(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021862
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】積層電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 201K
H01G4/30 515
H01G4/30 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125005
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】村上 拓
(72)【発明者】
【氏名】森ケ▲崎▼ 信人
(72)【発明者】
【氏名】有泉 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】永島 義崇
(72)【発明者】
【氏名】木村 仁士
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AD02
5E001AE04
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC33
5E082EE04
5E082EE05
5E082EE23
5E082EE35
5E082EE37
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ23
5E082PP03
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】クラックの発生を抑制することと、良好な温度特性を有しつつ信頼性を向上させることと、を両立させることができる積層電子部品を提供すること。
【解決手段】内側誘電体層と内部電極層とが交互に積層された内装領域と、内装領域の積層方向の外側に位置する外装領域と、を有する素子本体と、素子本体の表面に内部電極層と接続される一対の外部電極と、を有する積層電子部品であって、内側誘電体層および外装領域の外側誘電体層は、主相粒子が一般式ABO
3で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する主成分を含み、C
REが0.90モル部以上3.60モル部以下であり、C
Mが0.20モル部以上1.20モル部以下であり、C
Siが0.60モル部以上1.80モル部以下であり、内側誘電体層を構成する主相粒子の平均粒径をr1とし、外側誘電体層を構成する主相粒子の平均粒径をr2としたときに、r1およびr2は、r1<r2<r1×4.0の関係を満たす積層電子部品。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側誘電体層と内部電極層とが交互に積層された内装領域と、前記内装領域の積層方向の外側に位置する外装領域と、を有する素子本体と、
前記素子本体の表面に前記内部電極層と接続される一対の外部電極と、を有する積層電子部品であって、
前記内側誘電体層および前記外装領域の外側誘電体層は、主相粒子が一般式ABO3で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する主成分を含み、
前記内側誘電体層および前記外側誘電体層は、RE、MおよびSiを含む副成分を含み、
AはBa、SrおよびCaから選択される少なくとも1種であり、
BはTi、ZrおよびHfから選択される少なくとも1種であり、
REはYb、Y、Ho、Dy、Tb、GdおよびEuから選択される少なくとも1種であり、
MはMg、Mn、VおよびCrから選択される少なくとも2種であり、
前記内側誘電体層および前記外側誘電体層における前記主成分100モル部に対するRE2O3換算でのREの含有量CREが0.90モル部以上3.60モル部以下であり、
前記内側誘電体層および前記外側誘電体層における前記主成分100モル部に対するMO換算でのMの含有量CMが0.20モル部以上1.20モル部以下であり、
前記内側誘電体層および前記外側誘電体層における前記主成分100モル部に対するSiO2換算でのSiの含有量CSiが0.60モル部以上1.80モル部以下であり、
前記内側誘電体層を構成する前記主相粒子の平均粒径をr1とし、
前記外側誘電体層を構成する前記主相粒子の平均粒径をr2としたときに、
r1およびr2が、r1<r2<r1×4.0の関係を満たす積層電子部品。
【請求項2】
前記内部電極層の最外層の外表面から前記素子本体の外表面までの距離を2Lとし、
前記外装領域における前記内部電極層の近傍での前記主相粒子の平均粒径をraとし、
前記内部電極層の前記最外層の外表面と前記素子本体の外表面との中間地点での前記主相粒子の平均粒径をrbとし、
前記素子本体の外表面の近傍での前記主相粒子の平均粒径をrcとしたときに、
L、ra、rbおよびrcが、
(rb-ra)/L>0.00008および(rc-rb)/L>0.00008の関係を満たす請求項1に記載の積層電子部品。
【請求項3】
前記内側誘電体層を構成する前記主相粒子の粒径のSN比をSNRとし、
前記外装領域における前記内部電極層の近傍での前記主相粒子の粒径のSN比をSNRaとし、
前記内部電極層の前記最外層の外表面と前記素子本体の外表面との中間地点での前記主相粒子の粒径のSN比をSNRbとし、
前記素子本体の前記外表面の近傍での前記主相粒子の粒径のSN比をSNRcとしたとき、
SNR、SNRa、SNRbおよびSNRcが、
SNR>SNRa、SNR>SNRbおよびSNR>SNRcの関係を満たす請求項1に記載の積層電子部品。
【請求項4】
前記内側誘電体層を構成する前記主相粒子の断面上にREが固溶している固溶領域の面積割合が12%以上50%以下である請求項1に記載の積層電子部品。
【請求項5】
前記内側誘電体層を構成する前記主相粒子の少なくとも一部は、コア部と、前記コア部の周囲を覆い、REが固溶しているシェル部と、を有するコアシェル構造を有し、
前記内側誘電体層を構成し、なおかつ前記シェル部の平均厚みが5nm以上である前記主相粒子を特定主相粒子としたとき、
前記内側誘電体層における前記主相粒子に対する前記特定主相粒子の個数割合が、90%以上である請求項1に記載の積層電子部品。
【請求項6】
前記内側誘電体層および前記外側誘電体層に含まれるMのうち、最も含有量の多い元素をM1としたとき、
前記内側誘電体層および前記外側誘電体層における前記主成分100モル部に対するM1O換算でのM1の含有量CM1が0.40モル部以上0.90モル部以下である請求項1に記載の積層電子部品。
【請求項7】
前記内側誘電体層を構成する前記主相粒子の平均粒径(r1)が、180nm<r1<240nmの関係を満たす請求項1~6に記載の積層電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、積層セラミック電子部品において、内装領域に位置する第1誘電体粒子と外装領域に位置する第2誘電体粒子とで粒径を変化させることにより比誘電率を向上させる旨が記載されている。
【0003】
一方、昨今、市場からは、クラックの発生を抑制することと、良好な温度特性を有しつつ信頼性を向上させることとを両立させることが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされ、その目的は、クラックの発生を抑制することと、良好な温度特性を有しつつ信頼性を向上させることと、を両立させることができる積層電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る積層電子部品は、
内側誘電体層と内部電極層とが交互に積層された内装領域と、前記内装領域の積層方向の外側に位置する外装領域と、を有する素子本体と、
前記素子本体の表面に前記内部電極層と接続される一対の外部電極と、を有する積層電子部品であって、
前記内側誘電体層および前記外装領域の外側誘電体層は、主相粒子が一般式ABO3で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する主成分を含み、
前記内側誘電体層および前記外側誘電体層は、RE、MおよびSiを含む副成分を含み、
AはBa、SrおよびCaから選択される少なくとも1種であり、
BはTi、ZrおよびHfから選択される少なくとも1種であり、
REはYb、Y、Ho、Dy、Tb、GdおよびEuから選択される少なくとも1種であり、
MはMg、Mn、VおよびCrから選択される少なくとも2種であり、
前記内側誘電体層および前記外側誘電体層における前記主成分100モル部に対するRE2O3換算でのREの含有量CREが0.90モル部以上3.60モル部以下であり、
前記内側誘電体層および前記外側誘電体層における前記主成分100モル部に対するMO換算でのMの含有量CMが0.20モル部以上1.20モル部以下であり、
前記内側誘電体層および前記外側誘電体層における前記主成分100モル部に対するSiO2換算でのSiの含有量CSiが0.60モル部以上1.80モル部以下であり、
前記内側誘電体層を構成する前記主相粒子の平均粒径をr1とし、
前記外側誘電体層を構成する前記主相粒子の平均粒径をr2としたときに、
r1およびr2が、r1<r2<r1×4.0の関係を満たす。
【0007】
本発明に係る積層電子部品によれば、クラックの発生を抑制することと、信頼性を向上させることと、を両立させることができ、なおかつ良好な温度特性を達成することができる。
【0008】
具体的には、本発明に係る積層電子部品は外装領域の硬度が高い、すなわち外装領域の力学的強度が高いため、外的衝撃や電歪などによるクラックの発生を抑制することができる。
【0009】
また、信頼性は、たとえば高温負荷寿命を測定することにより確認することができる。すなわち、高温負荷寿命が長い程、信頼性が良好であると判断することができる。
