(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021843
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】繊維用染色剤組成物及び染色方法
(51)【国際特許分類】
D06P 1/32 20060101AFI20240208BHJP
D06M 13/342 20060101ALI20240208BHJP
D06M 15/03 20060101ALI20240208BHJP
D06M 11/11 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
D06P1/32
D06M13/342
D06M15/03
D06M11/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124971
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安永 秀計
(72)【発明者】
【氏名】松山 裕吾
【テーマコード(参考)】
4H157
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4H157AA01
4H157AA02
4H157BA03
4H157BA22
4H157CA07
4H157CA29
4H157CB13
4H157CB18
4H157CB61
4H157DA01
4H157DA21
4H157DA33
4H157GA07
4H157HA03
4H157HA13
4H157JA10
4H157JB02
4L031AB01
4L031AB21
4L031BA07
4L031DA09
4L033AB01
4L033AB03
4L033AC15
4L033BA53
4L033CA02
(57)【要約】
【課題】安全性に優れ、且つより簡便な方法で行うことができる繊維用染色剤組成物及び染色方法を提供する。
【解決手段】糖、アミノ酸、並びに過ヨウ素酸若しくはその塩を含む繊維用染色剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖、アミノ酸、並びに過ヨウ素酸若しくはその塩を含む繊維用染色剤組成物。
【請求項2】
(A)前記糖及び前記アミノ酸を含む第1剤と、
(B)前記過ヨウ素酸若しくはその塩を含む第2剤と
を含む、請求項1に記載の繊維用染色剤組成物。
【請求項3】
前記糖が四炭糖、五炭糖、六炭糖、七炭糖、オリゴ糖及び多糖からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の繊維用染色剤組成物。
【請求項4】
前記アミノ酸が、下記(i)~(iii):
(i)α-炭素に2つの水素原子が結合しているアミノ酸、
(ii)側鎖アルキル基の炭素数が1~3であるアミノ酸、並びに
(iii)アミノ基、アミノアルキル基、イミノ基及びイミノアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を側鎖に有するアミノ酸
からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の繊維用染色剤組成物。
【請求項5】
pHが3~8の水溶液である、請求項1に記載の繊維用染色剤組成物。
【請求項6】
さらに、有機酸を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の繊維用染色剤組成物。
【請求項7】
繊維の染色方法であって、
糖、アミノ酸、並びに過ヨウ素酸若しくはその塩の存在下で繊維を処理する工程を含む、方法。
【請求項8】
処理温度が40℃以上55℃未満である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
処理時間が4時間未満である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記工程がさらに有機酸の存在下で行われる、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維用染色剤組成物及び染色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、人毛の染色(染毛)には、天然由来の原料を用いた染料と比較して、安価で、多様な毛髪色が得られることから、合成染料が多用されている。なかでも、合成染料前駆体が酸化剤によって発色されるメカニズムを利用する酸化染毛剤は、染色性及び堅ろう性が高く、比較的短時間で染色可能で、濃色の毛髪であっても明るい色に染色できることから、最も多く使用されている。しかしながら、このような酸化染毛剤によって、皮膚のかぶれ等の疾病が発生する事例が数多く報告されており、安全性の観点から問題がある。このため、人体への影響が小さく、安全性の高い繊維用染色剤(染色料)及び染色方法が切望されている。
