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特開2024-21738電動パワーステアリング装置及びラックバーの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021738
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置及びラックバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 3/12 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B62D3/12 501B
B62D3/12 501Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124788
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 征樹
(72)【発明者】
【氏名】上野 星治
(57)【要約】
【課題】ラックガイド装置が引っ掛かることなく、スムーズにラックバーを移動できる電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】電動パワーステアリング装置は、モータと、ウォームギヤと、ウォームギヤと歯合するウォームホイールと、アシストピニオンと、アシストピニオンと歯合するアシスト用ラック歯を有するラックバーと、を備える。ラックバーは、ラックバーの軸方向に延在する棒状部と、棒状部から軸方向に延在する拡幅部と、を有する。拡幅部は、断面形状における第1方向の厚みが棒状部よりも小さく、かつ断面形状における第1方向と交差する第2方向の幅が棒状部よりも大きい。拡幅部の第1方向の一方を向く面には、アシスト用ラック歯と欠歯部とが設けられている。拡幅部の第1方向の他方を向く面のうちラックガイドと第1方向と重なる範囲には、前記ラックガイドと当接する背面が設けられ、背面は軸方向に同一形状となっている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの出力軸に嵌合するウォームギヤと、
前記ウォームギヤと歯合するウォームホイールと、
前記ウォームホイールと一体に回転するアシストピニオンと、
前記アシストピニオンと歯合するアシスト用ラック歯を有するラックバーと、
を備え、
前記ラックバーは、
前記ラックバーの軸方向に延在する棒状部と、
前記棒状部から前記軸方向に延在する拡幅部と、
を有し、
前記拡幅部は、断面形状における第1方向の厚みが前記棒状部よりも小さく、かつ前記断面形状における前記第1方向と交差する第2方向の幅が前記棒状部よりも大きく、
前記拡幅部の前記第1方向の一方を向く面には、前記アシストラック歯と欠歯部とが設けられ、
前記拡幅部の前記第1方向の他方を向く面のうちラックガイドと前記第1方向と重なる範囲には、前記ラックガイドと当接する背面が設けられ、
前記背面は、前記軸方向に同一形状となっている
電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
操舵ピニオンと、
前記ラックバーを収容する筒状のハウジングと、
を有し、
前記ラックバーは、
前記軸方向に延在する第1軸部と、
前記第1軸部から前記軸方向に延在し、前記第1軸部よりも大径の第2軸部と、
を有し、
前記第1軸部には、前記操舵ピニオンと歯合する操舵用ラック歯が設けられ、
前記第2軸部には、前記棒状部と前記拡幅部が設けられ、
前記ハウジングは、
前記第1軸部を収容する第1筒部と、
前記第2軸部を収容し、前記第1筒部よりも大径な第2筒部と、
を有している請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記ラックバーは、前記第1軸部と前記第2軸部との境界に配置され、前記軸方向の一方を向く第1段差面を有し、
前記ハウジングは、前記第1筒部と前記第2筒部との境界に配置され、前記第1段差面と対向する第2段差面を有し、
前記アシストピニオンから視て、前記欠歯部は、前記第1段差面及び前記第2段差面と同じ方向に配置されている
請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記ラックバーは、前記第1軸部と前記第2軸部との境界に配置され、前記軸方向の一方を向く第1段差面を有し、
前記ハウジングは、前記第1筒部と前記第2筒部との境界に配置され、前記第1段差面と対向する第2段差面を有し、
前記アシストピニオンから視て、前記欠歯部が前記第1段差面及び前記第2段差面と反対方向に配置される
請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
中実の棒状部材を準備する準備工程と、
前記棒状部材の軸方向の一部を断面形状における第1方向から押し潰し、前記断面形状における前記第1方向と直交する第2方向の幅が大きい拡幅部を形成する鍛造工程と、
前記拡幅部の前記第1方向の一方を向く面を切削し、アシストラック歯と欠歯部を形成する切削工程と、
を含み、
前記鍛造工程において、前記拡幅部における前記第1方向の他方を向く面が前記軸方向に同一形状となっている
ラックバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置及びラックバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動パワーステアリング装置の一例として、ラックバーに歯合するピニオンを2つ備えたデュアルピニオンタイプが挙げられる。この2つのピニオンのうち1つは、ステアリングホイールに作用した操作力により駆動する操舵ピニオンである。もう1つは、モータで生成されたアシストトルクにより駆動するアシストピニオンである。
【0003】
デュアルピニオンタイプの電動パワーステアリング装置は、アシストトルクを減速するため、ウォームギヤとウォームホイールを備える場合がある。また、このような電動パワーステアリング装置において、モータを駆動し、ウォームギヤとウォームホイールの慣らし運転を行う場合がある。下記特許文献1のラックバーでは、ラック歯の軸方向の隣に、平面状の欠歯部が設けられている。そして、ラックバーを軸方向に移動し、アシストピニオンと欠歯部とを対向した状態で慣らし運転を行っている。これによれば、アシストピニオンがラック歯に対し空回りし、ラックバーが移動しない。
【0004】
また、下記特許文献2では、鍛造加工により棒状部材を塑性変形させ、断面形状における一方向の幅を拡大させた拡幅部を形成している。そして、拡幅部にラック歯を形成している。これにより、ラック歯幅が長くなり、ラック歯の剛性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4490834号公報
【特許文献2】特許第5632345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ラックバーにおけるラック歯の背面は、ラックガイド装置に押圧されている。また、ラック歯の背面は、欠歯の背面と軸方向に隣り合っている。よって、慣らし運転を行うためにラックバーを移動すると、欠歯の背面にラックガイド装置が当接する。しかしながら、特許文献2のラック歯は、断面形状における一方向の幅が拡大し、欠歯の背面との境界に段差が生じている。このため、ラックバーを移動させようとすると、ラックガイド装置が段差に引っ掛かる。
【0007】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、ラックガイド装置が引っ掛かることなく、スムーズにラックバーを移動できる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。また、ラックガイド装置が引っ掛かることなく、スムーズに移動できるラックバーの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係る電動パワーステアリング装置は、モータと、モータの出力軸に嵌合するウォームギヤと、前記ウォームギヤと歯合するウォームホイールと、前記ウォームホイールと一体に回転するアシストピニオンと、前記アシストピニオンと歯合するアシスト用ラック歯を有するラックバーと、を備えている。前記ラックバーは、前記ラックバーの軸方向に延在する棒状部と、前記棒状部から前記軸方向に延在する拡幅部と、を有している。前記拡幅部は、断面形状における第1方向の厚みが前記棒状部よりも小さく、かつ前記断面形状における前記第1方向と直交する第2方向の幅が前記棒状部よりも大きい。前記拡幅部の前記第1方向の一方を向く面には、前記アシスト用ラック歯と欠歯部とが設けられている。前記拡幅部の前記第1方向の他方を向く面のうちラックガイドと前記第1方向と重なる範囲には、前記ラックガイドと当接する背面が設けられている。前記背面は、前記軸方向に同一形状となっている。
【0009】
アシスト用ラック歯の背面と欠歯部の背面は、拡幅部の第1方向の他方を向く面に含まれている。よって、アシスト用ラック歯の背面と欠歯部の背面は、断面形状が同じであり、段差が発生していない。以上、本開示によれば、ラックガイド装置が当接する部位が、アシスト用ラック歯の背面から欠歯部の背面に切り替わる際、ラックガイド装置が引っ掛からない。よって、ラックバーの移動がスムーズとなる。
【0010】
上記の電動パワーステアリング装置の望ましい態様として、操舵ピニオンと、前記ラックバーを収容する筒状のハウジングと、を有している。前記ラックバーは、前記軸方向に延在する第1軸部と、前記第1軸部から前記軸方向に延在し、前記第1軸部よりも大径の第2軸部と、を有している。前記第1軸部には、前記操舵ピニオンと歯合する操舵用ラック歯が設けられている。前記第2軸部には、前記棒状部と前記拡幅部が設けられている。前記ハウジングは、前記第1軸部を収容する第1筒部と、前記第2軸部を収容し、前記第1筒部よりも大径な第2筒部と、を有している。
【0011】
ラックバーの一部は、小径の第1軸部になっており、軽量化している。また、ラックバーに伝達されるトルクは、アシストピニオンよりも操舵ピニオンの方が小さい。つまり、操舵用ラック歯に要求される剛性は、アシスト用ラック歯よりも小さい。よって、第1軸部が小径となっているものの、十分な剛性が確保される。また、第1軸部の小径化に伴い、第1筒部も小径化している。よって、ハウジングが軽量化している。
【0012】
上記の電動パワーステアリング装置の望ましい態様として、前記ラックバーは、前記第1軸部と前記第2軸部との境界に配置され、前記軸方向の一方を向く第1段差面を有している。前記ハウジングは、前記第1筒部と前記第2筒部との境界に配置され、前記第1段差面と対向する第2段差面を有している。前記アシストピニオンから視て、前記欠歯部は、前記第1段差面及び前記第2段差面と同じ方向に配置されている。
