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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021711
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ラベル付きパルプモールド
(51)【国際特許分類】
   D21J 3/00 20060101AFI20240208BHJP
   B65D 65/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
D21J3/00
B65D65/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124743
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000238005
【氏名又は名称】株式会社フジシールインターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】節田 征矢
(72)【発明者】
【氏名】和田 奈央子
(72)【発明者】
【氏名】図師 良明
【テーマコード(参考)】
3E086
4L055
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD05
3E086AD23
3E086BA14
3E086BA35
3E086BB61
3E086BB71
3E086BB90
3E086CA40
4L055BF06
4L055GA05
(57)【要約】
【課題】パルプモールドに埋め込まれた埋込物が外部に向けて露出することなく保護されたラベル付きパルプモールドを提供する。
【解決手段】ラベル付きパルプモールド1Aは、パルプモールド2Aと、パルプモールド2Aに貼り付けられたラベル3Aと、パルプモールド2Aとラベル3Aとの間に介装されることにより、パルプモールド2Aとラベル3Aとによって構成される壁部300に埋め込まれた埋込物200とを備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプモールドと、
前記パルプモールドに貼り付けられたラベルと、
前記パルプモールドと前記ラベルとの間に介装されることにより、前記パルプモールドと前記ラベルとによって構成される壁部に埋め込まれた埋込物とを備えた、ラベル付きパルプモールド。
【請求項2】
前記パルプモールドは、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を有し、
前記ラベルのうちの前記曲面部に対応する部分には、前記ラベルの皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置し、
前記皺および前記折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分に対応する部分の前記パルプモールドが、前記皺および前記折り重なりが位置しない部分に対応する部分の前記パルプモールドよりも圧縮された状態とされ、これにより、前記皺および前記折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分の前記ラベルが、前記パルプモールド側に向けて入り込んでいる、請求項1に記載のラベル付きパルプモールド。
【請求項3】
前記パルプモールドは、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を有し、
前記ラベルのうちの前記曲面部に対応する部分が、10%以上50%以下の絞り率で当該曲面部に貼り付けられている、請求項1に記載のラベル付きパルプモールド。
【請求項4】
パルプモールドと、
前記パルプモールドに貼り付けられたラベルとを備え、
前記パルプモールドは、前記ラベルが貼り付けられた部分である被貼り付け面と、前記ラベルが貼り付けられていない部分である露出面とを含み、
前記被貼り付け面と前記露出面との境界部において、前記被貼り付け面が前記露出面よりも後退していることにより、前記パルプモールドに段差部が設けられ、
前記段差部に対応する部分の前記ラベルは、前記段差部に対応する部分の前記ラベルの厚み方向における少なくとも一部が前記段差部に入り込んだ状態で前記被貼り付け面に貼り付けられ、
前記被貼り付け面を規定する部分の前記パルプモールドと前記ラベルとの間に介装されることにより、前記被貼り付け面を規定する部分の前記パルプモールドと前記ラベルとによって構成される壁部に埋め込まれた埋込物をさらに備えた、ラベル付きパルプモールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベル付きパルプモールドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の低減の観点から、容器としてのパルプモールドに対するニーズが高まっている。当該パルプモールドの意匠性を向上させる一形態として、たとえば特開昭56-77135号公報(特許文献1)には、半乾燥状態のパルプモールドの表面に植物の花弁等を配置し、これらを加熱プレスすることで形成される押し花入りパルプモールドの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56-77135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記製造方法に従ってパルプモールドに花弁等を貼り付けた場合には、花弁等が外部に露出することになるため、周囲の物体との接触等によって破損が生じ易い。そのため、パルプモールドに何らかの部材を埋め込む場合には、当該部材が外部に向けて露出されることなく保護されることが好ましい。
【0005】
したがって、本発明は、上述した問題を解決すべくなされたものであり、パルプモールドに埋め込まれた埋込物が外部に向けて露出することなく保護されたラベル付きパルプモールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の局面に基づくラベル付きパルプモールドは、パルプモールドと、上記パルプモールドに貼り付けられたラベルと、上記パルプモールドと上記ラベルとの間に介装されることにより、上記パルプモールドと上記ラベルとによって構成される壁部に埋め込まれた埋込物とを備えている。
【0007】
上記本発明の第1の局面に基づくラベル付きパルプモールドにあっては、上記パルプモールドが、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を有していてもよい。その場合には、上記ラベルのうちの上記曲面部に対応する部分には、上記ラベルの皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置していてもよく、また、上記皺および上記折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分に対応する部分の上記パルプモールドが、上記皺および上記折り重なりが位置しない部分に対応する部分の上記パルプモールドよりも圧縮された状態とされ、これにより、上記皺および上記折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分の上記ラベルが、上記パルプモールド側に向けて入り込んでいてもよい。
