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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021780
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】柱梁接合部の耐火構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20240208BHJP
   E04B 1/26 20060101ALI20240208BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
E04B1/94 R
E04B1/26 G
E04B1/58 508L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124864
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 智紀
(72)【発明者】
【氏名】森田 武
(72)【発明者】
【氏名】貞広 修
(72)【発明者】
【氏名】木村 誠
(72)【発明者】
【氏名】西川 航太
(72)【発明者】
【氏名】金子 洋
(72)【発明者】
【氏名】大▲柳▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】山下 平祐
(72)【発明者】
【氏名】奥山 孝之
【テーマコード(参考)】
2E001
2E125
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001DE04
2E001EA09
2E001FA01
2E001FA02
2E001GA07
2E001GA12
2E001GA43
2E001GA63
2E001HA01
2E001HA03
2E001HB01
2E001HC01
2E001HF12
2E001KA01
2E001LA01
2E001LA04
2E125AA04
2E125AA14
2E125AA57
2E125AB12
2E125AC23
2E125AE02
2E125AE04
2E125AG03
2E125AG12
2E125AG13
2E125AG23
2E125AG43
2E125AG45
2E125BA27
2E125BA32
2E125BB02
2E125BB12
2E125BB22
2E125BD01
2E125BE07
2E125BF08
2E125CA05
2E125CA13
2E125CA14
2E125CA82
2E125EA23
(57)【要約】
【課題】柱梁と同等の耐火性能を確保することができる柱梁接合部の耐火構造を提供する。
【解決手段】耐火木質柱12と、耐火木質梁14とを、前記耐火木質梁14の前記芯材26の側端部から前記耐火木質柱12に向けて突出するプレート36に固定されるガセットプレート50と、前記耐火木質柱12の前記芯材20の側面に取り付けられるベースプレート52とからなるT字状断面の接合金物16を介して接合してなる柱梁接合部の耐火構造100であって、前記耐火木質梁14の側端部と、前記耐火木質柱12の側面の間の前記接合金物16の周囲の領域に充填されたセメント系固化材18を備えるようにする。セメント系固化材18の外側に耐火被覆材または木質被覆材を設けてもよい。梁小口面に耐火被覆材を設けてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重を支持する木質の芯材と、この芯材の外側に設けられた耐火被覆材とを含んで構成される耐火木質柱と、荷重を支持する木質の芯材と、この芯材の外側に設けられた耐火被覆材とを含んで構成される耐火木質梁とを、前記耐火木質梁の前記芯材の側端部から前記耐火木質柱に向けて突出するプレートに固定されるガセットプレートと、前記耐火木質柱の前記芯材の側面に取り付けられるベースプレートとからなるT字状断面の接合金物を介して接合してなる柱梁接合部の耐火構造であって、
前記耐火木質梁の側端部と、前記耐火木質柱の側面の間の前記接合金物の周囲の領域に充填されたセメント系固化材を備えることを特徴とする柱梁接合部の耐火構造。
【請求項2】
荷重を支持する木質の芯材と、この芯材の外側に設けられた耐火被覆材とを含んで構成される耐火木質柱と、荷重を支持する木質の芯材と、この芯材の外側に設けられた耐火被覆材とを含んで構成される耐火木質梁とを、前記耐火木質梁の前記芯材の側端部から前記耐火木質柱に向けて突出するプレートに固定されるガセットプレートと、前記耐火木質柱の前記芯材の上面または下面に固定されたコンクリート部材の側面に取り付けられるベースプレートとからなるT字状断面の接合金物を介して接合してなる柱梁接合部の耐火構造であって、
前記耐火木質梁の側端部と、前記コンクリート部材の側面の間の前記接合金物の周囲の領域に充填されたセメント系固化材を備えることを特徴とする柱梁接合部の耐火構造。
【請求項3】