【0003】
このような状況のもとで、本発明者らは、合成染料を使用しない新しい染毛剤及び染毛方法を開発し、既に報告している(非特許文献1参照)。非特許文献1に記載の染毛剤はD-キシロース、アミノ酸及び有機酸を用いるものである。非特許文献1に記載のD-キシロース、アミノ酸及び有機酸は、いずれも天然由来物質であり、人体への負荷が小さく、酸化染毛剤よりも安全性が高い。
【0004】
しかしながら、非特許文献1に記載の染毛剤では、染毛処理に高温を要し、しかも処理時間が長時間に及ぶことから、実用的なレベルではなく、満足できるものとは言えなかった。
【0005】
したがって、安全面で優れ、染色処理を短時間且つ低温でより簡便に行うことができる繊維用染色剤組成物及び染色方法の提供が望まれてきた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】安永秀計,“バイオベースマテリアルを用いた人体によりより安全な染毛法の開発”,コスメトロジー研究報告,2017年9月1日,25,pp.34-39
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、安全に優れ、且つより簡便な方法で行なうことができる繊維用染色剤組成物及び染色方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討を重ねるうち、非特許文献1に記載の有機酸に代えて、過ヨウ素酸若しくはその塩を配合することにより、染色処理に要する温度条件が緩和され、しかも染色処理時間も短縮でき、本発明の目的が達成できることを見出した。
【0009】
かかる知見の下に、本発明者らが更に研究を続けたところ、D-キシロースの代わりに広く知られている各種の糖を用いることによっても、本発明の目的が同様に達成されることを見出した。本発明は、かかる知見に基づき完成されたものである。すなわち、本発明は、以下の構成を包含する。
【0010】
項1.糖、アミノ酸、並びに過ヨウ素酸若しくはその塩を含む繊維用染色剤組成物。
【0011】
項2.(A)前記糖及び前記アミノ酸を含む第1剤と、
(B)前記過ヨウ素酸若しくはその塩を含む第2剤と
を含む、項1に記載の繊維用染色剤組成物。
【0012】
項3.前記糖が四炭糖、五炭糖、六炭糖、七炭糖、オリゴ糖及び多糖からなる群より選ばれる少なくとも1種である、項1又は2に記載の繊維用染色剤組成物。
【0013】
項4.前記アミノ酸が、下記(i)~(iii):
(i)α-炭素に2つの水素原子が結合しているアミノ酸、
(ii)側鎖アルキル基の炭素数が1~3であるアミノ酸、並びに
(iii)アミノ基、アミノアルキル基、イミノ基及びイミノアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を側鎖に有するアミノ酸
からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、項1~3のいずれか1項に記載の繊維用染色剤組成物。
【0014】
項5.pHが3~8の水溶液である、項1~4のいずれか1項に記載の繊維用染色剤組成物。
【0015】
項6.さらに、有機酸を含む、項1~5のいずれか1項に記載の繊維用染色剤組成物。
【0016】
項7.繊維の染色方法であって、
糖、アミノ酸、並びに過ヨウ素酸若しくはその塩の存在下で繊維を処理する工程を含む、方法。
【0017】
項8.処理温度が40℃以上55℃未満である、項7に記載の方法。
【0018】
項9.処理時間が4時間未満である、項7又は8に記載の方法。
【0019】
項10.前記工程がさらに有機酸の共存下で行われる、項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、糖、アミノ酸並びに過ヨウ素酸若しくはその塩を組み合わせることで、安全面で優れ、実用的なレベルでの染色が可能になった。具体的には、従来の染色剤及び染色方法よりも、より安全に且つより簡便に繊維を染色することができる。さらに、本発明によれば、より濃色に染色することができる。また、本発明は、化石資源に頼る必要がなく、原料である糖及びアミノ酸が安価に持続的に得られる点で、工業的に優れている。
【0021】
非特許文献1に記載の方法では、使用できる糖はD-キシロース又はD-リボースに限られており、食品分野で広く用いられているグルコース、フルクトース等の一般的な糖を用いても十分な染色性が達成できなかった。これに対して、本発明では、D-キシロース及び/又はD-リボースに限られず、グルコース、フルクトース等の一般的な糖であっても、本発明の効果が発現される。
