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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021775
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】車両後部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/04 20060101AFI20240208BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B62D25/04 B
B62D25/08 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124852
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】増田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】望月 晋栄
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203AA12
3D203BB56
3D203BB77
3D203CA58
(57)【要約】
【課題】バックドア開口部を有する車両の車両室内空間を確保しつつ、車両後部のねじり剛性を確保できるようにする。
【解決手段】車両後部構造のバックドア開口部1の周辺に設けられた環状構造は、前面部と、内側面部とを有し、バックドア開口部1の外側部に位置する環状構造の車両前後方向長さは、バックドア開口部1の外側部における中間部の長さX2よりも、バックドア開口部1の上側角部2の長さX1の方が、長く設定され、前面部のうち、環状構造の車両前後方向長さが変化する部分には、上側角部2から車両下方に向かうに従い車両後方に傾斜する第1の傾斜面部14が設けられ、第1の傾斜面部14と第1の内壁部11とにより、第1の傾斜面部14の傾斜方向に沿って延びる稜線15が形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部に設けられたバックドア開口部には、前記バックドア開口部の開口縁に沿って連続するように配置される環状構造が形成され、
前記環状構造は、車両前方を臨む前面部と、車両内側を臨む内側面部と、を有している、車両後部構造において、
前記バックドア開口部の外側部に位置する前記環状構造の車両前後方向長さは、前記バックドア開口部の外側部における車両上下方向の中間部よりも、前記バックドア開口部の上側角部の方が、長く設定され、
前記前面部のうち、前記環状構造の前記車両前後方向長さが変化する部分には、前記上側角部から車両下方に向かうに従い車両後方に傾斜する第1の傾斜面部が設けられ、
前記第1の傾斜面部と前記内側面部とにより、前記第1の傾斜面部の傾斜方向に沿って延びる稜線が形成されていることを特徴とする、車両後部構造。
【請求項2】
前記バックドア開口部の車両前方に位置する車両側部には、クォータウィンドウ開口部が設けられ、
車両上下方向で、前記第1の傾斜面部の上端は、前記クォータウィンドウ開口部の上端よりも上方に配置され、
前記第1の傾斜面部の下端は、前記クォータウィンドウ開口部の車両上下方向の中間部に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の車両後部構造。
【請求項3】
前記前面部における前記第1の傾斜面部よりも車幅方向外側で、前記第1傾斜面部よりも車両前方側には、車両上下方向に延びる縦壁部が設けられ、
前記前面部における前記第1の傾斜面部よりも車幅方向外側で、前記第1傾斜面部よりも車両下方には、車両下方に向かに従い車両後方に傾斜する第2の傾斜面部が設けられ、
前記縦壁部の下部と前記第2の傾斜面部の上部とは連続するように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の車両後部構造。
【請求項4】
前記第2の傾斜面部は、前記クォータウィンドウ開口部の車両上下方向中間部から、前記クォータウィンドウ開口部の下端よりも下方に向かって延びていることを特徴とする、請求項3に記載の車両後部構造。
【請求項5】