前記セメント系固化材の外側に、厚さ12.5mm以上の強化せっこうボードからなる耐火被覆材が設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の柱梁接合部の耐火構造。
【請求項4】
前記耐火木質梁の側端部の小口面に、厚さ21mm以上の強化せっこうボードからなる耐火被覆材が設けられることを特徴とする請求項3に記載の柱梁接合部の耐火構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱梁接合部の耐火構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、本特許出願人は、荷重を支持する木材を強化石膏ボードと耐火シートで耐火被覆して、1時間または2時間の耐火性能を確保する耐火木質柱・梁(スリム耐火ウッド(登録商標))を開発している(例えば、特許文献1を参照)。一方、柱梁接合部の仕様は規定されていないが、火災加熱により接合部周りの構造性能が低下すると建物の崩壊に繋がるおそれがあるため、柱梁接合部についても柱・梁と同等の耐火性能が求められる。
【0003】
従来の柱梁接合部の耐火構造として、例えば、特許文献2、3に記載のものが知られている。特許文献2は、木質柱と鉄骨梁の接合部において、高密度の木材または難燃処理済の木材を燃え代として被覆したものである。特許文献3は、木質柱とコンクリート部材とを接合する鋼製接合部材の周りにグラウト材を充填したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6414670号公報
【特許文献2】特開2018-3475号公報
【特許文献3】特開2022-19358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、耐火木質柱と梁の接合部には、ガセットプレート等の接合金物を用いることが多い。このような接合部の耐火性能を確保するにあたり、以下のような問題点が挙げられる。
【0006】
・接合金物の鋼材温度が許容温度(平均350℃、最高450℃程度)を超えてしまい、破壊が生じる。
・接合金物からの熱伝導により、荷重支持部材である木材が炭化する。
・接合部まわりの材料同士の取合いに隙間が生じて熱が流入し、荷重支持部材である木材が炭化する。
【0007】
このため、接合金物を用いた柱梁接合部においても、耐火木質柱・梁単体と同等の耐火性能を確保することができる構造の開発が求められていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、柱梁と同等の耐火性能を確保することができる柱梁接合部の耐火構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る柱梁接合部の耐火構造は、荷重を支持する木質の芯材と、この芯材の外側に設けられた耐火被覆材とを含んで構成される耐火木質柱と、荷重を支持する木質の芯材と、この芯材の外側に設けられた耐火被覆材とを含んで構成される耐火木質梁とを、前記耐火木質梁の前記芯材の側端部から前記耐火木質柱に向けて突出するプレートに固定されるガセットプレートと、前記耐火木質柱の前記芯材の側面に取り付けられるベースプレートとからなるT字状断面の接合金物を介して接合してなる柱梁接合部の耐火構造であって、前記耐火木質梁の側端部と、前記耐火木質柱の側面の間の前記接合金物の周囲の領域に充填されたセメント系固化材を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る柱梁接合部の耐火構造は、上述した発明において、荷重を支持する木質の芯材と、この芯材の外側に設けられた耐火被覆材とを含んで構成される耐火木質柱と、荷重を支持する木質の芯材と、この芯材の外側に設けられた耐火被覆材とを含んで構成される耐火木質梁とを、前記耐火木質梁の前記芯材の側端部から前記耐火木質柱に向けて突出するプレートに固定されるガセットプレートと、前記耐火木質柱の前記芯材の上面または下面に固定されたコンクリート部材の側面に取り付けられるベースプレートとからなるT字状断面の接合金物を介して接合してなる柱梁接合部の耐火構造であって、前記耐火木質梁の側端部と、前記コンクリート部材の側面の間の前記接合金物の周囲の領域に充填されたセメント系固化材を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る柱梁接合部の耐火構造は、上述した発明において、前記セメント系固化材の外側に、耐火被覆材または木質被覆材が設けられることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る柱梁接合部の耐火構造は、上述した発明において、前記耐火木質梁の側端部の小口面に、非木質系の耐火被覆材が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る柱梁接合部の耐火構造によれば、荷重を支持する木質の芯材と、この芯材の外側に設けられた耐火被覆材とを含んで構成される耐火木質柱と、荷重を支持する木質の芯材と、この芯材の外側に設けられた耐火被覆材とを含んで構成される耐火木質梁とを、前記耐火木質梁の前記芯材の側端部から前記耐火木