【0010】
前記内部電極層の最外層の外表面から前記素子本体の外表面までの距離を2Lとし、
前記外装領域における前記内部電極層の近傍での前記主相粒子の平均粒径をraとし、
前記内部電極層の前記最外層の外表面と前記素子本体の外表面との中間地点での前記主相粒子の平均粒径をrbとし、
前記素子本体の外表面の近傍での前記主相粒子の平均粒径をrcとしたときに、
L、ra、rbおよびrcが、
(rb-ra)/L>0.00008および(rc-rb)/L>0.00008の関係を満たすことが好ましい。
【0011】
これにより、外装領域の硬度がより高くなる。
【0012】
前記内側誘電体層を構成する前記主相粒子の粒径のSN比をSNRとし、
前記外装領域における前記内部電極層の近傍での前記主相粒子の粒径のSN比をSNRaとし、
前記内部電極層の前記最外層の外表面と前記素子本体の外表面との中間地点での前記主相粒子の粒径のSN比をSNRbとし、
前記素子本体の前記外表面の近傍での前記主相粒子の粒径のSN比をSNRcとしたとき、
SNR、SNRa、SNRbおよびSNRcが、
SNR>SNRa、SNR>SNRbおよびSNR>SNRcの関係を満たすことが好ましい。
【0013】
これにより、高温負荷寿命がより良好になる。SN比は大きいほどばらつきが小さいことを意味する。したがって、SNR、SNRa、SNRbおよびSNRcが、SNR>SNRa、SNR>SNRbおよびSNR>SNRcを満たすということは、内側誘電体層を構成する主相粒子の粒径のばらつきが、外側誘電体層を構成する主相粒子の粒径のばらつきに比べて小さいことを意味する。
【0014】
内装領域は電気特性に寄与し、主相粒子の粒径のばらつきが小さい程、高温負荷寿命が向上する。一方、外装領域は電気特性に寄与しない。したがって、内側誘電体層を構成する主相粒子の粒径のばらつきが、外側誘電体層を構成する主相粒子の粒径のばらつきに比べて小さいことにより、高温負荷寿命がより良好になる。
【0015】
前記内側誘電体層を構成する前記主相粒子の断面上にREが固溶している固溶領域の面積割合が12%以上50%以下であることが好ましい。
【0016】
内側誘電体層を構成する主相粒子にREが固溶している領域(以下では「RE固溶領域」と記載することもある)の面積割合が12%以上50%以下であることにより、温度特性と高温負荷寿命がより良好になる。RE固溶領域の面積割合が12%以上であることにより抵抗がより高くなり、その結果、高温負荷寿命がより良好になる。これは、抵抗が高くなることにより、高電界下で局所的に電流密度が高くなることを防ぎ、その結果、故障を抑制できるためであると考えられる。一方で、RE固溶領域の面積割合が50%以下である場合には主成分に対するRE固溶領域の面積割合が高過ぎないため、より良好な温度特性を得ることができる。
【0017】
前記内側誘電体層を構成する前記主相粒子の少なくとも一部は、コア部と、前記コア部の周囲を覆い、REが固溶しているシェル部と、を有するコアシェル構造を有することが好ましく、
前記内側誘電体層を構成し、なおかつ前記シェル部の平均厚みが5nm以上である前記主相粒子を特定主相粒子としたとき、
前記内側誘電体層における前記主相粒子に対する前記特定主相粒子の個数割合が、90%以上であることが好ましい。
【0018】
シェル部の平均厚みが5nm以上であることにより、抵抗がより高くなり、その結果、高電界下における内側誘電体層の劣化を抑制し易くなる。したがって、内側誘電体層における主相粒子に対する特定主相粒子の個数割合が90%以上であることにより、抵抗がより高くなり、その結果、高温負荷寿命がより良好になる。
【0019】
前記内側誘電体層および前記外側誘電体層に含まれるMのうち、最も含有量の多い元素をM1としたとき、
前記内側誘電体層および前記外側誘電体層における前記主成分100モル部に対するM1O換算でのM1の含有量CM1が0.40モル部以上0.90モル部以下であることが好ましい。
【0020】
REがAサイト元素を置換する場合にはドナー成分として主相粒子に固溶し、REおよびMがBサイト元素を置換する場合にはアクセプタ成分として主相粒子に固溶する。
【0021】
CM1が0.40モル部以上0.90モル部以下であることにより、焼結後の主相粒子の粒径ばらつきを抑えつつ、ドナー成分およびアクセプタ成分のバランスが取れるため高温負荷寿命がより良好になる。
【0022】
CM1が上記の範囲内である場合には、CM1が上記の範囲を下回る場合に比べて、粒界成分を十分に確保できるため、主相粒子の異常粒成長や粒径ばらつきを抑制することができ、その結果、高温負荷寿命がより向上する。
【0023】
また、CM1が上記の範囲内である場合には、CM1が上記の範囲を上回る場合に比べて、ドナー成分に対するアクセプタ成分の割合が多過ぎず、酸素欠陥を抑制できるため、高温負荷寿命がより向上する。
【0024】
前記内側誘電体層を構成する前記主相粒子の平均粒径(r1)が、180nm<r1<240nmの関係を満たすことが好ましい。
【0025】
r1が上記の範囲内にある場合には、r1が上記の範囲を上回る場合に比べて、高温負荷寿命および温度特性がより良好になる。これは、r1が上記の範囲内にある場合には、粒径が大きく成長し過ぎないことから内装領域で層間粒子数を多く稼げるため高温負荷寿命がより良好になるためであると考えられる。また、r1が上記の範囲内にある場合には、主成分の原料粉末が大きく粒成長し過ぎない、すなわち異常粒成長しないため、温度特性がより良好になると考えられる。
【0026】
r1が上記の範囲内にある場合には、r1が上記の範囲を下回る場合に比べて、高温負荷寿命および温度特性がより良好になる。これは、r1が上記の範囲内にある場合には、主相粒子に対してRE、Mおよび/またはSiが十分に固溶し、シェル部を形成するためであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A】
図1Aは、積層セラミックコンデンサの概略断面図である。
【
図1B】
図1Bは、
図1AのIB-IB線に沿う積層セラミックコンデンサの概略断面図である。
【
図3】
図3は、内装領域の内側誘電体層の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<
1.積層セラミックコンデンサ>
1.1 積層セラミックコンデンサの全体構成
本実施形態に係る積層電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサ2が
図1Aおよび
図1Bに示される。積層セラミックコンデンサ2は、素子本体4を有し、素子本体4は内装領域13と、外装領域15とを有する。内装領域13は、X軸およびY軸を含む平面に実質的に平行な内側誘電体層10と内部電極層12とを有し、内側誘電体層10と、内部電極層12と、がZ軸方向に交互に積層された構成である。外装領域15は内装領域13の積層方向(Z軸方向)の外側に位置する。
【0029】
ここで、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直である。
【0030】
また、「内側」は、積層セラミックコンデンサ2の中心により近い側を意味し、「外側」は、積層セラミックコンデンサ2の中心からより離れた側を意味する。
【0031】
さらに、「実質的に平行」とは、ほとんどの部分が平行であるが、多少平行ではない部分を有していてもよいことを意味し、内側誘電体層10と内部電極層12とは、多少、凹凸があったり、傾いていたりしてもよい。
【0032】
また、
図1Aによれば、素子本体4のX軸方向の端面は、平面であり、言い換えると、内側誘電体層10と内部電極層12とが面一となるように積層されている。しかし、素子本体4のX軸方向の端面は、平面ではない部分を有していてもよい。また、内側誘電体層10と内部電極層12とが面一とはならずに、たとえば内側誘電体層10の一部が削れていたり、内部電極層12の一部が突き出た状態で積層されていてもよい。
【0033】
外装領域15は外側誘電体層11により構成されている。外装領域15は一層の外側誘電体層11のみによる単層構造であってもよいし、複数の外側誘電体層11が積層された積層構造であってもよい。
【0034】
素子本体4の両端部には、素子本体4の内部で交互に配置された内部電極層12と各々導通する一対の外部電極6が形成してある。素子本体4の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、素子本体4の寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
【0035】
本実施形態では、素子本体4の縦寸法L0(
図1A参照)は、5.7~0.4mmであってもよい。素子本体4の幅寸法W0(
図1B参照)は、5.0~0.2mmであってもよい。素子本体4の高さ寸法H0(
図1B参照)は、5.0~0.2mmであってもよい。
【0036】
素子本体4の具体的なサイズとしては、L0×W0が(5.7±0.4)mm×(5.0±0.4)mm、(4.5±0.4)mm×(3.2±0.4)mm、(3.2±0.3)mm×(2.5±0.2)mm、(3.2±0.3)mm×(1.6±0.2)mm、(2.0±0.2)mm×(1.2±0.1)mm、(1.6±0.2)mm×(0.8±0.1)mm、(1.0±0.1)mm×(0.5±0.05)mm、(0.6±0.06)mm×(0.3±0.03)mm、(0.4±0.04)mm×(0.2±0.02)mmの場合等が挙げられる。また、H0は特に限定されず、たとえばW0と同等以下程度である。
【0037】
1.2 内部電極層
本実施形態では、内部電極層12は、各端部が素子本体4の対向する二端面の表面に交互に露出するように積層してある。
