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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002181
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】デリバリーカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/95 20130101AFI20231228BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A61F2/95
A61M25/00 620
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101229
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000153258
【氏名又は名称】株式会社JIMRO
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 誠二
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA56
4C267BB12
4C267BB15
4C267BB16
4C267CC23
4C267HH01
4C267HH17
(57)【要約】
【課題】アウターチューブを補強しつつ、内視鏡チャネルを細径化したり、リリース抵抗を低減したりできるデリバリーカテーテルを提供する。
【解決手段】ステント3を病変部まで届けるデリバリーカテーテル2は、インナーシャフト10とアウターチューブ20を備えている。アウターチューブ20は、可撓性樹脂からなるチューブ本体21と、チューブ本体21に埋め込まれた補強線材23からなる補強体22とを含む。補強線材23の延び方向と直交する断面は、アウターチューブ20の径方向に沿う厚みt23がアウターチューブ20の周面に沿う幅w23より小さい扁平形状である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントを病変部まで届けるデリバリーカテーテルであって、
インナーシャフトと、前記インナーシャフトを軸方向へ移動可能に挿通するアウターチューブとを備え、
前記アウターチューブが、可撓性樹脂からなるチューブ本体と、前記チューブ本体に埋め込まれた補強線材からなる補強体とを含み、
前記補強線材の延び方向と直交する断面は、前記アウターチューブの径方向に沿う厚みが前記アウターチューブの周面に沿う幅より小さい扁平形状であることを特徴とするデリバリーカテーテル。
【請求項2】
前記補強線材が、長方形状の断面の帯板状であることを特徴とする請求項1に記載のデリバリーカテーテル。
【請求項3】
前記補強体が、メッシュ状であることを特徴とする請求項1又は2に記載のデリバリーカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉塞又は狭窄した病変部の治療施術に用いるデリバリーカテーテルに関し、特に、ステントを病変部まで届けて、開通させた病変部に留置するデリバリーカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば大腸癌等によって閉塞又は狭窄した病変部を開通させて、そこに筒形のステントを留置することで、開通状態を維持する治療施術は公知である。ステントの留置には、デリバリーカテーテルが用いられる。デリバリーカテーテルは、インナーシャフトとアウターチューブを備えている。インナーシャフトがアウターチューブに軸方向へ移動可能に挿通されている。ステントは、窄められた状態でデリバリーカテーテルの先端部におけるインナーシャフトとアウターチューブの間に収容されている。該デリバリーカテーテルが病変部まで挿し入れられた後、ステントが、デリバリーカテーテルの先端部からリリースされて展開される。
【0003】
デリバリーカテーテルのアウターチューブは、樹脂チューブによって構成されている。該アウターチューブを補強するために、樹脂チューブ内に編組状又はコイル状の補強線材が埋め込まれている(特許文献1、2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-248332号公報([0031]、[0033])
【特許文献2】特開2012-239758号公報([0035]、[0037])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デリバリーカテーテルのアウターチューブにおける前記補強線材の断面形状は通常、円形である。したがって、補強線材が樹脂チューブの外周面又は内周面から露出されないよう、樹脂チューブの厚みを円形断面の補強線材の直径の倍以上の大きさとする必要がある。樹脂チューブの厚みが大きいと、例えばアウターチューブが大径化されることで、デリバリーカテーテルを挿通する内視鏡チャネルの内径を大きくしなければならなかったり、アウターチューブが小径化されることで、ステントのリリース抵抗が大きくなったりする。
