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特開2024-21743ロータリアクチュエータ及び人体運動装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021743
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ロータリアクチュエータ及び人体運動装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/10 20060101AFI20240208BHJP
   A61H 1/02 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F15B15/10 H
A61H1/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124797
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】下岡 綜
(72)【発明者】
【氏名】五福 明夫
【テーマコード(参考)】
3H081
4C046
【Fターム(参考)】
3H081AA18
3H081BB03
3H081CC29
3H081FF48
3H081HH10
4C046AA10
4C046AA44
4C046BB04
4C046BB05
4C046BB09
4C046DD03
4C046DD33
(57)【要約】
【課題】様々な用途に適用可能なロータリアクチュエータ、及び患者に対する他動運動用の装置として適用可能な人体運動装置を提供する。
【解決手段】人体運動装置MEは、人体により保持又は人体を保持する保持部21,22が取り付けられたロータリアクチュエータ1を備える。ロータリアクチュエータ1は、仮想的な回動軸に対して回動自在に支持され、かつ回動軸の軸方向への移動が規制されている回動部材11と、一端が回動部材11に固定された長尺管状の管状部材13と、管状部材13の他端が固定された固定部材10とを備える。管状部材13は、回動軸の周囲を螺旋状に周回するように配置されており、内部への流体の供給/排出により、長手方向に伸縮するようにしてある。回動部材11は、管状部材13の長手方向の伸縮により、回動する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想的な回動軸に対して回動自在で、かつ前記回動軸の軸方向への移動が規制されている回動部材と、
一端が前記回動部材に固定された長尺管状の管状部材と、
前記管状部材の他端が固定された固定部材と
を備え、
前記管状部材は、
前記回動軸の周囲を螺旋状に周回するように配置されており、
内部への流体の供給/排出により、長手方向に伸縮するようにしてあり、
前記回動部材は、
前記管状部材の長手方向の伸縮により、回動する
ことを特徴とするロータリアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載のロータリアクチュエータであって、
前記回動軸と軸心が一致するように配置された長尺状の軸部材を備え、
前記回動部材は、
前記軸部材により回動自在に支持されている
ことを特徴とするロータリアクチュエータ。
【請求項3】
請求項2に記載のロータリアクチュエータであって、
前記軸部材は、可撓性を有する
ことを特徴とするロータリアクチュエータ。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のロータリアクチュエータであって、
前記管状部材を保持し、前記管状部材が前記軸部材に沿って螺旋状に伸縮するように案内する案内部材を備え、
前記案内部材は、
前記軸部材に回動自在に支持されており、
前記管状部材の長手方向の伸縮に対し、前記管状部材を保持した状態で回動する
ことを特徴とするロータリアクチュエータ。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のロータリアクチュエータであって、
前記管状部材を複数備える
ことを特徴とするロータリアクチュエータ。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のロータリアクチュエータであって、
前記管状部材は、
可撓性、伸縮性及び密封性を有する内管と、
可撓性及び長手方向の伸縮性を有し、前記内管を被覆する被覆部材と
