IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ソリューションズの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021865
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】災害対策支援装置、及び対策支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20240101AFI20240208BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125011
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000233055
【氏名又は名称】株式会社日立ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津浦 亜衣
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊也
(72)【発明者】
【氏名】木嶋 百音
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC35
(57)【要約】      (修正有)
【課題】収集した情報を有効に活用して災害に対する対策の立案を支援する災害対策支援装置及び対策支援方法を提供する。
【解決手段】災害対策支援装置における処理は、公共施設によるサービスを利用している利用者の所在情報と利用者のサービスに関する障害報告の情報とを含む障害情報と、被災した公共施設の所在情報及びその公共施設の損傷状況の情報を含む被災情報とを記憶し、利用者の所在情報に基づき、被災した公共施設が属する地域を推定し、推定した地域に基づき、被災した公共施設を特定し、特定した公共施設、及び記憶した被災情報に基づき、被災した公共施設の損傷の程度を示す緊急度、及びその損傷による他の公共施設への影響の大きさを示す影響度を算出し、算出した緊急度及び影響度と、緊急度及び影響度の信頼性を示す情報とに基づき、被災した公共施設に対する対策の優先度を算出し、算出した優先度の情報を出力する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
災害により被災した、複数の公共施設を含んで構成されている公共システムに対する対策を支援する災害対策支援装置であって、
公共施設によるサービスを利用している利用者の所在情報と前記利用者の前記サービスに関する障害の報告情報とを含む障害情報と、被災した前記公共施設の所在情報及び当該公共施設の損傷状況の情報を含む被災情報とを記憶する記憶装置、及び、
前記利用者の所在情報に基づき、被災した前記公共施設が属する地域を推定する処理と、
前記推定した地域に基づき、被災した前記公共施設を特定する処理と、
前記特定した公共施設、及び前記記憶した被災情報に基づき、前記被災した公共施設の損傷の程度を示す緊急度、及び当該損傷による他の公共施設への影響の大きさを示す影響度を算出する処理と、
前記算出した緊急度及び影響度と、前記算出した緊急度及び影響度の信頼性を示す情報とに基づき、前記被災した公共施設に対する対策の優先度を算出する処理と、
算出した優先度の情報を出力する処理とを実行する処理装置
を備える、災害対策支援装置。
【請求項2】
前記処理装置は、前記優先度を算出した後、前記被災情報の修正を入力装置を介してユーザから受け付け、前記修正された被災情報に基づき優先度を再度算出する、請求項1に記載の災害対策支援装置。
【請求項3】
前記処理装置は、前記被災した公共施設の緊急度を、前記被災した公共施設の損傷状況の情報、前記災害の発生時からの経過時間、前記被災した公共施設以外の他の公共施設による前記利用者へのサービスの提供可能性の程度、前記被災した公共施設に関して必要な手続の期限、又は、前記被災した公共施設と連携している他の施設への影響の大きさの少なくともいずれかに基づき算出する、請求項1に記載の災害対策支援装置。
【請求項4】
前記処理装置は、前記被災した公共施設の影響度を、前記公共施設の被災により影響を受ける他の利用者の数の情報、又は、前記他の利用者に対して前記被災した公共施設を介して提供されているサービスの内容を示す情報に基づき算出する、請求項1に記載の災害対策支援装置。
【請求項5】
前記記憶装置は、前記緊急度又は前記影響度の複数の算出方法を記憶し、
前記処理装置は、前記複数の算出方法から、前記緊急度又は前記影響度の算出方法の選択を入力装置を介してユーザから受け付け、前記選択された算出方法に基づき前記緊急度又は前記影響度を算出する、
請求項1に記載の災害対策支援装置。
【請求項6】
前記処理装置は、前記被災情報、及び前記公共施設が属する公共システムの構成情報に基づき、将来被災する公共施設を推定し、推定した公共施設に基づき、将来の影響度を算出する、請求項1に記載の災害対策支援装置。
【請求項7】
前記処理装置は、前記算出した優先度の修正の入力を、入力装置を介してユーザから受け付ける、請求項1に記載の災害対策支援装置。
【請求項8】
前記処理装置は、
前記算出した緊急度及び影響度と、前記信頼性を示す情報と、前記緊急度又は前記影響度に係る重み値とに基づいて前記優先度を算出し、
前記修正された優先度に応じて、前記緊急度又は影響度に係る重み値を変更する、
請求項7に記載の災害対策支援装置。
【請求項9】
前記処理装置は、前記算出した複数の公共施設の優先度が同じであるか否かを判定し、前記複数の公共施設の優先度が同じである場合には、前記公共施設が属する公共システムの構成情報に基づき、前記複数の公共施設のいずれかの優先度を変更する、請求項1に記載の災害対策支援装置。
【請求項10】
災害により被災した、複数の公共施設を含んで構成されている公共システムに対する対策を支援する災害対策支援方法であって、
情報処理装置が、
公共施設によるサービスを利用している利用者の所在情報と前記利用者の前記サービスに関する障害の情報とを含む障害情報と、被災した前記公共施設の所在情報及び当該公共施設の損傷状況の情報を含む被災情報とを記憶し、
前記利用者の所在情報に基づき、被災した前記公共施設が属する地域を推定する処理と、
前記推定した地域に基づき、被災した前記公共施設を特定する処理と、
前記特定した公共施設、及び前記記憶した被災情報に基づき、前記被災した公共施設の損傷の程度を示す緊急度、及び当該損傷による他の公共施設への影響の大きさを示す影響度を算出する処理と、
前記算出した緊急度及び影響度と、前記算出した緊急度及び影響度の信頼性を示す情報とに基づき、前記被災した公共施設に対する対策の優先度を算出する処理と、
算出した優先度の情報を出力する処理とを実行する、
災害対策支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害対策支援装置、及び対策支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
台風又は地震等の自然災害発生時に、複数の箇所で公共のインフラストラクチャーを構成する設備(例えば、通信設備)が短時間に被災することにより、多数の障害が発生し、事業者が公共サービスを提供できなくなることがある。