【0038】
内部電極層12に含有される導電材としては特に限定されない。導電材として用いられる貴金属としては、たとえばPd、Pt、Ag-Pd合金等が挙げられる。導電材として用いられる卑金属としては、たとえばNi、Ni系合金、Cu、Cu系合金等が挙げられる。なお、Ni、Ni系合金、CuまたはCu系合金中には、Pおよび/またはS等の各種微量成分が0.1質量%程度以下含まれていてもよい。また、内部電極層12は、市販の電極用ペーストを使用して形成してもよい。内部電極層12の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
【0039】
1.3 外部電極
外部電極6に含有される導電材は特に限定されない。たとえばNi、Cu、Sn、Ag、Pd、Pt、Auあるいはこれらの合金、導電性樹脂等公知の導電材を用いればよい。外部電極6の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
【0040】
1.4 誘電体層
本実施形態では、「内側誘電体層10」および「外側誘電体層11」をまとめて「誘電体層」と記載することがある。
【0041】
内側誘電体層10の1層あたりの厚み(層間厚み)は特に限定されず、所望の特性や用途等に応じて任意に設定することができる。通常は、層間厚みは20μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。また、内側誘電体層10の積層数は特に限定されず、たとえば10層以上であってもよく、100層以上であってもよく、200層以上であってもよい。
【0042】
外側誘電体層11の1層あたりの厚み(層間厚み)は特に限定されず、たとえば内側誘電体層10の層間厚みと同等とすることができる。本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2によれば、外側誘電体層11の厚みを薄くしたとしても、クラックの発生を十分に抑制することができる。また、外側誘電体層11の積層数は特に限定されず、たとえば5層以上であってもよく、20層以上であってもよい。
【0043】
図3は本実施形態に係る内側誘電体層10の概略断面図である。なお、外側誘電体層11も
図3に示す構造であってもよい。
【0044】
図3に示すように、本実施形態に係る誘電体層(内側誘電体層10および外側誘電体層11)は、主相粒子(誘電体粒子)20を含む。また、一の主相粒子20と他の主相粒子20との境界部が粒界21である。なお、本実施形態に係る誘電体層は、主相粒子20の他に、主相粒子20間に偏析粒子(図示無し)を含んでもよい。
【0045】
図4は
図3のIV部の拡大図である。主相粒子20は
図3および
図4に示すようにコアシェル構造を有するコアシェル主相粒子22であってもよいし、
図3に示すように全固溶主相粒子24であってもよい。
【0046】
コアシェル主相粒子22のコアシェル構造とは、
図4に示すようにコア部20aとコア部20aの周囲を覆うシェル部20bとを有する構造である。コアシェル主相粒子22では、後述する副成分が主相粒子20のコアシェル構造のシェル部20bに固溶してシェル部20bを構成している。
【0047】
また、
図3に示すように、全固溶主相粒子24では、副成分が主相粒子20の全体に固溶している、すなわち全固溶している。
【0048】
本実施形態の主相粒子20はABO3で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を主成分として含む。なお、主相粒子20の主成分とは、主相粒子100質量部に対して、80~100質量部を占める成分であり、好ましくは、90~100質量部を占める成分である。なお、主相粒子20が上記の主成分以外の成分を含有してもよい。たとえばバリウム(Ba)化合物などを含有してもよい。
【0049】
ABO3のA、すなわちAサイト元素はBa、ストロンチウム(Sr)およびカルシウム(Ca)から選択される少なくとも1種であり、AはBaおよびSrから選択される少なくとも1種であってもよい。A100モル部に対して80モル部以上のBaを含んでもよく、A100モル部に対して90モル部以上のBaを含んでもよい。AはBaのみであってもよい。
【0050】
ABO3のB、すなわちBサイト元素はチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)から選択される少なくとも1種である。BはTiおよびZrから選択される少なくとも1種であってもよい。B100モル部に対して70モル部以上のTiを含んでもよく、B100モル部に対して80モル部以上のTiを含んでもよい。BはTiのみであってもよい。
【0051】
AはBa、SrおよびCaから選択される少なくとも1種、BはTiおよびZrから選択される少なくとも1種であるとして、主成分の組成を具体的に記載すれば{Ba1-x-yCaxSry}O}u(Ti1-zZrz)vO2である。
【0052】
xは好ましくは0≦x≦0.10、さらに好ましくは0≦x≦0.05である。yは好ましくは0≦y≦0.10、さらに好ましくは0≦y≦0.05である。zは好ましくは0≦z≦0.30、さらに好ましくは0≦z≦0.15である。u/vは好ましくは1.000≦u/v≦1.030、さらに好ましくは1.000≦u/v≦1.015である。u/vが上記の範囲内である場合には、上記の範囲を上回る場合に比べて十分に焼結させることができるため、誘電体組成物の比誘電率及び信頼性が向上する傾向にある。u/vが上記の範囲内である場合には、上記の範囲を下回る場合に比べて焼結安定性が悪化しにくく、誘電体組成物の温度特性および信頼性が向上する傾向にある。u/vが上記の範囲である場合には十分に焼結し易く、積層セラミックコンデンサ2の比誘電率、信頼性および温度特性がより向上する傾向となる。
【0053】
誘電体層は、副成分としてRE、Mおよびケイ素(Si)を含む。なお、副成分としては、上記の他、Fe、Alおよび/またはZrを含んでいてもよい。
【0054】
上記の通り、副成分は主相粒子20に固溶して存在してもよい。副成分は
図4に示す主相粒子20のコアシェル構造のシェル部20bに固溶してシェル部20bを形成していてもよいし、主相粒子20に全固溶して
図3に示す全固溶主相粒子を形成していてもよい。この他、副成分は、偏析粒子を形成したり、主相粒子20の粒界21に存在していてもよい。
【0055】
REはイッテルビウム(Yb)、イットリウム(Y)、ホルミウム(Ho)、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)、ガドリニウム(Gd)およびユウロピウム(Eu)から選択される少なくとも1種であり、好ましくはDyおよび/またはYである。
【0056】
Dy、Tb、GdおよびEuは比較的イオン半径が大きい。一方、Yb、YおよびHoは比較的イオン半径が小さい。REのイオン半径が大きいほど、REは主相粒子20に固溶し易い傾向がある。また、主成分のAサイト元素のイオン半径と、REのイオン半径と、の差が小さいほど、REが主相粒子20に固溶し易い傾向がある。
【0057】
また、比較的イオン半径が大きいREが主相粒子20に固溶する場合には、REは主成分のうち主にAサイト元素を置換する傾向がある。一方、比較的イオン半径が小さいREが主相粒子20に固溶する場合には、主成分のうち主にBサイト元素を置換する傾向がある。
【0058】
そして、比較的イオン半径が大きいREが主相粒子20に多く固溶するほど高温負荷寿命が向上する傾向がある。一方、比較的イオン半径が小さいREが主相粒子20に多く固溶するほど抵抗が上昇する傾向がある。
【0059】
Mはマグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)およびクロム(Cr)から選択される少なくとも2種である。Mは主にMの酸化物として誘電体層に含まれる。また、Mが主成分のうちBサイト元素を置換する場合もある。
【0060】
誘電体層における主成分100モル部に対するRE2O3換算でのREの含有量CREは0.90モル部以上3.60モル部以下であり、好ましくは1.5モル部以上3.6モル部以下である。
【0061】
誘電体層における主成分100モル部に対するMO換算でのMの含有量CMは0.20モル部以上1.20モル部以下であり、好ましくは0.5モル部以上1.2モル部以下である。
【0062】
なお、誘電体層に含まれるMのうち、最も含有量の多い元素をM1としたとき、誘電体層における主成分100モル部に対するM1O換算でのM1の含有量CM1は0.40モル部以上0.90モル部以下であることが好ましく、0.5モル部以上0.9モル部以下であることがより好ましい。
【0063】
誘電体層における主成分100モル部に対するSiO2換算でのSiの含有量CSiは0.60モル部以上1.80モル部以下であり、好ましくは1.0モル部以上1.8モル部以下である。
【0064】
内側誘電体層10を構成する主相粒子20の断面上にREが固溶している固溶領域(RE固溶領域)の面積割合は、12%以上50%以下であることが好ましく、15%以上35%以下であることがより好ましい。
【0065】
図3および
図4に示すように、内側誘電体層10を構成する主相粒子20の少なくとも一部はコアシェル構造を有するコアシェル主相粒子22であってもよい。
【0066】
コアシェル主相粒子22とは、少なくともREが主相粒子20の周縁部の一部、すなわちシェル部22bのみに存在している主相粒子20であってもよい。したがって、コアシェル主相粒子22にはRE以外の元素が固溶していてもよい。
【0067】
より具体的には、コアシェル主相粒子22は実質的に主成分のみからなるコア部20aと、コア部20aの周囲に存在し、少なくともREが主成分のAサイト元素および/またはBサイト元素の一部を置換しているシェル部20bと、から構成される。
