(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021838
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】フレイル予防剤、並びに、フレイル予防のための医薬品及び飲食品
(51)【国際特許分類】
A61K 31/702 20060101AFI20240208BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20240208BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240208BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240208BHJP
A23L 33/125 20160101ALI20240208BHJP
【FI】
A61K31/702
A61P19/00
A61P21/00
A61P43/00 105
A23L33/125
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124965
(22)【出願日】2022-08-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.令和3年8月7日、松本大学で開催された「被験者募集説明会」にて発表。2.令和3年10月17日、株式会社市民タイムスが発行した「市民タイムス 令和3年10月17日付 日刊第16609号,第2面」にて発表。 3.令和3年11月11日、松本商工会議所(松本商工会館)で開催された「中信印刷工業会 11月例会」にて発表。 4.令和3年12月10日、中信印刷工業会が発行した「中信印刷工業会報 第588号,第▲2▼面-第▲4▼面」にて発表。 5.令和3年12月18日、松本大学で開催された「令和3年度 松本大学人間健康学部健康栄養学科 卒業研究発表会」にて発表。 6.令和3年12月22日、松本大学が発行した「松本大学学報 蒼穹2021.12Vol.145,第09頁」にて発表。 7.令和4年4月1日、大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)の「UMIN臨床試験登録システム(UMIN-CTR)」にて発表。 8.令和4年4月20日、松本大学同窓会が発行した「松本大学同窓会報フラップ第20号(通算38号)」にて発表。9.令和4年6月14日、日本予防医学会による「第19回 日本予防医学会学術総会の抄録集」にて発表。 10.令和4年6月25日、松本市中央公民館で開催された「第19回 日本予防医学会学術総会」にて発表。
(71)【出願人】
【識別番号】000118615
【氏名又は名称】伊那食品工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】509194471
【氏名又は名称】学校法人松商学園
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 幸司
(72)【発明者】
【氏名】白井 郁也
(72)【発明者】
【氏名】弘田 量二
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 由美子
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE05
4B018MD30
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4B018MD32
4B018MD67
4B018ME14
4B018MF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA01
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB21
4C086ZC52
(57)【要約】
【課題】手軽に摂取できて、歩行機能又は立ち上がり機能を維持又は改善することで、フレイル予防が可能な素材、医薬品及び飲食品を提供する。