前記環状構造は、前記第1の傾斜面部を含む内側環状部と、前記第2の傾斜面部を含む外側環状部と、を有し、
前記第1の傾斜面部の内側端と、前記第2の傾斜面部の外側端との間には、車幅方向外側に向かいに従い車両前方に傾斜する第3の傾斜面部が、前記内側環状部と前記外側環状部とを繋ぐように設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の車両後部構造。
【請求項6】
前記第1傾斜面部と、前記バックドア開口部の開口縁との間に位置する前記内側面部を跨ぐように、車両後方に向かうに従い車両上方に傾斜して延びているアッパリンフォースメントが接合されていることを特徴とする、請求項1に記載の車両後部構造。
【請求項7】
前記第2の傾斜面部の車両前方側で、前記クォータウィンドウ開口部の下部には、車両前後方向に延びる前後方向リンフォースメントが配置されており、該前後方向リンフォースメントの後部は、前記第2の傾斜面部に接合されていることを特徴とする、請求項3に記載の車両後部構造。
【請求項8】
前記上側角部には、前記前面部及び前記内側面部を有するリアピラーリンフォースメントが配置さられ、前記バックドア開口部の車幅方向外側部には、リアインナパネルが配置されており、
前記リアインナパネルの上部と、前記リアピラーリンフォースメントの下部とが重なった状態で接合される接合部が、前記クォータウィンドウ開口部の車両上下方向の中間部に配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の車両後部構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、車両後部にバックドア開口部が設けられている車両が知られている。当該バックドア開口部が設けられる車両では、バックドア開口部における車体のねじり剛性を確保することが要求される。例えば特許文献1に開示される構造では、バックドア開口部の開口縁には、複数の部材によって環状構造が形成されている。
【0003】
また、上記例では、バックドア開口部の周囲を形成する車両室内側のインナパネル等の部材に凹形状が設けられ、該凹形状の稜線が滑らかに延びるように、すなわち、屈曲点を有しないように形成されている。また、稜線を構成する縦壁も、例えば上下方向に延び、屈曲を設けないように形成されている。これらの縦壁及び稜線が、環状構造の一部を構成することにってバックドア開口部における剛性を確保しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-8242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記例の構造では、バックドア開口部の周囲の環状構造に平面を設ける構造にしている。このような構造で要求を満たす剛性を得るためには、環状構造における閉断面の面積を得るために平面の幅を広くする必要がある。その結果、車両室内空間またはバックドア開口部の開口面積が狭くなる可能性がある。
【0006】
すなわち、車両室内空間の容積をしつつ、バックドア開口部の周辺のねじり剛性を確保しようとする場合には、上記例の構造には、改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、バックドア開口部を有する車両の車両室内空間を確保しつつ、車両後部のねじり剛性を確保することが可能な車両後部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る車両後部構造は、車両後部に設けられたバックドア開口部には、前記バックドア開口部の開口縁に沿って連続するように配置されて環状構造が形成され、前記環状構造は、車両前方を臨む前面部と、車幅方向内側を臨む内側面部と、を有している。当該車両後部構造において、前記バックドア開口部の車幅方向外側部に位置する前記環状構造部の車両前後方向長さは、前記バックドア開口部の車幅方向外側部における車両上下方向の中間部よりも、前記バックドア開口部の上側角部の方がが、長く設定され、前記環状構造部の前記車両前後方向長さが変化する変化部に位置する前記前面部には、前記上側角部から車両下方に向かうに従い車両後方に傾斜する第1の傾斜面が設けられ、前記第1の傾斜面と前記内側面部とにより、前記第1の傾斜面の傾斜方向に沿って延びる稜線が形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バックドア開口部を有する車両の車両室内空間を確保しつつ、車両後部のねじり剛性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る車両後部構造を有する車両の一部を車両室内から見た状態を示す斜視図である。
