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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021750
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】液体処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20240208BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20240208BHJP
【FI】
A61L2/10
C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124815
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】越智 貴則
【テーマコード(参考)】
4C058
4D037
【Fターム(参考)】
4C058AA20
4C058BB06
4C058CC04
4C058DD04
4C058KK02
4C058KK23
4C058KK46
4D037AA01
4D037AB03
4D037BA18
(57)【要約】
【課題】液体の紫外線の透過率が低い場合であっても、液体の処理効果を向上させることができる液体処理装置を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る液体処理装置は、筒状を呈し、一方向に延びる容器と;前記容器の内部に設けられ、前記容器が延びる方向に延びる保護管と;前記保護管の内部に設けられ、前記容器が延びる方向に延び、前記容器と前記保護管との間を流れる液体に紫外線を照射可能な少なくとも1つの光源と;を具備している。前記液体処理装置は、前記保護管の中心軸に沿った方向から見て、前記保護管の中心軸と、前記光源の中心軸とを含む線分が、前記保護管の外面と交わる点と、前記線分が、前記容器の内面と交わる点と、の間の距離をc(mm)とした場合に、以下の式を満足する。
1mm≦c(mm)≦10mm
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状を呈し、一方向に延びる容器と;
前記容器の内部に設けられ、前記容器が延びる方向に延びる保護管と;
前記保護管の内部に設けられ、前記容器が延びる方向に延び、前記容器と前記保護管との間を流れる液体に紫外線を照射可能な少なくとも1つの光源と;
を具備し、
前記保護管の中心軸に沿った方向から見て、前記保護管の中心軸と、前記光源の中心軸とを含む線分が、前記保護管の外面と交わる点と、前記線分が、前記容器の内面と交わる点と、の間の距離をc(mm)とした場合に、以下の式を満足する液体処理装置。
1mm≦c(mm)≦10mm
【請求項2】
前記保護管の中心軸に沿った方向から見て、前記保護管の中心軸と、前記光源の中心軸とを含む線分が、前記光源の外面と交わる点と、前記線分が、前記保護管の内面と交わる点と、の間の距離をd(mm)とした場合に、以下の式を満足する請求項1記載の液体処理装置。
d(mm)≦15mm
【請求項3】
前記液体の、紫外線の透過率が1%以下である請求項1または2に記載の液体処理装置。
【請求項4】
前記液体の温度が30℃以上である請求項1または2に記載の液体処理装置。
【請求項5】
前記保護管の内部に気体を供給する気体供給部をさらに備えた請求項1または2に記載の液体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水などの液体に紫外線を照射して、液体に含まれている有機物を除去したり、液体を殺菌したりする液体処理装置がある。紫外線による処理を行えば、熱や薬品などによる処理に比べて、処理の対象となる液体をほとんど変質させることがなく、また、多種類の不純物、細菌、ウイルスなどの処理に対応することができる。
そのため、紫外線を液体に照射する液体処理装置は、例えば、半導体装置などの電子部品の洗浄工程、飲料水の殺菌や不純物の除去工程、商業用水(漁業用水、農業用水、食品工場用水など)の殺菌や不純物の除去工程、各種工業用水の殺菌や不純物の除去工程などの幅広い技術分野において用いられている。
【0003】
この様な液体処理装置として、例えば、処理を行う液体が流れる空間を内部に有する容器と、容器の内部に設けられた保護管と、保護管の内部に設けられ、液体に紫外線を照射する放電ランプと、を備えた液体処理装置が提案されている。
【0004】
