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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021712
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】耐水シート付きパルプモールド
(51)【国際特許分類】
   D21J 3/00 20060101AFI20240208BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20240208BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20240208BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
D21J3/00
B32B29/00
B65D65/02
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124744
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000238005
【氏名又は名称】株式会社フジシールインターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】節田 征矢
(72)【発明者】
【氏名】和田 奈央子
(72)【発明者】
【氏名】綿世 真弓
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
3E086AD23
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB71
3E086CA01
3E086CA28
3E086CA35
3E086DA08
4F100AJ02A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100CB00B
4F100CB00D
4F100GB16
4F100JB07C
4F100JD04A
4F100JD04C
4F100JL11B
4F100JL11D
4L055AH37
4L055BF07
4L055BF08
4L055EA12
4L055GA05
(57)【要約】
【課題】高い防水性が付与されるとともに表面の平滑性の向上が図られたラベル付きパルプモールドを提供する。
【解決手段】ラベル付きパルプモールド1Aは、曲面部を有するパルプモールド2Aと、基材3aおよび接着剤層3bを有し、接着剤層3bを介してパルプモールド2Aに貼り付けられた耐水シート3Aとを備える。耐水シート3Aのうちの曲面部に対応する部分には、耐水シート3Aの皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置する。皺および折り重なりが位置する部分のパルプモールド2Aが、これが位置しない部分に対応する部分のパルプモールド2Aよりも圧縮された状態とされることで、これが位置する部分の耐水シート3Aが、パルプモールド2A側に向けて入り込む。ラベル付きパルプモールド1Aにあっては、基材3aの水蒸気透過度が、パルプモールド2Aの水蒸気透過度よりも低い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を有するパルプモールドと、
基材および当該基材の一方の主面に設けられた接着剤層を有し、当該接着剤層を介して前記パルプモールドに貼り付けられた耐水シートとを備え、
前記耐水シートのうちの前記曲面部に対応する部分には、前記耐水シートの皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置し、
前記皺および前記折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分に対応する部分の前記パルプモールドが、前記皺および前記折り重なりが位置しない部分に対応する部分の前記パルプモールドよりも圧縮された状態とされ、これにより、前記皺および前記折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分の前記耐水シートが、前記パルプモールド側に向けて入り込んでおり、
前記基材の水蒸気透過度が、前記パルプモールドの水蒸気透過度よりも低い、耐水シート付きパルプモールド。
【請求項2】
パルプモールドと、
基材および当該基材の一方の主面に設けられた接着剤層を有し、当該接着剤層を介して前記パルプモールドに貼り付けられた耐水シートとを備え、
前記パルプモールドは、前記耐水シートが貼り付けられた部分である被貼り付け面と、前記耐水シートが貼り付けられていない部分である露出面とを含み、
前記被貼り付け面と前記露出面との境界部において、前記被貼り付け面が前記露出面よりも後退していることにより、前記パルプモールドに段差部が設けられ、
前記耐水シートが、当該耐水シートの厚み方向における少なくとも一部が前記段差部に入り込んだ状態で前記パルプモールドに貼り付けられ、
前記基材の水蒸気透過度が、前記パルプモールドの水蒸気透過度よりも低い、耐水シート付きパルプモールド。
【請求項3】
前記耐水シートが、当該耐水シートの前記パルプモールドに位置する側の主面とは反対側の主面に、さらに接着剤層を有している、請求項1または2に記載の耐水シート付きパルプモールド。
【請求項4】
前記パルプモールドは、当該パルプモールドが上側容器部および下側容器部を有することによって内部に収容空間が設けられ、
前記耐水シートが、前記収容空間を規定する側の前記パルプモールドの主面に貼り付けられている、請求項1または2に記載の耐水シート付きパルプモールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水シート付きパルプモールドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の低減の観点から、容器としてのパルプモールドに対するニーズが高まっている。また、パルプモールドに収容される商品が多様化していることから、その商品の形状に合わせてパルプモールドの形状も多様化しており、特に、立体的な形状を有するパルプモールドが求められている。
【0003】
一方で、容器としてのパルプモールドの耐水性や防水性の向上も望まれている。たとえば特開2010-173711号公報(特許文献1)や特開2012-158160号公報(特許文献2)には、立体的な形状を有するパルプモールドの表面に耐水性のフィルムを吸引によって貼り付けることにより、容器としてのパルプモールドの耐水性の向上を図る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-173711号公報
【特許文献2】特開2012-158160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、曲面部を有するパルプモールドに対して吸引によってフィルム等の耐水シートを貼り付けた場合には、当該曲面部に対応する部分の耐水シートは、当該曲面部以外に対応する部分の耐水シートに比べ、それ自体が引き延ばされた状態で貼り付けられることになる。その場合、引き延ばされた部分の耐水シートは、他の部分の耐水シートに比べて厚みが薄くなってしまい、結果として耐水性が低下したり、破れが生じ易くなったりする問題を誘発する。
【0006】
また、曲面部に貼り付けられた部分の耐水シートに生じる皺や折り重なりが原因となり、耐水シート付きパルプモールドの表面の手触り感や美観が損なわれてしまう問題も生じてしまう。
【0007】