【0022】
本発明の染色剤組成物は、糖及びアミノ酸の他に、過ヨウ素酸若しくはその塩を使用することを必須としている。過ヨウ素酸若しくはその塩以外の公知の酸化剤では、本発明の効果を発揮することができない。
【0023】
また、本発明の染色剤組成物は、上記3成分の他に、有機酸をさらに含有させることにより、染色性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施例2の白髪人毛の測色結果のグラフを示す。縦軸は明度L
*、横軸は過ヨウ素酸ナトリウムの添加量mである。
【
図2】実施例3の白髪人毛の測色結果のグラフを示す。縦軸は明度L
*、横軸は温度Tである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。
【0026】
本明細書において、数値範囲をA~Bで表記する場合、A以上B以下を示す。
【0027】
1.繊維用染色剤組成物
本発明の繊維用染色剤組成物は、糖、アミノ酸、並びに過ヨウ素酸若しくはその塩を含む。
【0028】
本発明の繊維用染色剤組成物は、より好適な一態様において、
(A)糖及びアミノ酸を含む第1剤と、
(B)過ヨウ素酸若しくはその塩を含む第2剤とを含む。
【0029】
このような二剤式を採用した場合、染色処理前の色素の生成を抑制できることから、繊維用染色剤組成物の保存性を向上させることができる。
【0030】
(A)第1剤
上記第1剤は、糖及びアミノ酸を含む。上記第1剤に過ヨウ素酸若しくはその塩を含む第2剤を配合することによって、後述する通り、糖として、上記非特許文献1では使用できなかった広範な化合物を使用することができる。
【0031】
(A-1)糖
糖としては、特に制限されず、公知の糖をいずれも広く使用することができる。本発明で使用できる糖は、従来のD-キシロース及びD-リボースに限られず、広範な糖を使用することができる。糖としては、例えば、単糖、オリゴ糖、多糖等が挙げられる。
【0032】
単糖としては、特に制限はなく、例えば、グリセルアルデヒド等の三炭糖、エリトルロース、エリトロース、トレオース等の四炭糖、リブロース、キシルロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース等の五炭糖、ガラクトース、グルコース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、マンノース、フルクトース、アロース、タロース、グロース、アルトロース、イドース、プシコース、ソルボース、タガトース等の六炭糖、セドヘプツロース等の七炭糖等が挙げられる。
【0033】
オリゴ糖は、2分子(例えば2~20)以上の単糖がグリコシド結合により1分子に連結された糖である。オリゴ糖を構成する単糖としては、特に限定されず、上記に示した単糖を採用することができる。またオリゴ糖を構成する単糖の組み合わせも特に限定されない。オリゴ糖の具体例としては、例えば、ラクトース、Galβ(1→3)GalNAc、Galβ(1→4)GlcNAc、Galβ(1→6)GlcNAc、スクロース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオース等の二糖、ラフィノース、メレジトース、マルトトリオース等の三糖、アカルボース、スタキオース等の四糖等が挙げられる。
【0034】
多糖としては、例えば、アミロペクチン、アミロース、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等が挙げられる。
【0035】
糖としては、四炭糖、五炭糖、六炭糖、七炭糖、オリゴ糖及び多糖からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、四炭糖、五炭糖、六炭糖、七炭糖及びオリゴ糖からなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましく、四炭糖、五炭糖、六炭糖及び七炭糖からなる群より選ばれる少なくとも1種がさらに好ましい。
【0036】
糖は、それぞれL型及びD型いずれの光学異性体であってもよい。
【0037】
糖は、1種単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0038】
糖の含有量は、特に制限されず、染色性の観点から、染色剤組成物の質量(ただし、溶媒の質量を除く)を100質量%として、1~30質量%程度が好ましく、5~25質量%程度がより好ましく、10~20質量%程度がさらに好ましい。二種以上の糖を使用する場合は、その総量が上記範囲内となるように含有させることが好ましい。
【0039】
(A-2)アミノ酸
アミノ酸としては、特に制限されず、公知のアミノ酸を広く使用することができる。
