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特開2024-21772化粧料用粉末材料、化粧料用粉末材料の製造方法、及び化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021772
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】化粧料用粉末材料、化粧料用粉末材料の製造方法、及び化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20240208BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20240208BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q1/12
A61K8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124847
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】391015373
【氏名又は名称】大東化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【弁理士】
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】村山 佳菜
(72)【発明者】
【氏名】服部 春香
(72)【発明者】
【氏名】白戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】太田 敦子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB221
4C083AB222
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB311
4C083AB312
4C083AB432
4C083AC022
4C083BB25
4C083CC12
4C083DD17
4C083EE06
4C083EE07
4C083FF01
4C083FF04
(57)【要約】
【課題】滑らかさ、伸びの良さ、付着性、自然な仕上がり、及び肌をぼかす効果に優れつつ、てかりの発生を抑制し得る化粧料用粉末材料を提供する。
【解決手段】薄片状基粉末の表面を無機粒子で被覆してなる化粧料用粉末材料であって、前記無機粒子は、二価又は三価の金属塩を核とした炭酸カルシウム粒子である化粧料用粉末材料。二価又は三価の金属塩は、アルミニウム塩であり、二価又は三価の金属塩の配合量は、薄片状基粉末100重量部に対して0.010~0.10重量部であり、炭酸カルシウム粒子は、粒子径が0.20~5μmであり、炭酸カルシウム粒子の被覆量は、10~50重量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄片状基粉末の表面を無機粒子で被覆してなる化粧料用粉末材料であって、
前記無機粒子は、二価又は三価の金属塩を核とした炭酸カルシウム粒子である化粧料用粉末材料。
【請求項2】
前記二価又は三価の金属塩は、アルミニウム塩である請求項1に記載の化粧料用粉末材料。
【請求項3】
前記二価又は三価の金属塩の配合量は、前記薄片状基粉末100重量部に対して0.010~0.10重量部である請求項1又は2に記載の化粧料用粉末材料。
【請求項4】
前記炭酸カルシウム粒子は、粒子径が0.20~5μmである請求項1又は2に記載の化粧料用粉末材料。
【請求項5】
前記炭酸カルシウム粒子の被覆量は、10~50重量%である請求項1又は2に記載の化粧料用粉末材料。
【請求項6】
下記条件を満たす請求項1又は2に記載の化粧料用粉末材料:
(条件)前記化粧料用粉末材料を20重量%含有するようにシリコーンオイルに分散させてシリコーンオイルペーストを調製し、前記シリコーンオイルペーストを、アプリケーターを用いてガラス板上に厚さ0.025mmとなるように塗布したとき、塗布された前記シリコーンオイルペーストの全光線透過率が80%以上、かつヘイズ値が40%以上である。
【請求項7】
薄片状基粉末の表面を無機粒子で被覆してなる化粧料用粉末材料の製造方法であって、
前記薄片状基粉末と水とを含有する懸濁液を攪拌しながら、前記懸濁液に二価又は三価の金属塩を添加して混合する金属塩添加工程と、
前記金属塩添加工程で得られた混合液を攪拌しながら、前記混合液にカルシウム塩水溶液及び炭酸塩水溶液を添加することにより、前記薄片状基粉末の表面に前記二価又は三価の金属塩を核とした炭酸カルシウム粒子を析出させる析出工程と、
を包含する化粧料用粉末材料の製造方法。
【請求項8】
前記金属塩添加工程において、前記二価又は三価の金属塩の添加量を、前記薄片状基粉末100重量部に対して0.010~0.10重量部に設定する請求項7に記載の化粧料用粉末材料の製造方法。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の化粧料用粉末材料を配合した化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄片状基粉末の表面を無機粒子で被覆してなる化粧料用粉末材料、化粧料用粉末材料の製造方法、及び当該化粧料用粉体を配合した化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パウダーファンデーション等の化粧料には、滑らかな感触や適度な肌の光沢を発現させるために、セリサイト、マイカ、タルク等の薄片状の粉末が、基礎的な原料として配合されている。
【0003】
これら薄片状の粉末が配合された化粧料は、肌に塗布する際に、滑らかさ、伸びの良さ、付着性、自然な仕上がり、肌をぼかす効果等が十分ではないという問題が生じる虞があり、また、塗布後の化粧料において、てかりが発生する等の問題が生じる虞もあり、化粧料に求められる細かい要求に応えることが困難である。
【0004】