したがって、本発明は、上述した問題を解決すべくなされたものであり、高い防水性が付与されるとともに表面の平滑性の向上が図られた耐水シート付きパルプモールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の局面に基づく耐水シート付きパルプモールドは、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を有するパルプモールドと、基材および当該基材の一方の主面に設けられた接着剤層を有し、当該接着剤層を介して上記パルプモールドに貼り付けられた耐水シートとを備えている。上記耐水シートのうちの上記曲面部に対応する部分には、上記耐水シートの皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置している。上記皺および上記折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分に対応する部分の上記パルプモールドは、上記皺および上記折り重なりが位置しない部分に対応する部分の上記パルプモールドよりも圧縮された状態とされ、これにより、上記皺および上記折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分の上記耐水シートは、上記パルプモールド側に向けて入り込んでいる。上記本発明の第1の局面に基づく耐水シート付きパルプモールドにあっては、上記基材の水蒸気透過度が、上記パルプモールドの水蒸気透過度よりも低い。
【0009】
本発明の第2の局面に基づく耐水シート付きパルプモールドは、パルプモールドと、基材および当該基材の一方の主面に設けられた接着剤層を有し、当該接着剤層を介して上記パルプモールドに貼り付けられた耐水シートとを備えている。上記パルプモールドは、上記耐水シートが貼り付けられた部分である被貼り付け面と、上記耐水シートが貼り付けられていない部分である露出面とを含んでいる。上記被貼り付け面と上記露出面との境界部において、上記被貼り付け面が上記露出面よりも後退していることにより、上記パルプモールドに段差部が設けられている。上記耐水シートは、当該耐水シートの厚み方向における少なくとも一部が上記段差部に入り込んだ状態で上記パルプモールドに貼り付けられている。上記本発明の第2の局面に基づく耐水シート付きパルプモールドにあっては、上記基材の水蒸気透過度が、上記パルプモールドの水蒸気透過度よりも低い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い防水性が付与されるとともに表面の平滑性の向上が図られた耐水シート付きパルプモールドを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る耐水シート付きパルプモールドを蓋材として用いた外装体の斜視図である。
図2図1に示す耐水シート付きパルプモールドの上側蓋部が開かれた状態の外装体の斜視図である。
図3図1に示す外装体の模式断面図である。
図4図1に示す耐水シート付きパルプモールドの上側蓋部が開かれた状態の平面図である。
図5図1に示す耐水シート付きパルプモールドの要部拡大断面図、および、図1に示す耐水シート付きパルプモールドとは異なる構成の耐水シートを備える耐水シート付きパルプモールドの要部拡大断面図である。
図6図1に示す耐水シート付きパルプモールドの製造方法を示すフロー図である。
図7図6に示す工程S4および工程S5を表わした模式断面図である。
図8図6に示す工程S6を表わした模式断面図である。
図9図6に示す工程S7を表わした模式断面図である。
図10】実施の形態2に係る耐水シート付きパルプモールドの模式断面図である。
図11】実施の形態3に係る耐水シート付きパルプモールドの平面図である。
図12図11に示す耐水シート付きパルプモールドの模式断面図である。
図13図11に示すパルプモールドの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態1は、耐水シート付きパルプモールドとして、ウェットティッシュからなる収容物を収容する外装体の蓋材として用いられる耐水シート付きパルプモールドに本発明を適用した場合を例示するものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る耐水シート付きパルプモールドを蓋材として用いた外装体の斜視図である。図2は、図1に示す耐水シート付きパルプモールドの上側蓋部が開かれた状態の外装体の斜視図である。図3は、図1中のIII-III線に沿った外装体の模式断面図である。図4は、図1に示す耐水シート付きパルプモールドの上側蓋部が開かれた状態の平面図である。図5は、複数方向に湾曲した曲面からなる第1部分に貼り付けられた耐水シートに生じた折り重なり部を示したものである。図5(A)は、図1に示す耐水シート付きパルプモールドの要部拡大断面図であり、図5(B)は、図1に示す耐水シート付きパルプモールドとは異なる構成の耐水シートを備える耐水シート付きパルプモールドの要部拡大断面図である。
【0014】
以下においては、まず、図1ないし図3を参照して、本実施の形態に係る耐水シート付きパルプモールド1Aを蓋材として用いた外装体500について説明し、次に、図1ないし図5を参照して、本実施の形態に係る耐水シート付きパルプモールド1Aについて説明する。なお、図1および図2においては、耐水シート3Aに色を付している。
【0015】
図1ないし図3に示すように、外装体500は、水分を含む収容物501(図3参照)を収容可能に構成されたものであり、収容物501と、収容物501を収容する収容部502と、収容部502に設けられた開口502aを覆う蓋材としての耐水シート付きパルプモールド1Aとを備えている。本実施の形態においては、水分を含む収容物501として、ウェットティッシュが用いられている。ウェットティッシュには、水分の他、アルコール成分や洗浄剤、化粧水、除菌成分、香料等が、用途に応じて含まれる。
【0016】
収容部502は、袋状の形状を有するものであり、耐水性フィルムによって構成されている。収容部502の天面には、平面視略円形状の開口502aが設けられている。なお、開口502aの平面視形状は、特にこれが略円形状に限定されることはなく、たとえば略楕円形状、略矩形状等であってもよい。開口502aの大きさは、ウェットティッシュ等の収容物501の大きさや状態等に応じて適宜変更可能である。
【0017】
外装体500の使用(すなわち、収容物501の取り出し)が開始される前の状態において、開口502aは、図示しないシート状のシールによって塞がれている。これにより、収容物501が乾燥することが防止されている。ユーザは、外装体500の使用を開始する際、当該シールを開口502aから剥離させる。これにより、収容物501は、開口502aから外部に取り出し可能となる。当該シールの剥離後は、後述するように、開口502aを覆う蓋材としての耐水シート付きパルプモールド1Aを閉じることによって収容物501の乾燥が防止されることになる。
【0018】
図1ないし図4に示すように、耐水シート付きパルプモールド1Aは、偏平形状を有しかつ開閉可能に構成された蓋材であり、パルプモールド2Aと、当該パルプモールド2Aの内側表面に貼り付けられた耐水シート3Aとを備えている。
【0019】
パルプモールド2Aは、これが閉じられた状態において、全体として平面視略矩形状の外形を有しており、下面開口の上側蓋部21と、上面開口の下側蓋部22と、これら上側蓋部21および下側蓋部22を回動可能に連結するヒンジ部23とを有している。
【0020】
下側蓋部22には、上側蓋部21が閉じられた状態において当該上側蓋部21に面する凹部22aが設けられている。凹部22aは、上側蓋部21が閉じられた状態において、当該上側蓋部21と共に空間20を規定している。
【0021】
凹部22aの底面の略中央部分には、平面視略円形状の孔部22a1が設けられている。孔部22a1は、収容部502の開口502aに対応する部分に位置している。これにより、収容物501は、上側蓋部21が開かれた状態において、孔部22a1を介して外部に取り出し可能となる。
【0022】
図4に示すように、下側蓋部22の内側表面の中央部は、略平面形状を有するように構成されている。下側蓋部22の内側表面の周縁部の四隅は、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を含んでおり、当該四隅以外の上記周縁部には、一方向に湾曲した曲面からなる曲面部が位置している。これにより下側蓋部22の内側表面には、上述した凹部22aが設けられている。