質柱に向けて突出するプレートに固定されるガセットプレートと、前記耐火木質柱の前記芯材の側面に取り付けられるベースプレートとからなるT字状断面の接合金物を介して接合してなる柱梁接合部の耐火構造であって、前記耐火木質梁の側端部と、前記耐火木質柱の側面の間の前記接合金物の周囲の領域に充填されたセメント系固化材を備えるので、耐火木質柱と耐火木質梁の柱梁接合部において、柱梁単体と同等の耐火性能を確保することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る柱梁接合部の耐火構造によれば、荷重を支持する木質の芯材と、この芯材の外側に設けられた耐火被覆材とを含んで構成される耐火木質柱と、荷重を支持する木質の芯材と、この芯材の外側に設けられた耐火被覆材とを含んで構成される耐火木質梁とを、前記耐火木質梁の前記芯材の側端部から前記耐火木質柱に向けて突出するプレートに固定されるガセットプレートと、前記耐火木質柱の前記芯材の上面または下面に固定されたコンクリート部材の側面に取り付けられるベースプレートとからなるT字状断面の接合金物を介して接合してなる柱梁接合部の耐火構造であって、前記耐火木質梁の側端部と、前記コンクリート部材の側面の間の前記接合金物の周囲の領域に充填されたセメント系固化材を備えるので、耐火木質柱と耐火木質梁の柱梁接合部において、柱梁単体と同等の耐火性能を確保することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る柱梁接合部の耐火構造によれば、前記セメント系固化材の外側に、耐火被覆材または木質被覆材が設けられるので、接合金物の温度上昇抑制、芯材の炭化防止に寄与することができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る柱梁接合部の耐火構造によれば、前記耐火木質梁の側端部の小口面に、非木質系の耐火被覆材が設けられるので、セメント系固化材の収縮による隙間からの熱の流入を抑え、耐火木質梁の芯材の炭化防止に寄与することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明に係る柱梁接合部の耐火構造の実施の形態1を示す図であり、(1)は鉛直断面図、(2)は水平断面図である。
図2図2は、本発明に係る柱梁接合部の耐火構造の実施の形態2を示す図であり、(1)は鉛直断面図、(2)は水平断面図である。
図3図3は、本発明の実施例1の耐火試験に関する図であり、(1)は試験体および温度測定位置、(2)は内部温度推移である。
図4図4は、本発明の実施例2の耐火試験に関する図であり、(1)は試験体および温度測定位置、(2)は内部温度推移である。
図5図5は、本発明の実施例3の耐火試験に関する図であり、(1)は試験体および温度測定位置、(2)は内部温度推移である。
図6図6は、本発明の実施例1~3の耐火試験体の温度測定位置を示す断面図であり、(1)は測定断面P1、(2)は測定断面P2、P3、(3)は測定断面P4、(4)は測定断面P5、P6、(5)は測定断面P7、(6)は測定断面P8である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、以下の(1)~(4)に示すような特徴を有している。
(1)接合金物の温度上昇を抑制するために、コンクリートを充填する。
(2)コンクリート充填部を強化せっこうボードや木製板で被覆し、接合金物の温度上昇抑制、耐火木質柱の木質の芯材の温度上昇抑制に寄与させる。
(3)耐火木質梁の小口面に適切な厚みの強化せっこうボードを張ることで、強化せっこうボードが吸熱して小口面からの熱の流入を抑え、荷重支持部材である木材の炭化を防ぐ。
(4)柱梁接合部周りの材料同士の取合いに隙間が生じないように、目地をずらす。
【0019】
本明細書においては、ISO834に規定する標準加熱曲線に則り1時間加熱または2時間加熱を行った後、加熱をやめて24時間放冷した後に、以下の2点が満たされた場合に1時間の耐火性能または2時間の耐火性能が達成されたものと定義する。
(1)放冷中に燃え止まること(放水などの消火をせずに自消すること)。
(2)放冷後に芯材の木材がすべて炭化せずに残っていること。
なお、以下においては、1時間の耐火性能のことを1時間耐火、2時間の耐火性能のことを2時間耐火ということがある。
【0020】
以下に、本発明に係る柱梁接合部の耐火構造の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0021】
<実施の形態1>
まず、本発明の実施の形態1について説明する。本実施の形態1は、1時間耐火を想定した構造である。
図1に示すように、本実施の形態1に係る柱梁接合部の耐火構造100は、耐火木質柱12と、耐火木質梁14とを、接合金物16を介して接合してなる構造であり、接合金物16の周囲の領域に充填されたコンクリート18(セメント系固化材)を備える。
【0022】
(耐火木質柱)