【0008】
上記本発明の第1の局面に基づくラベル付きパルプモールドにあっては、上記パルプモールドが、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を有していてもよい。その場合には、上記ラベルのうちの上記曲面部に対応する部分が、10%以上50%以下の絞り率で当該曲面部に貼り付けられていることが好ましい。
【0009】
本発明の第2の局面に基づくラベル付きパルプモールドは、パルプモールドと、上記パルプモールドに貼り付けられたラベルとを備えている。上記パルプモールドは、上記ラベルが貼り付けられた部分である被貼り付け面と、上記ラベルが貼り付けられていない部分である露出面とを含んでいる。上記被貼り付け面と上記露出面との境界部において、上記被貼り付け面が上記露出面よりも後退していることにより、上記パルプモールドに段差部が設けられており、上記段差部に対応する部分の上記ラベルは、上記段差部に対応する部分の上記ラベルの厚み方向における少なくとも一部が上記段差部に入り込んだ状態で上記被貼り付け面に貼り付けられている。上記本発明の第2の局面に基づくラベル付きパルプモールドは、上記被貼り付け面を規定する部分の上記パルプモールドと上記ラベルとの間に介装されることにより、上記被貼り付け面を規定する部分の上記パルプモールドと上記ラベルとによって構成される壁部に埋め込まれた埋込物をさらに備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パルプモールドに埋め込まれた埋込物が外部に向けて露出することなく保護されたラベル付きパルプモールドを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係るラベル付きパルプモールドの斜視図である。
図2図1に示すラベル付きパルプモールドの平面図である。
図3図1に示すラベル付きパルプモールドの模式断面図および要部拡大断面図である。
図4図1に示すパルプモールドの平面図である。
図5図1に示すラベル付きパルプモールドの要部拡大断面図、および、図1に示すラベル付きパルプモールドとは異なる構成のラベルを備えるラベル付きパルプモールドの要部拡大断面図である。
図6図1に示すラベル付きパルプモールドの製造方法を示すフロー図である。
図7図6に示す工程S4、工程S5および工程S6を表わした模式断面図である。
図8図6に示す工程S7を表わした模式断面図である。
図9図6に示す工程S8を表わした模式断面図である。
図10】第1変形例に係るラベル付きパルプモールドの平面図である。
図11】第2変形例に係るラベル付きパルプモールドの平面図である。
図12】実施の形態2に係るラベル付きパルプモールドの平面図である。
図13図12に示すラベル付きパルプモールドの模式断面図および要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、ファンデーションおよびパフを収容可能に構成されたラベル付きパルプモールドに本発明を適用した場合を例示するものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るラベル付きパルプモールドの形状および構成を示す図であり、図1(A)は、開閉可能な蓋になる上側容器部が閉じられた状態の斜視図、図1(B)は、上側容器部が開かれた状態の斜視図である。図2は、図1に示すラベル付きパルプモールドの平面図である。図3は、図1(A)に示す状態のラベル付きパルプモールドの形状および構成を示す図であり、図3(A)は、図1(A)中に示すIIIA-IIIA線に沿った模式断面図、図3(B)は、図3(A)の上側容器部近傍を拡大した要部拡大断面図である。図4は、図1に示すパルプモールドの平面図である。図5は、複数方向に湾曲した曲面からなる第1部分に貼り付けられたラベルに生じた折り重なり部を示したものである。図5(A)は、図1に示すラベル付きパルプモールドの要部拡大断面図であり、図5(B)は、図1に示すラベル付きパルプモールドとは異なる構成のラベルを備えるラベル付きパルプモールドの要部拡大断面図である。まず、これら図1ないし図5を参照して、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aについて説明する。
【0014】
ここで、図1および図2においては、パルプモールド2Aと、ラベル3Aと、埋込物200との関係を、これら図1および図2を参照することで理解できるようにするため、ラベル3Aに覆われることで直接的には視認することができない部分の埋込物200の外形を想像線(二点鎖線)にて図示するとともに、ラベル3Aに色を付している(後述する図10ないし図12においても同様である)。
【0015】
図1ないし図3に示すように、ラベル付きパルプモールド1Aは、偏平形状の内容物であるファンデーションおよびパフを収容するための容器であり、パルプモールド2Aと、当該パルプモールド2Aに貼り付けられたラベル3Aとを備えている。
【0016】
パルプモールド2Aは、これが閉じられた状態において、全体として平面視略矩形状の外形を有しており、下面開口の上側容器部21と、上面開口の下側容器部22と、これら上側容器部21および下側容器部22を回動可能に連結するヒンジ部23とを有している。下側容器部22には、上側容器部21が閉じられた状態において当該上側容器部21に面する2つの凹状の収容部22aが設けられている。これら2つの収容部22aの各々は、上側容器部21が閉じられた状態において、当該上側容器部21と共に、内容物としてのファンデーションおよびパフが収容される2つの収容空間20を規定する。
【0017】
図4に示すように、パルプモールド2Aの上側容器部21は、略平板状の部位と、その周囲に位置する湾曲状の部位とを含んでおり、これにより上側容器部21の内側表面には、凹形状の部位が設けられている。上側容器部21の外側表面の中央部は、略平面形状を有するように構成されている。上側容器部21の外側表面の周縁部の四隅は、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を含んでおり、当該四隅以外の上記周縁部には、一方向に湾曲した曲面からなる曲面部が位置している。
【0018】
説明の便宜上、上側容器部21のうちの上述した複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を第1部分Xと称し、それ以外の部分(すなわち、上述した略平面形状を有する部分、および、上記周縁部のうちの一方向に湾曲した曲面からなる曲面部)を第2部分Yと称する。なお、図4においては、理解を容易とするために、第1部分Xに濃い色を付すとともに、第2部分Yに薄い色を付している。