【0023】
上側蓋部21の内側表面の中央部は、略平面形状を有するように構成されている。上側蓋部21の内側表面の周縁部の四隅は、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を含んでおり、当該四隅以外の上記周縁部には、一方向に湾曲した曲面からなる曲面部が位置している。これにより上側蓋部21の内側表面には、凹形状の部位が設けられている。
【0024】
説明の便宜上、上側蓋部21および下側蓋部22のうちの、上述した複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を第1部分Xと称し、それ以外の部分(すなわち、上述した略平面形状を有する部分、および、上記周縁部のうちの一方向に湾曲した曲面からなる曲面部)を第2部分Yと称する。さらに、第2部分Yのうち、第1部分Xの近傍に位置する部分を、第3部分Y’と称する。なお、図4においては、理解を容易とするために、第1部分Xに濃い色を付すとともに、第2部分Yに薄い色を付している。さらに、第3部分Y’には第1部分Xと第2部分Yとは異なる色を付している。
【0025】
パルプモールド2Aの原料としては、新聞紙、チラシ、中質紙、および上質紙等からなる印刷使用済み古紙に、湿式で離解、および精選等の処理を施すことによって得られる古紙パルプ、または、上記処理に加えて脱墨および漂白等の処理を施すことによって得られる脱墨古紙パルプ、もしくは晒パルプまたは未晒パルプ等のセルロースパルプが用いられる。パルプモールド2Aは、これらのパルプにサイズ剤、填料、染料、定着剤、および耐水化剤等が適宜添加されてなるパルプスラリーが、所望の形状に成形されることによって製作される。
【0026】
なお、上述した各種パルプに代えて、バージンパルプ、または、サトウキビの搾りかすであるバガスもしくは竹等の非木材系パルプが用いられてもよい。また、いずれのパルプにおいても、合成樹脂が少量(好ましくは5%以下程度)含まれていてもよい。
【0027】
図2および図3に示すように、耐水シート3Aは、パルプモールド2Aの上側蓋部21の内側表面の全面と、下側蓋部22の内側表面の全面とに貼り付けられたシート状のものである。
【0028】
耐水シート3Aは、基材3aおよび当該基材3aの一方の主面に設けられた接着剤層3bを有している。これにより、耐水シート3Aの一対の主面のうちの一方である第2主面3(2)は、接着剤層3bによって規定され、他方である第1主面3(1)は、基材3aによって規定されている。
【0029】
基材3aとしては、その水蒸気透過度が、パルプモールド2Aの水蒸気透過度よりも低いものが用いられる。このように構成された基材3aによってパルプモールド2Aの内側表面の全面を覆うことにより、耐水シート付きパルプモールド1Aに高い防水性が付与される。ここで、基材の水蒸気透過度とは、所定の温度および湿度の条件で単位時間に単位面積の基材を通過する水蒸気の量のことであり、JIS-K7129に準拠した方法によって測定されるものである。なお、以下においては、上述したようにパルプモールド2Aの水蒸気透過度よりも低い水蒸気透過度であることを、防水性に優れているとも称することとする。
【0030】
具体的には、基材3aとしては、その水蒸気透過度が、100g/m/24hr(40℃、90%RH)以下であるものが用いられることが好ましく、より好適には、50g/m/24hr(40℃、90%RH)以下とされる。このような部材としては、たとえば、防湿セロファンや紙製の部材、プラスチックフィルム等が挙げられる。
【0031】
上記防湿セロファンとしては、ポリ塩化ビニリデンやアクリル系樹脂、ビニル系樹脂等からなるコーティングが両面に施された厚さ20μm以上50μm以下のセロファンが用いられる。
【0032】
上記紙製の部材としては、防湿性樹脂層や防湿性を有する無機層状微粒子層が積層された米坪が20g/m以上100g/m以下の純白洋紙や未晒クラフト紙、晒クラフト紙、片艶晒クラフト紙等が用いられる。
【0033】
上記プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートおよびその変性樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、汎用ポリスチレンやスチレンブタジエン共重合体等のポリスチレン系樹脂等の単層または複層からなるものであってかつ厚さ10μm以上150μm以下のものを用いることができる。より具体的には、厚さ9μm以上40μm以下の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ15μm以上60μm以下の二軸延伸ポリプロピレンフィルム、厚さ20μm以上80μm以下の未延伸ポリプロピレンフィルム、および、これらを含む多層フィルム等が用いられる。また、これらに加え、ポリアミド系樹脂やポリスチレン系樹脂等からなるフィルムのうち水蒸気透過度が高いものに、ポリ塩化ビニリデン等の防湿コーティングが施されたものが用いられてもよい。
【0034】
基材3aとしてプラスチックフィルムが用いられる場合には、当該プラスチックフィルムは、10μm以上30μm以下の薄肉フィルムであることがより好適とされる。このように構成した場合には、耐水シート付きパルプモールド1Aを、合成樹脂の使用が大幅に抑制された環境に優しい蓋材とすることができる。さらには、後述する耐水シート3Aに生じる皺や折り重なりを目立ち難くでき、かつ、これら皺や折り重なりによって耐水シート付きパルプモールド1Aの表面に段差が生じることも効果的に抑制することができる。
【0035】
なお、基材3aは、デザイン印刷層を含んでいてもよい。この場合、基材3aは、たとえば、ベースとなる層としての上述した防湿セロファンや紙製の部材、プラスチックフィルム等の一対の主面のうちの接着剤層3bとは反対側に位置する主面に、デザイン印刷層が施されたものによって構成される。基材3aとして透明性を有するものが用いられる場合には、当該基材3aの一対の主面のうちの接着剤層3b側に位置する主面にデザイン印刷層が施されてもよい。
【0036】
接着剤層3bは、透明性を有しかつ熱接着性を有するものであることが好ましい。具体的には、接着剤層3bは、熱接着性を有する樹脂である、低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene(LDPE))、エチレン酢酸ビニル共重合体(Ethylene-Vinyl Acetate(EVA))、エチレンアクリル酸共重合体、塩素化ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を主成分とするものであることが好ましいが、その他アクリル系樹脂、スチレンブタジエン共重合体、ウレタン系樹脂、アイオノマー等からなりかつ良好な接着性を有する樹脂等であってもよい。
【0037】
さらに、接着剤層3bは、植物由来の原料を用いたPBS(Poly Butylene Succinate)やPLA(Poly Lactic Acid)等の生分解性樹脂であってもよく、このようにすれば、石油由来材料の使用を抑制することができる。なお、接着剤層3bは、粘着付与剤や滑剤等が添加されたものであってもよい。
【0038】
接着剤層3bは、熱接着性を有するもの以外のものでもよい。より具体的には、接着剤層3bとして、水の塗布や加湿によって活性化することで接着性が生じる再湿性接着剤が用いられてもよい。再湿性接着剤としては、ポリビニルアルコール樹脂や水溶性アクリル系樹脂、天然ゴム、カゼイン等からなるものが挙げられる。
【0039】
また、接着剤層3bとして、接着剤含有マイクロカプセルからなるものが用いられてもよい。このように構成された接着剤層3bは、加圧プレスされることでマイクロカプセルが破裂し、これによって露出した接着剤によって接着性が生じることになる。
【0040】
