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  • 特開-エンジン洗浄システム 図1
  • 特開-エンジン洗浄システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021745
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】エンジン洗浄システム
(51)【国際特許分類】
   F02B 77/04 20060101AFI20240208BHJP
   B60S 1/48 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F02B77/04
B60S1/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124805
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 凌
(72)【発明者】
【氏名】木谷 泰行
(72)【発明者】
【氏名】橋本 弘平
(72)【発明者】
【氏名】山本 絢香
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰則
【テーマコード(参考)】
3D225
【Fターム(参考)】
3D225AA01
3D225AB01
3D225AD01
3D225AF03
3D225AF07
(57)【要約】
【課題】エンジン洗浄システムのスペースを低減すること。
【解決手段】エンジン洗浄システム20は、洗浄液を貯留し、かつ、第1の配管L1によって、窓ガラスWに向けられたウォッシャーノズル22に接続されるウォッシャータンク21と、吸気管2内またはエンジン10の燃焼室C内に向けられた洗浄液インジェクタ23と、ウォッシャータンク21を洗浄液インジェクタ23に接続する第2の配管L2と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液を貯留し、かつ、第1の配管によって、窓ガラスに向けられたウォッシャーノズルに接続されるウォッシャータンクと、
吸気管内またはエンジンの燃焼室内に向けられた洗浄液インジェクタと、
前記ウォッシャータンクを前記洗浄液インジェクタに接続する第2の配管と、
を備える、
エンジン洗浄システム。
【請求項2】
前記第2の配管内に配置されるフィルタを備える、請求項1に記載のエンジン洗浄システム。
【請求項3】
前記洗浄液インジェクタは、第3の配管によって、水を貯留する水タンクと接続されており、
前記洗浄液インジェクタは、前記水タンクからの水を、前記吸気管内または前記燃焼室内に噴射する水インジェクタとして機能する、
請求項1または2に記載のエンジン洗浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンを洗浄するための様々なシステムが知られている。例えば、特許文献1から3は、エンジンの洗浄に洗浄液を使用する装置を開示する。特許文献1の装置は、洗浄液を貯留するタンクを備える。タンクの洗浄液は、燃料タンクと燃料噴射ノズルとの間の燃料供給系に供給される。洗浄液は、燃料と混合されて、燃料噴射ノズルから燃焼室に供給される。特許文献2,3の装置の各々は、洗浄液タンクと、洗浄液タンクに接続される洗浄液噴射ノズルと、を備える。洗浄液は、洗浄液噴射ノズルから吸気管内へ噴射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-317648号公報
【特許文献2】特開2004-116350号公報
【特許文献3】実用新案登録第3113082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両のスペースは限られているため、車両の開発では、エンジン洗浄システムを含めて、装備を配置するためのスペースを低減することが望まれる。
【0005】
本発明は、スペースを低減することができるエンジン洗浄システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るエンジン洗浄システムは、
洗浄液を貯留し、かつ、第1の配管によって、窓ガラスに向けられたウォッシャーノズルに接続されるウォッシャータンクと、
吸気管内またはエンジンの燃焼室内に向けられた洗浄液インジェクタと、
前記ウォッシャータンクを前記洗浄液インジェクタに接続する第2の配管と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エンジン洗浄システムのスペースを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係るエンジン洗浄システムを示す概略図である。