ここで、確実な処理を行うためには、処理を行う液体に対して、所定の照度以上の紫外線を照射するのが好ましい。しかしながら、例えば、処理を行う液体に不純物などが含まれている場合には、液体の紫外線の透過率が低くなる場合がある。液体の紫外線の透過率が低くなると、保護管(放電ランプ)からの距離が長くなるほど到達する紫外線の照度が低くなる。そのため、液体の紫外線の透過率が低くなると、保護管(放電ランプ)から離れた位置にある液体の処理効果が低減するおそれがある。
そこで、液体の紫外線の透過率が低い場合であっても、液体の処理効果を向上させることができる液体処理装置の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-144912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、液体の紫外線の透過率が低い場合であっても、液体の処理効果を向上させることができる液体処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る液体処理装置は、筒状を呈し、一方向に延びる容器と;前記容器の内部に設けられ、前記容器が延びる方向に延びる保護管と;前記保護管の内部に設けられ、前記容器が延びる方向に延び、前記容器と前記保護管との間を流れる液体に紫外線を照射可能な少なくとも1つの光源と;を具備している。前記液体処理装置は、前記保護管の中心軸に沿った方向から見て、前記保護管の中心軸と、前記光源の中心軸とを含む線分が、前記保護管の外面と交わる点と、前記線分が、前記容器の内面と交わる点と、の間の距離をc(mm)とした場合に、以下の式を満足する。
1mm≦c(mm)≦10mm
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、液体の紫外線の透過率が低い場合であっても、液体の処理効果を向上させることができる液体処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る液体処理装置を例示するための模式斜視図である。
図2図1における液体処理装置のA-A方向の模式断面図である。
図3図1における液体処理装置のB-B線方向の模式断面図である。
図4】1つの光源が設けられた液体処理装置を例示するための模式断面図である。
図5】光源の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る液体処理装置100を例示するための模式斜視図である。 図2は、図1における液体処理装置100のA-A線方向の模式断面図である。
図3は、図1における液体処理装置100のB-B線方向の模式断面図である。
なお、図1、および図2においては、上下方向に延びる様に設置された液体処理装置100を例示したが、液体処理装置100の設置姿勢はこれに限定されるわけではない。例えば、液体処理装置100は、水平方向に延びる様に設置することもできる。
【0012】
図1図3に示すように、液体処理装置100は、例えば、光源1、保護管101、容器102、ホルダ103、気体供給部104、端部カバー105、および設置部106を有する。
【0013】
光源1は、保護管101の内部に設けられている。光源1は、容器102が延びる方向に延びている。光源1は、容器102と保護管101との間を流れる液体300に紫外線を照射する。例えば、光源1は、光源1が延びる方向と交差する方向に紫外線を照射する。光源1の端部は、ホルダ103に着脱可能に設けられている。
【0014】
光源1は、例えば、紫外線を照射する放電ランプとすることができる。放電ランプの種類には特に限定がない。放電ランプは、例えば、低圧水銀ランプとすることができる。この場合、ピーク波長が254nmの紫外線を照射する低圧水銀ランプとしたり、ピーク波長が185nm及び254nmの紫外線を照射する低圧水銀ランプとしたりすることができる。また、放電ランプは、例えば、バリア放電ランプなどとすることもできる。バリア放電ランプは、例えば、ピーク波長が172nmの紫外線を照射するキセノンエキシマランプなどとすることができる。
【0015】
また、光源1は、例えば、一方向に延びる基板と、基板の面に設けられた複数の発光素子とを備えたものとすることもできる。発光素子は、例えば、紫外線を照射する発光ダイオード、紫外線を照射するレーザダイオードなどとすることができる。発光素子から照射される紫外線のピーク波長が短くなるほど、液体300に含まれる不純物の分解が容易となったり、液体300に含まれる細菌の殺菌が容易となったり、液体300に含まれるウイルスの不活性化が容易となったりする。発光素子から照射される紫外線のピーク波長がDNAの吸収帯である300nm以下であれば、液体300に含まれる細菌を殺菌するのが容易となる。
