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特開2024-21824杭穴内に充填された未固結試料の採取装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021824
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】杭穴内に充填された未固結試料の採取装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/34 20060101AFI20240208BHJP
   E02D 1/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
E02D5/34 Z
E02D1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124938
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000176512
【氏名又は名称】三谷セキサン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】木谷 好伸
【テーマコード(参考)】
2D041
2D043
【Fターム(参考)】
2D041AA01
2D041BA13
2D041DA01
2D041DA12
2D041EA04
2D043AC05
2D043BA07
2D043BB09
(57)【要約】
【課題】通常の施工作業の中で簡易な操作で未固結試料を確実に採取できる。
【解決手段】採取具1は採取開口16を備えた内筒10を外筒20内に挿入して構成し、既製杭40下端の取付板44に採取具1を係止ピン50で取り付けて、既製杭40の中空部41に採取具1を配置した採取装置56を構成する(a)。根固め液(未固結試料)が満たされた杭穴の根固め部に、通常の操作で既製杭40を埋設すれば、採取位置に採取具1を配置できる。この際、採取具1は基本位置で採取開口16は外筒20に塞がれている(a、b)。内筒10のみを地上から引けば採取開口16が露出して未固結試料を内筒内に採取できる(採取位置)(c)。更に地上から引けば、係止ピン50の係止を解除して、採取具1を地上に回収できる(d)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有する既製杭を設置する杭穴内に未固結材料が充填され、前記未固結材料採取して保管できる採取具を備え、以下のように構成したことを特徴とする未固結試料の採取装置。
(1)前記採取具は、採取開口から前記未固結材料を採取して保管できる内筒を備え、前記内筒と摺動して、前記採取開口を開放および密封できる構成とした。
(2) 前記採取具は、前記既製杭の取付部に着脱可能に取り付けられ、
(3) 前記採取具に前記取付部と着脱可能な係止部を備え、かつ前記採取具には地上からの操作手段が連結され、前記採取具は前記操作手段の操作により前記係止部と取付部との係止を解除可能とし、
(3) 前記採取具は、地上からの前記操作手段の引き操作により、前記採取口を閉鎖した基本位置と、前記採取口から未固結試料を取り込む採取位置とを取ることができる構成とした。
【請求項2】
以下のように構成したことを特徴とした請求項1に記載した未固結試料の採取装置
(1) 採取具は内筒と外筒とを備え、
既製杭が採取予定の位置に至るまで前記内筒を基本位置とし、
操作手段の第一引き操作で、前記内筒の採取開口を前記外筒の外に位置させて採取位置になり、
操作手段の第二引き操作で、前記内筒を採取位置としたまま、前記採取具を既製杭から分離させる
ことができる構成とした。
【請求項3】
以下のように構成したことを特徴とした請求項1に記載した未固結試料の採取装置
(1) 採取具は内筒と外筒とを備え、
既製杭が採取予定の位置に至るまで前記内筒を基本位置とし、
操作手段の第一引き操作で、前記内筒の採取開口を前記外筒の外に位置させて採取位置になり、
操作手段の第二引き操作で、前記内筒の採取開口を前記外筒で封鎖する再封鎖位置になり、