耐火木質柱12は、荷重を支持する木質の芯材20と、芯材20の外側の全周に設けられた耐火被覆材22と、仕上げ材24とを含んで構成される正方形断面の柱である。芯材20は、例えばカラマツなどの集成材を用いて構成することができる。耐火被覆材22は、芯材20の外側に設けられた2枚の強化せっこうボード22Aと、その外側に設けられた耐火シート22Bにより構成される。耐火シート22Bは、加熱により膨張して燃焼残渣が耐火断熱層を形成し、耐火断熱性能を発現する熱膨張耐火性シートである。仕上げ材24は、耐火シート22Bの外側に設けられた木製板で構成される。なお、本実施の形態1においては、芯材20の断面の一辺が540mm、強化せっこうボード22Aの厚さが15mm、耐火シート22Bの厚さが2mm、仕上げ材24の木製板の厚さが15mmのものを想定しているが、本発明はこれに限るものではない。
【0023】
(耐火木質梁)
耐火木質梁14は、水平方向に延びる木質の芯材26と、芯材26の側面と下面に設けられた耐火被覆材28と、仕上げ材30とを含んで構成される矩形断面の梁である。芯材26は、例えばカラマツなどの集成材を用いて構成することができる。耐火被覆材28は、芯材26の外側に設けられた2枚の強化せっこうボード28Aと、その外側に設けられた耐火シート28Bにより構成される。耐火シート28Bは、加熱により膨張して燃焼残渣が耐火断熱層を形成し、耐火断熱性能を発現する熱膨張耐火性シートである。仕上げ材30は、耐火シート28Bの外側に設けられた木製板で構成される。なお、本実施の形態1においては、芯材26の断面の幅が250mm、高さが510mm、強化せっこうボード28Aの厚さが15mm、耐火シート28Bの厚さが2mm、仕上げ材30の木製板の厚さが15mmのものを想定しているが、本発明はこれに限るものではない。
【0024】
耐火木質梁14の側端部の小口面14Aには、強化せっこうボード32(非木質系の耐火被覆材)が張り付けられる。この強化せっこうボード32は火災加熱時に吸熱して小口面14Aからの熱の流入を抑え、芯材26の炭化を防ぐ。また、打設後のコンクリート18の収縮による隙間からの熱の流入による芯材26の燃焼継続を抑制する。強化せっこうボード32の厚みが増すほど遮熱性能や吸熱効果が向上する。例えば、強化せっこうボード32の厚さを21mm以上とすれば1時間の耐火性能は担保されると考えられる。なお、図1の例では、左側の耐火木質梁14の小口面14Aに張り付ける強化せっこうボード32(厚さ21mm)の枚数を2枚とし、右側の耐火木質梁14の小口面14Aに張り付ける強化せっこうボード32(厚さ21mm)の枚数を1枚とした例を示している。強化石膏ボード32の目地からの熱の流入による芯材の炭化を防ぐため、目地が段差状になるように強化石膏ボード32を張り付ける。耐火木質梁14の側端部の小口面14Aに設ける耐火被覆材は、強化石膏ボード32に限るものではなく、非木質系の耐火被覆材であればいかなるものでもよい。また、この耐火被覆材の厚さおよび枚数は、要求される耐火性能などに応じて適宜設定可能である。
【0025】
芯材26および強化石膏ボード32の側端面の中央部分には、梁軸方向に延びたスリット状の凹溝部34が形成されている。凹溝部34には、鋼製のプレート36の一部が挿入配置されており、プレート36と芯材26は、それぞれを前後方向に貫通する複数の貫通孔38に挿通したドリフトピン40で固定される。なお、開き防止のため、中央部の1か所のみ、通しボルト41が挿通配置されている。通しボルト41の端部41Aは、芯材26の側面に形成された凹部42に収容されており、凹部42の側面に当接配置された定着板44を貫通している。この端部41Aには、ネジ切り加工が施されており、定着板44の外側においてナット46が螺合している。端部41Aは、ナット46を締結することで定着板44を介して凹部42の側面に固定される。
【0026】
芯材26の上面には、床材48が設けられる。床材48は、例えば、鉄筋コンクリートやALC(軽量気泡コンクリート)板を用いた床スラブで構成される。なお、図の例では、耐火木質梁14を耐火木質柱12の左右側面にのみ配置した場合を示しているが、同様の耐火木質梁14を耐火木質柱12の左右いずれか一方の側面や前後面などに配置して、各部位において柱梁接合部を構成してもよい。
【0027】
(接合金物)
接合金物16は、水平面視でT字状断面のものであり、耐火木質梁14の側端部のプレート36にボルト固定されるガセットプレート50と、このガセットプレート50の側端部に接続し、耐火木質柱12の芯材20の側面に取り付けられるベースプレート52とからなる。本実施の形態1では、1時間耐火仕様を想定し、耐火木質柱12を通し柱とするために、芯材20に直接ベースプレート52が取り付く仕様としている。耐火木質柱12の耐火被覆材22は、ベースプレート52の周縁近傍まで配置される。
【0028】
ガセットプレート50は、耐火木質梁14の芯材26の側端部から耐火木質柱12に向けて突出したプレート36に対して左右方向に突き合わされており、この突合部分の前後面には、ガセットプレート50、プレート36を跨ぐ形でプレート54が配置される。各プレート50、36、54は、貫通孔56に通された複数のボルト58によって接合されている。
【0029】
