルプモールド2Aの表面の凹凸が平滑化される。
【0089】
ラベル3Aは、このように厚みの均一化および表面の平滑化がなされたパルプモールド2Aに対して2次プレスによって貼り付けられる。これにより、凹凸部分に貼り付けられることに起因してラベル3Aに破れや皺、折り重なり等が生じることを効果的に抑制することができる。
【0090】
また、ラベル3Aがプレスによってパルプモールド2Aに貼り付けられることにより、ラベル3Aのうちの第1部分Xに対応する部分に皺や折り重なりが生じた場合においても、これらがパルプモールド2Aの厚みに吸収されることになるため、実質的に当該部分のラベル3Aの表面に段差が生じることを抑制することができる。
【0091】
さらに、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aの製造方法においては、上述したように、パルプモールド2Aの上側容器部21の第1部分Xのうちの、ラベル3Aの皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分に対応する部分は、これが位置しない部分に対応する部分のパルプモールド2Aよりも圧縮された状態とされ、これにより、皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分のラベル3Aが、パルプモールド2A側に向けて入り込んだ状態となるように、ラベル3Aがパルプモールド2Aに貼り付けられる。
【0092】
このように構成することにより、皺や折り重なりが生じたラベル3Aの厚みが、柔らかさを有するパルプモールド2Aの厚みに吸収されることになり、結果として、皺や折り重なりを目立たなくさせることができるばかりでなく、ラベル付きパルプモールド1Aの表面を平滑化できることになる。
【0093】
また、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aの製造方法においては、上述したように、ラベル3Aのうちの第1部分Xに対応する部分が、10%以上50%以下の絞り率で貼り付けられる。これにより、ラベル3Aを、パルプモールド2Aの表面の形状に沿った形状で保持することができるとともに、当該部分に大きな皺や折り重なりが生じることを抑制することができ、さらには、生じた折り重なり同士が更に重なることを抑制できることとなる。
【0094】
したがって、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aの製造方法に従って製造することにより、ラベル付きパルプモールド1Aの表面の平滑性を大幅に向上させることができる。
【0095】
また、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aの製造方法においては、上述したように、パルプモールド2Aの仕上げ成形とラベル3Aのパルプモールド2Aへの貼り付けとが同時に行なわれる工程(すなわち、2次プレスが行なわれる工程)におけるプレス温度が、パルプモールド2Aが粗成形される工程(すなわち、1次プレスが行なわれる工程)におけるプレス温度よりも低くされる。これに加えて、2次プレスが行なわれる工程におけるプレス時間が、1次プレスが行なわれる工程におけるプレス時間よりも短くされる。
【0096】
これにより、ラベル3Aに印加される熱負荷を低減できる。そのため、ラベル3Aがデザイン印刷層やコーティング層を有する場合には、これらが変色あるいは熱劣化することを未然に防止でき、ラベル3Aが金属蒸着層を有する場合には、これが光沢を失って白化することを未然に防止できる。また、ラベル3Aの基材3aとしてプラスチックフィルムが用いられる場合には、これが熱収縮することを未然に防止できる。
【0097】
さらに、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aの製造方法においては、上述したように、2次プレスが行なわれる工程におけるプレス圧力が、1次プレスが行なわれる工程におけるプレス圧力よりも大きくされる。
【0098】
これにより、1次プレスによって圧縮変形されたパルプモールド2Aがさらに圧縮変形されることになる。そのため、上述した、ラベル3Aに生じた皺や折り重なりをパルプモールド2Aの厚みに吸収させるという効果が、より確実に奏されることになる。
【0099】