接着剤層3bを基材3aの主面に設ける手法としては、接着剤層3bを構成する上述した樹脂等を押出しラミネートによって基材3aにコーティングする手法でもよく、溶液もしくはエマルジョンの状態とした当該樹脂等を基材3aにコーティングして乾燥させる手法等でもよい。なお、接着剤層3bの厚みは、0.5μm以上20μm以下であることが好ましい。
【0041】
図2ないし図4に示すように、耐水シート3Aは、接着剤層3bを介して、上側蓋部21および下側蓋部22のうちの複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部である第1部分Xと、それ以外の部分である第2部分Yとを含む内側表面の全面に貼り付けられている。
【0042】
ここで、第1部分Xは、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部であることから、何らの手当ても行なわずに耐水シート3Aが当該第1部分Xに貼り付けられた場合には、耐水シート3Aが皺になったり、折り重なったりしやすくなる。この点、本実施の形態に係る耐水シート付きパルプモールド1Aにあっては、後述するように耐水シート3Aがプレスによってパルプモールド2Aに貼り付けられることにより、第1部分Xに対応する部分において皺や折り重なりが生じた耐水シート3Aの厚みが、柔らかさを有するパルプモールド2Aの厚みに吸収された状態で貼り付けられる。これにより、上述した問題の解決が図られている。
【0043】
具体的には、図5(A)に示すように、耐水シート3Aの折り重なりが位置する部分に対応する部分のパルプモールド2Aは、当該折り重なりが位置しない部分に対応する部分のパルプモールド2Aよりも圧縮された状態とされている。これにより、折り重なりが位置する部分の耐水シート3Aが、パルプモールド2A側に向けて入り込んだ状態となるように、耐水シート3Aがパルプモールド2Aに貼り付けられている。
【0044】
より具体的には、第1部分Xに貼り付けられた耐水シート3Aに生じた折り重なり部分においては、パルプモールド2Aのうちの、耐水シート3Aに生じた折り重なりに対応する部分の表面が、これらに対応しない部分の表面よりも後退することになる。これにより、パルプモールド2Aの表面には段差部分21cが形成されることになり、耐水シート3Aの折り重なりは、段差部分21cに入り込んだ状態でパルプモールド2Aの表面に貼り付けられることになる。その結果、折り重なりが生じた耐水シート3Aの厚みは、圧縮可能な柔らかさを有するパルプモールド2Aの厚みに吸収されることになる。なお、このような構成は、耐水シート3Aに生じた皺が位置する部分においても同様である。また、第1部分Xにおいて生じた皺や折り重なりの影響により、第2部分Yのうちの当該第1部分Xの近傍に位置する部分である第3部分Y’(図4参照)においても、耐水シート3Aの皺や折り重なりが生じることになる。この場合においても、第3部分Y’において皺や折り重なりが生じた耐水シート3Aの厚みは、圧縮可能な柔らかさを有するパルプモールド2Aの厚みに吸収されることになる。
【0045】
したがって、このように構成した場合には、耐水シート3Aに皺や折り重なりが生じることで発生する耐水シート3Aの厚みの増加が段差部分21cによって吸収されることになるため、これら皺や折り重なりを目立たなくさせることができるばかりでなく、耐水シート付きパルプモールド1Aの表面を平滑化できることになる。
【0046】
ここで、耐水シートの皺や折り重なりをさらに目立たなくさせるために、接着剤層が基材3aの一対の主面の一方にのみ設けられている耐水シート3Aの代わりに、接着剤層が基材3aの一対の主面の両方に設けられた耐水シート3A’が用いられてもよい。具体的には、耐水シート3A’は、当該耐水シート3A’のパルプモールド2A側に位置する第2主面3(2)が、接着剤層3bによって規定されるとともに、他方である第1主面3(1)もまた、接着剤層3bと同様の構成を有する接着剤層3b’によって規定されることとなるように構成される。このような構成を有する耐水シート3A’としては、たとえば、セロファンの両面にアクリル系樹脂、ビニル系樹脂あるいはポリ塩化ビニリデン等からなる熱接着性樹脂がコーティングされたもの、紙基材の両面にEVAやアクリル系の熱接着性樹脂エマルジョンがコーティングされたもの、および、プラスチックフィルムの両面に熱接着性樹脂がコーティングされたもの等が挙げられる。
【0047】
当該耐水シート3A’が用いられた場合には、図5(B)に示すように、第1部分Xに貼り付けられた耐水シート3A’に生じた折り重なり部分においては、第2主面3(2)のうちの折り重なりを規定する部分同士が、接着剤層3bを介して接着されるとともに、第1主面3(1)のうちの折り重なりを規定する部分同士が、接着剤層3b’を介して接着されることになる。これにより、皺や折り重なりが捲れることを防止することができるため、耐水シートの皺や折り重なりをさらに目立たなくさせることができる。ここで、図5(B)においては、本実施の形態に係る耐水シート付きパルプモールド1Aと区別するため、耐水シート3A’が用いられた耐水シート付きパルプモールドには、符号1A’を付している。
【0048】
なお、耐水シート3A’が用いられた耐水シート付きパルプモールド1A’が製造される場合には、後述する第2型110の耐水シート3A’に面する側の表面には、離型性に優れたポリテトラフルオロエチレン系樹脂等によるコーティングが施されていることが好ましい。これにより、耐水シート3A’の表面が、第2型110に接着することを防止することができる。
【0049】
また、本実施の形態に係る耐水シート付きパルプモールド1Aにあっては、第1部分Xに対応する部分の耐水シート3Aに所定のデザインを施し、さらに、第1部分Xに対応する部分の耐水シート3Aの絞り率が所定の値となるように当該耐水シート3Aを貼り付けることにより、上述した耐水シート3Aの皺や折り重なりの問題の解決を図ることができる。
【0050】
図2ないし図4に示すように、耐水シート3Aのうちの第1部分Xに対応する部分には、当該耐水シート3Aにおいて生じる皺や折り重なりが目立ちにくいようなデザインが施されてもよい。このようなデザインとしては、たとえば、木目調、石目調、石垣模様、岩肌模様、大理石模様、空模様、砂地柄、波柄、織物柄、小花柄、草花柄、樹木柄、唐草模様、小紋柄、ボタニカル柄、ペイズリー柄、カモフラージュ柄、ドット柄、水彩柄、およびマーブル模様等が挙げられる。耐水シート3Aのうちの第1部分Xに対応する部分には、これらのうちのいずれかのデザインが施されることが好ましい。
【0051】
ここで、木目調は材木の断面に表れる年輪、繊維、導管等で成された模様、石目調は天然石やレンガの地肌を表した模様、石垣模様は城壁等に様々な形状の石が積み重ねられた雰囲気を表した模様、空模様は様々な雲が青空に浮かんでいる景色や曇り空を表した模様、波柄は波立つ海原や波紋を表した柄、織物柄は綿や麻の糸を織ったり藁や竹を編んだ風合いを表した柄、ドット柄は水玉模様を含みシャンプードット、バブルドット、コインドット、ランダムドットと呼ばれる柄、水彩柄は水彩絵の具で濃淡を描いた雰囲気のある柄である。
【0052】
耐水シート3Aのうちの第1部分Xに対応する部分に施されるデザインは、上記のデザインに限られず、耐水シート3Aの皺や折り重なりが目立ちにくいようなデザインであればよい。すなわち、耐水シート3Aのうちの第1部分Xに対応する部分に施されるデザインは、上述したデザイン以外にも、たとえば、パルプモールドの地模様と同一の模様、自然物を散在させたようなデザイン、および、実質的に同一の単位デザインが繰り返し並ぶように配置された連続柄のうちのいずれかとすることができる。
【0053】
ここで、パルプモールドの地模様と同一の模様とは、パルプモールドを構成する紙やパルプの種々の微細な繊維が不規則に絡み合うことによってパルプモールドの表面に現れる模様のことである。また、実質的に同一の単位デザインには、大きさ、形状、および色彩が完全に同一の単位デザインだけではなく、大きさ、形状、および色彩のうち少なくとも1つが同一ではない単位デザインが含まれていてもよい。実質的に同一の単位デザインには、たとえば、種類が異なる花や植物であっても、そのそれぞれを単位デザインとして配置したものが含まれてもよい。