【0013】
第1段差面が第2段差面に近づく方向にラックバーを移動した場合の最大距離は、アシストピニオンから視て、欠歯部が第1段差面及び第2段差面と反対方向に配置した場合よりも、欠歯部が第1段差面及び第2段差面と同じ方向に配置した場合の方が短い。よって、本開示によれば、ラックバーを移動した場合の最大距離が短いため、ハウジングの第2段差面をアシストピニオン寄りに配置することができる。この結果、ハウジングにおいて大径の第2筒部が占める割合が小さくなり、ハウジングの軽量化を図れる。
【0014】
上記の電動パワーステアリング装置の望ましい態様として、前記ラックバーは、前記第1軸部と前記第2軸部との境界に配置され、前記軸方向の一方を向く第1段差面を有している、前記ハウジングは、前記第1筒部と前記第2筒部との境界に配置され、前記第1段差面と対向する第2段差面を有している。前記アシストピニオンから視て、前記欠歯部が前記第1段差面及び前記第2段差面と反対方向に配置される。
【0015】
前記構成によれば、中立時からラックバーが移動する軸方向の距離は、第2軸方向よりも第1軸方向の方が長い。つまり、第1ラック歯は、第1軸部の端から離れるため、比較的長い基準面を形成することができる。そして、基準面を基準にラックバーを製造すると、精度良く加工することができる。
【0016】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係るラックバーの製造方法は、中実の棒状部材を準備する準備工程と、前記棒状部材の軸方向の一部を断面形状における第1方向から押し潰し、前記断面形状における前記第1方向と直交する第2方向の幅が大きい拡幅部を形成する鍛造工程と、前記拡幅部の前記第1方向の一方を向く面を切削し、アシストラック歯と欠歯部を形成する切削工程と、を含む。前記鍛造工程において、前記拡幅部における前記第1方向の他方を向く面が前記軸方向に同一形状となっている。
【0017】
本開示によれば、アシスト用ラック歯の背面と欠歯部の背面は、同一形状であり、段差が発生していない。つまり、ラックガイド装置が引っ掛からない。よって、ラックバーの移動がスムーズとなる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の電動パワーステアリング装置によれば、ラックガイド装置が引っ掛からないため、ラックバーの移動がスムーズとなる。また、ラックガイド装置が引っ掛かることなく、スムーズに移動できるラックバーを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態1の電動パワーステアリング装置の模式図である。
図2図2は、実施形態1のハウジングをラックバーと平行な方向に切った断面図である。
図3図3は、図2に示すハウジングの軸方向中央部の拡大図である。
図4図4は、図2に示すハウジングの大径筒部の一部の拡大図である。
図5図5は、実施形態のラックバーの製造方法を説明するための図である。
図6図6は、実施形態のラックバーを第1直交方向から視た側面図である。
図7図7は、実施形態のラックバーの第2軸部を幅方向から視た拡大側面図である。
図8図8は、図6のVIII-VIII線矢視断面図である。
図9A図9Aは、実施形態の電動パワーステアリング装置であってステアリングホイールの中立時の模式図である。
図9B図9Bは、実施形態の電動パワーステアリング装置であってラックバーが第1軸方向に移動した場合の模式図である。
図9C図9Cは、変形例の電動パワーステアリング装置であってステアリングホイールの中立時の模式図である。
図9D図9Dは、変形例の電動パワーステアリング装置であってラックバーが第1軸方向に移動した場合の図である。
図10A図10Aは、実施形態の電動パワーステアリング装置であってステアリングホイールの中立時の模式図である。
図10B図10Bは、実施形態の電動パワーステアリング装置であってラックバーが第2軸方向に移動した場合の模式図である。
図10C図10Cは、変形例の電動パワーステアリング装置であってステアリングホイールの中立時の模式図である。
図10D図10Dは、変形例の電動パワーステアリング装置であってラックバーが第2軸方向に移動した場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0021】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の電動パワーステアリング装置の模式図である。図1に示すように、電動パワーステアリング装置80は、車両の車体前部に搭載されて車輪99を操舵するための装置である。電動パワーステアリング装置80は、ステアリングホイール81と、ステアリングコラムシャフト82と、ユニバーサルジョイント83と、中間シャフト84と、ユニバーサルジョイント85と、操舵ピニオン86と、ラックバー1と、ハウジング40と、アシスト装置90と、を備える。
【0022】
ステアリングホイール81は、ステアリングコラムシャフト82と連結している。ステアリングコラムシャフト82と中間シャフト84と操舵ピニオン86は、ユニバーサルジョイント83、85を介して連結している。操舵ピニオン86のピニオン歯86aは、ラックバー1の第1ラック歯(操舵用ラック歯)2に歯合している。
【0023】
