(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021816
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】紙パウチ及び内容物入り紙パウチ
(51)【国際特許分類】
B65D 30/02 20060101AFI20240208BHJP
B65D 33/36 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B65D30/02
B65D33/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124916
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】上野 美樹
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AB25
3E064AB26
3E064BA05
3E064BA17
3E064BA27
3E064BA28
3E064BA30
3E064BA36
3E064BA55
3E064BB03
3E064BC04
3E064BC08
3E064EA12
3E064FA04
3E064FA05
3E064GA01
3E064HA06
3E064HB05
3E064HB10
3E064HM01
3E064HN06
3E064HP01
3E064HP02
3E064HS05
(57)【要約】
【課題】容易に内容物を注出する。
【解決手段】紙パウチ1は、互いに対向された胴部2A及び胴部2Bと、胴部2A及び胴部2Bの間に折り込まれた底部3と、を有し、内部に内容物を収容するための収容領域12が形成され、少なくとも胴部2A及び胴部2Bが紙基材層4とシーラント層6とを有する積層シート7により形成されている。そして、胴部2A及び胴部2Bのそれぞれは、収容領域12を形成する本体部15と、収容領域12に収容された内容物を注ぎ出すために収容領域12から延びる注出路14を形成する注出部16と、注出部16に形成されたエンボス線17と、を有し、紙パウチ1における紙基材層15の重量割合は、50%超であり、紙基材層15の坪量は、50g/m
2以上120g/m
2以下であり、エンボス線17の最大高さHは、50μm以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向された一対の胴部と、前記一対の胴部の間に折り込まれた底部と、を有し、内部に内容物を収容するための収容領域が形成され、少なくとも前記一対の胴部が紙基材層とシーラント層とを有する積層シートにより形成された紙パウチであって、
前記一対の胴部のそれぞれは、前記収容領域を形成する本体部と、前記収容領域に収容された前記内容物を注ぎ出すために前記収容領域から延びる注出路を形成する注出部と、前記注出部に形成されたエンボス線と、を有し、
前記紙パウチにおける前記紙基材層の重量割合は、50%超であり、
前記紙基材層の坪量は、50g/m2以上120g/m2以下であり、
前記エンボス線の最大高さは、50μm以上である、
紙パウチ。
【請求項2】
前記エンボス線は、前記紙パウチの外側に向けて凸となっている、
請求項1に記載の紙パウチ。
【請求項3】
前記エンボス線は、前記注出路に沿って延びている、
請求項1に記載の紙パウチ。
【請求項4】
前記エンボス線は、前記注出路の延在方向と直交する切断予定線を跨いで延びている、
請求項3に記載の紙パウチ。
【請求項5】
前記注出路の延在方向と直交する切断予定線に対する前記エンボス線の成す角度は、60度以上120度以下である、
請求項4に記載の紙パウチ。
【請求項6】
前記エンボス線は、前記注出部から前記本体部まで延びている、
請求項3に記載の紙パウチ。
【請求項7】
前記一対の胴部のそれぞれは、複数の前記エンボス線を有する、
請求項3に記載の紙パウチ。
【請求項8】
複数の前記エンボス線の最小離間距離は、複数の前記エンボス線のそれぞれの最大幅以下である、
請求項7に記載の紙パウチ。
【請求項9】
前記エンボス線の最大幅は、1.5mm以上3.5mm以下である、
請求項1に記載の紙パウチ。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の紙パウチと、
前記紙パウチの前記収容領域に収容された内容物と、を備える、
内容物入り紙パウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙基材層とシーラント層とを有する積層シートを用いた紙パウチ及び内容物入り紙パウチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、詰め替え用ボトル等の容器に対して内容物を詰め替えるために、一対の胴部と一対の胴部の間に折り込まれた底部とがヒートシールされた樹脂フィルム製のスタンディングパウチが用いられている。このようなスタンディングパウチでは、一対の胴部の上端隅部(角部)が内容物を注ぎ出すための注出部となっており、この注出部をハサミ等で切断することで、内容物を注ぎ出すようになっている。
【0003】
近年、資源の有効な利用の促進に関する法律の改正に伴い、家庭から排出される紙製容器包装に紙マークを表示することが義務化されるようになった。紙マークを表示するためには、紙の重量比が50%を超えることが必要になる。しかしながら、スタンディングパウチにおける紙の重量比を50%以上とすると、注出部の腰が強くなるため、注出部をハサミ等で切断しても、注出部が開かず内容物を注ぎ出すことができない場合がある。
【0004】