【0054】
また、本実施の形態に係る耐水シート付きパルプモールド1Aにあっては、耐水シート3Aがプレスによってパルプモールド2Aに貼り付けられることにより、当該耐水シート3Aのうちの第1部分Xに対応する部分が、10%以上50%以下の絞り率で当該第1部分Xに貼り付けられており、耐水シート3Aのうちの第2部分Yに対応する部分が、10%未満の絞り率で当該第2部分Yに貼り付けられている。
【0055】
絞り率とは、パルプモールド2Aに貼り付けられる耐水シート3Aの周長と、パルプモールド2Aのうち当該耐水シート3Aが貼り付けられる領域の周長とによって算出することができる。パルプモールド2Aのうち当該耐水シート3Aが貼り付けられる領域のある位置で測定した周長をP1とし、パルプモールド2Aに貼り付けられる耐水シート3AのうちP1の測定位置に相当する位置の周長をP2とした場合、絞り率は以下に示す式1により算出される。なお、絞り率の算出においては、P2をたとえば2mmにする等、短い単位で算出することが好ましい。
【0056】
(式1) 絞り率=100-(P1/P2×100)
【0057】
さらに、耐水シート3Aがプレスによってパルプモールド2Aに貼り付けられることにより、第1部分Xに対応する部分の耐水シート3Aは、これが引き延ばされることなく当該第1部分Xに貼り付けられている。
【0058】
また、耐水シート付きパルプモールド1Aにあっては、図3に示すように、パルプモールド2Aの下側蓋部22のうちの孔部22a1を規定する部分を覆うように、防水性に優れた耐水シート3Aが貼り付けられている。これにより、収容物501に接触し易い孔部22a1を規定する部分の下側蓋部22が、収容物501の水分によって傷んでしまうことを効果的に防止可能になる。
【0059】
図6は、本実施の形態に係る耐水シート付きパルプモールドの製造方法を示すフロー図であり、図7ないし図9は、図6に示す工程の一部を表わした模式断面図である。次に、これら図6ないし図9を参照して、本実施の形態に係る耐水シート付きパルプモールド1Aの製造方法について具体的に説明する。
【0060】
ここで、図7は、図2中に示すVII-VII線に対応した位置でのパルプモールド2A、耐水シート3A、および後述する第1型100および第2型110等の断面を表わした図である。図8および図9についても同様である。
【0061】
図6に示すように、本実施の形態に係る耐水シート付きパルプモールド1Aの製造方法においては、まず、後述するプレス工程(工程S6)を経ることでそれ自体が圧縮されることが可能に構成されたパルプモールド2Aが準備される(工程S1)。このようなパルプモールド2Aは、たとえば、抄造成形される工程と乾燥される工程とを経ることで得られるものである。具体的には、まず、パルプモールド2Aの表面形状に沿う形状を有しかつ吸引用貫通孔が設けられた抄造成形用型の表面に網を張り、これらをパルプスラリーが充填された材料槽の中に浸漬する。次に、抄造成形用型の網が張られた側の主面とは反対側の主面が位置する側からパルプスラリーを吸引して上記網の表面にパルプスラリーを堆積させる。次に、堆積したパルプスラリーを抄造成形用型から取り外し、さらに乾燥させることにより、上述したパルプモールド2Aが得られることになる。
【0062】
次に、パルプモールド2Aの上側蓋部21の内側表面の全面と、下側蓋部22の内側表面の全面とを覆うことが可能な大きさの外形を有する耐水シート3Aが準備される(工程S2)。次に、上側蓋部21が開かれた状態におけるパルプモールド2Aの形状に沿う形状を有する、第1型100および第2型110が準備される(工程S3)。
【0063】
ここで、パルプモールド2Aの形状に沿う形状とは、製品としての耐水シート付きパルプモールド1Aを構成するパルプモールド2Aの形状に実質的に沿う形状のことを意味しており、第2型110によってプレスされる工程(工程S6)の前のパルプモールド2Aの形状と完全に一致した形状を意味するものではない。すなわち、パルプモールド2Aの形状に沿う形状とは、工程S6において耐水シート3Aと共に第2型110によってプレスされた後の(すなわち、プレスによって圧縮変形した後の)パルプモールド2Aに沿う形状を意味している。
【0064】
次に、図6および図7に示すように、パルプモールド2Aが第1型100に載置される(工程S4)。
【0065】
図7に示すように、第1型100は、その一対の主面のうちの一方に、第1凹状部101および第2凹状部102を有している。第1凹状部101は、上側蓋部21に含まれる凹形状の部位の外側表面(すなわち、図7中に示す下側の表面)に沿う形状を有している。第2凹状部102は、下側蓋部22の凹部22aの外側表面(すなわち、図7中に示す下側の表面)に沿う形状を有している。
【0066】
パルプモールド2Aは、上側蓋部21に含まれる凹形状の部位が第1凹状部101に当接するとともに、下側蓋部22の凹部22aが第2凹状部102に当接するように、上側蓋部21が開かれた状態で第1型100に載置される。
【0067】
次に、図6および図7に示すように、耐水シート3Aが、パルプモールド2Aに対して位置決めされて配置される(工程S5)。
【0068】
より具体的には、図7に示すように、パルプモールド2Aが第1型100に載置された状態において、耐水シート3Aが、接着剤層3bが設けられた第2主面3(2)がパルプモールド2Aの上側蓋部21および下側蓋部22に面し、かつ、後述するパルプモールド2Aおよび耐水シート3Aが第2型110によってプレスされる工程(工程S6)において上側蓋部21の内側表面の全面と下側蓋部22の内側表面の全面とを覆うこととなるように、パルプモールド2Aに対して位置決めされて配置される。これにより、耐水シート3Aは、第1型100と第2型110との間に配置されることになる。
【0069】
次に、図6および図8に示すように、耐水シート3Aが、第1型100および第2型110によってプレスされることでパルプモールド2Aに貼り付けられる(工程S6)。
【0070】
具体的には、図8に示すように、耐水シート3Aがパルプモールド2Aに対して位置決めされた状態において、耐水シート3Aが、第2型110によってパルプモールド2Aに向けて(すなわち、図8中に示す矢印AR1方向に向けて)プレスされる。
【0071】
第2型110のプレス面には、第1凸状部111および第2凸状部112が設けられている。第1凸状部111は、上側蓋部21に含まれる凹形状の部位に沿う形状を有している。第2凸状部112は、下側蓋部22の凹部22aに沿う形状を有している。また、第2凸状部112は、その一部に、当該第2凸状部112の表面からさらに突出した突出部112aを有している。突出部112aは、下側蓋部22の孔部22a1を規定する部分の下側蓋部22に耐水シート3Aを貼り付けるためのものである。
【0072】
このように構成された第2型110によってプレスされることにより、パルプモールド2Aおよび耐水シート3Aが、積層された状態で第1型100および第2型110によって挟み込まれることになる。これにより、耐水シート3Aは、上側蓋部21の内側表面の全面と下側蓋部22の内側表面の全面とを覆うように、熱接着性の接着剤層3bを介して上側蓋部21と下側蓋部22とに貼り付けられる。
【0073】
また、耐水シート3Aがプレスによってパルプモールド2Aに貼り付けられることにより、上側蓋部21および下側蓋部22の第1部分Xのうちの、耐水シート3Aの皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分に対応する部分は、これが位置しない部分に対応する部分のパルプモールド2Aよりも圧縮された状態とされる。これにより、皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分の耐水シート3Aが、パルプモールド2A側に向けて入り込んだ状態となるように、耐水シート3Aがパルプモールド2Aに貼り付けられることとなる。
【0074】