ラックバー1は、車両の車幅方向(図1の矢印X1、X2で示す方向)に移動自在に、ハウジング40に支持されている。ラックバー1の両端部は、タイロッド98を介して車輪99と連結している。運転者がステアリングホイール81を操作すると、その操作トルクが操舵ピニオン86に伝達し、操舵ピニオン86が回転する。そして、ラックバー1は、車両の左右方向に移動し、車輪99が転舵する。
【0024】
アシスト装置90は、ラックバー1を移動させるアシストトルクを生成している。アシスト装置90は、制御装置91と、モータ92と、減速装置93と、アシストピニオン94と、を備えている。制御装置91は、操舵ピニオン86への入力トルクを検出するトルクセンサからの検出信号を受信している。そして、制御装置91は、モータ92を駆動させるとともに、モータ92が所望のアシストトルクを出力するように制御する。
【0025】
減速装置93は、モータ92の出力軸と一体に回転するウォームギヤ95と、ウォームギヤ95と歯合するウォームホイール96と、を備えている。アシストピニオン94は、ウォームホイール96に嵌合し、ウォームホイール96と一体に回転する。アシストピニオン94のピニオン歯94aは、ラックバー1の第2ラック歯(アシスト用ラック歯)3に歯合している。よって、モータ92の駆動によりラックバー1にアシスト力が作用する。以下、ラックバー1と平行な方向を軸方向と称する。また、軸方向に関し、第2ラック歯3から視て第1ラック歯2が配置される方向を第1軸方向X1と称し、反対方向を第2軸方向X2と称する。
【0026】
次に、ハウジング40とラックバー1の詳細について説明する。図2は、実施形態1のハウジングをラックバーと平行な方向に切った断面図である。図2に示すように、ハウジング40は、軸方向に延在する筒状の部品である。ハウジング40は、第1筒部41と第2筒部42とを有している。第1筒部41は、ハウジング40の軸方向の中央部から第1軸方向X1へ延びている。一方、第2筒部42は、ハウジング40の軸方向の中央部から第2軸方向X2へ延びている。第1筒部41内には、ラックバー1の第1ラック歯2(図2で不図示)が配置されている。また、第2筒部42内には、ラックバー1の第2ラック歯3が配置されている。
【0027】
図3は、図2に示すハウジングの軸方向中央部の拡大図である。図3に示すように、第1筒部41の外径r1は、第2筒部42の外径r2よりも小さい。また、第1筒部41の内径r3は、第2筒部42の内径r4よりも小さい。つまり、第1筒部41は、第2筒部42よりも小径となっている。このため、ハウジング40の軸方向の全てを第2筒部42と同じ径で製造した場合よりも軽量化している。また、ハウジング40の内周面であって第1筒部41と第2筒部42との境界には、第2軸方向X2を向く第2段差面43が設けられている。
【0028】
図4は、図2に示すハウジングの大径筒部の一部の拡大図である。図4に示すように、ハウジング40の第2筒部42には、ラックガイド装置50が設けられている。ラックガイド装置50は、第2筒部42に一体に設けられた収容壁部51と、アジャストカバー52と、プレッシャーパッド53と、コイルばね54と、を有している。
【0029】
収容壁部51は、ラックバー1の中心線O1と直交する方向に貫通する貫通孔Sを有している。以下、中心線O1と直交する方向を直交方向と称する。また、直交方向のうち収容壁部51からみてラックバー1が配置される方を第1直交方向Y1と称し、反対方向を第2直交方向Y2と称する。
【0030】
アジャストカバー52は、収容壁部51の内周面に螺合し、貫通孔Sの第2直交方向Y2を閉塞している。プレッシャーパッド53は、貫通孔Sに収容されている。また、プレッシャーパッド53の第1直交方向Y1の端部は、第2筒部42内に配置されている。プレッシャーパッド53の第1直交方向Y1の端部には、摺動性に優れる樹脂製の樹脂部55が設けられている。そして、樹脂部55は、ラックバー1の第2ラック歯3の背面16aに当接している。
【0031】
コイルばね54は、直交方向に縮められた状態で、アジャストカバー52とプレッシャーパッド53との間に組み付けられている。コイルばね54の復元力によりプレッシャーパッド53が第1直交方向Y1に押圧される。そして、プレッシャーパッド53がラックバー1の背面16aを押圧し、第2ラック歯3とアシストピニオン94との歯合が保持される。
【0032】
なお、図2で図示していないが、ハウジング40の第1筒部41にも、第1ラック歯2と操舵ピニオン86のピニオン歯86aとの歯合を保持するラックガイド装置が設けられている。
【0033】
図5は、実施形態のラックバーの製造方法を説明するための図である。ラックバー1の構成の詳細を説明する前にラックバーの製造方法を簡単に説明する。ラックバー1の製造方法は、準備工程S10と、鍛造工程S20と、切削工程S30と、を含んでいる。準備工程S10は、中実の棒状部品200を準備する工程である。鍛造工程S20は、棒状部品200の軸方向の一部を、一対の金型201、202で押し潰す工程である。なお、押し潰された一部を拡幅部14と称する。また、鍛造工程S20の詳細は後述する。切削工程S30は、切削具203により拡幅部14を切削する工程である。次にラックバー1の詳細を説明する。
【0034】