【0040】
なかでも、アミノ酸としては、染色性の観点から、下記(i)~(iii):
(i)α-炭素に2つの水素原子が結合しているアミノ酸、
(ii)側鎖アルキル基の炭素数が1~3であるアミノ酸、並びに
(iii)アミノ基、アミノアルキル基、イミノ基及びイミノアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を側鎖に有するアミノ酸
からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、グリシン、β-アラニン、バリン、セリン及び/又はアルギニンがより好ましく、グリシン及び/又はβ-アラニンがさらに好ましい。
【0041】
なお、本明細書において、アミノ酸の側鎖とは、α-炭素に結合している1つのカルボキシル基及び1つのアミノ基以外の官能基を意味する。アミノ酸の側鎖としては、特に制限はなく、例えば、公知のアミノ酸の側鎖を広く使用することができる。
【0042】
上記(i)のアミノ酸としては、例えば、グリシン、β-アラニン等が挙げられ、また、上記(ii)のアミノ酸としては、例えば、α-アラニン、バリン、セリン等が挙げられる。本発明において、上記(i)及び/又は(ii)のアミノ酸、すなわち、アミノ基の近傍(例えば、アミノ基の1~3個隣の炭素)に嵩高い官能基(例えば、炭素数4以上のアルキル基、又はそれに相当する嵩高さを有する官能基)がないアミノ酸を用いることによって、側鎖の立体障害が小さいため、アミノ基の反応性が向上し、シッフ塩基とメラノイジン色素の生成が促進されることで生成染料が増加し、染色性が向上しやすい。
【0043】
上記(iii)のアミノ酸としては、例えば、アルギニン、トリプトファン、ヒスチジン、リシン等が挙げられる。本発明において、上記(iii)のアミノ酸を用いることによって、系中に存在するアミノ基及び/又はイミノ基の数が多いため、シッフ塩基の生成が促進されることで染色性が向上しやすい。
【0044】
上記アミノ酸の側鎖は、置換基を有していてもよい。置換基としては、特に制限はなく、例えば、水酸基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、チオール基等が挙げられる。なかでも、水酸基、アミノ基、イミノ基、又はチオール基が好ましく、水酸基、アミノ基、又はイミノ基がより好ましく、アミノ基、又はイミノ基がさらに好ましい。置換基を有する場合の置換基の数は、特に制限されず、1~3個が好ましく、1~2個がより好ましい。
【0045】
上記(ii)のアミノ酸の側鎖の炭素数としては、1又は3が好ましく、1がより好ましい。
【0046】
上記(iii)のアミノ酸の側鎖が有するアミノ基及び/又はイミノ基の数は、特に制限されず、1~3個が好ましく、1~2個がより好ましい。
【0047】
上記アミノ酸としては、上記(i)~(iii)のアミノ酸以外にも、(iv)その他のアミノ酸を用いることができる。(iv)その他のアミノ酸としては、例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、スレオニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、シスチン、メチオニン、チロシン、チロキシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、又はこれらの誘導体等が挙げられる。
【0048】
アミノ酸は、それぞれL型及びD型いずれの光学異性体であってもよい。
【0049】
アミノ酸は、α-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、δ-アミノ酸及びε-アミノ酸のいずれであってもよい。
【0050】
アミノ酸は、1種単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0051】
アミノ酸の含有量は、特に制限されず、染色性の観点から、染色剤組成物の質量(ただし、溶媒の質量を除く)を100質量%として、0.1~30質量%程度が好ましく、0.5~25質量%程度がより好ましく、10~20質量%程度がさらに好ましい。二種以上のアミノ酸を使用する場合は、その総量が上記範囲内となるように含有させることが好ましい。
【0052】
アミノ酸の含有量/糖の含有量(モル比)は、特に制限されず、染色性の観点から、0.1~50程度が好ましく、1~20程度がより好ましく、2~10程度がさらに好ましい。
【0053】
第1剤には、糖及びアミノ酸の他に、さらに水が含まれていてもよい。
【0054】
(B)第2剤