【0003】
こうした背景から、自然災害からの復旧を早期に進める又は実現するための技術が提案されている。例えば、特許文献1には、危機事象が発生した際の各設備の被災度と予め設定された各設備が被災した際のサービスへの影響度とに基づいて、各設備について復旧を優先すべき度合いを示す復旧優先度を算出する復旧優先度算出部と、優先度算出部によって算出された各設備の復旧優先度に基づいて、各設備を復旧するためのリソース配分を含む復旧計画を策定する復旧計画策定部とを有する復旧計画策定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-26394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
災害からの早期の復旧のためには、災害に関する情報の収集及びその活用が重要である。しかしながら、収集した情報を有効に活用するための仕組みは、これまでにあまり蓄積されていないのが現状である。
【0006】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、収集した情報を有効に活用して災害に対する対策の立案を支援することが可能な災害対策支援装置、及び対策支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するための本発明の一つは、災害により被災した、複数の公共施設を含んで構成されている公共システムに対する対策を支援する災害対策支援装置であって、公共施設によるサービスを利用している利用者の所在情報と前記利用者の前記サービスに関する障害の報告情報とを含む障害情報と、被災した前記公共施設の所在情報及び当該公共施設の損傷状況の情報を含む被災情報とを記憶する記憶装置、及び、前記利用者の所在情報に基づき、被災した前記公共施設が属する地域を推定する処理と、前記推定した地域に基づき、被災した前記公共施設を特定する処理と、前記特定した公共施設、及び前記記憶した被災情報に基づき、前記被災した公共施設の損傷の程度を示す緊急度、及び当該損傷による他の公共施設への影響の大きさを示す影響度を算出する処理と、前記算出した緊急度及び影響度と、前記算出した緊急度及び影響度の信頼性を示す情報とに基づき、前記被災した公共施設に対する対策の優先度を算出する処理と、算出した優先度の情報を出力する処理とを実行する処理装置を備える、災害対策支援装置、とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、収集した情報を有効に活用して災害に対する対策の立案を支援することができる。
上記した以外の構成及び効果等は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】災害対策支援装置が備える主な機能の一例を説明する図である。
図2】災害対策支援装置が備えるハードウェアの一例を示す図である。
図3】災害対策支援処理の概要を説明するフロー図である。
図4】災害報告情報入力画面の一例を示す図である。
図5】通信障害報告入力画面の一例を示す図である。
図6】設備被災報告入力画面の一例を示す図である。
図7】地図画面の一例を示す図である。
図8】災害発生報告入力画面の一例を示す図である。
図9】被災箇所管理テーブルの一例を示す図である。
図10】地域推定処理の一例を説明する図である。
図11】被災設備管理テーブルの各例を示す図である。
図12】被災設備管理テーブルの各例を示す図である。
図13】被災設備管理テーブルの各例を示す図である。
図14】優先度算出式編集画面の一例を示す図である。
図15】優先度算出式編集画面の一例を示す図である。
図16】緊急度の算出方法の一例を示す図である。
図17】緊急度の算出方法の他の一例を示す図である。
図18】緊急度の算出方法の他の一例を示す図である。
図19】緊急度の算出方法の他の一例を示す図である。
図20】緊急度の算出方法の他の一例を示す図である。
図21】影響度の算出方法の一例を示す図である。
図22】影響度の算出方法の他の一例を示す図である。
図23】優先度表示画面の一例を示す図である。
図24】工事内容提示処理の詳細を説明するフロー図である。
図25】迂回ルート算出処理の詳細を説明するフロー図である。
図26】優先度変更処理を説明するための設備-回線情報の一例を示す図である。
図27】優先度変更処理を説明するための被災設備管理テーブルの一例を示す図である。
図28】優先度修正画面の一例を示す図である。
図29】優先度修正画面の一例を示す図である。
図30】優先度修正画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態に係る災害対策支援装置1は、台風、洪水、又は地震等の災害により、公共システムにおける公共施設が被災した場合に、その公共施設に係る事業者の復旧対策を支援する。災害対策支援装置1は、事業者が管理する情報処理装置等(以下、事業者端末という)からの要求に応じて、復旧対策のための情報を提供する。
【0011】
公共システムにおける公共施設とは、例えば、道路、治水施設、港湾、鉄道、公園、上下水道、通信設備、エネルギー供給施設等の公共に資する施設又は設備(いわゆる社会的基盤施設又はインフラストラクチャー)である。本実施形態では、公共施設は、複数の通信設備を含んで構成されている通信系統における通信設備であるものとする。通信事業者は、複数の通信設備により、利用者たる住民に通信サービスを提供している。ここで、本実施形態では、通信設備は主に通信ケーブルであるとするが、通信設備の種類を限定する趣旨ではない。
【0012】
図1は、災害対策支援装置1が備える主な機能の一例を説明する図である。災害対策支援装置1は、情報入力部101、被災地域推定部102、被災設備修正部103、優先度要素算出部104、優先度算出部105、優先度変更部106、優先度修正部107、パラメータ調整部108、工事内容提案部109、及び優先度表示部110の各機能を備える。
【0013】
情報入力部101は、通信サービスを利用している利用者の所在情報とその利用者のサービスに関する障害の通報の情報とを含む障害情報(以下、通信障害情報という)の入力をユーザ(本実施形態では、通信事業者)から受け付ける。
【0014】
また、情報入力部101は、被災した通信設備(以下、被災設備という)の所在情報及びその通信設備の損傷状況の情報を含む被災情報(以下、被災設備情報という)の入力をユーザから受け付ける。
【0015】
また、情報入力部101は、災害領域の情報及びその災害領域における公共施設の損傷状況の情報を含む被災情報(以下、災害情報という)の入力をユーザから受け付ける。
【0016】
被災地域推定部102は、通信障害情報における通信設備の利用者の所在情報に基づき、被災した公共施設が属する地域(以下、被災地域という)を推定する。
【0017】
優先度要素算出部104は、被災地域推定部102が推定した被災設備と、情報入力部101で入力された被災情報(被災設備情報及び災害情報)とに基づき、被災設備の損傷の程度を示す緊急度、及び、その損傷による他の通信設備への影響の大きさを示す影響度をそれぞれ算出する。緊急度及び影響度は、被災設備の状態等に関連づけられたパラメータ及び、被災設備に対応付けられた重み値を構成要素とする。緊急度及び影響度の詳細は後述する。