を用いて形成されている
ことを特徴とするロータリアクチュエータ。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載のロータリアクチュエータを備え、
前記ロータリアクチュエータが備える前記回動部材には、人体により保持又は人体を保持する保持部が取り付けられている
ことを特徴とする人体運動装置。
【請求項8】
請求項7に記載の人体運動装置であって、
前記保持部は、手により把持可能である
ことを特徴とする人体運動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動する回動部材を備えるロータリアクチュエータ、及びそのようなロータリアクチュエータを備える人体運動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リハビリテーション工学、ロボット工学等の様々な分野で回動動作を行うロータリアクチュエータが用いられている。ロータリアクチュエータには様々な種類があり、例えば、空気等の流体を用いて駆動するロータリアクチュエータが提案されている。
【0003】
特許文献1に開示されたロータリアクチュエータは、シリンダ内に往復動するピストンに出力軸を連結し、ピストンの往復動を回転運動に変換して出力軸に接続された回転弁の弁棒を駆動する。
【0004】
特許文献2に開示されたロータリアクチュエータは、揺動軸を介して回転自在に設けられるピニオンと、ピニオンに歯合するラック軸と、ラック軸を動作させる動作ピストンと、ラック軸を復帰移動させる復帰ピストンと、復帰ピストンを基準位置に停止させるストッパとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-183859号公報
【特許文献2】特開平5-223106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に開示されている従来のロータリアクチュエータは、ピストンの往復運動を回転運動に変換する機構である。しかしながら、ロータリアクチュエータの用途の拡大に伴い、ピストンを用いない新たな機構のロータリアクチュエータが求められている。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、ピストンを用いない新たな機構のアクチュエータの提供を目的とする。また、本願は、本願に開示のロータリアクチュエータを用いた人体運動装置の提供を他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本願開示のロータリアクチュエータは、仮想的な回動軸に対して回動自在で、かつ前記回動軸の軸方向への移動が規制されている回動部材と、一端が前記回動部材に固定された長尺管状の管状部材と、前記管状部材の他端が固定された固定部材とを備え、前記管状部材は、前記回動軸の周囲を螺旋状に周回するように配置されており、内部への流体の供給/排出により、長手方向に伸縮するようにしてあり、前記回動部材は、前記管状部材の長手方向の伸縮により、回動することを特徴とする。
【0009】
また、本願開示のロータリアクチュエータにおいて、前記回動軸と軸心が一致するように配置された長尺状の軸部材を備え、前記回動部材は、前記軸部材により回動自在に支持されていることを特徴とする。
【0010】
また、本願開示のロータリアクチュエータにおいて、前記軸部材は、可撓性を有することを特徴とする。
【0011】
また、本願開示のロータリアクチュエータにおいて、前記管状部材を保持し、前記管状部材が前記軸部材に沿って螺旋状に伸縮するように案内する案内部材を備え、前記案内部材は、前記軸部材に回動自在に支持されており、前記管状部材の長手方向の伸縮に対し、前記管状部材を保持した状態で回動することを特徴とする。
【0012】
また、本願開示のロータリアクチュエータにおいて、前記管状部材を複数備えることを特徴とする。
【0013】
また、本願開示のロータリアクチュエータにおいて、前記管状部材は、可撓性、伸縮性及び密封性を有する内管と、可撓性及び長手方向の伸縮性を有し、前記内管を被覆する被覆部材とを用いて形成されていることを特徴とする。
【0014】
更に、本願開示の人体運動装置は、前記ロータリアクチュエータを備え、前記ロータリアクチュエータが備える前記回動部材には、人体により保持又は人体を保持する保持部が取り付けられていることを特徴とする。
【0015】