【0019】
パルプモールド2Aの原料としては、新聞紙、チラシ、中質紙、および上質紙等からなる印刷使用済み古紙に、湿式で離解、および精選等の処理を施すことによって得られる古紙パルプ、または、上記処理に加えて脱墨および漂白等の処理を施すことによって得られる脱墨古紙パルプ、もしくは晒パルプまたは未晒パルプ等のセルロースパルプが用いられる。パルプモールド2Aは、これらのパルプにサイズ剤、填料、染料、定着剤、および耐水化剤等が適宜添加されてなるパルプスラリーが、所望の形状に成形されることによって製作される。
【0020】
なお、上述した各種パルプに代えて、バージンパルプ、または、サトウキビの搾りかすであるバガスもしくは竹等の非木材系パルプが用いられてもよい。また、いずれのパルプにおいても、合成樹脂が少量(好ましくは5%以下程度)含まれていてもよい。
【0021】
図1ないし図3に示すように、ラベル3Aは、パルプモールド2Aの上側容器部21の外側表面の全面に貼り付けられたシート状のものである。ラベル3Aは、上側容器部21と共に壁部300を構成している(特に図3(B)参照)。
【0022】
ラベル3Aは、基材3aおよび当該基材3aの一方の主面に設けられた接着剤層3bを有している。これにより、ラベル3Aの一対の主面のうちの一方である第2主面3(2)は、接着剤層3bによって規定され、他方である第1主面3(1)は、基材3aによって規定されている。
【0023】
ラベル3Aの平面視した場合の外形は、パルプモールド2Aの上側容器部21の外形に合わせて適宜変更されてもよく、たとえば、略円形状、略楕円形状、多角形状等であってもよい。
【0024】
基材3aとしては、光透過性を有する部材が用いられる。光透過性を有する部材としては、たとえば米坪が50g/m以上100g/m以下の片艶晒クラフト紙やセロファン、米坪が40g/m以下のグラシン紙、プラスチックフィルム等が挙げられる。上記プラスチックフィルムとしては、たとえばポリエチレンテレフタレートやポリ乳酸等のポリエステル系、ポリプロピレンや高密度ポリエチレン等のポリオレフィン系、スチレンブタジエン共重合体等のスチレン系のフィルムであって、厚みが10μm以上100μm以下のものが用いられる。
【0025】
このように、基材3aが光透過性を有することにより、埋込物200がラベル3Aを介して視認可能になる。
【0026】
ここで、本実施の形態においては、基材3aとして、セロファンが用いられている。このように基材3aとしてセロファン等の紙製(パルプ製)の部材が用いられた場合には、パルプモールド2Aを含めて本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aの大部分が紙製の部材によって構成されることになるため、ラベル付きパルプモールド1Aを、合成樹脂の使用が大幅に抑制された環境に優しい容器とすることができる。
【0027】
なお、基材3aは、デザイン印刷層を含んでいてもよい。この場合、基材3aは、たとえば、ベースとなる層としての紙や合成紙、セロファン、プラスチックフィルム等の一対の主面のうちの接着剤層3bとは反対側に位置する主面に、デザイン印刷層が施されたものによって構成される。
【0028】
接着剤層3bは、透明性を有しかつ熱接着性を有するものであることが好ましい。具体的には、接着剤層3bは、熱接着性を有する樹脂である、低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene(LDPE))、エチレン酢酸ビニル共重合体(Ethylene-Vinyl Acetate(EVA))、エチレンアクリル酸共重合体、塩素化ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を主成分とするものであることが好ましいが、その他アクリル系樹脂、スチレンブタジエン共重合体、ウレタン系樹脂、アイオノマー等からなりかつ良好な接着性を有する樹脂等であってもよい。
【0029】
さらに、接着剤層3bは、植物由来の原料を用いたPBS(Poly Butylene Succinate)やPLA(Poly Lactic Acid)等の生分解性樹脂であってもよく、このようにすれば、石油由来材料の使用を抑制することができる。なお、接着剤層3bは、粘着付与剤や滑剤等が添加されたものであってもよい。
【0030】
接着剤層3bは、熱接着性を有するもの以外のものでもよい。より具体的には、接着剤層3bとして、水の塗布や加湿によって活性化することで接着性が生じる再湿性接着剤が用いられてもよい。再湿性接着剤としては、ポリビニルアルコール樹脂や水溶性アクリル系樹脂、天然ゴム、カゼイン等からなるものが挙げられる。
【0031】
また、接着剤層3bとして、接着剤含有マイクロカプセルからなるものが用いられてもよい。このように構成された接着剤層3bは、加圧プレスされることでマイクロカプセルが破裂し、これによって露出した接着剤によって接着性が生じることになる。
【0032】
接着剤層3bを基材3aの主面に設ける手法としては、接着剤層3bを構成する上述した熱接着性を有する樹脂等を押出しラミネートによって基材3aにコーティングする手法でもよく、溶液もしくはエマルジョンの状態とした当該樹脂等を基材3aにコーティングして乾燥させる手法等でもよい。なお、接着剤層3bの厚みは、0.5μm以上20μm以下であることが好ましい。
【0033】
図1および図3に示すように、ラベル3Aは、接着剤層3bを介して上側容器部21のうちの複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部である第1部分Xと、それ以外の部分である第2部分Yとを含む外側表面の全面に貼り付けられている。
【0034】
ここで、第1部分Xは、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部であることから、何らの手当ても行なわずにラベル3Aが当該第1部分Xに貼り付けられた場合には、ラベル3Aが皺になったり、折り重なったりしやすくなる。この点、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aにあっては、第1部分Xに対応する部分において皺や折り重なりが生じたラベル3Aの厚みが、柔らかさを有するパルプモールド2Aの厚みに吸収された状態で貼り付けられることにより、上述した問題の解決が図られている。
【0035】
具体的には、図5(A)に示すように、ラベル3Aの折り重なりが位置する部分に対応する部分のパルプモールド2Aは、当該折り重なりが位置しない部分に対応する部分のパルプモールド2Aよりも圧縮された状態とされている。これにより、折り重なりが位置する部分のラベル3Aが、パルプモールド2A側に向けて入り込んだ状態となるように、ラベル3Aがパルプモールド2Aに貼り付けられている。
【0036】
