(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021720
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】クランクケース換気システム
(51)【国際特許分類】
F01M 13/02 20060101AFI20240208BHJP
F02D 19/02 20060101ALI20240208BHJP
F01M 13/00 20060101ALI20240208BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F01M13/02
F02D19/02 B
F01M13/00 B
F02M21/02 G
F02M21/02 Z
F01M13/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124759
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】紺野 大統
(72)【発明者】
【氏名】笹俣 優一
(72)【発明者】
【氏名】川口 元頌
(72)【発明者】
【氏名】野口 知宏
(72)【発明者】
【氏名】四辻 修道
(72)【発明者】
【氏名】田中 健吾
【テーマコード(参考)】
3G015
3G092
【Fターム(参考)】
3G015AA13
3G015BD10
3G015BD24
3G015CA06
3G015DA04
3G015FB01
3G092AA18
3G092AB09
3G092DE20S
3G092FA50
3G092HB05Z
(57)【要約】
【課題】濃度センサを用いずに、必要最小限の構成によってクランクケース内を適切に換気することができるクランクケース換気システムを提供する。
【解決手段】クランクケース換気システム1は、エンジン2、換気装置3及び制御装置7を備える。エンジン2は、クランクケース21と、クランクケース21内に配置されたピストン22とを有しており、燃料Fとしての炭化水素及び水素を混焼させるよう構成されている。換気装置3は、クランクケース21内に供給する外気Bによって、クランクケース21内を換気するよう構成されている。制御装置7は、エンジン2における、燃料F中の水素の混焼率に基づいて、クランクケース21内の可燃性ガスの濃度を推定する濃度推定部72と、濃度推定部72による可燃性ガスの濃度に応じて、換気装置3の動作を制御する制御部73とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクケース、及び前記クランクケース内に配置されたピストンを有し、燃料としての炭化水素及び水素を混焼させるよう構成されたエンジンと、
前記クランクケース内に供給する外気によって、前記クランクケース内を換気する換気装置と、
前記エンジンにおける、前記燃料中の水素の混焼率に基づいて、前記クランクケース内の可燃性ガスの濃度を推定する濃度推定部、及び前記濃度推定部による前記可燃性ガスの濃度に応じて、前記換気装置の動作を制御する制御部を有する制御装置と、を備えるクランクケース換気システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記濃度推定部による前記可燃性ガスの濃度が、所定の余裕度を加味した前記可燃性ガスの着火下限余裕濃度を超えたときに、前記換気装置を動作させるよう構成されている、請求項1に記載のクランクケース換気システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記濃度推定部による前記可燃性ガスの濃度が、所定の余裕度を加味した前記可燃性ガスの着火下限余裕濃度を超えたときに、前記濃度推定部による前記可燃性ガスの濃度が前記着火下限余裕濃度よりも高くなるほど、前記換気装置によって前記クランクケース内を換気する換気量を多くするよう前記換気装置を動作させるよう構成されている、請求項1に記載のクランクケース換気システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記換気装置を動作させるときには、前記クランクケース内の圧力を規定圧力範囲内に維持するよう構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のクランクケース換気システム。
【請求項5】
前記換気装置は、前記クランクケース内に外気を供給するための外気入口に接続された第1ブロワと、前記クランクケース内の、ブローバイガスを含む外気を排出するための外気出口に接続された第2ブロワとによって構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のクランクケース換気システム。
【請求項6】