また、本願開示の人体運動装置において、前記保持部は、手により把持可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本願開示のロータリアクチュエータ及び人体運動装置は、仮想的な回動軸の周囲を螺旋状に周回する管状部材に流体を供給/排出することにより、管状部材に支持された回動部材を回動させる。これにより、本願開示のロータリアクチュエータ等は、ピストンを用いない新たな機構のロータリアクチュエータ等の提供が可能である等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本願開示の人体運動装置の一例を示す概略外観図である。
図2】本願開示の人体運動装置の一例を示す概略外観図である。
図3A】本願開示のロータリアクチュエータの外観の一例を示す概略外観図である。
図3B】本願開示のロータリアクチュエータの外観の一例を示す概略外観図である。
図4】本願開示のロータリアクチュエータが備える管状部材の内部構造の一例を模式的に示す断面図である。
図5】本願開示のロータリアクチュエータが備える案内部材の外観の一例を示す概略外観図である。
図6A】本願開示のロータリアクチュエータの外観の一例を示す概略外観図である。
図6B】本願開示のロータリアクチュエータの外観の一例を示す概略外観図である。
図7A】本願開示のロータリアクチュエータの外観の一例を示す概略外観図である。
図7B】本願開示のロータリアクチュエータの外観の一例を示す概略外観図である。
図8】本願開示の人体運動装置の外観の一例を示す概略外観図である。
図9】本願開示の人体運動装置の外観の一例を示す概略外観図である。
図10】本願開示の人体運動装置の外観の一例を示す概略外観図である。
図11】本願開示のロータリアクチュエータが備える管状部材の内圧と回動部材の角度との関係の一例を示すグラフである。
図12】本願開示のロータリアクチュエータが備える案内部材の外観の一例を示す概略外観図である。
図13】本願開示のロータリアクチュエータが備える管状部材の内圧と回動部材に対するトルクとの関係の一例を示すグラフである。
図14】本願開示のロータリアクチュエータが備える管状部材の内圧と回動部材に対するトルクとの関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳述する。なお、以下の実施形態は、本発明を具現化した一例であって、本発明の技術範囲を限定する性格のものではない。
【0019】
<適用例>
本願開示のロータリアクチュエータは、例えば、手首の他動運動等のリハビリテーション用の人体運動装置として用いられる。以下では、図面を参照しながら図面に記載されたリハビリテーション用の人体運動装置MEを例示して説明する。
【0020】
図1及び図2は、本願開示の人体運動装置MEの一例を示す概略外観図である。図1及び図2は、患者の手首の他動運動をしている状態を側方から示す外観図である。図1は、伸展状態を示しており、図2は、屈曲状態を示している。人体運動装置MEは、ロータリアクチュエータ1と、ロータリアクチュエータ1が取り付けられた架台20と、患者が保持する把持桿21(保持部)と、患者を保持する保持具22(保持部)とを備えている。
【0021】
ロータリアクチュエータ1は、略円板状の固定部材10及び回動部材11、並びに軸部材12、管状部材13、案内部材14等の各種部材を備えている。固定部材10は、架台20に取り付けられており、架台20により、高さ及び角度が固定されている。固定部材10には、軸部材12及び管状部材13の下端が取り付けられており、軸部材12及び管状部材13は、上端で回動部材11を回動自在に支持している。管状部材13は、複数の案内部材14にて保持されており、案内部材14は、管状部材13を保持した状態で、管状部材13が軸部材12に沿って螺旋状に伸縮するように案内する。管状部材13には、エアコンプレッサ等の給排装置(図示せず)から空気等の流体を内部に供給及び排出するシリコーンゴムチューブ等の給排管15が取り付けられている。回動部材11の上面に取り付けられた把持桿21は、患者が手により把持する棒状の部材である。回動部材11の上面に取り付けられた保持具22は、患者の手首を保持する面ファスナー、ベルト等の部材である。
【0022】
