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特開2024-21726欠陥解析装置、欠陥解析方法、プログラムおよび学習装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021726
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】欠陥解析装置、欠陥解析方法、プログラムおよび学習装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/30 20060101AFI20240208BHJP
   G01N 29/48 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
G01N29/30
G01N29/48
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124768
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹本 浩
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047BC03
2G047BC07
2G047BC10
2G047DA03
2G047GG20
2G047GG28
2G047GG33
2G047GH06
2G047GJ22
2G047GJ28
(57)【要約】
【課題】効率的に欠陥を解析することができる欠陥解析装置、欠陥解析方法、プログラムおよび学習装置を提供する。
【解決手段】欠陥解析装置は、標準試験片に仕込まれた複数の欠陥の位置、形状およびサイズを表す教師情報と、標準試験片から取得された複数の標準超音波画像とに基づき検出された複数の欠陥の検出情報と、が関連付けられた学習済モデルを格納するモデル格納部と、検査対象から複数の対象超音波画像を取得する対象画像取得部と、学習済モデルと複数の対象超音波画像に基づき、複数の欠陥を強調した複数の強調画像を作成する強調画像作成部と、を備え、学習済モデルが、各標準超音波画像において、複数の欠陥のうち、検出すべき欠陥に優先順位を付けて学習している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準試験片に仕込まれた複数の欠陥の位置、形状およびサイズを表す教師情報と、前記標準試験片から取得された複数の標準超音波画像とに基づき検出された前記複数の欠陥の検出情報と、が関連付けられた学習済モデルを格納するモデル格納部と、
検査対象から複数の対象超音波画像を取得する対象画像取得部と、
前記学習済モデルと前記複数の対象超音波画像に基づき、前記複数の欠陥を強調した複数の強調画像を作成する強調画像作成部と、を備え、
前記学習済モデルが、各標準超音波画像において、前記複数の欠陥のうち、検出すべき欠陥に優先順位を付けて学習している
欠陥解析装置。
【請求項2】
前記複数の標準超音波画像が、複数のC-Scan画像である
請求項1に記載の欠陥解析装置。
【請求項3】
前記複数のC-Scan画像のゲート範囲およびゲートレベルが互いに異なっている
請求項2に記載の欠陥解析装置。
【請求項4】
前記複数の対象超音波画像はゲート範囲およびゲートレベルが互いに異なる複数のC-Scan画像であり、
前記強調画像作成部は、前記複数の強調画像を2値化した複数の2値化画像を取得し、前記複数の2値化画像を統合し、前記複数の欠陥を表す2値化統合画像を作成する
請求項3に記載の欠陥解析装置。
【請求項5】
前記強調画像作成部は、前記複数の対象超音波画像の元画像と前記2値化統合画像を重ね合わせた重ね合わせ画像を作成する
請求項4に記載の欠陥解析装置。
【請求項6】
前記検査対象は複合材料である
請求項5に記載の欠陥解析装置。
【請求項7】
検査対象から複数の対象超音波画像を取得するステップと、
標準試験片に仕込まれた複数の欠陥の位置、形状およびサイズを表す教師情報と、前記標準試験片から取得された複数の標準超音波画像とに基づき検出された前記複数の欠陥の検出情報と、が関連付けられた学習済モデルと前記複数の対象超音波画像に基づき、前記複数の欠陥を強調した複数の強調画像を作成するステップと、を含み、
前記学習済モデルが、各標準超音波画像において、前記複数の欠陥のうち、検出すべき欠陥に優先順位を付けて学習している
欠陥解析方法。
【請求項8】
