(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021809
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】汚水浄化処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 3/00 20230101AFI20240208BHJP
C02F 3/28 20230101ALI20240208BHJP
【FI】
C02F3/00 C
C02F3/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124907
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】518338231
【氏名又は名称】株式会社フジ工芸
(74)【代理人】
【識別番号】100140394
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 康次
(72)【発明者】
【氏名】藤田 寛
【テーマコード(参考)】
4D027
4D040
【Fターム(参考)】
4D027AC01
4D027AC02
4D027AC05
4D040AA01
4D040AA31
(57)【要約】
【課題】インフラが整備されていない地域に適し、大規模工事が不要で安価かつ早急に設置も撤去も可能な汚水浄化処理システムを提供する。
【解決手段】汚水浄化処理システムには、水洗トイレ1から排出された汚水を収容して処理水に変換可能な複数の汚水処理便槽3が直列に配置される。処理水を貯留可能な処理水貯留槽4と、汚水処理便槽3及び処理水貯留槽4の下に敷設された不織布シート6及び防水シート7と、土壌層8とがさらに設置される。各便槽3では上流側の便槽3から下流側の便槽3に汚水が送られる間に、嫌気性微生物により汚水が消化分解されて処理水に変換される。処理水貯留槽4には不織布シート6の一部6aが接続しており、該一部6aから処理水が毛細管現象により不織布シート6及びその周囲の土壌層8へ浸透・蒸発していく。汚水処理便槽3は柔軟な袋又は折畳み可能なタンクであることが好ましい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗トイレからの汚水を処理して土壌及び大気に還す汚水浄化処理システムであって、
前記水洗トイレから排出された前記汚水を収容して処理水に変換し、かつ、前記汚水の流れ方向に直列に離間して配置された複数の汚水処理便槽と、
前記汚水処理便槽のうち最下流の汚水処理便槽から排出された前記処理水を貯留可能な処理水貯留槽と、
前記汚水処理便槽及び前記処理水貯留槽の下に敷設された不織布シートと、
前記不織布シートの下に重畳的に敷設されかつ前記不織布シートの敷設面積を包含した防水シートと、
前記不織布シートに少なくとも盛土された土壌層と、
を備え、かつ、
前記汚水処理便槽の各便槽では上流側の前記汚水処理便槽から下流側の前記汚水処理便槽に前記汚水が送られる間に、嫌気性微生物により前記汚水を消化分解して前記処理水に変換し、
前記処理水貯留槽には前記不織布シートの一部が接続して吸水部を形成し、該吸水部から前記処理水が毛細管現象により前記不織布シート全体に浸透して前記不織布シート周囲の前記土壌層へ浸潤すること、
を特徴とする汚水浄化処理システム。
【請求項2】
前記汚水処理便槽が柔軟な袋又は折畳み可能なタンクであること、
を特徴とする請求項1に記載の汚水浄化処理システム。
【請求項3】
上方に開口部を有した折畳み式コンテナを前記汚水処理便槽の数だけ用意し、該開口部を逆さにして前記汚水処理便槽を上方から覆うこと、
を特徴とする請求項2に記載の汚水浄化処理システム。
【請求項4】
前記不織布シートに離間して追加の不織布シートが敷設され、かつ、互いのシートの間には土壌が詰め込まれること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の汚水浄化処理システム。
【請求項5】