図2図1の車両後部構造からシートベルトを取り外した状態を示す斜視図である。
図3図2のバックドア開口部の上側角部及びその周辺を拡大した拡大斜視図である。
図4図2のリアピラー部を車両内側から見た側面図である。
図5図1の車両後部構造を車両外側から見た側面図で、サイドボディアウタパネルを取り外した状態を示している。
図6図1のA―A断面を車両後方から見た斜視図である。
図7図1のA―A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る車両後部構造の一実施形態について、図面(図1図7)を参照しながら説明する。なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向における前方を示す。実施形態の説明における「前部(前端)及び後部(後端)」は、車両前後方向における前部及び後部に対応する。また、矢印R及び矢印Lは、乗員が車両前方を見たときの右側及び左側を示している。
【0012】
本実施形態の車両後部構造を有する車両は、図1に示すように、当該車両の後部にバックドア開口部1が設けられている。バックドア開口部1の車幅方向外側部は、車両上下方向に延びるリアピラー部3が配置されている。また、バックドア開口部1の上部には、車幅方向に延びるルーフクロスメンバ40が配置されている。さらに、当該車両後部構造では、バックドア開口部1の開口縁には、該開口縁に沿って連続するように環状構造4が形成されている(図6図7)。また、本実施形態の車両側部における後部には、クォータウィンドウ開口部5が設けられている。クォータウィンドウ開口部5は、バックドア開口部1の車両前方に配置されている。ウィンドウ開口部5の下方側には、リアスピーカパネル39が配置されている。
【0013】
本実施形態の環状構造4は、バックドア開口部1の車幅方向外側部から上部に向かって連続するように形成されている。すなわち、当該環状構造4は、複数のパネル部材によって形成された閉断面を有している。以下、環状構造4について説明する。
【0014】
先ず、バックドア開口部1の車幅方向外側部に位置する環状構造4について説明する。上記したように、バックドア開口部1の車幅方向外側部には、車両上下方向に延びるリアピラー部3が配置されている。リアピラー部3は、複数のパネル部材によって構成されている。本実施形態では、図1図4に示すように、リアピラー部3の車両内側部は、サイドボディインナリアアッパパネル20及びサイドボディインナリアロアパネル30(図4)を有し、これらが、接合された状態で上下に並んで配置されている。また、リアピラー部3の車両外側は、サイドボディアウタパネル60を有している。例えば、図6及び図7に示すように、サイドボディインナリアアッパパネル20、サイドボディアウタパネル60、リアアッパリンフォースメント61、及びリアロアリンフォースメント62等によって、環状構造4が形成され、同様に、サイドボディインナリアロアパネル30、サイドボディアウタパネル60、リアアッパリンフォースメント61、及びリアロアリンフォースメント62等によって環状構造4が形成され、これらの環状構造4は、車両上下方向に連続している。当該環状構造4は、水平方向の断面が閉断面となっている。すなわち、リアピラー部3に位置する環状構造4は、水平方向の閉断面を維持した状態で、車両上下方向に延びている。
【0015】