検査対象から複数の対象超音波画像を取得するステップと、
標準試験片に仕込まれた複数の欠陥の位置、形状およびサイズを表す教師情報と、前記標準試験片から取得された複数の標準超音波画像とに基づき検出された前記複数の欠陥の検出情報と、が関連付けられた学習済モデルと前記複数の対象超音波画像に基づき、前記複数の欠陥を強調した複数の強調画像を作成するステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記学習済モデルが、各標準超音波画像において、前記複数の欠陥のうち、検出すべき欠陥に優先順位を付けて学習している
プログラム。
【請求項9】
標準試験片に仕込まれた複数の欠陥の位置、形状およびサイズを表す教師情報と、前記標準試験片から取得された複数の標準超音波画像とに基づき検出された前記複数の欠陥の検出情報と、に基づいて学習することで学習済モデルを生成する機械学習部を備え、
前記学習済モデルが、各標準超音波画像において、前記複数の欠陥のうち、検出すべき欠陥に優先順位を付けて学習している
学習装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、欠陥解析装置、欠陥解析方法、プログラムおよび学習装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、次のような欠陥検出システムが記載されている。すなわち、特許文献1に記載されている欠陥検出システムは、例えば超音波探傷器を用いて射出位置を変化させながら対象物に超音波を射出し、各射出位置で反射波を測定する。そして、この反射波の強度分布毎に輝度を変化させて射出位置毎に2次元マトリクス状にプロットした画像を原画像として作成する。さらに、原画像から算出された画像の輝度に基づく欠陥候補領域の特徴量と、欠陥の箇所が予め検出されている学習用原画像から算出された特徴量の範囲とに基づいて、欠陥であるか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6786035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の欠陥検出システムでは、学習用原画像を複数用意しようとした場合、例えば複数回の計測によって原画像を取得することとなり、場合によっては時間や労力が大きくかかることがあるという課題があった。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、効率的に欠陥を解析することができる欠陥解析装置、欠陥解析方法、プログラムおよび学習装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る欠陥解析装置は、標準試験片に仕込まれた複数の欠陥の位置、形状およびサイズを表す教師情報と、前記標準試験片から取得された複数の標準超音波画像とに基づき検出された前記複数の欠陥の検出情報と、が関連付けられた学習済モデルを格納するモデル格納部と、検査対象から複数の対象超音波画像を取得する対象画像取得部と、前記学習済モデルと前記複数の対象超音波画像に基づき、前記複数の欠陥を強調した複数の強調画像を作成する強調画像作成部と、を備え、前記学習済モデルが、各標準超音波画像において、前記複数の欠陥のうち、検出すべき欠陥に優先順位を付けて学習している。
【0007】
本開示に係る欠陥解析方法は、検査対象から複数の対象超音波画像を取得するステップと、標準試験片に仕込まれた複数の欠陥の位置、形状およびサイズを表す教師情報と、前記標準試験片から取得された複数の標準超音波画像とに基づき検出された前記複数の欠陥の検出情報と、が関連付けられた学習済モデルと前記複数の対象超音波画像に基づき、前記複数の欠陥を強調した複数の強調画像を作成するステップと、を含み、前記学習済モデルが、各標準超音波画像において、前記複数の欠陥のうち、検出すべき欠陥に優先順位を付けて学習している。
【0008】
本開示に係るプログラムは、検査対象から複数の対象超音波画像を取得するステップと、標準試験片に仕込まれた複数の欠陥の位置、形状およびサイズを表す教師情報と、前記標準試験片から取得された複数の標準超音波画像とに基づき検出された前記複数の欠陥の検出情報と、が関連付けられた学習済モデルと前記複数の対象超音波画像に基づき、前記複数の欠陥を強調した複数の強調画像を作成するステップと、をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記学習済モデルが、各標準超音波画像において、前記複数の欠陥のうち、検出すべき欠陥に優先順位を付けて学習している。