【0018】
なお、本実施形態では、優先度要素算出部104は、複数の算出方法から、緊急度及び影響度の算出方法の選択を入力装置を介してユーザから受け付け、選択された算出方法に基づき、緊急度及び影響度を算出する。
【0019】
優先度算出部105は、算出した緊急度及び影響度と、緊急度及び影響度の算出値の信頼性を示す情報(以下、信頼度という)とに基づき、被災した公共施設に対する対策の優先度(以下、暫定優先度という)を算出する。
【0020】
被災設備修正部103は、暫定優先度を算出した後、被災設備情報及び災害情報の修正を入力装置を介してユーザから受け付ける。例えば、被災設備修正部103は、ユーザが被災地域の現地調査を行ったことに基づき入力された情報に基づき、被災情報(被災設備情報及び災害情報)を修正する。そして、優先度算出部105は、修正された情報に基づく優先度(以下、確定優先度という)を再度算出する。
【0021】
優先度変更部106は、算出した各優先度のうち複数の被災設備の優先度が同じであるか否かを判定し、複数の被災設備の優先度が同じである場合には、後述する設備-位置情報170に基づき、その被災設備の優先度を異ならせる(一方の被災設備の優先度を他方の被災設備の優先度より低くする)。
【0022】
優先度修正部107は、さらに、優先度の修正の入力をユーザから入力装置を介して受け付ける。
【0023】
パラメータ調整部108は、修正された優先度に応じて、緊急度及び影響度に係るパラメータ及び重み値を変更する。
【0024】
工事内容提案部109は、被災設備修正部103で修正入力された被災設備情報に基づき、損傷している通信設備に対する対策内容(工事内容等)を特定し、特定した対策内容を画面に表示する。
【0025】
優先度表示部110は、優先度に関する情報を画面に表示する。
【0026】
次に、災害対策支援装置1は、災害関連情報150、設備-回線情報160、設備-位置情報170、回線-契約情報180、及び業務情報190を記憶している。
【0027】
災害関連情報150は、通信障害情報、被災設備情報、及び災害情報を含む情報である。災害関連情報150は、後述する被災箇所管理テーブル900を含んで構成される情報である。
【0028】
設備-回線情報160は、通信系統の構成情報(通信設備の接続及び連携の構成、及び、各通信設備に接続している需要家(利用者)の構成を含む情報)である。
【0029】
設備-位置情報170は、通信設備と、その通信設備の位置と、その通信設備が属する地域とを対応づけて記憶した情報である。なお、この地域は、本実施形態では、通信事業者の各営業所の管轄地域によって特定されるものとする。
【0030】
回線-契約情報180は、通信設備と、その通信設備を介して各利用者が提供を受ける具体的なサービス内容(本実施形態では通信回線契約の種類。例えば、個人契約又は法人契約といった回線の種類。)と、各利用者の所在情報(住所等)とを対応付けた情報である。
【0031】
業務情報190は、各通信設備の現在の稼働状況の情報である。また、業務情報190は、通信設備の復旧工事を行う担当チームの情報、及びその工事の種類の情報等を含む。
【0032】
次に、図2は、災害対策支援装置1が備えるハードウェアの一例を示す図である。災害対策支援装置1は、CPU (Central Processing Unit)、DSP (Digital Signal Processor)、GPU (Graphics Processing Unit)、FPGA (Field-Programmable Gate Array)等の処理装置91(プロセッサ)と、ROM (Read Only Memory)、又はRAM (Random Access Memory)等の主記憶装置92と、HDD (Hard Disk Drive)、又はSSD (Solid State Drive)等の記憶装置とからなる補助記憶装置93と、NIC (Network Interface Card)、無線通信モジュール、USB (Universal Serial Interface)モジュール、又はシリアル通信モジュール等で構成される通信装置94と、マウスやキーボード等で構成される入力装置95と、液晶ディスプレイまたは有機EL (Electro-Luminescence)ディスプレイ等で構成される出力装置96とを備える。
【0033】
上記で説明した災害対策支援装置1の各機能部の機能は、災害対策支援装置1の処理装置91が、主記憶装置92又は補助記憶装置93に格納されている各機能部の機能を実現する所定のプログラムを読み出すことにより、実現される。各プログラムは、例えば、記録媒体に記録して配布することができる。なお、災害対策支援装置1は、その全部または一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想化技術やプロセス空間分離技術等を用いて提供される仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。また、災害対策支援装置1によって提供される機能の全部または一部は、例えば、クラウドシステムがAPI (Application Programming Interface)等を介して提供するサービスによって実現してもよい。
次に、災害対策支援装置1が行う処理について説明する。
【0034】
<災害対策支援処理>
図3は、災害対策支援装置1が実行する災害対策支援処理の概要を説明するフロー図である。
まず、災害対策支援装置1は、災害関連情報150の入力をユーザ(事業者端末等)から受け付ける情報入力処理s10を実行する。情報入力処理s10の詳細は、後述する。
【0035】
そして、災害対策支援装置1は、情報入力処理s10で入力された災害関連情報150に基づき、被災した設備(被災設備)が属する地域(被災地域)を推定する地域推定処理s20を実行する。地域推定処理s20の詳細は後述する。
【0036】
また、災害対策支援装置1は、被災地域と、災害関連情報150から算出される緊急度及び影響度と、信頼度等とに基づき、各被災設備の暫定優先度を算出する、暫定優先度算出処理s30を実行する。暫定優先度算出処理s30の詳細は後述する。そして、災害対策支援装置1は、算出した暫定優先度を災害対策支援装置1又は事業者端末等の画面に表示する。
【0037】
ここで、通信事業者の担当者等が、表示された暫定優先度に従って、被災地域における各被災設備及び各災害箇所の現地調査を行うことで、被災地域における被災設備の状況及び災害状況を特定する。例えば、担当者等は、被災地域において、災害関連情報150に登録されている被災設備及び災害以外で、被災している設備及び発生した災害を新たに発見し、又は、情報入力処理s10で入力された情報の誤りを発見する。
【0038】
その後、災害対策支援装置1は、現地調査の結果である被災情報(被災設備情報、及び災害情報)を修正する、被災設備確定処理s40を実行する。
【0039】