操作手段の第三引き操作で、前記内筒を採取位置としたまま、前記採取具を前記既製杭から分離させる
ことができる構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントミルクなどが注入された杭穴内に既製杭を埋設して基礎杭を構築する基礎杭工法において、注入したセメントミルクなどの未固結試料を採取して地上運搬するための杭穴内に充填された未固結試料の採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、採取装置は、掘削ロッドの先端に設け、杭穴掘削、セメントミルクを注入した状態で、掘削ヘッドを採取装置に取り換えて、未固結試料を採取していた。すなわち、既製杭を埋設する前に採取していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-237192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記、従来の場合、掘削で使用した掘削ロッドを地上に引き上げ、掘削ヘッドを採取用の治具と差し替える手間があり、さらに、採取具を取り付けた掘削ロッドを地上に引き上げて、既製杭を杭穴内に埋設していた。よって、杭穴掘削して根固め液を注入してから未固結試料を採取するまでの時間、さらに根固め液を注入してから既製杭を設置するまでの時間を要していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、既製杭の下端部に採取具を取り付けて採取装置を構成したので、前記問題点を解決した。
【0006】
即ちこの発明は、中空部を有する既製杭を設置する杭穴内に未固結材料が充填され、前記未固結材料採取して保管できる採取具を備え、以下のように構成したことを特徴とする未固結試料の採取装置である。
(1)前記採取具は、採取開口から前記未固結材料を採取して保管できる内筒を備え、前記内筒と摺動して、前記採取開口を開放および密封できる構成とした。
(2) 前記採取具は、前記既製杭の取付部に着脱可能に取り付けられ、
(3) 前記採取具に前記取付部と着脱可能な係止部を備え、かつ前記採取具には地上からの操作手段が連結され、前記採取具は前記操作手段の操作により前記係止部と取付部との係止を解除可能とし、
(3) 前記採取具は、地上からの前記操作手段の引き操作により、前記採取口を閉鎖した基本位置と、前記採取口から未固結試料を取り込む採取位置とを取ることができる構成とした。
【0007】
また、前記において、一の発明は以下のように構成したことを特徴とした未固結試料の採取装置である。
(1) 採取具は内筒と外筒とを備え、
既製杭が採取予定の位置に至るまで前記内筒を基本位置とし、
操作手段の第一引き操作で、前記内筒の採取開口を前記外筒の外に位置させて採取位置になり、
操作手段の第二引き操作で、前記内筒を採取位置としたまま、前記採取具を既製杭から分離させる
ことができる構成とした。
【0008】
また、前記において、他の発明は、以下のように構成したことを特徴とした未固結試料の採取装置である。
(1) 採取具は内筒と外筒とを備え、
既製杭が採取予定の位置に至るまで前記内筒を基本位置とし、
操作手段の第一引き操作で、前記内筒の採取開口を前記外筒の外に位置させて採取位置になり、
操作手段の第二引き操作で、前記内筒の採取開口を前記外筒で封鎖する再封鎖位置になり、
操作手段の第三引き操作で、前記内筒を採取位置としたまま、前記採取具を前記既製杭から分離させる
ことができる構成とした。
【0009】
前記において、通常は、既製杭の下端部が位置する杭穴の根固め部の未固結試料(固化する前のセメントミルクやソイルセメントなど)を採取するので、既製杭の下端部に取付部を形成して採取具を取り付ける。また、杭穴内の未固結試料の採取位置(高さ)に応じて、対応する既製杭の位置に取付部を形成して、採取具を取り付けることができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、中空部を有する既製杭の先端部に着脱可能に採取具を取り付けたので、既製杭を埋設した直後の杭穴充填物を地上に採取でき、より現実に近い既製杭に対応した杭穴充填物を採取できる。また、地上からの操作で、内筒の採取口を閉鎖する基本位置から、前記採取口から未固結試料を取り込む採取位置へと変化せることができる。また、地上からの操作で採取具を既製杭から分離させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)~(e)はこの発明の実施形態に基づき施工を説明する概略した縦断面図、をそれぞれ表す。