前記クランクケース内の、ブローバイガスを含む外気は、前記エンジンに前記燃料と燃焼用空気との混合気を供給するための供給配管に合流する合流配管に排出される、請求項1~3のいずれか1項に記載のクランクケース換気システム。
【請求項7】
前記クランクケース内の、ブローバイガスを含む外気は、大気に放散される、請求項1~3のいずれか1項に記載のクランクケース換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクケース換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのクランクケースには、ピストン、コネクティングロッド、クランクシャフト等が収容される。クランクケース内は、燃料と空気との混合気の燃焼が行われる燃焼室と、ピストンを介して隔てられているものの、未燃燃料が含まれるブローバイガスが燃焼室からクランクケース内に漏れ出すことが知られている。特に、ガソリン、天然ガス等に比べて可燃範囲が広い水素が燃料に含まれる場合には、ブローバイガスにおける水素が着火するおそれがあり、このブローバイガスを換気することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1の4ストロークエンジンにおいては、クランクケースに設けられた換気流路に、水素を含むブローバイガスをクランクケースの内部から外部へ強制的に排出する換気ファンを配置することが記載されている。そして、換気ファンによって、クランクケース内の水素を含むブローバイガスを換気することにより、クランクケース内において水素が着火することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の4ストロークエンジンにおいては、濃度センサを用いてクランクケースの内部における水素の濃度を計測し、水素の濃度が所定の閾値以上である場合に換気ファンを駆動する。つまり、水素の濃度を計測するために濃度センサが常に必要となる。そのため、濃度センサを用いずに、クランクケース内の水素を含むブローバイガスを換気するためには、更なる工夫が必要とされる。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、濃度センサを用いずに、必要最小限の構成によってクランクケース内を適切に換気することができるクランクケース換気システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
クランクケース、及び前記クランクケース内に配置されたピストンを有し、燃料としての炭化水素及び水素を混焼させるよう構成されたエンジンと、
前記クランクケース内に供給する外気によって、前記クランクケース内を換気する換気装置と、
前記エンジンにおける、前記燃料中の水素の混焼率に基づいて、前記クランクケース内の可燃性ガスの濃度を推定する濃度推定部、及び前記濃度推定部による前記可燃性ガスの濃度に応じて、前記換気装置の動作を制御する制御部を有する制御装置と、を備えるクランクケース換気システムにある。
【発明の効果】
【0008】
前記一態様のクランクケース換気システムは、炭化水素及び水素を混焼させるよう構成されたエンジンを使用する場合に、濃度推定部によって、エンジンにおける、燃料中の水素の混焼率に基づいて、クランクケース内の可燃性ガスの濃度を推定する。そして、クランクケース換気システムは、制御部によって、濃度推定部による可燃性ガスの濃度に応じて、換気装置の動作を制御する。エンジンにおける、燃料中の水素の混焼率は、エンジンへの炭化水素及び水素の供給量等に基づいて求められる。燃料としての炭化水素には、都市ガス、ガソリン、プロパン等がある。
【0009】
クランクケース換気システムは、濃度推定部の構成を有することにより、濃度センサを用いずにクランクケース内の可燃性ガスの濃度を検知し、換気が必要であるときに換気装置を動作させることができる。それ故、前記一態様のクランクケース換気システムによれば、濃度センサを用いずに、必要最小限の構成によってクランクケース内を適切に換気することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1にかかる、クランクケース換気システムの構成を示す説明図。
【
図2】実施形態1にかかる、クランクケース換気システムの電気的構成を示す説明図。
【
図3】実施形態1にかかる、燃料中の水素の混焼率と、クランクケース内の可燃性ガスの濃度との関係を示すグラフ。
【
図4】実施形態1にかかる、クランクケース換気システムの制御方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
前述したクランクケース換気システムにかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
