(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021737
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60W 50/12 20120101AFI20240208BHJP
B60W 40/08 20120101ALI20240208BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240208BHJP
G09B 9/042 20060101ALI20240208BHJP
G09B 9/05 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B60W50/12
B60W40/08
G08G1/16 C
G09B9/042 A
G09B9/05 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124786
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 宇紘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 清史
(72)【発明者】
【氏名】山本 恭平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優一
(72)【発明者】
【氏名】福田 英士
(72)【発明者】
【氏名】池澤 尚徳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 広直
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA49
3D241BA60
3D241BB03
3D241CC08
3D241CC17
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DD04Z
5H181AA01
5H181CC27
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】車両運転の安全性の低下を抑制する。
【解決手段】車両は、1つまたは複数のプロセッサと、前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、を有し、前記プロセッサは、前記メモリに含まれるプログラムと協働し、実車の移動を伴わない仮想運転の実行前の実車運転における複数の因子に関する数値を取得し、母集団を形成することと、前記仮想運転の実行を検知することと、前記仮想運転の実行後の前記実車運転に取得される前記数値の前記母集団の中心位置からの距離に基づいて、異常運転を判定することと、を含む処理を実行する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、前記メモリに含まれるプログラムと協働し、
実車の移動を伴わない仮想運転の実行前の実車運転における複数の因子に関する数値を取得し、母集団を形成することと、
前記仮想運転の実行を検知することと、
前記仮想運転の実行後の前記実車運転に取得される前記数値の前記母集団の中心位置からの距離に基づいて、異常運転を判定することと、
を含む処理を実行する、
車両。
【請求項2】
前記距離は、マハラノビス距離であり、
前記プロセッサは、前記マハラノビス距離と閾値との比較により、前記異常運転を判定する、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
予め設けられた複数のサンプル母集団と、各サンプル母集団に対応付けられた閾値とを記憶する記憶装置を有し、
前記プロセッサは、前記複数のサンプル母集団のうち、前記母集団に近似するサンプル母集団を抽出し、判定された前記サンプル母集団に対応付けられた前記閾値と前記距離との比較により、前記異常運転を判定する、
請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記異常運転と判定されたとき、車両の駆動源のトルクおよびステアリングの制御量を補正すること
を含む処理を実行する、
請求項1に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、走行映像に対面した運転者のアクセル操作、ブレーキ操作、ハンドル操作に基づいて、運転者の運転適性を判別する運転シミュレータシステムについて開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、eスポーツやドライビングシミュレータ等の仮想空間で運転をした後、実際の運転を行うと、仮想空間での運転時の影響を受けて運転が粗雑になり、車両運転の安全性が低下してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、車両運転の安全性の低下を抑制することが可能な車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の車両は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、前記メモリに含まれるプログラムと協働し、