上記第2剤は、過ヨウ素酸若しくはその塩を含む。過ヨウ素酸若しくはその塩を上記化合物と配合することによって、低温、短時間で、且つ濃色に染色することができる。また、過ヨウ素酸若しくはその塩を上記化合物と配合することによって、上記糖として広範な糖を使用することが可能となる。
【0055】
過ヨウ素酸若しくはその塩は、糖に含まれる環を酸化開裂させ、ジアルデヒド系とすることでアミノ酸との反応を促進させ、シッフ塩基の生成量及び最終生成物であるメラノイジン色素の生成量を飛躍的に増加させるため、結果として染色性が向上する。
【0056】
(B-1)過ヨウ素酸若しくはその塩
本発明においては、過ヨウ素酸若しくはその塩を使用することが必須である。後述する実施例において示されるように、過ヨウ素酸若しくはその塩に代えて他の酸化剤(例えば、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム等)を使用した場合、本発明の課題を解決することができない。
【0057】
本明細書において、「過ヨウ素酸若しくはその塩」とは、HIO4で表されるメタ過ヨウ素酸若しくはその塩とH5IO6で表されるオルト過ヨウ素酸若しくはその塩を指す。
【0058】
過ヨウ素酸若しくはその塩としては、例えば、過ヨウ素酸(HIO4)の他、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)、過ヨウ素酸カリウム(KIO4)等の過ヨウ素酸のアルカリ金属塩が挙げられる。過ヨウ素酸若しくはその塩としては、染色対象(被染色物)が毛髪、酸に弱い繊維材料等の繊細な繊維である場合には、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム等のアルカリ金属塩が好ましい。
【0059】
過ヨウ素酸若しくはその塩は、1種単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0060】
過ヨウ素酸若しくはその塩の含有量は、特に制限されず、染色性、安全性の観点から、染色剤組成物(ただし、溶媒の質量を除く)の質量を100質量%として、0.001~5質量%程度が好ましく、1~5質量%程度がより好ましく、2~4質量%程度がさらに好ましい。二種以上の過ヨウ素酸若しくはその塩を使用する場合は、その総量が上記範囲内となるように含有させることが好ましい。
【0061】
過ヨウ素酸若しくはその塩の含有量/糖の含有量(モル比)は、特に制限されず、染色性の観点から、0.01~10程度が好ましく、0.1~5程度がより好ましく、0.5~1程度がさらに好ましい。
【0062】
第2剤には、過ヨウ素酸若しくはその塩の他に、さらに水が含まれていてもよい。
【0063】
(C)有機酸
本発明の繊維用染色剤組成物は、染色性の観点から、さらに有機酸を含むことが好ましい。
【0064】
上記有機酸とは、例えば、カルボン酸等の酸性を示す有機化合物が挙げられる。
【0065】
上記カルボン酸としては、特に制限されず、乳酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等のモノカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸等のジカルボン酸、クエン酸等のトリカルボン酸が挙げられる。なかでも、安全性と染色性の観点から、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等のリンゴ酸骨格を有するカルボン酸、及び乳酸が好ましく、リンゴ酸骨格を有するカルボン酸がより好ましく、クエン酸がさらに好ましい。
【0066】
有機酸は、それぞれL型及びD型いずれの光学異性体であってもよい。
【0067】
有機酸は、1種単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0068】
有機酸の含有量は、特に制限されず、染色性、安全性の観点から、染色剤組成物の質量(ただし、溶媒の質量を除く)を100質量%として、0.1~50質量%程度が好ましく、20~45質量%程度がより好ましく、30~41質量%程度がさらに好ましい。二種以上の有機酸を使用する場合は、その総量が上記範囲内となるように含有させることが好ましい。
【0069】
有機酸の含有量/糖の含有量(モル比)は、特に制限されず、染色性の観点から、0.1~50程度が好ましく、1~20程度がより好ましく、2~10程度がさらに好ましい。
【0070】
有機酸は、特に制限されず、(A)第1剤に含まれることが好ましい。
【0071】
(D)その他の条件
上記繊維用染色剤組成物のpHは3~8であることが好ましく、3~6がより好ましく、4~5がさらに好ましい。pHが上記範囲内であることにより、糖及びアミノ酸の反応により生成するシッフ塩基、並びに当該シッフ塩基に由来するメラノイジン色素の生成が促進され、繊維用染色剤組成物の染色性が向上し、より低温、より短時間で染色することができる。
