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  • 特開-ヒートシンク 図1
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  • 特開-ヒートシンク 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021844
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ヒートシンク
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20240208BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124972
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】松村 光気
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA11
5F136BA06
5F136CB07
5F136CB08
5F136DA27
5F136FA02
5F136FA03
(57)【要約】
【課題】出力が大きなポンプを必要とせず、冷却効率を向上できるヒートシンクを提供する。
【解決手段】本発明のヒートシンクは、電子部品の冷却器に用いられるヒートシンクであり、上記電子部品との当接面と反対側の面に冷媒流路が形成されたベースプレートと、上記ベースプレートに立設した複数のピンフィンと、を備える。
そして、上記ピンフィンが、上記冷媒流路に千鳥状に配置され、冷媒の流れ方向に貫通した孔を有することしたため、圧力損失を低減しながら表面積(伝熱面積)を増大させて冷却効率を向上させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の冷却器に用いられるヒートシンクであって、
上記電子部品との当接面と反対側の面に冷媒流路が形成されたベースプレートと、上記 ベースプレートに立設した複数のピンフィンと、を備え、
上記ピンフィンが、上記冷媒流路に千鳥状に配置され、冷媒の流れ方向に貫通した孔を有することを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
上記冷媒流路が、拡幅部及び/又は減幅部を有し、
上記拡幅部及び/又は減幅部に配置されたピンフィンは、少なくとも冷媒流路幅方向両端のピンフィンの孔が、上記冷媒流路を形成する側壁と平行に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
上記ピンフィンは、それぞれの孔の高さが同じであることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒートシンク。
【請求項4】
上記ピンフィンに形成された孔は、その径が上流側から下流側に向けて徐々に小さくなることを特徴とする請求項3に記載のヒートシンク。
【請求項5】
上記電子部品が、モータ駆動のインバータ用半導体チップであることを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンクに係り、更に詳細には、電子部品の冷却器の冷媒流路に用いられるヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
電動車のモータを駆動するインバータ用の半導体チップなどの電子部品は、駆動ユニットの深部に配置されることが多く、冷却水などの冷媒をポンプで循環させる冷却器によって冷却することが行われ、冷却器の冷媒流路にはヒートシンクが設けられて冷却効率の向上が図られる。
【0003】
ヒートシンクの冷却性能は、一般的にその体積(熱容量)、材料(熱伝導率)、及び表面積(伝熱面積)に依存するが、表面積が同じであってもその形状によって冷媒との熱交換効率が変わるので、ヒートシンク自体を大型化することなくその形状によって冷却効率を向上させることができる。
【0004】
特許文献1には、冷却用空気の流れを誘導する邪魔板部および仕切り板部を設け、板状フィンの間を流れる冷却空気の流速を下げて、フィン近傍の温度境界層が重なり合うようにすることで放熱効率を向上させたヒートシンクが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-205421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のヒートシンクにあっては、空気が邪魔板部や仕切り板部にぶつかるため圧力損失が大きく、冷媒に液体を用いると出力が大きなポンプを使用する必要があり、結果として冷却器の消費電力が増大すると共に大型化してしまう。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、出力が大きな電力消費量が大きいポンプを必要とせず、冷却効率を向上できるヒートシンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、冷媒流路にピンフィンを千鳥状に配置し、上記ピンフィンに冷媒の流れ方向に貫通した孔を形成することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明のヒートシンクは、電子部品の冷却器に用いられるヒートシンクであり、上記電子部品との当接面と反対側の面に冷媒流路が形成されたベースプレートと、上記ベースプレートに立設した複数のピンフィンと、を備える。
そして、上記ピンフィンが、上記冷媒流路に千鳥状に配置され、冷媒の流れ方向に貫通した孔を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、冷媒流路にピンフィンを千鳥状に配置して冷媒がピンフィンにぶつかるようにすると共に、冷媒の流れ方向に貫通した孔がピンフィンに形成されているので、圧力損失を低減しながら表面積(伝熱面積)を増大させて冷却効率を向上させることができるヒートシンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のヒートシンクの一例を示す斜視図である。
図2】本発明のヒートシンクをベースプレートの面外方向から見たときのピンフィンの配置状態の例を示す図である。
図3】冷媒流路の幅が変化する箇所に設けられたピンフィンの孔の向きの一例を示す図である。
図4】ピンフィン内で曲がった孔の一例を示す、ベースプレートと平行な面で切った断面図である。
