(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021718
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】発電システムの制御装置、発電システムの制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20240208BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240208BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20240208BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J7/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124756
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA04
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA08
5G503GB06
(57)【要約】
【課題】再生可能エネルギー発電の利用率を向上させつつ、逆潮流の発生を抑制することができる発電システムの制御装置を提供する。
【解決手段】発電装置および蓄電装置を備える発電システムの制御装置は、前記発電装置および前記蓄電装置が接続される電力線と、電力系統との受電点において受け渡しされる受電点電力を計測する電力計測部と、前記蓄電装置の充電率を取得する充電率取得部と、前記受電点電力および前記充電率に基づいて前記蓄電装置の充放電を制御する充放電制御部と、を備え、前記充放電制御部は、前記受電点電力が所定の第1閾値未満となった場合に、前記充電率が、前記蓄電装置の充電率上限値よりも低い充電率を示す制御開始閾値未満のとき、前記蓄電装置への充電電力を増加させ、前記充電率が前記制御開始閾値以上のとき、前記充電電力を前記充電率に応じた充電制限値以下に制限する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置および蓄電装置を備える発電システムの制御装置であって、
前記発電装置および前記蓄電装置が接続される電力線と、電力系統との受電点において受け渡しされる受電点電力を計測する電力計測部と、
前記蓄電装置の充電率を取得する充電率取得部と、
前記受電点電力および前記充電率に基づいて前記蓄電装置の充放電を制御する充放電制御部と、
を備え、
前記充放電制御部は、前記受電点電力が所定の第1閾値未満となった場合に、
前記充電率が、前記蓄電装置の充電率上限値よりも低い充電率を示す制御開始閾値未満のとき、前記蓄電装置への充電電力を増加させ、
前記充電率が前記制御開始閾値以上のとき、前記充電電力を前記充電率に応じた充電制限値以下に制限する、
発電システムの制御装置。
【請求項2】
前記充電率および前記受電点電力に基づいて前記発電装置の出力を制御する出力制御部をさらに備える、
請求項1に記載の発電システムの制御装置。
【請求項3】
前記出力制御部は、前記充電率が前記制御開始閾値以上であり、前記受電点電力が前記第1閾値未満の場合に、前記発電装置の出力上限値を減少させる、
請求項2に記載の発電システムの制御装置。
【請求項4】
前記出力制御部は、前記受電点電力が所定の第2閾値を超える場合に、前記発電装置の出力上限値を増加させる、
請求項2に記載の発電システムの制御装置。
【請求項5】
前記充放電制御部は、前記受電点電力が所定の第2閾値を超え、且つ、前記出力上限値が前記発電装置の定格出力電力に達した場合に、前記蓄電装置からの放電電力を増加させる、
請求項3または4に記載の発電システムの制御装置。
【請求項6】
前記充放電制御部は、前記充電率が充電率下限値に達した場合に、前記蓄電装置からの放電を停止する、
請求項5に記載の発電システムの制御装置。
【請求項7】
発電装置および蓄電装置を備える発電システムの制御方法であって、
前記発電装置および前記蓄電装置が接続される電力線と、電力系統との受電点において受け渡しされる受電点電力を計測するステップと、
前記蓄電装置の充電率を取得するステップと、
前記受電点電力および前記充電率に基づいて前記蓄電装置の充放電を制御するステップと、
を有し、
前記充放電を制御するステップは、前記受電点電力が所定の第1閾値未満となった場合に、
前記充電率が、前記蓄電装置の充電率上限値よりも低い充電率を示す制御開始閾値未満のとき、前記蓄電装置への充電電力を増加させ、
前記充電率が前記制御開始閾値以上のとき、前記充電電力を前記充電率に応じた充電制限値以下に制限する、
発電システムの制御方法。
【請求項8】
発電装置および蓄電装置を備える発電システムの制御装置に、
前記発電装置および前記蓄電装置が接続される電力線と、電力系統との受電点において受け渡しされる受電点電力を計測するステップと、
前記蓄電装置の充電率を取得するステップと、
前記受電点電力および前記充電率に基づいて前記蓄電装置の充放電を制御するステップと、
を実行させるプログラムであって、
前記充放電を制御するステップは、前記受電点電力が所定の第1閾値未満となった場合に、
前記充電率が、前記蓄電装置の充電率上限値よりも低い充電率を示す制御開始閾値未満のとき、前記蓄電装置への充電電力を増加させ、