そこで、特許文献1には、紙基材の占める重量が50%以上になるスタンディングパウチにおいて、注出部に、注出部の先端部をハサミ等で切り取って注出部を指で挟み込むことにより折れ曲がる組立用罫線を施すことが記載されている。このスタンディングパウチでは、注出部の先端部をハサミ等で切り取って注出部を指で挟み込むことにより、注出部が開いた状態で保形されるため、傾けるようにスタンディングパウチを持ち上げることで、内容物を詰め替え用ボトル等の容器へ注入することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたスタンディングパウチでは、注出部の先端部をハサミ等で切り取った後に注出部を指で挟み込む必要があるため、内容物を容易に注ぎ出すことができないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、容易に内容物を注ぎ出すことができる紙パウチ及び内容物入り紙パウチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る紙パウチは、以下の通りである。
【0009】
[1]
互いに対向された一対の胴部と、前記一対の胴部の間に折り込まれた底部と、を有し、内部に内容物を収容するための収容領域が形成され、少なくとも前記一対の胴部が紙基材層とシーラント層とを有する積層シートにより形成された紙パウチであって、前記一対の胴部のそれぞれは、前記収容領域を形成する本体部と、前記収容領域に収容された前記内容物を注ぎ出すために前記収容領域から延びる注出路を形成する注出部と、前記注出部に形成されたエンボス線と、を有し、前記紙パウチにおける前記紙基材層の重量割合は、50%超であり、前記紙基材層の坪量は、50g/m2以上120g/m2以下であり、前記エンボス線の最大高さは、50μm以上である、紙パウチ。
【0010】
この紙パウチでは、少なくとも一対の胴部が紙基材層とシーラント層とを有する積層シートにより形成され、紙パウチにおける紙基材層の重量割合が50%超であり、紙基材層の坪量が50g/m2以上120g/m2以下であるため、一対の胴部は適度な腰を有している。しかしながら、注出部に、最大高さが50μm以上のエンボス線が形成されているため、紙パウチに内容物が収容された内容物入り紙パウチにおいて、注出部をハサミ等で切断して紙パウチを傾けた際に内容物の自重で注出部が開く程度に、エンボス線において注出部の腰が弱められている。これにより、注出部を切断した後に注出部を指で挟み込まなくても、エンボス線に沿って一対の胴部が折り曲げられて注出部が開くため、容易に内容物を注ぎ出すことができる。
【0011】
[2]
前記エンボス線は、前記紙パウチの外側に向けて凸となっている、[1]に記載の紙パウチ。この紙パウチでは、エンボス線が紙パウチの外側に向けて凸となっていることで、紙パウチに内容物が収容された内容物入り紙パウチにおいて、注出部を切断して紙パウチを傾けた際に、内容物の自重で注出部がより開きやすくなる。
【0012】
[3]
前記エンボス線は、前記注出路に沿って延びている、[1]又は[2]に記載の紙パウチ。この紙パウチでは、エンボス線が注出路に沿って延びていることで、紙パウチに内容物が収容された内容物入り紙パウチにおいて、注出部を切断して紙パウチを傾けた際に、内容物の自重で注出部がより開きやすくなるとともに、内容物を円滑に注ぎ出すことができる。
【0013】
[4]
前記エンボス線は、前記注出路の延在方向と直交する切断予定線を跨いで延びている、[3]に記載の紙パウチ。この紙パウチでは、エンボス線が切断予定線を跨いで延びていることで、紙パウチに内容物が収容された内容物入り紙パウチにおいて、注出部を切断して紙パウチを傾けた際に、内容物の自重で注出部がより開きやすくなる。
【0014】
[5]
前記注出路の延在方向と直交する切断予定線に対する前記エンボス線の成す角度は、60度以上120度以下である、[4]に記載の紙パウチ。この紙パウチでは、切断予定線に対するエンボス線の成す角度が60度以上120度以下であることで、紙パウチに内容物が収容された内容物入り紙パウチにおいて、注出部を切断して紙パウチを傾けた際に、内容物の自重で注出部がより開きやすくなるとともに、内容物を円滑に注ぎ出すことができる。
【0015】
[6]
前記エンボス線は、前記注出部から前記本体部まで延びている、[3]~[5]の何れか一つに記載の紙パウチ。この紙パウチでは、エンボス線が注出部から本体部まで延びていることで、紙パウチに内容物が収容された内容物入り紙パウチにおいて、注出部を切断して紙パウチを傾けた際に、内容物の自重で注出部がより開きやすくなる。また、内容物の自重により本体部においても一対の胴部が折り曲げられるため、内容物の注ぎ終わりまで、注出部が開いた状態を保持することができる。これにより。更に容易に内容物を注ぎ出すことができる。
【0016】
[7]
前記一対の胴部のそれぞれは、複数の前記エンボス線を有する、[3]~[6]の何れか一つに記載の紙パウチ。この紙パウチでは、一対の胴部のそれぞれが複数のエンボス線を有することで、注出部の腰を更に弱めることができる。これにより、紙パウチに内容物が収容された内容物入り紙パウチにおいて、更に容易に内容物を注ぎ出すことができる。
【0017】
[8]
複数の前記エンボス線の最小離間距離は、複数の前記エンボス線のそれぞれの最大幅以下である、[7]に記載の紙パウチ。この紙パウチでは、複数の前記エンボス線の最小離間距離が複数のエンボス線のそれぞれの最大幅以下であることで、エンボス線の形成可能数を増やすことができる。
【0018】
[9]
前記エンボス線の最大幅は、1.5mm以上3.5mm以下である、[1]~[8]の何れか一つに記載の紙パウチ。この紙パウチでは、エンボス線の最大幅が1.5mm以上であることで、エンボス線の形成により一対の胴部が破れるのを抑制することができる。一方、エンボス線の最大幅が3.5mm以下であることで、エンボス線を容易に形成することができるとともに、エンボス線の形成可能数を増やすことができる。
【0019】
本発明に係る内容物入り紙パウチは、以下の通りである。
【0020】
[10]