また、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aにあっては、上述したように、ラベル3Aのうちの第1部分Xに対応する部分に、当該ラベル3Aの皺や折り重なりが目立ちにくいようなデザインが施されてもよい。このように構成した場合には、ラベル3Aの皺や折り重なりをさらに目立ち難くすることができるため、ラベル付きパルプモールド1Aの美観を向上させることができるとともに、ラベル付きパルプモールド1Aに収容される商品の購買欲を高めることができる。
【0100】
なお、上述した本実施の形態においては、1次プレスと2次プレスとが、いずれも、同一のプレス用第1型100とプレス用第2型110とを用いて行なわれる場合について説明したが、一対の1次プレス用型と、一対の2次プレス用型とは、互いに異なるものであってもよい。
【0101】
また、上述した本実施の形態においては、パルプモールド2Aを粗成形するためのプレスが1回行なわれる場合について説明したが、当該パルプモールド2Aを粗成形するためのプレスが複数回行われ、その後に、パルプモールド2Aの仕上げ成形とラベル3Aのパルプモールド2Aへの貼り付けとが同時に行なわれる工程(すなわち、上述した2次プレス)が行なわれてもよい。
【0102】
さらに、上述した本実施の形態においては、パルプモールド2Aを粗成形するための1次プレスが、抄造成形されかつ乾燥されたパルプモールド2Aの全体に対して行なわれる場合について説明したが、1次プレスによる粗成形は、少なくとも、2次プレスにおいてラベル3Aが貼り付けられる部分のパルプモールド2Aに対して行なわれていればよい。
【0103】
(実施の形態2)
図14は、実施の形態2に係るラベル付きパルプモールドの製造方法に従って製造されたラベル付きパルプモールドの形状および構成を示す図であり、図14(A)は、開閉可能な蓋になる上側容器部が閉じられた状態の斜視図、図14(B)は、上側容器部が開かれた状態の斜視図である。図15は、図14(A)に示す状態のラベル付きパルプモールドの形状および構成を示す図であり、図15(A)は、図14(A)中に示すXVA-XVA線に沿った模式断面図、図15(B)は、図15(A)の上側容器部近傍を拡大した要部拡大断面図である。以下、これら図14および図15を参照して、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールドの製造方法に従って製造されたラベル付きパルプモールド1Bについて説明する。
【0104】
ここで、図14においては、パルプモールド2Bとこれに貼り付けられているラベル3Bとの関係を、当該図14を参照することで理解できるようにするため、ラベル3Bに覆われることで直接的には視認することができない部分のパルプモールド2Bの表面を、模式的にラベル3Bを透過させることで図示している。
【0105】
図14および図15に示すように、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Bは、上述した実施の形態1に係るラベル付きパルプモールド1Aと比較した場合に、当該ラベル付きパルプモールド1Bを構成するパルプモールド2Bの上側容器部21に凹部21bが設けられている点において、ラベル付きパルプモールド1Aと相違している。
【0106】
より具体的には、ラベル付きパルプモールド1Bのパルプモールド2Bにおいては、第2部分Yのうちの略平面形状の部分の上側容器部21の外側表面に、平面視略円形状の凹部21bが設けられている。
【0107】
凹部21bの平面視した場合の形状は、特にこれが略円形状に限定されるものではなく、たとえば文字、記号、マーク、草花等の図柄の輪郭を有するように適宜変更されてよい。また、凹部21bの数は、特にこれが単数に限定されるものではなく、複数であってもよい。
【0108】
凹部21bの深さは、たとえば、最も深い部分において0.2mm以上1.5mm以下とされるが、特にこれに限定されるものではない。すなわち、凹部21bの深さは、パルプモールド2Bの厚みや、凹部21bの図柄の種類等に合わせて適宜設定されてよい。
【0109】
さらに、凹部21bは、図柄の種類に合わせて、たとえば複数の段差部分を有するものや傾斜部分を有するもの等、様々な構成を有するものであってよい。このように様々な構成が組み合わされた単数または複数の凹部21bとすることにより、ラベル付きパルプモールド1Bに所望の意匠性を付与することができる。
【0110】
凹部21bは、後述するように、一対の2次プレス用型である2次プレス用第1型120および2次プレス用第2型130(図18等参照)によってプレスされることでパルプモールド2Bに設けられる。
【0111】