かかる問題点に対処すべく、例えば、薄片状基粉末の表面を、炭酸塩とカルシウム塩との反応、カルシウム塩と炭酸ガスとの反応といった化学反応を利用して炭酸カルシウム粒子で被覆してなる化粧料用粉末材料が提案されている(特許文献1及び2参照)。
【0005】
また、例えば、薄片状基粉末と炭酸カルシウム粉末(粒子)とを湿式又は乾式で混合することにより、ファンデルワールス力を利用して薄片状基粉末の表面に炭酸カルシウム粉末を物理的に付着させてなる化粧料用粉末材料が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-98185号公報
【特許文献2】特開2003-137544号公報
【特許文献3】特表2000-506205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2に記載されるように化学反応を利用して薄片状基粉末の表面を炭酸カルシウム粒子で被覆する場合、及び特許文献3に記載されるように薄片状基粉末の表面に炭酸カルシウム粒子を物理的に付着させる場合には、滑らかさ、伸びの良さ、付着性、自然な仕上がり、及び肌をぼかす効果が十分に発揮されない虞があり、また、てかりの発生も十分に抑制することができない虞がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、滑らかさ、伸びの良さ、付着性、自然な仕上がり、及び肌をぼかす効果に優れつつ、てかりの発生を抑制し得る化粧料用粉末材料、化粧料用粉末材料の製造方法、及び当該化粧料用粉体を配合した化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係る化粧料用粉末材料の特徴構成は、
薄片状基粉末の表面を無機粒子で被覆してなる化粧料用粉末材料であって、
前記無機粒子は、二価又は三価の金属塩を核とした炭酸カルシウム粒子であることにある。
【0010】
本構成の化粧料用粉末材料によれば、薄片状基粉末の表面を二価又は三価の金属塩を核とした炭酸カルシウム粒子で被覆することにより、薄片状基粉末の表面に付着する炭酸カルシウム粒子の粒子径が適切なサイズとなり、また、当該化粧料用粉末材料の光学特性が適切なものとなる。これにより、当該化粧料用粉末材料は、滑らかさ、伸びの良さ、付着性、自然な仕上がり、及び肌をぼかす効果に優れつつ、てかりの発生を抑制し得るものとなる。
【0011】
本発明に係る化粧料用粉末材料において、
前記二価又は三価の金属塩は、アルミニウム塩であることが好ましい。
【0012】
本構成の化粧料用粉末材料によれば、二価又は三価の金属塩をアルミニウム塩とすることにより、化学的及び物理的に安定したものとなり、肌に優しく、且つコスト面においても競争力のある化粧料用粉末材料とすることができる。
【0013】
本発明に係る化粧料用粉末材料において、
前記二価又は三価の金属塩の配合量は、前記薄片状基粉末100重量部に対して0.010~0.10重量部であることが好ましい。
【0014】
本構成の化粧料用粉末材料によれば、二価又は三価の金属塩の配合量を上記範囲とすることにより、金属塩を核とした炭酸カルシウム粒子が成長し易くなり、薄片状基粉末の表面に付着する炭酸カルシウム粒子の粒子径もより適切なサイズとなる。これにより、滑らかさ、伸びの良さ、付着性、自然な仕上がり、及び肌をぼかす効果を高めることができ、また、てかりの発生をより抑制し得る。
【0015】
本発明に係る化粧料用粉末材料において、
前記炭酸カルシウム粒子は、粒子径が0.20~5μmであることが好ましい。
【0016】
本構成の化粧料用粉末材料によれば、炭酸カルシウム粒子の粒子径を上記範囲とすることにより、炭酸カルシウム粒子が薄片状基粉末の表面に付着し易くなる。これにより、滑らかさ、伸びの良さ、付着性、自然な仕上がり、及び肌をぼかす効果を高めることができ、また、てかりの発生をより抑制し得る。
【0017】
本発明に係る化粧料用粉末材料において、
前記炭酸カルシウム粒子の被覆量は、10~50重量%であることが好ましい。
【0018】
本構成の化粧料用粉末材料によれば、炭酸カルシウム粒子の被覆量を上記範囲とすることにより、薄片状基粉末が適度に露出するため、滑らかさ、伸びの良さ、付着性、自然な仕上がり、及び肌をぼかす効果を高めることができ、また、てかりの発生をより抑制し得る。
【0019】
本発明に係る化粧料用粉末材料において、
下記条件を満たすことが好ましい:
(条件)前記化粧料用粉末材料を20重量%含有するようにシリコーンオイルに分散させてシリコーンオイルペーストを調製し、前記シリコーンオイルペーストを、アプリケーターを用いてガラス板上に厚さ0.025mmとなるように塗布したとき、塗布された前記シリコーンオイルペーストの全光線透過率が80%以上、かつヘイズ値が40%以上である。
【0020】
本構成の化粧料用粉末材料によれば、上記条件を満たすことにより、当該化粧料用粉末材料の光学特性がより適切なものとなる。これにより、てかりの発生をより抑制することができる。
【0021】
上記課題を解決するための本発明に係る化粧料用粉末材料の製造方法の特徴構成は、
薄片状基粉末の表面を無機粒子で被覆してなる化粧料用粉末材料の製造方法であって、
前記薄片状基粉末と水とを含有する懸濁液を攪拌しながら、前記懸濁液に二価又は三価の金属塩を添加して混合する金属塩添加工程と、
前記金属塩添加工程で得られた混合液を攪拌しながら、前記混合液にカルシウム塩水溶液及び炭酸塩水溶液を添加することにより、前記薄片状基粉末の表面に前記二価又は三価の金属塩を核とした炭酸カルシウム粒子を析出させる析出工程と、
を包含することにある。
【0022】
本構成の化粧料用粉末材料の製造方法によれば、上述したように、滑らかさ、伸びの良さ、付着性、自然な仕上がり、及び肌をぼかす効果に優れつつ、てかりの発生を抑制し得る化粧料用粉末材料を製造することができる。
【0023】
本発明に係る化粧料用粉末材料の製造方法において、
前記金属塩添加工程において、前記二価又は三価の金属塩の添加量を、前記薄片状基粉末100重量部に対して0.010~0.10重量部に設定することが好ましい。
【0024】