前記汚水処理便槽の周囲にはヒータ又は断熱材が取り付けられ、前記汚水処理便槽内の前記汚水又は前記処理水を加温可能であること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の汚水浄化処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は汚水浄化処理システムに関し、特に、簡素かつ軽量な構造で運搬や施工も容易な汚水浄化処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球全土において自然環境破壊が起きており、干ばつや異常気象など様々な弊害が生じている。発展途上国においては人類が生活用水を自由に利用できるインフラが整備された地域は未だに限定されている。特に人口が増加している国や地域では生活用水の基盤が整備されにくい。
【0003】
一方、先進国であるはずの日本であっても過疎地、キャンプ場や別荘地、イベント開催場所、駐車場、災害発生場所などでは、下水道を利用した水洗トイレ(汚水処理装置)を設置できず、仮設トイレを設置せねばならない状況が多々見受けられる。
【0004】
(従来の汲み取り式便槽)
下水道を利用しない従来のトイレには汲み取り式便槽があり、屎尿を自然流下(落下)させるため「ボットン便所」とも呼ばれる。この方式の便所では、屎尿を収容するために大容量の便槽が必要であり、嵩張るため運搬コストが掛かる。さらに、この便槽を設置する際には地下深くまで重機を使って掘り下げなければならず、大仕事である。また、汲み取り式便槽では、随時、屎尿の汲み取りが必要となり、汲み取り中は悪臭に耐えなければならないのも難点である。
【0005】
(従来の合併浄化槽)
上述の汲み取り式便槽の他に、公共下水道などが整備されていない地域などでトイレを水洗化するときに設置が義務付けられている合併浄化槽がある。ここで、合併浄化槽とは、水洗トイレからの屎尿や台所・風呂などからの生活雑排水を併せて槽内に貯留し、微生物の働きなどを利用して浄化し、綺麗な水にして放流するための施設である。しかしながら、浄化処理後の中水の放流先が必要となり、設置場所が限定されてしまう。
【0006】
(その他の先行技術)
なお、汲み取り式便槽や合併浄化槽の他にも、汚水処理技術は存在しており、例えば、特許文献1~2のような先行技術文献においても様々な処理技術が提案されている。特許文献1では、屎尿を分解した際に生じる水を、植物育成などに有効に利用可能な屎尿処理装置が開示されている。また、特許文献2では、屎尿の浄化水を無放流で処理することが可能な屎尿処理装置が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1,2に開示の処理装置では、屎尿を貯留し腐敗させるための大容量で頑強な便槽を用意して地下に設置する大規模工事が必要になり、その工事のために重機も必要となる。特許文献2の処理装置では、水平状多孔管や環状管を槽内に配置し、槽底で浄化水を貯留する容器(土壌層)やその上にデッキも設置しなければならず、必然的に大規模な工事が必要となり、イベント開催場所、駐車場や災害発生場所などトイレの設置エリアが限定される場所では、設置面積、施工コスト、工期などの条件を満たさないことが予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002-320997号公報
【特許文献2】特開2005-262077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した課題に対応するために本発明者によって提案されたものであり、インフラが整備されていない地域に適し、大規模工事が不要で安価かつ早急に設置も撤去も可能な汚水浄化処理システムを提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明のもう一つの目的は、既存の汲み取り式便槽に簡単に追加工事してトイレの水洗化が可能で、かつ、屎尿や中水(「処理水」とも呼ぶ。)の下水道や河川への放流が不要な汚水浄化処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、例えば、次の構成・特徴を採用するものである。
(態様1)
水洗トイレからの汚水を処理して土壌及び大気に還す汚水浄化処理システムであって、
前記水洗トイレから排出された前記汚水を収容して処理水に変換し、かつ、前記汚水の流れ方向に直列に離間して配置された複数の汚水処理便槽と、
前記汚水処理便槽のうち最下流の汚水処理便槽から排出された前記処理水を貯留可能な処理水貯留槽と、
前記汚水処理便槽及び前記処理水貯留槽の下に敷設された不織布シートと、
前記不織布シートの下に重畳的に敷設されかつ前記不織布シートの敷設面積を包含した防水シートと、
前記不織布シートに少なくとも盛土された土壌層と、
を備え、かつ、