図2】(a)~(d)はこの発明の第一の実施形態の採取具の作動を表し、それぞれ外筒を破切した正面図、をそれぞれ表す。
図3】(a)~(e)はこの発明の第二の実施形態の採取具の作動を表し、それぞれ外筒を破切した正面図、をそれぞれ表す。
図4】この発明の第一の実施形態で使用する採取具で、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は底面図、をそれぞれ表す。
図5】この発明の第一の実施形態に使用する採取具で、(a)は外筒の平面図、(b)は外筒の正面図、(c)は内筒の平面図、(d)は内筒の左側面図、(e)は内筒の正面図、をそれぞれ表す。
図6】この発明の第一の実施形態に使用する採取具で、(a)は外筒のみの縦断面図、(b)採取具の縦断面図、(c)は内筒のみの縦断面図、をそれぞれ表す。
図7】この発明の第一実施形態および第二の実施形態で使用する部材で、(a)は既製杭の底面図、(b)(c)はこの発明の実施形態に使用する係止ピンの正面図、(d)(e)は係止ピンを取り付けた状態を説明する一部縦断面図、をそれぞれ表す。
図8】この発明の第二の実施形態に使用する採取具で、(a)は外筒のみの正面図、(b)外筒のみの正面図、(c)は外筒を破折した採取具で採取位置、(d)は外筒を破折した採取具で再封鎖位置、をそれぞれ表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。
【0013】
A.第一の実施形態
【0014】
1.採取具1の構成
【0015】
(1) 採取具1は、外筒20内に内筒10を軸方向に摺動可能に挿入して構成する(図4図6(b))。
【0016】
(2) 内筒10は、上下に開口を設けた内筒本体(円筒)の底を外側に広げて、内筒本体の外径より大径の円形の大径底板12を固定して塞ぎ、また上面を内筒本体と略同径となるように天板14で塞いで構成する(図5(c)~(d)、図6(c))。内筒10は上端部に採取開口16が形成され、軸方向で採取開口16の上下に、円周方向の環状溝が形成され、環状溝に、ピストンリングのような密閉リング17、17が嵌入されている。
また、天板14の上面15に、地上68からの操作ケーブル(操作手段)70の下端を固定する固定突起18、18を取り付けてある。
なお、操作ケーブル70は、杭穴60の底付近まで採取具1と共に下降して、杭穴60の底付近に位置する採取具1の内筒10を上昇させて、地上68まで引き上げできれば、材質は任意であり、柔らかい材質に限らず、硬い撓みの少ない材質とすることもできる。
【0017】
(3) 外筒20は上下が開口された円筒で、上部内壁23は、内筒10の外周より若干大きく形成され、内筒10を挿入した際に、密閉リング17、17が上部内壁23を常時弾性押圧するような径で形成され、外筒20の下部内壁24は、内筒20の大径底板12の外径より大きな径で形成されている。また、上部内壁23の径は、内筒10の大径底板12の外径よりも小さく形成され、上部内壁23と下部内壁24の境界に略水平のストッパー段部26が形成される。
また、外筒30の下部内壁34の下端部(下端22付近)に、直径方向の係止棒(係止部)28が着脱自在に取り付けてある。
外筒20内に内筒10を挿入した際に、内筒10が最も下がった状態(内筒10の下端が係止棒28に当接した状態。基本位置)で、内筒10の天板14の上面15が外筒20の上縁21より下がった位置であることが望ましく、少なくとも内筒10の上側の密閉リング17が外筒20の上縁21より下がった位置にあり、採取開口16が外筒20の上部内壁23に覆われ露出していないことが必要であり、そのように外筒20の高さ(外筒20の上縁21と係止棒28の位置)が調整されている。