図2図2は、第2実施形態に係るエンジン洗浄システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料および数値等は、理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、明細書および図面において、実質的に同一の機能および構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るエンジン洗浄システム20を示す概略図である。エンジン洗浄システム20は、本開示において、単に「洗浄システム」とも称され得る。洗浄システム20は、例えば、HEV(Hybrid Electric Vehicle)、ガソリン自動車、または、ディーゼル自動車等、エンジン10を備える車両500に適用される。本実施形態では、車両500は、ガソリン自動車である。例えば、車両500は、エンジン10と、洗浄システム20と、水噴射システム30と、ECU(制御装置)50と、を備える。車両500は、その他の様々な構成要素をさらに備えてもよい。
【0011】
エンジン10は、シリンダブロック11と、ピストン12と、シリンダヘッド13と、を含む。シリンダブロック11、ピストン12およびシリンダヘッド13によって、燃焼室Cが画定される。ピストン12は、コネクティングロッドによってクランクシャフトに接続される(不図示)。
【0012】
エンジン10では、燃焼室Cにおいて、空気および燃料(ガソリン)の混合気が燃焼され、これによって、ピストン12がシリンダブロック11内を往復移動する。ピストン12の直線運動が、コネクティングロッドによってクランクシャフトに伝達され、クランクシャフトの回転運動に変換される。燃料の燃焼に伴って、ピストン12の冠面12aにはデポジットが堆積する。なお、より良い理解のために、図1は単一の気筒のみを示すが、エンジン10は複数の気筒を含むことができる。
【0013】
エンジン10は、吸気口14と、排気口15と、を含む。吸気口14には、吸気管2が接続され、排気口15には、排気管3が接続される。吸気口14には、吸気バルブ14aが設けられ、排気口15には、排気バルブ15aが設けられる。吸気バルブ14aおよび排気バルブ15aの各々の動作は、例えば、不図示のカムシャフトによって制御される。カムシャフトは、例えば回転ベルト等を介してクランクシャフトによって回転される。
【0014】
エンジン10は、燃料インジェクタ16を含む。燃料インジェクタ16は、燃焼室C内に向けられた噴射口を含む。燃料インジェクタ16は、燃焼室C内に燃料を噴射する(いわゆる、直接噴射)。他の実施形態では、燃料インジェクタ16は、吸気管2に設けられてもよい(いわゆる、予混合)。例えば、燃料インジェクタ16は、内蔵バルブを含む。燃料インジェクタ16は、ECU50と通信可能に接続される。ECU50は、燃料インジェクタ16の内蔵バルブを制御することによって、燃料の噴射を制御する。
【0015】
エンジン10は、点火プラグgを有する。点火プラグgは、燃焼室Cにおいて空気および燃料の混合気を着火する。点火プラグgは、ECU50と通信可能に接続される。ECU50は、点火プラグgの動作を制御する。
【0016】
洗浄システム20は、ウォッシャータンク21を含む。ウォッシャータンク21は、洗浄液を貯留する。ウォッシャータンク21は、例えば、エンジンルーム内に設けられる。
【0017】
ウォッシャータンク21に貯留される洗浄液は、窓ガラスWの洗浄およびエンジン10内のデポジットの除去の双方に使用可能な様々な液体であることができる。驚くべきことに、本発明者は、窓ガラスの洗浄に使用される市販のウォッシャー液が、エンジン10内のデポジットの除去にも有効に働くことを見出した。そのような新たな知見に基づき、洗浄液は、市販のウォッシャー液であってもよい。また、例えば、洗浄液は、界面活性剤と、エタノールまたはイソプロピルアルコール等のアルコールと、を含む液体であってもよい。
【0018】
ウォッシャータンク21は、第1の配管L1によって、ウォッシャーノズル22に接続される。第1の配管L1には、ポンプP1が設けられてもよい。ウォッシャーノズル22は、窓ガラスWの周りに配置される。例えば、窓ガラスWは、フロントガラスであってもよい。ウォッシャーノズル22は、窓ガラスWに向けられた噴射口を含む。ウォッシャーノズル22は、ウォッシャータンク21の洗浄液を、窓ガラスWに向けて噴射する。例えば、ウォッシャーノズル22は、内蔵バルブを含む。