図6は、実施形態のラックバーを第1直交方向から視た側面図である。図7は、実施形態のラックバーの第2軸部を幅方向から視た拡大側面図である。図8は、図6のVIII-VIII線矢視断面図である。図6に示すように、ラックバー1は、中実の棒状部材である。ラックバー1は、第1軸部11と、第2軸部12と、を有している。第1軸部11は、ラックバー1の軸方向の中央部から第1軸方向X1に延び、第1筒部41内に収容されている(図2参照)。第1軸部11の断面は、円形状を成している。また、第1軸部11の外周面には、第1ラック歯2が設けられている。この第1ラック歯2は、軸方向と直交方向のそれぞれに直交する方向(以下、幅方向Zという)を向いている。
【0035】
図6図7に示すように、第2軸部12は、ラックバー1の軸方向の中央部から第2軸方向X2に延び、第2筒部42内に収容されている(図2参照)。第2軸部12は、棒状部13と拡幅部14とを有している。また、拡幅部14は、第2軸部12の中央部に設けられている。よって、棒状部13は、拡幅部14に対し第1軸方向X1に配置される第1棒状部13aと、拡幅部14に対し第2軸方向X2に配置される第2棒状部13bと、を有している。
【0036】
第1棒状部13a及び第2棒状部13bは、軸方向に延在している。図8に示すように、第1棒状部13a及び第2棒状部13bは、断面が円形状を成している。図6に示すように、第1棒状部13a及び第2棒状部13bの直径R2は、第1軸部11の直径R1よりも大きい。よって、第2軸部12は、第1軸部11よりも大径となっている。よって、ラックバー1の外周面であって第1棒状部13aと第1軸部11との境界には、第1軸方向X1を向く第1段差面19が設けられている。
【0037】
なお、操舵ピニオン86から第1軸部11(第1ラック歯2)に伝達されるトルクは、アシストピニオン94から第2軸部12(第2ラック歯3)に伝達されるトルクよりも小さい。よって、第1軸部11は、小径化されているものの十分な剛性を有している。また、第1軸部11の小径化によって第1筒部41の小径化(ハウジング40の軽量化)が達成される。
【0038】
拡幅部14は、鍛造工程S20により形成された部位である。拡幅部14は、第1棒状部13a及び第2棒状部13bよりも幅方向の長さが長い。よって、図6に示すように、直交方向(第1直交方向Y1)から視ると、拡幅部14は、第1棒状部13a及び第2棒状部13bよりも幅方向の外側に突出している。この拡幅部14は、鍛造加工(鍛造工程S20)により、断面が円形状を成す円柱部を直交方向に押し潰され、肉部が幅方向Zに塑性変形することで形成されている。つまり、鍛造加工を行う前の第2軸部12は、第1棒状部13a及び第2棒状部13bと同じ直径(直径R1)の円柱部である。よって、図8に示すように、鍛造加工(鍛造工程S20)により、拡幅部14の直交方向の長さL1は、棒状部13の直交方向の長さ(直径R1)よりも小さくなっている。その代わりに、拡幅部14の幅方向の長さL2が棒状部13の幅方向の長さ(直径R1)よりも大きくなっている。
【0039】
拡幅部14の外周面のうち第1直交方向Y1を向く面に、第2ラック歯3が設けられている。この第2ラック歯3は、切削工程S30においてカッター(切削具203)で切削加工することで形成されている。図8に示すように、第2ラック歯3は、棒状部13よりも幅方向Zに長い。つまり、第2ラック歯3は、棒状部13に形成された場合よりも幅方向Zに長く、剛性が高い。
【0040】
また、図7に示すように、拡幅部14の外周面のうち第1直交方向Y1を向く面には、欠歯部15が設けられている。欠歯部15は、幅方向Zから視て第1直交方向Y1に開口するC字状を成している。欠歯部15は、切削工程S30であって、第2ラック歯3を切削加工した後に、エンドミル(切削具203)で切削加工することで形成されている。そして、欠歯部15は、アシストピニオン94のピニオン歯94aと対向しても、当接(歯合)しない。また、欠歯部15は、第2ラック歯3に対し、第1軸方向X1の隣に配置されている。なお、本実施形態の欠歯部15はC字状を成しているが、ピニオン歯94aと当接(歯合)しなければ、本開示は、単なる平面であったり、若しくは四角形状の窪みであったりしもよい。
【0041】
図8に示すように、拡幅部14は、外周面の一部であり、第2直交方向Y2の方を向く第2直交面16を有している。この第2直交面16には、第2ラック歯3の背面16aと、欠歯部15の背面16bと、が含まれている。第2直交面16は、鍛造加工(鍛造工程S20)により形成された形状であり、円弧面となっている。つまり、第2直交面16は、断面が軸方向の全てで円弧状(円弧面)を成し、同一形状となっている。よって、第2ラック歯3の背面16a及び欠歯部15の背面16bも同じ円弧面となっている。
【0042】
なお、本実施形態では、図8に示すように、ラックガイド53は、幅方向Zの大きさが第2直交面16よりも小さい。つまり、ラックガイド53は、第2直交面16の幅方向の中央部にのみ当接し、第2直交面16の幅方向の両端部に当接していない。よって、本実施形態では、第2直交面16のうち背面16a及び背面16bを構成する部分は、第2直交面16の一部(ラックガイド53と直交方向に重なる範囲)である。
【0043】
また、図8に示すように、第2直交面16は、棒状部13の外周面よりも幅方向Zに膨出している。よって、図7に示すように、第1棒状部13aの第2軸方向X2の端部には、第2直交面16に近づくにつれて径方向外側に膨出する第3段差面17が生じている。また、第2棒状部13bの第1軸方向X1の端部には、第2直交面16に近づくにつれて径方向外側に膨出する第4段差面18が生じている。