上記[1]~[9]の何れか一つに記載の紙パウチと、前記紙パウチの前記収容領域に収容された内容物と、を備える、内容物入り紙パウチ。この内容物入り紙パウチでは、上述した紙パウチを備えるため、容易に内容物を注出することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、容易に内容物を注ぎ出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態に係る紙パウチを示す正面図である。
【
図2】
図1に示すII-II線における断面図である。
【
図5】エンボス線の変形例を示した、
図3に対応する正面図である。
【
図6】実施形態に係る内容物入り紙パウチを示す正面図である。
【
図7】実施形態に係る内容物入り紙パウチを示す斜視図である。
【
図8】紙パウチの製造方法の例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0024】
[紙パウチ]
図1は、実施形態に係る紙パウチを示す正面図である。
図1に示す紙パウチ1は、資源の有効な利用の促進に関する法律に基づく紙マークを表示することが可能で、内容物が収容されることで自立するスタンディングパウチであり、詰め替え用ボトル等の容器(不図示)に対する内容物の詰め替え等に用いられる。紙パウチ1の上下等の方向は、紙パウチ1が自立した際の上下等の方向をいう。また、紙パウチ1の上下の方向を縦方向D1といい、縦方向D1と直交する方向を横方向D2という。
【0025】
図2は、
図1に示すII-II線における断面図である。
図1及び
図2に示すように、紙パウチ1は、互いに対向された一対の胴部である胴部2A及び胴部2Bと、胴部2Aと胴部2Bとの間に折り込まれた底部3と、を備える。そして、紙パウチ1は、その内部に、内容物を収容するための収容領域12が形成されている。収容領域12は、胴部2A、胴部2B、及び底部3により形成される。なお、胴部2Aと胴部2Bとは、互いに同じ形状、構造等を有しているため、以下では、特に分けて説明する場合を除き、胴部2A及び胴部2Bを胴部2として纏めて説明する。
【0026】
胴部2は、紙基材層4と、バリア層5と、シーラント層6と、が積層された積層シート7により形成されている。紙基材層4は、紙のシートにより形成された層である。紙基材層4の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、晒クラフト紙とすることができる。バリア層5は、気体及び液体の通過を阻止するバリア性を有する層である。バリア層5の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、アルミ蒸着フィルム(例えば、VM-PET)とすることができる。シーラント層6は、熱により溶融して他のシートに溶着可能な層である。つまり、シーラント層6は、ヒートシール可能な層である。シーラント層6の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とすることができる。紙基材層4、バリア層5、及びシーラント層6は、例えば、接着剤による接着により互いに積層されている。紙基材層4、バリア層5、及びシーラント層6を互い接着する接着剤の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、有機溶剤型エステル系接着剤、無溶剤型エステル系接着剤とすることができる。なお、積層シート7では、紙基材層4のシーラント層6とは反対側に、コート層等の他の層が積層されていてもよい。
【0027】
底部3は、基材層8と、バリア層9と、シーラント層10と、が積層された積層シート11により形成されている。バリア層9は、気体及び液体の通過を阻止するバリア性を有する層である。基材層8の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、紙、熱可塑性樹脂とすることができる。紙は、例えば、晒クラフト紙とすることができる。熱可塑性樹脂は、例えば、ナイロン(Ny)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)とすることができる。基材層8が熱可塑性樹脂である場合は延伸フィルムであってよく、一軸延伸フィルムもしくは二軸延伸フィルムであってよい。バリア層9の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、アルミ蒸着フィルム(例えば、VM-PET)とすることができる。シーラント層10は、熱により溶融して他のシートに溶着可能な層である。つまり、シーラント層10は、ヒートシール可能な層である。シーラント層10の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とすることができる。
【0028】
紙パウチ1における紙基材層4の重量割合は、50%超である。つまり、紙パウチ1に紙マークを表示可能とするために、紙パウチ1の全重量に対する紙の重量の割合が50%超となっている。
【0029】
紙基材層4の坪量は、50g/m2以上120g/m2以下である。この場合、胴部2に適度な腰を付与できる観点から、紙基材層4の坪量は、好ましくは60g/m2以上であり、より好ましくは80g/m2以上である。一方、胴部2の保形性が過度に大きくなるのを抑制できる観点から、紙基材層4の坪量は、好ましくは110g/m2以下であり、より好ましくは100g/m2以下である。なお、保形性とは、形状を保持しようとする性質であり、形状保持性ともいう。これらの観点から、紙基材層4の坪量は、好ましくは60g/m2以上110g/m2以下であり、より好ましくは80g/m2以上100g/m2以下である。
【0030】
胴部2A及び胴部2Bは、略矩形状に形成されて、それぞれのシーラント層6が対向するように互いに重ね合わされている。底部3は、略矩形状に形成されて、その下端が胴部2A及び胴部2Bの下端と合わさるとともに、そのシーラント層10が胴部2A及び胴部2Bのシーラント層6と対向するように、胴部2A及び胴部2Bの間に折り込まれている。つまり、底部3は、胴部2A側に位置する第一底部3aと胴部2B側に位置する第二底部3bとが折り畳まれた状態となっている。