次に、バックドア開口部1の上部に位置する環状構造4について説明する。上記したように、バックドア開口部1の上部には、車幅方向に延びるルーフクロスメンバ40が配置されている。図示による詳細な説明は省略しているが、ルーフクロスメンバ40は、例えば、略L字状の断面を有している。ルーフクロスメンバ40の上部には、ルーフパネル35が接合される。例えば、ルーフパネル35の後部に、車両下方に湾曲する部分を設けて、当該湾曲する部分とルーフクロスメンバ40とを接合して、環状構造4を形成してもよい。この場合、バックドア開口部1の上部に位置する部分では、縦方向(車両上下方向)の断面が閉断面となる。なお、ルーフクロスメンバ40を車両上方に開口するU字形の断面を有する形状としてもよい。この場合、ルーフクロスメンバ40の上部に、ルーフパネル35が接合され、ルーフクロスメンバ40とルーフパネル35とにより、環状構造4が形成される。この場合、バックドア開口部1の上部に位置する部分では、縦方向(車両上下方向)の断面が閉断面となる。バックドア開口部1の上部に位置する環状構造4は、縦方向の閉断面を維持した状態で、車幅方向に延びている。なお、ルーフクロスメンバ40及びルーフパネル35等により形成される閉断面は、リアピラー部3の閉断面よりも小さく設定されてもよい。
【0016】
バックドア開口部1の上側角部2には、図1図3に示すように、リアピラーリンフォースメント10が配置されている。バックドア開口部1の上側角部2には、車両側部における上部に設けられるルーフサイドレール部6が接続されている。この例では、リーフサイドレール部6における後部に配置されるルーフサイドメンバ37が、リアピラーリンフォースメント10にスポット溶接により接合されている。
【0017】
また、本実施形態では、図1図3に示すように、バックドア開口部1の上側角部2において、リアピラーリンフォースメント10と、サイドボディアウタパネル60及びルーフパネル35とによって環状構造4が形成されるとよい。例えば、リアピラーリンフォースメント10の下部とサイドボディアウタパネル60とにより、水平方向の閉断面を有する環状構造4が形成され、リアピラーリンフォースメント10の上部とルーフパネル35とにより縦方向の閉断面を有する環状構造4が形成される。バックドア開口部1の上側角部2に位置する環状構造4は、環状を維持しながら湾曲している。すなわち、湾曲する環状構造4は、閉断面を維持した状態で湾曲しており、リアピラー部3に位置する環状構造4と、バックドア開口部1の上部に位置する環状構造4とを連結している。
【0018】
本実施形態の環状構造4は、図6及び図7に示すように、車両前方を臨む前面部4Aと、車両内側を臨む内側面部4Bと、を有している。例えば、リアピラー部3の環状構造4の前面部4Aの一部は、サイドボディインナリアアッパパネル20の前部に設けられている。また、上側角部2の環状構造4における前面部4Aは、リアピラーリンフォースメント10の前部に設けられ、バックドア開口部1の上部の環状構造4における前面部4Aは、ルーフクロスメンバ40の前部41に設けられている。
【0019】
また、図6及び図7に示すように、リアピラー部3の環状構造4の内側面部4Bは、サイドボディインナリアアッパパネル20の内側部に設けられている。上側角部2の環状構造4における内側面部4Bは、リアピラーリンフォースメント10の内側部及び下部に設けられ、バックドア開口部1の上部の環状構造4における内側面部4Bは、ルーフクロスメンバ40の下部に設けられている。
【0020】
本実施形態では、バックドア開口部1の外側部に位置する環状構造4の車両前後方向長さは、バックドア開口部1の外側部における車両上下方向の中間部よりも、バックドア開口部1の上側角部2の方が、長く設定されている。ここで、中間部は、リアピラー部3のうち、サイドボディインナリアアッパパネル20の内側面部4Bである。この例では、バックドア開口部1の外側部に位置する環状構造4のうち、サイドボディインナリアアッパパネル20の内側面部4Bの車両前後方向長さX2に対して、リアピラーリンフォースメント10の内側面部4Bの車両前後方向長さX1が長く設定されている。例えば、X1は、X2の約2倍程度の長さにするとよい。
【0021】
本実施形態のサイドボディインナリアアッパパネル20の内側面部4B(後述する第1の内壁部21)は、サイドボディインナリアアッパパネル20の車幅方向内側端に設けられている部分で、車幅方向内側を臨み、車両上下方向に延びる面部である。サイドボディインナリアアッパパネル20の内側面部4Bの車両前後方向長さは、当該内側面部4Bの下部から上部に亘って、ほぼ同じに設定されている(図4)。
【0022】
また、リアピラーリンフォースメント10の内側面部4Bは、リアピラーリンフォースメント10の下部における車幅方向内側を臨む部分(後述する第2の内壁部11)から、リアピラーリンフォースメント10の上部における車両下方を臨む部分(後述する下壁部12)に設けられている。図7に示すように、リアピラーリンフォースメント10の内側面部4Bの車両前後方向長さは、下部から上方に向かうに従い徐々に長くなる。