【解決手段】本発明に係るフレイル予防剤は、アガロオリゴ糖を有効成分とする。また、本発明に係るフレイル予防のための医薬品及び飲食品は、何れも本発明に係るフレイル予防剤を含有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アガロオリゴ糖を有効成分とするフレイル予防剤。
【請求項2】
前記アガロオリゴ糖を有効成分として、歩行機能又は立ち上がり機能を維持又は改善することで、フレイルを予防すること
を特徴とする請求項1記載のフレイル予防剤。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のフレイル予防剤を含有すること
を特徴とするフレイル予防のための医薬品。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載のフレイル予防剤を含有すること
を特徴とするフレイル予防のための飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加齢に伴う、フレイル予防剤並びにフレイル予防のための医薬品及び飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国の平均寿命及び健康寿命は、例えば数十年前と比較して何れも延伸したが、平均寿命と健康寿命との差は殆ど変化していない。健康寿命の延伸度を平均寿命のそれよりも高め、健康に生活できる期間を延長していくことが重要である。そのためには、加齢に伴うフレイルやその前段階であるプレフレイルの状態にある者に対して適切な対処を行って、健康寿命を延長していくことが有効であり、手軽に経口摂取できて、運動機能、特に歩行機能又は立ち上がり機能の維持又は改善が可能な素材の開発が望まれる。
【0003】
寒天は、テングサ、オゴノリ等の紅藻海藻の構造多糖を抽出し、脱水乾燥したもので、主としてアガロース及びアガロペクチンから構成される。この寒天を酸又は酵素によって加水分解することで得られるアガロオリゴ糖(アガロビオース、アガロテトラオース、アガロヘキサオース、アガロオクタオース、アガロデカオース等)は、様々な生理活性を有することが知られている。一例として、特許文献1(特許第4007760号公報)には、アガロオリゴ糖には、アポトーシス誘発活性、制がん活性、活性酸素産生抑制活性、免疫調節活性等があり、例えば、アポトーシス誘発活性を利用することで、全身性エリテマトーデス、免疫介在性糸球体腎炎、多発性硬化症、膠原病等の自己免疫疾患、リウマチ等の疾患の治療又は予防に有用であることが記載されている。また、特許文献2(特許第6241644号公報)には、アガロオリゴ糖には、PPARγ(ペルオキシソーム増殖剤応答受容体γ)遺伝子の発現量の増加作用があり、基礎代謝向上効果及び筋肉疲労回復向上効果を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4007760号公報
【特許文献2】特許第6241644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2によれば、アガロオリゴ糖は、必ずしも何らかの疾患を有していない状態であっても、基礎代謝を向上させて脂肪の蓄積を抑制したり、血中の乳酸の蓄積を抑制して疲労回復を向上させたりして、日常の健康維持に寄与するものであることが分かる。しかしながら、特許文献2では、健常成人を被験者として、アガロオリゴ糖を単回摂取し、比較的短期的一時的な効果を確かめている。これに対して、加齢に伴うフレイルやその前段階であるプレフレイルの状態にある者は、健康な状態と要介護状態の中間に位置して慢性的に身体的機能が低下しているかこれに準ずる状態であり、このような状態の者に対して、アガロオリゴ糖が、身体的機能、特に長期的持続的に歩行機能又は立ち上がり機能へ与える影響に関しては一切解明されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、手軽に摂取できて、歩行機能又は立ち上がり機能を維持又は改善することで、フレイル予防が可能な素材、医薬品及び飲食品を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0008】