人体運動装置MEは、図1に例示する状態から、ロータリアクチュエータ1が備える管状部材13の内部に空気等の流体を供給することにより、回動部材11が回動し、図2に示す状態に遷移する。図2に示す状態に遷移することにより、人体運動装置MEは、患者に対して、伸展状態の手首を屈曲させる他動運動を行わせる。人体運動装置MEは、図2に示す状態から、管状部材13の内部から流体を排出させることにより、回動部材11が反対方向に回動し、図1に示す状態に遷移する。図1に示す状態に遷移することにより、人体運動装置MEは、患者に対して、屈曲状態の手首を伸展させる他動運動を行わせる。管状部材13に対する流体の供給及び排出を繰り返すことにより、回動部材11が往復回動運動を行うので、患者の手首の他動運動を行うことが可能となる。
【0023】
本願開示の人体運動装置MEは、管状部材13に供給及び排出する流体でロータリアクチュエータ1を動作させるため、患者の手首の他動運動に適用した場合、手首への強制力が大きくなり過ぎることを防止する。従って、本願開示の人体運動装置MEは、患者に必要以上の負担をかけることを防止する等、優れた効果を奏する。
【0024】
本願開示の人体運動装置MEが備えるロータリアクチュエータ1の構造について説明する。図3A及び図3Bは、本願開示のロータリアクチュエータ1の外観の一例を示す概略外観図である。以降では説明の便宜上、ロータリアクチュエータ1の方向については、固定部材10が取り付けられている方向を下方、そして回動部材11が取り付けられている方向を上方と定義する。なお、これらの方向は説明の便宜上の定義であり、ロータリアクチュエータ1及び人体運動装置MEの取付方向及び設置方向を限定するものではない。図3Aは、ロータリアクチュエータ1を斜め上方からの視点で示す概略斜視図であり、図3Bは、ロータリアクチュエータ1を側方からの視点で示す概略側面図である。図3A及び図3Bは、いずれもロータリアクチュエータ1から流体が排出された状態を示しており、図3A及び図3Bに示す状態における回動部材11の回動角度を0°(0deg )と定義する。
【0025】
ロータリアクチュエータ1が備える固定部材10は、扁平な円板状をなしており、中心近傍に円形状の挿通孔が開設されており、中心の挿通孔の周囲に中心角が120°の間隔で円形状の挿通孔が3箇所に開設されている。中心の挿通孔には、軸部材12の下端側が挿通された状態で固定されている。周囲の挿通孔には、管状部材13の下端側(他端側)が挿通された状態で固定されている。固定部材10は、例えば、硬質、かつ軽量で、耐久性が高いポリオキシメチレン樹脂(POM:Polyoxymethylene)等の材料を用いて形成される。
【0026】
ロータリアクチュエータ1が備える回動部材11は、扁平な円板状をなしており、中心近傍に円形状の挿通孔が開設されており、中心の挿通孔の周囲に中心角が120°の間隔で円形状の挿通孔が3箇所に開設されている。回動部材11に開設された中心の挿通孔には、軸部材12の上端側が挿通されており、回動部材11は、軸部材12により、回動自在に支持されている。回動部材11の回動は、仮想的な回動軸を中心とし、回動部材11は、回動軸の軸方向へ移動しないように規制されている。図3A及び図3Bに例示されている形態では、回動部材11は軸部材12に回動自在に支持されているため、軸部材12と仮想的な回動軸の軸心とが一致し、軸部材12により回動部材11の軸方向へ移動しないように規制されている。周囲の挿通孔には、管状部材13の上端側(一端側)が挿通された状態で固定されている。回動部材11は、例えば、硬質、かつ軽量で、耐久性が高いポリオキシメチレン樹脂等の材料を用いて形成される。
【0027】
ロータリアクチュエータ1が備える軸部材12は、断面が略円形の長尺軸状をなし、下端側が固定部材10の中心の挿通孔に固定され、上端側で回動部材11を回動自在に支持している。軸部材12は、可撓性及び弾性を有し、応力をかけることにより弧状に湾曲し、かつ応力から解放することにより直線状に復帰する。
【0028】
ロータリアクチュエータ1が備える管状部材13は、長尺管状をなし、下端側が固定部材10の中心の周囲の挿通孔に固定され、上端側が回動部材11の中心の周囲の挿通孔に固定されている。ロータリアクチュエータ1は、3本の管状部材13を備え、3本の管状部材13は、軸部材12の周囲を螺旋状に周回するように配置されている。管状部材13の下端は、給排管15を介して給排装置に接続されており、管状部材13の上端は、内部の流体が漏れないように封止されている。管状部材13は、内部に流体を供給及び排出することにより、長手方向に伸縮する。管状部材13は、内部に流体を供給することにより、自然長から2倍以上伸長し、伸長した状態でも柔軟で、可撓性を有している。