【0031】
そして、紙パウチ1の内部に内容物を収容可能とするために、胴部2A及び胴部2Bが、その上端部の少なくとも一部を除き、その外縁部において互いに又は底部3とヒートシールされている。これにより、内容物を収容するための収容領域12と、収容領域12に内容物を注入するために収容領域12を開口する注入口13と、収容領域12に収容された内容物を注ぎ出すために収容領域12から延びる注出路14と、が形成されている。収容領域12に対して注出路14が延びる方向は、特に限定されるものではないが、例えば、縦方向D1及び横方向D2に対して傾斜した方向である。
【0032】
胴部2は、略矩形に形成されて収容領域12を形成する本体部15と、本体部15から突出して注出路14を形成する注出部16と、エンボス線17と、を有する。また、胴部2は、互いに縦方向D1に対向する上辺部15a及び底辺部15bと、互いに横方向D2に対向する第一側辺部15c及び第二側辺部15dと、を有する。上辺部15aは、本体部15の外縁部を成すとともに、胴部2の上辺に沿って横方向D2に延びる部分である。底辺部15bは、本体部15の外縁部を成すとともに、胴部2の底辺に沿って横方向D2に延びる部分である。第一側辺部15cは、本体部15の外縁部を成すとともに、胴部2の一方の側辺に沿って縦方向D1に延びる部分である。第二側辺部15dは、本体部15の外縁部を成すとともに、胴部2の他方の側辺に沿って縦方向D1に延びる部分である。
【0033】
図3は、紙パウチの一部を拡大した正面図である。
図1~
図3に示すように、注出部16は、胴部2の上辺部15aと第一側辺部15cとの間の隅部15eに位置している。隅部は、角部ともいう。注出部16は、例えば、隅部15eにおいて上辺部15a及び第一側辺部15cを切り欠くことにより形成することができる。つまり、上辺部15aの横方向D2における第一側辺部15c側の端部に第一切欠き18を形成するとともに、第一側辺部15cの縦方向D1における上辺部15a側の端部に第二切欠き19を形成することで、注出部16を形成することができる。
【0034】
胴部2A及び胴部2Bの、互いに又は底部3とヒートシールされている部分を、シール部20という。シール部20は、第一サイドシール部21と、注出シール部22と、第二サイドシール部23と、底シール部24と、を有する。
【0035】
第一サイドシール部21は、胴部2Aと胴部2Bとが互いにヒートシールされている部分である。第一サイドシール部21は、第一側辺部15cに沿って縦方向D1に延びている。
【0036】
注出シール部22は、胴部2Aと胴部2Bとが互いにヒートシールされている部分である。注出シール部22は、第一サイドシール部21の上端に接続されて、注出部16の外縁に沿って注出路14を囲むように延びている。注出路14は、注出シール部22に囲まれて胴部2Aと胴部2Bとが互いにヒートシールされていない部分である。このため、注出シール部22により、注出路14が画成される。
【0037】
第二サイドシール部23は、胴部2Aと胴部2Bとが互いにヒートシールされている部分である。第二サイドシール部23は、第二側辺部15dに沿って縦方向D1に延びている。
【0038】
底シール部24は、胴部2A及び胴部2Bと底部3とがヒートされている部分である。つまり、底シール部24は、胴部2Aと第一底部3aとがヒートシールされている部分、及び胴部2Bと第二底部3bとがヒートされている部分である。底シール部24は、第一サイドシール部21の下端と第二サイドシール部23の下端とに接続されている。
【0039】
注出シール部22の上端と第二サイドシール部23の上端との間に位置する上辺部15aは、胴部2Aと胴部2Bとが互いにヒートシールされていない。この上辺部15aの胴部2Aと胴部2Bとが互いにヒートシールされていない部分が、注入口13となる。但し、上辺部15aの一部に注入口13が形成されていれば、上辺部15aの一部において胴部2A及び胴部2Bが互いにヒートシールされていてもよい。
【0040】
また、紙パウチ1では、内容物が収容された際に安定して自立するように、第一底部3a及び第二底部3bの横方向D2における両端部が半月状に切り取られて、胴部2Aと胴部2Bとが部分的にヒートシールされている。この第一底部3a及び第二底部3bが半月状に切り取られて胴部2Aと胴部2Bとが部分的にヒートシールされている部分を、ポイントシール部25という。
【0041】
エンボス線17は、収容領域12に収容されている内容物を注ぎ出しやすくするために胴部2の腰を弱めるものである。収容領域12に収容されている内容物の注ぎ出しは、注出部16をハサミ等で切断して紙パウチ1を傾けることにより行う。しかしながら、胴部2は、紙基材層4を有することで、このような紙基材層を有しない場合に比べて腰が強くなっている。このため、内容物を注ぎ出すために注出部16をハサミ等で切断して紙パウチ1を傾けても、内容物の自重だけでは注出部16(注出路14)が開き難くなっている。そこで、エンボス線17は、注出部16をハサミ等で切断して紙パウチ1を傾けた際に、内容物の自重だけで注出部16(注出路14)が開く程度に、胴部2の腰を弱める。
【0042】
図4は、エンボス線を説明するための断面図である。
図1、
図3、及び
図4に示すように、エンボス線17は、胴部2をエンボス加工することにより胴部2に形成された線である。胴部2の表裏面のうち、一方側の面では、エンボス線17が凸状の線となり、他方側の面では、エンボス線17が凹状の線となる。エンボス線17の断面形状は、例えば、C字状である。エンボス線17は、紙パウチ1の外側に向けて凸となっている。つまり、胴部2Aに形成されたエンボス線17は、胴部2Bとは反対側に向けて凸となっており、胴部2Bに形成されたエンボス線17は、胴部2Aとは反対側に向けて凸となっている。積層シート7においては、エンボス線17は、シーラント層6側から紙基材層4側に凸となっている。
【0043】