実車の移動を伴わない仮想運転の実行前の実車運転における複数の因子に関する数値を取得し、母集団を形成することと、
前記仮想運転の実行を検知することと、
前記仮想運転の実行後の前記実車運転に取得される前記数値の前記母集団の中心位置からの距離に基づいて、異常運転を判定することと、
を含む処理を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両運転の安全性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る車両の構成を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る仮想運転装置の構成を示す概略構成図である。
【
図3】
図3は、異常運転判定装置の概略的な機能を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、母集団のデータの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る異常運転判定処理のフロチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る車両100の構成を示す概略構成図である。車両100は、エンジン車、電気自動車、あるいは、ハイブリッド車などである。
図1に示すように、車両100は、アクセル開度センサ110と、ブレーキ開度センサ120と、舵角センサ130と、仮想運転装置140と、異常運転判定装置200と、ECU300と、エンジン410と、パワーステアリング420とを含む。
【0011】
アクセル開度センサ(アクセル操作量センサ)110は、アクセルペダル146(
図2参照)の操作量であるアクセル操作量を検出し、検出した信号を異常運転判定装置200に送信する。ブレーキ開度センサ(ブレーキ操作量センサ)120は、ブレーキペダル148(
図2参照)の操作量であるブレーキ操作量を検出し、検出した信号を異常運転判定装置200に送信する。舵角センサ130は、ステアリングホイール144(
図2参照)の角度を検出し、検出した信号を異常運転判定装置200に送信する。
【0012】
このように、アクセル開度センサ110、ブレーキ開度センサ120、舵角センサ130はそれぞれ、アクセル操作量、ブレーキ操作量、ステアリングホイール144の角度に関する情報を異常運転判定装置200に送信する。
【0013】
仮想運転装置140は、自動車の運転および走行をシミュレートする所謂ドライビングシミュレータである。この仮想運転装置140の操作には、独立した専用のコントローラを使用しても良いが、以下では車両100の操作系をそのまま利用する例について説明する。運転者は、仮想運転装置140を起動および実行することにより、実車の移動を伴わない仮想空間での運転(以下、仮想運転という)を行うことができる。仮想運転装置140は、仮想運転が開始されると、仮想運転が開始されたことを示す信号を異常運転判定装置200に送信する。また、仮想運転装置140は、仮想運転が終了されると、仮想運転が終了されたことを示す信号を異常運転判定装置200に送信する。このように、仮想運転装置140は、仮想運転の実行に関する情報を異常運転判定装置200に送信する。
【0014】
異常運転判定装置200は、アクセル開度センサ110、ブレーキ開度センサ120、舵角センサ130、仮想運転装置140から得られる信号に基づいて、車両100の運転者の異常運転を判定する。異常運転判定装置200の詳細については後述する。また、異常運転判定装置200は、異常運転と判定されたとき、異常運転を示す信号をECU300に送信する。
【0015】
ECU(Electronic Control Unit)300は、車両100に搭載される駆動源としてのエンジン410やパワーステアリング420を含む各種装置を制御する。ECU300は、車両100の駆動源としてのモータやトランスミッションなどの制御も行う。
【0016】
ECU300は、異常運転判定装置200から異常運転を示す信号を受信した際に、エンジン410あるいはモータの回転数やトルクの制御量を補正する。具体的に、ECU300は、エンジン410あるいはモータの回転数やトルクを抑制するような制御を行う。また、ECU300は、異常運転判定装置200から異常運転を示す信号を受信した際に、パワーステアリング420を制御し、ステアリングホイール144の操作が重くなるような制御を行う。
【0017】
図2は、本実施形態に係る仮想運転装置140の構成を示す概略構成図である。
図2に示すように、仮想運転装置140は、ディスプレイ142、ステアリングホイール144、アクセルペダル146、ブレーキペダル148を有する。
【0018】
ディスプレイ142は、例えば、インストルメントパネルにおける運転席と助手席との間に配置される。本実施形態では、ディスプレイ142は、車両100に搭載されるナビゲーション装置のディスプレイである。ただし、これに限定されず、ディスプレイ142は、車両100のフロントガラスFGに液晶パネルを設けたもので構成されてもよい。
【0019】