以下においては、一例として、光源1が低圧水銀ランプである場合を説明する。
【0016】
光源1は、少なくとも1つ設けることができる。
図1図3に例示をした液体処理装置100には複数の光源1が設けられている。
複数の光源1は、保護管101の内部に設けられている。複数の光源1は、保護管101の中心軸101aに沿って延びている。複数の光源1は、例えば、保護管101の中心軸101aを中心として回転対称となる位置に設けることができる。例えば、3つの光源1を設ける場合には、図3に示すように、保護管101の中心軸101aを中心として、3回対称となる位置に光源1を設けることができる。なお、光源1の数は3つに限定されるわけではない。
【0017】
複数の光源1が、保護管101の中心軸101aを中心として回転対称となる位置に設けられていれば、保護管101の周囲において、紫外線の照度のバラツキを小さくすることができる。そのため、保護管101の外面と、容器102の内面との間を流れる液体300に処理ムラが生じるのを抑制することができる。
【0018】
図4は、1つの光源1が設けられた液体処理装置100aを例示するための模式断面図である。
1つの光源1が設けられる場合には、保護管101の中心軸101aと、光源1の中心軸1aとが重なるようにすることができる。なお、複数の発光素子が設けられた光源を1つ設ける場合には、例えば、保護管101の中心軸101aと、複数の発光素子が設けられた基板の中心軸とが重なるようにすることができる。また、断面形状が多角形の柱状の基部の各面に、複数の発光素子を設け、保護管101の中心軸101aと、基部の中心軸とが重なるようにすることもできる。
【0019】
図5は、光源1の模式断面図である。
図5に示すように、低圧水銀ランプである光源1は、例えば、バルブ2、封止部3、第1の電極4a、および第2の電極4bを有する。
【0020】
バルブ2は、筒状を呈し、管径に比べて全長(管軸方向の長さ)が長い形態を有する。バルブ2は、一方向に延びている。バルブ2は、例えば、円筒管である。バルブ2の外径D(mm)は、例えば、10mm以上、25mm以下である。バルブ2の肉厚は、例えば、1mm程度である。
【0021】
バルブ2の管軸方向の長さは、液体処理装置100の仕様などに応じて適宜変更することができる。例えば、図2、および図5に示すように、光源1の発光長をb(mm)、供給部102aの中心軸と、排出部102bの中心軸との間の距離をa(mm)とした場合に、「a(mm)≦b(mm)」とすることができる。なお、光源1の発光長bは、第1の電極4aのフィラメント4a2と、第2の電極4bのフィラメント4a2との間の距離とすることができる。
【0022】
すなわち、光源1が放電ランプの場合には、光源1の発光長b(mm)は、放電が形成される領域の長さとすることができる。光源1が複数の発光素子を備えたものの場合には、光源1の発光長b(mm)は、複数の発光素子が設けられた領域の長さとすることができる。
【0023】
バルブ2の内部空間(放電空間)には、希ガスと水銀、または、希ガスとアマルガム、が封入されている。アマルガムは、水銀と、金属との合金である。金属は、例えば、亜鉛、ビスマス、インジウム、錫などである。水銀またはアマルガムの封入量は、例えば、1mg~300mg程度である。希ガスは、例えば、クリプトン、キセノン、アルゴン、ネオンなどの単ガス、あるいは、複数種類のガスを混合させた混合ガスとすることができる。
【0024】
バルブ2の内部空間における25℃の希ガスの圧力(封入圧力)は、例えば、0.1Torr(13.3Pa)以上、10Torr(1333Pa)以下とすることができる。すなわち、光源1は、低圧水銀ランプである。なお、バルブ2の内部空間における25℃の希ガスの圧力(封入圧力)は、気体の標準状態(SATP(Standard Ambient Temperature and Pressure):温度25℃、1bar)により求めることができる。
【0025】
バルブ2の管軸方向において、封止部3は、バルブ2の両側の端部のそれぞれに設けられている。封止部3を設けることで、バルブ2の内部空間を気密に封止することができる。また、一方の封止部3には第1の電極4aが設けられ、他方の封止部3には第2の電極4bが設けられている。
【0026】
バルブ2の内部空間には、第1の電極4a、および第2の電極4bが露出している。第2の電極4bは、第1の電極4aと対向している。図2に示すように、液体処理装置100が上下方向に延びる様に設置される場合には、例えば、第2の電極4bは、バルブ2の上側の封止部3に設けることができる。例えば、第1の電極4aは、バルブ2の下側の封止部3に設けることができる。