前記充電率が前記制御開始閾値以上のとき、前記充電電力を前記充電率に応じた充電制限値以下に制限する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発電システムの制御装置、発電システムの制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、再生可能エネルギー発電の導入が進んでいる。以下、再生可能エネルギー発電を代表して、太陽光発電(photovoltaics;PVとも記載する。)を例に説明する。PVの余剰電力発生時において、電力系統への逆潮流を回避するために、PVの出力を止めるなどの出力制御が行われる。これにより、電力系統への逆潮流は回避されるが、PVの利用率は低下する。そこで、蓄電池を用いた電力貯蔵システム(Battery Energy Storage System;BESSとも記載する。)を併設して、PVの余剰電力をBESSに充電して、後にBESSから負荷へ放電することで、PVの利用率を向上させることが考えられている。例えば特許文献1には、PV出力(発電電力)が負荷の消費電力よりも大きい場合に、BESSの充電率(State of Charge;以下、BESS-SOC、または単にSOCとも記載する。)が上限閾値以下であればPV余剰電力を蓄電池に充電し、BESS-SOCが上限閾値を超える場合にPVの出力制御を行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、BESS-SOCが上限値に到達したことを検出した後に、すなわち、BESSへのPV余剰電力の供給(充電)が停止した後に、PVの出力制御を行っている。そうすると、BESSへのPV余剰電力の供給停止からPVの出力制御を実行するまでにタイムラグがあり、この期間にPV余剰電力が一時的に電力系統に逆潮流する可能性がある。
【0005】
本開示の目的は、再生可能エネルギー発電の利用率を向上させつつ、逆潮流の発生を抑制することができる発電システムの制御装置、発電システムの制御方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、制御装置は、発電装置および蓄電装置を備える発電システムの制御装置であって、前記発電装置および前記蓄電装置が接続される電力線と、電力系統との受電点において受け渡しされる受電点電力を計測する電力計測部と、前記蓄電装置の充電率を取得する充電率取得部と、前記受電点電力および前記充電率に基づいて前記蓄電装置の充放電を制御する充放電制御部と、を備え、前記充放電制御部は、前記受電点電力が所定の第1閾値未満となった場合に、前記充電率が、前記蓄電装置の充電率上限値よりも低い充電率を示す制御開始閾値未満のとき、前記蓄電装置への充電電力を増加させ、前記充電率が前記制御開始閾値以上のとき、前記充電電力を前記充電率に応じた充電制限値以下に制限する。
【0007】
本開示の一態様によれば、制御方法は、発電装置および蓄電装置を備える発電システムの制御方法であって、前記発電装置および前記蓄電装置が接続される電力線と、電力系統との受電点において受け渡しされる受電点電力を計測するステップと、前記蓄電装置の充電率を取得するステップと、前記受電点電力および前記充電率に基づいて前記蓄電装置の充放電を制御するステップと、を有し、前記充放電を制御するステップは、前記受電点電力が所定の第1閾値未満となった場合に、前記充電率が、前記蓄電装置の充電率上限値よりも低い充電率を示す制御開始閾値未満のとき、前記蓄電装置への充電電力を増加させ、前記充電率が前記制御開始閾値以上のとき、前記充電電力を前記充電率に応じた充電制限値以下に制限する。
【0008】
本開示の一態様によれば、プログラムは、発電装置および蓄電装置を備える発電システムの制御装置に、前記発電装置および前記蓄電装置が接続される電力線と、電力系統との受電点において受け渡しされる受電点電力を計測するステップと、前記蓄電装置の充電率を取得するステップと、前記受電点電力および前記充電率に基づいて前記蓄電装置の充放電を制御するステップと、を実行させるプログラムであって、前記充放電を制御するステップは、前記受電点電力が所定の第1閾値未満となった場合に、前記充電率が、前記蓄電装置の充電率上限値よりも低い充電率を示す制御開始閾値未満のとき、前記蓄電装置への充電電力を増加させ、前記充電率が前記制御開始閾値以上のとき、前記充電電力を前記充電率に応じた充電制限値以下に制限する。
【発明の効果】
【0009】
上記態様によれば、再生可能エネルギー発電の利用率を向上させつつ、逆潮流の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る発電システムの全体構成を示す概略図である。
【
図2】一実施形態に係る制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る制御装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】一実施形態に係る受電点電力およびSOCの第1の例を示す図である。
【
図5】一実施形態に係るリミッタの機能を説明するための図である。
【
図6】一実施形態に係る受電点電力およびSOCの第2の例を示す図である。
【
図7】一実施形態に係る逆潮流抑制処理の作用を説明するための第1の図である。
【
図8】一実施形態に係る逆潮流抑制処理の作用を説明するための第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発電システムの全体構成)
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1は、一実施形態に係る発電システムの全体構成を示す概略図である。
図1に示すように、発電システム1は、制御装置10と、PV20と、BESS30と、負荷40とを備えている。PV20、BESS30、および負荷40は電力線L1を介して接続される。電力線L1は、変圧器を介して電力系統と接続される。また、制御装置10、PV20、およびBESS30は通信線L2を介して互いに通信可能に接続される。
【0012】
PV20は、本実施形態における発電装置(再生可能エネルギー発電装置)の一態様であって、太陽光発電(PV)を利用した発電装置である。なお、他の実施形態では、発電システム1は、PV20に代えて、風力発電装置など他の再生可能エネルギー発電装置を備えていてもよい。
【0013】
PV20は、PCS(Power Conditioning System;パワーコンディショナ)22およびPCSコントローラ23を介して電力線L1に発電電力を出力する。
【0014】
PCS22は、PCSコントローラ23の制御に従って、PV20が発電した直流電力を交流電力に変換して電力線L1に出力する。
【0015】
PCSコントローラ23は、制御装置10から通信線L2を介して受信した出力指令に従って、PV20から電力線L1へ出力する電力を制御する。
【0016】