ディスプレイ142は、タッチパネルで構成され、運転者はディスプレイ142上に表示される開始操作部をタップ操作することで、自動車の運転および走行をシミュレートする仮想運転の実行を開始することができる。また、運転者は、ディスプレイ142を見ながら、現実の車両100に設けられるステアリングホイール144、アクセルペダル146、ブレーキペダル148を操作することで、仮想空間内の自動車を操作することができる。
【0020】
ところで、仮想運転後、実際の車両100で運転(以下、実車運転という)を行うと、仮想運転時の影響を受けて実車運転の操作が粗雑になり、車両運転の安全性が低下してしまう場合がある。そこで、本実施形態に係る車両100は、車両運転の安全性の低下を抑制すべく、異常運転判定装置200を備えている。
【0021】
図3は、異常運転判定装置200の概略的な機能を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、異常運転判定装置200は、I/F部210と、記憶装置220と、システムバス230と、1つまたは複数のプロセッサ240と、1つまたは複数のメモリ250とを有する。
【0022】
なお、本実施形態では、異常運転判定装置200とECU300とを別体で構成する例を示しているが、これに限定されず、異常運転判定装置200とECU300は一体に構成されてもよい。つまり、ECU300は、異常運転判定装置200に含まれていてもよい。
【0023】
I/F部210は、アクセル開度センサ110、ブレーキ開度センサ120、舵角センサ130、ECU300との通信を行うためのインターフェースである。記憶装置220は、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、後述する運転者の異常運転の判定に必要な各種情報を保持する。
【0024】
システムバス230は、I/F部210、記憶装置220、プロセッサ240、メモリ250を接続する。プロセッサ240は、メモリ250に含まれるプログラムと協働し、システムバス230を通じてI/F部210、記憶装置220を制御する。
【0025】
メモリ250は、ROM等で構成され、プロセッサ240を動作させるためのプログラムを格納する。また、プロセッサ240は、メモリ250に含まれるプログラムと協働し、母集団形成部242、実行検知部244、異常運転判定部246といった機能モジュールとして機能する。
【0026】
母集団形成部242は、アクセル開度センサ110、ブレーキ開度センサ120、舵角センサ130から出力される信号を取得する。これらの信号は、仮想運転時の影響を受けて実車運転での操作が粗雑になる複数の因子として取得される。
【0027】
母集団形成部242は、アクセル開度センサ110から取得した信号を基に、アクセル操作量の変化率を導出する。そして、母集団形成部242は、導出したアクセル操作量の変化率を蓄積し、アクセル操作量の変化率の集合全体である母集団を形成する。
【0028】
また、母集団形成部242は、ブレーキ開度センサ120から取得した信号を基に、ブレーキ操作量の変化率を導出する。そして、母集団形成部242は、導出したブレーキ操作量の変化率を蓄積し、ブレーキ操作量の変化率の集合全体である母集団を形成する。
【0029】
同様に、母集団形成部242は、舵角センサ130から取得した信号を基に、舵角の変化率を導出する。そして、母集団形成部242は、導出した舵角の変化率を蓄積し、舵角の変化率の集合全体である母集団を形成する。以下、アクセル操作量の変化率、ブレーキ操作量の変化率、舵角の変化率を、まとめて単に数値という。
【0030】
これら母集団の形成は、仮想運転前の実車運転時、および、仮想運転後、一定時間経過した後の実車運転時において行われる。つまり、ここでは、母集団形成部242は、仮想運転時の影響を受ける前の実車運転、および、仮想運転時の影響が時間経過により低減された後の実車運転における複数の因子に関する数値の母集団を形成する。形成した母集団のデータは、記憶装置220に記憶される。
【0031】
実行検知部244は、仮想運転装置140から仮想運転が開始されたことを示す信号、および、仮想運転が終了したことを示す信号を受信することで、仮想運転が実行されている状態を検知する。具体的に、実行検知部244は、仮想運転が開始されたことを示す信号を受信した時点から仮想運転が終了したことを示す信号を受信した時点までの期間を、仮想運転が実行される実行期間として検知する。
【0032】
異常運転判定部246は、仮想運転の実行前に母集団形成部242により形成された母集団のデータと、仮想運転の実行後に母集団形成部242により導出される複数の因子に関する数値とに基づいて、異常運転を判定する。
【0033】
また、異常運転判定部246は、仮想運転実行後の一定時間経過後に母集団形成部242により形成された母集団のデータと、その後、再度、仮想運転実行後に母集団形成部242により導出される複数の因子に関する数値とに基づいて、異常運転を判定する。ここで、仮想運転実行後の一定時間経過後に形成された母集団のデータは、その後に再度実行される仮想運転の実行前に母集団形成部242により形成された母集団のデータとして扱われる。
【0034】
図4は、母集団のデータの一例を示す図である。