さらに、耐水シート3Aがプレスによってパルプモールド2Aに貼り付けられることにより、上側蓋部21および下側蓋部22の第1部分Xに対応する部分の耐水シート3Aが、皺や折り重なりを生じさせながら10%以上50%以下の絞り率で当該第1部分Xに貼り付けられるとともに、上側蓋部21および下側蓋部22の第2部分Yに対応する部分の耐水シート3Aが、10%未満の絞り率で当該第2部分Yに貼り付けられることとなる。
【0075】
また、耐水シート3Aがプレスによってパルプモールド2Aに貼り付けられることにより、第1部分Xに対応する部分の耐水シート3Aは、これが引き延ばされることなく当該第1部分Xに貼り付けられることとなる。
【0076】
ここで、耐水シート3Aがプレスによってパルプモールド2Aに貼り付けられる際には、耐水シート3Aが第2型110の第1凸状部111や第2凸状部112の形状に追従するように当該耐水シート3Aを移動させつつ、これを上側蓋部21の凹形状の部位や下側蓋部22の凹部22a等に貼り付ける。これにより、耐水シート3Aをその面内方向に必要以上に伸張させることなくパルプモールド2Aの内側表面の全面に貼り付けることが可能になるため、耐水シート3Aに裂け目が生じたり、歪な皺や折り重なりが生じたりすることを効果的に抑制されることとなる。
【0077】
工程S6における第2型110によるプレスは、プレス温度が概ね70℃以上200℃以下であることが好ましく、さらに好適には、90℃以上150℃以下とされる。その際、第1型100も同程度に加熱されていてもよい。プレス時間は、1秒以上5秒以下程度であることが好ましい。なお、上述したプレス温度およびプレス時間は、基材3aの耐熱性や接着剤層3bの接着温度等によって適宜変更されるものである。パルプモールド2Aは、このような条件下で耐水シート3Aと共にプレスされて圧縮変形されることにより、プレス前の状態に比べて、硬く、薄く、その表面が平滑化したものになる。一例として、プレス前において厚みが0.8mm以上3.0mm以下あるいは1.5mm以上2.5mm以下のパルプモールド2Aは、このプレスによって厚みが0.8mm以上1.5mm以下等になる。
【0078】
なお、下側蓋部22の孔部22a1に面する部分の第1型100の表面には、離型性に優れたポリテトラフルオロエチレン系樹脂等によるコーティングが施されていることが好ましい。これにより、耐水シート3Aの接着剤層3bが、当該部分の第1型100に接着することを防止することができる。
【0079】
次に、図6および図9に示すように、第2型110によるプレスが解除される(工程S7)。より具体的には、図9に示すように、第2型110がプレス前の位置に後退する(すなわち、図9中に示す矢印AR2方向に向けて移動する)ことにより、第2型110によるパルプモールド2Aおよび耐水シート3Aのプレスが解除される。
【0080】
次に、図6に示すように、耐水シート3Aの一部が除去される(工程S8)。より具体的には、まず、第1型100から耐水シート付きパルプモールド1Aが取り出される。次に、パルプモールド2Aの外縁部分に位置する図示しない余剰部分と、耐水シート3Aのうちの下側蓋部22の孔部22a1に対応する部分とが、切断用治具によって除去される。このようにして耐水シート付きパルプモールド1Aを最終形状に仕上げるための抜き加工が施されることにより、図1ないし図5において示した耐水シート付きパルプモールド1Aの製造が完了する。
【0081】
なお、上述した耐水シート付きパルプモールド1Aの製造方法にあっては、工程S1において、予め下側蓋部22の孔部22a1が設けられたパルプモールド2Aが準備される場合を例示したが、孔部22a1は、当該孔部22a1に位置する部分の下側蓋部22が、上記工程S8において、当該部分に対応する部分の耐水シート3Aと共に除去されることで下側蓋部22に設けられてもよい。この場合には、孔部22a1を規定する部分の下側蓋部22が耐水シート3Aによって覆われないこととなるため、下側蓋部22の防水性が若干低下する。一方で、工程S1において準備されるパルプモールド2Aに予め孔部22a1を設ける必要がなくなるため、耐水シート付きパルプモールド1Aを効率よく製造可能になる。
【0082】
また、上述した耐水シート付きパルプモールド1Aの製造方法にあっては、プレスの解除後に耐水シート3Aの一部の切除が行なわれる場合を例示したが、当該切除は、工程S2において準備される耐水シート3Aに予め施されていてもよい。
【0083】
このようにして製造された耐水シート付きパルプモールド1Aの下側蓋部22の外側表面に接着剤600(図3参照)を塗布し、収容部502の天面に当該接着剤600を介して耐水シート付きパルプモールド1Aを貼り付けることにより、上述した外装体500の製造が完了する。なお、下側蓋部22の外側表面に接着剤600を塗布する代わりに、両面接着シートを貼り付けることとしてもよい。
【0084】
ここで、本実施の形態に係る耐水シート付きパルプモールド1Aにあっては、上述したように、パルプモールド2Aよりも水蒸気透過度が低い基材3aを有する耐水シート3Aを、パルプモールド2Aの上側蓋部21の内側表面の全面と、下側蓋部22の内側表面の全面とに貼り付けることにより、耐水シート付きパルプモールド1Aに高い防水性が付与されている。
【0085】
このように構成した場合には、収容物501が含む水分によってパルプモールド2Aが傷んでしまうことを効果的に防止することができる。さらに、収容物501が収容された収容部502の開口502aを、高い防水性が付与された耐水シート付きパルプモールド1Aによって密封することにより、収容物501が乾燥することを効果的に抑制することが可能になる。
【0086】
さらに、上側蓋部21および下側蓋部22の第1部分Xは、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部であることから、何らの手当ても行なわずに耐水シート3Aが当該第1部分Xに貼り付けられた場合には、耐水シート3Aが皺になったり、折り重なったりしやすくなる。
【0087】
この点、本実施の形態に係る耐水シート付きパルプモールド1Aにあっては、上述したように、パルプモールド2Aの上側蓋部21および下側蓋部22の第1部分Xのうちの、耐水シート3Aの皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分に対応する部分が、これが位置しない部分に対応する部分のパルプモールド2Aよりも圧縮された状態とされ、これにより、皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分の耐水シート3Aが、パルプモールド2A側に向けて入り込んだ状態となるように、耐水シート3Aがパルプモールド2Aに貼り付けられている。
【0088】
このように構成することにより、皺や折り重なりが生じた耐水シート3Aの厚みが、柔らかさを有するパルプモールド2Aの厚みに吸収されることになり、結果として、皺や折り重なりを目立たなくさせることができるばかりでなく、耐水シート付きパルプモールド1Aの表面を平滑化できることになる。
【0089】
また、本実施の形態に係る耐水シート付きパルプモールド1Aにおいては、上述したように、耐水シート3Aのうちの第1部分Xに対応する部分は、10%以上50%以下の絞り率で貼り付けられている。これにより、耐水シート3Aを、上側蓋部21および下側蓋部22の表面の形状に沿った形状で保持することができるとともに、当該部分に大きな皺や折り重なりが生じることを抑制することができ、さらには、生じた折り重なり同士が更に重なることを抑制できることとなる。
【0090】
また、本実施の形態に係る耐水シート付きパルプモールド1Aにあっては、上述したように、第1部分Xに対応する部分の耐水シート3Aが、これが引き延ばされることなく当該第1部分Xに貼り付けられている。これにより、第1部分Xに対応する部分の耐水シート3Aが第2部分Yに対応する部分の耐水シート3Aに比べて厚みが薄くなってしまうことを抑制できるため、第1部分に対応する部分における耐水シート3Aの防水性が低下したり、破れが生じたりすることを効果的に防止できることになる。