【0044】
以上から、拡幅部14の第2直交面16に段差面が生じていない。このため、ウォームギヤ95とウォームホイール96の慣らし運転を行う場合、図7に示すように、ラックバー1を第2軸方向X2に移動させてアシストピニオン94と欠歯部15を対向させても、第2直交面16がラックガイド装置50の樹脂部55に引っ掛からない。よって、ラックバー1の移動がスムーズとなる。また、拡幅部14の第2直交面16がラックガイド装置50の樹脂部55に引っ掛からないため、樹脂部55の破損も回避される。
【0045】
また、本実施形態では、図6に示すように、アシストピニオン94から視て、欠歯部15は、第1段差面19と第2段差面43と同じ方向に配置されている。以下、図9Aから図9Dを用いて当該構成の効果を説明する。
【0046】
図9Aは、実施形態の電動パワーステアリング装置であってステアリングホイールの中立時の模式図である。図9Bは、実施形態の電動パワーステアリング装置であってラックバーが第1軸方向に移動した場合の模式図である。図9Cは、変形例の電動パワーステアリング装置であってステアリングホイールの中立時の模式図である。図9Dは、変形例の電動パワーステアリング装置であってラックバーが第1軸方向に移動した場合の図である。
【0047】
なお、変形例の電動パワーステアリング装置180は、アシストピニオン194から視て、欠歯部115が第1段差面119及び第2段差面143と反対方向に配置されている点が実施形態と相違する。よって、拡幅部114の軸方向のうち、第1軸方向X1の端寄りに第2ラック歯103が配置され、第2軸方向X2の端寄りに欠歯部115が配置されている。また、アシストピニオン194の軸方向の位置に関し、第2ラック歯103が実施形態よりも第1軸方向X1寄りとなっている。よって、アシストピニオン194も併せて第1軸方向X1寄りに移動している。
【0048】
また、ラックバー1、101の移動距離を分かり易くするため、図9Aから図9Dでは、ステアリングホイールの中立時におけるラックバー1、101の第2軸方向X2の端部と重なる位置に基準線Wを引いている。
【0049】
図9A図9Bに示すように、実施形態によれば、アシストピニオン94が第2ラック歯3の第2軸方向X2の端部に歯合する場合、ラックバー1における第1軸方向X1への最大移動距離となる。また、このような場合でも、ラックバー1の第1段差面19とハウジング40の第2段差面43とが接触しない。そして、ラックバー1の移動距離は、W1となる。
【0050】
一方で、変形例によれば、図9C図9Dに示すように、アシストピニオン94が欠歯部115と対向する場合、ラックバー101の第1軸方向X1への最大移動距離となる。また、ハウジング140の第2段差面143は、ラックバー101の第1段差面119と接触しない。そして、ラックバー101の移動距離は、W2となる。
【0051】
ここで、変形例は、ラックバー101における第1軸方向X1への最大移動距離W2は、実施形態の最大移動距離W1よりも大きい。よって、第2段差面143は、実施形態の第2段差面43よりも第1軸方向X1に配置される。そして、ハウジング140のうち第1筒部141が占める割合が減り、第2筒部142が占める割合が増える。言い換えると、ハウジング140は、実施形態のハウジング40よりも重量化する。よって、本実施形態によれば、ハウジング40をさらに軽量化することができる。
【0052】
以上、実施形態の電動パワーステアリング装置80は、モータ92と、モータ92の出力軸に嵌合するウォームギヤ95と、ウォームギヤ95と歯合するウォームホイール96と、ウォームホイール96と一体に回転するアシストピニオン94と、アシストピニオン94と歯合するアシスト用ラック歯(第2ラック歯3)を有するラックバー1と、を備えている。ラックバー1は、ラックバー1の軸方向に延在する棒状部13と、棒状部13から軸方向に延在する拡幅部14と、を有している。拡幅部14は、断面形状における第1方向(直交方向)の厚みが棒状部13よりも小さく、かつ断面形状における第1方向と交差(直交)する第2方向(幅方向)の幅が棒状部13よりも大きい。拡幅部14の第1方向の一方(第1直交方向Y1)を向く面には、アシスト用ラック歯(第2ラック歯3)と欠歯部15とが設けられている。拡幅部13の第1方向の他方(第2直交方向Y2)を向く面のうちラックガイド53と第1方向(直交方向)と重なる範囲には、ラックガイド53と当接する背面16a、16bが設けられている。背面16a、16bは、軸方向に同一形状となっている。
【0053】
拡幅部14の第2直交面16は、軸方向の全てが同一形状となっており、段差(第3段差面17、第4段差面18)が発生していない。よって、ラックガイド装置50が引っ掛からず、ラックバー1の移動がスムーズとなる。また、従来は、ラックガイド装置50が引っ掛かることを回避するため、ラックバー1を移動させる前に、ハウジング40からラックガイド装置50を取り外したり、ラックガイド装置50のコイルばね54を緩めたりする、という作業を行っていた。よって、本実施形態によれば、このような作業が不要となり、労力の軽減化を図れる。言い方を変えると、本実施形態は、ハウジング40からラックガイド装置50を取り外したり、ラックガイド装置50のコイルばね54を緩めたりすることができない状態において、特に有効な効果を発揮することができる。
【0054】