BESS30は、蓄電池31を利用した蓄電装置である。BESS30は、蓄電池31と、PCS32と、PCSコントローラ33と、BMS(Battery Management System)34を備える。本実施形態に係る発電システム1は、説明を分かりやすくするためにBESS30を1つのみ備える構成であるとする。なお、他の実施形態では、発電システム1は複数のBESS30を備えていてもよい。
【0017】
PCS32は、PCSコントローラ33の制御に従って蓄電池31の充放電を切り替える。PCS32は、充電時は電力線L1を介して供給される交流電力を直流電力に変換して蓄電池31に入力し、放電時は蓄電池31から放電される直流電力を交流電力に変換して電力線L1に出力する。
【0018】
PCSコントローラ33は、制御装置10から通信線L2を介して受信した電力指令値に応じた電力が蓄電池31に充電されるように、または蓄電池31から放電されるようにPCS32を制御する。
【0019】
BMS34は、蓄電池31のSOC(State of Charge;充電率[%])を監視して、制御装置10に送信する。
【0020】
負荷40は、PV20およびBESS30が設けられた施設が有する電気機器などである。負荷40には、電力系統から買電する電力、PV20の発電電力、またはBESS30の放電電力が電力線L1を通じて供給される。
【0021】
制御装置10は、PV20の出力制御、およびBESS30の充放電の制御を行う。
【0022】
(制御装置の機能構成)
図2は、一実施形態に係る制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、制御装置10は、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、通信インタフェース14とを備える。
【0023】
プロセッサ11は、所定のプログラムに従って動作することにより、指示取得部110、電力計測部111、充電率取得部112、制御部113としての機能を発揮する。
【0024】
指示取得部110は、電力系統への発電電力の出力を制限する指示する出力制御指示を取得する。出力制御指示は、電力系統を管理する電力事業者から通知される。制御装置10は、出力制御指示を取得した場合、出力制御指示で指定された期間、PV余剰電力の逆潮流を抑制する「逆潮流抑制処理」を実行する。また、制御装置10は、出力制御が指示されていない期間については、電力事業者との契約の範囲内で、PV20の余剰電力の売電、またはBESS30および負荷40に供給する電力の買電を行う「通常処理」を行ってもよい。なお、本実施形態では、主に逆潮流抑制処理の詳細について説明する。
【0025】
電力計測部111は、電力線L1と電力系統との間で電力が受け渡される受電点における電力(以下、受電点電力とも記載する。)を計測する。
図1の例のように、受電点には電力計2が設けられ、電力計測部111は電力計2を通じて受電点電力を計測する。
【0026】
充電率取得部112は、BESS30のBMS34から通信線L2を介してBESS30(蓄電池31)のSOCを取得する。
【0027】
制御部113は、PV20の出力およびBESS30の充放電を制御する。制御部113は、充放電制御部1131、および出力制御部1132を有する。
【0028】
充放電制御部1131は、受電点電力およびSOCに基づいてBESS30(蓄電池31)の充放電を制御する。このとき、充放電制御部1131は、BESSの充電電力または放電電力を指示するBESS電力指令値を算出して、BESS30のPCSコントローラ33に送信する。PCSコントローラ33は、BESS電力指令値に基づいて、蓄電池31の充放電を制御する。
【0029】
出力制御部1132は、SOCおよび受電点電力に基づいてPV20の出力を制御する。このとき、出力制御部1132は、PV出力上限値を設定してPCSコントローラ23に送信する。PCSコントローラ23は、PV20の出力がPV出力上限値以下となるように制御する。
【0030】
メモリ12は、プロセッサ11の動作に必要なメモリ領域を有する。
【0031】
ストレージ13は、いわゆる補助記憶装置であって、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等である。
【0032】
通信インタフェース14は、外部装置(PCSコントローラ23,33、BMS34など)との間で各種情報の送受信を行うためのインタフェースである。
【0033】
なお、制御装置10のプロセッサ11が実行する所定のプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶される。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。さらに、このプログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。更に、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0034】
(制御装置の処理フロー)
図3は、一実施形態に係る制御装置の処理の一例を示すフローチャートである。
以下、
図3を参照しながら、制御装置10の逆潮流抑制処理の流れについて詳細に説明する。
【0035】
まず、電力計測部111は、受電点電力PSを計測する。また、充電率取得部112は、BESS30のSOCを取得する(ステップS1)。
【0036】
図4は、一実施形態に係る受電点電力およびSOCの第1の例を示す図である。
図4に示すグラフは、受電点電力PSおよびBESS30のSOCの時系列の一例を表したものである。
【0037】
受電点電力PSは、正の値(PS>0)のとき、電力系統から電力の供給を受けている(買電している)状態であることを表し、負の値(PS<0)のとき、電力系統への逆潮流が発生している状態であることを表す。
【0038】
また、SOCは、充電率下限値V2から充電率上限値V1の間で推移する。BESS30は、SOCが充電率上限値V1まで上がると充電を停止し、充電率下限値V2まで下がると放電を停止する。充電率上限値V1は100%、充電率下限値V2は0%であってもよいし、それぞれマージンをとった値(例えば、充電率上限値V1=95%、充電率下限値V2=5%)としてもよい。