【0023】
また、バックドア開口部1の外側部に位置する環状構造4の前面部4Aのうち、環状構造4の車両前後方向長さが変化する部分には、上側角部2から車両下方に向かうに従い車両後方に傾斜する第1の傾斜面部14が設けられている。ここで、車両前後方向長さが変化する部分は、リアピラーリンフォースメント10の内側面部4Bに隣接する前面部4Aである。また、第1の傾斜面部14と、リアピラーリンフォースメント10の内側面部4Bとにより、第1の傾斜面部14の傾斜方向に沿って延びる稜線15が形成されている。
【0024】
上記のように環状構造4を構成のように、車体のねじり剛性において脆弱部となりやすい車体の角部の車両前後方向の幅を長く設定することにより、環状構造4を形成する閉断面の面積を大きくすることが可能なる。その結果、バックドア開口部1の上側角部2の剛性を確保することができる。一方で、本実施形態では、リアピラー部3の車両前後方向長さを上側角部2に比べて小さくしているため、車両室内の容積を確保することができる。また、稜線15を屈曲しない滑らかな曲線とし、内側面部4Bを構成する面部を車両上下方向に連続する面部としているため、上側角部2とリアピラー部3との連続性を維持しつつ、剛性を高めたい部分を必要に応じて剛性を高めることが可能となる。
【0025】
また、本実施形態では、車両上下方向で、第1の傾斜面部14の上端は、クォータウィンドウ開口部5の上端よりも上方に配置され、第1の傾斜面部14の下端は、クォータウィンドウ開口部5の車両上下方向の中間部に配置されている。この例では、第1の傾斜面部14の下端は、クォータウィンドウ開口部5の車両上下方向のほぼ中央に配置されている。
【0026】
上側角部2とリアピラー部3の間に第1の傾斜面部14を設け、且つ、第1の傾斜面部14が、クォータウィンドウ開口部5の上端を上下に跨ぐように配置しているため、リアピラー部3の上部に剛性を高め、上側角部2の変形をさらに抑制することができる。
【0027】
環状構造4を構成するリアピラーリンフォースメント10と、サイドボディインナリアアッパパネル20の詳細な形状について説明する。
【0028】
先ず、リアピラーリンフォースメント10について説明する。図1図4に示すように、リアピラーリンフォースメント10は、第1の内壁部11と、下壁部12と、上側前壁部13と、上記した第1の傾斜面部14と、第1の外壁部16と、第1の接続傾斜面部17と、を有している。
【0029】
第1の内壁部11は、リアピラーリンフォースメント10の車幅方向内側に配置され、車幅方向内側を臨む壁面を有し、車両上下方向に延びている。第1の内壁部11の前端は、第1の傾斜面部14に接続されており、第1の傾斜面部14の傾斜方向に沿って延びている。上記した稜線15は、第1の内壁部11と第1の傾斜面部14とにより形成されている。また、第1の内壁部11の後端は、車両上下方向に延びている。第1の内壁部11の上端は、湾曲して下壁部12に接続されている。下壁部12は、車両下方を臨む壁面を有し、車幅方向に延びている。下壁部12の車幅方向内側端は、ルーフクロスメンバ40の下部42にスポット溶接等により接合されている。
【0030】
上側前壁部13は、図1図3に示すように、下壁部12の前端から車両上方に延び、車幅方向に延びる壁面で、車両前方を臨む壁面を有している。上側前壁部13の車幅方向内側端は、ルーフクロスメンバ40の前部41にスポット溶接等により接合されている。上側前壁部13の上部は、フランジ等が設けられ、ルーフパネル35に接着剤等により接合されている。
【0031】
第1の傾斜面部14は、上側前壁部13の車幅方向側部における下方側に配置される部分で、上側前壁部13の車幅方向の中間部から車両下方に向かうに従い車両後方に傾斜して延びている。本実施形態では、図3及び図4に示すように、第1の傾斜面部14は、第1の傾斜面部14の車両上下方向の上端から中間部に向かうに従い車両後方に湾曲している。この部分の曲率半径の中心は、第1の傾斜面部14の車両後方側に位置している。第1の傾斜面部14は、車両上下方向の中間部に変曲点を有し、該変曲点から下端に向かうに従い車両後方に湾曲している。この部分の曲率半径の中心は、第1の傾斜面部14の車両前方側に位置している。このように、第1の傾斜面部14は、滑らかな曲線により構成されるとよい。