前記汚水処理便槽の各便槽では上流側の前記汚水処理便槽から下流側の汚水処理便槽に前記汚水が送られる間に、嫌気性微生物により前記汚水を消化分解して前記処理水に変換し、
前記処理水貯留槽には前記不織布シートの一部が接続して吸水部を形成し、該吸水部から前記処理水が毛細管現象により前記不織布シート全体に浸透して前記不織布シート周囲の前記土壌層へ浸潤すること、
を特徴とする汚水浄化処理システム。
(態様2)
前記汚水処理便槽が柔軟な袋又は折畳み可能なタンクであること、
を特徴とする態様1に記載の汚水浄化処理システム。
(態様3)
上方に開口部を有した折畳み式コンテナを前記汚水処理便槽の数だけ用意し、該開口部を逆さにして前記汚水処理便槽を上方から覆うこと、
を特徴とする態様2に記載の汚水浄化処理システム。
(態様4)
前記不織布シートに離間して追加の不織布シートが敷設され、かつ、互いのシートの間には土壌が詰め込まれること、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の汚水浄化処理システム。
(態様5)
前記汚水処理便槽の周囲にはヒータ又は断熱材が取り付けられ、前記汚水処理便槽内の前記汚水又は前記処理水を加温可能であること、
を特徴とする態様1又は態様2に記載の汚水浄化処理システム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の汚水浄化処理システムによれば、トイレからの屎尿を貯留・分解処理する人力可搬式汚水分解便槽を複数用意し、汚水分解便槽を通過中に屎尿分解によって生じた処理水を周辺の土壌に分配する媒体として柔軟な不織布を利用することで、システムを構成する主要な要素を軽く小さくできる(嵩張らないよう折り畳める)ため、これらを小型車両に載せて現場への運搬が可能である。
【0013】
さらに、本システムの施工に関しては、設置予定場所にほぼ平らな面さえ見つかれば、その面に上述の不織布を広げて、その布上に汚水分解便槽等の本システムの主要な要素を設置して、これらを土壌で覆うだけで本システムを実現できる。従って、施工も容易で、重機による地面の掘削等の大規模工事も必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の汚水浄化処理システムを上方から観た概略平面図、及び、短手方向の概略断面図である。
【
図3】既存の汲み取り式便槽の概略断面図、及び、この便槽を本システムに適用できるように改修した一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面に示す実施例に基づき説明するが、本発明は、下記の具体的な実施例に何等限定されるものではない。なお、各図において同一又は対応する要素には同一符号を用いる。
【実施例0016】
(汚水浄化処理システムの概要及び構成)
図1(a)は本発明の汚水浄化処理システム(以下、単に「本システム」又は「システム」とも呼ぶ。)を上方から観た概略平面図を示し、
図1(b)は短手方向の概略断面図を示す。また、
図2(a)は本システムの長手方向の断面図を示す。なお、
図1(a)、
図1(b)及び
図2(a)の各図では後述の土壌層8の輪郭のみを破線で示している。一方、
図2(b)は土壌層8や後述の植栽層9を実線で示す。
【0017】
(水洗トイレ)
水洗トイレ1にはポンプ1aや水を貯めるタンク1bが設けられており、このポンプ1aからの圧力により、トイレ排水(汚水)は排水管2を通過して複数の汚水処理便槽3に供給される。
【0018】
(好適な水洗トイレ)
なお、本発明者により提案かつ特許化された吸引圧送排水機構付トイレ装置(特許第6178438号を参照)を水洗トイレ1に利用すれば、水洗トイレ1と汚水処理便槽3との間に高低差を設ける必要が無いし、汚水処理便槽3より下方向に水洗トイレ1を設置しても排水管2を通して汚水を汚水処理便槽3に供給することができる。
【0019】
(水洗トイレからの好適な排出量)
また、特許が認められた上述のトイレ装置以外に、市販の水洗トイレを利用することもできるが、1回のポンプ1a駆動によって排出される水量Q(つまり、排水管2へ供給される汚水量)をQ=0.3L~1.5L/回(ここでLはリットル)の低排出量に設定したものであることが好ましい。これにより、1回に排出される水量Q(トイレ使用)では、汚水処理便槽3は汚水で満杯にならず、徐々に汚水が便槽3内に蓄積されるようになる。
【0020】
(水洗トイレの変形例)
図1,2中の実施例では通常の水洗トイレ1を示しているが、下水道の無い既存の汲み取り式便槽100を改良した水洗トイレであってもよい。既存の汲み取り式便槽100は