また、実施形態の電動パワーステアリング装置80は、操舵ピニオン86と、ラックバー1を収容する筒状のハウジング40と、を有している。ラックバー1は、軸方向に延在する第1軸部11と、第1軸部11から軸方向に延在し、第1軸部11よりも大径の第2軸部12と、を有している。第1軸部11には、操舵ピニオン86と歯合する操舵用ラック歯(第1ラック歯2)が設けられている。第2軸部12には、棒状部13と拡幅部14が設けられている。ハウジング40は、第1軸部11を収容する第1筒部41と、第2軸部12を収容し、第1筒部41よりも大径な第2筒部42と、を有している。
【0055】
ラックバー1は、一部(第1軸部11)が小径となっているため、軽量化している。また、第1軸部11の小径化に伴い、第1筒部41も小径化し、ハウジング40も軽量化している。
【0056】
また、実施形態のラックバー1は、第1軸部11と第2軸部12との境界に配置され、軸方向の一方を向く第1段差面19を有している。ハウジング40は、第1筒部41と第2筒部42との境界に配置され、第1段差面19と対向する第2段差面43を有している。アシストピニオン94から視て、欠歯部15は、第1段差面19及び第2段差面43と同じ方向に配置されている。
【0057】
実施形態によれば、ハウジング40の第2段差面43をアシストピニオン94寄りに配置することができる。よって、ハウジング40において第2筒部42が占める割合が小さくなり、ハウジング40の軽量化を図れる。
【0058】
また、実施形態のラックバー1の製造方法は、中実の棒状部材200を準備する準備工程S10と、棒状部材200の軸方向の一部を断面形状における第1方向から押し潰し、前記断面形状における第1方向(直交方向)と交差する第2方向(幅方向)の幅が大きい拡幅部14を形成する鍛造工程S20と、拡幅部14の第1方向の一方を向く面を切削し、アシストラック歯(第2ラック歯3)と欠歯部15を形成する切削工程S30と、を含む。鍛造工程S20において、拡幅部14における第1方向の他方を向く面が軸方向に同一形状となっている。
【0059】
上記した製造方法によれば、拡幅部14の第2直交面16は、軸方向の全てが同一形状となっており、段差(第3段差面17、第4段差面18)が発生していない。よって、ラックガイド装置50が引っ掛からず、スムーズに移動するラックバー1を製造することができる。
【0060】
以上、実施形態について説明したが、本開示は実施形態で示した例に限定されない。例えば、図5において説明したラックバー1の製造方法は、ラックバー1の軸方向のうち、第2軸部12を形成するための工程である。よって、本開示は、図5で示した製造工程以外に、第1軸部11を形成するための別の工程を含んでいてもよい。
【0061】
また、本開示は、アシストピニオン194から視て、欠歯部115が第1段差面119と第2段差面143と反対方向に配置される、変形例の電動パワーステアリング装置180であってもよい(図9(c)と図9(d)を参照)。この変形例であっても、ラックガイド装置50が引っ掛かることなく、スムーズにラックバー1を移動できるからである。また、変形例の電動パワーステアリング装置180によれば、次のような効果を生じる。
【0062】
図10Aは、実施形態の電動パワーステアリング装置であってステアリングホイールの中立時の模式図である。図10Bは、実施形態の電動パワーステアリング装置であってラックバーが第2軸方向に移動した場合の模式図である。図10A図10Bに示すように、実施形態の電動パワーステアリング装置80では、欠歯部15が第2ラック歯3に対し第1軸方向X1に配置されている。よって、中立時からラックバー2が移動する軸方向の距離は、第1軸方向X1よりも第2軸方向X2の方が長い。よって、第1ラック歯2は、第1軸部11の第1軸方向X1の端寄りに配置されている。これにより、第1軸部11の第1軸方向X1の端部であって第1ラック歯2が形成されていない部位(以下、基準面11aと称する)は比較的短い。
【0063】
図10Cは、変形例の電動パワーステアリング装置であってステアリングホイールの中立時の模式図である。図10Dは、変形例の電動パワーステアリング装置であってラックバーが第2軸方向に移動した場合の図である。一方で、図10C図10Dに示すように、変形例の電動パワーステアリング装置180では、欠歯部115が第2ラック歯103に対し第2軸方向X2に配置されている。よって、中立時からラックバー101が移動する軸方向の距離は、第2軸方向X2よりも第1軸方向X1の方が長い。よって、変形例において、操舵ピニオン186が歯合する第1ラック歯102は、第1軸部111の第1軸方向X1の端から離れて配置される。これにより、第1軸部111の第1軸方向X1の端部であって第1ラック歯102が形成されていない部位(以下、基準面111aと称する)は、実施形態の基準面11aよりも長い。このため、基準面111aを基準にラックバー101を製造する際、実施形態よりも精度良く加工することができる。
【0064】
また、本開示における拡幅部の製造方法は、鍛造以外の加工によってもよく、特に限定されない。また、実施形態では、第1軸部11と第1筒部41が小径と成っているが、本開示は、ラックバー1とハウジング40が軸方向の全てが同径で形成されているラックバーやハウジングであってもよい。また、本実施形態では、デュアルピニオンタイプの電動パワーステアリング装置に適用した例を挙げているが、シングルピニオンタイプの電動パワーステアリング装置に適用してもよい。なお、シングルピニオンタイプの電動パワーステアリング装置とは、モータの駆動力がウォームギヤ及びウォームホイールを介して、操舵ピニオン86に対して伝達するタイプである。つまり、操舵ピニオン86がアシストピニオンとしての機能を有しているタイプである。