【0019】
ポンプP1およびウォッシャーノズル22は、ECU50と通信可能に接続されてもよい。ECU50は、ポンプP1およびウォッシャーノズル22の内蔵バルブの動作を制御することによって、窓ガラスWに向けた洗浄液の噴射を制御してもよい。
【0020】
また、洗浄システム20は、洗浄液インジェクタ23と、第2の配管L2と、を含む。
【0021】
洗浄液インジェクタ23は、例えば、吸気管2に配置される。洗浄液インジェクタ23は、吸気管2内に向けられた噴射口を含む。他の実施形態では、洗浄液インジェクタ23は、シリンダヘッド13に配置されてもよく、燃焼室C内に向けられた噴射口を含んでもよい。
【0022】
洗浄液インジェクタ23は、第2の配管L2によってウォッシャータンク21に接続される。第2の配管L2には、ポンプP2およびバルブV1が設けられてもよい。洗浄液インジェクタ23は、ウォッシャータンク21の洗浄液を、吸気管2内に噴射する。例えば、洗浄液インジェクタ23は、内蔵バルブを含む。
【0023】
ポンプP2、バルブV1および洗浄液インジェクタ23は、ECU50と通信可能に接続されてもよい。ECU50は、ポンプP2、バルブV1および洗浄液インジェクタ23の内蔵バルブの動作を制御することによって、吸気管2内への洗浄液の噴射を制御してもよい。
【0024】
また、洗浄システム20は、フィルタFを含む。フィルタFは、例えば、第2の配管L2に配置される。例えば、フィルタFは、洗浄液からカルシウム等のミネラル成分を除去してもよい。例えば、フィルタFは、カチオンフィルタを含んでもよい。
【0025】
地域によっては、市販のウォッシャー液は、多量のミネラル成分を含む場合がある。そのようなウォッシャー液が直接的に吸気管2内に噴射されると、ミネラル成分が燃焼室C内のデポジットの堆積やプレイグニッションの発生を助長するおそれがある。第2の配管L2にフィルタFを設けることによって、そのようなデポジットの堆積やプレイグニッションの発生の助長を抑制することができる。
【0026】
水噴射システム30は、水タンク31を含む。水タンク31は、水を貯留する。水タンク31は、例えば、エンジンルーム内に設けられる。
【0027】
水噴射システム30は、上記の洗浄システム20の洗浄液インジェクタ23を共用する。したがって、洗浄液インジェクタ23は、水インジェクタとしても機能する。洗浄液インジェクタ23は、第3の配管L3によって水タンク31に接続される。第3の配管L3には、ポンプP3およびバルブV2が設けられてもよい。洗浄液インジェクタ23は、水タンク31の水を、吸気管2内に噴射する。
【0028】
ポンプP3およびバルブV2は、ECU50と通信可能に接続されてもよい。ECU50は、ポンプP3、バルブV2および洗浄液インジェクタ23の内蔵バルブの動作を制御することによって、吸気管2内への水の噴射を制御してもよい。
【0029】
バルブV1、バルブV2および洗浄液インジェクタ23の内蔵バルブの少なくとも1つは、技術的に矛盾が無い限りにおいて、設けられなくてもよい。
【0030】
ECU50は、例えば、CPU等の1または複数のプロセッサ51と、ROMおよびRAM等の1または複数の記憶媒体52と、1または複数のコネクタ53と、を含む。ECU50は、他の構成要素をさらに有してもよい。ECU50の構成要素は、バスによって互いに通信可能に接続される。記憶媒体52は、プロセッサ51によって実行される1または複数のプログラムを記憶する。プログラムは、プロセッサ51に対する命令を含む。本開示に示されるECU50の動作は、記憶媒体52に記憶された命令をプロセッサ51で実行することによって、実現される。ECU50は、コネクタ53を介して車両500の構成要素と通信可能に接続される。
【0031】
続いて、車両500の動作について説明する。
【0032】
窓ガラスWを洗浄するときに、ECU50は、ウォッシャーノズル22の内蔵バルブを開き、ポンプP1を動作させる。これによって、ウォッシャータンク21の洗浄液が、窓ガラスWに向けて噴射される。
【0033】
洗浄システム20を動作するとき、ECU50は、例えば、洗浄液インジェクタ23の内蔵バルブおよびバルブV1を開き、バルブV2を閉じる。また、ECU50は、ポンプP2を動作させる。これによって、ウォッシャータンク21の洗浄液が、洗浄液インジェクタ23から吸気管2内へ噴射される。洗浄液は、吸気と一緒に燃焼室Cに導かれる。燃焼室C内の壁、例えば、ピストン12の冠面12aに堆積したデポジットは、洗浄液の界面活性剤によって、金属表面からはがれる。したがって、エンジン10内のデポジットを除去することができる。
【0034】