【0072】
本発明の繊維用染色剤組成物の温度は、使用前(保存中又は保管中)に限って、通常30℃以下であり、1~30℃が好ましく、1~25℃がより好ましい。本発明の繊維用染色剤組成物がその使用前に高温にさらされた場合、メラノイジン色素及び又/はその会合体が生成することによって染色性が低下する。また、水溶形の製剤では、保存中に糖とアミノ酸の緩慢な反応が進行しないように、反応抑止のための保存料を添加することが好ましい。
【0073】
本発明の繊維用染色剤組成物の形態は、特に制限されず、例えば、粉末状、液状、乳液状、クリーム状、泡状等の、染毛剤の分野で公知の形態をいずれも採用できる。繊維用染色剤組成物が粉末状である場合、使用時に水に溶解させて使用することができる。繊維用染色剤組成物が水系の形態である場合、保存中の副反応を抑止するための保存料を含むことができる。
【0074】
本発明の繊維用染色剤組成物は、上記成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜添加剤を含むことができる。上記添加剤としては、例えば、調色剤、酸化防止剤、有機溶剤、乳化剤、油脂類、香料、増粘剤、界面活性剤、pH調整剤等が挙げられる。同様に、上記第1剤及び第2剤のそれぞれは上記添加剤を好適に含むことができる。
【0075】
本発明の繊維用染色剤組成物の染色対象(被染色物)は、染色剤組成物に含まれる上記成分と反応し得る繊維又は上記成分により生成する色素と反応し得る繊維である限り、特に制限されない。当該繊維としては、例えば、人毛、羊毛等の獣毛(ケラチン繊維)の他、絹、綿、ナイロン等が挙げられ、染色性の観点から、ケラチン繊維が好ましい。
【0076】
2.繊維用染色剤組成物の製造方法
本発明の繊維用染色剤組成物は、上記の各成分を公知の方法により混合して得ることができる。
【0077】
混合方法は、特に制限はなく、全ての成分を同時に混合することもできるし、各種成分を逐次的に混合することもできる。なかでも、染色性、保存性の観点から、上記二剤式を採用すること、即ち、上記(A)第1剤及び(B)第2剤のそれぞれを事前に調製し、これらを使用直前に混合して染色に供することが好ましい。
【0078】
3.染色方法
本発明の染色方法は、糖、アミノ酸、並びに過ヨウ素酸若しくはその塩の存在下で繊維を処理する工程を含むことによって、繊維を染色することができる。
【0079】
上記処理工程は、糖、アミノ酸、並びに過ヨウ素酸若しくはその塩を含む繊維用染色剤組成物で繊維を処理することが好ましい。処理方法としては、特に制限されず、繊維用染色剤の分野で公知の処理方法を採用することができ、例えば、浸漬法、付着法、ローラータッチ法、スプレー法等が挙げられる。
【0080】
上記処理の処理温度は、繊維の種類により異なるが、通常40℃以上55℃未満であり、40~52.5℃であることが好ましく、45~50℃であることがより好ましく、48.5~50℃がさらに好ましい。これらの記載は、本発明の染色方法において、繊維が人毛以外である場合に55℃以上100℃未満の処理温度を使用することを妨げない。
【0081】
上記処理の処理時間は、繊維の種類により異なるが、通常4時間未満であり、10分~2時間であることが好ましく、30分~1時間30分であることがより好ましく、58分~1時間15分がさらに好ましい。
【0082】
本発明の染色方法において、上記処理工程の前に、繊維、及び上記染色剤組成物の各成分を混合し、一定時間、上記処理温度未満の温度で保持しておくことが好ましい。保持時間としては、1分~60分が好ましく、5分~30分がより好ましく、10分~20分がさらに好ましい。
【0083】
上記処理後の繊維の色は、繊維の種類、染色剤組成物中の各各成分の仕込濃度、温度及び時間等の処理条件により異なるが、例えば、黄色、橙色、黄褐色、褐色、又は黒色に染色される。
【0084】
本発明の繊維用染色剤組成物及び染色方法の染色性は、染色後の上記繊維を、分光測色計(コニカミノルタCM-2600d及びCM-26d)で測色し、L*a*b*表色系(CIE1976)で繊維の色を数値化することで定量的に評価される。ここで、L*は明度、a*は赤-緑色度、b*は黄-青色度、C*は彩度を示す。C*は、C*={(a*)2+(b*)2}1/2で表される式により導出される。
【0085】
上記処理後の繊維のL*(明度)は、例えば、通常70以下であり、目的の色に応じて5~40程度であることが好ましい。
【0086】
上記処理後の繊維のa*(赤-緑色度)は、例えば、目的の色に応じて4~20程度である。
【0087】
上記処理後の繊維のb*(黄-青色度)は、例えば、目的の色に応じて0.5~50程度である。
【0088】