本発明に係るフレイル予防剤は、アガロオリゴ糖を有効成分とすることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るフレイル予防剤は、前記アガロオリゴ糖を有効成分として、歩行機能又は立ち上がり機能を維持又は改善することで、フレイルを予防できる。
【0010】
また、本発明に係るフレイル予防のための医薬品は、本発明に係るフレイル予防剤を含有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るフレイル予防のための飲食品は、本発明に係るフレイル予防剤を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、本剤、本医薬品、又は本飲食品を摂取することで、長期的持続的に歩行機能又は立ち上がり機能を維持又は改善できる。従って、加齢等に伴う、プレフレイルからフレイルへの移行を防止し、又は、フレイルの進行を防止すること(抑制すること)で、フレイルを予防できる。その結果、フレイルにあっては要介護状態予防効果、プレフレイルにあってはフレイル予防効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、「フレイル」の概念は、身体的側面、精神的側面、及び社会的側面が含まれることがあるが、本願では、「フレイル」を、特に身体的側面に着目して、少なくとも身体的機能が低下しているかこれに準ずる状態として捉え、「プレフレイル」もその前段階と捉える。また、本願でいう「フレイル予防」とは、プレフレイルからフレイルへの移行を防止すること、及び、フレイルの進行を防止すること(抑制すること)を含む。
【0015】
本実施形態に係るフレイル予防剤は、アガロオリゴ糖を有効成分とする。
【0016】
アガロオリゴ糖は、市販品のアガロ(寒天)オリゴ糖その他のアガロオリゴ糖を使用できるが、例えば寒天を酸又は酵素によって加水分解することで製造できる。寒天は、前述の通り、主としてアガロース及びアガロペクチンから構成される。アガロースは、交互に結合したD-ガラクトピラノースと3,6-アンヒドロ-L-ガラクトピラノースとを主構造とする中性多糖であり、D-ガラクトピラノースの1位と3,6-アンヒドロ-L-ガラクトピラノースの4位とがβ-グリコシド結合で、また、3,6-アンヒドロ-L-ガラクトピラノースの1位とD-ガラクトピラノースの3位とがα-グリコシド結合で結合している。アガロペクチンも、アガロースと同様の結合様式を有しているが、部分的に官能基を含む酸性多糖である。
【0017】
アガロオリゴ糖は、D-ガラクトピラノースと3,6-アンヒドロ-L-ガラクトピラノースとからなる二糖のアガロビオースの繰り返し単位からなるオリゴ糖であり、重合度は二糖単位の偶数を示す。アガロオリゴ糖としては、最小単位であって二糖のアガロビオース、四糖のアガロテトラオース、六糖のアガロヘキサオース、八糖のアガロオクタオース、十糖のアガロデカオース等が含まれる。本願で規定する「アガロオリゴ糖」は、これらの糖化合物からなる群より選択される少なくとも1種の糖化合物を含むことを要件とする。
【0018】
加水分解に使用される酸及び酵素の種類は限定されないが、例えば、酸としては、硫酸や塩酸等の無機酸、酢酸やクエン酸等の有機酸、その他、陽子供与体として働く固体酸(例えば、酸性白土、ゼオライト、シリカ・アルミナ、陽イオン交換樹脂、陽イオン交換繊維、陽イオン交換膜等)等を使用することができる。
【0019】
なお、加水分解されて生じたアガロオリゴ糖の組成は、例えば高速液体クロマトグラフィを含む液体クロマトグラフィにより分析できる。サイズ排除クロマトグラフィ用カラム(SECカラム)等の所定のカラムを使用して所定の条件でアガロオリゴ糖を分離し、示唆屈折率検出器(RI)、紫外可視分光検出器(UV)、蛍光検出器、電気化学検出器、蒸発光散乱検出器等を使用して検出できる。その結果、加水分解物からアガロビオース、アガロテトラオース、アガロヘキサオース、アガロオクタオース、アガロデカオース等を検出できる。
【0020】