本構成の化粧料用粉末材料の製造方法によれば、二価又は三価の金属塩の添加量を上記範囲とすることにより、金属塩を核とした炭酸カルシウム粒子が成長し易くなり、薄片状基粉末の表面に付着する炭酸カルシウム粒子の粒子径もより適切なサイズとなる。これにより、滑らかさ、伸びの良さ、付着性、自然な仕上がり、及び肌をぼかす効果を高めることができ、また、てかりの発生をより抑制し得る化粧料用粉末材料を製造することができる。
【0025】
上記課題を解決するための本発明に係る化粧料の特徴構成は、
上述した当該化粧料用粉末材料を配合したことにある。
【0026】
本構成の化粧料によれば、上述した当該化粧料用粉末材料を配合することにより、滑らかさ、伸びの良さ、付着性、自然な仕上がり、及び肌をぼかす効果に優れつつ、てかりの発生が抑制された化粧料となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の化粧料用粉末材料は、薄片状基粉末の表面を無機粒子で被覆したものである。このような化粧料用粉末材料について、本発明者らにより、以下の事実が判明した。
(1)カルシウム塩と、炭酸塩とを反応させて薄片状基粉末の表面を炭酸カルシウム粒子で被覆する際、薄片状基粉末の表面を被覆している炭酸カルシウム粒子の粒子径が特定の粒子径を超えて大きくなるに従って、滑り性、伸び性、付着性、及び自然な仕上がり性が低下し、また、光学特性が低下し、これに起因して、てかりが発生する傾向にある。
(2)薄片状基粉末の表面を炭酸カルシウム粒子で被覆する際、滑らかさ、伸びの良さ、付着性、自然な仕上がり、肌をぼかす効果、及び光学特性を最も発揮させ得る適切な粒子径が存在する。
(3)製造スケールが大きくなるに従って、炭酸カルシウム粒子の粒子径が大きくなる。
(4)薄片状基粉末の表面を炭酸カルシウム粒子で被覆する際、炭酸塩と、カルシウム塩とを反応させる前に、二価又は三価の金属塩を添加することによって、二価又は三価の金属塩を核とする炭酸カルシウム粒子が生成し、このように炭酸カルシウム粒子が生成することによって、炭酸カルシウム粒子の粒子径が適切なサイズとなり、化粧料用粉末材料の光学特性が向上し得る。
【0028】
本発明は、上記の事実に基づき、鋭意研究の結果、完成されたものである。以下、本発明の化粧料用粉末材料、化粧料用粉末材料の製造方法、及び化粧料の実施形態について、詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態及び実施例に限定されることを意図するものではない。
【0029】
[化粧料用粉末材料]
化粧料用粉末材料は、薄片状基粉末の表面を無機粒子で被覆してなるものである。
【0030】
<薄片状基粉末>
薄片状基粉末は、化粧料用粉末材料の基材となる粉体である。
【0031】
薄片状基粉末のサイズは、全長、厚さ、及びアスペクト比により特定される。ここで、薄片状基粉末の全長とは、板状の基粉末を上方視した場合における長軸の最大長さを意味する。厚さとは、板状の基粉末を側方視した場合における厚さの最大長さを意味する。アスペクト比とは、板状結晶における全長と厚さとの比率を意味する。薄片状基粉末の全長及び厚さは、簡便には、電子顕微鏡写真から複数(例えば、10個)の結晶粒子を任意に抽出し、各結晶粒子の全長及び厚さの計測値の平均値として測定することができる。薄片状基粉末は、全長が、好ましくは0.1~50μm、より好ましくは0.5~20μmに設定される。また、厚さが、好ましくは0.005~0.625μm、より好ましくは0.01~0.285μmに設定される。従って、アスペクト比は、好ましくは20~80、より好ましくは50~70となる。
【0032】
薄片状基粉末の種類としては、セリサイト、マイカ(天然雲母、合成雲母)、タルク、カオリンなどが挙げられる。これらのうち、適切な粒子径の炭酸カルシウム粒子を被覆させ易いことから、セリサイト、マイカが好ましい。薄片状基粉末は、一種を単独で使用することができるが、二種以上の混合物として使用することもできる。
【0033】
<無機粒子>
薄片状基粉末の表面に被覆される無機粒子は、二価又は三価の金属塩を核とした炭酸カルシウム粒子である。以下、本明細書において、炭酸カルシウム粒子の核となる二価又は三価の金属塩を「第1の金属塩」と称する。
【0034】
第1の金属塩としては、亜鉛塩、マグネシウム塩、鉄(三価)塩、アルミニウム塩等が挙げられる。これらのうち、炭酸塩との反応によって生成物が水中に析出し易く、これにより、炭酸カルシウム粒子の核とし易い点を考慮すると、アルミニウム塩が好ましい。
【0035】
第1の金属塩をアルミニウム塩とすることにより、化学的及び物理的に安定したものとなり、肌に優しく、且つコスト面においても競争力のある化粧料用粉末材料とすることができる。
【0036】
第1の金属塩の配合量は、薄片状基粉末100重量部に対して0.010~0.10重量部であることが好ましく、0.02~0.05重量部がより好ましい。
【0037】
第1の金属塩の配合量を上記範囲とすることにより、第1の金属塩を核とした炭酸カルシウム粒子が成長し易くなり、薄片状基粉末の表面に付着する炭酸カルシウム粒子の粒子径もより適切なサイズとなる。これにより、滑らかさ、伸びの良さ、付着性、自然な仕上がり、及び肌をぼかす効果を高めることができ、また、てかりの発生をより抑制し得る。
【0038】
第1の金属塩を核とする炭酸カルシウム粒子の粒子径は、高い光拡散効果を発揮し得る点を考慮すると、0.20~5μmが好ましく、1~3μmがより好ましい。炭酸カルシウム粒子の粒子径を上記範囲とすることにより、炭酸カルシウム粒子が薄片状基粉末の表面に付着し易くなる。これにより、滑らかさ、伸びの良さ、付着性、自然な仕上がり、及び肌をぼかす効果を高めることができ、また、てかりの発生をより抑制し得る。
【0039】
炭酸カルシウム粒子の被覆量は、10~50重量%であることが好ましく、20~30重量%がより好ましい。なお、炭酸カルシウム粒子の被覆量は、化粧料用粉末材料全体を100重量%としたときの重量%である。
【0040】
炭酸カルシウム粒子の被覆量を上記範囲とすることにより、薄片状基粉末が適度に露出するため、滑らかさ、伸びの良さ、付着性、自然な仕上がり、及び肌をぼかす効果を高めることができ、また、てかりの発生をより抑制し得る。