より具体的には、第1部分Xに貼り付けられたラベル3Aに生じた折り重なり部分においては、パルプモールド2Aのうちの、ラベル3Aに生じた折り重なりに対応する部分の表面が、これらに対応しない部分の表面よりも後退することになる。これにより、パルプモールド2Aの表面には段差部分21cが形成されることになり、ラベル3Aの折り重なりは、段差部分21cに入り込んだ状態でパルプモールド2Aの表面に貼り付けられることになる。その結果、折り重なりが生じたラベル3Aの厚みは、圧縮可能な柔らかさを有するパルプモールド2Aの厚みに吸収されることになる。なお、このような構成は、ラベル3Aに生じた皺が位置する部分においても同様である。また、第1部分Xにおいて生じた皺や折り重なりの影響によって当該第1部分Xの近傍に貼り付けられたラベル3Aにおいて皺や折り重なりが生じた部分においても同様である。
【0037】
したがって、このように構成した場合には、ラベル3Aに皺や折り重なりが生じることで発生するラベル3Aの厚みの増加が段差部分21cによって吸収されることになるため、これら皺や折り重なりを目立たなくさせることができるばかりでなく、ラベル付きパルプモールド1Aの表面を平滑化できることになる。
【0038】
ここで、ラベルの皺や折り重なりをさらに目立たなくさせるために、接着剤層が基材3aの一対の主面の一方にのみ設けられているラベル3Aの代わりに、接着剤層が基材3aの一対の主面の両方に設けられたラベル3A’が用いられてもよい。具体的には、ラベル3A’は、当該ラベル3A’のパルプモールド2A側に位置する第2主面3(2)が、接着剤層3bによって規定されるとともに、他方である第1主面3(1)もまた、接着剤層3b’によって規定されることとなるように構成される。このような構成を有するラベル3A’としては、たとえば、セロファンの両面にアクリル系樹脂、ビニル系樹脂あるいはポリ塩化ビニリデン等からなる熱接着性樹脂がコーティングされたもの、紙基材の両面にEVAやアクリル系の熱接着性樹脂エマルジョンがコーティングされたもの、および、プラスチックフィルムの両面に熱接着性樹脂がコーティングされたもの等が挙げられる。
【0039】
当該ラベル3A’が用いられた場合には、図5(B)に示すように、第1部分Xに貼り付けられたラベル3A’に生じた折り重なり部分においては、第2主面3(2)のうちの折り重なりを規定する部分同士が、接着剤層3bを介して接着されるとともに、第1主面3(1)のうちの折り重なりを規定する部分同士が、接着剤層3b’を介して接着されることになる。これにより、皺や折り重なりが捲れることを防止することができるため、ラベルの皺や折り重なりをさらに目立たなくさせることができる。ここで、図5(B)においては、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aと区別するため、ラベル3A’が用いられたラベル付きパルプモールドには、符号1A’を付している。
【0040】
なお、ラベル3A’が用いられたラベル付きパルプモールド1A’が製造される場合には、後述する第2型110のラベル3A’に面する側の表面には、離型性に優れたポリテトラフルオロエチレン系樹脂等によるコーティングが施されていることが好ましい。これにより、ラベル3A’の表面が、第2型110に接着することを防止することができる。
【0041】
また、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aにあっては、第1部分Xに対応する部分のラベル3Aに所定のデザインを施し、さらに、第1部分Xに対応する部分のラベル3Aの絞り率が所定の値となるように当該ラベル3Aを貼り付けることにより、上述したラベル3Aの皺や折り重なりの問題の解決を図ることができる。
【0042】
図2および図4に示すように、ラベル3Aのうちの第1部分Xに対応する部分には、当該ラベル3Aにおいて生じる皺や折り重なりが目立ちにくいようなデザインが施されてもよい。このようなデザインとしては、たとえば、木目調、石目調、石垣模様、岩肌模様、大理石模様、空模様、砂地柄、波柄、織物柄、小花柄、草花柄、樹木柄、唐草模様、小紋柄、ボタニカル柄、ペイズリー柄、カモフラージュ柄、ドット柄、水彩柄、およびマーブル模様等が挙げられる。ラベル3Aのうちの第1部分Xに対応する部分には、これらのうちのいずれかのデザインが施されることが好ましい。
【0043】
ここで、木目調は材木の断面に表れる年輪、繊維、導管等で成された模様、石目調は天然石やレンガの地肌を表した模様、石垣模様は城壁等に様々な形状の石が積み重ねられた雰囲気を表した模様、空模様は様々な雲が青空に浮かんでいる景色や曇り空を表した模様、波柄は波立つ海原や波紋を表した柄、織物柄は綿や麻の糸を織ったり藁や竹を編んだ風合いを表した柄、ドット柄は水玉模様を含みシャンプードット、バブルドット、コインドット、ランダムドットと呼ばれる柄、水彩柄は水彩絵の具で濃淡を描いた雰囲気のある柄である。
【0044】
ラベル3Aのうちの第1部分Xに対応する部分に施されるデザインは、上記のデザインに限られず、ラベル3Aの皺や折り重なりが目立ちにくいようなデザインであればよい。すなわち、ラベル3Aのうちの第1部分Xに対応する部分に施されるデザインは、上述したデザイン以外にも、たとえば、パルプモールドの地模様と同一の模様、自然物を散在させたようなデザイン、および、実質的に同一の単位デザインが繰り返し並ぶように配置された連続柄のうちのいずれかとすることができる。
【0045】
ここで、パルプモールドの地模様と同一の模様とは、パルプモールドを構成する紙やパルプの種々の微細な繊維が不規則に絡み合うことによってパルプモールドの表面に現れる模様のことである。また、実質的に同一の単位デザインには、大きさ、形状、および色彩が完全に同一の単位デザインだけではなく、大きさ、形状、および色彩のうち少なくとも1つが同一ではない単位デザインが含まれていてもよい。実質的に同一の単位デザインには、たとえば、種類が異なる花や植物であっても、そのそれぞれを単位デザインとして配置したものが含まれてもよい。
【0046】
また、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aにあっては、ラベル3Aがプレスによってパルプモールド2Aに貼り付けられることにより、当該ラベル3Aのうちの第1部分Xに対応する部分が、10%以上50%以下の絞り率で当該第1部分Xに貼り付けられており、ラベル3Aのうちの第2部分Yに対応する部分が、10%未満の絞り率で当該第2部分Yに貼り付けられている。
【0047】
絞り率とは、パルプモールド2Aに貼り付けられるラベル3Aの周長と、パルプモールド2Aのうち当該ラベル3Aが貼り付けられる領域の周長とによって算出することができる。パルプモールド2Aのうち当該ラベル3Aが貼り付けられる領域のある位置で測定した周長をP1とし、パルプモールド2Aに貼り付けられるラベル3AのうちP1の測定位置に相当する位置の周長をP2とした場合、絞り率は以下に示す式1により算出される。なお、絞り率の算出においては、P2をたとえば2mmにする等、短い単位で算出することが好ましい。
【0048】
(式1) 絞り率=100-(P1/P2×100)
【0049】