【0091】
したがって、以上のように構成することにより、高い防水性が付与されるとともに表面の平滑性の向上が図られた耐水シート付きパルプモールドとすることができる。
【0092】
さらに、本実施の形態に係る耐水シート付きパルプモールド1Aにあっては、上述したように、耐水シート3Aのうちの第1部分Xに対応する部分に、当該耐水シート3Aの皺や折り重なりが目立ちにくいようなデザインが施されてもよい。このように構成した場合には、耐水シート3Aの皺や折り重なりをさらに目立ち難くすることができる。
【0093】
なお、本実施の形態に係る耐水シート付きパルプモールド1Aの製造方法においては、上述したように、工程S1において、抄造成形されかつ乾燥されることで得られるパルプモールド2Aが準備される場合を例示したが、工程S1において準備されるパルプモールド2Aは、抄造成形されかつ乾燥された後に、さらに、プレスによって粗成形されたものであってもよい。
【0094】
このように構成した場合には、パルプモールド2Aの表面の凹凸部分が粗成形によって平滑化された後に、当該表面に耐水シート3Aが貼り付けられることになる。これにより、表面の凹凸部分に貼り付けられることに起因して耐水シート3Aに破れや皺、折り重なり等が生じることを効果的に抑制することができる。
【0095】
(実施の形態2)
図10は、実施の形態2に係る耐水シート付きパルプモールドの模式断面図である。図10(A)は、図1中に示すIII-III線に沿った模式断面図に対応する部分の実施の形態2に係る耐水シート付きパルプモールドの模式断面図であり、図10(B)は、図10(A)に示す耐水シート付きパルプモールドとは異なる構成の耐水シートを備える耐水シート付きパルプモールドの要部拡大断面図である。以下、この図10を参照して、本実施の形態に係る耐水シート付きパルプモールド1Bについて説明する。
【0096】
図10(A)に示すように、本実施の形態に係る耐水シート付きパルプモールド1Bは、上述した実施の形態1に係る耐水シート付きパルプモールド1Aと比較した場合に、形状および構成がほぼ同様である。一方で、耐水シート付きパルプモールド1Bは、これ自体が、水分を含む収容物501を収容可能な容器として用いられるものである点において、上述した実施の形態1に係る耐水シート付きパルプモールド1Aと相違している。
【0097】
具体的には、本実施の形態に係る耐水シート付きパルプモールド1Bにあっては、パルプモールド2Bが、上側容器部21Bと、下側容器部22Bとを有している。上側容器部21Bは、上述した実施の形態1に係る耐水シート付きパルプモールド1Aにおける上側蓋部21と同様の構成を有している。下側容器部22Bは、耐水シート付きパルプモールド1Aにおける下側蓋部22と比較した場合に、凹部22aに孔部22a1が設けられていない点においてのみ当該下側蓋部22と構成が相違しており、その余の構成は当該下側蓋部22と同様である。
【0098】
このように構成されたパルプモールド2Bにあっては、上側容器部21Bが閉じられた状態において、当該パルプモールド2Bの内部に、上側容器部21Bと下側容器部22Bの凹部22aとによって規定される収容空間20Bが設けられている。
【0099】
耐水シート付きパルプモールド1Bを構成する耐水シート3Bは、上述した実施の形態1に係る耐水シート付きパルプモールド1Aを構成する耐水シート3Aと同一の構成を有している。耐水シート3Bは、上側容器部21Bの内側表面の全面と、下側容器部22Bの内側表面の全面とに貼り付けられている。すなわち、耐水シート3Bは、収容空間20Bを規定する側の上側容器部21Bおよび下側容器部22Bの主面に貼り付けられている。
【0100】
このように構成した場合には、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果を得ることができ、高い防水性が付与されるとともに表面の平滑性の向上が図られた耐水シート付きパルプモールドとすることができる。
【0101】
ここで、本実施の形態に係る耐水シート付きパルプモールド1Bにおいては、上側容器部21Bを閉じた状態における当該耐水シート付きパルプモールド1Bの密封性を向上させるために、耐水シート3Bのパルプモールド2Bに位置する側の主面とは反対側の主面に、さらに接着剤層3b2を有していてもよい。
【0102】
より具体的には、図10(B)に示すように、接着剤層が基材3aの一対の主面の一方にのみ設けられている耐水シート3Bの代わりに、接着剤層が基材3aの一対の主面の両方に設けられた耐水シート3B1が用いられてもよい。耐水シート3B1は、当該耐水シート3B1のパルプモールド2B側に位置する第2主面3(2)が、接着剤層3bによって規定されるとともに、他方である第1主面3(1)もまた、接着剤層3b1によって規定されることとなるように構成される。
【0103】
当該耐水シート3B1が用いられた場合には、図10(B)に示すように、上側容器部21Bを閉じた状態において、当該上側容器部21Bと下側容器部22Bとが当接する部分が加熱されかつ押圧されることにより、当該部分に貼り付けられた耐水シート3B1の接着剤層3b1を介して接着されることになる。これにより、上側容器部21Bを閉じた状態における収容空間20Bの密封性が向上することになるため、収容物501が乾燥することをより効果的に抑制することが可能になる。
【0104】
なお、接着剤層3b1として熱接着性を有する樹脂等を用いた場合には、上述した上側容器部21Bと下側容器部22Bとが接着剤層3b1を介して接着された状態は、ユーザが上側容器部21Bを一度開いた後には再現されない。一方で、接着剤層3b1として再接着性の粘着剤等を用いた場合には、ユーザが上側容器部21Bの開閉を繰り返し行なったとしても、これを閉じる毎に上側容器部21Bと下側容器部22Bとが接着剤層3b1を介して接着された状態が再現されることになる。
【0105】
(実施の形態3)
図11は、実施の形態3に係る耐水シート付きパルプモールドの平面図である。図12は、図11に示す耐水シート付きパルプモールドの模式断面図である。図12(A)は、図11中に示すXIIA-XIIA線に沿った模式断面図である。図12(B)は、図11中に示すXIIB-XIIB線に沿った模式断面図である。図12(C)は、図12(B)の要部拡大断面図である。図13は、図11に示すパルプモールドの平面図である。以下、これら図11ないし図13を参照して、実施の形態3に係る耐水シート付きパルプモールド1Cについて説明する。
【0106】
図11ないし図13に示すように、本実施の形態に係る耐水シート付きパルプモールド1Cは、上述した実施の形態1に係る耐水シート付きパルプモールド1Aと比較した場合、蓋材として用いられる点において共通している。一方で、耐水シート付きパルプモールド1Cは、これが開閉可能に構成されていない点や、耐水シート付きパルプモールド1Cを構成する耐水シート3Cが、パルプモールド2Cの一方の主面の一部にのみ貼り付けられている点等において、上述した実施の形態1に係る耐水シート付きパルプモールド1Aと相違している。なお、本実施の形態に係る耐水シート付きパルプモールド1Cの製造方法は、上述した実施の形態1に係る耐水シート付きパルプモールド1Aの製造方法と同様の工程を経るものである。
【0107】
本実施の形態に係る耐水シート付きパルプモールド1Cは、全体として偏平形状を有する蓋材として用いられるものである。耐水シート付きパルプモールド1Cは、水分を含む収容物およびこれを収容する上面開口の容器に対して、当該開口を耐水シート付きパルプモールド1Cで蓋をすることで収容物が乾燥することを防止するものである。そのため、パルプモールド2Cの一対の主面のうち、図12(A)および図12(B)における下方に位置する側の主面が、収容物に面することとなる。なお、以下においては、説明の便宜上、収容物に面する側のパルプモールド2Cの主面を内側表面とも称することとする。
【0108】