注出部16をハサミ等で切断して紙パウチ1を傾けた際に、内容物の自重だけで注出部16が開く程度に、胴部2の腰を弱めるために、エンボス線17の最大高さは、50μm以上となっている。エンボス線17の最大高さHは、胴部2のエンボス線17が凸となる側の表面2aにおける、エンボス線17の幅方向D3における両端P1,P1を結んだ仮想線L1からエンボス線17が最も高くなる位置P2までの高さである。
【0044】
この場合、エンボス線17の最大高さHは、好ましくは80μm以上であり、より好ましくは140μm以上であり、更に好ましくは200μm以上である。一方、エンボス線17を形成するためには、凸状の雄型と凹状の雌型とにより胴部2を挟み込むため、エンボス線17の最大高さHが大きすぎると、胴部2が破れる可能性がある。そこで、エンボス線17の形成により胴部2が破れるのを抑制できる観点から、エンボス線17の最大高さHは、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは400μm以下であり、更に好ましくは300μmである。これらの観点から、エンボス線17の最大高さHは、好ましくは50μm以上500μm以下であり、より好ましくは80μm以上400μm以下であり、より好ましくは140μm以上300μm以下であり、更に好ましくは200μm以上300μmである。
【0045】
エンボス線17は、注出部16をハサミ等で切断して紙パウチ1を傾けた際に、内容物の自重だけで注出部16が開きやすくするために、少なくとも注出部16に形成されている。
【0046】
エンボス線17は、注出路14に沿って延びている。また、エンボス線17は、注出路14の延在方向D4と直交する切断予定線L2を跨いで延びている。注出部16の延在方向D4は、収容領域12に対して注出路14が延びる方向である。切断予定線L2は、ハサミ等による切断を予定している仮想線であり、例えば、注出部16に印刷された破線等の線であってもよく、微細なエンボス等により脆性化された線であってもよい。エンボス線17が切断予定線L2を跨いで延びているとは、切断予定線L2の始端及び終端が切断予定線L2を挟んだ両側に位置して、エンボス線17が切断予定線L2を横切っていることをいう。
【0047】
エンボス線17が切断予定線L2を跨いで延びている場合、切断予定線L2に対するエンボス線17の成す角度θは、特に限定されるものではないが、好ましくは60度以上120度以下、より好ましくは70度以上110度以下、更に好ましくは80度以上100度以下である。
【0048】
また、エンボス線17は、注出部16から本体部15まで延びている。つまり、エンボス線17は、本体部15にも形成されている。
【0049】
エンボス線17の形成により胴部2が破れるのを抑制できる観点から、エンボス線17の最大幅Wは、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは1.8mm以上、更に好ましくは2.0mm以上である。一方、エンボス線17を容易に形成することができる観点から、エンボス線17の最大幅Wは、好ましくは3.5mm以下、より好ましくは3.2mm以下、更に好ましくは3.0mm以下である。これらの観点から、エンボス線17の最大幅Wは、好ましくは1.5mm以上3.5mm以下、より好ましくは1.8mm以上3.2mm以下、更に好ましくは2.0mm以上3.0mm以下である。エンボス線17の最大幅Wは、エンボス線17が延びる方向と直交する方向におけるエンボス線17の幅の最大値である。
【0050】
胴部2A及び胴部2Bのそれぞれに形成されるエンボス線17の数は、特に限定されるものではないが、胴部2の腰をより弱めることができる観点から、好ましくは2本以上、より好ましくは3本以上である。一方、エンボス線17の間隔が狭くなり過ぎるのを抑制できる観点から、胴部2A及び胴部2Bのそれぞれに形成されるエンボス線17の数は、好ましくは5本以下、より好ましくは4本以下である。これらの観点から、胴部2A及び胴部2Bのそれぞれに形成されるエンボス線17の数は、好ましくは2本以上5本以下、より好ましくは3本以上4本以下である。
【0051】
胴部2A及び胴部2Bのそれぞれに複数のエンボス線17が形成される場合、これらの複数のエンボス線17は、互いに平行に延びていてもよく、互いに異なる方向に延びていてもよく、注出路14の先端に向かうに従い互いに近接する方向に延びていてもよい。
図1及び
図3では、複数のエンボス線17が、互いに平行に延びている場合を示している。
図5は、エンボス線の変形例を示した、
図3に対応する正面図である。
図5では、複数のエンボス線17が、注出路14の先端に向かうに従い互いに近接する方向に延びている場合を示している。
【0052】
また、胴部2A及び胴部2Bのそれぞれに複数のエンボス線17が形成される場合、複数のエンボス線17の最小離間距離Sは、複数のエンボス線17の最大幅Wより大きくてもよいが、エンボス線17の形成可能数を増やすことができる観点から、複数のエンボス線17の最大幅W以下であることが好ましい。
【0053】
[内容物入り紙パウチ]
図6は、実施形態に係る内容物入り紙パウチを示す正面図である。
図7は、実施形態に係る内容物入り紙パウチを示す斜視図である。
図6及び
図7に示す内容物入り紙パウチ101は、上述した紙パウチ1に内容物102を収容したものである。
図6及び
図7に示すように、内容物入り紙パウチ101は、紙パウチ1と、紙パウチ1の収容領域12に収容された内容物102と、を備える。
【0054】
内容物102は、特に限定されるものではないが、液体であることが好ましい。内容物102としては、例えば、液体洗剤、洗浄剤、薬品、化粧品、シャンプー、リンス等の日用品、液体調味料、スープ、ヨーグルト、清涼飲料、食用油等の食品、及び潤滑油、工業用油等の工業製品が挙げられる。
【0055】
内容物入り紙パウチ101では、紙パウチ1は、収容領域12に内容物102が収容された状態で、注入口13(