【0027】
第1の電極4aは、例えば、ウェルズ4a1、フィラメント4a2、およびエミッタ4a3を有する。
ウェルズ4a1は、線状を呈し、封止部3の内部に一対設けられている。ウェルズ4a1の一方の端部は、封止部3からバルブ2の内部に突出している。ウェルズ4a1の一方の端部は、フィラメント4a2の端部を保持している。ウェルズ4a1の他方の端部は、封止部3の外部に露出している。ウェルズ4a1の他方の端部は、配線5を介して点灯回路などと電気的に接続される。
【0028】
フィラメント4a2は、バルブ2の内部に設けられている。フィラメント4a2は、例えば、タングステンや、レニューム・タングステン合金などを含む線状部材を螺旋状に巻いたものである。なお、フィラメント4a2は、線状部材を巻回したフィラメントを二重巻にした、いわゆるダブルフィラメントとすることもできるし、三重巻にした、いわゆるトリプルフィラメントとすることもできる。
【0029】
エミッタ4a3は、フィラメント4a2に設けられている。エミッタ34は、例えば、仕事関数が低いBaO、SrO、CaOの混合体をフィラメント4a2に塗布することで形成される。また、エミッタ34の材料が蒸発するのを抑制するために、ZrOなどを混合体にさらに添加することもできる。エミッタ4a3が設けられていれば、始動電圧や管電圧を低減させることができる。
【0030】
第2の電極4bは、例えば、ウェルズ4b1、フィラメント4a2、およびエミッタ4a3を有する。
ウェルズ4b1は、線状を呈し、封止部3の内部に一対設けられている。ウェルズ4b1の一方の端部は、封止部3からバルブ2の内部に突出している。ウェルズ4b1の一方の端部は、フィラメント4a2の端部を保持している。ウェルズ4b1の他方の端部は、封止部3の外部に露出している。ウェルズ4b1の他方の端部は、配線5を介して点灯回路などと電気的に接続される。
【0031】
ここで、低圧水銀ランプである光源1には、最冷部が設けられる。最冷部は、光源1の点灯中において、バルブ2の、最も温度が低くなる部分である。最冷部においては、水銀の蒸気の一部が凝縮して、水銀またはアマルガムが生成される。
【0032】
一方向に延びるバルブ2の場合には、バルブ2の管軸方向において、電極の端部と、この電極が設けられるバルブ2の端部との間の領域に最冷部が形成される。この場合、図5に示すように、バルブ2の管軸方向において、ウェルズ4a1の、封止部3からの突出長さは、ウェルズ4b1の、封止部3からの突出長さよりも長い。そのため、バルブ2の内部空間に露出する第1の電極4aの端部(フィラメント4a2の端部)と、第1の電極4aが設けられるバルブ2の端部との間の距離L1(mm)は、バルブ2の内部空間に露出する第2の電極4bの端部(フィラメント4a2の端部)と、第2の電極4bが設けられるバルブ2の端部との間の距離L2(mm)よりも長くなる。
【0033】
電極の端部と、この電極が設けられるバルブ2の端部との間の距離が長くなれば、バルブ2の、電極の端部とバルブ2の端部との間の部分の温度が低くなる。前述した様に、距離L1(mm)は距離L2(mm)よりも長いので、バルブ2の、第1の電極4aの側の端部の近傍に最冷部が形成される。
【0034】
前述した様に、最冷部においては、水銀の蒸気の一部が凝縮して、水銀またはアマルガムが生成される。そのため、液体処理装置100(光源1)を上下方向に延びる様に設置する場合には、バルブ2の、第1の電極4aの側が重力方向下側に位置するようにすることが好ましい。この様にすれば、生成された水銀またはアマルガムが、最冷部から流出するのを抑制することができる。そのため、水銀の蒸気の蒸気圧を安定させることができる。
【0035】
また、距離L1(mm)と距離L2(mm)との差を小さくし過ぎると、最冷部の温度を安定させるのが困難となる。この場合、「距離L1(mm)-距離L2(mm)≧10mm」とすれば、最冷部の温度を安定させることができる。
また、距離L1(mm)を長くすれば最冷部の温度が下がり、距離L1(mm)を短くすれば最冷部の温度が上がる。そのため、距離L1(mm)により最冷部の温度を制御することで、水銀の蒸気の蒸気圧が適切な範囲内となるようにすることもできる。
【0036】
配線5は、例えば、高周波電源などを有する点灯回路と電気的に接続される。点灯回路により、配線5を介して、第1の電極4aと第2の電極4bとに高周波電力が印加されると、第1の電極4aのフィラメント4a2と、第2の電極4bのフィラメント4a2との間に放電が生ずる。バルブ2の内部空間において放電が生ずると、放電により発生した電子が、水銀原子と衝突して、ピーク波長が254nmの紫外線、または、ピーク波長が185nm及び254nmの紫外線が放射される。