こうして製造されるアガロオリゴ糖に、長期的持続的歩行機能維持・改善効果及び長期的持続的立ち上がり機能維持・改善効果を有することが新たに見出された。すなわち、プレフレイルに該当する高齢者を被験者として、アガロオリゴ糖含有錠剤又はプラセボ錠剤を12週に亘って継続摂取したところ、プラセボ群と比較して、椅子からの立ち上がり動作及び椅子への腰掛け動作並びに方向転換を含む歩行速度の有意な改善が認められた(実施例参照)。これまで、アガロオリゴ糖のPPARγ遺伝子発現向上効果による比較的短期的一時的な疲労回復向上効果は知られていたが(特許文献2)、長期的持続的な歩行機能維持・改善効果及び長期的持続的な立ち上がり機能維持・改善効果を発揮することは新しい知見である。当該効果が長期的持続的に発現することは、慢性的に身体的機能が低下している又はこれに準ずる状態に対して最適であり、加齢等に伴う、プレフレイルからフレイルへの移行を防止し、又は、フレイルの進行を防止すること(抑制すること)で、フレイルを予防できる。その結果、フレイルにあっては要介護状態予防効果、プレフレイルにあってはフレイル予防効果がもたらされる。
【0021】
なお、ここでの「長期的持続的な効果」は、例えば単回摂取又は比較的短期的な摂取による比較的短期的且つ一時的な効果との対比で、例えば複数回摂取又は連用(比較的長期的な摂取)による比較的長期的且つ持続的な効果を表す。
【0022】
また、ここでの「立ち上がり機能」は、椅子等からの立ち上がり機能及び椅子等への腰掛け機能を含むが、「特許請求の範囲」等では、単に「立ち上がり機能」と略記している。
【0023】
ここで、作用機序としては、PPARγ遺伝子発現向上効果による基礎代謝の向上で筋力が向上したことによると推測されたが、実際には被験者の筋力及び筋肉量は試験前後で殆ど変化なかった。従って、身体的機能が低下している又はこれに準ずる状態にあって筋力及び筋肉量が維持されることには、アガロオリゴ糖のPPARγ遺伝子発現向上効果の寄与が考えられるものの、歩行機能維持・改善効果及び立ち上がり機能維持・改善効果には、アガロオリゴ糖の抗酸化作用、抗炎症作用等の既に知られた及び未だ知られていない様々な生理活性作用が相互に影響しているものと考えられ、既に公知の個々の作用からは予測困難な特性である。
【0024】
また、本実施形態に係るフレイル予防剤の形態は特に限定されない。寒天の加水分解物は、有効成分であるアガロオリゴ糖を含有し、既に本実施形態に係るフレイル予防剤としての要件を備えているが、一例として、当該加水分解物を、凍結乾燥、噴霧乾燥等の一般的方法で脱水乾燥すると共に適宜粉砕又は破砕することで、散剤又は顆粒剤に成形できる。また、当該粉粒又は顆粒を賦形剤、滑沢剤、結合剤等と共に打錠することで錠剤に成形できる。その他、液剤やカプセル剤等に成形してもよい。このような形態にすることで、手軽に摂取できる。なお、加水分解物は、必要に応じてpHを調整したり、精製して夾雑物を除去する等の加工を施してもよい。こうした加工も、pH調整剤を添加したり、活性炭による吸着やフィルタによる濾過等といった一般的方法で行うことができる。
【0025】
また、本実施形態に係るフレイル予防のための医薬品及び飲食品は、本実施形態に係るフレイル予防剤を含有する。なお、ここでの「医薬品」は、医薬部外品も含む。本実施形態に係る医薬品及び飲食品の形態は特に限定されない。一例として、医薬品又は飲食品のうち保健機能食品等は、例えば、本剤である寒天の加水分解物に、適宜他の配合成分や、医薬品用添加物又は食品用添加物を配合して、上記のように、散剤、顆粒剤、錠剤、液剤又はカプセル剤等に成形してもよい。また、それ以外の飲食品は、例えば、本剤である粉粒又は顆粒をそのまま又は予め液状成分に溶解させて他の成分に添加し、ゼリー、キャンディー、グミ等の菓子や、ゲル状食品、嚥下食品、飲料等に調理加工してもよい。このような形態にすることで、より手軽に摂取できる。
【実施例0026】
表1の配合で、アガロオリゴ糖含有錠剤(アガロオリゴ糖含有量:500mg/6錠)及びプラセボ錠剤を製造した。表1の配合で各粉体成分を混合し、打錠機(菊水製作所社製)を使用して錠剤を製造した。打錠は、直径7mmの碁石型杵を使用し、1錠当たり0.19gで行った。また、アガロオリゴ糖含有錠剤のアガロオリゴ糖には、市販の粉体品(商品名:「アガオリゴ」シオノギヘルスケア社製)を使用した。当該市販品を高速液体クロマトグラフを使用して分析し、アガロビオース、アガロテトラオース、アガロヘキサオース、アガロオクタオース、及びアガロデカオース由来のピークを確認した。
【0027】
【0028】
(試験1:10m歩行テスト)