図1参照)が封止されている。つまり、注入口13において胴部2Aと胴部2Bとが互いにヒートシールされていることで、上辺部15aに沿って横方向D2に延びる上シール部103が形成されている。上シール部103は、胴部2Aと胴部2Bとが互いにヒートシールされている部分である。これにより、内容物102が紙パウチ1に密封された状態となっている。
【0056】
このように構成される内容物入り紙パウチ101では、内容物102が紙パウチ1の収容領域12に収容された内容物102が胴部2A、胴部2B、及び底部3を開き、胴部2A及び胴部2Bの底辺部15bが円弧状に広がることで、自立可能な状態となる。
【0057】
[紙パウチの製造方法]
図8は、紙パウチの製造方法の例を示すフロー図である。
図8に示すように、紙パウチ1を製造する際は、まず、胴部2A及び胴部2Bの母材である2枚の胴部用積層シート(不図示)と、底部3の母材である底部用積層シート(不図示)と、を用意する。胴部用積層シートは、胴部2A及び胴部2Bと同様に、紙基材層4と、バリア層5と、シーラント層6と、が積層された積層シート7により形成されている。底部用積層シートは、底部3と同様に、バリア層9と、シーラント層10と、が積層された積層シート11により形成されている。なお、用意する胴部用積層シート及び底部用積層シートには、予め商品名等の表示が印刷されていてもよい。
【0058】
次に、エンボス工程を行う(ステップS1)。ステップS1のエンボス工程では、2枚の胴部用積層シートのそれぞれに、エンボス加工によりエンボス線17を形成する。
【0059】
次に、2枚の胴部用積層シートを、それぞれのシーラント層6が対向するように互いに重ね合わせるとともに、底部用積層シートを、そのシーラント層10が2枚の胴部用積層シートのそれぞれのシーラント層6と対向するように、2枚の胴部用積層シートの間に折り込む。
【0060】
次に、底シール工程を行う(ステップS2)。ステップS2の底シール工程では、2枚の胴部用積層シートと底部用積層シートとをヒートシールして、底シール部24を形成する。その後、第一冷却工程を行う(ステップS3)。ステップS3の第一冷却工程では、底シール部24を冷却して、底シール部24での2枚の胴部用積層シートと底部用積層シートとのヒートシールを定着させる。
【0061】
次に、スポットシール工程(ステップS4)及びサイドシール工程(ステップS5)を行う。ステップS4のスポットシール工程では、2枚の胴部用積層シートを互いにヒートシールすることで、ポイントシール部25を形成する。ステップS5のサイドシール工程では、2枚の胴部用積層シートを互いにヒートシールすることで、第一サイドシール部21、注出シール部22、及び第二サイドシール部23を形成する。その後、サイド冷却工程を行う(ステップS6)。ステップS6のサイド冷却工程では、ポイントシール部25、第一サイドシール部21、注出シール部22、及び第二サイドシール部23を冷却して、第一サイドシール部21、注出シール部22、及び第二サイドシール部23での2枚の胴部用積層シートのヒートシールを定着させる。
【0062】
次に、打抜工程を行う(ステップS7)。ステップS7の打抜工程では、ステップS6により得られた中間品を、トムソン刃等の刃物を用いて、紙パウチ1の外形に沿って打抜く。これにより、紙パウチ1が製造される。
【0063】
内容物入り紙パウチ101を製造する際は、このように製造された紙パウチ1を用意し、注入口13から収容領域12に内容物102を注入し、注入口13において胴部2Aと胴部2Bとを互いにヒートシールすることで上シール部103を形成する。これにより、紙パウチ1に内容物102が密封された内容物入り紙パウチ101が製造される。
【0064】
[内容物の詰替手順]
内容物入り紙パウチ101を用いて詰め替え用ボトル等の容器(不図示)に内容物102を詰め替える場合は、まず、ハサミ等で注出部16を切断して、注出路14を紙パウチ1の外部に開放する。このとき、注出部16に、印刷等により切断予定線L2が表されている場合は、切断予定線L2に沿って注出部16を切断することが好ましい。
【0065】
次に、紙パウチ1を持ち上げて傾ける。すると、内容物102の自重により、内容物102が注出路14に移動して注出部16を開こうとする。このとき、胴部2は、紙基材層4を有するため、このような紙基材層を有しない場合に比べて腰が強くなっている。しかしながら、エンボス線17により注出部16の腰が弱められているため、内容物102の自重だけで注出部16が開かれる。これにより、注出部16から容器に内容物102が注ぎ出される。その後、紙パウチ1内の内容物102のほぼ全てが容器に詰め替えられると、内容物102の詰め替えが終了する。
【0066】
以上説明したように、本実施形態に係る紙パウチ1では、胴部2が紙基材層4とシーラント層6とを有する積層シート7により形成され、紙パウチ1における紙基材層4の重量割合が50%超であり、紙基材層4の坪量が50g/m2以上120g/m2以下であるため、胴部2は適度な腰を有している。しかしながら、注出部16に、最大高さHが50μm以上のエンボス線17が形成されているため、紙パウチ1に内容物102が収容された内容物入り紙パウチ101において、注出部16をハサミ等で切断して紙パウチ1を傾けた際に内容物102の自重で注出部16が開く程度に、エンボス線17において注出部16の腰が弱められている。これにより、注出部16を切断した後に注出部16を指で挟み込まなくても、エンボス線17に沿って胴部2が折り曲げられて注出部16が開くため、容易に内容物102を注ぎ出すことができる。
【0067】
また、この紙パウチ1では、エンボス線17の最大高さHが500μm以下であることで、エンボス線17の形成により胴部2が破れるのを抑制することができる。
【0068】
また、この紙パウチ1では、エンボス線17が紙パウチ1の外側に向けて凸となっていることで、紙パウチ1に内容物102が収容された内容物入り紙パウチ101において、注出部16を切断して紙パウチ1を傾けた際に、内容物102の自重で注出部16がより開きやすくなる。