【0029】
管状部材13の構造について更に説明する。図4は、本願開示のロータリアクチュエータ1が備える管状部材13の内部構造の一例を模式的に示す断面図である。図4は、管状部材13を長手方向に切断した断面を模式的に示している。管状部材13は、内管130と、内管130を被覆する被覆部材131とを備える二重管構造として形成されている。内管130は、シリコーンゴムチューブを用いて形成されており、可撓性、伸縮性、弾性及び密封性を有している。被覆部材131は、内管130を被覆する蛇腹状のスリーブであり、可撓性及び長手方向の伸縮性を有している。内管130は、長手方向に伸縮し、径方向に膨張する。被覆部材131は、蛇腹状の構造により、内管130の可撓性を維持しながら径方向の膨張を抑止し、伸長方向が長手方向になるよう規制する。
【0030】
管状部材13の上端となる一端の開口は、封止部材132にて封止されており、下端となる他端の開口は、閉栓部材133にて閉栓されている。閉栓部材133には、給排孔133aが開設されており、給排孔133aには給排管15が接続されている。管状部材13の一端近傍及び他端近傍は、内管130、被覆部材131、並びに封止部材132又は閉栓部材133を固定する緊結具134により緊結されている。
【0031】
図5は、本願開示のロータリアクチュエータ1が備える案内部材14の外観の一例を示す概略外観図である。図5は、案内部材14を上方からの視点で示す概略平面図である。図3A及び図3B並びに図5を用いて案内部材14について説明する。ロータリアクチュエータ1が備える複数の案内部材14は、扁平な円板状をなしており、中心近傍に円形状の軸孔140が開設されており、中心の軸孔140の周囲に中心角が120°の間隔で楕円形状の案内孔141が3箇所に開設されている。中心の軸孔140には、軸部材12が挿通され、3箇所の各案内孔141には、それぞれ管状部材13が挿通される。案内部材14は、軸孔140に挿通された軸部材12により、軸方向の位置が保持され、かつ回動自在に支持されている。案内部材14は、案内孔141に挿通された管状部材13が、軸部材12に沿って螺旋状に伸縮するように案内する。案内部材14は、管状部材13の長手方向の伸縮に対し、管状部材13を保持した状態で軸部材12を回動中心として回動する。案内部材14は、例えば、半透明なポリエチレンテレフタレート樹脂(PET:Polyethylene Terephthalate)等の材料を用いて形成される。
【0032】
本願開示のロータリアクチュエータ1の動作について説明する。前述の図3A及び図3Bは、流体が排出された状態のロータリアクチュエータ1を示しており、回動部材11の回動角度が0°の状態である。図6A及び図6Bは、本願開示のロータリアクチュエータ1の外観の一例を示す概略外観図である。図6A及び図6Bは、図3A及び図3Bに例示した状態のロータリアクチュエータ1に流体を供給した状態を示している。図3A及び図3Bに示す状態から、空気等の流体を管状部材13内に供給することにより、管状部材13は長手方向に伸長する。ロータリアクチュエータ1が備える固定部材10及び回動部材11は、軸部材12に取り付けられているため、固定部材10及び回動部材11の間隔は固定されている。従って、管状部材13は、回動する案内部材14に案内されて、軸部材12に沿って螺旋状に伸長し、捻れが強くなる。管状部材13が捻れることにより、回動部材11が回動する。図3A及び図3Bに示す状態と比べ、図6A及び図6Bに示す状態は、管状部材13が伸長し、螺旋の間隔が狭く、捻れが強くなり、回動部材11が回動している。図6A及び図6Bは、回動部材11の回動角度が260°の状態を示している。
【0033】
図7A及び図7Bは、本願開示のロータリアクチュエータ1の外観の一例を示す概略外観図である。図7A及び図7Bは、図6A及び図6Bに例示した状態から、更に流体を供給したロータリアクチュエータ1の状態を示している。図7A及び図7Bに示すロータリアクチュエータ1は、管状部材13が更に伸長し、回動部材11の回動角度が大きくなっている。図7A及び図7Bは、回動部材11の回動角度が450°の状態を示している。
【0034】
ロータリアクチュエータ1の管状部材13から流体を排出した場合、逆の動作となり、図7A及び図7Bに例示する状態から、図6A及び図6Bに例示する状態に、更に図3A及び図3Bに例示する状態へと遷移する。
【0035】