図1ないし図3に示すように、ラベル付きパルプモールド1Aは、さらに、埋込物200を備えている。埋込物200は、全体として偏平形状を有するものである。埋込物200の厚みは、当該埋込物200が位置しない部分の上側容器部21の厚みよりも小さければよく、好ましくは、当該部分の上側容器部21の厚みの3分の2以下とされる。
【0050】
本実施の形態においては、埋込物200として、表面に所望のデザインが付与された、平面視略円形状のコインが用いられている。なお、埋込物200の平面視した場合の形状は、特にこれが略円形状に限定されるものではなく、たとえば平面視略楕円形状、平面視略矩形状等であってもよい。
【0051】
図3(B)に示すように、埋込物200は、パルプモールド2Aの上側容器部21とラベル3Aとの間に介装されることにより、これら上側容器部21とラベル3Aとによって構成される壁部300に埋め込まれている。そのため、埋込物200は、これが外部に向けて露出することなくラベル3Aによって保護されている。
【0052】
また、パルプモールド2Aの上側容器部21のうちの、埋込物200に対応する部分の表面は、これに対応しない部分の表面よりも後退している。これにより、上側容器部21の表面には、埋込物200の厚みに対応する深さを有する凹部21aが形成されている。埋込物200は、当該凹部21aに埋め込まれている。そのため、埋込物200の厚みは、柔らかさを有する上側容器部21の厚みに吸収されている。
【0053】
その結果、埋込物200に貼り付けられる部分のラベル3Aと、当該部分の周囲に位置する部分のラベル3Aとの境界部分において実質的に段差が生じることが抑制され、ラベル3Aの表面の平滑化が図られることになる。
【0054】
図6は、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールドの製造方法を示すフロー図であり、図7ないし図9は、図6に示す工程の一部を表わした模式断面図である。次に、これら図6ないし図9を参照して、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aの製造方法について具体的に説明する。
【0055】
ここで、図7は、図1(B)中に示すVII-VII線に対応した位置でのパルプモールド2A、ラベル3A、および後述する第1型100および第2型110等の断面を表わした図である。図8および図9についても同様である。
【0056】
図6に示すように、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aの製造方法においては、まず、後述するプレス工程(工程S7)を経ることでそれ自体が圧縮されることが可能に構成されたパルプモールド2Aが準備される(工程S1)。このようなパルプモールド2Aは、たとえば、抄造成形される工程と乾燥される工程とを経ることで得られるものである。具体的には、まず、パルプモールド2Aの表面形状に沿う形状を有しかつ吸引用貫通孔が設けられた抄造成形用型の表面に網を張り、これらをパルプスラリーが充填された材料槽の中に浸漬する。次に、抄造成形用型の網が張られた側の主面とは反対側の主面が位置する側からパルプスラリーを吸引して上記網の表面にパルプスラリーを堆積させる。次に、堆積したパルプスラリーを抄造成形用型から取り外し、さらに乾燥させることにより、上述したパルプモールド2Aが得られることになる。
【0057】
次に、パルプモールド2Aの上側容器部21の外側表面の全面を覆うことが可能な大きさの外形を有するラベル3Aが準備される(工程S2)。次に、上側容器部21が開かれた状態におけるパルプモールド2Aの形状に沿う形状を有する第1型100と、上側容器部21が開かれた状態におけるパルプモールド2Aおよびこれを覆うラベル3Aの形状に沿う形状を有する第2型110が準備される(工程S3)。
【0058】
ここで、パルプモールド2Aの形状に沿う形状とは、製品としてのラベル付きパルプモールド1Aを構成するパルプモールド2Aの形状に実質的に沿う形状のことを意味しており、第2型110によってプレスされる工程(工程S7)の前のパルプモールド2Aの形状と完全に一致した形状を意味するものではない。すなわち、パルプモールド2Aの形状に沿う形状とは、工程S7においてラベル3Aと共に第2型110によってプレスされた後の(すなわち、プレスによって圧縮変形した後の)パルプモールド2Aに沿う形状を意味している。
【0059】
また、パルプモールド2Aおよびこれを覆うラベル3Aの形状に沿う形状とは、製品としてのラベル付きパルプモールド1Aを構成するパルプモールド2Aおよびラベル3Aの形状に実質的に沿う形状のことを意味しており、第2型110によってプレスされる工程(工程S7)の前のパルプモールド2Aおよびラベル3Aの形状と完全に一致した形状を意味するものではない。すなわち、パルプモールド2Aおよびこれを覆うラベル3Aの形状に沿う形状とは、工程S7において第2型110によってプレスされた後の(すなわち、プレスによって圧縮変形した後の)パルプモールド2Aおよびラベル3Aに沿う形状を意味している。
【0060】
次に、図6および図7に示すように、パルプモールド2Aが第1型100に載置される(工程S4)。
【0061】
図7に示すように、第1型100には、その一対の主面のうちの一方から突出するように、第1凸状部101および第2凸状部102が設けられている。第1凸状部101は、パルプモールド2Aの上側容器部21に含まれる凹形状の部位に沿う形状を有しており、第2凸状部102は、パルプモールド2Aの下側容器部22の収容部22aに沿う形状を有している。
【0062】
パルプモールド2Aは、上側容器部21に含まれる凹形状の部位が第1凸状部101に当接するとともに、下側容器部22の収容部22aが第2凸状部102に当接するように、上側容器部21が開かれた状態で第1型100に載置される。
【0063】
次に、図6および図7に示すように、埋込物200が、パルプモールド2Aの上側容器部21上に載置される(工程S5)。
【0064】
次に、図6および図7に示すように、ラベル3Aが、パルプモールド2Aに対して位置決めされて配置される(工程S6)。
【0065】
より具体的には、図7に示すように、パルプモールド2Aが第1型100に載置された状態において、ラベル3Aが、接着剤層3bが設けられた第2主面3(2)がパルプモールド2Aの上側容器部21に面し、かつ、後述するパルプモールド2Aおよびラベル3Aが第2型110によってプレスされる工程(工程S7)において上側容器部21の外側表面の全面を覆うこととなるように、パルプモールド2Aの上側容器部21に対して位置決めされて配置される。これにより、ラベル3Aは、第1型100と第2型110との間に配置されることになる。
【0066】
次に、図6および図8に示すように、ラベル3Aが、第1型100および第2型110によってプレスされることでパルプモールド2Aに貼り付けられる(工程S7)。
【0067】
具体的には、図8に示すように、ラベル3Aがパルプモールド2Aに対して位置決めされた状態において、ラベル3Aが、第2型110によってパルプモールド2Aに向けて(すなわち、図8中に示す矢印AR1方向に向けて)プレスされる。
【0068】