【0009】
本開示に係る学習装置は、標準試験片に仕込まれた複数の欠陥の位置、形状およびサイズを表す教師情報と、前記標準試験片から取得された複数の標準超音波画像とに基づき検出された前記複数の欠陥の検出情報と、に基づいて学習することで学習済モデルを生成する機械学習部を備え、前記学習済モデルが、各標準超音波画像において、前記複数の欠陥のうち、検出すべき欠陥に優先順位を付けて学習している。
【発明の効果】
【0010】
本開示の欠陥解析装置、欠陥解析方法、プログラムおよび学習装置によれば、効率的に欠陥を解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施形態に係る欠陥解析装置の構成例を示すブロック図である。
図2】本開示の実施形態に係る標準試験片を計測した超音波画像の一例を示す図である。
図3】本開示の実施形態に係る反射波の計測結果の一例を示す図である。
図4】本開示の実施形態に係る反射波の計測結果の一例を示す図である。
図5】本開示の実施形態に係る反射波の計測結果の一例を示す図である。
図6】本開示の実施形態に係る複数の標準超音波画像の例を示す図である。
図7】本開示の実施形態に係る複数の標準超音波画像の欠陥をラベリングした例を示す図である。
図8】本開示の実施形態に係る対象物を計測した超音波画像の一例を示す図である。
図9】本開示の実施形態に係る強調画像の一例を示す図である。
図10】本開示の実施形態に係る複数の2値化画像の例を示す図である。
図11】本開示の実施形態に係る複数の2値化統合画像の例を示す図である。
図12】本開示の実施形態に係る複数の重ね合わせ画像の例を示す図である。
図13】本開示の実施形態に係る欠陥解析装置における学習過程の動作例を示すフローチャートである。
図14】本開示の実施形態に係る欠陥解析装置における判定過程の動作例を示すフローチャートである。
図15】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態に係る欠陥解析装置、欠陥解析方法、プログラムおよび学習装置について、図1図15を参照して説明する。図1は、本開示の実施形態に係る欠陥解析装置の構成例を示すブロック図である。図2は、本開示の実施形態に係る標準試験片を計測した超音波画像の一例を示す図である。図3図5は、本開示の実施形態に係る反射波の計測結果の一例を示す図である。図6は、本開示の実施形態に係る複数の標準超音波画像の例を示す図である。図7は、本開示の実施形態に係る複数の標準超音波画像の欠陥をラベリングした例を示す図である。図8は、本開示の実施形態に係る対象物を計測した超音波画像の一例を示す図である。図9は、本開示の実施形態に係る強調画像の一例を示す図である。図10は、本開示の実施形態に係る複数の2値化画像の例を示す図である。図11は、本開示の実施形態に係る複数の2値化統合画像の例を示す図である。図12は、本開示の実施形態に係る複数の重ね合わせ画像の例を示す図である。図13は、本開示の実施形態に係る欠陥解析装置における学習過程の動作例を示すフローチャートである。図14は、本開示の実施形態に係る欠陥解析装置における判定過程の動作例を示すフローチャートである。図15は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0013】
(欠陥解析装置の構成)
図1に示す欠陥解析装置1は、例えば、サーバ、パーソナルコンピュータ、タブレット端末等のコンピュータを用いて構成することができ、そのコンピュータ、周辺装置等のハードウェアと、そのコンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせ等から構成される機能的構成として次の各部を備える。すなわち、欠陥解析装置1は、標準画像取得部11と、教師情報入力部12と、機械学習部13と、モデル格納部14と、対象画像取得部15と、強調画像作成部16と、出力部17とを備える。また、モデル格納部14は、学習済モデル141を格納する。なお、欠陥解析装置1内の機能的構成の一部または全部はクラウド上に構成されていてもよい。なお、欠陥解析装置1は、本開示に係る学習装置の一構成例でもある。
【0014】