また、外筒20内に内筒10を挿入した際に、内筒10が最も上がった状態(採取位置)で、内筒10の採取開口16が外筒20の上縁21より上がった位置であることが望ましく、そのように外筒20と内筒10の高さ(採取開口16の位置、大径底板12の位置)が調整されている。
【0018】
(4) 外筒20に係止棒28を取り付ける前に、外筒20の底側(下端22、下部内壁24側)から内筒10の天板14側を挿入して、内筒10の密閉リング17、17が外筒20の上部内壁24に弾性的に当接して、この状態で、内筒10の外面は外筒20の上部内壁23の内面との間に微小な隙間が形成される(図6(b))。続いて、外筒20の下端部に、直径方向に係止棒28を固定する。
内筒10の大径底板12の外周部13は、外筒20の下部内壁24の壁面との間でわずかな隙間が生じるが、外筒20の内壁のストッパー段部26に係止して、大径底板12が外筒20の上部には移動できないようになる。
以上のようにして、採取具1を構成する(図4図6(b))。
【0019】
2.既製杭40の構成
【0020】
(1) 本発明の実施形態に使用する既製杭40は、中空部41を有するコンクリート杭で、上下にドーナツ状の端板を備えている(図1(c)~(e))。下端板42の下面43に取付板(取付部)44を固定する。取付板44は、略半円状の多角形で形成され、既製杭40の中空部41の断面積で半分以下となるように形成する(図7(a))。取付板44は、採取具1を既製杭40の内壁40aに近い位置でかつ内壁40aから若干距離を空ける位置に配置できるように、採取具1の平面位置に合わせて(採取具1の中心付近が配置される位置に)、透孔45を形成してあり、透孔45を横断するように、取付板44の上面44a側に取付棒46の両端部が固定される。また、取付棒46の略中央で、透孔45を臨む位置で長さ方向略中央に、取付棒46の部材断面で直径方向に貫通する縦貫通孔47を形成する。
【0021】
(2) なお、取付板44は既製杭40に採取具1を固定でき、かつ既製杭40の下端を塞ぐ面積ができるだけ少ないことが望しく、その構造は多角形状に限らず、さらに板状とも限らず、棒状、網状など他の構造としても良い(図示していない)。また、取付板44は、採取する杭穴60の高さ位置に応じて、既製杭40に任意の高さに設置できる(図示していない)。
また、既製杭40は中空部41を備えていれば、外周下端部に節を備えた構造、外周に鋼管を被覆した構造、コンクリート製ではない鋼管からなる構造など任意である(図示していない)。
【0022】
3.係止ピン50
【0023】
(1) 係止ピン50は、既製杭40の取付棒46と採取具1(外筒20)の係止棒28とを保持する部材である。上部円弧部51で屈曲された逆U字状で、一側が直線部で、他側が上部円弧部51で係止棒28(外筒20)を4分の3程度巻かれるように上部円弧部51が絞られ、形成される。さらに、係止ピン50の他側で上部円弧部51の下方に、取付棒46に「3分の1」周ほど巻かれる中間円弧部53が形成され、中間円弧部53に続いて、他側の下端部は直線部52から離れるように下端屈曲部54が形成されている(図7(b))。
【0024】
(2) また、係止ピン50の構成も、既製杭40の取付板44に採取具1を保持して、少ない力で採取具1の内筒10と外筒20の各相対位置を保ち、さらに操作ケーブル70を大きな力で引いた場合に採取具1を取付板44から分離させることができれば他の構成とすることもできる(図示していない)。
【0025】
4.未固結試料の採取装置56の構成
【0026】
(1) 採取具1の内筒10の天板14の固定突起18、18に操作ケーブル(操作手段)70の先端を固定し、採取具1の下端部(外筒20)の係止棒28に、係止ピン50の上部円弧状部51を取り付ける。また、係止ピン50の直線部52を、既製杭40の取付棒46の縦貫通孔47に挿入すると共に、中間円弧部53を既製杭40(取付板44)の取付棒46に嵌装係止し、係止ピン50の下端部(直線部52の下端部、他側の下端屈曲部54)を取付板44の透孔45から下方に位置させる(図7(b)(d))。この状態で、採取具1の下端(外筒20の下端22)は取付板44の上面44aに密着した状態で、取付板44に安定して保持される。なお、取付板44に保持できれば、採取具1の下端22は取付板44に密着しなくても良い。