例えば、洗浄システム20は、界面活性剤によってデポジットが?がれやすいと予測される運転状況に動作されてもよい。例えば、洗浄システム20は、ピストン12の冠面12aが高温になると予測される運転状況に動作されてもよい。
【0035】
水噴射システム30を動作するとき、ECU50は、例えば、洗浄液インジェクタ23の内蔵バルブおよびバルブV2とを開き、バルブV1を閉じる。また、ECU50は、ポンプP3を動作させる。これによって、水タンク31の水が、洗浄液インジェクタ23から吸気管2内へ噴射される。空気および燃料の混合気が水によって冷却され、これが燃費の向上およびNOxの低減に繋がる。
【0036】
以上のような洗浄システム20は、洗浄液を貯留し、かつ、第1の配管L1によって、窓ガラスWに向けられたウォッシャーノズル22に接続されるウォッシャータンク21と、吸気管2内に向けられた洗浄液インジェクタ23と、ウォッシャータンク21を洗浄液インジェクタ23に接続する第2の配管L2と、を備える。このような構成によれば、窓ガラスWの洗浄に使用される洗浄液が、エンジン10内のデポジットの除去にも使用される。したがって、デポジット除去専用の洗浄液を貯留するための追加のタンクが必要とされない。よって、洗浄システム20のスペースを低減することができる。
【0037】
また、洗浄システム20は、第2の配管L2内に配置されるフィルタFを備える。このような構成によれば、ミネラル成分によるデポジットの堆積やプレイグニッションの発生の助長を抑制することができる。
【0038】
また、洗浄システム20では、洗浄液インジェクタ23は、第3の配管L3によって、水を貯留する水タンク31と接続されており、洗浄液インジェクタ23は、水タンク31からの水を、吸気管2内に噴射する水インジェクタとして機能する。このような構成によれば、洗浄液インジェクタ23を、洗浄システム20および水噴射システム30によって共用することができる。したがって、洗浄システム20のスペースをさらに低減することができる。
【0039】
続いて、他の実施形態について説明する。
【0040】
図2は、第2実施形態に係るエンジン洗浄システム20Aを示す概略図である。洗浄システム20Aは、洗浄液インジェクタ24および水インジェクタ25が別個に設けられる点で、第1実施形態に係る洗浄システム20と異なる。これに伴って、洗浄システム20Aは、バルブV1,V2を備えない。洗浄システム20Aは、その他の点については、第1実施形態に係る洗浄システム20と同じであってもよい。
【0041】
洗浄液インジェクタ24は、シリンダヘッド13に配置される。洗浄液インジェクタ24は、燃焼室C内に向けられた噴射口を含む。具体的には、噴射口は、ピストン12の冠面12aに向けられる。洗浄液インジェクタ24は、第2の配管L2によってウォッシャータンク21に接続される。洗浄液インジェクタ24は、内蔵バルブを含んでもよい。
【0042】
水インジェクタ25は、吸気管2に配置される。水インジェクタ25は、吸気管2内に向けられた噴射口を含む。水インジェクタ25は、第3の配管L3によって水タンク31に接続される。水インジェクタ25は、内蔵バルブを含んでもよい。
【0043】
このような洗浄システム20Aは、第1実施形態に係る洗浄システム20と略同様に動作することができる。特に、洗浄システム20Aでは、洗浄液インジェクタ24は、シリンダヘッド13に配置され、燃焼室C内に向けられる。したがって、洗浄液インジェクタ24は、ピストン12の冠面12aに直接的に洗浄液を噴射することができる。よって、冠面12aに堆積したデポジットを効率よく除去することができる。
【0044】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0045】
例えば、上記の実施形態では、車両500は、水噴射システム30を備える。他の実施形態では、車両500は、水噴射システム30を備えなくてもよい。
【0046】
第2実施形態に係る洗浄システム20Aでは、洗浄液インジェクタ24がシリンダヘッド13に配置され、水インジェクタ25が吸気管2に配置される。他の実施形態では、洗浄液インジェクタ24および水インジェクタ25は、逆の位置に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0047】
2 吸気管
10 エンジン
20 エンジン洗浄システム
20A エンジン洗浄システム
21 ウォッシャータンク
22 ウォッシャーノズル
23 洗浄液インジェクタ
24 洗浄液インジェクタ
31 水タンク
C 燃焼室
F フィルタ
L1 第1の配管
L2 第2の配管
L3 第3の配管
W 窓ガラス
図1
図2