【0037】
この場合、例えば、バルブ2の材料が、石英ガラスや、合成石英ガラスなどであれば、ピーク波長が254nmの紫外線、または、ピーク波長が185nm、および254nmの紫外線をバルブ2の外部に照射することができる。
また、例えば、バルブ2の材料が、ピーク波長が185nmの紫外線を吸収し、ピーク波長が254nmの紫外線を透過するガラスであれば、ピーク波長が254nmの紫外線をバルブ2の外部に照射することができる。
【0038】
ここで、光源1は、液体300の中に直接設けることができない。そのため、図1図4に示すように、光源1は保護管101の内部に設けられる。
保護管101は、筒状を呈し、両側の端部が開口している。保護管101は、管径に比べて全長(管軸方向の長さ)が長い形態を有する。保護管101は、容器102の内部に設けられている。保護管101は、容器102が延びる方向に延びている。保護管101は、容器102の中心軸に沿って延びている。保護管101の外面と、容器102の内面との間の空間は、液体300が流通する流路となる。
【0039】
そのため、光源1が、保護管101を介して液体300の中に設けられるので、光源1において発生した紫外線が、保護管101を介して液体300に照射される。光源1から液体300に紫外線が照射されると、紫外線により、例えば、液体300に含まれている菌やウイルスの、殺菌や不活性化が行われる。また、紫外線により、例えば、液体300に含まれている有機物などの不純物を分解することもできる。
【0040】
この場合、保護管101は、容器102と同軸となるように設けることが好ましい。また、保護管101の断面形状(保護管101の中心軸101aに直交する方向の形状)は、容器102の断面形状(容器102の中心軸に直交する方向の形状)と同じとすることが好ましい。例えば、保護管101、および容器102は円筒管とすることができる。
【0041】
図3、および図4に示すように、保護管101が容器102と同軸に設けられ、且つ、保護管101の断面形状が容器102の断面形状と同じであれば、保護管101の外面と、容器102の内面との間の距離c(mm)が均一となる。すなわち、液体300が流通する流路の断面寸法が均一となる。そのため、流路抵抗が均一、ひいては液体300の流速が均一となるので、液体300の処理効果にバラツキが生じるのを抑制することができる。
【0042】
なお、距離c(mm)は、保護管101の中心軸101aに沿った方向から見て、保護管101の中心軸101aと、光源1の中心軸1aとを含む線分が、保護管101の外面と交わる点と、線分が、容器102の内面と交わる点と、の間の距離である。距離c(mm)に関する詳細は後述する。
【0043】
また、前述した様に、光源1の発光長b(mm)と、供給部102aの中心軸と排出部102bの中心軸との間の距離a(mm)と、の関係が、「a(mm)≦b(mm)」となっていれば、流路の、液体300が流通する領域に、光源1の発光部分が設けられる。そのため、光源1から照射された紫外線が、流通する液体300の全体に照射されやすくなる。紫外線が、流通する液体300の全体に照射されやすくなれば、液体300の処理効率を向上させることができる。
【0044】
保護管101は、紫外線の透過率が高く、且つ、液体300に対する耐性が高い材料から形成される。例えば、保護管101は、石英ガラスや、合成石英ガラスなどから形成することができる。例えば、保護管101の材料は、バルブ2の材料と同じとすることができる。
【0045】
容器102は、筒状を呈し、一方向に延びている。容器102は、断面寸法(中心軸に直交する方向の長さ)に比べて全長(中心軸方向の長さ)が長い形態を有する。容器102は、例えば、円筒状を呈している。容器102の両端は、開口している。
【0046】
容器102の一方の端部の近傍には、フランジ102cを設けることができる。フランジ102cの近傍には、処理前の液体300を供給する供給部102aを設けることができる。供給部102aは、管状を呈し、容器102の内部空間と接続されている。例えば、供給部102aの一方の端部は、容器102に溶接されている。例えば、供給部102aの他方の端部にはフランジ102a1を設けることができる。供給部102aの他方の端部(フランジ102a1)には、例えば、液体300を供給する供給装置などを接続することができる。
【0047】