欠陥解析装置1は、標準試験片3から超音波波形取得装置2によって取得された複数の標準超音波画像と、標準試験片3に仕込まれた複数の欠陥の位置、形状およびサイズを表す教師情報とが関連づけられた学習済モデル141を用いて、検査対象4から超音波波形取得装置2によって取得された複数の対象超音波画像に基づき、検査対象4が含む欠陥を強調した複数の強調画像を作成する。
【0015】
超音波波形取得装置2は、例えば超音波探傷装置等と呼ばれる超音波探傷検査を行うための装置である。この場合、超音波波形取得装置2は、標準試験片3または検査対象4から水を介在して一定距離に保たれて平面的に走査可能な探触子を用いて超音波の反射波を2次元で取得する。この探触子の位置を2次元の画素位置として反射波の高さ(強度、振幅)を各画素の値とする画像はC-Scan画像と呼ばれている。C-Scan画像は、2次元にマッピングされた探傷結果表示画像である。本実施形態では、C-Scan画像を超音波画像ともいう。
【0016】
超音波波形取得装置2は、探触子の各位置で例えば図3に示すようなエコー波形を計測し、全位置分の計測結果を欠陥解析装置1に対して出力する。計測結果は、各位置におけるエコー波形の高さの計測値の時系列データを含む。計測結果は、例えば図3に示す3つの山とそれらの山以外の波形の高さが略ゼロであるデータも含んでいる。超音波波形取得装置2の計測結果を波形データともいう。図3は、横軸を時間(あるいは距離)、縦軸をエコー強度(例えば振幅)としてエコー波の変化を表す。左端の山が表面エコーSE、中央の山が中間エコーIE、右端の山が底面エコーBEである。表面エコーSEは標準試験片3あるいは検査対象4の表面での反射波である。中間エコーIEは標準試験片3あるいは検査対象4の中間構造物による反射波である。この場合、中間エコーIEは欠陥からの反射波ではない。また、底面エコーBEは標準試験片3あるいは検査対象4の底面による反射波である。また、図4は中間エコーIEが発生しない例を示し、図5は欠陥によるエコー(欠陥エコーDE)が計測された例を示す。
【0017】
図2は、標準試験片3のC-Scan画像の一例を示す。標準試験片3は、位置、形状、サイズ(深さ、長さ、幅等)、種類や重なり方が異なる複数の疑似欠陥(人工欠陥)を並べたシート状の部材を複数層重ねて形成されている。ただし、標準試験片3は、標準試験片として製作されたものに限らず、例えば自然欠陥模擬試験等が行われた後の部品としたり、実機で使用された部品としたりしてもよい。標準試験片には、小さい形状の疑似欠陥ばかり挿入すると、サイズが小さい欠陥の過学習となり、サイズが大きい欠陥を欠陥解析装置にて検出できない場合があるため、サイズは比較的大きな疑似欠陥を挿入するとよい。図2に示す標準試験片3のC-Scan画像は、例えば図3において所定の時間幅を持つゲート内で計測された最大のエコー強度を各位置の輝度値とする画像である。色が薄い(白っぽい)ほどエコー強度が大きいことを表す。なお、検査対象4は、例えば航空機用複合材料の部品である。
【0018】
標準画像取得部11は、標準試験片3から取得された複数の標準超音波画像を取得する。また、対象画像取得部15は、検査対象4から複数の対象超音波画像を取得する。標準画像取得部11および対象画像取得部15は、例えば、超音波波形取得装置2から超音波画像(波形データ)を、通信回線等を介して取得したり、所定の記憶媒体を用いて取得したりする。本実施形態において標準画像取得部11と対象画像取得部15は、図3図5に示すように、複数のゲートF11~F15あるいはゲートF11~F13を設定し、設定したゲートごとに超音波画像を取得する。なお、標準超音波画像は、標準試験片3の超音波画像である。対象超音波画像は、検査対象4の超音波画像である。ゲートF11~F15は、幅(これをゲート範囲という)と高さ(これをゲートレベルという)について定義される。例えば、ゲートF11については、各端部(〇印)が示す時間幅(あるいは距離)内に位置し、かつ、各端部を結ぶ線より大きいレベルのエコーのみを計測対象とする。例えば、図5に示す例では、欠陥エコーDEは、ゲートF12の超音波画像と、ゲートF13の超音波画像と、ゲートF15の超音波画像では、検出することができる。一方、ゲートF11の超音波画像とゲートF14の超音波画像では、欠陥エコーDEを検出することはできない。この場合、複数のゲートF11~F15のゲート範囲およびゲートレベルが互いに異なっている。ゲートの個数、ゲート範囲およびゲートレベルについては、例えば部品毎に指定する。
【0019】