【0068】
なお、コア部20aは実質的に主成分のみからなっているが、主成分以外の成分(副成分等)を含んでいてもよい。たとえば、コア部20aは主成分以外の成分を0.0質量%~5.0質量%含んでいてもよい。なお、コア部20aに含まれる主成分以外の成分の濃度は、シェル部20bに含まれる主成分以外の成分の濃度よりも低い。
【0069】
内側誘電体層10を構成し、なおかつシェル部20bの平均厚みが5nm以上であるコアシェル主相粒子22を特定コアシェル主相粒子としてもよく、好ましくはシェル部20bの平均厚みが10nm以上50nm以下であるコアシェル主相粒子22を特定コアシェル主相粒子とする。
【0070】
内側誘電体層10における主相粒子20に対する特定コアシェル主相粒子の個数割合には特に制限はないが、90%以上であることが好ましい。また、コアシェル構造を有していない主相粒子20は、全固溶主相粒子24であってもよいし、固溶していない主相粒子であってもよい。
【0071】
内側誘電体層10を構成する主相粒子20の平均粒径(r1)は、180nm<r1<240nmの関係を満たすことが好ましく、200nm≦r1≦240nmの関係を満たすことがより好ましい。
【0072】
内側誘電体層10を構成する主相粒子20の主成分の組成の範囲と、外側誘電体層11を構成する主相粒子20の主成分の組成の範囲とは、同一であっても異なっていてもよい。また、内側誘電体層10の副成分の組成の範囲と、外側誘電体層11の副成分の組成の範囲とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0073】
内側誘電体層10を構成する主相粒子20の平均粒径をr1とし、外側誘電体層11を構成する主相粒子20の平均粒径をr2としたときに、r1およびr2は、r1<r2<r1×4.0の関係を満たす。また、r1およびr2は、1.1≦r2/r1≦2.5であることが好ましい。
【0074】
図2に示すように、内部電極層12の最外層の外表面120から素子本体4の外表面40、すなわち外装領域15の外表面までの距離をTdeとし、その長さを2Lとする。なお、素子本体4の外表面40は積層方向に垂直な面である。Tdeは特に限定されないが、10μm以上1000μm以下である。
【0075】
また、外装領域15における内部電極層12の近傍の領域である第1外装領域15aでの主相粒子20の平均粒径をraとする。第1外装領域15aの範囲は特に制限されないが、たとえば、内部電極層12の最外層の外表面120から素子本体4の外表面40に向かってTde×0.1の距離の範囲とすることができ、後述するSNRaの算出の際も同様の範囲とすることができる。
【0076】
また、内部電極層12の最外層の外表面120と素子本体4の外表面40との中間地点の領域である第2外装領域15bでの主相粒子20の平均粒径をrbとする。第2外装領域15bの範囲は特に制限されないが、たとえば、「内部電極層12の最外層12の外表面120と素子本体4の外表面40との中間地点」から内部電極層12の最外層の外表面120に向かってTde×0.1の距離または「内部電極層12の最外層の外表面120と素子本体4の外表面40との中間地点」から素子本体4の外表面40に向かってTde×0.1の距離の範囲とすることができ、後述するSNRbの算出の際も同様の範囲とすることができる。
【0077】
さらに、素子本体4の外表面40の近傍の領域である第3外装領域15cでの主相粒子20の平均粒径をrcとする。第3外装領域15cの範囲は特に制限されないが、たとえば、素子本体4の外表面40から内部電極層12の最外層に向かってTde×0.1の距離の範囲とすることができ、後述するSNRcの算出の際も同様の範囲とすることができる。
【0078】
そして、L、ra、rbおよびrcは、(rb-ra)/L>0.00008および(rc-rb)/L>0.00008の関係を満たすことが好ましい。
【0079】
なお、「(rb-ra)/L」は0.0001≦(rb-ra)/L≦0.01の関係を満たすことがより好ましい。また、「(rc-rb)/L」は0.0001≦(rc-rb)/L≦0.01の関係を満たすことがより好ましい。
【0080】
本実施形態では、外側誘電体層11を構成する主相粒子20の粒径のばらつきに比べて内側誘電体層10を構成する主相粒子20の粒径のばらつきが小さいことが好ましい。具体的には、内側誘電体層10を構成する主相粒子20の粒径のSN比が、外側誘電体層11を構成する主相粒子20の粒径のSN比に比べて大きいことが好ましい。なお、粒径のSN比は、平均粒径をμ、標準偏差をσとして、下記の式(1)により算出することができる。なお、SN比の単位は「dB」である。
SN比=10×log10(μ2/σ2)・・・(1)
【0081】
内側誘電体層10を構成する主相粒子20の粒径のSN比をSNRとする。
【0082】
また、第1外装領域15aでの主相粒子20の粒径のSN比をSNRaとする。
【0083】
また、第2外装領域15bでの主相粒子20の粒径のSN比をSNRbとする。
【0084】
さらに、第3外装領域15cでの主相粒子20の粒径のSN比をSNRcとする。
【0085】
本実施形態では、SNR、SNRa、SNRbおよびSNRcは、SNR>SNRa、SNR>SNRbおよびSNR>SNRcの関係を満たすことが好ましい。
【0086】
以下、主相粒子20の確認方法を例示する。主相粒子20の確認方法は特に限定されない。
【0087】
まず、素子本体4を積層方向に沿って切断し、その切断面を研磨して研磨面を得る。その後、その研磨面について収束イオンビーム(FIB)を使用し薄片化処理を行う。薄片化処理した測定サンプルについてエネルギー分散型X線分析装置(EDS)を取り付けた走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いてマッピング分析を行う。以下、EDSを取り付けたSTEMのことをSTEM-EDSと呼ぶ。測定範囲の大きさには特に制限はないが、たとえば視野内に5層以上の内部電極層12が存在する範囲を測定範囲としてマッピング画像を得る。
【0088】
得られたマッピング画像を0.027μm/pixelのドットに分割し、個々のドットでのAサイト元素およびBサイトの元素のコントラスト強度を数値化する。具体的にはコントラスト強度が最も小さいもの(検出なし)を0とし、最も大きいものを90として、コントラスト強度を0~90までの91段階に分類する。
【0089】
上記のSTEM-EDSにより得られたマッピング画像と、STEMにより得られた反射電子像とを比較し、主相粒子20のAサイト元素およびBサイト元素の濃度が周囲に比べて高い粒子を主相粒子20とすることができる。また、主相粒子20の境界部を粒界21とすることができる。
【0090】
以下、内側誘電体層10のRE固溶領域の面積割合の算出方法を例示する。内側誘電体層10のRE固溶領域の面積割合の算出方法は特に限定されない。
【0091】
上記のSTEM-EDSにより得られたマッピング画像を0.027μm/pixelのドットに分割し、個々のドットでのREのコントラスト強度を数値化する。具体的にはコントラスト強度が最も小さいもの(検出なし)を0とし、最も大きいものを90として、コントラスト強度を0~90までの91段階に分類する。
【0092】
主相粒子20においてREのコントラスト強度が25以上となるドットの領域をRE固溶領域とする。
【0093】
また、測定範囲における主相粒子20の合計面積を求めて、内側誘電体層10におけるRE固溶領域の面積割合を求める(RE固溶領域の面積割合=RE固溶領域の面積/主相粒子20の合計面積)。
【0094】
したがって、RE固溶領域にはコアシェル主相粒子22のシェル部22bの他、全固溶主相粒子24も含まれることとなる。
【0095】
以下、個々の主相粒子20が特定コアシェル主相粒子であるか否かを判断する方法を例示する。個々の主相粒子20が特定コアシェル主相粒子であるか否かを判断する方法は特に限定されない。
【0096】
上記のSTEM-EDSにより得られたマッピング画像において、マッピングの視野内における一の主相粒子20に対して、RE固溶領域がシェル部20bであると仮定して、最も厚みが薄いと考えられるシェル部20bの厚みTsと、最も厚みが厚いと考えられるシェル部20bの厚みTsとについて、それぞれ粒界21を横切るように線分析を行い、シェル部20bの平均厚みを算出し、これを当該一の主相粒子20のシェル部20bの平均厚みとする。
【0097】
ここで、シェル部20bの平均厚みが5nm以上である主相粒子20を特定コアシェル主相粒子22とする。内側誘電体層10の10個以上の任意の主相粒子20について同様の分析を行い、分析した主相粒子20の数に対する特定コアシェル主相粒子22の個数割合を「主相粒子20に対する特定コアシェル主相粒子20の個数割合」とする。
【0098】
<
2.積層セラミックコンデンサの製造方法>
次に、
図1Aに示す積層セラミックコンデンサ2の製造方法の一例について以下に説明する。
【0099】
本実施形態の積層セラミックコンデンサ2は、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
【0100】
まず、誘電体層を形成するための誘電体原料を準備し、これを塗料化して、誘電体層用ペーストを調製する。
【0101】
誘電体原料として、主成分であるABO3の原料と、その他の各種酸化物の原料と、を準備する。これらの原料としては、上記した成分の酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、たとえば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。