【0032】
第1の外壁部(縦壁部の一部)16は、図1図3に示すように、前面部4Aにおける第1の傾斜面部14よりも車幅方向外側で、第1傾斜面部よりも車両前方側には、設けられている部分で、車両前方を臨む壁面を有し、車両上下方向に延びる。第1の外壁部16は、上側前壁部13の車幅方向外側部から車両下方に延びている。この例では、上側前壁部13及び第1の外壁部16は、車両前方を臨む壁面が連続するように形成されている。すなわち、車両前方視で、上側前壁部13及び第1の外壁部16が湾曲する1つの平面を構成している。
【0033】
第1の接続傾斜面部(第3の傾斜面部の一部)17は、第1の外壁部16の車幅方向内側端と、第1の傾斜面部14の車幅方向外側端とを繋ぐ部分で、車両上下方向に延び、且つ、車両前方に向かうに従い車幅方向外側に傾斜している。本実施形態では、リアピラーリンフォースメント10の前面部4Aは、第1の傾斜面部14、第1の接続傾斜面部17、第1の外壁部16、上側前壁部13によって構成されており、リアピラーリンフォースメント10の内側面部4Bは、第1の内壁部11及び下壁部12によって構成されている。
【0034】
また、第1の傾斜面部14、第1の接続傾斜面部17、第1の外壁部16、第1の内壁部11の各下端には、サイドボディインナリアアッパパネル20の上端に接合される接合部14a等を有している。当該接合部については後で説明する。
【0035】
次に、サイドボディインナリアアッパパネル20について説明する。図1図3に示すように、サイドボディインナリアアッパパネル20は、第2の内壁部21と、前壁部22と、第2の外壁部23と、第2の傾斜面部24と、第2の接続傾斜面部25と、を有している。
【0036】
第2の内壁部21は、サイドボディインナリアアッパパネル20の車幅方向内側に配置され、車幅方向内側を臨む壁面を有し、車両上下方向に延びている。第2の内壁部21の前端は、前壁部22に接続されており、車両上下方向に延びている。第2の内壁部21の後端は、車両上下方向に延びている。第2の内壁部21は、第1の内壁部11に連続するように延びている。第2の内壁部21の上部は、第1の内壁部11の下部が重なった状態でスポット溶接により接合されている。
【0037】
前壁部22は、第1の傾斜面部14の下端から車両下方に延び、車両前方を臨む壁面を有している。前壁部22の上部は、第1の傾斜面部14の下部が重なった状態でスポット溶接により接合されている。
【0038】
第2の外壁部(縦壁部の一部)23は、第1の外壁部16の下端から車両下方に延び、車両前方を臨む壁面を有している。第2の外壁部23の上部は、第1の外壁部16の下部が重なった状態でスポット溶接により接合されている。
【0039】
第2の傾斜面部24は、前面部4Aにおける第1の傾斜面部14よりも車幅方向外側で、第1の傾斜面部14よりも車両下方に配置され、車両下方に向かに従い車両後方に傾斜している部分である。第2の傾斜面部24は、第2の外壁部23の下端から連続して上記のように傾斜している。第2の傾斜面部24の下端は、前壁部22に滑らかに接続されている。
【0040】
第2の接続傾斜面部(第3の傾斜面部の一部)25は、第2の外壁部23及び第2の傾斜面部24の車幅方向内側端と、前壁部22の車幅方向外側端とを繋ぐ部分で、車両上下方向に延び、且つ、車両前方に向かうに従い車幅方向外側に傾斜している(図6図7)。第2の接続傾斜面部25は、第1の接続傾斜面部17が重なった状態でスポット溶接により接合されている。第1の接続傾斜面部17及び第2の接続傾斜面部25は、図4に示すように、ひし形(略平行四辺形)をなし、滑らかに連続する平面となるように、接続されている。
【0041】
また、本実施形態では、サイドボディインナリアアッパパネル20の前面部4Aは、前壁部22、第2の接続傾斜面部25、第2の外壁部23、第2の傾斜面部24によって構成されており、サイドボディインナリアアッパパネル20の内側面部4Bは、第2の内壁部21によって構成されている。
【0042】
本実施形態では、上記したように、前面部4Aにおける第1の傾斜面部14よりも車幅方向外側で、第1傾斜面部よりも車両前方側には、車両上下方向に延びる第1及び第2の外壁部(縦壁部)16,23が設けられ、前面部4Aにおける第1の傾斜面部14よりも車幅方向外側で、第1の傾斜面部14よりも車両下方には、車両下方に向かに従い車両後方に傾斜する第2の傾斜面部24が設けられ、第2の外壁部(縦壁部の一部)23の下部と第2の傾斜面部24の上部とは連続するように形成されている。