具体的には、例えば、災害対策支援装置1は、被災設備情報及び災害情報の修正入力を担当者等(事業者端末等)から受け付ける。
【0040】
そして、災害対策支援装置1は、修正した災害関連情報150に基づき、被災設備に対する復旧作業の内容を工事担当者に提案する工事内容提示処理s50を実行する。工事内容提示処理s50の詳細は後述する。
【0041】
また、災害対策支援装置1は、修正した災害関連情報150から新たに算出された緊急度及び影響度等に基づき正式優先度を算出する、優先度算出処理s60を実行する。なお、災害対策支援装置1は、暫定優先度算出処理s30の暫定優先度と同様の式により正式優先度を算出する。詳細は後述する。
【0042】
そして、災害対策支援装置1は、優先度算出処理s60で算出した各被災設備の正式優先度のうち、同じ正式優先度を有する各被災設備について、それらの正式優先度を変更する優先度変更処理s70を実行する。優先度変更処理s70の詳細は後述する。
【0043】
さらに、災害対策支援装置1は、優先度変更処理s70で変更した各被災設備の正式優先度に対するさらなる修正の入力をユーザから受け付ける優先度修正処理s80を実行する。優先度修正処理s80の詳細は後述する。
【0044】
災害対策支援装置1は、優先度修正処理s80により修正された正式優先度の情報を災害対策支援装置1又は事業者端末等に表示する優先度表示処理s90を実行する。例えば、災害対策支援装置1は、後述する優先度表示画面2300を表示する。
【0045】
災害対策支援装置1は、優先度修正処理s80により修正された正式優先度に基づき、優先度に係るパラメータ及び重み値を修正するパラメータ調節処理s100を実行する。パラメータ調節処理s100の詳細は後述する。
以下、各処理の具体例又は詳細を説明する。
【0046】
<情報入力処理>
情報入力処理s10において表示される画面について説明する。
災害対策支援装置1は、災害関連情報150を入力するための災害報告情報入力画面400を表示する。
【0047】
(災害報告情報入力画面)
図4は、災害報告情報入力画面400の一例を示す図である。災害報告情報入力画面400は、通信障害情報の入力をユーザから受け付ける通信障害報告入力画面500を表示する通信障害情報入力欄410と、被災設備情報の入力をユーザから受け付ける設備被災報告入力画面600を表示する被災設備情報入力欄420と、災害情報の入力をユーザから受け付ける災害発生報告入力画面800を表示する災害発生報告入力欄430とを備える。
【0048】
(通信障害報告入力画面)
図5は、通信障害報告入力画面500の一例を示す図である。通信障害報告入力画面500は、通信障害の報告(通報)の番号(障害報告番号)を設定する通信障害番号設定欄510と、通信事業者の顧客(利用者)の識別情報の入力をユーザから受け付けるお客様情報設定欄520と、利用者からの通信障害の通報の内容の入力をユーザから受け付ける報告内容入力欄530と、通報日時の入力をユーザから受け付ける報告日時入力欄540と、以上の設定内容及び入力内容の災害関連情報150への登録をユーザから受け付ける登録欄550とを備える。
【0049】
(設備被災報告入力画面)
図6は、設備被災報告入力画面600の一例を示す図である。設備被災報告入力画面600は、被災設備の入力を受け付ける被災設備選択欄610(住所及び後述する地図画面700により選択可能)と、被災設備の状況の情報の入力を受け付ける被災状況入力欄620と、被災設備の画像の読み込みを受け付ける被災設備画像データ取り込み欄630と、被災設備画像データ取り込み欄630で読み込まれた画像データに基づき、被災設備の状況の候補(関連キーワード)を表示すると共にその状況の選択を受け付ける被災状況キーワード候補表示欄640とを備える。
【0050】
なお、被災状況キーワード候補表示欄640に関して、災害対策支援装置1は次の処理を行う。すなわち、災害対策支援装置1は、被災設備画像データ取り込み欄630に入力された被災設備の画像データに対して所定の画像認識処理を行う(例えば、読み込まれた被災設備の画像データに対して被災設備の状況(損傷、傾き)の情報を出力する学習済みモデルに当該画像データを入力する、又は、予め用意した被災時の設備の画像データとのパターンマッチングを行う)ことで、被災設備の状況を推定し、推定した結果に対応する1又は複数の関連キーワードの候補を、被災状況キーワード候補表示欄640に表示する。
【0051】
(地図画面)
図7は、地図画面700の一例を示す図である。地図画面700は、所定の地図データベースから読み込んだ地図を表示する地図表示欄710と、設備表示欄720とを備える。
【0052】
地図表示欄710には様々な通信設備712が表示され、ユーザが地図表示欄710内の領域711を指定すると、その領域711に存在する通信設備712の情報が設備表示欄720に表示される。ユーザが、設備表示欄720に表示された通信設備を選択すると、その通信設備が、設備被災報告入力画面600の被災設備選択欄610又は後述する災害発生報告入力画面800の被災領域選択欄810に反映される。
【0053】
(災害発生報告入力画面)
図8は、災害発生報告入力画面800の一例を示す図である。災害発生報告入力画面800は、設備被災報告入力画面600と同様の入力画面である。災害発生報告入力画面800は、災害領域の入力を受け付ける被災領域選択欄810(住所及び前記の地図画面700により選択可能)と、災害状況の情報の入力を受け付ける災害状況入力欄820と、災害状況の画像の読み込みを受け付ける災害画像データ取り込み欄830と、災害画像データ取り込み欄830に読み込まれた画像データに基づき、災害状況の候補(関連キーワード)を表示する災害状況キーワード候補表示欄840とを備える。
【0054】
なお、災害発生報告入力画面800において、地図画面700により領域711が指定された場合、災害対策支援装置1は、以下のようにして、将来の被災設備(将来被災設備)を推定する。すなわち、災害対策支援装置1は、指定された領域711を含む又はその領域711の周辺の領域に対して、災害予測がなされているかを判定する(例えば、所定の気象情報データベースを参照し、当該領域に災害予測情報が設定されているか否かを判定する)。そして、災害対策支援装置1は、災害予測がなされていると判定した場合には、当該領域に存在する設備を、地図画面700に表示されている設備から検索する。そして、災害対策支援装置1は、検索した設備を、将来被災設備として記憶する。なお、災害対策支援装置1は、災害発生報告入力画面800の被災領域選択欄810に住所が入力された場合も、同様にして、将来被災設備を検索して記憶してもよい。
【0055】
(被災箇所管理テーブル)
ここで、図9は、被災設備情報等を記憶したテーブルである被災箇所管理テーブル900の一例を示す図である。被災箇所管理テーブル900は、レコード番号901、被災設備の箇所が設定される被災箇所902、被災設備の種類が設定される箇所種別903、被災設備の原因(被災設備の箇所に対応する災害情報に基づき設定される)が設定される被災原因904、及び被災設備の状況の情報が設定される被災状況905の各データ項目を有する。
【0056】
なお、被災箇所管理テーブル900は、通信障害情報、被災設備情報、及び災害情報の情報をまとめて記憶してもよい。