ラベル付きパルプモールド1Bのラベル3Bは、上述したラベル付きパルプモールド1Aのラベル3Aと同様の構成を有するものである。ラベル3Bは、上側容器部21の凹部21bに沿う形状で貼り付けられた第1領域31と、上側容器部21の凹部21b以外の部分に貼り付けられた第2領域32とを含んでいる。ここで、図14(A)においては、理解を容易とするために、第1領域31に濃い色を付すとともに、第2領域32に薄い色を付している。
【0112】
図16は、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールドの製造方法を示すフロー図であり、図17ないし図19は、図16に示す工程の一部を表わした模式断面図である。次に、これら図16ないし図19を参照して、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Bの製造方法について具体的に説明する。
【0113】
ここで、図17は、図14(B)中に示すXVII-XVII線に対応した位置のパルプモールド2Bと、これに対応するラベル3Bおよび後述する2次プレス用第1型120等の各装置の断面を表わした図である。図18および図19についても同様である。
【0114】
図16に示すように、ラベル付きパルプモールド1Bの製造方法は、その大部分がラベル付きパルプモールド1Aの製造方法に準じている。そのため、以下においては、ラベル付きパルプモールド1Bの製造方法のうち、ラベル付きパルプモールド1Aの製造方法と内容が共通する工程についてはその説明を省略し、ラベル付きパルプモールド1Aの製造方法と内容が異なる工程についてのみ説明することにする。
【0115】
図16に示すように、ラベル付きパルプモールド1Bの製造方法は、ラベル付きパルプモールド1Aの製造方法と比較した場合に、一対の1次プレス用型と、一対の2次プレス用型とが、互いに異なるものである点において相違している。
【0116】
より具体的には、ラベル付きパルプモールド1Bの製造方法においては、パルプモールド2Bの1次プレスに用いられる一対の1次プレス用型として、上述したプレス用第1型100およびプレス用第2型110が用いられる。一方で、ラベル付きパルプモールド1Bの製造方法においては、ラベル3Bおよびパルプモールド2Bの2次プレスに用いられる一対の2次プレス用型として、プレス用第1型100およびプレス用第2型110とは異なる、一対の2次プレス用第1型120および2次プレス用第2型130が用いられる。
【0117】
図16に示すように、工程S9において1次プレスが解除されたパルプモールド2Bは、プレス用第1型100から取り出される(工程S9B1)。
【0118】
次に、図16および図17に示すように、上側容器部21が開かれた状態におけるパルプモールド2Bの形状に沿う形状を有する2次プレス用第1型120に、パルプモールド2Bが載置される(工程S9B2)。
【0119】
ここで、パルプモールド2Bの形状に沿う形状とは、製品としてのラベル付きパルプモールド1Bの形状に実質的に沿う形状のことを意味しており、パルプモールド2Bおよびラベル3Bが2次プレス用第2型130によって2次プレスされる工程(工程S11B)の前のパルプモールド2Bの形状と完全に一致した形状を意味するものではない。すなわち、パルプモールド2Bの形状に沿う形状とは、工程S11Bにおいてラベル3Bと共に2次プレス用第2型130によってプレスされた後の(すなわち、2次プレスによって圧縮変形した後の)パルプモールド2Bおよびこれに貼り付けられたラベル3Bに沿う形状を意味している。
【0120】
図17に示すように、2次プレス用第1型120には、その一対の主面のうちの一方から突出するように、第1凸状部121および第2凸状部122が設けられている。第1凸状部121は、パルプモールド2Bの上側容器部21に含まれる凹形状の部位に沿う形状を有しており、第2凸状部122は、パルプモールド2Bの下側容器部22の収容部22aに沿う形状を有している。
【0121】
次に、図16および図17に示すように、ラベル3Bが、パルプモールド2Bに対して位置決めされて配置される(工程S10B)。
【0122】
具体的には、図17に示すように、パルプモールド2Bが2次プレス用第1型120に載置された状態において、ラベル3Bが、接着剤層3bが設けられた第2主面3(2)がパルプモールド2Bの上側容器部21に面し、かつ、後述するパルプモールド2Bおよびラベル3Bが2次プレス用第2型130によって2次プレスされる工程(工程S11B)において上側容器部21の外側表面の全面を覆うこととなるように、パルプモールド2Bの上側容器部21に対して位置決めされて配置される。これにより、ラベル3Bは、2次プレス用第1型120と2次プレス用第2型130との間に配置されることになる。