【0039】
制御部113は、計測した受電点電力PSに基づいて、逆潮流(PS<0の状態)の可能性があるか判断する。具体的には、制御部113は、受電点電力PSが第1閾値E未満であるか判断する(ステップS2)。第1閾値Eは、逆潮流(PS<0)を未然に抑制できるように、0よりも所定マージンXだけ大きい値(0+XkW)が予め設定される。
【0040】
受電点電力PSが第1閾値E未満である場合(ステップS2;YES)、制御部113は、さらにSOCが制御開始閾値V3未満であるか判断する(ステップS3)。制御開始閾値V3は、PV余剰電力の逆潮流を抑制するため、BESS30によるPV余剰電力の消費(充電)が可能であるか、PV20の出力制御(出力抑制)が必要であるかを判断するための閾値であり、充電率上限値V1よりも低い値(例えば、90%)が設定される。
【0041】
SOCが制御開始閾値V3未満である場合(ステップS4;YES)、制御部113はモードNo.1の処理を実施する(ステップS4)。モードNo.1は、PV余剰電力をBESS30の充電に使用して逆潮流を抑制しつつ、PV20の出力制御を行わない(PV出力電力に制限をかけない)モードである。モードNo.1の詳細については後述する。
【0042】
また、SOCが制御開始閾値V3以上となった場合(ステップS3;NO)、制御部113は、さらにSOCが充電率上限値V1未満であるか判断する(ステップS5)。
【0043】
SOCが充電率上限値V1未満である場合(ステップS5;YES)、制御部113はモードNo.2の処理を実施する(ステップS6)。モードNo.2は、BESS30に充電する電力を漸減させつつ、PV20の出力制御を開始するモードである。モードNo.2の詳細については後述する。
【0044】
一方、SOCが満充電(SOC=充電率上限値V1)となった場合(ステップS5;NO)、制御部113はモードNo.3の処理を実施する(ステップS7)。モードNo.3の処理は、BESS30が満充電となるとPV余剰電力の充電が停止されるため、PV20の出力制御のみを行うモードである。モードNo.3の詳細については後述する。
【0045】
また、ステップS2に戻り、受電点電力PSが第1閾値E以上の場合(ステップS2;NO)、制御部113は、受電点電力PSが第2閾値Fを超えているか判断する(ステップS8)。第2閾値Fは、逆潮流のリスクを排除できる程度に受電点電力が大きいかを判定するための閾値であり、第1閾値E(XkW)よりも所定マージンYだけ大きい値(X+YkW)が予め設定される。
【0046】
受電点電力が第2閾値Fを超えていない場合(ステップS8;NO)、制御部113は現状のモードのまま処理を継続する(ステップS9)。
【0047】
一方、受電点電力が第2閾値F以上である場合(ステップS8;YES)、制御部113は、さらにPV出力上限値がPV20の定格出力電力未満であるか判断する(ステップS10)。
【0048】
PV出力上限値がPV20の定格出力電力未満である、すなわち、PV20の出力が抑制されている場合(ステップS10;YES)、制御部113はモードNo.4の処理を実施する(ステップS11)。モードNo.4は、逆潮流のリスクがなくなったため、PV20の利用率を向上させるモードである。モードNo.4の詳細については後述する。
【0049】
また、PV出力上限値がPV20の定格出力電力である場合(ステップS10;NO)、制御部113は、SOCが充電率下限値V2を超えているか判断する(ステップS12)。
【0050】
SOCが充電率下限値V2を超えている場合(ステップS12;YES)、制御部113はモードNo.5の処理を実施する(ステップS13)。モードNo.5は、PV発電電力が低下した分、BESS30から負荷40へ電力供給(放電)を行うモードである。モードNo.5の詳細については後述する。
【0051】
SOCが充電率下限値V2以下である場合(ステップS12;NO)、制御部113はモードNo.6の処理を実施する(ステップS14)。モードNo.6は、BESS30から負荷40への電力供給(放電)を停止するモードである。モードNo.6の詳細については後述する。
【0052】
(各モードの詳細について)
以下、上記したモードNo.1~No.6の詳細について説明する。
【0053】
(1)モードNo.1
モードNo.1は、逆潮流の可能性があり、BESS30にPV余剰電力を充電して受電点電力PSを増加させる一方で、PV20の出力制御を行わないモードである。
【0054】
例えば、
図4に示すように、日中にPV発電電力が増加し、連動して受電点電力PS(買電)が徐々に減少したとする。時刻t1において、受電点電力が第1閾値E未満となり(ステップS2;YES)、このときのSOCは制御開始閾値V3未満である(ステップS3;YES)。この場合、制御部113は、モードNo.1の処理を実施する(ステップS4)。具体的には、制御部113の充放電制御部1131は、BESS30の充放電電力を指定するBESS電力指令値new[kW]を、以下の式(1)により算出してBESS30に送信する。
【0055】
BESS電力指令値new=BESS電力指令値old-β・・・(1)
【0056】
BESS電力指令値old[kW]は前回の指令値である。β[kW]は予め設定した値である。BESS電力指令値が負の値の場合は充電指令値、正の値の場合は放電指令値となる。なお、BESS電力指令値が0の場合は、充放電を行わない。つまり、充放電制御部1131は、上式(1)により、BESS30へ充電する電力を大きくするBESS電力指令値を算出する。このとき、充放電制御部1131は、後述するリミッタ(
図5)により、充電指令値がBESS30の定格入力電力を超えないように、BESS電力指令値を調整する。
【0057】
BESS30(PCSコントローラ33およびPCS32)は、制御装置10から受信したBESS電力指令値newに応じた電力が蓄電池31に充電されるように制御する。
【0058】
また、出力制御部1132は、このとき、PV出力制御を行わない。すなわち、PV出力上限値は初期値のままである。初期値は、例えばPV20の定格出力電力である。
【0059】