上記処理後の繊維のC*(彩度)は、例えば、目的の色に応じて2~50程度である。
【0089】
上記処理後の繊維のL*、a*、b*、及びC*は、染色対象が白髪人毛である場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。
【実施例0090】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
【0091】
[実施例1]
2.0 molkg-1のD-キシロース(15 g,2.0 M)及び4.0 molkg-1のβ-アラニン(18 g,4.0 M)を蒸留水50 gにそれぞれ溶解して得られた水溶液に、白髪人毛0.8 g(ビューラックス社)を浸漬した。そこに、所定の添加量の過ヨウ素酸ナトリウム(2.0 g,10 mM)を加え、室温で静置し、繊維用染色剤組成物を調製した。これを50 ℃で1時間15分振盪した後、30 ℃の蒸留水200 mlで、毛髪を10分間2回洗浄した。
【0092】
洗浄後に自然乾燥した毛髪を、分光測色計(コニカミノルタCM-26d)で測色し、L*a*b*表色系(CIE1976)で毛髪の色を数値化した。それぞれの試料を写真撮影した。写真はデジタルカメラを使用し、マニュアルモードで撮影した。撮影条件を記録し、染色後も同条件で同様に撮影した。
【0093】
[比較例1]
過ヨウ素酸ナトリウムを使用せず、また、振盪時間(処理時間)が4時間である以外は、実施例1と同様の方法で白髪人毛を染色した。
【0094】
実施例1及び比較例1における各毛髪試料の写真並びにL*、a*、b*及びC*値を表1に示す。比較例1の繊維用染色剤組成物では、毛髪試料の明度は、4時間の処理の後もほとんど変化しなかった。これに対して、実施例1の繊維用染色剤組成物では、短時間で染色することができた。
【0095】
【0096】
[実施例2]
過ヨウ素酸ナトリウム添加量(m)と染色性の関係
2.0 molkg-1のD-キシロース(15 g,2.0 M)、4.0 molkg-1のβ-アラニン(18 g,4.0 M)、及び、2.5 molkg-1のクエン酸(24 g,2.5 M)を蒸留水50 gにそれぞれ溶解して得られた水溶液に、白髪人毛0.8 g(ビューラックス社)を浸漬した。そこに、所定の添加量の過ヨウ素酸ナトリウム(0.5~3.0 g,2.3~14 mM)を加え、室温で静置し、繊維用染色剤組成物を調製した。これを50 ℃で1時間15分振盪した後、30 ℃の蒸留水200 mlで、毛髪を10分間2回洗浄した。
【0097】
洗浄後に自然乾燥した毛髪を、分光測色計(コニカミノルタCM-26d)で測色し、L*a*b*表色系(CIE1976)で毛髪の色を数値化した。それぞれの試料を写真撮影した。写真はデジタルカメラを使用し、マニュアルモードで撮影した。撮影条件を記録し、染色後も同条件で同様に撮影した。
【0098】
各染色条件における各毛髪試料の写真並びにL
*、a
*、b
*及びC
*値を表2に示し、過ヨウ素酸ナトリウム添加量(m)に対する明度L
*の変化の結果を
図1に示す。染毛前の白髪人毛の明度L
*が70程度であることから、上記繊維用染色剤組成物は、過ヨウ素酸ナトリウムを1.0 g以上含む場合に、短時間の染色時間でも優れた染色性を示した。なかでも、繊維用染色剤組成物が過ヨウ素酸ナトリウムを1.8 g含む場合に染毛後の毛髪の明度L
*を40以下とすることができ、さらに、2.0 g以上含む場合に30以下、2.5 g以上含む場合に20以下とすることができた。
【0099】
【0100】
[実施例3]
染色温度(T)と染色性の関係
過ヨウ素酸ナトリウムの添加量を2.0 g、染色温度を40.0~50.0 ℃とした以外は、実施例1と同様に染毛と測定を実施した。
【0101】
各染色条件における染色後の外観を表3に示し、明度L
*の測定結果を
図2に示す。上記繊維用染色剤組成物は、染色温度を48.5 ℃以上とした場合に短時間の染色時間でも毛髪を染色することができた。
【0102】
【0103】
以上の通り、過ヨウ素酸ナトリウムを含む繊維用染色剤組成物は、従来品よりも低温且つ短時間で毛髪を染色することができ、より実用的であることが明らかである。
【0104】
[実施例4]
酸化剤の適用範囲の検討
白髪人毛(株式会社ビューラックス社)ナイロン製バンドで結束し、1束の毛髪正味質量を計量した(過ヨウ素酸用:0.72 g、次亜塩素酸ナトリウム用:0.70 g、過酸化水素用:0.70 g)。毛髪の色を分光測色計(CM-26d)で測色し、L*a*b*表色系で数値化を行なった。試料はケント紙に固定して行なった。測定は、SAV(3mmΦ測定系)、SCIモード、D65光源、10°視野角、測定繰り返し回数:3回の条件で行ない、それぞれの試料の8箇所を測定した。統計処理のDixon法で外れた値がある場合はそれを除き、5点以上のデータを得て、そのL*、a*、b*値の各平均値を算出した。算出後のa*とb*値を用いてC*値を計算した。それぞれの試料の写真をデジタルカメラを使用してマニュアルモードで撮影した。