【0102】
主成分であるABO3の原料粉末の粒径は特に限定されないが、たとえば150~200nmである。
【0103】
本実施形態では、上記した成分の酸化物等を主成分に対して均一に分散させた混合物を用いることが好ましいが、主成分が上記した成分で被覆された誘電体原料を用いてもよい。さらに、主成分の原料以外には、例えば、REの酸化物、Mの酸化物およびSiの化合物を用いてもよい。
【0104】
なお、主成分であるABO3の原料は、いわゆる固相法の他、各種液相法(たとえば、シュウ酸塩法、水熱合成法、アルコキシド法、ゾルゲル法など)により製造されたものなど、種々の方法で製造されたものを用いることができる。
【0105】
さらに、誘電体層に、上記した成分以外の成分が含有される場合には、該成分の原料として、それらの成分の酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができる。また、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物を用いることができる。
【0106】
誘電体原料中の各化合物の含有量は、焼成後に上述した誘電体層の組成となるように決定すればよい。
【0107】
また、BaCO3粉末を、主成分100モル部に対してBaCO3換算で0.1モル部以上2.0モル部以下含有させてもよい。
【0108】
上記のその他の各種酸化物の原料のうち任意の2種類以上を主成分と混合する前に混合させ、仮焼してもよい。例えば、RE酸化物の原料、Si酸化物の原料および主成分とは別に含まれるAの酸化物の原料(例えばBa酸化物の原料)を事前に混合させ、仮焼してもよい。仮焼温度は1100℃未満とする。そして仮焼して得られた化合物粉末と主成分と仮焼しなかった各種酸化物の原料とを混合させてもよい。このようにすることで、REの主相粒子20への固溶し易さが変化する。
【0109】
誘電体層用ペーストは、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
【0110】
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。バインダおよび溶剤は、公知のものを用いればよい。
【0111】
また、誘電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、誘電体原料とを混練すればよい。水溶性バインダは特に限定されず、たとえば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
【0112】
内部電極層用ペーストは、上記したNiやNi合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記したNiやNi合金となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製すればよい。また、内部電極層用ペーストには、共材が含まれていてもよい。共材としては特に制限されないが、主成分と同様の組成を有していてもよい。
【0113】
外部電極用ペーストは、無機成分として上記したCuやCu合金からなる導電材等を用いて上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
【0114】
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、たとえば、バインダは1~15質量%程度、溶剤は10~60質量%程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10質量%以下としてもよい。
【0115】
PET等の基板上に外側誘電体層用の誘電体層用ペーストを用いて適宜の枚数のグリーンシートを形成し、積層方向に加圧して外装領域グリーン積層体を得る。
【0116】
次いで、内側誘電体層用の誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストにより内部電極パターン層を形成して、基板からグリーンシートを剥離することで内部電極パターン層を有するグリーンシートを作製する。
【0117】
次いで、前記外装領域グリーン積層体の上に内部電極パターン層を有するグリーンシートを複数枚積層し、必要に応じて加圧接着することにより焼成後に内装領域13を構成する内装領域グリーン積層体を得る。
【0118】
内部電極パターン層の形成方法としては、特に限定されず、印刷法、転写法の他、蒸着、スパッタリングなどの薄膜形成方法により形成されていてもよい。
【0119】
次いで、内装領域グリーン積層体の上に、さらに外側誘電体層用の誘電体層用ペーストを使用して、適宜の枚数の外側誘電体層用グリーンシートを形成し、積層方向に加圧して素子本体4のグリーン積層体を得る。外側誘電体層用グリーンシートは一層のみでもよいし、複数層であってもよい。
【0120】
素子本体4のグリーン積層体を所定形状に切断した後、基板から剥離してグリーンチップとする。
【0121】
焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5~300℃/時間、脱バインダ温度を好ましくは180~900℃、保持時間を好ましくは0.5~48時間とする。また、脱バインダ処理における雰囲気は、空気もしくは還元性雰囲気(例えば加湿したN2+H2混合ガス雰囲気)とする。
【0122】
脱バインダ後、グリーンチップを焼成する。たとえば、昇温速度を200~20000℃/h、焼成温度を1150~1350℃、保持時間を0.1~10時間としてもよい。
【0123】
焼成時の雰囲気も特に限定されない。空気または還元性雰囲気としてもよい。還元性雰囲気とする場合の雰囲気ガスとしては、たとえば、N2とH2との混合ガスを加湿して用いることができる。また、酸素分圧を1.0×10-14~1.0×10-9MPaとしてもよい。
【0124】
焼成時の酸素分圧が低いほど、REの主相粒子20への固溶が進行し易くなるため、粒界21中に存在するREの濃度が低くなり、その結果、主相粒子20をある程度粒成長させることができる。
【0125】
このように、焼成時の酸素分圧を調整することにより、内側誘電体層10および/または外側誘電体層11を構成する主相粒子20の粒径を所望の範囲に調整することができる。すなわち、r1<r2<r1×4.0の関係や、(rb-ra)/L>0.00008および(rc-rb)/L>0.00008の関係を満たし易いように調整することができる。
【0126】
本実施形態では、焼成後の素子本体4に対し、アニール処理(誘電体層の酸化処理)を行うことが好ましい。具体的には、アニール温度は、950~1100℃としてもよい。保持時間は、0.1~20時間としてもよい。酸化処理時の雰囲気は、加湿したN2ガス(酸素分圧:1.0×10-9~1.0×10-6MPa)としてもよい。
【0127】
上記した脱バインダ処理、焼成およびアニール処理において、N2ガスや混合ガス等を加湿する場合には、たとえばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5~75℃程度が好ましい。
【0128】
脱バインダ処理、焼成およびアニール処理は、連続して行っても、独立に行ってもよい。
【0129】
上記のようにして得られた素子本体4に、たとえばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを塗布して焼成し、外部電極6を形成する。そして、必要に応じて、外部電極6の表面に、めっき等により被覆層を形成する。
【0130】
このようにして製造された本実施形態の積層セラミックコンデンサ2は、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
【0131】
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、CREがRE2O3換算で0.90モル部以上3.60モル部以下であり、CMがMO換算で0.20モル部以上1.20モル部以下であり、CSiがSiO2換算で0.60モル部以上1.80モル部以下であり、r1およびr2は、r1<r2<r1×4.0の関係を満たす。
【0132】
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサは、特にCRE、CMおよびCSiが上記の範囲内に含まれることにより、高温負荷寿命が良好になる。これは、CRE、CMおよびCSiが上記の範囲内に含まれることにより、主相粒子20中のドナー成分およびアクセプタ成分のバランスが取れ易いためであると考えられる。
【0133】
具体的には、REがAサイト元素を置換する場合にはドナー成分として主相粒子20に固溶し、REおよび/またはMがBサイト元素を置換する場合にはアクセプタ成分として主相粒子20に固溶する。
【0134】
そして、ドナー成分が適量である場合には、ドナー成分が多過ぎる場合に比べて、抵抗が良好となり、高温負荷寿命が良好になる。一方、アクセプタ成分が適量である場合には、アクセプタ成分が多過ぎる場合に比べて、酸素欠陥量を抑制することができ、高温負荷寿命が良好になる。
【0135】
また、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、特にCRE、CMおよびCSiが上記の範囲内に含まれることにより、主相粒子20に対する副成分の固溶量が適切となるため、良好な温度特性となると考えられる。
【0136】
さらに、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、特にr1およびr2がr1<r2<r1×4.0の関係を満たすことにより、内装領域13に比べて外装領域15の硬度が高くなる。