【0057】
<地域推定処理>
次に、地域推定処理s20について説明する。
図10は、地域推定処理s20の一例を説明する図である。同図に示すように、災害対策支援装置1は、通信障害報告入力画面500で入力された各通信障害の障害報告番号610に係る利用者の所在情報を、回線-契約情報180に基づき特定する。そして、災害対策支援装置1は、特定した各所在情報と、設備-位置情報170とに基づき、その所在情報に対応する被災設備1010を特定する。
【0058】
そして、災害対策支援装置1は、同一の被災設備1011に関する複数の通信障害の情報1021を、当該被災設備1011に対応づけて記憶する。災害対策支援装置1は、被災設備1011に対して、同一の被災管理番号1031(識別子)を設定する。
【0059】
以上により、災害対策支援装置1は、同一の被災設備1011に関する複数の通信障害情報を、まとめて取り扱うことができる。
【0060】
次に、災害対策支援装置1は、同一の地域に属する被災設備を特定する。災害対策支援装置1は、同一の地域(例えば、同一の地理的な区域又は同一の通信系統)に属する複数の被災設備の被災管理番号を同一の被災管理番号に集約し、その被災管理番号の被災設備の情報を、後述する被災設備管理テーブル1100に記憶する。
【0061】
例えば、災害対策支援装置1は、被災設備の地理的関係に基づいて、情報を集約する。具体的には、災害対策支援装置1は、設備-位置情報170に基づき、同一の区域の被災設備を同一の地域とする。そして、災害対策支援装置1は、その同一の地域に属する被災設備の一つを、その地域の代表的な施設(以下、代表設備という)として設定する。なお、災害対策支援装置1は、ユーザから、代表設備の選択をユーザから受け付けてもよいし、自動的に設定してもよい。
【0062】
災害対策支援装置1は、代表設備についてのみ優先度を算出する。これにより、被災設備が多数ある場合に、災害に対する対策を行うために必要な設備に関してのみ優先度を算出すればよいので、処理効率を向上させ、より迅速な災害対策の支援を可能とすることができる。
【0063】
また、例えば、災害対策支援装置1は、被災設備が属する通信系統に基づいて、情報を集約する。具体的には、災害対策支援装置1は、設備-回線情報160に基づき、同一の系統における同一の種類の通信線(例えば、幹線、準幹線、又は需要家に接続する末端の通信ケーブルの各種類に分類する)に係る被災設備を同一の地域とする。そして、災害対策支援装置1は、その同一の地域に属する被災設備の一つを、その地域の代表設備として設定する。なお、災害対策支援装置1は、ユーザから、代表設備の選択をユーザから受け付けてもよいし、自動的に設定してもよい。
【0064】
以上により、災害対策支援装置1は、同一の地域における複数の被災設備に関する被災設備情報をまとめて取り扱うことができる。
ここで、被災設備管理テーブル1100の具体例を説明する。
【0065】
(被災設備管理テーブル)
図11-13は、地域推定処理s20により作成される被災設備管理テーブルの各例を示す図である。被災設備管理テーブル1100は、被災設備の被災管理番号が設定される被災管理番号1101、被災設備が代表設備に該当する場合にその旨の情報が設定される代表設備フラグ1102、被災設備の番号が設定される被災設備番号1103、被災設備の種類が設定される設備種別1104、被災設備の種類及び個体に係る識別子が設定される設備ID1105、被災設備に関連する被災設備(関連被災設備)の識別子が設定される関連被災設備番号1106、現在の優先度が設定される現在優先度1107、将来の優先度が設定される将来優先度1108、正式優先度の値が算出済みであるか否かを示す情報である確定フラグが設定される確定フラグ1109、被災設備に対して前記の実地調査が行われたか否かを示す情報である調査フラグが設定される調査フラグ1110の各データ項目を有する。なお、関連被災設備は、ユーザが指定してもよいし、災害対策支援装置1が、設備-回線情報160等に基づき自動的に設定してもよい。なお、現在優先度1107、将来優先度1108、及び確定フラグ1109については、例えば、優先度算出処理s60において情報が設定される。
【0066】
<暫定優先度算出処理、優先度算出処理>
次に、暫定優先度算出処理s30及び優先度算出処理s60について説明する。なお、優先度算出処理s60は、暫定優先度算出処理s30と同様にして暫定優先度を算出する。そこで、ここでは、確定優先度及び暫定優先度を総称して「優先度」と称することで、暫定優先度算出処理s30及び優先度算出処理s60の説明を兼ねることとする。
【0067】
(優先度算出式編集画面)
図14、15は、暫定優先度算出処理s30及び優先度算出処理s60において表示される優先度算出式編集画面の一例を示す図である。
【0068】
図14に示す優先度算出式編集画面1400は、優先度の算出式の入力をユーザから受け付ける。具体的には、優先度算出式編集画面1400は、優先度算出式編集欄1410、信頼度編集欄1420、緊急度算出式追加欄1430、影響度算出式追加欄1440、及び算出式編集欄1450を備える。
【0069】
優先度算出式編集欄1410は、緊急度算出式追加欄1430で追加された1又は複数種類の緊急度(緊急度1、緊急度2、緊急度3、・・・)、影響度算出式追加欄1440で追加された1又は複数種類の影響度(影響度1、影響度2、影響度3、・・・)、及び、演算子(例えば、加算演算子、乗算演算子)の入力を受け付ける。ユーザは、優先度算出式編集欄1410を用いることで、優先度の任意の算出式を作成し登録することができる。そして、災害対策支援装置1は、登録した算出式の値に、信頼度を乗算することで、優先度を算出する。
【0070】
優先度算出式編集欄1410で登録される算出式は、1又は複数の項のからなり、例えば、緊急度及び影響度の乗算値の項、緊急度のみの項、又は影響度のみの項のからなる各項の合計値の算出式である。
【0071】
信頼度編集欄1420は、信頼度の入力をユーザから受け付ける。例えば、ユーザは、現地調査を行う前は低い値を設定し、現地調査を行った後は高い値を設定する。
【0072】
算出式編集欄1450は、緊急度算出式追加欄1430又は影響度算出式追加欄1440で選択された緊急度又は影響度の算出方法(算出式)の入力をユーザから受け付ける。
【0073】
算出式編集欄1450では、ユーザは、緊急度又は影響度の算出式を、被災箇所管理テーブル900等の災害関連情報150を記録したデータベースを操作するSQLによって指定する。
【0074】
一方、図15に示す優先度算出式編集画面1500は、図14に示す優先度算出式編集画面1500と類似する構成を備える。ただし、この優先度算出式編集画面1500では、ユーザは、緊急度又は影響度の算出式を、被災箇所管理テーブル900等の災害関連情報150を記録したデータベース1501の各データを条件式によって指定する。
【0075】
ここで、優先度算出式編集画面1400、1500で設定される緊急度の算出方法(算出式)の具体例について説明する。
【0076】
(緊急度)