<実施形態1>
本形態のクランクケース換気システム1は、
図1及び
図2に示すように、エンジン2、換気装置3及び制御装置7を備える。エンジン2は、クランクケース21と、クランクケース21内に配置されたピストン22とを有しており、燃料Fとしての炭化水素及び水素を混焼させるよう構成されている。換気装置3は、クランクケース21内に供給する外気Bによって、クランクケース21内を換気するよう構成されている。制御装置7は、エンジン2における、燃料F中の水素の混焼率に基づいて、クランクケース21内の可燃性ガスの濃度を推定する濃度推定部72と、濃度推定部72による可燃性ガスの濃度に応じて、換気装置3の動作を制御する制御部73とを有する。
【0012】
以下に、本形態のクランクケース換気システム1について詳説する。
クランクケース換気システム1は、エンジン2の周辺に換気装置3を取り付け、エンジン2から燃料F中の水素の混焼率の情報を受信して、換気装置3の動作を制御するものである。
【0013】
(エンジン2)
図1に示すように、本形態のエンジン2は、炭化水素としての都市ガス(天然ガス)と、水素(水素ガス)とを混焼させるよう構成されている。エンジン2は、燃焼室25が形成された複数の気筒を有するものである。エンジン2は、シリンダ210内を複動する複数のピストン22と、各ピストン22にそれぞれ回動可能に連結された複数のコネクティングロッド23と、複数のコネクティングロッド23が回動可能に連結され、複数のピストン22の往復運動による動力を回転力として出力するクランクシャフト24と、クランクケース21とを有する。
【0014】
クランクケース21は、複数のピストン22、複数のコネクティングロッド23及びクランクシャフト24を収容する。クランクケース21には、ピストン22が摺動するシリンダ210が繋がっている。クランクケース21には、クランクケース21内に外気Bを供給するための外気入口211と、クランクケース21内の外気Bを排出するための外気出口212とが形成されている。
【0015】
本形態のエンジン2には、過給機4が接続されている。過給機4は、エンジン2の各気筒の燃焼室25から排気される排気ガスGのエネルギーを利用し、エンジン2に供給される燃料Fと燃焼用空気Aとの混合気Mを圧縮するものである。各気筒の燃焼室25から排気ガスGを排気する排気管(排気マニホールド)62は、過給機4のタービン41に接続されており、各気筒の燃焼室25へ混合気Mを供給する吸気管(吸気マニホールド)61は、過給機4のコンプレッサ42に接続されている。吸気管61には、スロットルバルブ611が配置されている。
【0016】
過給機4のコンプレッサ42には、供給配管51を経由して、燃料Fとしての炭化水素及び水素の混合燃料と、燃焼用空気Aとの混合気Mが供給される。炭化水素と水素との混合、及び混合燃料と燃焼用空気Aとの混合は、供給配管51の上流側において行われる。
【0017】
(換気装置3)
図1に示すように、本形態の換気装置3は、クランクケース21の外気入口211に接続された第1ブロワ31と、クランクケース21の外気出口212に接続された第2ブロワ32とによって構成されている。第1ブロワ31及び第2ブロワ32は、制御装置7からの指令を受けて、送風及び送風の停止の動作を行うよう構成されている。第1ブロワ31及び第2ブロワ32は、クランクケース21内を外気Bによって換気するために同時に動作するよう構成されている。
【0018】
第1ブロワ31は、外気Bとしての大気をクランクケース21内に導入するよう構成されている。第2ブロワ32は、クランクケース21内から、ブローバイガスを含む外気Bを導出するよう構成されている。ブローバイガスには可燃性ガスが含まれる。第2ブロワ32の吐出口には、混合気Mの供給配管51に合流する合流配管52が接続されている。第1ブロワ31及び第2ブロワ32が動作するときには、クランクケース21内のブローバイガスを含む外気Bは、合流配管52に排出され、合流配管52から、供給配管51を流れる混合気Mに混合される。そして、ブローバイガスを含む外気Bは、エンジン2における燃焼に利用される。ブローバイガスを含む外気Bが給気系統としての供給配管51に還流されることにより、過給機4の過給能力が補助される。
【0019】
合流配管52には、合流配管52から供給配管51に混合するブローバイガスを含む外気Bの流量を調整するための流量調整弁53が配置されている。流量調整弁53を操作することによって、ブローバイガスを含む外気Bの一部は、合流配管52の外部に排出してもよい。
【0020】
なお、過給機4は用いずに、混合気Mが吸気管61を経由してエンジン2の各気筒の燃焼室25へ供給されるようにしてもよい。この場合には、ブローバイガスを含む外気Bは、供給配管51における混合気Mに混合されて、過給機4を介さずにエンジン2の各気筒の燃焼室25へ供給される。