【0041】
本実施形態の化粧料用粉末材料は、下記条件を満たすことが好ましい:
(条件)化粧料用粉末材料を20重量%含有するようにシリコーンオイルに分散させてシリコーンオイルペーストを調製し、このシリコーンオイルペーストを、アプリケーターを用いてガラス板上に厚さ0.025mmとなるように塗布したとき、塗布されたシリコーンオイルペーストの全光線透過率が80%以上、かつヘイズ値が40%以上、好ましくは50%以上である。上記シリコーンオイルとして、KF-96-2000CS(信越化学工業株式会社製)を用いる。
【0042】
上記条件を満たすことにより、当該化粧料用粉末材料の光学特性がより適切なものとなる。これにより、てかりの発生をより抑制することができる。
【0043】
[化粧料用粉末材料の製造方法]
化粧料用粉末材料は、金属塩添加工程と、析出工程とを実施することにより製造される。以下、各工程について説明する。
【0044】
(金属塩添加工程)
金属塩添加工程においては、上述した薄片状基粉末を水に懸濁させた懸濁液に、二価又は三価の金属塩を攪拌しながら添加して混合する。このとき、さらに後述する炭酸塩水溶液を一部添加してもよい。以下、本明細書において、金属塩添加工程で使用する二価又は三価の金属塩を「第2の金属塩」と称する。
【0045】
例えば、薄片状基粉末を水に分散(懸濁)させた分散液(懸濁液)に、炭酸塩水溶液を攪拌しながら添加し、さらに水溶性の第2の金属塩を攪拌しながら添加する。これにより、炭酸塩と第2の金属塩とが反応し、水に不溶性の第1の金属塩(例えば、炭酸アルミニウム)が生成する。第1の金属塩は、後述する析出工程において生成する炭酸カルシウム粒子の核となる。
【0046】
上記懸濁液における薄片状基粉末の含有量は、水100重量部に対して5~30重量部が好ましく、5~20重量部がより好ましい。懸濁液における薄片状基粉末の含有量を上記範囲とすることによって、薄片状基粉末の濃度が適切なものとなる。
【0047】
第2の金属塩は、水溶性であればよく、特に限定されるものではない。第2の金属塩としては、亜鉛塩、マグネシウム塩、鉄(三価)塩、アルミニウム塩等が挙げられる。これらのうち、後述する析出工程において第1の金属塩が水中に析出しやすく、生成する炭酸カルシウム粒子の核とし易い点で、アルミニウム塩が好ましい。アルミニウム塩としては、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等が挙げられ、これらのうち、炭酸カルシウム粒子の粒子径をより小さくし易い点で、硝酸アルミニウムが好ましい。
【0048】
金属塩添加工程において、後述する析出工程において添加する炭酸塩の一部を添加してもよい。後述するように、炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられるが、水に溶解し易いという点で、炭酸ナトリウムが好ましい。また、析出工程の前に炭酸ナトリウムを添加することにより、析出工程における炭酸カルシウム粒子の初期生成時点でのpHが高くなる(アルカリ性となる)ため、炭酸カルシウム粒子の形成が安定し易くなる。
【0049】
第2の金属塩の添加量(すなわち、混合液における第2の金属塩の配合量)は、薄片状基粉末100重量部に対して0.010~0.10重量部に設定することが好ましく、0.02~0.05重量部に設定することがより好ましい。第2の金属塩の添加量を上記範囲とすることにより、第1の金属塩を核とした炭酸カルシウム粒子が成長し易くなり、薄片状基粉末の表面に付着する炭酸カルシウム粒子の粒子径もより適切なサイズとなる。これにより、滑らかさ、伸びの良さ、付着性、自然な仕上がり、及び肌をぼかす効果を高めることができ、また、てかりの発生をより抑制し得る化粧料用粉末材料を製造することができる。
【0050】
(析出工程)
析出工程においては、金属塩添加工程で得られた混合液(懸濁液)を攪拌しながら、混合液にカルシウム塩水溶液及び炭酸塩水溶液を添加することにより、薄片状基粉末の表面に第1の金属塩を核とした炭酸カルシウム粒子を析出させる。
【0051】
例えば、金属塩添加工程で得られた混合液(懸濁液)を攪拌しながら、カルシウム塩水溶液及び炭酸塩水溶液を、所定の時間をかけて添加する。これにより、薄片状基粉末の表面において、炭酸塩とカルシウム塩とが反応して炭酸カルシウムが生成し、この生成の際に、水に不溶性の第1の金属塩を核として、炭酸カルシウム粒子が形成される。このようにして、薄片状基粉末の表面に、第1の金属塩を核とした炭酸カルシウム粒子が被覆される。
【0052】
カルシウム塩としては、塩化カルシウム、水酸化カルシウム等が挙げられるが、水に溶解し易いという点で、塩化カルシウムが好ましい。
【0053】
析出工程において添加する炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられるが、水に溶解し易いという点で、炭酸ナトリウムが好ましい。また、析出工程において炭酸ナトリウムを添加することにより、カルシウム塩との反応時に副生物として生じる塩がナトリウム塩(例えば塩化ナトリウム)となるため、廃棄が容易となる。
【0054】
カルシウム塩と炭酸塩との反応時の温度は、20~60℃が好ましく、被覆される炭酸カルシウム粒子の粒子径のコントロールが容易であるという点で、20~30℃(常温付近)がより好ましい。
【0055】
カルシウム塩水溶液と炭酸塩水溶液とは、同時に添加(滴下)することが好ましい。また、同時に添加する際の添加時間は、生成される炭酸カルシウム粒子の粒子径のサイズ、製造スケール等に応じて適宜設定することができる。添加時間(滴下時間)が短くなるに従って、炭酸カルシウム粒子の粒子径が大きくなる傾向にあり、一方、長くなるに従って、炭酸カルシウム粒子の粒子径が小さくなる傾向にある。この点を考慮し、添加時間は、20~50分が好ましく、20~30分がより好ましい。添加時間が上記の範囲であることにより、被覆される炭酸カルシウム粒子の粒子径を、0.20~5μmに調整し易くなる。
【0056】
カルシウム塩水溶液の濃度、及び炭酸塩水溶液の濃度は、適宜設定することができる。
【0057】