図3(a)に示すように、便器部分101と、その直下で屎尿を受ける便槽本体102とからなるが、本システムを適用する場合には、
図3(b)に示す例のように便器部分101を撤去して市販の水洗トイレ1を設置し、後述の排水管2をその先端2aが便槽本体102の内底部まで垂下するように配管したうえでポンプ1aを設置して汚水を排出できるように改修すればよい。
【0021】
(汚水処理便槽)
図示の例では、3つの汚水処理便槽3(3a,3b,3c)が排水管2によって直列に接続されている。便槽3の数は複数であればよく、図示の例に限定されない。なお、各便槽3の容量Vは、ポンプ1aによる上述の水量Qとの兼合いから、V=10L~200Lであることが好ましい。運搬性や便槽3内の汚水の消化分解期間の確保の点も踏まえると、V=20L~100Lがさらに好ましい。
【0022】
(嫌気性微生物の働き)
屎尿等の汚水は排水管2から最初の汚水処理便槽3aに案内されて沈殿し、時間を掛けて嫌気性微生物によって消化分解される。汚水処理便槽3の各槽内では、汚水(屎尿)の蓄積により嫌気性微生物などのバクテリアが発生し、汚水の消化分解活動を行う。これらのバクテリアは、汚水中の糖類や蛋白質を単糖類やアミノ酸、有機酸に液化・低分子化して酢酸に分解し、この酢酸から、更にメタン生成反応を起こし、ひいては、メタンガス、炭酸ガスや水に分解するのである。
【0023】
(便槽内での汚水の挙動)
汚水は、水洗トイレ1を利用した分(水量Q)だけ排水管2を通じて第1汚水処理便槽3aに供給され、沈殿していく。このため、消化分解された比重が小さい液体部分が便槽3a内上方に浮上し、当該便槽3aが汚水で満たされそうになると、排水管2を通じて下流側の第2汚水処理便槽3bに汚水が流入・沈殿する。この第2汚水処理便槽3b内でも時間を掛けて嫌気性微生物によって汚水が消化分解され、水洗トイレ1の利用により徐々に当該便槽3bも消化分解が進んだ処理水で満たされていく。そして、処理水は更に下流の第3汚水処理便槽3cに流入・沈殿して嫌気性微生物によって消化分解されながら満たされていく。
【0024】
最下流の第3汚水処理便槽3cは排水管2を介して処理水貯留槽4に接続しているため、上述した各便槽3a~3cによって消化分解された処理水は最終的には処理水貯留槽4に集められる。
【0025】
ここで、汚水処理便槽3の構成が特徴的であるため詳しく説明する。汚水処理便槽3はいずれも、柔軟な袋(例えば、合成樹脂製袋)又は折畳み可能なタンクであることに留意されたい。但し、汚水処理便槽3の周囲は、後述のように盛土されて土壌層8が形成されるため、剛性の低い各便槽3は土壌の重さで押し潰されてしまい、このままでは、汚水を貯留・消化分解する空間を保持できない。
【0026】
そこで、上方が開口した折畳み式コンテナ5(例えば、市販の可倒式コンテナ)を便槽3の数だけ用意し、開口部を逆さにして各便槽3を上方から覆うことにした。これにより、盛土の重みで各便槽3が押し潰される虞はない。なお、各便槽3に接続される排水管2を通すために各コンテナ5の側壁に挿通孔(図示せず)を設けてもよい。また、コンテナ5の高さを揃えるために、その下に土台となるベース板13(或いはベースシート)を敷設してもよい。
【0027】
(不織布シートへの処理水の分配・浸透)
上述した各便槽3や処理水貯留槽4の設置箇所下側及びその周辺には長尺の不織布シート6が敷かれている。さらに、不織布シート6の一部(吸水部)6aは処理水貯留槽4の上方開口部4aにまで延びており、上方開口部4aの高さまで到達した処理水は不織布シート6の当該吸水部6aに接触し、毛細管現象により不織布シート6の敷設面全体に浸透していく。処理水貯留槽4の上方開口部4aには、後述の土壌層8を通過した雨水が進入しないよう雨避け蓋4bを設置してもよい。
【0028】
(不織布シートの変形例)
なお、不織布シート6は一枚だけでなく、複数枚用意し、土壌を挟んで互いに離間して上下に積層してもよい。
図2(a)では一点鎖線で示した第2不織布シート6’が不織布シート6より上方に併設された状態を示す。このシート6,6’間には土壌が敷き詰められる。
図2(a)の例では、不織布シート6の吸水部6aは、第2不織布シート6’にも接続し、処理水を浸透させる。このように、処理水貯留槽4から不織布シート6,6’へ処理水が浸透する領域、ひいては当該領域から土壌層8へ処理水が浸潤する領域を拡大することができる。
【0029】
(防水シート)