容器102の他方の端部の近傍には、フランジ102dを設けることができる。フランジ102dの近傍には、処理が施された液体300aを排出する排出部102bを設けることができる。排出部102bは、管状を呈し、容器102の内部空間と接続されている。例えば、排出部102bの一方の端部は、容器102に溶接されている。例えば、排出部102bの他方の端部にはフランジ102b1を設けることができる。排出部102bの他方の端部(フランジ102b1)には、例えば、処理が施された液体300aを収納するタンクや、液体300aを用いる洗浄装置などを接続することができる。
【0048】
容器102、供給部102a、フランジ102a1、排出部102b、フランジ102b1、フランジ102c、およびフランジ102dは、液体300に対する耐食性と耐圧が高い材料から形成される。これらは、例えば、ステンレスなどの金属から形成することができる。
【0049】
また、容器102の内面には、光源1から保護管101を介して照射された紫外線の一部が入射する。そのため、容器102の内面には、研磨加工を施すことができる。容器102の内面に研磨加工が施されていれば、入射した紫外線の反射ロスを低減することができる。また、液体300に含まれていた不純物などが容器102の内面に付着するのを抑制することができる。
【0050】
ホルダ103は、柱状を呈し、一対設けられている。一方のホルダ103は、保護管101の一方の開口、および容器102の一方の開口を塞いでいる。ホルダ103と保護管101との間、および、ホルダ103と容器102との間は、例えば、Oリングなどの封止材を用いて液密となるように封止することができる。他方のホルダ103は、保護管101の他方の開口、および容器102の他方の開口を塞いでいる。ホルダ103と保護管101との間、および、ホルダ103と容器102との間は、例えば、Oリングなどの封止材を用いて液密となるように封止することができる。
【0051】
ホルダ103の、保護管101の内部に位置する端部には、複数の光源1の端部を保持する複数の孔、または複数の凹部が設けられている。光源1の端部を保持する孔や凹部には、第1の電極4aまたは第2の電極4bに電気的に接続された配線5を引き出すための孔が設けられている。また、ホルダ103には、ホルダ103を軸方向に貫通する通気孔を設けることができる。通気孔は、保護管101の内部空間と、外部空間とを接続している。
ホルダ103は、例えば、ステンレスなどの金属や、フッ素樹脂などの樹脂から形成される。
【0052】
ここで、保護管101の内部に設けられた光源1を点灯させると、紫外線とともに熱が発生する。そのため、光源1を点灯させると、光源1の温度が高くなる。また、処理を行う液体300の温度が高い場合がある。この場合、液体300の温度が30℃以上になると、光源1の温度がさらに高くなり易くなる。光源1の温度が高くなり過ぎると、紫外線の照度が低下したり、光源1の寿命が短くなったりするおそれがある。
【0053】
例えば、光源1が低圧水銀ランプの場合には、光源1の温度が高くなると、水銀の蒸気圧が高くなり過ぎて、水銀の自己吸収が多くなる。水銀の自己吸収が多くなると、紫外線の照度が低下する。
例えば、光源1が複数の発光素子を有するものの場合には、発光素子の温度が高くなると、紫外線の照度が低下する。また、発光素子の温度が、最大ジャンクション温度を超えると発光素子の寿命が短くなったり、発光素子が故障したりするおそれがある。
【0054】
そこで、液体処理装置100には、気体供給部104が設けられている。気体供給部104は、保護管101の内部に気体を供給する。
気体供給部104は、例えば、ファンやブロアなどとすることができる。図2に例示をした気体供給部104は、ファンである。気体供給部104は、一方のホルダ103の通気孔に接続されている。気体供給部104は、通気孔を介して、保護管101の内部に気体(例えば、外気(空気))を供給する。保護管101の内部に供給された気体は、保護管101の内部を流通し、他方のホルダ103に設けられた通気孔を介して、外部に排出される。なお、図1、および図2においては、気体供給部104が、容器102の下側の端部に設けられたホルダ103に接続される場合を例示したが、気体供給部104が、容器102の上側の端部に設けられたホルダ103に接続されていてもよい。
【0055】
気体供給部104が設けられていれば、保護管101の内部に空気を流通させることができるので、光源1を冷却することができる。そのため、光源1の温度が高くなることで、紫外線の照度が低下したり、光源1の寿命が短くなったりするのを抑制することができる。
【0056】
また、保護管101の内部に酸素があると、光源1から照射された紫外線が減衰する場合がある。そのため、ファンに代えて、保護管101の内部に窒素ガスや不活性ガスを供給するガス供給装置を設けることもできる。