ベースプレート52は、耐火木質柱12を左右方向水平に貫通配置される鋼棒60を介して耐火木質柱12に固定される。鋼棒60は、鉛直方向に間隔をあけた2か所、ガセットプレート50とベースプレート52の接続部を挟んだ前後の2か所に配置されるが、本発明はこれに限るものではなく、他の配置レイアウトおよび配置数量でもよい。
【0030】
鋼棒60の左右の端部60Aは、ベースプレート52に設けた挿通孔52Aを貫通している。この端部60Aには、ネジ切り加工が施されており、ベースプレート52の外側にナット62が螺合している。端部60Aは、ナット62を締結することでベースプレート52に固定される。
【0031】
鋼棒60は、例えば全ネジボルト、丸鋼の両端にネジ切り加工を施したもの、建築建物基礎で使用されるアンカーボルト、異形鉄筋の両端にネジ切り加工を施したもの等のいずれでもよい。
【0032】
(コンクリート)
コンクリート18は、接合金物16の温度上昇を抑制するためのものであり、耐火木質梁14の側端部と、耐火木質柱12の側面の間の接合金物16の周囲の領域に充填される。コンクリート18の厚みが増すほど熱容量が増え、遮熱性能が向上する。このため、例えばコンクリート18の厚みを後述する試験体以上とすれば、所定(例えば1時間)の耐火性能は担保されると考えられる。コンクリート18の打設は、施工性を配慮して、床材48のコンクリート打設と同時に行うことが望ましい。また、本発明はコンクリート18に限るものではなく、コンクリート18の代わりにモルタルなどの他のセメント系固化材を用いてもよい。
【0033】
コンクリート18の側面および下面には、耐火被覆材64および仕上げ材66が設けられる。コンクリート18の上面には、床材48が設けられる。耐火被覆材64は、強化せっこうボードにより構成される。仕上げ材66は、耐火被覆材64の外側に設けられた木製板で構成される。コンクリート18の充填部を強化せっこうボードや木製板で被覆することで、接合金物16の温度上昇の抑制、耐火木質柱12の芯材20の炭化防止に寄与する。本実施の形態1においては、耐火被覆材64の強化せっこうボードの厚さが12.5mm、仕上げ材66の木製板の厚さが10mmのものを想定しているが、これに限るものではない。木製板の厚みが増すほど遮熱性能が向上するので、木製板の厚みは10mm以上とすれば所定の耐火性能は担保されると考えられる。
【0034】
耐火被覆材64の強化せっこうボードは、コンクリート18を打設・養生した後にコンクリート18の表面に張り付ける。張り付けには石膏系接着剤を用いることができる。ただし、下面については脱落防止のため、コンクリートビスと接着剤を併用することが望ましい。仕上げ材66の木製板の張り付けには、酢酸ビニル樹脂系接着剤とステープルを用いることができる。なお、強化石膏ボードを省略し、木胴縁に木製板を張り付けた構成を採用してもよい。木胴縁の取り付けにはコンクリートビスを用いることが望ましい。強化石膏ボードを設けない仕様でも、後述する耐火試験に示すように所定の耐火性能を確保することができる。
【0035】
本実施の形態1によれば、柱梁接合部(コンクリート充填部)において、耐火木質柱12と耐火木質梁14と同等の耐火性能を確保することができる。これにより、耐火木質柱12と耐火木質梁14を用いた建物の火災安全性を担保できる。また、耐火木質梁14の上に構築する床材48のコンクリート打設と同時に柱梁接合部のコンクリート18の施工を行うことができる。これにより、コンクリート打設の施工の手間やコストを削減することができる。したがって、施工性にも優れている。また、耐火木質梁14の小口面14Aの強化せっこうボード32を工場で施工することで、建設現場での工期の短縮を図ることができる。
【0036】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態2は、2時間耐火を想定した構造である。
図2に示すように、本実施の形態2に係る柱梁接合部の耐火構造200は、耐火木質柱12と、耐火木質梁14とを、耐火木質柱12の上面に固定されたコンクリート部材68の側部の接合金物16を介して接合してなる構造であり、接合金物16の周囲の領域に充填されたコンクリート18(セメント系固化材)を備える。
【0037】
(耐火木質柱)
耐火木質柱12は、上記の実施の形態1と同様のものである。なお、本実施の形態2においては、芯材20の断面の一辺が540mm、強化せっこうボード22Aの厚さが25mm、耐火シート22Bの厚さが2mm、仕上げ材24の木製板の厚さが15mmのものを想定しているが、本発明の耐火木質柱はこれに限るものではない。また、本発明の耐火被覆材はこれに限るものではなく、他の材質の耐火被覆材を用いてもよい。
【0038】
(耐火木質梁)
耐火木質梁14は、上記の実施の形態1と同様のものである。なお、本実施の形態2においては、芯材26の断面の幅が250mm、高さが510mm、強化せっこうボード28Aの厚さが25mm、耐火シート28Bの厚さが2mm、仕上げ材30の木製板の厚さが15mmのものを想定しているが、本発明の耐火木質梁はこれに限るものではない。また、本発明の耐火被覆材はこれに限るものではなく、他の材質の耐火被覆材を用いてもよい。