【0069】
また、この紙パウチ1では、エンボス線17が注出路14に沿って延びていることで、紙パウチ1に内容物102が収容された内容物入り紙パウチ101において、注出部16を切断して紙パウチ1を傾けた際に、内容物102の自重で注出部16がより開きやすくなるとともに、内容物102を円滑に注ぎ出すことができる。
【0070】
また、この紙パウチ1では、エンボス線17が切断予定線L2を跨いで延びていることで、紙パウチ1に内容物102が収容された内容物入り紙パウチ101において、注出部16を切断して紙パウチ1を傾けた際に、内容物102の自重で注出部16がより開きやすくなる。
【0071】
また、この紙パウチ1では、切断予定線L2に対するエンボス線17の成す角度θが60度以上120度以下であることで、紙パウチ1に内容物102が収容された内容物入り紙パウチ101において、注出部16を切断して紙パウチ1を傾けた際に、内容物102の自重で注出部16がより開きやすくなるとともに、内容物102を円滑に注ぎ出すことができる。
【0072】
また、この紙パウチ1では、エンボス線17が注出部16から本体部15まで延びていることで、紙パウチ1に内容物102が収容された内容物入り紙パウチ101において、注出部16を切断して紙パウチ1を傾けた際に、内容物102の自重で注出部16がより開きやすくなる。また、内容物102の自重により本体部15においても胴部2が折り曲げられるため、内容物102の注ぎ終わりまで、注出部16が開いた状態を保持することができる。これにより。更に容易に内容物102を注ぎ出すことができる。
【0073】
また、この紙パウチ1では、胴部2A及び胴部2Bのそれぞれが複数のエンボス線17を有することで、注出部16の腰を更に弱めることができる。これにより、紙パウチ1に内容物102が収容された内容物入り紙パウチ101において、更に容易に内容物102を注ぎ出すことができる。
【0074】
また、この紙パウチ1では、複数のエンボス線17が互いに平行に延びていることで、複数のエンボス線17を容易に形成することができるとともに、紙パウチ1に内容物102が収容された内容物入り紙パウチ101において、内容物102を円滑に注ぎ出すことができる。
【0075】
また、この紙パウチ1では、複数のエンボス線17が注出路14の先端に向かうに従い互いに近接する方向に延びていることで、例えば、注出路14が先端に向かうに従い細くなる場合に、紙パウチ1に内容物102が収容された内容物入り紙パウチ101において、内容物102を適切に誘導することができる。
【0076】
また、この紙パウチ1では、複数のエンボス線17の最小離間距離Sが複数のエンボス線17のそれぞれの最大幅W以下であることで、エンボス線17の形成可能数を増やすことができる。
【0077】
また、この紙パウチ1では、エンボス線17の最大幅Wが1.5mm以上であることで、エンボス線17の形成により胴部2が破れるのを抑制することができる。一方、エンボス線の最大幅Wが3.5mm以下であることで、エンボス線17を容易に形成することができるとともに、エンボス線17の形成可能数を増やすことができる。
【0078】
本実施形態に係る内容物入り紙パウチ101では、上述した紙パウチ1を備えるため、容易に内容物102を注出することができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
【0080】
例えば、上記実施形態では、一対の胴部のそれぞれ及び底部は、バリア層を有する積層シートにより形成されるものとして説明したが、紙パウチにバリア性が求められない場合は、バリア層を有しない積層シートにより形成されていてもよい。また、上記実施形態では、底部は、紙基材層を有しない積層シートにより形成されているものとして説明したが、紙基材層を有する積層シートにより形成されていてもよい。また、これらの積層シートは、他の層を有していてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、注出部は、本体部の隅部に位置しているものとして説明したが、注出部の位置は特に限定されるものではない。但し、注出部を切断した際に内容物がこぼれるのを抑制する観点から、注出部は、本体部の上部に位置していることが好ましい。
【0082】
また、上記実施形態では、注出部を形成するために、上辺部及び第一側辺部に第一切欠き及び第二切欠きを形成するものとして説明したが、このような第一切欠き及び第二切欠きが形成されていないものとしてもよい。注出部が如何なる形状であっても、注出シール部により任意の形状の注出路を形成することができるため、例えば、第一切欠き及び第二切欠きのない矩形の胴部の隅部に注出部が形成されていてもよい。
【実施例0083】
次に、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0084】
(比較例1)
坪量が80g/m2の紙基材と、厚みが12μmのアルミ蒸着バリアフィルム(VM-PET、東レフィルム加工株式会社製)と、厚みが50μmの低密度ポリエチレンフィルム(タマポリ株式会社製)と、を積層し、これらを有機溶剤型エステル系接着剤(LX500,DICグラフィックス株式会社製)により接着することで、三層構造の胴部用積層フィルムを得た。また、厚みが15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(ボニールRX,興人フィルム&ケミカルズ株式会社製)と、厚みが60μmの低密度ポリエチレンフィルム(SE602F,タマポリ株式会社製)と、を積層し、これらを有機溶剤型エステル系接着剤(LX500,DICグラフィックス株式会社製)により接着することで、二層構造の底部用積層フィルムを得た。
【0085】