不織布シート6の下側には、当該不織布シート6に重ねるように長尺の防水シート7が敷かれている。この防水シート7は不織布シート6に浸透した処理水がこれより下(地下)に浸透することを防ぐ。この防水シート7の目的からすれば、防水シート7は、
図1(a)に示すように、その敷設領域を不織布シート6の敷設領域以上にし、かつ、これを完全に包含するように積層することが好ましい。防水シート7には不織布シート6からしみ出た処理水がその周縁から漏れ出さないように、垂直上方に延びた堰止め部7b(
図1(b)参照)を形成してもよい。
【0030】
一方、不織布シート6や各便槽3や処理水貯留槽4の上側には土砂等の土壌で出来た土壌層8が盛土される。この土壌層8の上には花や野菜等を植えて植栽層9を形成してもよい。
【0031】
(回収容器)
また、不織布シート6や防水シート7の一端(水洗トイレ1から離れた方の遠端)には、土壌層8に進入せず不織布シート6から漏れ出した処理水を回収するための回収容器10が設けられてもよい。
図1に示す回収容器10は上方が開口した有底円筒状バケツであり、防水シート7には回収容器10の直径と同じ径の抜き孔7aが設けられる。この回収容器10を防水シート7の抜き孔7aの下に埋め込み、上方開口部10aを不織布シート6で覆っている。
【0032】
(点検管)
また、上方開口部10aを覆う不織布シート6の一部に抜き孔6bを設け、中空円筒状の点検管11を回収容器10の上に立設することが好ましい。点検管11は土壌層8を通り、その先端11aが地表に露出できる所定の高さを有しており、その先端11aの開口部から回収容器10に溜まった処理水の状態や水量を確認することができる。
【0033】
(圧送ポンプと回収管)
この回収容器10にはセンサー付きの圧送ポンプ10bが設けられることが好ましく、回収容器10内で所定高さ(所定量)以上に処理水が満たされると、センサーが感知して圧送ポンプ10bが起動し、回収管12を通じて水洗トイレ1のタンク1bに処理水を圧送することができる。
先ず、イベント会場、災害発生場所、駐車場、既設の汲み取り式便槽100など、本システムの設置領域を決定する(ステップS1)。なお、本システムの構成要素のうち不織布シート6や防水シート7はぐるぐると巻いた状態或いは折り畳んだ状態にして保管できる。加えて、汚水処理便槽3も折り畳めるため、これらの部材を含めた器材を輸送車にコンパクトに詰め込んで設置領域まで運搬できる。
次に本システムの設置領域である地面に印をつけ(墨出しを行い)、当該設置領域を平滑に均す(ステップS2)。本システムを設置・使用した後に処理水が地下に浸透しないように防水シート7を設置面に敷く(ステップS3)。
その後、不織布シート6を防水シート7上に敷く(ステップS4)。複数の汚水処理便槽3(3a,3b,3c)、処理水貯留槽4、回収容器10や点検管11等の部材を所定間隔に離間させながら配置する(ステップS5)。汚水処理便槽3が土壌層8の重さに耐え得るよう、開いた状態の折畳み式コンテナ5を逆さにしてその開口部を下向きにして、これらのコンテナ5で各便槽3の周囲を覆う(ステップS6)。
また、処理水貯留槽4の上方開口部4aには不織布シート6の一部(吸水部)6aを延長して上方開口部4a内に垂らし、不織布シート6で覆われない上方開口部4aには雨避け蓋4bで蓋をする(ステップS7)。
上述のステップS7までに処理水を伝達する各要素が設置領域に配置されるため、水洗トイレ1と汚水処理便槽3との間をホースで接続して排水管2を形成するとともに、回収容器10と水洗トイレ1との間をホースで接続して回収管12を形成する。
なお、水洗トイレ1が無いものの既存の汲み取り式便槽100を利用できる場合は、上述の要領で汲み取り式便槽100を改修して水洗トイレ1を設置しても良い。また、排出する水量が少ない場合は、水洗トイレ1を汚水処理便槽3(3a)の設置位置より高い場所に設置して排水管2に勾配をつけておくことが望ましい。これにより、汚水が、排水管2を通じて水洗トイレ1から汚水処理便槽3に流れ出やすくなる。一方、上述の特許済みトイレ装置や上述した好適な水量Qを圧送できる水洗トイレ1を使用すれば、互いの要素1,3との間に高低差や勾配をつけなくとも、水洗トイレ1から汚水処理便槽3へ汚水を送り込めるようになる。
その後、各要素が据え付けられた設置面に土壌を盛土して土壌層8を形成する。なお、盛土の途中に、不織布シート6から所定距離だけ上方に離れるように追加(一枚以上)の不織布シート6’を敷設してもよい。必要に応じ、土壌層8の表面に花や野菜などの植物を植えて植栽層9を形成してもよい。