このようにすることで、モードNo.1では、BESS30へ供給する電力を増やすことにより、PV20の利用率を最大としつつ、逆潮流を抑制することができる。
【0060】
なお、例えば、
図4に示すように、時刻t2において再び受電点電力PSが第1閾値E未満となり、このときのSOCは制御開始閾値V3未満であったとする(ステップS2;YES、ステップS3;YES)。この場合、制御部113は、再度、モードNo.1の処理を実施する(ステップS4)。すなわち、充放電制御部1131は、上式(1)により、BESS電力指令値をさらにβkW減少(充電指令値をβkW増加)させる。このようにすることで、
図4のように、日中などPV20の発電電力が徐々に増加していく期間においては、BESS30のSOCに余裕がある限り段階的に充電指令値を増加させることにより、PV余剰電力をBESS30への充電で消費して、逆潮流を抑制することができる。
【0061】
(2)モードNo.2
モードNo.2は、BESS30が充電率上限値V1に近づいたため、充電する電力を漸減させ、その分、必要に応じてPV20の出力上限値を下げるモードである。
【0062】
例えば、
図4の時刻t1以降、上記したモードNo.1を実行したことによって一時的に受電点電力PSが増加したものの、PV発電電力がさらに増加(受電点電力PSが減少)したとする。
図4の例では、時刻t3において、受電点電力PSが第1閾値E未満(ステップS2;YES)、SOCは制御開始閾値V3以上(ステップS3;NO)且つ充電率上限値V1未満(ステップS5;YES)となる。この場合、制御部113は、モードNo.2の処理を実施する(ステップS6)。具体的には、制御部113の充放電制御部1131および出力制御部1132は、それぞれ以下に説明する処理を行う。
【0063】
まず、充放電制御部1131は、BESS30の充放電電力を指定するBESS電力指令値new[kW]を、以下の式(2)により算出してBESS30に送信する。
【0064】
BESS電力指令値new=BESS電力指令値old・・・(2)
【0065】
式(2)によれば、充放電制御部1131は、BESS電力指令値を現状維持とする。ただし、充放電制御部1131は、算出したBESS電力指令値newおよびSOCをリミッタ(
図5)に入力して、SOCの増加に比例して充電指令値が減少するようにBESS電力指令値newを調整する。
【0066】
図5は、一実施形態に係るリミッタの機能を説明するための図である。
図5に示すように、リミッタは、SOCが大きいほど充電指令値[kW]を小さくする制限をかけるものである。リミッタは、SOCが制御開始閾値V3未満の場合は、充電指令値の上限値(以下、充電制限値とも記載する。)をBESSの定格入力電力とする。また、リミッタは、SOCが制御開始閾値V3から充電率上限値V1までの範囲では、充電率上限値V1のときに充電制限値が0[kW]となるように、充電制限値を漸減させる。
【0067】
例えば、BESS電力指令値newが-10kWであったとする。リミッタは、SOCに対応する充電制限値が-10kWである場合、充電指令値≦充電制限値となるので、BESS電力指令値new(-10kW)をそのまま出力する。一方、SOCに対応する充電制限値が-8kWである場合、充電指令値>充電制限値となるので、リミッタは充電制限値に書き換えたBESS電力指令値new(-8kW)を出力する。
【0068】
モードNo.2では、充放電制御部1131は、SOCを逐次監視して、上記リミッタを用いてBESS電力指令値を更新する。これにより、SOCが制御開始閾値V3以上、充電率上限値V1未満の期間では、SOCの増加に比例してBESS30に充電される電力が徐々に減少する。
【0069】
また、BESS30の充電電力が徐々に減少するので、受電点電力PSも緩やかにではあるが減少していく。その分、出力制御部1132は、PV出力制御を行って逆潮流を抑制する。
【0070】
PV出力制御は、受電点電力PSが第1閾値E未満となった場合にPV出力上限値を減少させ、受電点電力PSが第2閾値Fを超えた場合にPV出力上限値を増加させる制御である。なお、他の実施形態では、第1閾値Eおよび第2閾値Fに代えて、PV出力制御用の異なる値の閾値を設定してもよい。
【0071】
モードNo.2では、出力制御部1132は、時刻t3において受電点電力PSが第1閾値E未満となったため、PV出力上限値を下げる。これにより、PV発電電力が減少し、受電点電力PSは増加する。
【0072】
(3)モードNo.3
モードNo.3の処理は、BESS30が満充電で充電ができず、PV20の出力制御で逆潮流を抑制するモードである。
【0073】
例えば、
図4の時刻t4において、BESS30のSOCが充電率上限値V1に到達する(ステップS5;NO)。この場合、制御部113はモードNo.3の処理を実施する(ステップS7)。
【0074】
具体的には、制御部113の充放電制御部1131は、BESS電力指令値newを「0」にする。
【0075】
また、制御部113の出力制御部1132は、モードNo.2と同様にPV20の出力制御を行う。すなわち、出力制御部1132は、PV出力上限値をさらに減少させる。
【0076】
(4)モードNo.4
モードNo.4の処理は、受電点電力PSが増加して逆潮流のリスクがなくなったため、PV20の利用率を向上させるモードである。
【0077】
図6は、一実施形態に係る受電点電力およびSOCの第2の例を示す図である。
例えば、
図6に示すように、PV20の発電電力の低下や、負荷40の消費電力の増加などにより、受電点電力PS(買電)が徐々に増加したとする。時刻t5において、受電点電力が第2閾値Fを超え(ステップS8;YES)、PV出力上限値は定格出力電力未満である(ステップS10;YES)。この場合、制御部113は、モードNo.4の処理を実施する(ステップS11)。具体的には、制御部113の出力制御部1132は、PV出力上限値を増加して、PV20の出力制御を解除する。このとき、出力制御部1132は、受電点電力PSが第2閾値Fを上回る度に、PV出力上限値をαkWずつ段階的に増加して、PV出力制御を緩和してもよい。これにより、逆潮流を抑制しながら、PV20の発電電力の利用率を向上させることができる。
【0078】