この状態で、採取装置56を構成する(図2(a))。
【0027】
(2) ここで、係止ピン50の直線部52を取付棒46の縦貫通孔47に挿入したが、直線部52を縦貫通孔47に挿入せずに、直線部52を取付棒46の外面側に押圧状態で配置することもできる(図7(c)(e))。この場合には取付棒46に縦貫通孔47は不要である。
【0028】
(3) なお、既製杭40を杭穴60内に埋設する状態で、採取具1の内筒10は最も下がった位置、あるいは少なくとも採取開口16が外筒20の上部内壁23で塞がれた状態となっている(基本位置)。
【0029】
5.未固結試料の採取装置56の動作
【0030】
(1) 通常のように、地上68から、先端に掘削ヘッド66を取り付けた掘削ロッド65で杭穴60を掘削し、杭穴60の下端部に根固め部61を形成する(図1(a))。掘削ヘッド66の先端部から根固め液を吐出して必要に応じて撹拌して、根固め部61内に根固め液層62を形成する(図1(b))。
【0031】
(2) 続いて、掘削ヘッド66を付けた掘削ロッド65を地上68に引き上げ、杭穴60内に採取具1を取り付けた既製杭40を下降して、既製杭40の先端を根固め部61内の所定の深さ位置(未固結試料の採取位置)に配置する。これにより既製杭40の先端の取付板44上の採取具1も根固め部61内の根固め層62内に位置される(図1(b)、図2(a)(b)、図6(b))。
この際、採取具1がこの位置まで「基本位置」を保つように、地上68から操作ケーブル70を繰り出す。したがって、この状態で採取具1は「基本位置」で、採取具1の周囲は根固め液層62の中にあり(図1(c))、ここまで、採取具1の採取開口16は塞がれているので、地上68からずっと、採取開口1から内筒10内に杭穴60の充填物が入ることはない。
【0032】
(3) 続いて、操作ケーブル70を地上68側に少し引いて(第一引き操作)、係止ピン50の係止棒46との係止が外れないような力で)、係止ピン50を現状の位置のまま、内筒10のみを上昇させ採取開口16を外筒20の上端21より上げ、杭穴60内(根固め部61の根固め層62内)に採取開口16を露出させる(図1(c)、図2(c)、図4)。この位置で、内筒10の大径底板12がストッパー段部26に係止しており、この位置を「採取位置」とする。
これにより、採取開口16から内筒10内に根固め液が流入して、内筒10内が根固め液で満たされ、その杭穴60位置(根固め部61位置)の根固め液を採取できる。この際、根固め液層62内で根固め液は均等に撹拌されているので、この根固め層62内の根固め液を採取したことになる。
【0033】
(4) 続いて、再度、地上68から操作ケーブル70を引き(第二引き操作)、係止ピン50の係止に抗して(強い力で引けば)、取付棒46から係止ピン50(係止ピン50の中間屈曲部53)が外れて、係止ピン50が外筒20の係止棒28に係止された状態で、採取具1の下端(外筒20の下端22)が取付板44の上面44aから離れ、取付板44から採取具1を分離でされる(図1(d)、図2(d)、図3(e))。
さらに、地上68から操作ケーブル70を引いて、採取具1を地上68まで引き上げる。この際、係止具1(内筒10)の採取開口16が露出したままであるが、内筒10内の根固め液の比重が大きいので、内筒10内に他の杭穴充填物が混入するおそれはない。杭穴60上部の杭穴内に満たされている杭周固定液(濃度の小さいセメントミルクやソイルセメントなど)は根固め液に較べると比重が相対的に小さいからである。
【0034】
(5) 地上68で、回収した採取具1の内筒10から採取した根固め液の比重、温度などの通常の測定を行う(図1(e)右上)。もし、根固め液の固化強度の不足が予想される場合には追加で根固め液を注入するなど対応策も容易となる。
【0035】
B.第二の実施形態
【0036】