この場合、保護管101の内部に窒素ガスや不活性ガスを供給すると、液体処理装置100のランニングコストが高くなる。そのため、液体処理装置100に要求される処理能力やランニングコストなどに応じて、ファンやブロアなどと、ガス供給装置を選択することができる。
【0057】
端部カバー105は、気体供給部104が接続されたホルダ103とは反対側のホルダ103の端部を覆っている。端部カバー105は、箱状を呈し、一方の端部が開口している。端部カバー105の、開口側の側面にはフランジ105aが設けられている。フランジ105aは、ネジなどの締結部材を用いて、容器102のフランジ102dに取り付けられている。端部カバー105は、例えば、ステンレスなどの金属や樹脂などから形成することができる。
【0058】
端部カバー105には、フィルタ105bを設けることができる。保護管101の内部を流通し、ホルダ103の通気孔を介して端部カバー105の内部に排出された気体は、フィルタ105bを介して、外部に排出される。フィルタ105bが設けられていれば、外部のゴミが、ホルダ103の通気孔や保護管101の内部に侵入するのを抑制することができる。
【0059】
設置部106は、例えば、ベース106a、スタンド106b、および取付座106cを有する。ベース106a、スタンド106b、および取付座106cは、例えば、鉄やステンレスなどの金属から形成することができる。
【0060】
ベース106aは、例えば、液体処理装置100を設置する場所の床面に設けられる。ベース106aは、液体処理装置100の一方の端部に対向している。ベース106aは、液体処理装置100の中心軸に直交する方向に延びる面106a1を有する。
【0061】
スタンド106bは、柱状を呈し、複数設けられている。スタンド106bの一方の端部は、ベース106aの面106a1に設けられている。スタンド106bの他方の端部は、取付座106cに設けられている。
【0062】
取付座106cは、板状を呈している。取付座106cには、ネジなどの締結部材を用いて、容器102のフランジ102cが取り付けられる。取付座106cとベース106aとの間には、柱状のスタンド106bが設けられているので、取付座106cと、ベース106aの面106a1との間に空間を設けることができる。そのため、この空間に、容器102の端部を突出させたり、気体供給部104を設けたりすることができる。
【0063】
なお、図1、および図2においては、液体処理装置100が、設置する場所の床面に設けられる場合を例示したが、これに限定されるわけではない。例えば、液体処理装置100は、設置する場所の天井面に設けることもできる。この場合、設置部106は、例えば、容器102のフランジ102dに取り付けることもできる。例えば、液体処理装置100は、設置する場所の壁面に設けることもできる。この場合、設置部106は、例えば、容器102の側面に設けることもできる。
【0064】
次に、保護管101の外面と、容器102の内面との間の距離c(mm)についてさらに説明する。
距離c(mm)を大きくすれば、液体300が流通する流路の断面積が大きくなるので、流路抵抗を低減させたり、処理流量を増加させたりすることができる。ただし、距離c(mm)を大きくし過ぎると、容器102の内面近傍を流れる液体300に照射される紫外線の照度が不足するおそれがある。そのため、距離c(mm)は、液体300の流速(滞留時間)と、光源1からの距離に基づく照度と、による効率(滞留時間×照度)が高くなるように設定される。例えば、一般的な液体処理装置においては、距離c(mm)は、「20mm≦c(mm)≦30mm」とされている。一般的な液体処理装置においては、液体300の紫外線の透過率は、95%以上を想定している。
なお、本明細書において、紫外線の透過率は、ピーク波長が254nm、液厚みが1cmの場合の紫外線の透過率としている。
【0065】
ここで、液体処理装置100の用途などによっては、紫外線の透過率が1%以下の液体300を処理しなければならない場合がある。例えば、含まれている不純物が多い液体300などの場合には、紫外線の透過率が1%以下となる場合がある。
【0066】
本発明者の得た知見によれば、距離c(mm)を「1mm≦c(mm)≦10mm」とすれば、液体300の紫外線の透過率が1%以下となったとしても、容器102の内面近傍を流れる液体300に十分な照度の紫外線を照射することができる。
【0067】
距離c(mm)は、前述した範囲の中で、液体300の紫外線の透過率に応じて適宜設定することができる。例えば、紫外線の透過率が低くなるほど、距離c(mm)を小さくすることができる。
【0068】