本発明は、かかる事情に鑑み、デリバリーカテーテルにおいて、アウターチューブを補強しつつ、内視鏡チャネルを細径化したり、リリース抵抗を低減したりすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、ステントを病変部まで届けるデリバリーカテーテルであって、
インナーシャフトと、前記インナーシャフトを軸方向へ移動可能に挿通するアウターチューブとを備え、
前記アウターチューブが、可撓性樹脂からなるチューブ本体と、前記チューブ本体に埋め込まれた補強線材からなる補強体とを含み、
前記補強線材の延び方向と直交する断面は、前記アウターチューブの径方向に沿う厚みが前記アウターチューブの周面に沿う幅より小さい扁平形状であることを特徴とする。
【0007】
当該デリバリーカテーテルによれば、アウターチューブを補強しつつ、アウターチューブの管厚(径方向の厚み)を小さくできる。具体的には、アウターチューブの内径を大きくしたり外径を小さくしたりできる。アウターチューブの内径を大きくすることによってリリース抵抗を低減でき操作性を向上できる。アウターチューブの外径を小さくすることによって内視鏡チャネルへの挿通抵抗を低減したり、より細いチャネル径の内視鏡に適用したりできる。
【0008】
好ましくは、前記補強線材が、長方形状の断面の帯板状である。前記長方形状の断面の長辺は、前記アウターチューブの周面に沿うように向けられる。前記長方形状の断面の短辺は、前記アウターチューブの径方向へ向けられる。
【0009】
好ましくは、前記補強体が、メッシュ状である。これによって、アウターチューブの引張強度を高めるとともに曲げ性を確保できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、デリバリーカテーテルのアウターチューブを補強しつつ、内視鏡チャネルを細径化したり、リリース抵抗を低減したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るデリバリーカテーテルを備えたデリバリーシステムを、ステントをリリースした状態で示す側面図である。
図2図2(a)は、前記デリバリーシステムの先端部を、ステントの収容状態で示す側面断面図である。図2(b)は、前記ステントをリリースする途中の状態におけるデリバリーシステムの先端部の側面断面図である。図2(c)は、前記ステントをリリースした状態のデリバリーシステムの先端部の側面断面図である。
図3図3は、図2(c)の円部IIIにおける前記デリバリーカテーテルの拡大断面図である。
図4図4は、前記デリバリーカテーテルのアウターチューブの一部分の平面図である。
図5(a)】図5(a)は、図4のVa-Va線に沿う前記アウターチューブの断面図である。
図5(b)】図5(b)は、図4のVb-Vb線に沿う前記アウターチューブ内の補強線材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、デリバリーシステム1を示したものである。デリバリーシステム1は、例えば大腸癌等の閉塞又は狭窄した病変部の治療施術に用いられるものであり、デリバリーカテーテル2と、ステント3を備えている。デリバリーカテーテル2によって、ステント3が病変部まで届けられる。
【0013】
図1に示すように、デリバリーカテーテル2は、インナーシャフト10と、アウターチューブ20を含む。図2(a)~同図(c)に示すように、インナーシャフト10は、内管11と、被覆管12を備えている。内管11の外周に被覆管12が被せられている。内管11の先端部分13は、被覆管12から延び出ている。該先端部分13の外周に、ワイヤメッシュからなる筒状のステント3が設けられる。
【0014】
図1及び図2に示すように、アウターチューブ20にインナーシャフト1が軸方向へ移動可能に挿通されている。図3図5に示すように、アウターチューブ20は、チューブ本体21と、補強体22を含む。図5(a)に示すように、チューブ本体21は、円形断面に形成され、軸方向(図5(a)の紙面と直交する方向)へ延びている。チューブ本体21の材質は、軟質の可撓性樹脂である。
【0015】
図4に示すように、補強体22は、1又は複数本の補強線材23によって構成され、メッシュ状かつチューブ状に形成されている。補強線材23ひいては補強体22が、チューブ本体21の管壁内の全周に埋め込まれている。補強線材23は、斜め格子のメッシュ状かつチューブ状になるよう編み込まれている。補強線材23における2方向へ延びる線材部分23a,23bどうしが交差して、重なり部23cが形成されている。4つの線材部分23a,23bによって菱形の網目24(開口部)が形成されている。
【0016】
補強線材23は、チューブ本体21よりも引っ張り剛性が高い材料によって構成されている。補強線材23の材質は、好ましくは金属である。
【0017】
図5(b)に示すように、補強線材23の延び方向と直交する断面は、非円形の扁平形状になっている。好ましくは、補強線材23は、長方形状の断面の帯板状になっている。補強線材23の厚み方向(前記長方形状の断面の短辺)は、アウターチューブ20の径方向へ向けられている。図4及び図5(a)に示すように、補強線材23の厚み方向と直交する幅方向(前記長方形状の断面の長辺)は、アウターチューブ20の周面に沿っている。具体的には、補強線材23の幅方向は、アウターチューブ20の軸線方向及び周方向に対して斜めになっている。
【0018】