パルプモールド2Cは、これを平面視したときの中央部分に位置する主板部25と、当該主板部25の周囲に位置する湾曲部26と、当該湾曲部26の周囲に位置するフランジ部27とを有している。フランジ部27が主板部25よりも後退して位置していることにより、パルプモールド2Cは、主板部25および湾曲部26によって規定された凹形状の部位を含んでいる。
【0109】
図13に示すように、湾曲部26の四隅は、複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部からなり、当該四隅以外の湾曲部26は、一方向に湾曲した曲面からなる曲面部からなる。そのため、パルプモールド2Cにおいても、上述した実施の形態1におけるパルプモールド2Aと同様に、湾曲部26の四隅に位置する部分を第1部分Xと称し、それ以外の部分(すなわち、主板部25、フランジ部27、および、湾曲部26のうちの上記四隅以外の部分)を第2部分Yと称する。
【0110】
図11および図12に示すように、耐水シート3Cは、上述した実施の形態1に係る耐水シート付きパルプモールド1Aの耐水シート3Aと同様の構成を有している。耐水シート3Cは、パルプモールド2Cの内側表面のうちの、第1部分Xに対応する部分と、主板部25および湾曲部26によって規定される部分の第2部分Yに対応する部分とに貼り付けられている。一方で、耐水シート3Cは、フランジ部27の内側表面には貼り付けられていない。
【0111】
図12(C)に示すように、パルプモールド2Cの内側表面は、耐水シート3Cが貼り付けられた部分である被貼り付け面20(1)と、耐水シート3Cが貼り付けられていない部分である露出面20(2)とを含んでいる。
【0112】
被貼り付け面20(1)と露出面20(2)との境界部においては、被貼り付け面20(1)が、露出面20(2)よりも後退して位置している。すなわち、被貼り付け面20(1)は、露出面20(2)よりも外側表面側に位置している。これにより、パルプモールド2Cには段差部20(3)が設けられており、耐水シート3Cは、当該耐水シート3Cの厚み方向における少なくとも一部が段差部20(C)に入り込んだ状態でパルプモールド2Cに貼り付けられている。
【0113】
このような耐水シート付きパルプモールド1Cの構成は、耐水シート3Cがパルプモールド2Cに積層された状態でプレスされることにより、当該パルプモールド2Cの被貼り付け面20(1)が圧縮されつつ当該被貼り付け面20(1)に耐水シート3Cが貼り付けられることに起因して生じるものである。
【0114】
このように構成した場合には、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果が得られることになるばかりでなく、段差部20(3)によって耐水シート3Cの厚みの少なくとも一部が吸収されることになるため、結果として、耐水シート付きパルプモールド1Cの表面の平滑性を大幅に向上させることができる。
【0115】
(付記)
上述した実施の形態において開示した耐水シート付きパルプモールドの特徴的な構成を要約すると、以下のとおりとなる。
【0116】
[付記1]
複数方向に湾曲した曲面からなる曲面部を有するパルプモールドと、
基材および当該基材の一方の主面に設けられた接着剤層を有し、当該接着剤層を介して上記パルプモールドに貼り付けられた耐水シートとを備え、
上記耐水シートのうちの上記曲面部に対応する部分には、上記耐水シートの皺および折り重なりの少なくともいずれかが位置し、
上記皺および上記折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分に対応する部分の上記パルプモールドが、上記皺および上記折り重なりが位置しない部分に対応する部分の上記パルプモールドよりも圧縮された状態とされ、これにより、上記皺および上記折り重なりの少なくともいずれかが位置する部分の上記耐水シートが、上記パルプモールド側に向けて入り込んでおり、
上記基材の水蒸気透過度が、上記パルプモールドの水蒸気透過度よりも低い、耐水シート付きパルプモールド。
[付記2]
パルプモールドと、
基材および当該基材の一方の主面に設けられた接着剤層を有し、当該接着剤層を介して上記パルプモールドに貼り付けられた耐水シートとを備え、
上記パルプモールドは、上記耐水シートが貼り付けられた部分である被貼り付け面と、上記耐水シートが貼り付けられていない部分である露出面とを含み、
上記被貼り付け面と上記露出面との境界部において、上記被貼り付け面が上記露出面よりも後退していることにより、上記パルプモールドに段差部が設けられ、
上記耐水シートが、当該耐水シートの厚み方向における少なくとも一部が上記段差部に入り込んだ状態で上記パルプモールドに貼り付けられ、
上記基材の水蒸気透過度が、上記パルプモールドの水蒸気透過度よりも低い、耐水シート付きパルプモールド。
[付記3]
上記耐水シートが、当該耐水シートの上記パルプモールドに位置する側の主面とは反対側の主面に、さらに接着剤層を有している、付記1または2に記載の耐水シート付きパルプモールド。
[付記4]
上記パルプモールドは、当該パルプモールドが上側容器部および下側容器部を有することによって内部に収容空間が設けられ、
上記耐水シートが、上記収容空間を規定する側の上記パルプモールドの主面に貼り付けられている、付記1から3のいずれかに記載の耐水シート付きパルプモールド。
【0117】
(その他の形態等)
上述した実施の形態においては、上側容器部と下側容器部とがヒンジ部によって連結された場合の耐水シート付きパルプモールドの構成を例示して説明を行なったが、上側容器部および下側容器部は、ヒンジ部によって連結されることなく、別個の部材として形成されていてもよい。この場合、上側容器部および下側容器部は、たとえば、各々に形成された嵌合部を介して互いに取り付けられてもよく、上述した凹部およびこれによって規定される空間は、これら上側容器部および下側容器部のうちのいずれか一方に設けられていればよい。
【0118】
また、上述した実施の形態においては、収容物としてウェットティッシュを収容可能に構成された耐水シート付きパルプモールドに本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明は、たとえば、乾燥および揮発を防止することが求められる、スタンプインキを収容可能なスタンプ台や、軟膏あるいは保湿クリーム容器の蓋、水分を含んだ食品あるいは菓子の容器の蓋にも当然に適用可能である。また、防湿性を求められる、薬品や乾燥食品等を収容可能な保管容器あるいは蓋に本発明を適用することも可能である。
【0119】
さらに、上述した本発明の実施の形態およびその変形例において示した各部の形状や構成、大きさ、数、材質等は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々変更が可能である。
【0120】
また、上述した本発明の実施の形態およびその変形例において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当然に相互に組み合わせることができる。
【0121】
このように、今回開示した上記実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0122】
1A,1B,1C,1A’ 耐水シート付きパルプモールド、2A,2B,2C パルプモールド、3A,3B,3C,3B1,3A’ 耐水シート、3(1) 第1主面、3(2) 第2主面、3a 基材、3b,3b1,3b’ 接着剤層、20 空間、20B 収容空間、20(1) 被貼り付け面、20(2) 露出面、20(3) 段差部、21 上側蓋部、21B 上側容器部、21c 段差部分、22 下側蓋部、22B 下側容器部、22a 凹部、22a1 孔部、23 ヒンジ部、25 主板部、26 湾曲部、27 フランジ部、100 第1型、101 第1凹状部、102 第2凹状部、110 第2型、111 第1凸状部、112 第2凸状部、112a 突出部、500 容器、501 収容物、502 収容部、502a 開口、600 接着剤、X 第1部分、Y 第2部分、Y’ 第3部分。
図1
図2
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図13