1.採取具1の構成
【0037】
(1) 採取具1は、第一の実施形態と同様に、外筒20内に内筒10を軸方向に摺動可能に挿入して構成する。
【0038】
(2) 内筒10の構成は第一の実施形態と同じである(図8(c)(d)、図5(c)~(e)、図6(b)(c))。すなわち、内筒本体の底に大径の円形の大径底板12を、略同径となるように天板14で塞いでなり、上端部に採取開口16が形成され、ピストンリングのような密閉リング17、17を設けてある。また、
天板14の上面15に、固定突起18、18を取り付けてある。
【0039】
(3) 外筒20は、第一の実施形態から上端部を伸ばし、上部(上部内壁23)に内筒10の採取開口16に対応した取込開口31を形成する。
すなわち、第一の実施形態と同様に、上下が開口され、上部内壁23の内周は、内筒10の外周より若干小さく形成され、内筒10を挿入した際に、密閉リング17、17が常時弾性押圧するような径で形成され、外筒20の下部内壁24は、内筒20の大径底板12の外径より大きな径で形成されている。また、上部内壁23の径は、内筒10の大径底板12の外径よりも小さく形成され、上部内壁23と下部内壁24の境界に略水平のストッパー段部26が形成される。
また、第一の実施形態と同様に、外筒30の下部内壁34の下端部に直径方向の係止棒(係止部)28が固定してある。
外筒20の上部内壁23は、第一の実施形態の上部内壁23よりも上端部を伸ばして、かつ第一の実施形態の内筒10の採取開口と略同一の取込開口31を形成し、取込開口31の上方に封鎖部23aが形成されている。
外筒20内に内筒10を挿入した際に、内筒10が最も下がった状態(内筒10の下端が係止棒28に当接した状態。基本位置)で、内筒10の天板14の上面15が外筒20の取込開口31の下縁より下がった位置であることが望ましく、少なくとも内筒10の上側の密閉リング17が外筒20の取込開口31の下縁より下がった位置にあり、採取開口16が外筒20の上部内壁23に覆われ露出していないことが必要であり、そのように外筒20の取込開口31の高さ(外筒20の取込開口31の下縁と係止棒28の位置)が調整されている。
また、外筒20内に内筒10を挿入した際に、基本位置から内筒10を少し上昇させると、取込開口31と内筒10の採取開口16とが略位置する状態となり(採取位置)、この位置で、密閉リング17、17が上部内壁23に密着している(図8(c))。
外筒20内に内筒10を挿入した際に、内筒10が最も上がった状態(内筒10の大径底板12がストッパー段部26に係止している。再封鎖位置)で、内筒10の上側の密閉リング17が外筒20の上縁21より上がった位置であることが望ましく、そのように外筒20と内筒10の高さ(採取開口16の位置、密閉リング17、17、大径底板12の位置)が調整されている。
【0040】
(4) 外筒20に係止棒28を取り付ける前に、外筒20の底側(下部内壁24側)から内筒10の天板14側を挿入して、内筒10の密閉リング17、17が外筒20の上部内壁24に弾性的に当接して、内筒10の外面は外筒20の上部内壁23の内面との間に微小な隙間が形成される。続いて、外筒20の下端部に、直径方向に係止棒28を着脱自在に取り付ける。
内筒10の大径底板12の外周部13は、外筒20の下部内壁24の壁面との間でわずかな隙間が生じるが、外筒20の内壁のストッパー段部26に係止して、大径底板12が外筒20の上部には移動できないようになる。
以上のようにして、採取具1を構成する。
【0041】
2.既製杭40及び係止ピン50
【0042】
(1) 本発明の実施形態に使用する既製杭40は、前記第一の実施形態と同じである。すなわち、コンクリート製の既製杭40の下端板42の下面43に、同様の取付板44が固定されている(図1(c)~(e))。
【0043】
(2) 係止ピン50も前記第一の実施形態と同様の構成である(図7(b))。
【0044】
3.未固結試料の採取装置56の構成
【0045】