また、モードNo.4において、制御部113の充放電制御部1131は、BESS電力指令値を0(充放電なし)のままとする。
【0079】
(5)モードNo.5
モードNo.5は、PV発電電力が低下したときに、BESS30から負荷40へ電力供給(放電)を行うモードである。
【0080】
例えば、
図6の時刻t6において、受電点電力が第2閾値Fを超え(ステップS8;YES)、PV出力上限値は既に定格出力電力に達している(ステップS10;NO)。また、さらにSOCが充電率下限値V2よりも大きい場合に、制御部113は、モードNo.5の処理を実施する(ステップS13)。具体的には、制御部113の充放電制御部1131は、BESS電力指令値new[kW]を、以下の式(3)により算出してBESS30に送信する。
【0081】
BESS電力指令値new=BESS電力指令値old+β・・・(3)
【0082】
上記したように、BESS電力指令値が正の値の場合、放電指令値となる。BESS30(PCSコントローラ33およびPCS32)は、制御装置10から受信したBESS電力指令値newに応じた電力が蓄電池31から放電(負荷40に供給)されるように制御する。
【0083】
なお、例えば、
図6に示すように、時刻t7において再び受電点電力PSが第2閾値Fを超え、このときのSOCは充電率下限値V2よりも大きいとする(ステップS8;YES、ステップS10;YES)。この場合、制御部113は、再度、モードNo.5の処理を実施する(ステップS13)。すなわち、充放電制御部1131は、上式(3)により、BESS電力指令値ををさらにβkW増加(放電指令値をβkW増加)させる。このようにすることで、
図6のように、負荷40の消費電力がさらに増えた場合などは、BESS30のSOCに余裕がある限り段階的に放電指令値を増加させることにより、買電量を低減することができる。
【0084】
(6)モードNo.6
モードNo.6は、BESS30が放電しきったため、BESS30から負荷40への電力供給(放電)を停止するモードである。
【0085】
例えば、
図6の時刻t8において、BESSのSOCが充電率下限値V2に到達する(ステップS12;NO)。そうすると、制御部113はモードNo.6の処理を実施する。
【0086】
具体的には、制御部113の充放電制御部1131は、BESS電力指令値newを「0」にする。これにより、BESS30の放電は停止される。
【0087】
(制御装置の作用について)
図7は、一実施形態に係る逆潮流抑制処理の作用を説明するための第1の図である。
図8は、一実施形態に係る逆潮流抑制処理の作用を説明するための第2の図である。
図7及び
図8を参照しながら、本実施形態の制御装置10が実施する逆潮流抑制処理の作用について説明する。
図7は従来技術の逆潮流抑制処理による受電点電力PS[kW]、BESS電力PB[kW]、PV出力上限値UL[kW]、およびSOC[%]の変化を表したものである。
図8は本実施形態の逆潮流抑制処理による受電点電力PS[kW]、BESS電力PB[kW]、PV出力上限値UL[kW]、およびSOC[%]の変化を表したものである。BESS電力PBは、BESS電力指令値に基づいて、BESS30に入出力される電力であり、正の値は放電電力、負の値は充電電力を表す。
【0088】
まず、従来技術における逆潮流抑制処理の例について説明する。従来技術では、
図7の時刻t11において受電点電力PSが第1閾値E未満になると、充電指令値を送信して、PV余剰電力をBESSへ充電する。そうすると、充電指令値に応じたBESS電力PBがBESSに供給(充電)される。また、その後、受電点電力PSが第1閾値Eを下回る度に充電指令値を段階的に増加する。また、BESSが満充電になるまではPVの出力制御は行われず、PV出力上限値ULは変更されない。
【0089】
また、
図7の時刻t12においてBESSが満充電となると、BESSへのPV余剰電力の供給が停止し、直前までBESSに供給されていたBESS電力PB(PB_s1)は0まで急速に減少する。そうすると、BESSへ供給されていたPB_s1分の電力が余剰となり、その分、受電点電力PSが急速に減少することとなる。
【0090】
また、
図7に示すように、従来技術では、BESSが満充電となるまでは、BESSの充電により受電点電力PSを増加させることができたので、PV出力制御は行われないままである。その後、時刻t12においてBESSが満充電となり、受電点電力PSが第1閾値E未満に低下したことを検出すると、PV出力上限値ULを下げる処理を行う。しかしながら、受電点電力PSが第1閾値Eまで下がってから、PV出力制御(PV出力上限値ULを下げる)を実行するまでには、
図7に示すようなタイムラグが発生する。従来技術では、このようなタイムラグがあることによって、受電点電力PSの急峻に変化にPV出力制御を間に合わせることができず、
図7の例のように逆潮流の発生を抑制できない可能性があった。
【0091】
次に、本実施形態に係る逆潮流抑制処理の例について
図8を参照しながら説明する。まず、モードNo.1~No.3の作用について説明する。
【0092】
図8の時刻t22において、受電点電力PSが第1閾値E未満、且つSOCが制御開始閾値V3未満となると、制御部113はモードNo.1の処理を実施する。すなわち、制御部113の充放電制御部1131は、BESS電力指令値をβkW減少(充電指令値をβkW増加)させてBESS30に送信する。これにより、BESS30には充電指令値に応じたBESS電力PBが時々刻々と供給される。また、その後、制御部113は、受電点電力PSが第1閾値Eを下回る度に、充電指令値を段階的に増加する。
【0093】
また、
図8の時刻t23において、SOCが制御開始閾値V3以上となると、制御部113はモードNo.2の処理を実施する。すなわち、制御部113の充放電制御部1131は、リミッタ(
図5)を使い、SOCの増加と比例させて充電指令値を減少させる。つまり、SOCが充電率上限値V1に近づくほどBESS電力PBが徐々に小さくなるので、SOCが充電率上限値V1に到達する直前のタイミングでは、BESS電力PB_s2は、従来技術のBESS電力PB_s1(
図7)と比較し、ごく小さい値となっている。したがって、