【0039】
耐火木質梁14の側端部の小口面14Aには、上記の実施の形態1と同様に、強化せっこうボード32(非木質系の耐火被覆材)が張り付けられる。例えば、強化せっこうボード32の厚さを50mm以上とすれば2時間の耐火性能は担保されると考えられる。なお、図2の例では、左側の耐火木質梁14の小口面14Aに張り付ける強化せっこうボード32(厚さ21mm)の枚数を3枚とし、右側の耐火木質梁14の小口面14Aに張り付ける強化せっこうボード32(厚さ25mm)の枚数を2枚とした例を示している。
【0040】
上記の実施の形態1と同様に、プレート36と芯材26は、ドリフトピン40で固定される。芯材26の上面には、床材48が設けられる。床材48はコンクリート部材68の側面に接続される。なお、図の例では、耐火木質梁14をコンクリート部材68の左右側面にのみ配置した場合を示しているが、同様の耐火木質梁14をコンクリート部材68の左右いずれか一方の側面や前後面などに配置して、各部位において柱梁接合部を構成してもよい。
【0041】
(コンクリート部材)
コンクリート部材68は、耐火木質柱12の柱頭部の芯材20の上面に固定される正方形断面のプレキャストコンクリートである。本実施の形態2では、コンクリート部材68の水平断面の一辺が530mm、高さ850mmのものを想定しているが、本発明はこれに限るものではない。コンクリート部材68の下面には、鉛直方向に延びる凹孔68Aがコンクリート部材68の軸心を中心とする円の周方向に略等間隔に8か所設けられている。この凹孔68Aには、耐火木質柱12の芯材20の上面から芯材20内部に打ち込まれたラグスクリュー70の上側部分が嵌め込まれている。ラグスクリュー70と凹孔68Aの間の隙間にはグラウト材72が充填され、これによりコンクリート部材68と芯材20は一体化している。また、コンクリート部材68から芯材20への熱伝導を抑制するために、耐火木質柱12の耐火被覆材22および仕上げ材24を立ち上げてコンクリート部材68の下側部分まで延長し、この部分のコンクリート部材68の外側周囲を被覆している。その上側のコンクリート部材68の前後の外側周囲には、複数の木胴縁74を介して仕上げ材76が設けられている。仕上げ材76は、耐火木質柱12の仕上げ材24と同一材質、同一厚さのものを用いている。なお、耐火被覆材22の立ち上げ長さが大きいほうが耐火上有利と考えられるので、立ち上げ長さが例えば133mm以上であれば所定の耐火性能を確保できると考えられる。
【0042】
(接合金物)
接合金物16は、水平面視でT字状断面のものであり、耐火木質梁14の側端部のプレート36にボルト固定されるガセットプレート50と、このガセットプレート50の側端部に接続し、コンクリート部材68の側面に取り付けられるベースプレート52とからなる。ガセットプレート50とプレート36は、上記の実施の形態1と同様に固定される。
【0043】
ベースプレート52は、コンクリート部材68を左右方向水平に貫通配置される鋼棒60を介してコンクリート部材68に固定される。鋼棒60の左右の端部60Aは、ベースプレート52に設けた挿通孔52Aを貫通している。この端部60Aには、ネジ切り加工が施されており、ベースプレート52の外側にナット62が螺合している。端部60Aは、ナット62を締結することでベースプレート52に固定される。
【0044】
鋼棒60は、例えば全ネジボルト、丸鋼の両端にネジ切り加工を施したもの、建築建物基礎で使用されるアンカーボルト、異形鉄筋の両端にネジ切り加工を施したもの等のいずれでもよい。
【0045】
(コンクリート)
コンクリート18は、接合金物16の温度上昇を抑制するためのものであり、耐火木質梁14の側端部と、コンクリート部材68の側面の間の接合金物16の周囲の領域に充填される。コンクリート18の厚みが増すほど熱容量が増え、遮熱性能が向上する。このため、例えばコンクリート18の厚みを後述する試験体以上とすれば、所定(例えば2時間)の耐火性能は担保されると考えられる。コンクリート18の打設は、施工性を配慮して、床材48のコンクリート打設と同時に行うことが望ましい。また、本発明はコンクリート18に限るものではなく、コンクリート18の代わりにモルタルなどの他のセメント系固化材を用いてもよい。
【0046】
コンクリート18の側面および下面には、上記の実施の形態1と同様に、耐火被覆材64および仕上げ材66が設けられる。コンクリート18の上面には、床材48が設けられる。耐火被覆材64は、強化せっこうボードにより構成される。仕上げ材66は、耐火被覆材64の外側に設けられた木製板で構成される。コンクリート18の充填部を強化せっこうボードや木製板で被覆することで、接合金物16の温度上昇の抑制、耐火木質柱12の芯材20の炭化防止に寄与する。本実施の形態2においては、耐火被覆材64の強化せっこうボードの厚さが12.5mm、仕上げ材66の木製板の厚さが10mmのものを想定しているが、これに限るものではない。木製板の厚みが増すほど遮熱性能が向上するので、木製板の厚みは10mm以上とすれば所定の耐火性能は担保されると考えられる。
【0047】