【0137】
従来の積層セラミックコンデンサでは、内装領域に比べて外装領域は焼成が促進しにくいことから、外装領域に空隙が発生し易く外装領域の硬度を高めにくい傾向があった。
【0138】
これに対して、本実施形態では、誘電体層に含まれる成分や主成分の原料粉末の平均粒径などの影響により、焼成により、外側誘電体層11を構成する主相粒子20の方が内側誘電体層10を構成する主相粒子20に比べてより粒成長する傾向が確認できる。その結果、外側誘電体層11は内側誘電体層10に比べてより緻密な構造、言い換えるとより高密度な構造となり、外装領域15の硬度が高くなると考えられる。
【0139】
このように、本実施形態によれば焼成工程において外側誘電体層11を構成する主相粒子20の平均粒径を内側誘電体層10を構成する主相粒子20の平均粒径よりも所定の範囲で大きくすることができる。
【0140】
たとえば特許文献1では、内側誘電体層と外側誘電体層とで主相粒子の粒径を異ならせることを目的として、内側誘電体層用の誘電体層用ペーストに含まれる主相粒子の主成分の原料粉末の粒径と外側誘電体層用の誘電体層用ペーストに含まれる主相粒子の主成分の原料粉末の粒径とを異ならせる手法が検討されている。
【0141】
しかし、近年では、主相粒子の主成分の原料粉末は微粒子化していることから均一に分散された誘電体層用ペーストを作製することが困難になりつつある。内側誘電体層用の誘電体層用ペーストに含まれる主相粒子の主成分の原料粉末の粒径と外側誘電体層用の誘電体層用ペーストに含まれる主相粒子の主成分の原料粉末の粒径とを異ならせる手法をとることは技術的に困難となることが予想される。
【0142】
これに対して、本実施形態では、仮に、内側誘電体層10と外側誘電体層11とで、同じ平均粒径の主成分の原料粉末を用いたとしても、焼成工程において外側誘電体層11を構成する主相粒子20の方が内側誘電体層10を構成する主相粒子20よりも粒成長が促進される結果、外側誘電体層11を構成する主相粒子20の平均粒径を内側誘電体層10を構成する主相粒子20の平均粒径よりも所定の範囲で大きくすることができる。したがって、本実施形態では比較的容易に、内側誘電体層10と外側誘電体層11とで主相粒子20の粒径を異ならせることができる。
【0143】
なお、本実施形態では、内側誘電体層10を構成する主相粒子20の平均粒径と外側誘電体層11を構成する主相粒子20の平均粒径とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0144】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変してもよい。
【0145】
<3.変形例>
上述した実施形態では、本発明に係る積層電子部品が積層セラミックコンデンサである場合について説明したが、本発明に係る積層電子部品は、積層セラミックコンデンサに限定されず、上述した構成を有する積層電子部品であればよい。
【実施例0146】
以下、実施例および比較例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0147】
<実験1>
実験1は表1Aおよび表1Bに記載の実施例または比較例に関する。
【0148】
(製造方法(1))
製造方法(1)により積層セラミックコンデンサ試料を製造した実施例または比較例については、表1B、表2B、表3B、表4B、表5Bおよび表6Bの「製造方法」の欄に「(1)」と示している。
【0149】
製造方法(1)では、内側誘電体層用の誘電体層用ペーストと外側誘電体層用の誘電体層用ペーストとを同様にして作製したため、「内側誘電体層用の誘電体層用ペースト」と「外側誘電体層用の誘電体層用ペースト」とをまとめて「誘電体層用ペースト」と記載する。
【0150】
主成分の原料粉末として、BaTiO3粉末を準備した。BaTiO3粉末のBa/Tiは1.000であり、平均粒径は180nmであった。
【0151】
また、REの酸化物の原料粉末としてDy2O3粉末を準備した。
【0152】
また、Mの酸化物の原料粉末としてMgO粉末、MnCO3粉末およびV2O5粉末を準備した。なお、MnCO3は焼成後にMnOとして誘電体層中に含有されることとなる。
【0153】
また、Siの酸化物の原料粉末としてSiO2粉末を準備した。
【0154】
さらに、Baの酸化物の原料粉末としてBaCO3粉末を準備した。
【0155】
次に、上記で準備した各原料粉末を、主成分100モル部に対して表1Aに記載の割合となるように秤量した。また、BaCO3粉末を、主成分100モル部に対してBaCO3換算で1.0モル部となるように秤量した。なお、BaCO3は焼成後にBaOとして誘電体層中に含有されることとなる。秤量された各原料粉末をボールミルで20時間湿式混合・粉砕し、乾燥して、誘電体原料を得た。
【0156】
次に、誘電体原料100質量部に対してポリビニルブチラール樹脂10質量部と、可塑剤としてのジオクチルフタレート(DOP)5質量部と、溶媒としてのアルコール100質量部とをボールミルで混合してペースト化し、誘電体層用ペーストを得た。
【0157】
Ni粉末、テルピネオール、エチルセルロースおよびベンゾトリアゾールを、質量比が44.6:52.0:3.0:0.4となるように準備した。そして、これらを3本ロールにより混練し、ペースト化して内部電極層用ペーストを作製した。
【0158】
上記にて作製した誘電体層用ペーストを用いて、PETフィルム上に、乾燥後の厚みが6.0μmとなるように外側誘電体層用グリーンシートを形成し、積層方向に加圧して外装領域グリーン積層体を得た。
【0159】
次いで、上記誘電体層用ペーストを用いて、乾燥後の厚みが4,0μmとなるようにグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを用いて、電極層を所定パターンで印刷した後、PETフィルムからシートを剥離し、内部電極パターン層を有するグリーンシートを作製した。次いで、前記外装領域グリーン積層体の上に内部電極パターン層を有するグリーンシートを複数枚積層し、加圧接着することにより積層体を得た。
【0160】
次いで、前記積層体の上に、さらに誘電体層用ペーストを使用して、複数枚の外側誘電体層用グリーンシートを形成し、積層方向に加圧して素子本体4のグリーン積層体を得た。このグリーン積層体を所定サイズに切断することにより、グリーンチップを得た。
【0161】
次いで、得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理、焼成および酸化処理を行い、焼結体である素子本体を得た。
【0162】
脱バインダ処理条件は、昇温速度を25℃/h、脱バインダ温度を235℃、保持時間を8時間、雰囲気を空気中とした。
【0163】
焼成条件は昇温速度を200℃/h、保持温度を1280℃、保持時間を2時間、降温速度を200℃/hとした。雰囲気は加湿したN2+H2混合ガス雰囲気とした。酸素分圧は5.0×10-11MPa程度とした。
【0164】
酸化処理条件は、昇温速度および降温速度を200℃/h、酸化処理温度を1050℃、保持時間を3時間、雰囲気を加湿したN2ガス雰囲気とし、酸素分圧は1.0×10-7MPaとした。
【0165】
焼成および酸化処理時の雰囲気の加湿にはウェッターを用いた。
【0166】
次いで、得られた素子本体の端面をバレル研磨した後、外部電極としてCuペーストを塗布し、還元雰囲気にて焼付け処理を行い、
図1Aに示す積層セラミックコンデンサの試料を得た。得られたコンデンサ試料のサイズは、3.2mm×1.6mm×0.5mmであり、内側誘電体層の厚みが3.0μm、内部電極層の厚みが1.0μm、外装領域の厚み(Tde)が210μmであった。また、内側誘電体層の数は20層とした。
【0167】
(製造方法(2))
製造方法(2)により積層セラミックコンデンサ試料を製造した比較例については、表1Bにおいて、「製造方法」の欄に「(2)」と示している。
【0168】
製造方法(2)では、外側誘電体層用の誘電体層用ペーストに含まれる誘電体原料の主成分の原料粉末であるBaTiO3粉末のBa/Tiを1.02とした以外は製造方法(1)と同様にして積層セラミックコンデンサ試料を作製した。
【0169】
(製造方法(3))
製造方法(3)により積層セラミックコンデンサ試料を製造した比較例については、表1Bにおいて、「製造方法」の欄に「(3)」と示している。
【0170】
製造方法(3)では、外側誘電体層用の誘電体層用ペーストに含まれる誘電体原料の主成分の原料粉末であるBaTiO3粉末の平均粒径を100nmとした以外は製造方法(1)と同様にして積層セラミックコンデンサ試料を作製した。
【0171】
(主相粒子の平均粒径)
得られた積層セラミックコンデンサ試料を、積層方向に沿って切断し、得られた切断面を研磨した。そして、その研磨面にケミカルエッチングを施し、その後、走査型電子顕微鏡(SEM)により内装領域と外装領域とをそれぞれ観察した。
【0172】
内装領域の各主相粒子の面積を算出した。また、外装領域の各主相粒子の面積を算出した。そして算出した面積を円相当径に換算した値を各主相粒子の粒径とした。内装領域の5視野の合計約1000個の主相粒子の粒径の平均値を平均粒径r1とした。また、第2外装領域の5視野の合計約1000個の主相粒子の粒径の平均値を平均粒径r2とした。
【0173】
「r1<r2<r1×4.0」を満たす場合を「OK」と評価し、「r1<r2<r1×4.0」を満たさない場合を「NG」と評価した。結果を表1Aに示す。
【0174】
また、「r2/r1」の結果を表1Aに示す。
【0175】
(ビッカース硬度)