第2型110のプレス面には、第1凹状部111および第2凹状部112が設けられている。第1凹状部111は、パルプモールド2Aの上側容器部21の外側表面(すなわち、図8中に示す上側の表面)に沿う形状を有している。第2凹状部112は、パルプモールド2Aの下側容器部22の収容部22aの外側表面(すなわち、図8中に示す上側の表面)に沿う形状を有している。
【0069】
このように構成された第2型110によってプレスされることにより、パルプモールド2Aおよびラベル3Aが、積層された状態で第1型100および第2型110によって挟み込まれることになる。これにより、ラベル3Aは、上側容器部21の外側表面の全面を覆うように、熱接着性の接着剤層3bを介して上側容器部21と埋込物200とに貼り付けられる。
【0070】
また、ラベル3Aがプレスによってパルプモールド2Aに貼り付けられることにより、パルプモールド2Aの上側容器部21の第1部分Xのうちの、ラベル3Aの皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分に対応する部分は、これが位置しない部分に対応する部分のパルプモールド2Aよりも圧縮された状態とされる。これにより、皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分のラベル3Aが、パルプモールド2A側に向けて入り込んだ状態となるように、ラベル3Aがパルプモールド2Aに貼り付けられることとなる。
【0071】
さらに、ラベル3Aがプレスによってパルプモールド2Aに貼り付けられることにより、上側容器部21の第1部分Xに対応する部分のラベル3Aが、皺や折り重なりを生じさせながら10%以上50%以下の絞り率で当該第1部分Xに貼り付けられるとともに、上側容器部21の第2部分Yに対応する部分のラベル3Aが、10%未満の絞り率で当該第2部分Yに貼り付けられることとなる。
【0072】
また、上側容器部21上に載置されていた埋込物200は、第2型110によって上側容器部21に向けてラベル3Aと共にプレスされる。その結果、埋込物200は、上側容器部21とラベル3Aとの間に介装されることにより、これら上側容器部21とラベル3Aとによって構成される壁部300(図3(B)等参照)に埋め込まれることになる。
【0073】
これにより、埋込物200は、これが外部に向けて露出することなくラベル3Aによって保護されることになる。また、埋込物200の厚みは、柔らかさを有するパルプモールド2Aの上側容器部21の厚みに吸収されることになる。
【0074】
工程S7における第2型110によるプレスは、プレス温度が概ね70℃以上200℃以下であることが好ましく、さらに好適には、90℃以上150℃以下とされる。その際、第1型100も同程度に加熱されていてもよい。プレス時間は、1秒以上5秒以下程度であることが好ましい。なお、上述したプレス温度およびプレス時間は、基材3aの耐熱性や接着剤層3bの接着温度等によって適宜変更されるものである。パルプモールド2Aは、このような条件下でラベル3Aおよび埋込物200と共にプレスされて圧縮変形されることにより、プレス前の状態に比べて、硬く、薄く、その表面が平滑化したものになる。一例として、プレス前において厚みが0.8mm以上5.0mm以下あるいは1.5mm以上4.0mm以下のパルプモールド2Aは、このプレスによって厚みが0.8mm以上3.0mm以下等になる。
【0075】
次に、図6および図9に示すように、第2型110によるプレスが解除される(工程S8)。より具体的には、図9に示すように、第2型110がプレス前の位置に後退する(すなわち、図9中に示す矢印AR2方向に向けて移動する)ことにより、第2型110によるパルプモールド2A、ラベル3Aおよび埋込物200のプレスが解除される。これにより、図1ないし図3において示したラベル付きパルプモールド1Aの製造が完了する。
【0076】
ここで、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aにあっては、上述したように、埋込物200が上側容器部21とラベル3Aとによって構成される壁部300に埋め込まれている。
【0077】
このように構成することにより、パルプモールドに埋め込まれた埋込物が外部に向けて露出することなく保護されたラベル付きパルプモールド1Aとすることができる。そのため、パルプモールドに埋め込まれた埋込物が周囲の物体との接触等によって破損することを効果的に防止することができる。
【0078】
また、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aにあっては、上述したように、埋込物200としてデザインが付与されたコインが用いられているとともに、ラベル3Aの基材3aが光透過性を有している。
【0079】
このように構成することにより、ラベル3Aを介して外部から埋込物200としてのコインのデザインや形状等が視認可能になる。そのため、ラベル付きパルプモールド1Aに良好な外観上の美観を付与可能になる。さらに、基材3aに絵柄等のデザインや単色印刷が施された場合には、これらデザイン等と、コインのデザイン等との組み合わせによっても、ラベル付きパルプモールド1Aに良好な外観上の美観を付与可能になる。
【0080】
さらに、上側容器部21の第1部分Xは、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部であることから、何らの手当ても行なわずにラベル3Aが当該第1部分Xに貼り付けられた場合には、ラベル3Aが皺になったり、折り重なったりしやすくなる。
【0081】
この点、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aにあっては、上述したように、パルプモールド2Aの上側容器部21の第1部分Xのうちの、ラベル3Aの皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分に対応する部分が、これが位置しない部分に対応する部分のパルプモールド2Aよりも圧縮された状態とされ、これにより、皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分のラベル3Aが、パルプモールド2A側に向けて入り込んだ状態となるように、ラベル3Aがパルプモールド2Aに貼り付けられている。
【0082】
このように構成することにより、皺や折り重なりが生じたラベル3Aの厚みが、柔らかさを有するパルプモールド2Aの厚みに吸収されることになり、結果として、皺や折り重なりを目立たなくさせることができるばかりでなく、ラベル付きパルプモールド1Aの表面を平滑化できることになる。
【0083】
また、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aにおいては、上述したように、ラベル3Aのうちの第1部分Xに対応する部分が、10%以上50%以下の絞り率で貼り付けられている。これにより、ラベル3Aを、上側容器部21の表面の形状に沿った形状で保持することができるとともに、当該部分に大きな皺や折り重なりが生じることを抑制することができ、さらには、生じた折り重なり同士が更に重なることを抑制できることとなる。そのため、ラベル付きパルプモールド1Aに良好な外観上の美観を付与可能になる。