例えば、特許文献1(特開2006-183859号公報)に開示されているような空気圧式ロータリアクチュエータは、往復運動を行うシリンダを駆動力として最大回動角度が、270°程度以下に制限されているタイプが一般的である。しかしながら、本願開示のロータリアクチュエータ1の回動部材11は、図6A及び図6Bに例示する260°を越えて、図7A及び図7Bに例示する450°のように、400~500°程度の回動角度を実現することも可能である。
【0036】
図8図9及び図10は、本願開示の人体運動装置MEの外観の一例を示す概略外観図である。人体運動装置MEが備えるロータリアクチュエータ1は、管状部材13と共に軸部材12も、可撓性を有しているので、応力をかけることにより弧状に湾曲する。このため本願開示の人体運動装置ME及びロータリアクチュエータ1は、軸部材12を湾曲させて、回動部材11の回動軸の角度を変化させた状態で使用することも可能である。図8乃至図10は、湾曲させた状態で使用する人体運動装置MEを例示している。
【0037】
図8は、回動部材11の回動角度が0°の状態であり、図8に例示する状態から、管状部材13に流体を供給することにより、回動部材11が回動し、湾曲状態を維持しながら図9に例示する状態に遷移する。湾曲状態が維持された状態で回動するため、本願開示のロータリアクチュエータ1は、人体運動装置MEに適用し、手首の他動運動に用いた場合、患者にとって自然な角度での他動運動を実現することが可能である。
【0038】
図10は、図9に例示する状態から、管状部材13に、更に流体を供給することにより、湾曲状態を維持しながら更に回動部材11が回動したロータリアクチュエータ1の状態を示している。図9に示す状態から図10に示す状態に遷移した場合のように、回動角度がある程度以上大きくなった場合、ロータリアクチュエータ1は、管状部材13が折れ曲がる座屈状態となる。管状部材13が座屈することにより、管状部材13の伸長変形が回動方向へ寄与しやすい状態となる。なお、回動角度が大きくなるに連れて、管状部材13の内管130として用いられているシリコーンゴムチューブの剛性が高くなり、管状部材13が、強い捻れとなる螺旋形状を形成しにくくなる。従って、図10に例示するように、管状部材13が座屈した場合、回動角度を大きくするために必要な流体の供給圧力が高くなる。そこで、案内部材14に開設する案内孔141を図5に例示したように楕円形状に形成することにより、管状部材13が座屈した場合に必要な流体の供給圧力を抑制することが可能となる。なお、案内孔141を楕円形状に形成する場合、案内孔141の長軸の長さは、管状部材13が折れ曲がる括れ部分の外形より大きく、短軸は括れ部分を潰す程度の長さでも回動するように設計することが可能である。
【0039】
また、本願開示のロータリアクチュエータ1は、管状部材13が可撓性を有するため、流体の供給の際の回動方向の反対方向へ回動部材11を強く捻ることにより、管状部材13の螺旋の周回方向を反対方向に反転させることが可能である。管状部材13の螺旋の周回方向を反対方向に反転させることにより、ロータリアクチュエータ1の回動方向を反転させることが可能となる。
【0040】
図11は、本願開示のロータリアクチュエータ1が備える管状部材13の内圧と回動部材11の角度との関係の一例を示すグラフである。図11は、横軸に管状部材13の内圧をとり、縦軸に回動部材11の回動角度をとって、その関係を示している。グラフ中、「●」は、流体を供給する際の関係を示し、「■」は、流体を排出する際の関係を示している。図11に例示するように、管状部材13の内圧と、回動部材11の角度には一定の関係があり、管状部材13の内圧、即ち、管状部材13への流体の供給量を調整することにより、回動部材11の回動角度を制御することができる。
【0041】
以上のように、本願開示のロータリアクチュエータ1は、螺旋状に配置された管状部材13の内部に流体を供給及び排出することにより、回動部材11が回動する新たな機構のアクチュエータを提供することが可能である。
【0042】
本願開示のロータリアクチュエータ1は、例えば、人体運動装置MEに適用することが可能であり、人体運動装置MEに適用した場合、流動性のある流体で動作を行わせるので、強制力が強くなり過ぎることがなく、患者に対する負担を軽減することが可能である等、優れた効果を奏する。
【0043】
また、本願開示のロータリアクチュエータ1は、軸部材12が可撓性を有し、弧状に湾曲するため、仮想的な回動軸の角度を変化させることが可能である等、優れた効果を奏する。