耐火被覆材64の強化せっこうボードは、コンクリート18を打設・養生した後にコンクリート18の表面に張り付ける。張り付けには石膏系接着剤を用いることができる。ただし、下面については脱落防止のため、コンクリートビスと接着剤を併用することが望ましい。仕上げ材66の木製板の張り付けには、酢酸ビニル樹脂系接着剤とステープルを用いることができる。なお、強化石膏ボードを省略し、木胴縁に木製板を張り付けた構成を採用してもよい。木胴縁の取り付けにはコンクリートビスを用いることが望ましい。強化石膏ボードを設けない仕様でも、後述する耐火試験に示すように所定の耐火性能を確保することができる。
【0048】
本実施の形態2によれば、柱梁接合部(コンクリート充填部)において、耐火木質柱12と耐火木質梁14と同等の耐火性能を確保することができる。これにより、耐火木質柱12と耐火木質梁14を用いた建物の火災安全性を担保できる。また、耐火木質梁14の上に構築する床材48のコンクリート打設と同時に柱梁接合部のコンクリート18の施工を行うことができる。これにより、コンクリート打設の施工の手間やコストを削減することができる。耐火木質柱12とコンクリート部材68をラグスクリュー70とグラウト材72により直接接合することで、施工性を向上することができる。したがって、施工性にも優れている。また、耐火木質梁14の小口面14Aの強化せっこうボード32を工場で施工することで、建設現場での工期の短縮を図ることができる。
【0049】
<本発明の効果の検証>
次に、本発明の効果を検証するために行った試験および結果について説明する。
【0050】
本発明の耐火構造を模擬した試験体を作製し、耐火性能を調べる耐火試験を行った。耐火試験は、試験体を炉内に入れてISO834に規定する標準加熱曲線に則って1時間または2時間の加熱を行い、その後24時間炉内で放冷することにより実施した。試験体は、3つの仕様(試験体1~3)を作製した。試験体1は、上記の実施の形態1に示す構造であり、コンクリート充填部を強化せっこうボード(厚さ12.5mm)と木製板(厚さ10mm)で被覆した1時間耐火の仕様(実施例1)である。試験体2は、上記の実施の形態2に示す構造であり、コンクリート充填部を強化せっこうボード(厚さ12.5mm)と木製板(厚さ10mm)で被覆した2時間耐火の仕様(実施例2)である。試験体3は、上記の実施の形態2において強化せっこうボードを省略し、コンクリート充填部を木製板(厚さ10mm)で被覆した2時間耐火の仕様(実施例3)である。木胴縁(厚さ20mm)に木製板(厚さ10mm)を張り付けている。
【0051】
試験体1~3に共通する仕様は、次のとおりである。まず、耐火木質梁14の芯材26には、カラマツ集成材(対称異等級E105-F315、幅250×高さ510mm)を使用した。耐火木質柱12の芯材20には、カラマツ集成材(同一等級E95-F315、540×540mm)を使用した。鋼棒60には、通しボルトM30(先孔φ32)を使用した。ベースプレート52には、厚さ25×幅200×高さ400mmのものを使用した。ガセットプレート50には、厚さ12×高さ360×長さ165mmのものを使用した。プレート36には、厚さ12×高さ360mmのものを使用した。コンクリート18の表面は、側面および下面がそれぞれ鉛直面、水平面となるように仕上げた。コンクリート18の上面は、芯材26の上面と面一に仕上げた。試験体2および試験体3のコンクリート部材68には、プレキャストコンクリート(530×530、高さ850mm)を使用した。コンクリート部材68から耐火木質柱12の芯材20への熱伝導を抑制するために、耐火木質柱12の耐火被覆材22をコンクリート部材68側に133mm立ち上げた。ラグスクリュー70の長さは760mm、径はφ25mmとし、これをコンクリート部材68の凹孔68A(φ50mm)に挿入して隙間にグラウト材72を充填した。耐火木質梁14のドリフトピン40の径は22mmとした。
【0052】
試験体1~3のコンクリート18の厚みは、次のように設定した。まず、試験体1では、接合金物16のガセットプレート50下端から下方に測ると97mmの厚さ、ベースプレート52側端から側方に測ると42mmの厚さ、下端から下方に測ると77mmの厚さとした。試験体2および試験体3では、接合金物16のガセットプレート50下端から下方に測ると117mmの厚さ、ベースプレート52側端から側方に測ると62mmの厚さ、下端から下方に測ると97mmの厚さとした。
【0053】
試験体1~3の耐火木質梁14の耐火被覆材28および仕上げ材30は、次のように設定した。まず、試験体1の耐火木質梁14の側面および下面の耐火被覆材28には、強化せっこうボード2枚(厚さ15mm×2)、耐火シート(厚さ2mm)を使用した。仕上げ材30には、木製板(スギ化粧木、厚さ15mm)を使用した。耐火木質梁14の小口面14Aに張り付ける強化石膏ボード32は、図3左側の耐火木質梁14については、強化せっこうボード2枚(厚さ21mm×2)とし、図3右側の耐火木質梁14については、強化石膏ボード1枚(厚さ21mm)とした。また、試験体2および試験体3の耐火木質梁14の側面および下面の耐火被覆材28には、強化せっこうボード2枚(厚さ25mm×2)、耐火シート(厚さ2mm)を使用した。仕上げ材30には、木製板(スギ化粧木、厚さ15mm)を使用した。耐火木質梁14の小口面14Aに張り付ける強化せっこうボード32は、図4,5左側の耐火木質梁14については、強化せっこうボード3枚(厚さ21mm×3)とし、図4,5右側の耐火木質梁14については、強化せっこうボード2枚(厚さ25mm×2)とした。