【0084】
また、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aにあっては、上述したように、ラベル3Aのうちの第1部分Xに対応する部分に、当該ラベル3Aの皺や折り重なりが目立ちにくいようなデザインが施されてもよい。このように構成した場合には、ラベル3Aの皺や折り重なりをさらに目立ち難くすることができるため、ラベル付きパルプモールド1Aの美観を向上させることができるとともに、ラベル付きパルプモールド1Aに収容される商品の購買欲を高めることができる。
【0085】
なお、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Aの製造方法においては、上述したように、工程S7において行なわれるプレスにより、パルプモールド2Aへの埋込物200の埋め込みと、パルプモールド2Aへのラベル3Aの貼り付けとが同時に行なわれる場合を例示したが、埋込物200の埋め込みとラベル3Aの貼り付けとは、互いに異なるプレス工程によって行なわれてもよい。
【0086】
具体的には、まず、1次プレスを行なうことにより、パルプモールド2Aへの埋込物200の埋め込みと、パルプモールド2Aの粗成形とを行なう。これにより、埋込物200の厚みが、柔らかさを有するパルプモールド2Aの上側容器部21の厚みに吸収されることになるとともに、パルプモールド2Aの表面の凹凸部分が、粗成形によって平滑化されることになる。次に、2次プレスを行なうことにより、ラベル3Aが上側容器部21と埋込物200とに貼り付けられるとともに、皺や折り重なりが生じたラベル3Aの厚みが、柔らかさを有するパルプモールド2Aの厚みに吸収されることになる。その結果、ラベル3Aの皺や折り重なりを目立たなくさせることができるばかりでなく、ラベル付きパルプモールド1Aの表面を平滑化できることになる。
【0087】
また、1次プレスにより、パルプモールド2Aの粗成形を行ない、2次プレスにより、パルプモールド2Aへの埋込物200の埋め込みと、ラベル3Aの上側容器部21および埋込物200への貼り付けとを行なうこととしてもよい。
【0088】
なお、埋込物200の厚みが相当程度に大きい場合には、1次プレスによってパルプモールド2Aへの当該埋込物200の埋め込みを行なうことが好ましい。2次プレスにおいてはパルプモールド2Aの厚みによって埋込物200の厚みを吸収する余地が小さいためである。
【0089】
(第1変形例)
図10は、第1変形例に係るラベル付きパルプモールドの平面図である。以下、この図10を参照して、上述した実施の形態1に基づいた第1変形例に係るラベル付きパルプモールド1A1について説明する。
【0090】
図10に示すように、第1変形例に係るラベル付きパルプモールド1A1は、上述した実施の形態1に係るラベル付きパルプモールド1Aと比較した場合に、埋込物200A1として2つの草花が用いられている点において、上述した埋込物200とその構成が相違している。
【0091】
具体的には、第1変形例に係るラベル付きパルプモールド1A1は、2つの埋込物200A1を備えている。2つの埋込物200A1としては、いずれも草花が用いられている。なお、埋込物200A1の数は、特にこれが2つに限定されるものではなく、単数であってもよいし、3つ以上の複数であってもよい。
【0092】
このように構成した場合には、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果が得られるばかりでなく、ラベル付きパルプモールド1A1に草花特有の優れた意匠性を付与することができる。
【0093】
なお、本変形例においては、埋込物200A1として草花が用いられた場合について説明したが、埋込物200A1として、たとえば植物の種を用いることも可能である。この場合には、種が埋め込まれた部分のパルプモールド2Aを切り取ってこれを土壌等に植えることにより、パルプモールド2Aが吸水して繊維が解離して種が発芽するため、これによって植物を育てることが可能になる。
【0094】
(第2変形例)
図11は、第2変形例に係るラベル付きパルプモールドの平面図である。以下、この図11を参照して、上述した実施の形態1に基づいた第2変形例に係るラベル付きパルプモールド1A2について説明する。
【0095】
図11に示すように、第2変形例に係るラベル付きパルプモールド1A2は、上述した実施の形態1に係るラベル付きパルプモールド1Aと比較した場合に、埋込物200A2として平面視略矩形状の金属板が用いられている点、および、ラベル3A2の基材3aが光遮蔽性を有する点において、上述した埋込物200およびラベル3Aとその構成が相違している。
【0096】
具体的には、第2変形例に係るラベル付きパルプモールド1A2においては、埋込物200A2として、パルプモールド2Aよりも高い強度を有する部材である金属板が用いられている。金属板の材質は、特にこれが制限されるものではなく、たとえば鉄鋼やアルミニウム等の各種の金属材料とすることができる。このように構成された埋込物200A2は、上側容器部21の第2部分Yのうちの略平面形状を有する部分の大部分に埋め込まれている。
【0097】
また、ラベル3A2の基材3aとしては、光遮蔽性を有する部材が用いられる。光遮蔽性を有する部材としては、たとえば米坪が85g/m以上のラベル用紙や、米坪が120g/m以上のクラフト紙等が挙げられる。
【0098】
このように、ラベル3A2の基材3aが光遮蔽性を有することにより、埋込物200A2がラベル3A2を介して視認不能になる。
【0099】
このように構成した場合には、上述した実施の形態1において説明した効果に準じた効果を得ることができ、パルプモールドに埋め込まれた埋込物が外部に向けて露出することなく保護されたラベル付きパルプモールド1A2とすることができる。
【0100】
また、本変形例に係るラベル付きパルプモールド1A2にあっては、上述したように、埋込物200A2として、パルプモールド2Aよりも高い強度を有する金属板が用いられているとともに、ラベル3A2の基材3aが光遮蔽性を有している。
【0101】
このように構成した場合には、当該埋込物200A2が、パルプモールド2Aの強度を向上させる補強部材として機能することになる。そのため、埋込物200A2が埋め込まれていない場合に比べ、外力に対するパルプモールド2Aの強度を向上させることが可能になる。これにより、ラベル付きパルプモールド1A2の輸送時および陳列時等において、パルプモールド2Aの反りや変形が抑制されことになり、結果として内容物の変形が効果的に防止される。したがって、本変形に係るラベル付きパルプモールド1A2とすることにより、貴重品や電子部品等を収容する容器のように、相当程度に高い強度が要求される容器として用いることも可能になる。
【0102】