【0123】
次に、図16および図18に示すように、工程S11Bにおいては、パルプモールド2Bおよびラベル3Bが、2次プレス用第1型120および2次プレス用第2型130によって2次プレスされる(工程S11B)。
【0124】
具体的には、図18に示すように、ラベル3Bがパルプモールド2Bに対して位置決めされた状態において、2次プレス用第2型130が2次プレス用第1型120に向けて(すなわち、図18中に示す矢印AR5方向に向けて)移動することにより、パルプモールド2Bおよびラベル3Bが、2次プレス用第2型130によって2次プレスされる。
【0125】
2次プレス用第2型130のプレス面には、第1凹状部131および第2凹状部132が設けられている。
【0126】
第1凹状部131は、パルプモールド2Bの上側容器部21に含まれる凹形状の部位の外側表面(すなわち、図18中に示す上側の表面)に沿う形状を有している。第1凹状部131は、その一部に凸状部131aを有している。凸状部131aは、パルプモールド2Bの表面の一部に、周囲よりも当該パルプモールド2Bが薄く圧縮された部分である凹部21bを形成(すなわち、エンボス加工)するためのものである。
【0127】
第2凹状部132は、パルプモールド2Bの下側容器部22の収容部22aの外側表面(すなわち、図18中に示す上側の表面)に沿う形状を有している。
【0128】
このように構成された2次プレス用第2型130によってプレスされることにより、パルプモールド2Bおよびラベル3Bが、積層された状態で2次プレス用第1型120および2次プレス用第2型130によって挟み込まれることになる。これにより、パルプモールド2Bが仕上げ成形されると同時に、ラベル3Bが、上側容器部21の外側表面の全面を覆うように、第2主面3(2)側に設けられた熱接着性の接着剤層3bを介して当該上側容器部21に貼り付けられる。
【0129】
ここで、2次プレス用第2型130のプレス面が上述した凸状部131aを有していることにより、凸状部131aに対応する部分の上側容器部21の外側表面に凹部21bが形成されつつ、ラベル3Bが、凹部21bに当該凹部に沿う形状で貼り付けられた第1領域31(図14(A)等参照)と、凹部21b以外の部分の上側容器部21に貼り付けられた第2領域32とを含むように、パルプモールド2Bの外側表面に沿って貼り付けられる。また、2次プレス用第1型120のプレス面のうちの凸状部131aに対応する部分が凹状部を有していないことにより、上側容器部21の内側表面には、外側表面に形成された凹部21bに対応するような凸部が形成されない。
【0130】
なお、一対の2次プレス用第1型120および2次プレス用第2型130を用いた2次プレスにおけるプレス温度、プレス時間およびプレス圧力は、上述した実施の形態1に係るラベル付きパルプモールド1Aの製造方法における2次プレスにおけるプレス温度、プレス時間およびプレス圧力と同様に設定される。
【0131】
次に、図16および図19に示すように、2次プレス用第2型130による2次プレスが解除される(工程S12B)。具体的には、図19に示すように、2次プレス用第2型130が2次プレス前の位置に後退する(すなわち、図19中に示す矢印AR6方向に向けて移動する)ことにより、2次プレス用第2型130によるパルプモールド2Bおよびラベル3Bの2次プレスが解除される。
【0132】
次に、図16に示すように、2次プレス用第1型120からラベル付きパルプモールド1Bが取り出される(工程S13B)。これにより、図14および図15において示した実施の形態2に係るラベル付きパルプモールド1Bが製造されることになる。
【0133】
以上において説明したラベル付きパルプモールド1Bの製造方法に従って製造した場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果が得られることになり、ラベル付きパルプモールド1Bの表面の平滑性を大幅に向上させることができる。
【0134】
ここで、エンボス加工後にラベルの貼り付けが行なわれる場合においては、ラベルの貼り付けの際、エンボス加工によって形成された凹部の表面にラベルが十分に沿うことなく貼り付けられることになり、その結果、ラベルに皺や浮き(すなわち、貼り付け不良)等が生じ易くなるという問題がある。また、1次プレスにおいてエンボス加工が行なわれた後に、2次プレスにおいて、上述した凸状部131aのような形状を有する型を用いることでエンボス加工とラベルの貼り付けとが同時に行なわれる場合には、ラベルに亀裂や変形が生じ易いという問題がある。さらに、1次プレスにおいてエンボス加工とラベルの貼り付けとを同時に行なわれた後に、2次プレスにおいてさらにエンボス加工が行なわれた場合には、ラベルに亀裂が生じたり、剥離が起こったりし易いという問題がある。