図8の時刻t25においてBESS30が満充電となり、BESS30への電力の供給が停止したとき、受電点電力PSのインパクト(減少量)も小さなものとなる。したがって、従来技術とは異なり、BESS電力PBが0になったときに、受電点電力PSが急減して逆潮流が発生することを抑制することができる。
【0094】
さらに、従来技術では、上記したように、BESSが満充電となった後、さらに受電点電力PSが第1閾値Eを下回ってからPV出力制御を行っていたため、PV出力制御が間に合わずに逆潮流が発生してしまう可能性があった。これに対し、本実施形態に係る制御部113は、モードNo.2の処理において、BESS30へのPV余剰電力の充電と並行してPV出力制御を開始する。すなわち、BESS30が満充電となる前(
図8の例では、時刻t24において受電点電力PSが第1閾値Eを下回ったことを検出したタイミング)に、PV出力上限値ULを下げる処理を実施する。これにより、制御部113は、タイムラグなどに影響されることなく、より確実に逆潮流を抑制することができる。
【0095】
また、
図8の時刻t25においてBESS30が満充電となったあとは、制御部113はモードNo.3の処理を実施する。このとき、制御部113の出力制御部1132)は、受電点電力PSが第1閾値E未満となることがあれば、PV出力上限値ULを段階的に低減させる。
【0096】
次に、モードNo.4~No.6の作用について説明する。
図8の時刻t26において、受電点電力PSが第2閾値Fを超えると、制御部113はモードNo.4の処理を実施する。このとき、制御部113の出力制御部1132は、逆潮流のリスクがないことから、PV出力上限値ULを増加させて、PV出力制御を緩和(または解除)する。これにより、制御部113は、逆潮流のリスクがない期間においては、PV20の利用率を向上させることができる。
【0097】
また、
図8の時刻t21までの期間では、受電点電力PSが第2閾値Fを超えており、SOCが充電率下限値V2より大きいので、制御部113はモードNo.5の処理を実施する。すなわち、制御部113の充放電制御部1131は、BESS電力指令値をβkW増加(放電指令値をβkW増加)させてBESS30に送信する。これにより、BESS30から放電指令値に応じたBESS電力PBが時々刻々と放電され、負荷40に供給されるので、買電量を低減することができる。つまり、BESS30に貯蔵したPV余剰電力を有効利用することができる。また、その後、制御部113は、受電点電力PSが第2閾値Fを下回る度に、放電指令値を段階的に増加させてもよい。
【0098】
その後、
図8の時刻t21において、SOCが充電率下限値V2に到達する。そうすると、制御部113はモードNo.6の処理を実施する。ここでは、制御部113の充放電制御部1131は、BESS電力指令値を0にする。これにより、BESS30からの放電が停止し、過放電を抑制することができる。
【0099】
(効果)
以上のように、本実施形態に係る発電システム1の制御装置10は、PV20およびBESS30が接続される電力線L1と、電力系統との受電点において受け渡しされる受電点電力PSを計測する電力計測部111と、BESS30のSOCを取得する充電率取得部112と、受電点電力PSおよびSOCに基づいてBESSの充放電を制御する充放電制御部1131と、を備える。充放電制御部1131は、受電点電力PSが第1閾値E未満となった場合に、SOCが制御開始閾値V3未満のとき、BESS30への充電電力を増加させ、SOCが制御開始閾値V3以上のとき、充電電力をSOCに応じた充電制限値以下に制限する。
【0100】
このようにすることで、制御装置10は、SOCに十分な余裕がある場合にはPV余剰電力をBESS30に充電して、逆潮流の発生およびPV20の利用率の低下を抑制することができる。また、制御装置10は、SOCが充電率上限値V1に近づいた場合には、充電電力を漸減させることにより、BESS30が満充電となり充電が停止したときに受電点電力PSが急激に変化(減少)して逆潮流が発生することを抑制することができる。
【0101】
また、制御装置10は、SOCおよび受電点電力PSに基づいてPV20の出力を制御する出力制御部1132をさらに備える。
【0102】
このようにすることで、制御装置10は、BESS30へPV余剰電力を充電しても、なお受電点電力PSが減少する場合には、PV出力制御を行って、逆潮流の発生を抑制することができる。
【0103】
また、出力制御部1132は、SOCが制御開始閾値V3以上であり、受電点電力PSが第1閾値E未満の場合に、PV出力上限値ULを減少させる。
【0104】
このようにすることで、制御装置10は、BESS30が満充電となる前にPV20の出力を低下させることができるので、より確実に逆潮流の発生を抑制することができる。また、制御装置10は、SOCが制御開始閾値V3未満(モードNo.1)のときはPV出力制御を行わないので、BESS30に十分に充電可能である期間は、PV20の利用率を最大化することができる。
【0105】
また、出力制御部1132は、受電点電力PSが第2閾値Fを超える場合に、PV出力上限値を増加させる。
【0106】
このようにすることで、制御装置10は、例えば負荷40の消費電力の増加などにより受電点電力PSが増加した場合には、PV出力制御を解除(緩和)することができる。これにより、制御装置10は、PV20の利用率を向上させることができる。
【0107】
また、充放電制御部1131は、受電点電力PSが第2閾値Fを超え、且つ、PV出力上限値がPV20の定格出力電力に達した場合に、BESS30からの放電電力を増加させる。
【0108】
このようにすることで、制御装置10は、例えば負荷40の消費電力の増加や、PV20の発電電力の低下などにより受電点電力PSが増加した場合には、BESS30から放電を行うことにより、買電量を低減させることができる。これにより、制御装置10は、BESS30に貯蔵されたPV余剰電力を有効利用することができる。
【0109】
また、充放電制御部1131は、SOCが充電率下限値V2に達した場合に、BESS30からの放電を停止する。
【0110】
このようにすることで、制御装置10は、BESS30の過放電を抑制し、BESS30が劣化することを抑制することができる。