(1) 第一の実施形態と同様に、採取具1の内筒10の天板14の固定突起18、18に操作ケーブル(操作手段)70の先端を固定し、採取具1の下端部(外筒20)の係止棒28に、係止ピン50の上部円弧状部51を取り付ける。また、係止ピン50の直線部52を、既製杭40の取付棒46の縦貫通孔47に挿入すると共に、中間円弧部53を既製杭40(取付板44)の取付棒46に嵌装係止し、係止ピン50の下端部(直線部52の下端部、他側の下端屈曲部54)を取付板44の透孔45から下方に位置させる。この状態で、採取具1の下端(外筒20の下端22)は取付板44の上面44aに密着した状態で、安定して、取付板44に保持される。
この状態で、第一の実施形態と同様に採取装置56を構成する(図3(a))。既製杭40を杭穴60内に埋設する状態で、採取具1の内筒10と外筒20とは「基本位置」にある。
【0046】
4.未固結試料の採取装置56の動作
【0047】
(1) 第一の実施形態と同様に、杭穴60の根固め部61に根固め液の満たされた根固め層62が形成され、この杭穴60内に(図1(a)(b))、通常のように、既製杭40を埋設する(図1(c)、図3(a)(b))。この際、採取具1がこの位置まで「基本位置」を保つように、地上68から操作ケーブル70を順次を繰り出す。したがって、この状態で「基本位置」で採取具1は、根固め液層62の中にある(図1(c))。
【0048】
(2) 続いて、操作ケーブル70を地上68側に少し引いて(第一引き操作。係止ピン50の係止棒46との係止が外れないような力で)、係止ピン50を現状の位置のまま、内筒10のみを上昇させ採取開口16と外筒20の取込開口31とを一致させる。この位置を「採取位置」とする。
これにより、採取開口16から内筒10内に根固め液が流入して、内筒10内が根固め液で満たされ、その杭穴60位置(根固め部61位置)の根固め液を採取できる。
【0049】
(3) 続いて、再度、地上68から操作ケーブル70を少し引いて(第二引き操作)、内筒10を外筒20に対して上昇させ、内筒の採取開口16を外筒20の上部内壁23の封鎖部(上端部)23aに位置させて、採取開口16を封鎖する(再封鎖位置。図1(c)、図3(d)、図8(d))。
【0050】
(4) 続いて、前記第一の実施形態と同様に、再度、地上68から操作ケーブル70を引き、(第三引き操作)係止ピン50の係止に抗して(強い力で引けば)、取付棒46から係止ピン50(係止ピン50の中間屈曲部53)が外れて、係止ピン50が外筒20の係止棒28に係止された状態で、採取具1の下端(外筒20の下端22)が取付板44の上面44aから離れ、取付板44から採取具1を分離でされる(図3(e)、図1(d))。
さらに、地上68から操作ケーブル70を引いて、内筒10の採取開口16を封鎖した状態で、採取具1を地上68まで引き上げる。したがって、採取具1を杭穴60内で引き上げる際に、内筒10内の採取した根固め液に他の杭穴充填物が混入するおそれをより確実に防止できる。
【0051】
(5)地上68で、回収した採取具1から根固め液の各種測定を行い、さらにその後の対応は、前記第一の実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0052】
1 採取具
10 内筒
12 大径底板(内筒)
13 大径底板の外周部
14 天板(内筒)
15 天板の上面
16 採取開口(内筒)
17 密閉リング(内筒)
18 固定突起(内筒)
20 外筒
21 外筒の上端
22 外筒の下端
23 上部内壁(外筒)
23a 上部内壁の封鎖部(上端部)
24 下部内壁(外筒)
26 ストッパー段部(外筒)
28 係止棒(外筒)
31 取込開口(外筒)
40 既製杭
40a 既製杭の内壁
41 中空部
42 下端板
43 下端板の下面
44 取付板(取付部)
44a 取付板の上面
45 取付板の透孔
46 取付板の取付棒
47 取付板の取付棒の縦貫通孔
50 係止ピン(係止部)
56 採取装置
60 杭穴
61 杭穴の根固め部
62 根固め液層(未固結試料)
63 杭周固定液層(未固結試料)
65 掘削ロッド
66 掘削ヘッド
68 地上
70 操作ケーブル(操作手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8