【0135】
この点、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Bの製造方法においては、一対の1次プレス用型と一対の2次プレス用型とが、互いに異なるものによって構成される。これにより、1次プレスにおいてはパルプモールド2Bにエンボス加工が施されることなく、2次プレスにおいて、エンボス加工による凹部21bの形成と、パルプモールド2Bの仕上げ成形と、ラベル3Bの貼り付けとが、同時に行なわれる。
【0136】
このように製造した場合には、ラベル3Bが、凹部21bの形状に沿うようにこれに貼り付けられるため、ラベルに亀裂や剥離が生じることと、凹部21bの輪郭がぼやけることとを効果的に抑制することができる。したがって、このように構成することにより、凹部が設けられたラベル付きパルプモールドの加飾性を高めつつその美観を向上させることができる。
【0137】
なお、本実施の形態においては、2次プレス用第2型130に含まれる凸状部131aが、当該2次プレス用第2型130の他の部分と一体のものとして構成されている場合について説明したが、凸状部131aは、他の部分とは別体のものとして構成されてもよい。その際、凸状部131aは、2次プレス用第2型130のプレス面に対して付け替え可能に構成されてもよい。このように構成した場合には、異なる形状の凸状部131aを複数種類用意することにより、共通の2次プレス用第2型130を用いつつ、異なる図柄の輪郭を有する凹部21bが形成されたラベル付きパルプモールドを製造することが可能になる。
【0138】
また、本実施の形態においては、上側容器部21のうちの第2部分Yを規定する部分の外側表面に凹部21bが設けられた構成のラベル付きパルプモールドについて説明したが、凹部21bが設けられる位置は、上述したものに限定されない。たとえば、凹部21bは、上側容器部21のうちの第1部分Xを規定する部分の外側表面に設けられてもよいし、第1部分Xおよび第2部分Yに跨がって設けられてもよい。
【0139】
(付記)
上述した実施の形態において開示したラベル付きパルプモールドの製造方法の特徴的な構成を要約すると、以下のとおりとなる。
【0140】
[付記1]
ラベルが準備される工程と、
複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を有するパルプモールドが抄造成形されかつ乾燥される工程と、
上記パルプモールドが1次プレスされることにより、上記パルプモールドの少なくとも一部が粗成形される工程と、
粗成形された上記パルプモールドに上記ラベルが積層された状態において上記ラベルおよび上記パルプモールドが2次プレスされることにより、上記パルプモールドの粗成形された部分の少なくとも一部に対する仕上げ成形と上記ラベルの貼り付けとが同時に行なわれる工程とを備え、
上記パルプモールドの粗成形された部分の少なくとも一部に対する仕上げ成形と上記ラベルの貼り付けとが同時に行なわれる工程において、少なくとも上記曲面部に対応する部分の上記ラベルに皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置し、上記皺および上記折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分に対応する部分の上記パルプモールドが、上記皺および上記折り重なりが位置しない部分に対応する部分の上記パルプモールドよりも圧縮された状態とされ、これにより、上記皺および上記折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分の上記ラベルが、上記パルプモールド側に向けて入り込んだ状態となるように、上記ラベルが上記パルプモールドに貼り付けられる、ラベル付きパルプモールドの製造方法。
[付記2]
上記パルプモールドの1次プレスが、一対の1次プレス用型によって行なわれ、
上記ラベルおよび上記パルプモールドの2次プレスが、一対の2次プレス用型によって行なわれ、
上記一対の2次プレス用型の一方のプレス面が、上記パルプモールドの表面に凹部を形成するための凸状部を有し、
上記パルプモールドの仕上げ成形と上記ラベルの上記パルプモールドへの貼り付けとが同時に行なわれる工程において、上記パルプモールドの表面に上記凹部が形成されつつ、上記ラベルが、上記パルプモールドのうちの上記凹部に当該凹部に沿う形状で貼り付けられる第1領域と、上記パルプモールドのうちの上記凹部以外の部分に貼り付けられる第2領域とを含むように、上記ラベルが、上記パルプモールドに貼り付けられる、付記1に記載のラベル付きパルプモールドの製造方法。