【0111】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0112】
<付記>
上述の実施形態に記載の発電システムの制御装置、発電システムの制御方法、およびプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0113】
(1)本開示の第1の態様によれば、制御装置10は、発電装置20および蓄電装置30を備える発電システム1の制御装置10であって、発電装置20および蓄電装置30が接続される電力線L1と、電力系統との受電点において受け渡しされる受電点電力を計測する電力計測部111と、蓄電装置30の充電率を取得する充電率取得部112と、受電点電力および充電率に基づいて蓄電装置30の充放電を制御する充放電制御部1131と、を備え、充放電制御部1131は、受電点電力が所定の第1閾値E未満となった場合に、充電率が、蓄電装置30の充電率上限値V1よりも低い充電率を示す制御開始閾値V3未満のとき、蓄電装置30への充電電力を増加させ、充電率が制御開始閾値V3以上のとき、充電電力を充電率に応じた充電制限値以下に制限する。
【0114】
このようにすることで、制御装置10は、SOCに十分な余裕がある場合にはPV余剰電力をBESS30に充電して、逆潮流の発生およびPV20の利用率の低下を抑制することができる。また、制御装置10は、SOCが充電率上限値V1に近づいた場合には、充電電力を漸減させることにより、BESS30が満充電となり充電が停止したときに受電点電力PSが急激に変化(減少)して逆潮流が発生することを抑制することができる。
【0115】
(2)本開示の第2の態様によれば、第1の態様に係る制御装置10は、充電率および受電点電力に基づいて発電装置20の出力を制御する出力制御部1132をさらに備える。
【0116】
このようにすることで、制御装置10は、BESS30へPV余剰電力を充電しても、なお受電点電力PSが減少する場合には、PV出力制御を行って、逆潮流の発生を抑制することができる。
【0117】
(3)本開示の第3の態様によれば、第2の態様に係る制御装置10において、出力制御部1132は、充電率が制御開始閾値V3以上であり、受電点電力が第1閾値E未満の場合に、発電装置20の出力上限値を減少させる。
【0118】
このようにすることで、制御装置10は、BESS30が満充電となる前にPV20の出力を低下させることができるので、より確実に逆潮流の発生を抑制することができる。また、制御装置10は、SOCが制御開始閾値V3未満のときはPV出力制御を行わないので、BESS30に十分に充電可能である期間は、PV20の利用率を最大化することができる。
【0119】
(4)本開示の第4の態様によれば、第2または第3の態様に係る制御装置10において、出力制御部1132は、受電点電力が所定の第2閾値Fを超える場合に、発電装置20の出力上限値を増加させる。
【0120】
このようにすることで、制御装置10は、例えば負荷40の消費電力の増加などにより受電点電力PSが増加した場合には、PV出力制御を解除(緩和)することができる。これにより、制御装置10は、PV20の利用率を向上させることができる。
【0121】
(5)本開示の第5の態様によれば、第3または第4の態様に係る制御装置10において、充放電制御部1131は、受電点電力が所定の第2閾値Fを超え、且つ、出力上限値が発電装置20の定格出力電力に達した場合に、蓄電装置30からの放電電力を増加させる。
【0122】
このようにすることで、制御装置10は、例えば負荷40の消費電力の増加や、PV20の発電電力の低下などにより受電点電力PSが増加した場合には、BESS30から放電を行うことにより、買電量を低減させることができる。これにより、制御装置10は、BESS30に貯蔵されたPV余剰電力を有効利用することができる。
【0123】
(6)本開示の第6の態様によれば、第5の態様に係る制御装置10において、充放電制御部1131は、充電率が充電率下限値V2に達した場合に、蓄電装置30からの放電を停止する。
【0124】
このようにすることで、制御装置10は、BESS30の過放電を抑制し、BESS30が劣化することを抑制することができる。
【0125】
(7)本開示の第7の態様によれば、制御方法は、発電装置20および蓄電装置30を備える発電システム1の制御方法であって、発電装置20および蓄電装置30が接続される電力線L1と、電力系統との受電点において受け渡しされる受電点電力を計測するステップと、蓄電装置30の充電率を取得するステップと、受電点電力および充電率に基づいて蓄電装置30の充放電を制御するステップと、を有し、充放電を制御するステップは、受電点電力が所定の第1閾値E未満となった場合に、充電率が、蓄電装置30の充電率上限値V1よりも低い充電率を示す制御開始閾値V3未満のとき、蓄電装置30への充電電力を増加させ、充電率が制御開始閾値V3以上のとき、充電電力を充電率に応じた充電制限値以下に制限する。
【0126】
(8)本開示の第8の態様によれば、プログラムは、発電装置20および蓄電装置30を備える発電システム1の制御装置10に、発電装置20および蓄電装置30が接続される電力線L1と、電力系統との受電点において受け渡しされる受電点電力を計測するステップと、蓄電装置30の充電率を取得するステップと、受電点電力および充電率に基づいて蓄電装置30の充放電を制御するステップと、を実行させるプログラムであって、充放電を制御するステップは、受電点電力が所定の第1閾値E未満となった場合に、充電率が、蓄電装置30の充電率上限値V1よりも低い充電率を示す制御開始閾値V3未満のとき、蓄電装置30への充電電力を増加させ、充電率が制御開始閾値V3以上のとき、充電電力を充電率に応じた充電制限値以下に制限する。
【符号の説明】
【0127】
1 発電システム
2 電力計
10 制御装置
11 プロセッサ
110 指示取得部
111 電力計測部
112 充電率取得部
113 制御部
1131 充放電制御部
1132 出力制御部
12 メモリ
13 ストレージ
14 通信インタフェース
20 PV(発電装置)
23 PCSコントローラ
30 BESS(蓄電装置)
31 蓄電池
33 PCSコントローラ
40 負荷