図6は、例えば、図4に示すゲートF11~F13の各標準超音波画像の例を示す。標準画像取得部11は、標準試験片3に対する1回の計測結果から、図6に示す3個の標準超音波画像を取得する。
【0020】
教師情報入力部12は、図7に示すように、ゲートF11~F13の各標準超音波画像に対して、複数の欠陥の位置、形状およびサイズを表す教師情報を、例えばNDT((Nondestructive Testing)技術者が、当該画像から検出できた全ての欠陥についてラベリング(アノテーション)を行う。さらに、各欠陥について、当該超音波画像で検出すべき欠陥と、別の超音波画像で検出する欠陥に分類し、優先順位を設定する。図7に示す例では、設定された複数の欠陥のうち、優先順位が高い欠陥を網掛け有りの領域D11で表し、優先順位が低い欠陥を網掛け無しの領域D12で表している。例えば欠陥の特徴量が良く出ているゲートの超音波画像の優先順位を高くすることで学習済モデルを適切に学習させることができる。なお、図7では、簡略化した領域で各欠陥を表示したが、教師情報には欠陥の形状を表すデータを例えば複数の位置情報(座標情報)やベクトル情報等を用いて含ませることができる。また、優先順位の情報も位置情報等に対応付けて教師情報に含ませることができる。
【0021】
機械学習部13は、教師情報入力部12がラベリングしたゲートF11~F13の各標準超音波画像を教師データとして、入力を各超音波画像とし、欠陥である可能性を画素の輝度値(輝度値が大きいほど欠陥の可能性が高い)で表す画像(強調画像という)を出力とする未学習の機械学習モデル(学習済モデル141の機械学習前のモデル)あるいは学習済モデル141の機械学習(あるいは再機械学習)を行う。機械学習部13は、機械学習した学習済モデル141をモデル格納部14に格納する。
【0022】
強調画像作成部16は、学習済モデル141と上述するようにして対象画像取得部15が取得した複数の対象超音波画像に基づき、複数の欠陥を強調した複数の強調画像を作成する。図8は、対象超音波画像の一例を示す。図9は、複数の強調画像を重ねた強調画像の例である。なお、図8に示す後述する2値化前の超音波画像を元画像ともいう。
【0023】
また、強調画像作成部16は、複数の強調画像を2値化した複数の2値化画像を取得し、複数の2値化画像を統合し、複数の欠陥を表す2値化統合画像を作成する。図10は、ゲートF11~F13に対応する複数の2値化画像の例を示す。図11は、複数の2値化画像を統合することで作成した複数の欠陥を表す2値化統合画像の例を示す。強調画像作成部16は、例えば、ゲートF11~F13毎に異なる閾値を設定し、各強調画像を2値化する。その場合、強調画像作成部16は、黒あるいは白となる面積が所定の範囲内になるように閾値の値を設定あるいは所定の設定値から調整するようにしてもよい。これによって、例えば欠陥と誤判定される可能性を適切に抑えることができる。
【0024】
また、強調画像作成部16は、複数の対象超音波画像の元画像と2値化統合画像を重ね合わせた重ね合わせ画像を作成する。図12は、重ね合わせ画像の例を示す。なお、図12は、グレースケールで重ね合わせ画像を示しているが、例えば、2値化統合画像を黒白画像ではなく黒以外の色を付けた画像とした上で、元画像に重ね合わせてもよい。
【0025】
出力部17は、重ね合わせ画像をディスプレイ等の所定の出力装置から出力する。
【0026】
(学習過程の動作例)
次に、図13を参照して、学習済モデル141の作成過程における欠陥解析装置1の動作例について説明する。図13に示す処理では、まず、標準画像取得部11が、超音波波形取得装置2から標準試験片3の計測結果を取得する(ステップS11)。次に、標準画像取得部11が、複数ゲートを基準として、複数の標準超音波画像を生成(取得)する(ステップS12)。次に、教師情報入力部12が、各標準超音波画像に対して欠陥情報をラベリングする(ステップS13)。次に、機械学習部13が、教師あり機械学習にて、学習済モデル141を作成してモデル格納部14に格納する(ステップS14)。
【0027】
(判定過程の動作例)