得られた積層セラミックコンデンサ試料の外装領域が上になるようステージに固定し、荷重200mNにて、外装領域の外表面の中心付近に対してビッカース硬度の測定を行った。ビッカース硬度の単位はHV0.0204であった。上記の評価を5つの積層セラミックコンデンサ試料に対して行い、ビッカース硬度の平均の値を算出した。850以上を「A」と評価し、800以上850未満を「B」と評価し、800未満を「NG」と評価した。結果を表1Bに示す。
【0176】
(高温負荷寿命(MTTF))
得られた積層セラミックコンデンサ試料に対し、180℃にて、40V/μmの電界下で直流電圧の印加状態に保持し、印加開始から絶縁抵抗が一桁落ちるまでの時間を高温負荷寿命と定義した。上記の評価を20個の積層セラミックコンデンサ試料について行い、その平均値を高温負荷寿命(MTTF)とした。25時間以上を「A」と評価し、20時間以上25時間未満を「B」と評価し、20時間未満を「NG」と評価した。結果を表1Bに示す。
【0177】
(容量変化率(X7S特性))
得られた積層セラミックコンデンサ試料に対し、周波数1.0kHz、入力信号レベル(測定電圧)1.0Vr msの条件下で、-55℃~125℃における静電容量を測定し、25℃における静電容量を基準として静電容量の変化率ΔCを算出し、EIA規格の温度特性であるX7S特性を満足するか否かについて評価した。本実施例では高温側(125℃)での容量変化率ΔCが±22%以内であるか否かを評価した。125℃での容量変化率が±22%を満足していれば-55℃での容量変化率もX7S特性を満足できるからである。高温側(125℃)での容量変化率ΔCが±22%以内である場合を「OK」と評価し、高温側(125℃)での容量変化率ΔCが±22%以内ではない場合を「NG」と評価した。結果を表1Bに示す。
【0178】
(総合判定)
「ビッカース硬度」、「MTTF」および「容量変化率」のうち1つでも「NG」と評価された積層セラミックコンデンサ試料(比較例)を「NG」と評価した。
【0179】
「容量変化率」が「OK」と評価された積層セラミックコンデンサ試料(実施例)のうち、「ビッカース硬度」および「MTTF」がいずれも「A」評価である場合を「AA」と評価した。
【0180】
「容量変化率」が「OK」と評価された積層セラミックコンデンサ試料(実施例)のうち、「ビッカース硬度」および「MTTF」のうちいずれか一方のみが「A」評価である場合を「A」と評価した。
【0181】
「容量変化率」が「OK」と評価された積層セラミックコンデンサ試料(実施例)のうち、「ビッカース硬度」および「MTTF」がいずれも「B」評価である場合を「B」と評価した。
【0182】
総合判定の結果を表1Bに示す。
【0183】
<実験2>
実験2は表2Aおよび表2Bに記載の実施例に関する。
【0184】
表2Aおよび表2Bの実施例1は表1Aおよび表1Bの実施例1と同じ試料である。また、表2Aおよび表2Bの実施例8は表1Aおよび表1Bの実施例8と同じ試料である。
【0185】
(製造方法(4))
製造方法(4)により積層セラミックコンデンサ試料を製造した実施例については、表2Bにおいて、「製造方法」の欄に「(4)」と示している。すなわち、実施例9を製造方法(4)により製造した。
【0186】
製造方法(4)では、焼成時の酸素分圧を1.0×10-11MPa程度とした。以外は製造方法(1)と同様にして積層セラミックコンデンサ試料を作製した。
【0187】
実験2では、実験1と同様にして「r1<r2<r1×4.0」を満たすか否か判断し、ビッカース硬度を測定し、MTTFを測定し、容量変化率を測定し、総合判定を行った。結果を表2Aまたは表2Bに示す。
【0188】
なお、実験2では、さらに、「(rb-ra)/L>0.00008および(rc-rb)/L>0.00008」を満たすか否かについても判断した。具体的には、上記の(主相粒子の平均粒径)に記載した積層セラミックコンデンサ試料のケミカルエッチングされた研磨面のうち第1外装領域、第2外装領域、第3外装領域のそれぞれにおいて主相粒子が300個以上含まれる視野について5視野ずつSEMで観察した。
【0189】
観察された各主相粒子の面積を円相当径に換算した値を各主相粒子の粒径とした。第1外装領域の約1000個の主相粒子の粒径の平均値を平均粒径raとした。また、第2外装領域の約1000個の主相粒子の粒径の平均値を平均粒径rbとした。さらに、第3外装領域の約1000個の主相粒子の粒径の平均値を平均粒径rcとした。
【0190】
また、上記のケミカルエッチング後の研磨面について外装領域の厚みTde方向がすべて含まれる視野においてSEMで観察を行い、Lを算出した。
【0191】
上記の方法により求められたL、ra、rbおよびrcに基づき、各実施例が「(rb-ra)/L>0.00008および(rc-rb)/L>0.00008」を満たすか否か判断した。「(rb-ra)/L>0.00008および(rc-rb)/L>0.00008」を満たす場合を「OK」と判断し、「(rb-ra)/L>0.00008および(rc-rb)/L>0.00008」を満たさない場合を「NG」と判断した。結果を表2Aに示す。
【0192】
<実験3>
実験3は表3Aおよび表3Bに記載の実施例に関する。
【0193】
表3Aおよび表3Bの実施例7は表1Aおよび表1Bの実施例7と同じ試料である。また、表3Aおよび表3Bの実施例8は表1Aおよび表1Bの実施例8と同じ試料である。
【0194】
(製造方法(5))
製造方法(5)により積層セラミックコンデンサ試料を製造した比較例については、表3Bにおいて、「製造方法」の欄に「(5)」と示している。すなわち、比較例9を製造方法(5)により製造した。
【0195】
製造方法(5)では、内側誘電体層用の誘電体層用ペーストに含まれる誘電体原料の主成分の原料粉末であるBaTiO3粉末の平均粒径を120nmとした以外は製造方法(1)と同様にして積層セラミックコンデンサ試料を作製した。
【0196】
実験3では、実験1と同様にして「r1<r2<r1×4.0」を満たすか否か判断し、ビッカース硬度を測定し、MTTFを測定し、容量変化率を測定し、総合判定を行った。結果を表3Aまたは表3Bに示す。
【0197】
なお、実験3では、さらに、「SNR>SNRa、SNR>SNRb およびSNR>SNRc」を満たすか否かについても判断した。具体的には、上記の実験1で測定した内側誘電体層の主相粒子の粒径と、上記の実験2で測定した第1外装領域、第2外装領域および第3外装領域の主相粒子の粒径と、を基にして、上記の実施形態に記載のSN比の算出方法に基づきSN比を算出することにより、各実施例または比較例が「SNR>SNRa、SNR>SNRb およびSNR>SNRc」を満たすか否かについて判断した。
【0198】
「SNR>SNRa、SNR>SNRb およびSNR>SNRc」を満たす場合を「OK」と判断し、「SNR>SNRa、SNR>SNRb およびSNR>SNRc」を満たさない場合を「NG」と判断した。
【0199】
<実験4>
実験4は表4Aおよび表4Bに記載の実施例に関する。
【0200】
表4Aおよび表4Bの実施例1は表1Aおよび表1Bの実施例1と同じ試料である。また、表4Aおよび表4Bの実施例8は表1Aおよび表1Bの実施例8と同じ試料である。さらに、表4Aおよび表4Bの比較例9は表3Aおよび表3Bの比較例9と同じ試料である。
【0201】
実施例10では、CREを変化させた以外は実施例1と同様にして積層セラミックコンデンサ試料を製造した。
【0202】
実験4では、実験1と同様にして「r1<r2<r1×4.0」を満たすか否か判断し、ビッカース硬度を測定し、MTTFを測定し、容量変化率を測定し、総合判定を行った。結果を表4Aまたは表4Bに示す。
【0203】
なお、実験4では、さらに、「内側誘電体層におけるRE固溶領域の面積割合」および「主相粒子に対する特定コアシェル主相粒子の個数割合」についても算出した。具体的には、上記の(主相粒子の平均粒径)に記載した積層セラミックコンデンサ試料のケミカルエッチングされた研磨面をSEMで観察し、上記の実施形態に記載の方法により「内側誘電体層におけるRE固溶領域の面積割合」および「主相粒子に対する特定コアシェル主相粒子の個数割合」を算出した。結果を表4Aに示す。
【0204】
<実験5>
実験5は表5Aおよび表5Bに記載の実施例に関する。
【0205】
表5Aおよび表5Bの実施例8は表1Aおよび表1Bの実施例8と同じ試料であり、表5Aおよび表5Bの実施例5は表1Aおよび表1Bの実施例5と同じ試料である。
【0206】
実施例11では、CM1を0.30モル部とし、M1であるMg以外のMnおよびVの含有量を増量した以外は実施例8と同様にして積層セラミックコンデンサ試料を製造した。
【0207】
実施例12では、CM1を0.95モル部とし、M1であるMn以外のMgおよびVの含有量を減量した以外は実施例12と同様にして積層セラミックコンデンサ試料を製造した。
【0208】
実験5では、実験1と同様にして「r1<r2<r1×4.0」を満たすか否か判断し、ビッカース硬度を測定し、MTTFを測定し、容量変化率を測定し、総合判定を行った。結果を表5Aまたは表5Bに示す。
【0209】
<実験6>
実験6は表6Aおよび表6Bに記載の実施例に関する。
【0210】
表6Aおよび表6Bの実施例8は表1Aおよび表1Bの実施例8と同じ試料である。
【0211】
(製造方法(6))
製造方法(6)により積層セラミックコンデンサ試料を製造した実施例については、表6Bにおいて、「製造方法」の欄に「(6)」と示している。すなわち、実施例13を製造方法(6)により製造した。
【0212】
製造方法(6)では、焼成時の酸素分圧を1.0×10-10MPa程度とした以外は製造方法(1)と同様にして積層セラミックコンデンサ試料を作製した。
【0213】