【0065】
また、本実施形態の第2直交面16は、背面16a及び背面16b(ラックガイド53と直交方向に重なる範囲)以外に、ラックガイド53が当接しない部分も含んだ形状となっている。そして、本実施形態の第2直交面16は、背面16a及び背面16b以外の部分も軸方向に同一形状となっている。しかしながら、本開示において、第2直交面16のうち背面16a及び背面16bを構成していない部分は、軸方向に同一形状となっていなくてもよい。また、本開示のラックガイド53は、幅方向Zの大きさが第2直交面16よりも大きくてもよい。この場合、第2直交面16の幅方向Zの全てがラックガイド53と当接する。よって、第2直交面16の幅方向Zの全てが背面16a及び背面16bと成る。さらに、上記では第2直交面16のうちラックガイド53と直交方向に重なる範囲の全てがラックガイド53と当接する例を説明しているが、本開示は、第2直交面16のうちラックガイド53と直交方向に重なる範囲の一部のみがラックガイド53と当接するようになっていてもよい。つまり、本開示は、第2直交面16のうちラックガイド53と直交方向に重なる範囲の一部が背面16a及び背面16bを成していてもよい。以上から、本開示は、第2直交面16のうちラックガイド53が当接する部分(背面16a及び背面16b)のみが軸方向に同一形状であればよい。
【0066】
また、本開示は、以下のような構成の組み合わせであってもよい。
(1)
モータと、
モータの出力軸に嵌合するウォームギヤと、
前記ウォームギヤと歯合するウォームホイールと、
前記ウォームホイールと一体に回転するアシストピニオンと、
前記アシストピニオンと歯合するアシスト用ラック歯を有するラックバーと、
を備え、
前記ラックバーは、
前記ラックバーの軸方向に延在する棒状部と、
前記棒状部から前記軸方向に延在する拡幅部と、
を有し、
前記拡幅部は、断面形状における第1方向の厚みが前記棒状部よりも小さく、かつ前記断面形状における前記第1方向と交差する第2方向の幅が前記棒状部よりも大きく、
前記拡幅部の前記第1方向の一方を向く面には、前記アシスト用ラック歯と欠歯部とが設けられ、
前記拡幅部の前記第1方向の他方を向く面のうちラックガイドと前記第1方向と重なる範囲には、前記ラックガイドと当接する背面が設けられ、
前記背面は、前記軸方向に同一形状となっている
電動パワーステアリング装置。
(2)
操舵ピニオンと、
前記ラックバーを収容する筒状のハウジングと、
を有し、
前記ラックバーは、
前記軸方向に延在する第1軸部と、
前記第1軸部から前記軸方向に延在し、前記第1軸部よりも大径の第2軸部と、
を有し、
前記第1軸部には、前記操舵ピニオンと歯合する操舵用ラック歯が設けられ、
前記第2軸部には、前記棒状部と前記拡幅部が設けられ、
前記ハウジングは、
前記第1軸部を収容する第1筒部と、
前記第2軸部を収容し、前記第1筒部よりも大径な第2筒部と、
を有している(1)に記載の電動パワーステアリング装置。
(3)
前記ラックバーは、前記第1軸部と前記第2軸部との境界に配置され、前記軸方向の一方を向く第1段差面を有し、
前記ハウジングは、前記第1筒部と前記第2筒部との境界に配置され、前記第1段差面と対向する第2段差面を有し、
前記アシストピニオンから視て、前記欠歯部は、前記第1段差面及び前記第2段差面と同じ方向に配置されている
(2)に記載の電動パワーステアリング装置。
(4)
前記ラックバーは、前記第1軸部と前記第2軸部との境界に配置され、前記軸方向の一方を向く第1段差面を有し、
前記ハウジングは、前記第1筒部と前記第2筒部との境界に配置され、前記第1段差面と対向する第2段差面を有し、
前記アシストピニオンから視て、前記欠歯部が前記第1段差面及び前記第2段差面と反対方向に配置される
(2)に記載の電動パワーステアリング装置。
(5)
中実の棒状部材を準備する準備工程と、
前記棒状部材の軸方向の一部を断面形状における第1方向から押し潰し、前記断面形状における前記第1方向と直交する第2方向の幅が大きい拡幅部を形成する鍛造工程と、
前記拡幅部の前記第1方向の一方を向く面を切削し、アシストラック歯と欠歯部を形成する切削工程と、
を含み、
前記鍛造工程において、前記拡幅部における前記第1方向の他方を向く面が前記軸方向に同一形状となっている
ラックバーの製造方法。
【符号の説明】
【0067】
1、101 ラックバー
2、102 第1ラック歯(操舵用ラック歯)
3、103 第2ラック歯(アシスト用ラック歯)
11、111 第1軸部
11a、111a 基準面
12 第2軸部
13 棒状部
13a 第1棒状部
13b 第2棒状部
14、114 拡幅部
15、115 欠歯部
16 第2直交面
16a 背面
16b 背面
17 第3段差面
18 第4段差面
19 第1段差面
40 ハウジング
41 第1筒部
42 第2筒部
43 第2段差面
50 ラックガイド装置
80、180 電動パワーステアリング装置
86、186 操舵ピニオン
90 アシスト装置
94、194 アシストピニオン
95 ウォームギヤ
96 ウォームホイール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D