【0044】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他のいろいろな形態で実施することが可能である。そのため、かかる実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。更に、請求の範囲の均等範囲に属する変形及び変更は、全て本発明の技術範囲内のものである。
【0045】
例えば、前記実施形態では、案内部材14に開設する案内孔141を楕円形状とする形態を示したが、本発明はこれに限らず案内孔141を様々な形状とすることが可能である。図12は、本願開示のロータリアクチュエータ1が備える案内部材14の外観の一例を示す概略外観図である。図12に例示する案内部材14は、中心の軸孔140の周囲に中心角が120°の間隔で円形状の案内孔141が3箇所に開設されている。案内孔141を円形状とすることにより、管状部材13が伸長した場合でも座屈し難くなる。
【0046】
図13及び図14は、本願開示のロータリアクチュエータ1が備える管状部材の内圧と回動部材11に対するトルクとの関係の一例を示すグラフである。図13及び図14は、横軸に管状部材13の内圧をとり、縦軸に回動部材11に対するトルクをとって、その関係を示している。グラフ中、「●」は、流体を供給する際の関係を示し、「■」は、流体を排出する際の関係を示している。図13は、案内部材14に開設された案内孔141が楕円形状のロータリアクチュエータ1に係るグラフであり、図14は、案内孔141が、円形状のロータリアクチュエータ1に係るグラフである。
【0047】
図13及び図14を比較すると、図13に例示した楕円形状の案内孔141が形成されたロータリアクチュエータ1のトルクは、350[kPa]近傍で極大となった後、急激に低下し、400[kPa]近傍で極小となった後、再度上昇している。トルクの急激な低下は、管状部材13の座屈によるものであり、座屈が発生しなかった円形状の案内孔141が形成されたロータリアクチュエータ1では、急激なトルクの低下は観測されなかった。また、略全体に渡って、円形状の案内孔141が形成されたロータリアクチュエータ1のトルクが高い値を示している。このような楕円形状の案内孔141が形成されたロータリアクチュエータ1を、例えば、人体運動装置MEに適用して、人体を保持するように構成した場合、回動角度がある程度まで大きくなるとトルクが小さくなるという特性を持つことになる。例えば、一般的なロータリアクチュエータを適用した装置では、回動角度が大きくなると、保持している人体の関節等に対して大きな負荷が生じ、怪我、症状の悪化等のリスクが生じる場合も想定されるが、回動角度が大きくなった段階で座屈することにより、リスクを回避するよう設計することも可能となる。
【0048】
また、例えば、前記実施形態では、流体として空気を用いる形態を示したが、本発明に係るロータリアクチュエータ1は、これに限らず、空気以外の気体、水、油等の液体等の様々な流体を用いる形態に展開することが可能である。
【0049】
また、例えば、前記実施形態では、仮想的な回動軸と軸心が一致する一本の軸部材12を用いる形態を示したが、本発明はこれに限るものではない。本発明に係るロータリアクチュエータ1は、回動部材11を回動自在に支持し、回動部材11の軸方向への移動が規制されているのであれば、軸部材12を省略する形態等、様々な形態に展開することが可能である。
【0050】
更に、例えば、前記実施形態では、手首の他動運動に用いる形態を示したが、本発明に係る人体運動装置MEは、これに限らず、肩、肘、足首等の様々な関節の他動運動に適用することが可能である。
【0051】
更に、例えば、前記実施形態では、ロータリアクチュエータ1を人体運動装置MEに適用する形態を示したが、本発明のロータリアクチュエータ1は、これに限らず、様々な装置の動作部に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
ME 人体運動装置
1 ロータリアクチュエータ
10 固定部材
11 回動部材
12 軸部材
13 管状部材
130 内管
131 被覆部材
132 封止部材
133 閉栓部材
133a 給排孔
134 緊結具
14 案内部材
140 軸孔
141 案内孔
15 給排管
20 架台
21 把持桿(保持部)
22 保持具(保持部)
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14