図5】ピンフィンに形成された孔の形状の例を示す高さ方向に切った断面図である。
図6】ピンフィンの孔径が徐々に小さくなるヒートシンクを流れる冷媒の流速の分布状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のヒートシンクについて詳細に説明する。
本発明のヒートシンクは、電子部品の冷却器に用いられるヒートシンクであり、そのベースプレートが、発熱体である電子部品に当接して熱的に接続されている。
【0013】
ベースプレートの電子部品との当接面と反対側の面には冷媒流路が形成されており、電子部品の熱がヒートシンクを介して冷媒流路を流れる冷媒に移動して電子部品が冷却される。
【0014】
上記電子部品との当接面と反対側の面、すなわち、冷媒流路には複数のピンフィンが立設しており、これらのピンフィンが千鳥状に配置されている。
【0015】
千鳥状に配置とは、図2に示すように、冷媒の流れ方向奇数列目のピンフィンと偶数列目のピンフィンとが、列方向にずれて配置され、列方向と直交する行方向(冷媒の流れ方向)から見たとき、奇数列目のピンフィン間の隙間から偶数列目のピンフィンが見える配置をいう。
【0016】
具体的には、例えば、正三角形の各頂点にピンフィンがある基本パターンが連続した60度千鳥配置や、正方形の各頂点にピンフィンがある基本パターンが連続した45度千鳥配置などを挙げることができる。
【0017】
ピンフィンが千鳥状に配置されていることで、ヒートシンクの表面積が増大するだけでなく、列方向と直交する方向から流れる冷媒がピンフィンに必ずぶつかるので、冷媒の流れが層流のみである場合に比し、低温の冷媒がピンフィンの表面近傍に達するようになるので、熱交換が効率よく行われる。
【0018】
しかし、ピンフィン間の隙間を通過した冷媒のすべてが次の列のピンフィンにぶつかってしまうと、圧力損失が増大するので、冷媒を流すために出力が大きなポンプが必要になって、その消費電力も増大してしまう。
【0019】
本発明のヒートシンクは、冷媒流路に千鳥状に配置されたピンフィンが、冷媒の流れ方向に貫通した孔を有するため、ピンフィン間の隙間を通過した冷媒は、その一部がピンフィンにぶつからずに孔内を通過して圧力損失の増大を低減できると共に、上記孔によりピンフィンの表面積が増大して冷却性が向上する。さらに、孔を形成した分だけヒートシンクの体積が減り質量が減少するので軽量化できる。
【0020】
本発明において、「冷媒の流れ方向に貫通した孔」とは、その位置に流れる冷媒が、孔の入口から入り、孔内に滞留することなく出口から出ていくように開けられた孔をいう。
【0021】
すなわち、冷媒流路の幅が一定であり冷媒が一方向に流れる場合は、冷媒流路の幅方向と直交する方向に貫通した孔であり、冷媒流路の幅が変化し、冷媒の流れが一定方向を向いていない場合は、その位置での冷媒の流れに沿った方向に貫通している孔である。
【0022】
ポンプから吐き出された冷媒は、ホースによってヒートシンクが設けられた冷媒流路に圧送される。ヒートシンクは、冷却する電子部品の大きさに合わせて形成するので、一般に、冷媒流路の幅は、ヒートシンクの上流側で拡がり、ヒートシンクの下流側でその幅が減少してホースと接続される。
【0023】
この冷媒流路の幅が拡がる拡幅部では冷媒の流れが扇状に拡がり、幅が減少する減幅部では、拡幅部とは逆に集まるので、拡幅部や減幅部では冷媒の流れが平行にならない。
【0024】
拡幅部や減幅部に配置するピンフィンは、図3に示すように、少なくとも冷媒流路幅方向両端のピンフィンに形成された孔が、冷媒流路の側壁と平行に形成されていることで、拡幅部や減幅部においても、冷媒が滞らずに流れて圧力損失を低減できる。
【0025】
上記冷媒流路内の冷媒流路の流れは、シュミュレーションによって解析できる。
また、ピンフィンに形成される孔は、ピンフィンをまっすぐ貫いている場合だけでなく、図4に示すように、その位置での冷媒の流れに合わせてピンフィン内で曲がっていてもよい。
【0026】
ピンフィンの形状としては、ベースプレートと平行な面で切ったときの断面形状が、円形や多角形の他、楕円形である柱形を挙げることができ、また、孔を冷媒の流れ方向と直交する面で切ったときの断面形状は、円形や多角形の他、楕円形などを挙げることができる。
【0027】
このような孔が形成されたピンフィンが立設したヒートシンクは、先ず、ピンフィンに孔を形成し、このピンフィンをベースプレートに溶接、圧入などによって後付けする方法や、先にピンフィンが立設したヒートシンクを鍛造や鋳造によって成型した後、ドリルなどでピンフィンに孔を形成する方法の他、3Dプリンタを用いる方法によって作製できる。
【0028】
また、ヒートシンクを構成する材料としては、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、鉄(Fe)等の金属やこれらの金属を含む合金の他、セラミックや樹脂なども使用できるが、熱伝導率の観点から金属であることが好ましい。
【0029】
また、本発明のヒートシンクは、ピンフィンに形成されたそれぞれの孔の高さが同じであることが好ましい。
【0030】
偶数列目のピンフィンを挟んで隣接する奇数列目のピンフィン同士や、奇数列目のピンフィンを挟んで隣接する偶数列目のピンフィン同士に形成された孔の高さが同じであることで、上流側ピンフィンの孔を通過した冷媒が、下流側ピンフィンの孔を通過し易くなって、圧力損失を低減できる。
【0031】
なお、奇数列目のピンフィンの孔を通過する冷媒の流れと、偶数列目のピンフィンの孔を通過する冷媒の流れとは、別の流れであるので、奇数列目のピンフィンの孔の高さと偶数列目のピンフィンの孔の高さとが異なっていても構わない。また、「孔の高さが同じ」とは、部品交差などによる若干のずれを排除する意味ではない。
【0032】
上記ピンフィンに形成された孔は、図5に示すように、一定の径であってもよいが、その径が冷媒流路の上流側から下流側に向けて徐々に小さくなっていることが好ましい。
【0033】
孔径が徐々に小さくなるピンフィンを並べた冷媒流路内の速度分布を図6に示す。
図6に示すように、孔径が徐々に小さくなることで、孔内を通過する冷媒の流速が速くなるので冷却効率が向上する。
【0034】
本発明のヒートシンクは、冷却効率に優れ、冷媒の圧力損失が低減されるので、モータ駆動のインバータ用半導体チップを冷却する冷却器に好適である。
【符号の説明】
【0035】
1 ベースプレート
11 拡幅部
12 減幅部
2 ピンフィン
21 孔
3 冷媒流路
31 側壁
32 ホース
100 電子部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6