【0043】
車体側部のリアピラー部3で、環状構造4を、内側と外側とに分けて並立するように形成することにより、内側を、外側よりも断面を小さくすることが可能となり、その結果、車両室内空間を確保しやすくすることができ、且つリアピラー部3の強度及び剛性を確保することができる。
【0044】
また、本実施形態では、第2の傾斜面部24は、クォータウィンドウ開口部5の車両上下方向中間部から、クォータウィンドウ開口部5の下端よりも下方に向かって延びている。これにより、第2の傾斜面部24が、クォータウィンドウ開口部5の下端を上下に跨ぐように形成されるため、リアピラー部3の車両上下方向の中間部の剛性変化を補強し、変形を抑えることが可能となる。
【0045】
また、本実施形態では、バックドア開口部1の車幅方向外側部における環状構造4は、第1の傾斜面部14を含む内側環状部と、第2の傾斜面部24を含む外側環状部とを有し、第1の傾斜面部14の内側端と、第2の傾斜面部24の外側端との間には、車幅方向外側に向かいに従い車両前方に傾斜する第1及び第2の接続傾斜面部(第3の傾斜面部)17,25が、内側環状部と外側環状部とを繋ぐように設けられている。
【0046】
ここで、内側環状部は、第1及び第2の内壁部11,21と、第1の傾斜面部14、前壁部22を含む部分で、外側環状部は、第1及び第2の外壁部16,23を含む部分である。第1及び第2の接続傾斜面部17,25は、内側環状部及び外側環状部を繋ぐように傾斜している。図6及び図7に示すように、内側環状部を構成する部分の車両前後方向長さよりも、外側環状部を構成する部分の車両前後方向長さが、長く設定されている。本実施形態では、内側環状部及び外側環状部は、1つの閉断面を有している。
【0047】
外側環状部の前端と、内側環状部の前端とがずれて配置されると段差部が形成されるころになる。これを防ぐため、外側環状部と内側環状部との間に第1及び第2の接続傾斜面部(第3の傾斜面部)17,25を形成し、段差部が形成されることによる強度の低下を防ぎ、第1及び第2の接続傾斜面部17,25により、ねじれ剛性を確保することが可能となる。その結果、リアピラー部3の変形を抑制することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態では、図1図4に示すように、第1傾斜面部と、バックドア開口部1の開口縁との間に位置する第1の内壁部11(内側面部4B)を跨ぐように、車両後方に向かうに従い車両上方に傾斜して延びているバックドアバランサブラケット(アッパリンフォースメント)51が接合されている。この例では、アッパリンフォースメントは、第1の傾斜面部14の傾斜方向に直交するように配置されている。これにより、第1の傾斜面部14の強度をより高めることが可能となる。
【0049】
また、本実施形態では、第2の傾斜面部の車両前方側で、前記クォータウィンドウ開口部の下部には、車両前後方向に延びる前後方向リンフォースメントが配置されている。後方向リンフォースメントの後部は、第2の傾斜面部に接合されている。この例では、前後方向リンフォースメントは、上記したリアスピーカパネル39である。リアスピーカパネル39の上部には、クォータウィンドウ開口部5の下部に配置され、車両内側に凸形状を有し、車両前後方向に延びている。この部分が、補強構造を構成している。リアスピーカパネル39の上部は、第2の傾斜面部24の上部及び第2の外壁部23の下部にスポット溶接により接合されている。リアスピーカパネル39の上部における後部は、車両後方に向かうに従い車両上方に傾斜しており、第2の傾斜面部24の傾斜方向に直交している。このように、リアスピーカパネル39の上部に補強構造を設けることにより、第2の傾斜面部24等の剛性が向上し、リアピラー部3の剛性低下を抑制できる。
【0050】
また、本実施形態の車両後部構造は、図5及び図6に示すように、バックドア開口部1の車幅方向外側部における環状構造4の内部に配置され、第2の傾斜面部24の後側部に接合されているサイドボディインナリアリンフォースメント(インナリンフォースメント)52を有している。車両上下方向で、サイドボディインナリアリンフォースメント52は、クォータウィンドウ開口部5の下方側に配置されている。