図16は、緊急度の算出方法の一例を示す図である。この緊急度(第1緊急度)は、被災設備に関して、被災箇所管理テーブル900の被災原因904及び被災状況905に関連キーワード1601(例えば、通信線のたわみ又は電柱崩壊といった早急に対策を取る必要がある被災内容。)が設定されている場合に、その関連キーワード1601に対応するパラメータたる二次災害発生度1602の値によって求まる。
【0077】
図17は、緊急度の算出方法の他の一例を示す図である。この緊急度(第2緊急度)は、被災設備に関して、対応する災害の発生日からの経過日数1701に対応づけられた重み値1702によって求まる。
【0078】
図18は、緊急度の算出方法の他の一例を示す図である。この緊急度(第3緊急度)は、被災設備に関して、その被災設備が稼働しない場合に、通信事業者がその被災設備以外の通信設備を用いて利用者に通信サービスを提供可能な通信網(現迂回ルート)が存在し(現迂回ルート有無1801)、かつその現迂回ルートが利用可能である(現迂回ルート利用可否1802)場合に、その場合に対応づけられたパラメータである対策容易度1803の値と、その場合に対応づけられた重み値1804との乗算値によって求まる。
【0079】
なお、災害対策支援装置1は、現迂回ルート有無1801を、例えば、設備-回線情報160に基づき算出し、現迂回ルート利用可否1802を業務情報190に基づき算出することができる。
【0080】
図19は、緊急度の算出方法の他の一例を示す図である。この緊急度(第4緊急度)は、被災設備に関して、被災箇所管理テーブル900の被災原因904及び被災状況905に報告義務1901(例えば、地割れ又は堤防崩壊の報告といった、所定部署への必要な手続)が設定されている場合に、これに対応づけられた手続の期限を示すパラメータである期限1902に対応づけられた重み値1903によって求まる。
【0081】
図20は、緊急度の算出方法の他の一例を示す図である。この緊急度(第5緊急度)は、被災設備に関して、その被災設備と連携又は接続している設備を管理している他の事業者が存在する場合に(他社調整2001)、その事業者に対応付けられたパラメータである他社調整有無2002の値によって求まる。
【0082】
次に、影響度の算出方法(算出式)の具体例について説明する。
【0083】
図21は、影響度の算出方法の一例を示す図である。この緊急度(第1影響度)は、被災設備に関して、その被災時に被災設備と連携していた他の通信設備(例えば、被災設備の下流の通信設備)を利用していた利用者の数(需要家の戸数)のパラメータである現影響戸数2101と、その被災時後の所定の将来時点において被災すると予測される通信設備(前記の将来被災設備)と連携している他の通信設備(例えば、将来被災設備の下流の通信設備)を利用する利用者の数(需要家の戸数)のパラメータである将来影響戸数2102と、現影響戸数2101及び将来影響戸数2102の平均値2103とのいずれかによって求まる。
【0084】
なお、災害対策支援装置1は、現影響戸数2101を、設備-回線情報160に基づき算出することができる。また、災害対策支援装置1は、将来影響戸数2102を、災害発生報告入力画面800において算出された将来被災設備と、設備-回線情報160とに基づき算出することができる。また、災害対策支援装置1は、第1緊急度として、現影響戸数2101及び将来影響戸数2102の平均値ではなく、それぞれに対応づけた各重み値に基づいた案分値を算出してもよい。
【0085】
図22は、影響度の算出方法の他の一例を示す図である。この緊急度(第2影響度)は、被災設備に関して、その被災設備に係る全利用者の法人契約の割合(法人用回線占有率2201)に応じた重み値2202によって求まる。なお、災害対策支援装置1は、この重み値2202を、設備-回線情報160及び回線-契約情報180に基づき算出することができる。
【0086】
ここで、優先度算出式編集画面の優先度算出式編集欄に将来のデータを含む緊急度又は影響度が設定されている場合、災害対策支援装置1は、現在の優先度及び将来優先度を算出してもよい。例えば、災害対策支援装置1は、優先度算出式編集欄に「影響度1」(第1影響度)が設定されている場合、現影響戸数2101に基づいて現在の優先度を算出する他、将来影響戸数2101又は平均値2103に基づいて将来の優先度を算出する。
【0087】
(優先度表示画面)
次に、図23は、暫定優先度算出処理s30及び優先度算出処理s60において表示される優先度表示画面2300の一例を示す図である。優先度表示画面2300は、各被災管理番号ごとの優先度の情報を表示している。具体的には、優先度表示画面2300は、被災管理番号2301、被災管理番号2301の被災設備に係る優先度2302(正式優先度又は暫定優先度)、被災設備の工事箇所2303(又はエリア)、その被災設備の工事種別2304、被災設備の工事担当チーム2305の各情報を表示する。
【0088】
なお、工事箇所2303、工事種別2304、及び工事担当チーム2305は、例えば、業務情報190、又は設備-位置情報170により特定される。
【0089】
優先度表示画面2300の優先度の表示順は、優先度の算出順でもよいし、その他の項目の値による表示順でもよいし、ユーザが任意で変更可能であってもよい。また、優先度表示画面2300に表示する工事箇所2303、工事種別2304、又は工事担当チーム2305の情報をユーザが任意に指定可能としてもよい。
【0090】
また、災害対策支援装置1は、優先度の値を画面に表示するだけでなく、地図を画面に表示し、その地図上に、各被災設備及びその優先度を表示してもよい。さらに、この場合、災害対策支援装置1は、現在の優先度及び将来の優先度の情報を地図上に表示してもよい。これにより、ユーザは、災害復旧の将来のスケジュールを見通しよく立案することができる。
【0091】
なお、災害対策支援装置1は、全ての被災設備の優先度を算出するのではなく、被災設備管理テーブル1100に代表設備として設定されている被災設備に対してのみ、優先度を算出する。また、災害対策支援装置1は、全ての種類の被災設備の優先度を算出するのではなく、被災設備管理テーブル1100において所定の種類の被災設備(例えば、ケーブル)に対してのみ、優先度を算出する。
【0092】
<工事内容提示処理>
次に、図24は、工事内容提示処理s50の詳細を説明するフロー図である。ここでは、暫定優先度が高かったある被災設備に対する処理を説明する。
【0093】
災害対策支援装置1は、被災設備を除いた他の通信設備により各利用者への通信サービスの提供が可能となる通信設備の構成(迂回ルート)があるか否かを判定する(s51)。例えば、災害対策支援装置1は、第3緊急度で説明した処理により迂回ルートがあるか否かを判定する。
【0094】
迂回ルートがある場合は(s51:有)、災害対策支援装置1は、s52の処理を実行し、迂回ルートがない場合は(s51:無)、災害対策支援装置1は、s56の処理を実行する。
【0095】
s52において災害対策支援装置1は、迂回ルートが現在利用可能であるか否かを判定する。例えば、災害対策支援装置1は、第3緊急度で説明した処理により、迂回ルートが現在利用可能であるか否かを判定する。
【0096】