上記金属塩添加工程、及び析出工程の後、得られた生成物をろ過、及び水洗した後、加熱雰囲気下(例えば100℃)で24時間以上乾燥し、その後、アトマイザー等で粉砕してもよい。
【0058】
上記金属塩添加工程、及び析出工程を行うことにより、薄片状基粉末表面を、第1の金属塩を核とした炭酸カルシウム粒子で被覆することができる。このように製造された炭酸カルシウム粒子は、多面体の形状を有する方解石の結晶であり、薄片状基粉末の表面に固着しているのではなく、ファンデルワールス力によって結合していると考えられる。
【0059】
本実施形態の化粧料用粉末材料の製造方法によれば、上述したように、滑らかさ、伸びの良さ、付着性、自然な仕上がり、及び肌をぼかす効果に優れつつ、てかりの発生を抑制し得る化粧料用粉末材料を製造することができる。
【0060】
[化粧料]
本実施形態の化粧料は、上述した当該化粧料用粉末材料を配合したものである。
【0061】
本実施形態の化粧料によれば、上述した当該化粧料用粉末材料を配合することにより、滑らかさ、伸びの良さ、付着性、自然な仕上がり、及び肌をぼかす効果に優れつつ、てかりの発生が抑制された化粧料となる。
【0062】
化粧料中の化粧料用粉末材料の配合量は、50~90重量%が好ましく、70~85重量%がより好ましい。化粧料用粉末材料の配合量を上記範囲とすることにより、滑らかさ、伸びの良さ、付着性、自然な仕上がり、及び肌をぼかす効果を高めることができ、また、てかりの発生をより抑制し得る。
【0063】
本発明の化粧料には、通常化粧料に用いられる成分、例えば、上記化粧料用粉末材料以外の粉末、界面活性剤、油剤、ゲル化剤、高分子、美容成分、保湿剤、色素、防腐剤、香料等を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【実施例0064】
以下、実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【0065】
[使用原料]
使用した原料を下記に示す。
・セリサイト(FSE-S、三信鉱工株式会社製)
・マイカ(YW-2300X、株式会社ヤマグチマイカ製)
・炭酸ナトリウム(ソーダ灰ライト、株式会社トクヤマ製)
・塩化カルシウム(粒状塩化カルシウム、株式会社トクヤマ製)
・硝酸アルミニウム九水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)
・炭酸カルシウム粒子(ルミナス、粒子径0.1~1μm、丸尾カルシウム株式会社製)
・水(精製水)
【0066】
[化粧料用粉末材料の評価]
(実施例1)
水6Lを攪拌しながら、この水にセリサイト1000gを分散させた。得られた分散液を攪拌しながら、この分散液に10重量%の炭酸ナトリウム水溶液を107.6g添加した後、硝酸アルミニウム九水和物(第2の金属塩)を0.33g(セリサイト100重量部に対して0.033重量部)添加し、10分以上攪拌した。得られた混合液を攪拌しながら、この混合液に、10重量%の炭酸ナトリウム水溶液3270gと、12.6重量%の塩化カルシウム水溶液3170gとを、30分かけて同時に滴下し、滴下終了後、20分間攪拌した。攪拌終了後、得られた生成物をろ過、及び水洗した後、100℃で24時間以上乾燥し、その後、アトマイザーで粉砕することにより、セリサイトの表面に、炭酸アルミニウム(第1の金属塩)を核とした炭酸カルシウム粒子が24.1重量%被覆されてなる実施例1の化粧料用粉末材料を得た。
【0067】
(実施例2)
水1.6Lを攪拌しながら、この水にマイカ(雲母粉)300gを分散させた。得られた分散液を攪拌しながら、この分散液に10重量%の炭酸ナトリウム水溶液を32.3g添加した後、硝酸アルミニウム九水和物(第2の金属塩)を0.1g(マイカ100重量部に対して0.033重量部)添加し、10分以上攪拌した。得られた混合液を攪拌しながら、この混合液に、10重量%の炭酸ナトリウム水溶液981gと、12.6重量%の塩化カルシウム水溶液951.1gとを、20分かけて同時に滴下し、滴下終了後、20分間攪拌した。攪拌終了後、得られた生成物をろ過、及び水洗した後、100℃で24時間以上乾燥し、その後、アトマイザーで粉砕することにより、マイカの表面に、炭酸アルミニウム(第1の金属塩)を核とした炭酸カルシウム粒子が24.1重量%被覆されてなる実施例2の化粧料用粉末材料を得た。
【0068】
(実施例3)
実施例1と同様にして、セリサイトを水に分散させ、次いで、炭酸ナトリウム水溶液、及び硝酸アルミニウム九水和物(第2の金属塩)を添加し、10分以上攪拌した。得られた混合液を攪拌しながら、実施例1と同濃度及び同量の炭酸ナトリウム水溶液と、塩化カルシウム水溶液とを、50分かけて同時に滴下し、滴下終了後、20分間攪拌した。攪拌終了後、得られた生成物をろ過、及び水洗した後、100℃で24時間以上乾燥し、その後、アトマイザーで粉砕することにより、セリサイトの表面に、炭酸アルミニウム(第1の金属塩)を核とした炭酸カルシウム粒子が24.1重量%被覆されてなる実施例3の化粧料用粉末材料を得た。
【0069】
(実施例4)
実施例2と同様にして、マイカを水に分散させ、次いで、実施例2と同濃度及び同量の炭酸ナトリウム水溶液を添加した後、硝酸アルミニウム九水和物(第2の金属塩)を0.03g(マイカ100重量部に対して0.010重量部)添加し、10分以上攪拌した。得られた混合液を攪拌しながら、この混合液に、実施例2と同濃度及び同量の炭酸ナトリウム水溶液と、塩化カルシウム水溶液とを、20分かけて同時に滴下し、滴下終了後、20分間攪拌した。攪拌終了後、得られた生成物をろ過、及び水洗した後、100℃で24時間以上乾燥し、その後、アトマイザーで粉砕することにより、マイカの表面に、炭酸アルミニウム(第1の金属塩)を核とした炭酸カルシウム粒子が24.1重量%被覆されてなる実施例4の化粧料用粉末材料を得た。
【0070】
(実施例5)