【0021】
また、クランクケース21内の、ブローバイガスを含む外気Bは、大気に放散してもよい。この場合には、例えば、第2ブロワ32を合流配管52に接続せず、第2ブロワ32の吐出口を大気に開放すればよい。
【0022】
(制御装置7)
図1及び
図2に示すように、クランクケース換気システム1の制御装置7は、エンジン制御装置70から、エンジン2における、燃料F中の水素の混焼率の情報を受信する混焼率受信部71を有する。濃度推定部72は、混焼率受信部71によって受信した燃料F中の水素の混焼率の情報に基づいて、クランクケース21内の可燃性ガスの濃度を推定する。
【0023】
なお、クランクケース換気システム1の制御装置7は、エンジン制御装置70と一体的に構成してもよい。この場合には、混焼率受信部71及び濃度推定部72は一連の動作を行う部位として構成される。
【0024】
エンジン2においては、ピストンリングを介して燃焼室25からクランクケース21内に、可燃性ガスを含むブローバイガスが漏洩することが知られている。特に、水素は、すべてのガスの中で密度が最も小さく、エンジン2においては燃焼室25からクランクケース21内に漏洩しやすい性質を有する。そのため、燃料F中に水素が含まれている場合には、燃料F中に含まれる水素の比率(混焼率)が高くなるほど、クランクケース21内の可燃性ガスの濃度が高くなる。
【0025】
エンジン2における、燃料F中の水素の混焼率は、エンジン2への炭化水素及び水素の供給量等に基づいて求められる。燃料F中の水素の混焼率は、エンジン2に単位時間当たりに供給される炭化水素の熱量(炭化水素の熱量という。)と、エンジン2に単位時間当たりに供給される水素の熱量(水素の熱量という。)との比率に基づいて求められる。燃料F中の水素の混焼率は、炭化水素の熱量と水素の熱量との合計における、水素の熱量とすればよい。燃料Fとしての炭化水素には、都市ガス等の天然ガスの他に、ガソリン、プロパン等がある。また、エンジン2には、燃料Fは燃料ガスとして供給され、水素は水素ガスとして供給される。
【0026】
図3には、燃料F中の水素の混焼率と、クランクケース21内の可燃性ガスの濃度との関係を示す。燃料F中の水素の混焼率が高くなるほど、クランクケース21内の可燃性ガスの濃度が高くなることが示される。クランクケース21内の可燃性ガスの濃度をC[vol%]、燃料F中の水素の混焼率をφ[vol%]、係数をa,b,cとしたとき、これらの関係は、C=a・φ
2+b・φ+cによって表される。濃度推定部72は、燃料F中の水素の混焼率が高くなるほど、クランクケース21内の可燃性ガスの濃度が高くなるように、この可燃性ガスの濃度を推定する。
【0027】
制御部73は、濃度推定部72による可燃性ガスの濃度に応じて、換気装置3としての第1ブロワ31及び第2ブロワ32を動作させるか、動作停止させるかを制御するよう構成されている。制御部73は、種々の条件に基づいて、換気装置3としての第1ブロワ31及び第2ブロワ32の動作の制御を行うことができる。
【0028】
本形態の制御部73は、濃度推定部72による可燃性ガスの濃度が、所定の余裕度を加味した可燃性ガスの着火下限余裕濃度C1を超えたときに、換気装置3としての第1ブロワ31及び第2ブロワ32を動作させるよう構成されている。この構成により、クランクケース21内の可燃性ガスの濃度が、可燃性ガスが着火する濃度になる前に、クランクケース21内を換気することができる。着火下限余裕濃度C1は、可燃性ガスとしての水素が着火可能な着火下限濃度C0よりも所定量低い濃度として設定すればよい。所定の余裕度は、所定量低い濃度として設定される。
【0029】
制御部73は、換気装置3を動作させるときには、クランクケース21内の圧力を規定圧力範囲内に維持するよう構成されている。規定圧力範囲は、クランクケース21内の圧力が大気圧よりも高い所定圧力以上になる範囲として定めればよい。本形態においては、第1ブロワ31の送風量を適切に設定することにより、クランクケース21内の圧力が規定圧力範囲内に維持される。また、第1ブロワ31の送風量(外気Bの流量)を第2ブロワ32の送風量(ブローバイガスを含む外気Bの流量)よりも大きくすることにより、クランクケース21内の圧力を規定圧力範囲内に維持することが容易になる。
【0030】
(制御方法)
クランクケース換気システム1の制御方法について、
図4のフローチャートを参照して説明する。
エンジン2の燃焼運転が行われるときには、クランクケース換気システム1の制御装置7は、エンジン制御装置70から燃料F中の水素の混焼率の情報を受信する(ステップS101)。次いで、クランクケース換気システム1の制御装置7においては、濃度推定部72によって、燃料F中の水素の混焼率に基づいて、クランクケース21内の可燃性ガスの濃度が推定される(ステップS102)。次いで、制御部73によって、濃度推定部72による可燃性ガスの濃度が、所定の余裕度を加味した可燃性ガスの着火下限余裕濃度C1を超えたか否かが判定される(ステップS103)。