【0054】
図3図5に、試験体の概要図および温度測定位置、温度測定結果を示す。図3は試験体1に、図4は試験体2に、図5は試験体3に対応している。温度測定断面P1~P8の温度測定位置は、図6に示すとおりである。図3(1)、図4(1)、図5(1)には、各断面での最高温度を示している。図3(2)、図4(2)、図5(2)の温度測定結果は、温度測定断面P1~P8の各測定位置で測定された温度のうち最高温度の値を使用している。
【0055】
図3および図4に示すように、試験体1、2ともに、接合部周りの木質の芯材の最高温度は200℃以下となった。また、接合金物の最高温度は、試験体1(1時間耐火仕様)で80℃以下、試験体2(2時間耐火仕様)で120℃以下となり、いずれも木質の芯材が炭化する温度には至らなかった。また、接合部周りの木質の芯材表面に変色や炭化は見られなかった。
【0056】
一方、図5に示すように、試験体3(2時間耐火仕様)についても、接合部周りの木質の芯材の最高温度は200℃以下となった。また、接合金物の最高温度は、150℃以下となり、木質の芯材が炭化する温度には至らなかった。さらに、接合部周りの木質の芯材表面に変色や炭化は見られなかった。
したがって、本実施例の柱梁接合部周りの耐火被覆構造が1時間または2時間の耐火性能を有することが確認できた。
【0057】
以上説明したように、本発明に係る柱梁接合部の耐火構造によれば、荷重を支持する木質の芯材と、この芯材の外側に設けられた耐火被覆材とを含んで構成される耐火木質柱と、荷重を支持する木質の芯材と、この芯材の外側に設けられた耐火被覆材とを含んで構成される耐火木質梁とを、前記耐火木質梁の前記芯材の側端部から前記耐火木質柱に向けて突出するプレートに固定されるガセットプレートと、前記耐火木質柱の前記芯材の側面に取り付けられるベースプレートとからなるT字状断面の接合金物を介して接合してなる柱梁接合部の耐火構造であって、前記耐火木質梁の側端部と、前記耐火木質柱の側面の間の前記接合金物の周囲の領域に充填されたセメント系固化材を備えるので、耐火木質柱と耐火木質梁の柱梁接合部において、柱梁単体と同等の耐火性能を確保することができる。
【0058】
また、本発明に係る柱梁接合部の耐火構造によれば、荷重を支持する木質の芯材と、この芯材の外側に設けられた耐火被覆材とを含んで構成される耐火木質柱と、荷重を支持する木質の芯材と、この芯材の外側に設けられた耐火被覆材とを含んで構成される耐火木質梁とを、前記耐火木質梁の前記芯材の側端部から前記耐火木質柱に向けて突出するプレートに固定されるガセットプレートと、前記耐火木質柱の前記芯材の上面または下面に固定されたコンクリート部材の側面に取り付けられるベースプレートとからなるT字状断面の接合金物を介して接合してなる柱梁接合部の耐火構造であって、前記耐火木質梁の側端部と、前記コンクリート部材の側面の間の前記接合金物の周囲の領域に充填されたセメント系固化材を備えるので、耐火木質柱と耐火木質梁の柱梁接合部において、柱梁単体と同等の耐火性能を確保することができる。
【0059】
また、本発明に係る柱梁接合部の耐火構造によれば、前記セメント系固化材の外側に、耐火被覆材または木質被覆材が設けられるので、接合金物の温度上昇抑制、芯材の炭化防止に寄与することができる。
【0060】
また、本発明に係る柱梁接合部の耐火構造によれば、前記耐火木質梁の側端部の小口面に、非木質系の耐火被覆材が設けられるので、セメント系固化材の収縮による隙間からの熱の流入を抑え、耐火木質梁の芯材の炭化防止に寄与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明に係る柱梁接合部の耐火構造は、耐火木質柱と耐火木質梁の接合部に有用であり、特に、柱梁と同等の耐火性能を確保するのに適している。
【符号の説明】
【0062】
12 耐火木質柱
14 耐火木質梁
14A 小口面
16 接合金物
18 コンクリート(セメント系固化材)
20,26 芯材
22,28,64 耐火被覆材
22A 強化せっこうボード
22B 耐火シート
24,30,66,76 仕上げ材
32 強化石膏ボード(非木質系の耐火被覆材)
34 凹溝部
36,54 プレート
38 貫通孔
40 ドリフトピン
41 通しボルト
41A,60A 端部
42 凹部
44 定着板
46,62 ナット
48 床材
50 ガセットプレート
52 ベースプレート
52A 挿通孔
56 貫通孔
58 ボルト
60 鋼棒
68 コンクリート部材
68A 凹孔
70 ラグスクリュー
72 グラウト材
74 木胴縁
100,200 柱梁接合部の耐火構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6