【0105】
2.0 molkg-1のD-キシロース(45.04 g,2.0 M)、4.0 molkg-1のβ-アラニン(53.45 g,4.0 M)、及び、2. 5molkg-1のクエン酸(72.05 g,2.5 M)を蒸留水150.15gに溶解した。得られた水溶液を、各毛髪試料の質量に対して103.5倍の質量分だけ量り取った(過ヨウ素酸:74.30 g、次亜塩素酸ナトリウム:71.88 g、過酸化水素:72.05 g)。それぞれの水溶液に各酸化剤(過ヨウ素酸二水和物:1.4872 g、次亜塩素酸ナトリウム五水和物:1.0437 g、過酸化水素水(35%):0.6175 g)を加え、室温で20分放置後に毛髪試料を浸漬し、50 ℃で75分振盪した。染色した毛髪を蒸留水200 mlに浸漬し、30 ℃で10分振盪して洗浄した。当該洗浄操作を2回行なった。毛髪試料を取り出し、遮光環境下、室温で自然乾燥した。毛髪試料を取り出した後の各染色処理液のpHを測定した。乾燥した毛髪試料の色を、染色前と同様にして測定した。また、毛髪試料の写真を撮影した。
【0106】
染色前後の各毛髪試料の写真並びにL*、a*、b*及びC*値を表4に示す。(オルト)過ヨウ素酸、次亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素のうち、過ヨウ素酸を含む染色剤だけが染色性に優れていた。過ヨウ素酸を含む染色剤は、毛髪試料が濃色に染めることができ、同条件の過ヨウ素酸ナトリウムを含む染色剤よりも明度(L*)が低い。これに対して、次亜塩素酸ナトリウム又は過酸化水素を使用した場合、処理後の毛髪試料の明度は、処理前の毛髪試料よりも高い。
【0107】
このように、本発明の効果は、過ヨウ素酸及びその塩を用いた場合にのみ得られることが明らかである。
【0108】
【0109】
[実施例5]
糖の適用範囲の検討
白髪人毛(株式会社ビューラックス社)ナイロン製バンドで結束し、1束の毛髪正味質量を計量した。毛髪の色を分光測色計(CM-26d)で測色し、L*a*b*表色系で数値化を行なった。試料はケント紙に固定して行なった。測定は、SAV(3mmΦ測定系)、SCIモード、D65光源、10°視野角、測定繰り返し回数:3回の条件で行ない、それぞれの試料の5箇所以上を測定した。統計処理のDixon法で外れた値がある場合はそれを除き、5点以上のデータを得て、そのL*、a*、b*値の各平均値を算出した。算出後のa*とb*値を用いてC*値を計算した。
【0110】
4.0 molkg-1のβ-アラニン、及び、2.5 molkg-1のクエン酸を蒸留水に溶解した。得られた水溶液を、各毛髪試料の質量に対して114.8倍の質量分msだけ量り取った。それぞれの水溶液にD-キシロース、D-グルコース、D-フルクトース、D-ガラクトース、D-マルトース又はスクロース([糖の分子量Mw]×2.0×50.0×ms)/91834)gを加え、溶解させた。アミロペクチンの系では、その繰り返し単位の数がD-キシロース及びD-グルコース等の系の仕込物質量(分子数)と等しくなるようにして測り取ってそれに蒸留水を加え、50 ℃程度に加熱して溶解させ、室温に戻した後にβ-アラニンとクエン酸を同じ濃度条件となるように所定量加えて溶解させた。それぞれの水溶液に過ヨウ素酸ナトリウム(2.0×ms)/91.834)gを加え、室温で20分放置後に毛髪試料を浸漬し、50 ℃で75分振盪した。染色した毛髪を蒸留水200 mlに浸漬し、30 ℃で10分振盪して洗浄した。当該洗浄操作を2回行なった。毛髪試料を取り出し、遮光環境下、室温で自然乾燥した。乾燥した毛髪試料の色を、染色前と同様にして測定した。
【0111】
染色前後の各毛髪試料の写真並びにL*、a*、b*及びC*値を表5に示す。用いた全ての糖で毛髪試料を濃褐色又は褐色に染色することができた。本発明の繊維用染色剤組成物は、従来のD-キシロース及び/又はD-リボースに限られず、一般的な他の単糖、二糖及び多糖であっても使用することができる。糖の化学構造及び分子量の違いによって、低温且つ短時間で、毛髪は様々な色に染色される。本発明の構成を備えることにより、水溶液で還元性を示す単糖類だけでなく、水溶液で還元性を示さない二糖類のスクロース及び多糖のアミロペクチンでも毛髪を染色することができた。
【0112】
【0113】
[実施例6]
有機酸の適用範囲の検討
クエン酸に代えて、有機酸として乳酸を用いたこと以外は、実施例2及び3と同様の方法でそれぞれ白髪人毛を染色した。その結果、乳酸でも染色できることを確認した。乳酸濃度が染色性に及ぼす影響を表6に示す。
【0114】