【0031】
濃度推定部72による可燃性ガスの濃度が可燃性ガスの着火下限余裕濃度C1以下である場合には、制御部73は、換気装置3を動作させない。次いで、所定時間の経過を待った後(ステップS104)、再びステップS101が実行される。一方、濃度推定部72による可燃性ガスの濃度が可燃性ガスの着火下限余裕濃度C1を超えている場合には、制御部73は、換気装置3を動作させる(ステップS105)。次いで、所定時間の経過を待った後(ステップS104)、再びステップS101が実行される。
【0032】
(作用効果)
本形態のクランクケース換気システム1は、炭化水素及び水素を混焼させるよう構成されたエンジン2を使用する場合に、濃度推定部72によって、エンジン2における、燃料F中の水素の混焼率に基づいて、クランクケース21内の可燃性ガスの濃度を推定する。そして、クランクケース換気システム1は、制御部73によって、濃度推定部72による可燃性ガスの濃度に応じて、換気装置3としての第1ブロワ31及び第2ブロワ32の動作を制御する。
【0033】
クランクケース換気システム1は、濃度推定部72の構成を有することにより、濃度センサを用いずにクランクケース21内の可燃性ガスの濃度を検知し、換気が必要であるときに換気装置3としての第1ブロワ31及び第2ブロワ32を動作させることができる。それ故、本形態のクランクケース換気システム1によれば、濃度センサを用いずに、必要最小限の構成によってクランクケース21内のブローバイガスを適切に換気することができる。
【0034】
<実施形態2>
本形態は、制御装置7の制御部73による換気装置3の動作の仕方が実施形態1と異なるクランクケース換気システム1について示す。
本形態のクランクケース換気システム1の制御装置7の制御部73は、濃度推定部72による可燃性ガスの濃度が、所定の余裕度を加味した可燃性ガスの着火下限余裕濃度C1を超えたか否かを判定するよう構成されている。また、制御部73は、可燃性ガスの濃度が着火下限余裕濃度C1を超えたときには、可燃性ガスの濃度が着火下限余裕濃度C1よりも高くなるほど、換気装置3によってクランクケース21内を換気する換気量を多くするよう換気装置3を動作させるよう構成されている。
【0035】
濃度推定部72によって推定されるクランクケース21内の可燃性ガスの濃度が、着火下限余裕濃度C1よりも高くなればなるほど、可燃性ガスとしての水素が着火可能な着火下限濃度C0に近くなり、可燃性ガスが着火するおそれが高くなる。そのため、本形態においては、可燃性ガスの濃度が着火下限余裕濃度C1を超えたときには、可燃性ガスの濃度が着火下限余裕濃度C1よりも高くなるほど、換気装置3によってクランクケース21内を換気する換気量を多くする。換気装置3による換気量は、換気装置3を構成する第1ブロワ31及び第2ブロワ32による送風量を変化させることによって変化させる。
【0036】
また、換気装置3によってクランクケース21内を換気する換気量は、クランクケース21内の可燃性ガスの濃度が着火下限余裕濃度C1以下であることを維持できる量とする。換気装置3による換気量は、クランクケース21内の可燃性ガスの濃度との関係として求めてもよく、燃料F中における水素の混焼率との関係において求めてもよい。
【0037】
本形態においては、可燃性ガスの濃度が高いほどクランクケース21内の換気量を多くすることにより、濃度センサを用いずに、クランクケース21内のブローバイガスをより適切に換気することができる。
【0038】
制御装置7の混焼率受信部71、濃度推定部72等の構成は、実施形態1と同様である。換気装置3は、実施形態1と同様に第1ブロワ31及び第2ブロワ32によって構成されている。また、その他の構成、作用効果等については、実施形態1の構成、作用効果等と同様である。また、本形態においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の構成要素と同様である。
【0039】
本発明は、各実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。
【符号の説明】
【0040】
1 クランクケース換気システム
2 エンジン
21 クランクケース
211 外気入口
212 外気出口
22 ピストン
3 換気装置
31 第1ブロワ
32 第2ブロワ
4 過給機
41 タービン
42 コンプレッサ
51 供給配管
52 合流配管
7 制御装置
70 エンジン制御装置
71 混焼率受信部
72 濃度推定部
73 制御部
F 燃料
A 燃焼用空気
M 混合気
B 外気