迂回ルートが現在利用可能がある場合は(s52:可)、災害対策支援装置1は、s53の処理を実行し、迂回ルートが現在利用可能でない場合は(s52:否)、災害対策支援装置1は、s58の処理を実行する。
【0097】
s53において災害対策支援装置1は、迂回ルートの補強の必要性及び可能性を判定する。例えば、災害対策支援装置1は、被災箇所管理テーブル900に登録されている被災設備の情報(例えば、被災原因904、被災状況905)に基づき、迂回ルートの補強の必要性及び可能性を判定してもよいし、ユーザから、迂回ルートの補強の必要性及び可能性の情報入力を受け付けてもよい。
【0098】
迂回ルートの補強が必要であり可能である場合は(s53:要、可)、災害対策支援装置1は、s54の処理を実行し、迂回ルートの補強が不要である場合は(s53:不要)、災害対策支援装置1は、s55の処理を実行し、迂回ルートの補強が必要だが不可能な場合は(s53:要、否)、災害対策支援装置1は、s58の処理を実行する。
【0099】
s54において災害対策支援装置1は、後述する迂回ルート算出処理を実行すると共に、迂回ルートを補強すべきことを示す情報を画面に表示し、工事内容提示処理s50は終了する。
【0100】
s55において災害対策支援装置1は、迂回ルートを補強する必要がないことを示す情報を画面に表示し、工事内容提示処理s50は終了する。
【0101】
他方、s56において災害対策支援装置1は、被災設備の復旧を行うことが可能であるか否かを判定する。例えば、災害対策支援装置1は、被災箇所管理テーブル900に登録されている被災設備の情報(例えば、被災原因904、被災状況905)に基づき、被災設備の復旧を行うことが可能か否かを判定してもよいし、ユーザから、被災設備の復旧を行うことが可能であるか否かの入力を受け付けてもよい。
【0102】
被災設備の復旧を行うことが可能である場合は(s56:可)、災害対策支援装置1は、s57の処理を実行し、被災設備の復旧を行うことが可能でない場合は(s56:否)、災害対策支援装置1は、s58の処理を実行する。
【0103】
s57において災害対策支援装置1は、後述する迂回ルート算出処理を実行すると共に、被災設備の復旧を行うべきことを示す情報を画面に表示し、工事内容提示処理s50は終了する。
【0104】
s58において災害対策支援装置1は、後述する迂回ルート算出処理を実行すると共に、新たな迂回ルートを構築すべきことを示す情報を画面に表示し、工事内容提示処理s50は終了する。
【0105】
<迂回ルート算出処理>
図25は、迂回ルート算出処理の詳細を説明するフロー図である。災害対策支援装置1は、既存の通信設備を用いて迂回ルートを構築することが可能か否かを判定する(s51)。例えば、災害対策支援装置1は、設備-回線情報160に基づき、既存の通信設備を用いて迂回ルートを構築することが可能か否かを判定する。
【0106】
既存の通信設備を用いて迂回ルートを構築することが可能である場合は(s511:可)、災害対策支援装置1は、所定の通信の切断及び接続の工事を行うべきことを示す情報を画面に表示し(s513)、迂回ルート算出処理s51は終了する。
【0107】
既存の通信設備を用いて迂回ルートを構築することが不可能である場合は(s511:否)、災害対策支援装置1は、ケーブルを新設する工事を行うべきことを示す情報を画面に表示し(s512)、迂回ルート算出処理s51は終了する。
【0108】
<優先度変更処理>
次に、優先度変更処理s70について説明する。
図26は、優先度変更処理s70を説明するための設備-回線情報160の一例を示す図である。この設備-回線情報160が示す通信系統は、上流の通信局2601からの幹線2602と、幹線2602から第1分岐点2603で分岐する第1準幹線2604と、第1分岐点2603の下流の第2分岐点2605で幹線2602からから分岐する第2準幹線2606と、第2準幹線2606の第3分岐点2607から分岐する第3準幹線2608とを含んで構成されている。そして、幹線2602の第2分岐点2605より下流の中途に設けられている第1被災設備2609、第1準幹線2604の末端に設けられている第2被災設備2610、及び、第2準幹線2606の第2分岐点2605と第3分岐点2607の間に設けられ、互いに隣接する2つの地域の第3被災設備2611の優先度がそれぞれ30であるものとする。
【0109】
この場合、災害対策支援装置1は、2つの第3被災設備2611を、同一の被災管理番号の被災設備に統合し、そのうち一つの被災設備のみを優先度の処理上管理する。このように、災害対策支援装置1は、地理的又は系統的に隣接又は近接する複数の被災設備を同一の被災設備として優先度の処理上管理することで、これらの被災設備に対しては同時に対策を行うことができるようにする。
【0110】
さらに、災害対策支援装置1は、第1被災設備2609の優先度を、同一の被災設備に再構成した第3被災設備2611の優先度より高く変更し、第2被災設備2610の優先度を、第3被災設備2611の優先度より高く変更する。このように、災害対策支援装置1は、優先度が同じ被災設備に関しては、下流側の通信設備が少ない方の被災整備の優先度をより高く変更する。影響を受ける通信設備(又は利用者)の数が少ない被災設備の優先度をより高くすることで、ユーザは、復旧作業により即効的な復旧効果が期待できる被災設備を優先することができる。なお、ここで説明した優先順位の調整は一例であり、例えば、ここで説明した逆の順序づけを行ってもよい。
【0111】
図27は、優先度変更処理s70を説明するための被災設備管理テーブル1100の一例を示す図である。同図に示すように、災害対策支援装置1は、設備-回線情報160等を参照し、被災管理番号「7」の被災設備群2701の地域と、被災管理番号「25」の被災設備2702の地域とが隣接していることを被災設備管理テーブル1100により特定する。そして、災害対策支援装置1は、これらの被災設備群2701及び被災設備2702を統合して、被災管理番号「7」の被災設備群2703に再構成した被災設備管理テーブル1100とする。
【0112】
なお、以上に説明した優先度変更処理s70の処理は一例であり、被災設備の統合及び優先順位の変更方法には様々なものがあり得る。
【0113】
<優先度修正処理、パラメータ調節処理>
次に、優先度修正処理s80及びパラメータ調節処理s100について説明する。
【0114】
図28は、優先度修正処理s80において表示される優先度修正画面2800の一例を示す図である。優先度修正画面2800は、各被災設備について、全ての緊急度及び影響度を用いて算出した全優先度2801と、優先度算出式編集画面1400、1500で入力された緊急度又は影響度のみを用いて算出した指定優先度2802との関係を散布図2803により示した画面である。ユーザは、散布図2803上の被災設備2804の位置を動かすことができる(符号2805)。これにより、災害対策支援装置1は、その被災設備2804の変更した優先度を記憶する。
【0115】
そして、パラメータ調節処理s100において、災害対策支援装置1は、優先度の算出根拠である緊急度又は影響度に係るパラメータ又はその重み値を、変更した優先度に応じて変更する。
【0116】