製造方法(7)により積層セラミックコンデンサ試料を製造した実施例については、表7Bにおいて、「製造方法」の欄に「(7)」と示している。すなわち、実施例14を製造方法(7)により製造した。
【0214】
製造方法(7)では、内側誘電体層用の誘電体層用ペーストに含まれる誘電体原料の主成分の原料粉末であるBaTiO3粉末の平均粒径を230nmとした以外は製造方法(1)と同様にして積層セラミックコンデンサ試料を作製した。
【0215】
実験6では、実験1と同様にして「r1<r2<r1×4.0」を満たすか否か判断し、ビッカース硬度を測定し、MTTFを測定し、容量変化率を測定し、総合判定を行った。結果を表6Aまたは表6Bに示す。
【0216】
なお、実験6では、さらに、「内側誘電体層を構成する主相粒子の平均粒径(r1)」も測定した。具体的には、上記の(主相粒子の平均粒径)に記載した方法により算出した。結果を表6Aに示す。
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】
【0227】
【0228】
【0229】
表1Aおよび表1Bより、CREが0.90モル部以上3.60モル部以下であり、CMが0.20モル部以上1.20モル部以下であり、CSiが0.60モル部以上1.80モル部以下であり、r1およびr2が、r1<r2<r1×4.0の関係を満たす場合(実施例1~実施例8)は、ビッカース硬度が高く、MTTFが長く、容量変化率が良好であることが確認できた。
【0230】
なお、比較例7では、外装領域の主成分の原料粉末のBa/Ti比を1.02とした結果、内装領域および外装領域では、ともに主相粒子の粒成長が過剰に抑制されたと考えられる。中でも内部電極層による熱伝導があまり期待できない外装領域の主相粒子の粒成長が顕著に抑制されたことから、r1およびr2が、r1<r2<r1×4.0の関係を満たさなかったと考えられる。
【0231】
なお、比較例8では、外装領域の主成分の原料粉末の平均粒径を100nmとした結果、内装領域に比べて外装領域の主相粒子の平均粒径が小さく反応性が高くなったことから、外装領域の主相粒子が過剰に粒成長したことにより、r2がr1×4.0よりも大きくなったため、r1およびr2が、r1<r2<r1×4.0の関係を満たさなかったと考えられる。
【0232】
表2Aおよび表2Bより、CREが0.90モル部以上3.60モル部以下であり、CMが0.20モル部以上1.20モル部以下であり、CSiが0.60モル部以上1.80モル部以下であり、r1およびr2が、r1<r2<r1×4.0の関係を満たし、(rb-ra)/L>0.00008および(rc-rb)/L>0.00008の関係を満たす場合(実施例9および実施例8)は、(rb-ra)/L>0.00008および(rc-rb)/L>0.00008の関係を満たさない場合(実施例1)に比べてビッカース硬度がより高く、MTTFがより長いことが確認できた。
【0233】
実施例9は実施例1に比べて、焼成時の酸素分圧が低いため、REの主相粒子への固溶が進行しやすく、粒界中のREの濃度が低くなり、その結果、外側誘電体層を構成する主相粒子をある程度粒成長させることができ、ビッカース硬度の強度がより向上したと考えられる。また、実施例9は実施例1に比べて主相粒子への副成分の固溶量がより適切な範囲内であったため、MTTFがより長くなったと考えられる。
【0234】
【0235】
図5において、X軸は素子本体の外表面からの距離を示す。「exterio
r region」は「外装領域」を示し、「interior region」は「内装領域」を示し、「first exterior region」は第1外装領域を示し、「second exterior region」は第2外装領域を示し、「third exterior region」は第3外装領域を示す。また、Y軸は主相粒子の平均粒径(単位はnm)を示す。
【0236】
図5より、実施例9では、内装領域の主相粒子の平均粒径に比べて明らかに外装領域の主相粒子の平均粒径が大きいことが確認できる。
【0237】
表3Aおよび表3Bより、CREが0.90モル部以上3.60モル部以下であり、CMが0.20モル部以上1.20モル部以下であり、CSiが0.60モル部以上1.80モル部以下であり、r1およびr2が、r1<r2<r1×4.0の関係を満たし、SNR>SNRa、SNR>SNRbおよびSNR>SNRcの関係を満たす場合(実施例8)は、SNR>SNRa、SNR>SNRbおよびSNR>SNRcの関係を満たさない場合(実施例7)に比べて、ビッカース硬度がより高く、MTTFがより長く、容量変化率がより良好であることが確認できた。
【0238】
NR>SNRa、SNR>SNRbおよびSNR>SNRcの関係を満たす場合(実施例8)ではSNR>SNRa、SNR>SNRbおよびSNR>SNRcの関係を満たさない場合(実施例7)に対して、外装領域の主相粒子に比べて内層領域の主相粒子の平均粒径のバラつきが小さいため、層間粒子数、すなわち、内部電極層に挟まれた内側誘電体層中の粒子数のバラつきが小さくなり、これによりMTTF及び容量変化率が良好となったと考えられる。
【0239】
なお、比較例9では、内側誘電体層の原料粉末であるBaTiO3粉末の平均粒径を120nmとしたため、内装領域の主成分の粒径が小さくなり、r1<r2<r1×4.0を満たさなかったと考えられる。なお、比較例9では、内側誘電体層の原料粉末であるBaTiO3粉末の平均粒径が小さいため原料粒径に対する焼成後粒径の比(焼成後粒径/原料粒径)で表される粒成長率は大きくなり、これにより、主成分に副成分が過剰に固溶することになり、容量変化率が悪化したと考えられる。
【0240】
表4Aおよび表4Bより、CREが0.90モル部以上3.60モル部以下であり、CMが0.20モル部以上1.20モル部以下であり、CSiが0.60モル部以上1.80モル部以下であり、r1およびr2が、r1<r2<r1×4.0の関係を満たし、RE固溶面積割合が12%以上50%以下である場合(実施例10および実施例8)は、RE固溶面積割合が9.8%である場合(実施例1)に比べて、ビッカース硬度がより高く、MTTFがより長く、容量変化率がより良好であることが確認できた。
【0241】
RE固溶面積割合が12%以上50%以下である場合(実施例10および実施例8)ではRE固溶面積割合が9.8%である場合(実施例1)に比べて、主相粒子に対するREの固溶面積が大きいため抵抗が高く、また高温・高電圧下における酸素欠陥の移動を抑制されることによりMTTFが向上したものと考えられる。
【0242】
表4Aおよび表4Bより、CREが0.90モル部以上3.60モル部以下であり、CMが0.20モル部以上1.20モル部以下であり、CSiが0.60モル部以上1.80モル部以下であり、r1およびr2が、r1<r2<r1×4.0の関係を満たし、主相粒子に対する特定主相粒子の個数割合が、90%以上である場合(実施例8)は、主相粒子に対する特定主相粒子の個数割合が、80%である場合(実施例10)に比べて、ビッカース硬度がより高く、MTTFがより長いことが確認できた。
【0243】
主相粒子に対する特定主相粒子の個数割合が、90%以上である場合(実施例8)では、主相粒子に対する特定主相粒子の個数割合が、80%である場合(実施例10)に比べて主相粒子に対する特定主相粒子の個数割合が高いため、全体的に特定主相粒子の存在しているため試料中における主相粒子の構造にバラつきが少ないため、ビッカース硬度がより高くなったと考えられる。また、高電界下で局所的に電流密度が高くなることを防ことができることにより、MTTFがより向上したものと考えられる。
【0244】
表5Aおよび表5Bより、CREが0.90モル部以上3.60モル部以下であり、CMが0.20モル部以上1.20モル部以下であり、CSiが0.60モル部以上1.80モル部以下であり、r1およびr2が、r1<r2<r1×4.0の関係を満たし、CM1が0.40モル部以上0.90モル部以下である場合(実施例8、実施例5)は、CM1が0.30モル部である場合(実施例11)またはCM1が0.95モル部である場合(実施例12)に比べて、ビッカース硬度がより高く、MTTFがより長く、容量変化率がより良好であることが確認できた。
【0245】
CM1が0.40モル部以上0.90モル部以下である場合(実施例8、実施例5)では、CM1が0.30モル部である場合(実施例11)に比べて粒界成分を十分に確保できるため、主相粒子の異常粒成長や粒径ばらつきを抑制することができることによりMTTFがより向上したものと考えられる。
【0246】
CM1が0.40モル部以上0.90モル部以下である場合(実施例8、実施例5)では、CM1が0.95モル部である場合(実施例12)に比べてドナー成分に対するアクセプター成分の割合が適切な範囲内であるため酸素欠陥の生成を抑制できることによりMTTFが向上したものと考えられる。また、粒界成分が多すぎないため外装領域の主相粒子の粒成長が進行したことによりビッカース硬度がより高くなったものと考えられる。
【0247】
表6Aおよび表6Bより、r1が、180nm<r1<240nmの関係を満たす場合(実施例8)は、r1が180.0nmである場合(実施例13)またはr1が250.0nmである場合(実施例14)に比べてビッカース硬度がより高く、MTTFがより長いことが確認できた。
【0248】
r1が、180nm<r1<240nmの関係を満たす場合(実施例8)はr1が250.0nmである場合(実施例14)に比べて層間粒子数、すなわち、内部電極層に挟まれた内側誘電体層中の粒子数を多くすることができるため、MTTFがより長くなったと考えられる。
【0249】
また、r1が、180nm<r1<240nmの関係を満たす場合(実施例8)は,r1が180nmである場合(実施例13)に比べて、主相粒子へ副成分が十分に固溶したためMTTFがより長くなったと考えらえる。