さらに、上記補強部材としての埋込物200A2が、ラベル3A2によって覆われることで外部から(すなわち、ラベル3A2によって覆われている側から)視認不能になる。したがって、ラベル3A2の基材3aに絵柄等のデザインや単色印刷等を施すことにより、良好な外観上の美観を有しつつ強度が担保されたラベル付きパルプモールド1A2とすることができる。
【0103】
なお、本変形例においては、埋込物200A2として金属板が用いられた場合について説明したが、埋込物200A2として上記金属板以外の部材を用いた場合においても、当該部材の性質に応じた様々な機能をラベル付きパルプモールドに付与することが可能である。
【0104】
たとえば、埋込物200A2として、RFID(Radio Frequency Identification)チップやICチップのように、ラベル付きパルプモールドに収容される商品の情報を記録可能な部材を用いることにより、商品の在庫管理等を容易にすることが可能に構成されたラベル付きパルプモールドとすることができる。また、埋込物200A2として、磁性を有する部材を用いることにより、磁力によってラベル付きパルプモールドを他の磁性部材に取付け可能になる。さらに、埋込物200A2として、磁気遮断シートを用いることにより、ラベル付きパルプモールドに収容される商品への磁気を遮断可能になる。また、埋込物200A2として、香料等を含有する部材を用いることにより、香り付けがなされたラベル付きパルプモールドとすることができる。
【0105】
(実施の形態2)
図12は、実施の形態2に係るラベル付きパルプモールドの上側容器部が閉じられた状態の平面図である。図13は、図12に示すラベル付きパルプモールドの断面図であり、図13(A)は、図12中に示すXIIIA-XIIIA線に沿った断面図に対応する部分の実施の形態2に係るラベル付きパルプモールドの模式断面図、図13(B)は、図13(A)の上側容器部近傍を拡大した要部拡大断面図である。以下、これら図12および図13を参照して、実施の形態2に係るラベル付きパルプモールド1Bについて説明する。
【0106】
図12および図13に示すように、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Bは、上述した実施の形態1に係るラベル付きパルプモールド1Aと比較した場合に、上側容器部21を覆うラベル3Bの構成が、上述したラベル3Aのそれと相違している。なお、本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Bの製造方法は、上述した実施の形態1に係るラベル付きパルプモールド1Aの製造方法と同様の工程を経るものである。
【0107】
本実施の形態に係るラベル付きパルプモールド1Bにあっては、ラベル3Bが、埋込物200を覆うように、当該埋込物200と、上側容器部21の第2部分Y(図4参照)のうちの略平面形状を有する部分の一部とに貼り付けられている。
【0108】
図12および図13に示すように、上側容器部21の外側表面は、ラベル3Bが貼り付けられた部分である被貼り付け面21(1)と、ラベル3Bが貼り付けられていない部分である露出面21(2)とを含んでいる。
【0109】
図13(B)に示すように、パルプモールド2Aのうちの被貼り付け面21(1)と露出面21(2)との境界部においては、被貼り付け面21(1)が、露出面21(2)よりも後退して位置している。すなわち、被貼り付け面21(1)は、上側容器部21が閉じられた状態において、露出面21(2)よりも収容空間20側に位置している。これにより、パルプモールド2Aの上側容器部21には段差部21bが設けられており、段差部21bに対応する部分のラベル3Bは、当該ラベル3Bの厚み方向における少なくとも一部が段差部21bに入り込んだ状態でパルプモールド2Aに貼り付けられている。
【0110】
このようなラベル付きパルプモールド1Bの構成は、上述したようにラベル3Bがパルプモールド2Aに積層された状態でプレスされることにより、当該パルプモールド2Aの被貼り付け面21(1)が圧縮されつつ当該被貼り付け面21(1)にラベル3Bが貼り付けられることに起因して生じるものである。
【0111】
このように構成した場合には、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果が得られることになるばかりでなく、段差部21bによってラベル3Bの厚みの少なくとも一部が吸収されることになるため、結果として、ラベル付きパルプモールド1Bの表面の平滑性を大幅に向上させることができる。そのため、ラベル付きパルプモールド1Bに良好な外観上の美観を付与可能になる。
【0112】
(その他の形態等)
【0113】
上述した実施の形態においては、上側容器部と下側容器部とがヒンジ部によって連結された場合のラベル付きパルプモールドの構成を例示して説明を行なったが、上側容器部および下側容器部は、ヒンジ部によって連結されることなく、別個の部材として形成されていてもよい。この場合、上側容器部および下側容器部は、たとえば、各々に形成された嵌合部を介して互いに取り付けられてもよく、上述した凹部およびこれによって規定される空間は、これら上側容器部および下側容器部のうちのいずれか一方に設けられていればよい。
【0114】
また、上述した実施の形態においては、内容物としてファンデーションおよびパフを収容可能に構成されたラベル付きパルプモールドに本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、上述したファンデーション等以外の種々の商品を内容物として収容可能に構成されたラベル付きパルプモールドにも、本発明は当然に適用可能である。
【0115】
さらに、上述した本発明の実施の形態およびその変形例において示した各部の形状や構成、大きさ、数、材質等は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々変更が可能である。
【0116】
また、上述した本発明の実施の形態およびその変形例において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当然に相互に組み合わせることができる。
【0117】
このように、今回開示した上記実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0118】
1A,1A1,1A2,1B,1A’ ラベル付きパルプモールド、2A パルプモールド、3(1) 第1主面、3(2) 第2主面、3A,3A2,3B,3A’ ラベル、3a 基材、3b,3b’ 接着剤層、20 収容空間、21 上側容器部、21(1) 被貼り付け面、21(2) 露出面、21a 凹部、21b 段差部、21c 段差部分、22 下側容器部、22a 収容部、23 ヒンジ部、100 第1型、101 第1凸状部、102 第2凸状部、110 第2型、111 第1凹状部、112 第2凹状部、200,200A1,200A2 埋込物、300 壁部、X 第1部分、Y 第2部分。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13