図5(b)に示すように、補強線材23の厚みt23は、補強線材23の幅w23より小さい(t23<幅w23)。好ましくは、厚みt23が、幅w23の数分の1~数十分の1程度である。厚みt23が大き過ぎると、アウターチューブ20の管厚t21の低減効果が損なわれる。厚みt23が小さ過ぎると、補強体22による所要の補強作用が得られない。
【0019】
さらに、図5(a)に示すように、補強線材23の厚みは、チューブ本体21の管厚t21の半分より小さい(t23<t21×(1/2))。したがって、重なり部23cにおいても、補強体22の厚みがチューブ本体21の管厚t21より小さい。アウターチューブ20の外周面及び内周面は、重なり部23cにおいて盛り上がったり、網目24において凹んだりされることなく、アウターチューブ20の全域にわたって滑らかである。
【0020】
図4に示すように、補強体22は、アウターチューブ20のほぼ全域にわたって設けられている。厳密には、図3に示すように、補強体22は、アウターチューブ20における先端20fより手元側(図3において右側)へ少し引っ込んだ位置からアウターチューブ20の手元端20e(図1)までの部分に設けられている。チューブ本体21の先端が、補強体22の先端より突出されている。チューブ本体21の先端の補強体22からの突出長さL21fは、好ましくは数mm程度であり、より好ましくはL21f=3mm程度である。
【0021】
デリバリーシステム1は、次のように使用される。
図2(a)に示すように、リリース操作前のデリバリーシステム1においては、ステント3が径方向に窄められて、アウターチューブ20の先端部分とインナーシャフト10の先端部分13との間に収容されている。
施術に際し、先に内視鏡(図示省略)が病変部まで差し入れられる。
続いて、デリバリーシステム1が、該内視鏡のチャネルに挿通されて病変部まで差し入れられる。
【0022】
次に、図2(b)に示すように、インナーシャフト10に対してアウターチューブ20が手元側へ引かれる。これによって、ステント3が、デリバリーカテーテル2からリリースされ、弾性的に拡径展開されて病変部を開通させる。
図2(c)に示すように、展開されたステント3が病変部に留置されることによって、病変部の開通状態が維持される。デリバリーカテーテル2は、引き抜かれて撤去される。
【0023】
デリバリーシステム1の内視鏡チャネルへの挿通時ないしはステント3のリリース操作時には、アウターチューブ20に引張力等の外力が作用する。これに対し、補強体22によって、アウターチューブ20の引張強度が高められているから、アウターチューブ20が前記外力によって延びたり破断したりするのを防止できる。この結果、デリバリーシステム1の内視鏡チャネルへの挿通操作及びステント3のリリース操作を円滑に行なうことができる。
【0024】
アウターチューブ20のチューブ本体21の先端が補強体22より少し突出されているため、補強体22がチューブ本体21の先端に露出するのを防止できる。また、デリバリーカテーテル2の先端部分に曲げ応力が作用したとき、インナーシャフト10におけるアウターチューブ先端近傍部分に曲げが集中するのを緩和できる。
【0025】
さらに、図5(a)に示すように、補強体22の補強線材23の断面を扁平形状にすることによって、補強線材23の厚みt23を、同程度の断面強度を有する円形断面の仮想の補強線材23X(図5(a)の二点鎖線)の直径D23Xよりも小さくできる(t23<D23X)。したがって、アウターチューブ20を補強しつつ、アウターチューブ20の管厚を小さくできる。具体的には、アウターチューブ20の外径を小さくしたり内径を大きくしたりできる。アウターチューブ20の外径を小さくすることによって、内視鏡チャネルへの挿通抵抗を低減できる。また、より細いチャネル径の内視鏡を用いることができる。アウターチューブ20の内径を大きくすることによって、ステント3のリリース抵抗を低減でき、デリバリーカテーテル2の操作性を向上できる。
【0026】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨に反しない限り種々の改変をなすことができる。
例えば、補強線材23の断面形状は、長方形に限らず、短軸をアウターチューブの径方向へ向け長軸をアウターチューブの周面に沿わせた楕円形状であってもよい。
補強体22のメッシュ形状は、斜め(菱形)格子状に限らず、正格子状、三角格子状等であってもよい。
補強体22は、メッシュ状に限らず、コイル状(螺旋状)であってもよく、アウターチューブの軸方向へ延びるとともに周方向へ間隔を置いて並べられた複数の線状体であってもよく、アウターチューブの軸方向に整列された複数の環状体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、例えば閉塞又は狭窄した病変部の治療具に適用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 デリバリーシステム
2 デリバリーカテーテル
3 ステント
10 インナーシャフト
11 内管
12 被覆管
13 内管の先端部分
20 アウターチューブ
21 チューブ本体
22 補強体
23 補強線材
24 網目(開口部)
23 補強線材の厚み
23 補強線材の幅
図1
図2
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】