【0051】
詳細には、サイドボディインナリアリンフォースメント52は、図5及び図6に示すように、車両上下方向に延びる板状で、内部に貫通孔を有しており、第2の外壁部23の後面側にスポット溶接により接合されている。なお、サイドボディインナリアリンフォースメント52は、第2の外壁部23と第2の傾斜面部24の境界付近、または、第2の傾斜面部24の上部に接合されてもよい。また、サイドボディインナリアリンフォースメント52の車幅方向外側部は、サイドボディアウタパネル60に接着剤等により接合されている。これにより、第2の傾斜面部24の強度を向上させることが可能となり、リアピラー部3の変形を抑えることができる。また、サイドボディインナリアリンフォースメント52を設けることによって、リアピラー部3の環状構造4のうち、外側環状部に相当する部分の剛性を高めることができる。
【0052】
さらに、本実施形態では、第2の傾斜面部24は、図5に示すように、サイドボディインナリアリンフォースメント52と、リアスピーカパネル39によって挟み込まれる構造である。このように構成することで、第2の傾斜面部24の剛性を高め、リアピラー部3の剛性を高めることができる。
【0053】
本実施形態では、上記したように、バックドア開口部1の上側角部2には、前面部4A及び内側面部4Bを有するリアピラーリンフォースメント10が配置され、バックドア開口部1の車幅方向外側部には、サイドボディインナリアアッパパネル20が配置されている。さらに、上記したように、サイドボディインナリアアッパパネル20の上部と、リアピラーリンフォースメント10の下部とが重なった状態で接合される接合部29が、クォータウィンドウ開口部5の車両上下方向の中間部に配置されている。このように、パネルが重なる接合部29を設けることで、強度を確保することができ、リアピラー部3の変形を抑制することが可能になる。
【0054】
また、本実施形態では、サイドボディインナリアアッパパネル20とリアピラーリンフォースメント10が重なる部分において、シートベルトアンカ9Bが取り付けられている。すなわち、スポット溶接される接合部29に、シートベルトアンカ9Bを取り付けることで、シートベルト9から、ガイド9Aを介して、シートベルトアンカ9Bに作用する荷重に抗することが可能な剛性を得やすくなる。
【0055】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0056】
本実施形態では、例えば、第1の傾斜面部14は、滑らかな曲面を有しているが、これに限らない、上記した傾斜方向に直線的に延びてもよい。また、リアスピーカパネル39の上部における補強構造(前後方向リンフォースメント)は、リアスピーカパネル39と別部材として、リアスピーカパネル39にスポット溶接等により接合する構造としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 バックドア開口部
2 上側角部
3 リアピラー部
4 環状構造
4A 前面部
4B 内側面部
5 クォータウィンドウ開口部
9 シートベルト
9A ガイド
9B シートベルトアンカ
10 リアピラーリンフォースメント
11 第1の内壁部
12 下壁部
13 上側前壁部
14 第1の傾斜面部
15 稜線
16 第1の外壁部(縦壁部の一部)
17 第1の接続傾斜壁面部(第3の傾斜面部の一部)
20 サイドボディインナリアアッパパネル(リアインナパネル)
21 第2の内壁部
22 前壁部
23 第2の外壁部(縦壁部の一部)
24 第2の傾斜面部
25 第2の接続傾斜面部(第3の傾斜面部の一部)
29 接合部
30 サイドボディインナリアロアパネル
35 ルーフパネル
37 ルーフサイドメンバ
39 リアスピーカパネル(前後方向リンフォースメント)
40 ルーフクロスメンバ
41 前部
42 下部
51 バックドアバランサブラケット(アッパリンフォースメント)
52 サイドボディインナリアリンフォースメント(インナリンフォースメント)
60 サイドボディアウタパネル
61 リアアッパリンフォースメント
62 リアロアリンフォースメント

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7