次に、図14を参照して、欠陥の判定過程における欠陥解析装置1の動作例について説明する。図14に示す処理では、まず、対象画像取得部15が、超音波波形取得装置2から検査対象4の計測結果を取得する(ステップS21)。次に、強調画像作成部16が、各ゲートに対応した複数の対象超音波画像を作成し、学習済モデル141を用いて複数の強調画像を作成する(ステップS22)。次に、強調画像作成部16が、複数の強調画像を2値化して複数の2値化画像を作成する(ステップS23)。次に、強調画像作成部16は、複数の強調画像を2値化した複数の2値化画像を取得し、複数の2値化画像を統合し、複数の欠陥を表す2値化統合画像を作成する(ステップS24)。次に、強調画像作成部16は、複数の対象超音波画像の元画像と2値化統合画像を重ね合わせた重ね合わせ画像を作成し、出力部17が出力する(ステップS25)。
【0028】
(作用効果)
上記構成の欠陥解析装置、欠陥解析方法、およびプログラムは、標準試験片から取得された複数の標準超音波画像に基づく学習済モデルと検査対象から取得した複数の対象超音波画像に基づき、複数の欠陥を強調した複数の強調画像を作成する。また、学習済モデルが、各標準超音波画像において、複数の欠陥のうち、検出すべき欠陥に優先順位を付けて学習されている。したがって、実施形態の欠陥解析装置、欠陥解析方法、およびプログラムによれば、検出すべき欠陥が優先的に強調された強調画像を用いた欠陥解析が可能となる。このため、効率的に欠陥を解析することができる。
【0029】
また、上記実施形態では、ゲート範囲とゲートレベルが異なる複数のゲートを用いて複数の対象超音波画像を作成するので、欠陥エコーを適切なS/N比(信号雑音比)で検出することができる確率を高めることができる。また、上記実施形態では、ゲート範囲とゲートレベルが異なる複数のゲートを用いた波形データが2次元データに集約されるため、例えば波形データすべてを機械学習モデルの入力情報とする場合と比較して処理時間を短縮することができる。
【0030】
また、上記実施形態では、各強調画像に合わせて2値化した2値化統合画像を作成できる。このため、欠陥の誤判定を抑えることができる。
【0031】
また、上記実施形態では、複数の対象超音波画像の元画像と2値化統合画像を重ね合わせるため、対象超音波画像の元画像と2値化統合画像との比較がしやすい。
【0032】
また、上記実施形態では、検査対象4が複合材料であるため、複合材料の欠陥を検出しやすい。
【0033】
また、上記構成の学習装置1は、標準試験片から取得された複数の標準超音波画像に基づく学習済モデル141を生成する際に、各標準超音波画像において、複数の欠陥のうち、検出すべき欠陥に優先順位を付けて学習している。したがって、学習装置1によれば、検出すべき欠陥が優先的に学習された学習済モデルを用いた欠陥解析が可能となる。このため、効率的に欠陥を解析することができる。
【0034】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0035】
〈コンピュータ構成〉
図15は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、および、インタフェース94を備える。
上述の欠陥解析装置1は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。
【0036】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータは、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0037】
ストレージ93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0038】
<付記>
上記実施形態に記載の欠陥解析装置1は、例えば以下のように把握される。
【0039】
(1)第1の態様に係る欠陥解析装置1は、標準試験片3に仕込まれた複数の欠陥の位置、形状およびサイズを表す教師情報と、前記標準試験片3から取得された複数の標準超音波画像とに基づき検出された前記複数の欠陥の検出情報と、が関連付けられた学習済モデル141を格納するモデル格納部14と、検査対象4から複数の対象超音波画像を取得する対象画像取得部15と、前記学習済モデル141と前記複数の対象超音波画像に基づき、前記複数の欠陥を強調した複数の強調画像を作成する強調画像作成部16と、を備え、前記学習済モデルが、各標準超音波画像において、前記複数の欠陥のうち、検出すべき欠陥に優先順位を付けて学習している。本態様によれば、検出すべき欠陥が優先的に強調された強調画像を用いた欠陥解析が可能となる。このため、効率的に欠陥を解析することができる。
【0040】