国立研究開発法人国立長寿医療研究センターが改定した「2020年改定 日本版CHS基準(J-CHS基準)」に沿ってプレフレイルに該当した65歳以上の高齢者8名を被験者として、並行群間比較試験を実施した。試験群(実施例1)はアガロオリゴ糖含有錠剤を、対照群(比較例1)はプラセボ錠剤を、それぞれ1日6錠、12週間継続して摂取し、本試験では、10mの歩行速度を測定して評価する「10m歩行テスト」を行った。
【0029】
10m歩行テストは、先ず床面に10m間隔の境界線を設置し、更に両境界線の外側に3m間隔の境界線をそれぞれ設置し、10mの定速歩行路及び前後3mずつの予備路からなる計16mの歩行路を設置した。当該歩行路の一方をスタート側、他方をゴール側に設定した。次いで、被験者が、予備路のスタート地点にて、静止立位で待機した状態から普段歩行する速度で歩行し始め、先行する足が定速歩行路のスタート線を踏むか超えるかした段階で、ストップウォッチによる測定を開始した。その後、被験者の先行する足が定速歩行路のゴール線を踏むか超えるかした段階で、測定を終了した。被験者は、測定の終了に関わらず、そのまま予備路のゴール地点まで歩行を続けた後、停止した。測定は、各被験者につき計2回実施してその平均値を当該被験者の歩行時間[s]とし、更に各被験者の平均値を該当群における歩行時間[s]とした。この10m歩行テストを、錠剤摂取前、錠剤摂取開始から4週間経過後、8週間経過後、及び12週間経過後の計4回実施した。歩行時間[s]から歩行速度[m/s]を算出し、各時点の歩行速度[m/s]を、錠剤摂取前の歩行速度[m/s]との差分(Δ10m歩行速度[m/s])で表して、群間で比較すると共に「対応なしt検定」を実施した。
図1に結果を示す。
【0030】
図1に示すように、アガロオリゴ糖含有錠剤を摂取した実施例1では、摂取開始から4週間経過後、8週間経過後、及び12週間経過後の何れの時点においても、摂取開始前と比較した歩行速度の上昇幅がプラセボ錠剤を摂取した比較例1よりも大きく、8週間経過後(P=0.012)で有意に大きくなった(P<0.05)。このことから、アガロオリゴ糖による長期的持続的歩行機能改善効果が認められた。なお、比較例1におけるΔ10m歩行速度[m/s]の上昇はプラセボ効果と考えられる。
【0031】
(試験2:TUG歩行テスト)
試験1と同被験者に対して、同条件に、すなわち、試験群(実施例2)はアガロオリゴ糖含有錠剤を、対照群(比較例2)はプラセボ錠剤を、それぞれ1日6錠、12週間継続して摂取し、本試験では、椅子からの立ち上がり動作、歩行、方向転換、椅子への腰掛け動作を含む一連の動作速度を測定して評価する「TUG歩行テスト」(timed up & go test)を行った。
【0032】
TUG歩行テストは、先ず椅子を設置し、更に椅子の前方3mの地点に目印のロードコーンを設置した。次いで、被験者が、両足を床に接地して椅子に腰掛けた状態から立ち上がり、普段歩行する速度でロードコーンに向かって歩行し、ロードコーンを回った後、元の椅子に向かって歩行し、椅子に腰掛ける動作を行った。この動作の中で、被験者の身体の一部が動き出した時から、元の椅子に戻ってお尻が椅子に接地するまでの時間を、ストップウォッチにより測定した。測定は、各被験者につき計2回実施してその平均値を当該被験者の測定時間[s]とし、更に各被験者の平均値を該当群における測定時間[s]とした。このTUG歩行テストも、試験1と同タイミングで、すなわち、錠剤摂取前、錠剤摂取開始から4週間経過後、8週間経過後、及び12週間経過後の計4回実施した。各時点の測定時間[s]を、錠剤摂取前の測定時間[s]との差分(ΔTUG時間[s])で表して、群間で比較すると共に「対応なしt検定」を実施した。
図2に結果を示す。
【0033】
図2に示すように、アガロオリゴ糖含有錠剤を摂取した実施例2では、摂取開始から4週間経過後、8週間経過後、及び12週間経過後の何れの時点においても、摂取開始前と比較した歩行時間の短縮幅がプラセボ錠剤を摂取した比較例2よりも大きく、4週間経過後(P=0.016)及び8週間経過後(P=0.021)で有意に大きくなった(P<0.05)。このことから、アガロオリゴ糖による長期的持続的歩行機能及び立ち上がり機能改善効果が認められた。なお、比較例2でのΔTUG時間[s]の短縮はプラセボ効果と考えられる。