図4中、所定のブレーキ操作量の変化率における、縦軸は、アクセル操作量の変化率を示し、横軸は、舵角の変化率を示す。
【0035】
また、
図4中、破線および実線の楕円は、母集団の平均値である中心位置Cからのマハラノビス距離が等しい等高線を表している。
図4中、黒丸の点は、仮想運転が実行される前、あるいは、仮想運転が実行された後の一定時間経過後に母集団形成部242により形成された母集団の数値を示す。
【0036】
ここで、黒丸の点は、仮想運転前、あるいは、仮想運転後、一定時間経過後に導出される複数の因子に関する数値であって、仮想運転時の影響を受けない正常値の数値として蓄積された母集団を示す。また、白丸の点は、仮想運転後の一定時間内に導出された複数の因子に関する数値を示す。ここで、白丸の点は、仮想運転時の影響を受けて実車運転の操作が粗雑になったとされる異常値の数値である。
【0037】
図4中、黒丸の点で示される数値NV1と、白丸の点で示される数値NV2は、母集団の中心位置Cからのユークリッド距離が等しい2点である。そのため、ユークリッド距離では、母集団の中心位置Cからの距離が、黒丸の点で示される数値NV1と白丸の点で示される数値NV2とで等しいため、白丸の点で示される数値NV2を異常値と判別することは困難である。
【0038】
一方、複数の数値の相関関係を考慮した母集団の中心位置Cからの距離であるマハラノビス距離は、母集団の中心位置Cからの距離が、黒丸の点で示される数値NV1と、白丸の点で示される数値NV2とで異なる。具体的に、数値NV1は、マハラノビス距離において閾値Th未満の数値であり、数値NV2は、マハラノビス距離において閾値Th以上の数値である。このように、複数の因子に関する数値のマハラノビス距離を導出することで、正常値のグループである母集団と異常値とを判別することができる。
【0039】
本実施形態では、母集団形成部242により形成される母集団の中心位置Cからのマハラノビス距離における閾値Thを設け、閾値Th未満の数値を仮想運転時の影響を受ける前の正常値と判定する。一方、閾値Th以上の数値を仮想運転時の影響を受けて母集団から外れた異常値と判定する。ここで使用される閾値Thは、予め実験により
図4に示すような母集団を、サンプル母集団として取得し、取得したサンプル母集団の分散を考慮したマハラノビス距離に基づき、異常運転判別の閾値として予め適切に設定される。本実施形態では、予め実験により複数種類のサンプル母集団が取得され、各サンプル母集団に分散に応じた閾値Thが予め設定される。ここで、複数種類のサンプル母集団に設定される閾値Thは、それぞれ異なる値である。ただし、これに限定されず、複数種類のサンプル母集団に設定される閾値Thは、一部が同じ値であってもよい。
【0040】
予め実験により得られた複数種類のサンプル母集団および閾値Thは、記憶装置220に予め記憶されている。記憶装置220には、予め実験により得られた複数のサンプル母集団が記憶される。また、各サンプル母集団に対応付けられた閾値Thが、複数のサンプル母集団と関連付けられて記憶装置220に記憶される。
【0041】
異常運転判定部246は、記憶装置220に記憶された複数のサンプル母集団のうち、母集団形成部242により形成された母集団に近似するサンプル母集団を抽出し、当該サンプル母集団に対応付けられた閾値Thを取得する。
【0042】
異常運転判定部246は、仮想運転が実行された後に母集団形成部242により導出される数値の母集団の中心位置Cからのマハラノビス距離を導出し、当該マハラノビス距離と取得した閾値Thとを比較する。
【0043】
異常運転判定部246は、導出したマハラノビス距離が、閾値Th未満である場合、仮想運転が実行された後に母集団形成部242により導出される数値を正常値として判定し、仮想運転後の運転者による車両100の運転が正常運転であると判定する。
【0044】
一方、導出したマハラノビス距離が、閾値Th以上である場合、仮想運転が実行された後に母集団形成部242により導出される数値を異常値として判定し、仮想運転後の運転者による車両100の運転が異常運転であると判定する。
【0045】
このように、異常運転判定部246は、仮想運転後の実車運転において取得される数値と、マハラノビス距離に基づいて、異常運転を判定する。異常運転判定部246は、異常運転を判定したとき、ECU300に異常運転を示す情報を送信する。
【0046】
ECU300は、異常運転を示す情報を受信したとき、エンジン410のトルクが所定値未満となるように、エンジン410を制御する。また、ECU300は、異常運転を示す情報を受信したとき、ステアリングホイール144の操作が重くなるように、パワーステアリング420を制御する。このように、ECU300は、車両100の駆動源のトルクおよびステアリングの制御量を補正する補正部として機能する。
【0047】
図5は、本実施形態に係る異常運転判定処理のフロチャート図である。
図5に示すように、まず、母集団形成部242は、アクセル開度センサ110、ブレーキ開度センサ120、舵角センサ130から出力される信号を取得する。
【0048】