[付記3]
前記ラベルが、光沢性を有する層およびデザイン印刷層の少なくともいずれかを含み、
上記パルプモールドの仕上げ成形と上記ラベルの上記パルプモールドへの貼り付けとが同時に行なわれる工程におけるプレス温度が、上記パルプモールドが粗成形される工程におけるプレス温度よりも低い、付記1または2に記載のラベル付きパルプモールドの製造方法。
[付記4]
前記ラベルが、光沢性を有する層およびデザイン印刷層の少なくともいずれかを含み、
上記パルプモールドの仕上げ成形と上記ラベルの上記パルプモールドへの貼り付けとが同時に行なわれる工程におけるプレス時間が、上記パルプモールドが粗成形される工程におけるプレス時間よりも短い、付記1から3のいずれかに記載のラベル付きパルプモールドの製造方法。
【0141】
(その他の形態等)
上述した実施の形態においては、パルプモールドの表面のうちの曲面部を規定しない部分にのみ凹部が設けられた場合を例示して説明を行なったが、凹部は、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を規定する部分の表面および曲面部を規定しない部分の表面の少なくともいずれか一方にのみ設けられてもよいし、上記2つの部分の両方に個別に設けられてもよい。さらには、凹部は、上記2つの部分に跨がって設けられてもよい。
【0142】
さらに、上述した実施の形態においては、上側容器部と下側容器部とがヒンジ部によって連結された場合のラベル付きパルプモールドの構成を例示して説明を行なったが、上側容器部および下側容器部は、ヒンジ部によって連結されることなく、別個の部材として形成されていてもよい。この場合、上側容器部および下側容器部は、たとえば、各々に形成された嵌合部を介して互いに取り付けられてもよく、上述した凹部は、これら上側容器部および下側容器部のうちのいずれか一方に設けられていればよい。
【0143】
また、上述した実施の形態においては、内容物としてファンデーションおよびパフを収容可能に構成されたラベル付きパルプモールドに本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、上述したファンデーション等以外の種々の商品を内容物として収容可能に構成されたラベル付きパルプモールドにも、本発明は当然に適用可能である。
【0144】
さらに、上述した実施の形態においては、内容物を収容可能に構成された容器としてのラベル付きパルプモールドに本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、容器等の蓋材や、各種物品のカバー等としてのラベル付きパルプモールドにも、本発明は当然に適用可能である。より具体的には、本発明は、ギフトBOXやボトルケース、雑貨あるいは化粧品の収納ケース等として用いられるラベル付きパルプモールドにも、当然に適用可能である。
【0145】
上述した本発明の実施の形態において示した各部の形状や構成、大きさ、数、材質等は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々変更が可能である。
【0146】
また、上述した本発明の実施の形態において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当然に相互に組み合わせることができる。
【0147】
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0148】
1A,1A’,1B ラベル付きパルプモールド、2A,2B パルプモールド、3A,3A’,3B ラベル、3(1) 第1主面、3(2) 第2主面、3a 基材、3b,3b’ 接着剤層、20 収容空間、21 上側容器部、21b 凹部、21c 段差部、22 下側容器部、22a 収容部、23 ヒンジ部、31 第1領域、32 第2領域、100 プレス用第1型、101 第1凸状部、102 第2凸状部、110 プレス用第2型、111 第1凹状部、112 第2凹状部、120 2次プレス用第1型、121 第1凹状部、122 第2凹状部、130 2次プレス用第2型、131 第1凹状部、131a 凸状部、132 第2凹状部、201 抄造成形用型、202 網、203 パルプスラリー、204 材料槽、X 第1部分、Y 第2部分。
図1
図2
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