実施例2と同様にして、マイカを水に分散させ、次いで、実施例2と同濃度及び同量の炭酸ナトリウム水溶液を添加した後、硝酸アルミニウム九水和物(第2の金属塩)を0.3g(マイカ100重量部に対して0.10重量部)添加し、10分以上攪拌した。得られた混合液を攪拌しながら、この混合液に、実施例2と同濃度及び同量の炭酸ナトリウム水溶液と、塩化カルシウム水溶液とを、20分かけて同時に滴下し、滴下終了後、20分間攪拌した。攪拌終了後、得られた生成物をろ過、及び水洗した後、100℃で24時間以上乾燥し、その後、アトマイザーで粉砕することにより、マイカの表面に、炭酸アルミニウム(第1の金属塩)を核とした炭酸カルシウム粒子が24.1重量%被覆されてなる実施例5の化粧料用粉末材料を得た。
【0071】
(実施例6)
水600gを攪拌しながら、この水にセリサイト112.8gを分散させた。得られた分散液を攪拌しながら、この分散液に10重量%の炭酸ナトリウム水溶液を24.28g添加した後、硝酸アルミニウム九水和物(第2の金属塩)を0.038g(セリサイト100重量部に対して0.034重量部)添加し、10分以上攪拌した。得られた混合液を攪拌しながら、この混合液に、10重量%の炭酸ナトリウム水溶液737.72gと、12.6重量%の塩化カルシウム水溶液715.2gとを、20分かけて同時に滴下し、滴下終了後、20分間攪拌した。攪拌終了後、得られた生成物をろ過、及び水洗した後、100℃で24時間以上乾燥し、その後、アトマイザーで粉砕することにより、セリサイトの表面に、炭酸アルミニウム(第1の金属塩)を核とした炭酸カルシウム粒子が48.2重量%被覆されてなる実施例6の化粧料用粉末材料を得た。
【0072】
(実施例7)
実施例6と同様にして、セリサイトを水に分散させ、次いで、10重量%の炭酸ナトリウム水溶液を6.07g添加した後、硝酸アルミニウム九水和物(第2の金属塩)を0.038g(セリサイト100重量部に対して0.034重量部)添加し、10分以上攪拌した。この混合液に、10重量%の炭酸ナトリウム水溶液184.43gと、12.6重量%の塩化カルシウム水溶液178.8gとを、20分かけて同時に滴下し、滴下終了後、20分間攪拌した。攪拌終了後、得られた生成物をろ過、及び水洗した後、100℃で24時間以上乾燥し、その後、アトマイザーで粉砕することにより、セリサイトの表面に、炭酸アルミニウム(第1の金属塩)を核とした炭酸カルシウム粒子が12.1重量%被覆されてなる実施例7の化粧料用粉末材料を得た。
【0073】
(比較例1)
実施例1と同様にして、セリサイトを水に分散させ、次いで炭酸ナトリウム水溶液を添加し、10分以上攪拌した。得られた混合液を攪拌しながら、実施例1と同濃度及び同量の炭酸ナトリウム水溶液と、塩化カルシウム水溶液とを、20分かけて同時に滴下し、滴下終了後、20分間攪拌した。攪拌終了後、得られた生成物をろ過、及び水洗した後、100℃で24時間以上乾燥し、その後、アトマイザーで粉砕することにより、セリサイトの表面に、炭酸カルシウム粒子が24.1重量%被覆されてなる比較例1の化粧料用粉末材料を得た。比較例1の化粧料用粉末材料においては、セリサイトの表面に、核を有さない炭酸カルシウム粒子が付着していた。
【0074】
(比較例2)
実施例2と同様にして、マイカを水に分散させ、次いで炭酸ナトリウム水溶液を添加し、10分以上攪拌した。得られた混合液を攪拌しながら、実施例2と同濃度及び同量の炭酸ナトリウム水溶液と、塩化カルシウム水溶液とを、20分かけて同時に滴下し、滴下終了後、20分間攪拌した。攪拌終了後、得られた生成物をろ過、及び水洗した後、100℃で24時間以上乾燥し、その後、アトマイザーで粉砕処理することにより、マイカの表面に、炭酸カルシウム粒子が24.1重量%被覆されてなる比較例2の化粧料用粉末材料を得た。比較例2の化粧料用粉末材料においては、マイカの表面に、核を有さない炭酸カルシウム粒子が付着していた。
【0075】
(比較例3)
水1.3Lを攪拌しながら、この水にセリサイト112.8gを分散させ、次いで、粒子径0.1~1μmの炭酸カルシウム粒子を添加し、20分間攪拌した。攪拌終了後、得られた混合物をろ過、水洗した後、100℃で24時間以上乾燥し、アトマイザーで粉砕することにより、核を有さない炭酸カルシウム粒子が24.1重量%被覆処理されてなる比較例3の化粧料用粉末材料を得た。
【0076】
(比較例4)
実施例2と同様にして、マイカを水に分散させた。得られた分散液を攪拌しながら、この分散液に、実施例2と同濃度及び同量の炭酸ナトリウム水溶液を添加した後、硝酸アルミニウム九水和物を0.027g(マイカ100重量部に対して0.009重量部)添加し、10分以上攪拌した。得られた混合液を攪拌しながら、実施例2と同濃度及び同量の炭酸ナトリウム水溶液と、塩化カルシウム水溶液とを、20分かけて同時に滴下し、滴下終了後、20分間攪拌した。攪拌終了後、得られた生成物をろ過、及び水洗した後、100℃で24時間以上乾燥し、その後、アトマイザーで粉砕処理することにより、マイカの表面に、炭酸カルシウム粒子が24.1重量%被覆されてなる比較例4の化粧料用粉末材料を得た。比較例4の化粧料用粉末材料においては、マイカの表面に、炭酸カルシウム粒子と共に極微量の炭酸アルミニウム粒子が付着しており、炭酸カルシウム粒子は炭酸アルミニウム(第1の金属塩)を核としたものではなかった。
【0077】
(比較例5)
実施例2と同様にして、マイカを水に分散させた。得られた分散液を攪拌しながら、この分散液に、実施例2と同濃度及び同量の炭酸ナトリウム水溶液を添加した後、硝酸アルミニウム九水和物を0.33g(マイカ100重量部に対して0.11重量部)添加し、10分以上攪拌した。得られた混合液を攪拌しながら、実施例2と同濃度及び同量の炭酸ナトリウム水溶液と、塩化カルシウム水溶液とを、20分かけて同時に滴下し、滴下終了後、20分間攪拌した。攪拌終了後、得られた生成物をろ過、及び水洗した後、100℃で24時間以上乾燥し、その後、アトマイザーで粉砕処理することにより、マイカの表面に、炭酸カルシウム粒子が24.1重量%被覆されてなる比較例5の化粧料用粉末材料を得た。比較例5の化粧料用粉末材料においては、マイカの表面に、炭酸カルシウム粒子と共に炭酸アルミニウム粒子が付着しており、炭酸カルシウム粒子は炭酸アルミニウム(第1の金属塩)を核としたものではなかった。
【0078】