つぎに、母集団形成部242は、アクセル開度センサ110、ブレーキ開度センサ120、舵角センサ130から取得した信号を基に、アクセル操作量の変化率、ブレーキ操作量の変化率、舵角の変化率を導出する。そして、母集団形成部242は、導出したアクセル操作量の変化率、ブレーキ操作量の変化率、舵角の変化率の数値を蓄積し母集団を形成する(S11)。
【0049】
実行検知部244は、仮想運転装置140から仮想運転が開始されたことを示す信号を受信することで、仮想運転が実行開始されたことを検知する(S12)。また、実行検知部244は、仮想運転装置140から仮想運転が終了したことを示す信号を受信することで、仮想運転が実行終了されたことを検知する(S13)。
【0050】
異常運転判定部246は、S13の仮想運転後に母集団形成部242により導出されたアクセル操作量の変化率、ブレーキ操作量の変化率、舵角の変化率の数値のマハラノビス距離を導出する(S14)。そして、異常運転判定部246は、記憶装置220に記憶された複数のサンプル母集団のうち、S11で形成された母集団に近似するサンプル母集団を抽出し、当該サンプル母集団に対応付けられた閾値Thを取得する(S15)。
【0051】
異常運転判定部246は、S14で導出されたマハラノビス距離と、S15で取得した閾値Thとを比較し、マハラノビス距離が閾値Th未満であるか否か判定する(S16)。異常運転判定部246は、マハラノビス距離が閾値Th未満である場合(S16のYES)、仮想運転後に母集団形成部242により導出される数値が正常値であり、車両100の運転が正常運転であると判定し、S19の処理に移行する。
【0052】
一方、異常運転判定部246は、マハラノビス距離が閾値Th以上である場合(S16のNO)、仮想運転後に母集団形成部242により導出される数値が異常値であり、車両100の運転が異常運転であると判定する(S17)。このとき、異常運転判定部246は、ECU300に異常運転を示す情報を送信する。
【0053】
ECU300は、異常運転を示す情報を受信したとき、エンジン410のトルクが所定値未満となるように、エンジン410の制御量を補正する。また、ECU300は、異常運転を示す情報を受信したとき、ステアリングホイール144の操作が重くなるように、パワーステアリング420の制御量を補正する(S18)。
【0054】
S16のYES、および、S18の処理後、異常運転判定部246は、S13における仮想運転終了時から一定時間が経過したか否かを判定する(S19)。異常運転判定部246は、一定時間経過していないと判定した場合(S19のNO)、S14~S19の処理を繰り返し実行する。一方、異常運転判定部246は、一定時間経過したと判定した場合(S19のYES)、異常運転判定処理を終了する。
【0055】
以上のように、本実施形態では、仮想運転前に取得される複数の因子に関する数値を正常値のグループである母集団として形成し、仮想運転後に取得される複数の因子に関する数値のマハラノビス距離を導出している。そして、マハラノビス距離と予め設けられた閾値Thを比較することで、運転者の異常運転を判定できるようにしている。その結果、車両運転の安全性が低下してしまうことを抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態では、異常運転が判定されたとき、車両100の駆動源のトルクおよびステアリングの制御量を補正している。そのため、仮想運転時の影響を受けて実車運転の操作が粗雑になった場合でも、車両運転の安全性が低下してしまうことを抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態では、予め設けられた複数のサンプル母集団のうち、仮想運転前に取得される複数の因子に関する数値の母集団に近似するサンプル母集団を抽出し、そのサンプル母集団に対応付けられた閾値を導出している。これにより、異常運転の判定精度を高めることができる。
【0058】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0059】
上記実施形態では、ECU300がエンジン410のトルクおよびパワーステアリング420によるステアリングの制御量を補正する例について説明した。しかし、これに限定されず、ECU300は、これらトルクおよびステアリングの制御量を補正しなくてもよい。例えば、異常運転判定装置200は、異常運転を判定した際に、車両100のインストルメントパネルに警告報知を行ってもよい。
【0060】
上記実施形態では、閾値Thを複数のサンプル母集団の中から抽出する例について説明した。しかし、これに限定されず、閾値Thは、一の所定値であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
FG フロントガラス
100 車両
110 アクセル開度センサ
120 ブレーキ開度センサ
130 舵角センサ
140 仮想運転装置
142 ディスプレイ
144 ステアリングホイール
146 アクセルペダル
148 ブレーキペダル
200 異常運転判定装置
210 I/F部
220 記憶装置
230 システムバス
240 プロセッサ
242 母集団形成部
244 実行検知部
246 異常運転判定部
250 メモリ
300 ECU
410 エンジン
420 パワーステアリング