例えば、災害対策支援装置1は、変更した優先度が算出されるような、緊急度又は影響度におけるパラメータの値又は重み値を探索してもよい。また、例えば、災害対策支援装置1は、優先度の変更履歴(優先度修正画面2800でのユーザの修正履歴)を学習データとした機械学習を行った学習済みモデルに、今回変更した優先度を入力することで、パラメータ又は重み値の変更値を算出してもよい。また、災害対策支援装置1は、緊急度又は影響度の算出式を変更することを促す画面を表示してもよい。
【0117】
図29は、指定優先度として現影響戸数2101(第1影響度)に基づく指定優先度を指定した場合の、優先度修正画面2900の一例を示す図である。同図に示すように、この優先度修正画面2900の散布図2903では、被災管理番号「3」「5」の指定優先度は同じであるが、被災管理番号「3」の全優先度は被災管理番号「5」の全優先度に比べて非常に高い。そこで、ユーザ又は災害対策支援装置1は、優先度修正画面2900を用いて、第1影響度以外のパラメータに係る重み値を変更することが考えられる。もしくは、ユーザは、この散布図2903全体を参照することで、被災管理番号「3」は、現影響戸数以外の何らかの要因により外れ値となっている可能性がある、と判断することもできる。
また、被災管理番号「6」の被災設備の指定優先度に比べてその全優先度は極めて低い。そこで、ユーザ又は災害対策支援装置1は、優先度修正画面2900を用いて、第1影響度に係る重み値(ここでは現影響戸数2101)を変更することが考えられる。
【0118】
図30は、指定優先度として二次災害発生度1602(第1緊急度)に基づく優先度を指定した場合の、優先度修正画面3000の一例を示す図である。同図に示すように、この散布図3003では、関連キーワード「傾き」に係る被災管理番号「2」の被災設備の全優先度が極めて高い。そこで、ユーザ又は災害対策支援装置1は、関連キーワード「傾き」に係る重み値(ここでは二次災害発生度1602)を低くすることが考えられる。また、被災管理番号「1」の被災設備は二次被害の発生の可能性も低く、将来影響戸数も多くないにもかかわらず、その全優先度が高くなっている。そこで、ユーザ又は災害対策支援装置1は、二次災害発生度1602及び将来影響戸数2012以外のパラメータ及びこれに対応する重み値を変更することが考えられる。
【0119】
このように、パラメータ調節処理s100により、ユーザは、災害対策支援装置1が所定のアルゴリズムにて算出した優先度に対して経験的に違和感を覚えた場合に、自らの知見に基づいた、優先度の微調整を行うことができる。これにより、ユーザは、より実践的な災害への対策を行うことができる。
【0120】
以上に説明したように、本実施形態の災害対策支援装置1は、通報情報である通信障害情報における利用者の所在情報に基づき被災地域を推定し、被災地域に基づき被災設備を特定し、被災設備及び被災情報(被災設備情報及び災害情報)に基づき、被災設備の緊急度及び影響度を算出し、緊急度、影響度、及び信頼度に基づき、被災設備に対する優先度を算出してその情報を表示する。
【0121】
すなわち、災害対策支援装置1は、通信事業者等から収集した利用者からの障害情報及び災害情報に基づいて災害に対する緊急度及び影響度を算出し、これにさらに信頼度を加味して対策の優先度を算出する。
【0122】
このように、本実施形態の災害対策支援装置1によれば、収集した情報を有効に活用して災害に対する対策の立案を支援することができる。
【0123】
また、本実施形態の災害対策支援装置1は、暫定優先度を算出した後、被災情報の修正をユーザから受け付け、修正された被災情報に基づき優先度を再度算出する。
【0124】
これにより、例えば、ユーザは暫定優先度に基づいて被災地や被災設備の実地調査を行い、災害対策支援装置1は、その実地調査の結果に基づいてより正確な優先度を算出することができる。
【0125】
また、本実施形態の災害対策支援装置1は、被災設備の緊急度を、被災設備の損傷状況、災害発生時からの経過時間、被災設備以外の通信設備による迂回ルート、被災設備に関する期限、又は、被災設備と連携している他の通信設備への影響の大きさに基づき算出する。
【0126】
これにより、災害対策支援装置1は、被災の状況や運用の状況に即した緊急度を算出することができる。
【0127】
また、本実施形態の災害対策支援装置1は、被災設備の影響度を、被災設備に基づく影響戸数、又は、通信事業者と連携している他の事業者の有無に基づき算出する。
【0128】
これにより、災害対策支援装置1は、通信系統その他の系統の構成に応じた緊急度を算出することができる。
【0129】
また、本実施形態の災害対策支援装置1は、緊急度及び影響度の複数の算出方法から、緊急度及び影響度の算出方法の選択をユーザから受け付け、選択された算出方法に基づき緊急度及び影響度を算出する。
【0130】
これにより、災害対策支援装置1は、災害の状況や運用の状況に基づいた緊急度及び影響度を算出することができる。
【0131】
また、本実施形態の災害対策支援装置1は、被災情報、及び設備-回線情報160に基づき将来の被災設備を推定し、推定した被災設備に基づき将来の影響度を算出する。
【0132】
これにより、通信系統の状況に応じて、将来に発生するおそれのある災害又は二次災害を考慮した優先度を算出することができる。
【0133】
また、本実施形態の災害対策支援装置1は、算出した優先度の修正の入力をユーザから受け付ける。
【0134】
これにより、ユーザは、算出された優先度が経験的に誤っていると判断した場合に、適切に優先度を修正して実践的な災害対策を講じることができる。
【0135】
さらに、本実施形態の災害対策支援装置1は、修正された優先度に応じて、緊急度又は影響度に係る重み値を変更する。
【0136】
これにより、災害対策支援装置1は、より実践的な優先度を算出することができるようになる。
【0137】
また、本実施形態の災害対策支援装置1は、算出した複数の通信設備の優先度が同じである場合には、設備-回線情報160に基づき、その通信設備の優先度を変更する。
【0138】
これにより、ユーザは、各被災設備に対して明確な優先順を付して復旧対策を行えるようになる。
【0139】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。
【0140】
例えば、本実施形態における情報処理装置の機能部の一部は、他の機能部としてもよい。また、複数の機能部を統合して一つの機能部としてもよい。
【0141】
また、本実施形態で説明した緊急度及び影響度の算出式は例であり、様々な種類の算出式が考えられる。
【0142】
また、本実施形態では、通信のインフラストラクチャーが被災した場合を説明したが、本発明は、通信以外のインフラストラクチャーに対しても同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0143】
1 災害対策支援装置、101 情報入力部、102 被災地域推定部、103 被災設備修正部、104 優先度要素算出部、105 優先度算出部、106 優先度変更部、107 優先度修正部、108 パラメータ調整部、109 工事内容提案部、110 優先度表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30