この場合、距離c(mm)を小さくすると、液体300からの熱が光源1に伝わり易くなる。また、液体処理装置100の用途などによっては、液体300の温度が30℃以上となる場合もある。そのため、距離c(mm)を小さくすると、光源1の温度が高くなり過ぎる場合がある。前述したように、光源1の温度が高くなり過ぎると、紫外線の照度が低下したり、光源1の寿命が短くなったりするおそれがある。
【0069】
本発明者の得た知見によれば、図3、および図4に示すように、保護管101の中心軸101aに沿った方向から見て、保護管101の中心軸101aと、光源1の中心軸1aとを含む線分が、光源1(バルブ2)の外面と交わる点と、線分が、保護管101の内面と交わる点と、の間の距離をd(mm)とした場合に、「距離d(mm)≦15mm」とすれば、液体300からの熱が光源1に伝わり難くなる。また、気体供給部104から供給された気体が、保護管101の内部を円滑に流れる様にすることができる。そのため、液体300の温度が30℃以上となったとしても、光源1の温度が高くなり過ぎるのを抑制することができる。
【0070】
この場合、図4に示すように、光源1の数を1つとすれば、保護管101の中心軸101aと、光源1の中心軸1aとが重なる場合がある。また、光源1の数を1つとすれば、保護管101の内部において、光源1の周囲に広いスペースを設けることができる。そのため、「距離d(mm)≦15mm」とするのが容易となる。
【0071】
なお、光源が複数の発光素子を有するものである場合には、距離d(mm)は、発光素子の紫外線の照射面と、保護管101の内面との間の距離とすることができる。すなわち、前述した光源1(バルブ2)の外面を、発光素子の紫外線の照射面と読み替えれば良い。また、複数の発光素子を有する光源の中心軸は、複数の発光素子が設けられる基板や基部の中心軸とすれば良い。すなわち、光源1の中心軸1aを基板や基部の中心軸とみ替えれば良い。
【0072】
距離d(mm)は、距離c(mm)や液体300の温度に応じて適宜設定することができる。例えば、距離c(mm)が小さくなるほど、あるいは、液体300の温度が高くなるほど、距離d(mm)を大きくすることができる。
【0073】
また、距離c(mm)を小さくすると、液体300が流通する流路の断面積が小さくなって、処理流量を増加させるのが困難となる場合がある。この場合、中心軸101aに直交する方向における保護管101の外径寸法e(mm)を、60mm以上とすれば、「1mm≦c(mm)≦10mm」としても、液体300が流通する流路の断面積を大きくすることができる。そのため、処理流量を増加させるのが容易となる。また、保護管101の内部に複数の光源1を設けたとしても、「距離d(mm)≦15mm」とするのが容易となる。
保護管101の外径寸法e(mm)は、処理流量や光源1の数などに応じて適宜設定することができる。例えば、処理流量が多いほど、あるいは、光源1の数が多いほど外径寸法e(mm)を大きくすることができる。
【0074】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【0075】
以下、前述した実施形態に関する付記を示す。
【0076】
(付記1)
筒状を呈し、一方向に延びる容器と;
前記容器の内部に設けられ、前記容器が延びる方向に延びる保護管と;
前記保護管の内部に設けられ、前記容器が延びる方向に延び、前記容器と前記保護管との間を流れる液体に紫外線を照射可能な少なくとも1つの光源と;
を具備し、
前記保護管の中心軸に沿った方向から見て、前記保護管の中心軸と、前記光源の中心軸とを含む線分が、前記保護管の外面と交わる点と、前記線分が、前記容器の内面と交わる点と、の間の距離をc(mm)とした場合に、以下の式を満足する液体処理装置。
1mm≦c(mm)≦10mm
【0077】
(付記2)
前記保護管の中心軸に沿った方向から見て、前記保護管の中心軸と、前記光源の中心軸とを含む線分が、前記光源の外面と交わる点と、前記線分が、前記保護管の内面と交わる点と、の間の距離をd(mm)とした場合に、以下の式を満足する付記1記載の液体処理装置。
d(mm)≦15mm
【0078】
(付記3)
前記液体の、紫外線の透過率が1%以下である付記1または2に記載の液体処理装置。
【0079】
(付記4)
前記液体の温度が30℃以上である付記1~3のいずれか1つに記載の液体処理装置。
【0080】
(付記5)
前記保護管の内部に気体を供給する気体供給部をさらに備えた付記1~4のいずれか1つに記載の液体処理装置。
【符号の説明】
【0081】
1 光源、1a 中心軸、2 バルブ、100 液体処理装置、100a 液体処理装置、101 保護管、102 容器、104 気体供給部、300 液体、300a 液体
図1
図2
図3
図4
図5