次に、エンボス線の高さの設計値を30μmとして胴部用積層シートをエンボス加工することで、胴部用積層シートに3本のエンボス線を形成した。次に、2枚の胴部用積層シートを、それぞれの低密度ポリエチレンフィルムが対向するように互いに重ね合わせるとともに、底部用積層シートを、その低密度ポリエチレンフィルムが2枚の胴部用積層シートのそれぞれの低密度ポリエチレンフィルムと対向するように、2枚の胴部用積層シートの間に折り込んだ。次に、2枚の胴部用積層シートと底部用積層シートとをヒートシールして底シール部を形成し、その後、底シール部を冷却した。次に、2枚の胴部用積層シートの間で折り畳まれている底部用積層シートを互いにヒートシールしてスポットシール部を形成し、2枚の胴部用積層シートを互いにヒートシールすることで、第一サイドシール部、注出シール部、及び第二サイドシール部を形成し、その後、スポットシール部、第一サイドシール部、注出シール部、及び第二サイドシール部を冷却した。そして、得られた中間体を、トムソン刃を用いて紙パウチの外形に沿って打抜くことで、比較例1の紙パウチを製造した。製造した紙パウチにおける紙基材層の重量割合は、51%であった。また、製造された紙パウチでは、エンボス線の最大高さが40μm、エンボス線の長さが55mm、エンボス線の幅が2~3mm(最大幅が3mm)であった。その後、製造された紙パウチに、注入口から化粧水を収容し、その後、注入口において一対の胴部を互いにヒートシーして内容物を密封することで、内容物入り紙パウチを製造した。
【0086】
その後、製造した内容物入り紙パウチを用いて、3人の被験者による注出試験を行った。注出試験では、ハサミで注出部を切断し、紙パウチを持ち上げて傾けることで、紙パウチから内容物を注ぎ出した。そして、注ぎ始め、注ぎ中、及び注ぎ終わりの各段階における注ぎやすさを評価した。注ぎやすさの評価では、注出部を指で挟み込まなくても注出部から内容物が注ぎ出された場合を3点、注出部を軽く指で挟み込まないと注出部から内容物が注ぎ出されなかった場合を2点、注出部を強く指で挟み込まないと注出部から内容物が注ぎ出されなかった場合を1点とし、3人の被験者の平均点を評価値とした。評価結果を
図9に示す。
【0087】
(実施例1)
エンボス線の高さの設計値を75μmとして胴部用積層シートをエンボス加工し、製造された紙パウチにおけるエンボス線の最大高さが85μmとなったことを除き、比較例1と同条件で内容物入り紙パウチを製造した。そして、製造した内容物入り紙パウチを用いて、比較例1と同様の注出試験を行い、注ぎやすさの評価を行った。評価結果を
図9に示す。
【0088】
(実施例2)
エンボス線の高さの設計値を200μmとして胴部用積層シートをエンボス加工し、製造された紙パウチにおけるエンボス線の最大高さが225μmとなったことを除き、比較例1と同条件で内容物入り紙パウチを製造した。そして、製造した内容物入り紙パウチを用いて、比較例1と同様の注出試験を行い、注ぎやすさの評価を行った。評価結果を
図9に示す。
【0089】
(評価)
図9に示すように、注ぎ始めの段階では、エンボス線の最大高さが50μm以上となる実施例1及び実施例2の評価が1.5以上であるのに対し、エンボス線の最大高さが50μm未満となる比較例1の評価が1.5未満となった。このような結果から、エンボス線の最大高さを50μm以上とすることで、注出部の腰を適度に弱め、注ぎ始めの段階において容易に内容物を注ぎ出すことができると推察される。一方、注ぎ中及び注ぎ終わりの各段階では、何れも評価が1.5以上あった。これは、一旦、注出部から内容物が注ぎ出されると、注出部から注ぎ出される内容物の勢いで注出部の開かれた状態が保持されるためだと推察される。
【0090】
(実施例3)
エンボス線の本数を1本としたことを除き、実施例1と同条件で内容物入り紙パウチを製造した。そして、製造した内容物入り紙パウチを用いて、比較例1と同様の注出試験を行い、注ぎやすさの評価を行った。評価結果を
図10に示す。
【0091】
(実施例4)
エンボス線の本数を2本としたことを除き、実施例1と同条件で内容物入り紙パウチを製造した。そして、製造した内容物入り紙パウチを用いて、比較例1と同様の注出試験を行い、注ぎやすさの評価を行った。評価結果を
図10に示す。
【0092】
(実施例5)
エンボス線の高さの設計値を実施例1と同様に75μmとして胴部用積層シートをエンボス加工することで、胴部用積層シートに3本のエンボス線を形成し、製造された紙パウチにおけるエンボス線の最大高さが145μmとなったことを除き、実施例1と同条件で内容物入り紙パウチを製造した。そして、製造した内容物入り紙パウチを用いて、比較例1と同様の注出試験を行い、注ぎやすさの評価を行った。評価結果を
図10に示す。
【0093】
(評価)
図10に示すように、何れも評価が1.5以上であったが、注ぎ始め及び注ぎ終わりの各段階では、エンボス線の本数が多いほど評価が高くなった。これは、エンボス線の本数が多くなるほど、注出部の腰を弱める効果が高まることで、注出部から注ぎ出される内容物の勢いがない又は小さい場合にも、注出部の開き度合いが大きくなったものと推察される。なお、注ぎ中の段階では、何れも評価が3.0であったが、これは、注出部から注ぎ出される内容物の勢いで注出部の大きく開かれた状態が保持されるためだと推察される。
1…紙パウチ、2…胴部、2A…胴部、2a…表面、2B…胴部、3…底部、3a…第一底部、3b…第二底部、4…紙基材層、5…バリア層、6…シーラント層、7…積層シート、8…基材層、9…バリア層、10…シーラント層、11…積層シート、12…収容領域、13…注入口、14…注出路、15…本体部、15a…上辺部、15b…底辺部、15c…第一側辺部、15d…第二側辺部、15e…隅部、16…注出部、17…エンボス線、18…第一切欠き、19…第二切欠き、20…シール部、21…第一サイドシール部、22…注出シール部、23…第二サイドシール部、24…底シール部、25…ポイントシール部、101…内容物入り紙パウチ、102…内容物、103…上シール部、D1…縦方向、D2…横方向、D3…幅方向、D4…延在方向、L1…仮想線、L2…切断予定線、P1…両端、P2…位置、S…最小離間距離、W…最大幅、θ…角度。