実施例1~7、及び比較例1~5の化粧料用粉末材料について、以下のようにして、全光線透過率及びヘイズ値を測定すると共に、セリサイト又はマイカの表面に付着している炭酸カルシウム粒子の粒子径を測定し、評価した。併せて、参考例1の化粧料用粉末材料として未処理のセリサイト、参考例2の化粧料用粉末材料として未処理のマイカを用い、これらの全光線透過率及びヘイズ値を測定した。
【0079】
(全光線透過率及びヘイズ値の測定)
肌の透明感を増す効果、及び自然にぼかす効果を確認すべく、実施例1~7、比較例1~5、及び参考例1~2の化粧料用粉末材料を測定試料として、全光線透過率及びヘイズ値を夫々測定した。具体的には、まず、シリコーンオイル(KF-96-2000CS、信越化学工業株式会社製)と、測定試料とを4:1の重量比(シリコーンオイル:測定試料の重量比が4:1)で添加し、オートマチックフーバーマーラー(No.546、株式会社安田精機製作所製)にて十分に攪拌し、測定試料がシリコーンオイルに分散されてなるペーストを得た。得られたペーストを、ガラス板上にアプリケーターを用いて、膜厚が0.025mm(25μm)となるように引き延ばし(塗布し)た後、ペーストが塗布されたガラス板をヘイズメーター(HM-150N、株式会社村上色彩技術研究所製)にセットし、任意の4箇所にて全光線透過率及びヘイズ値を測定し、平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0080】
(薄片状基粉末の表面に被覆された炭酸カルシウム粒子の粒子径の測定)
実施例1~7、及び比較例1~5の化粧料用粉末材料の表面に付着している炭酸カルシウム粒子をSEMで撮影した。具体的には、各化粧料用粉末材料の表面において、任意の10個の炭酸カルシウム粒子をSEMで撮影した。撮影倍率は2000倍に設定した。そして、得られた画像をImageJ(https://imagej.nih.gov/ij/index.html)を用いて解析することにより、各表面に存在している各炭酸カルシウム粒子の粒子径を算出した後、10個の平均値を算出した。各炭酸カルシウム粒子の粒子径は、その最大径と最小径とを測定し、これらの平均値とした。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
上記の結果、実施例1~7の化粧料用粉末材料においては、薄片状基粉末の表面が、第1の金属塩を核とした炭酸カルシウム粒子で被覆されており、炭酸カルシウム粒子の粒子径は0.20~5μmであることが示された。これら実施例1~7の化粧料用粉末材料は、高い全光線透過率を維持しつつ、ヘイズ値が高い(すなわち、光の拡散性能に優れる)ものであることが示された。
【0083】
これに対し、比較例1~2、4~5の化粧料用粉末材料においては、薄片状基粉末の表面が、炭酸カルシウム粒子で被覆されているものの、炭酸カルシウム粒子は二価又は三価の金属塩を核としたものではなく、その粒子径が0.20μm未満又は5μm超であることが示された。これら比較例1~2、4~5、及び比較例3の化粧料用粉末材料においては、炭酸カルシウム粒子が第1の金属塩を核としたものではなく、また、全光線透過率が高い一方、ヘイズ値は低い(すなわち、光の拡散性能に劣る)ものであることが示された。
【0084】
また、参考例1~2の化粧料用粉末材料においては、薄片状基粉末の表面が、炭酸カルシウム粒子で被覆されておらず、全光線透過率が高い一方、ヘイズ値は低い(すなわち、光の拡散性能に劣る)ものであることが示された。
【0085】
上記実施例1~7、比較例1~5、及び参考例1~2の結果は、具体的には、以下のように考察される。
【0086】
薄片状基粉末の表面を炭酸カルシウム粒子で被覆する場合、比較例1及び2に示すように、炭酸塩(ここでは炭酸ナトリウム)と、カルシウム塩(ここでは塩化カルシウム)とを単に反応させるだけでは、生成する炭酸カルシウム粒子の粒子径をコントロールできない。このように単に反応させる場合には、通常、製造スケールが大きくなるに従って、炭酸カルシウム粒子の形成が促進され易くなり、これに起因して、炭酸カルシウム粒子の粒子径が過剰に大きくなってしまう。
【0087】
そこで、炭酸塩と、カルシウム塩との反応前に、薄片状基粉末100重量部に対して0.33重量部の第2の金属塩(ここでは硝酸アルミニウム)を添加し、この第2の金属塩に由来する第1の金属塩を核として炭酸カルシウム粒子を生成させることによって、炭酸カルシウム粒子を、第1の金属塩(ここでは炭酸アルミニウム)を核としたものとすることができ、また、実施例1~2に示すように、炭酸カルシウム粒子の粒子径を1~5μm程度にコントロールすることができる。また、炭酸カルシウム粒子の被覆量が多く、又は少なくなる(例えば化粧料用粉末材料全体の20~30重量%よりも多く、又は少なくなる)に従って、炭酸カルシウム粒子が第1の金属塩(ここでは炭酸アルミニウム)を核としたものとならず、また、炭酸カルシウム粒子の粒子径が0.20~5μmから外れ易い傾向にあるが、反応前に第2の金属塩を添加することによって、炭酸カルシウム粒子の被覆量が比較的多い場合であっても、炭酸カルシウム粒子を、第1の金属塩を核としたものとすることができ、また、実施例6~7に示すように、炭酸カルシウム粒子の粒子径を0.20~5μm程度にコントロールすることができる。
【0088】
実施例1~7は、薄片状基粉末を炭酸カルシウム粒子で被覆していない参考例1~2と比較して、高い透過率を維持しつつ、ヘイズ値が高いものであるが、これは、被覆された炭酸カルシウム粒子の粒子径が関係していると考えられる。薄片状基粉末としてセリサイトを使用した実施例1と比較例1、3とを比較すると、実施例1の方が、ヘイズ値が高く、マイカを使用した実施例2と、比較例2、4、5とを比較すると、実施例2の方が、ヘイズ値が高い。これらヘイズ値を、炭酸カルシウム粒子の粒子径との関係で比較すると、炭酸カルシウム粒子の粒子径が2μm以下、特に1~2μmの範囲において最もヘイズ値が高い。これは、炭酸カルシウム粒子が薄片状粒子表面に付着している場合において、炭酸カルシウム粒子の光を最も拡散させやすい粒子径が1~2μm程度であるためであると考えられる。このことから、炭酸カルシウム粒子の粒子径を1~2μm程度に設定することによって、最もヘイズ値を高めることができるものと推察される。