(2)第2の態様に係る欠陥解析装置1は、(1)の欠陥解析装置1であって、前記複数の標準超音波画像が、複数のC-Scan画像である。
【0041】
(3)第3の態様に係る欠陥解析装置1は、(1)または(2)の欠陥解析装置1であって、前記複数のC-Scan画像のゲート範囲およびゲートレベルが互いに異なっている。本態様によれば、ゲート範囲とゲートレベルが異なる複数のゲートを用いて複数の対象超音波画像を作成するので、欠陥エコーを適切なS/N比(信号雑音比)で検出することができる確率を高めることができる。また、本態様によれば、ゲート範囲とゲートレベルが異なる複数のゲートを用いた波形データが2次元データに集約されるため、処理時間を短縮することができる。
【0042】
(4)第4の態様に係る欠陥解析装置1は、(1)から(3)のいずれか1つの欠陥解析装置1であって、前記複数の対象超音波画像はゲート範囲およびゲートレベルが互いに異なる複数のC-Scan画像であり、前記強調画像作成部16は、前記複数の強調画像を2値化した複数の2値化画像を取得し、前記複数の2値化画像を統合し、前記複数の欠陥を表す2値化統合画像を作成する。本態様によれば、各強調画像に合わせて2値化した複数の2値化画像から2値化統合画像を作成できる。このため、欠陥の誤判定を抑えることができる。
【0043】
(5)第5の態様に係る欠陥解析装置1は、(1)から(4)のいずれか1つの欠陥解析装置1であって、前記強調画像作成部16は、前記複数の対象超音波画像の元画像と前記2値化統合画像を重ね合わせた重ね合わせ画像を作成する。本態様によれば、対象超音波画像の元画像と2値化統合画像との比較がしやすい。
【0044】
(6)第6の態様に係る欠陥解析装置1は、(1)から(5)のいずれか1つの欠陥解析装置1であって、前記検査対象4は複合材料である。本態様によれば、複合材料の欠陥を検出しやすい。
【0045】
(7)第7の態様に係る欠陥解析方法は、検査対象4から複数の対象超音波画像を取得するステップと、標準試験片3に仕込まれた複数の欠陥の位置、形状およびサイズを表す教師情報と、前記標準試験片3から取得された複数の標準超音波画像とに基づき検出された前記複数の欠陥の検出情報と、が関連付けられた学習済モデル141と前記複数の対象超音波画像に基づき、前記複数の欠陥を強調した複数の強調画像を作成するステップと、を含み、前記学習済モデルが、各標準超音波画像において、前記複数の欠陥のうち、検出すべき欠陥に優先順位を付けて学習している。本態様によれば、検出すべき欠陥が優先的に強調された強調画像を用いた欠陥解析が可能となる。このため、効率的に欠陥を解析することができる。
【0046】
(8)第8の態様に係るプログラムは、検査対象4から複数の対象超音波画像を取得するステップと、標準試験片3に仕込まれた複数の欠陥の位置、形状およびサイズを表す教師情報と、前記標準試験片3から取得された複数の標準超音波画像とに基づき検出された前記複数の欠陥の検出情報と、が関連付けられた学習済モデル141と前記複数の対象超音波画像に基づき、前記複数の欠陥を強調した複数の強調画像を作成するステップと、をコンピュータに実行させ、前記学習済モデルが、各標準超音波画像において、前記複数の欠陥のうち、検出すべき欠陥に優先順位を付けて学習している。本態様によれば、検出すべき欠陥が優先的に強調された強調画像を用いた欠陥解析が可能となる。このため、効率的に欠陥を解析することができる。
【0047】
(9)第9の態様に係る学習装置1は、標準試験片3に仕込まれた複数の欠陥の位置、形状およびサイズを表す教師情報と、前記標準試験片3から取得された複数の標準超音波画像とに基づき検出された前記複数の欠陥の検出情報と、に基づいて学習することで学習済モデル141を生成する機械学習部13を備え、前記学習済モデル141が、各標準超音波画像において、前記複数の欠陥のうち、検出すべき欠陥に優先順位を付けて学習している。本態様によれば、検出すべき欠陥が優先的に学習された学習済モデルを用いた欠陥解析が可能となる。このため、効率的に欠陥を解析することができる。
【符号の説明】
【0048】
1…欠陥解析装置(学習装置)
2…超音波波形取得装置
3…標準試験片
4…検査対象
11…標準画像取得部
12…教師情報入力部
13…機械学習部
14…モデル格納部
15…対象画像取得部
16…強調画像作成部
141…学習済モデル
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