【0089】
炭酸カルシウム粒子の粒子径が、実施例3に示すように1μm以下である場合、及び実施例4~5のように2μm以上である場合においても、セリサイト及びマイカの未処理品(未被覆品)である参考例1~2と比較して、ヘイズ値が高められている。これに対し、比較例2、4、5(マイカを使用)のように炭酸カルシウム粒子の粒子径が大き過ぎる場合には、参考例2と比較して、ヘイズ値の向上は少なく、比較例1(セリサイトを使用)のように、炭酸カルシウム粒子の粒子径が非常に大きくなり過ぎると、参考例1(セリサイトを使用)よりもヘイズ値が低い傾向にある。
【0090】
実施例1及び2においては、薄片状基粉末100重量部に対して第2の金属塩を0.033重量部添加することにより、炭酸カルシウム粒子の粒子径を1~2μmとすることが可能になる。この実施例1~2、及び実施例3~5に示すように、第2の金属塩を0.010~0.10重量部の範囲で添加することにより、炭酸カルシウム粒子の粒子径を0.20~5μmにすることができ、同じ薄片状基粉末どうしで比較して、未処理の参考例1~2、及び比較例1~5よりもヘイズ値を高めることができる。これに対し、第2の金属塩を0.009重量部添加した比較例4、及び0.11重量部添加した比較例5では、炭酸カルシウム粒子の粒子径が5μm超となり、ヘイズ値を高めることができない。このことから、薄片状基粉末100重量部に対して硝酸アルミニウムを0.010~0.10重量部添加する場合に、炭酸カルシウム粒子の粒子径を最適化することができる。
【0091】
[化粧料用粉末材料を用いた化粧料の評価]
実施例1~2、比較例1~2、及び参考例1~2の化粧料用粉末材料を用いて、表2に示す処方に基づき、下記の製造方法に従って、化粧料としてのパウダーファンデーションを調製し、各種評価を行った。
【0092】
(製造方法)
表2の成分1~7をミキサーに投入し、十分に混合した後、成分8を投入し、再度、十分に混合した。次いで、得られた混合物10gを容器に投入し、5.5MPaの圧力でプレスすることによって、実施例8~9、比較例6~7、及び参考例3のパウダーファンデーションを得た。
【0093】
【表2】
【0094】
[評価]
得られたパウダーファンデーションの滑らかさ、伸びの良さ、付着性、及び自然な仕上がりについて、予め訓練された専門パネラー10名によって、下記のように官能評価を行い、10名の評価結果の平均値を算出した。結果を表2に示す。
【0095】
(滑らかさ)
パウダーファンデーションを手に塗り、下記の判定基準に従って、1~5の5段階で評価した。
【0096】
・判定基準
5:非常に滑らか
4:やや滑らか
3:比較的滑らか
2:ややきしみがある
1:きしみがある
【0097】
(伸びの良さ)
パウダーファンデーションを手に塗り、下記の判定基準に従って、1~5の5段階で評価した。
【0098】
・判定基準
5:非常に伸びが良い
4:やや伸びが良い
3:比較的伸びが良い
2:やや伸びが悪い
1:伸びが悪い
【0099】
(自然な仕上がり)
パウダーファンデーションを手に塗り、下記の判定基準に従って、1~5の5段階で評価した。
【0100】
・判定基準
5:よく肌に馴染んでいる
4:肌に馴染んでいる
3:比較的肌に馴染んでいる
2:やや粉っぽい
1:粉っぽい
【0101】
(付着性1)
パウダーファンデーションを手に塗り、下記の判定基準に従って、1~5の5段階で評価した。
【0102】
・判定基準
5:非常に均一に付着している
4:均一に付着している
3:比較的均一に付着している
2:ややムラがある
1:ムラがある
【0103】
(付着性2)
パウダーファンデーションをパフで5回往復することによって採取した後、肌模型(株式会社ビューラックス製)に1回塗り、パウダーファンデーションが均一に乗っている(付着している)かどうかを、下記の評価基準に従って、1~5の5段階で評価した。
【0104】
・判定基準
5:非常に均一に付着している
4:均一に付着している
3:比較的均一に付着している
2:ややムラがある
1:ムラがある
【0105】
(肌をぼかす効果)
シミプレート(株式会社ビューラックス製)上に、パウダーファンデーションを0.775mg/cm塗布し、シミの輪郭が隠れているかどうかを、下記の評価基準に従って、1~5の5段階で評価した。
【0106】
・判定基準
5:シミの輪郭がよくぼやけている
4:シミの輪郭がぼやけている
3:比較的シミの輪郭がぼやけている
2:シミの輪郭があまりぼやけていない
1:シミの輪郭がぼやけていない
【0107】
実施例8は、滑らかさ、伸びの良さ、付着性1~2、自然な仕上がり、並びに肌をぼかす効果の全てにおいて、比較例6~7及び参考例3よりも高い数値となった。滑らかさ、伸びの良さ、及び付着性といった感触が向上した理由としては、薄片状基粉末を覆っている炭酸カルシウム粒子が肌の上で転がることによって、滑らかな感触が得られ、また、炭酸カルシウム粒子と共にその内側の薄片状基粉末を広がらせることができ、これにより、パウダーファンデーションを均一に広範囲に塗り易くなったからであると考えられる。自然な仕上がり、及び肌をぼかす効果が向上した理由としては、セリサイト、及びマイカを覆っている炭酸カルシウム粒子が、肌から反射される光を適度に分散させることによって、肌の色が均一に広がり、均一感や適度なぼかし効果が出たからであると考えられる。
【0108】
炭酸カルシウム粒子の含有量を実施例8よりも減らした実施例9においても、滑らかさ、伸びの良さ、付着性1~2、自然な仕上がり、及び肌をぼかす効果の全てにおいて、比較例6~7及び参考例3と比較して同等以上の高い数値となった。実施例8の方が実施例9よりも効果に優れることを考慮すると、炭酸カルシウム粒子を60重量%以上配合することが好ましいと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の化粧料用粉末材料は、化粧料に好適であり、特に薄片状基粉末を配合したファンデーション、アイシャドウ、ほほ紅などのメイクアップ化粧料、サンスクリーン化粧料、乳液、クリームといった基礎化粧品等への利用に適する。