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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021881
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】車両検知システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/14 20060101AFI20240208BHJP
   G01V 3/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
G08G1/14 A
G01V3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125034
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100221556
【弁理士】
【氏名又は名称】金田 隆章
(72)【発明者】
【氏名】若林 公則
(72)【発明者】
【氏名】藤井 慎介
(72)【発明者】
【氏名】安宅 脩
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】山岡 伸一
【テーマコード(参考)】
2G105
5H181
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB05
2G105DD02
2G105EE01
2G105HH08
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC17
5H181KK01
5H181KK07
(57)【要約】
【課題】駐車マスに車両があるか否かを判定するための手段に関する異常の有無をより正確に判定する車両検知システムを提供する。
【解決手段】車両検知システムは、車両が駐車される駐車マス内における磁気を検出する磁気センサと、磁気センサの検出結果を示す信号を電波により送信する子機と、電波により送信された信号を受信する親機と、演算回路と、を備える。演算回路は、親機によって受信された信号の受信信号強度に基づいて、駐車マスに車両があるか否かを判定した第1の判定結果を生成し、磁気センサの検出結果に基づいて、駐車マスに車両があるか否かを判定した第2の判定結果を生成し、第1の判定結果と第2の判定結果とが一致しない場合、第2の判定結果が異常であると判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が駐車される駐車マス内における磁気を検出する磁気センサと、
前記磁気センサの検出結果を示す信号を電波により送信する子機と、
前記電波により送信された前記信号を受信する親機と、
演算回路と、
を備え、
前記演算回路は、
前記親機によって受信された前記信号の受信信号強度に基づいて、前記駐車マスに車両があるか否かを判定した第1の判定結果を生成し、
前記磁気センサの検出結果に基づいて、前記駐車マスに車両があるか否かを判定した第2の判定結果を生成し、
前記第1の判定結果と前記第2の判定結果とが一致しない場合、前記第2の判定結果が異常であると判定する、
車両検知システム。
【請求項2】
車両が駐車される駐車マス内における磁気を検出する磁気センサと、
信号を電波により互いに送受信する親機及び子機と、
演算回路と、
を備え、
前記子機は、前記親機から受信した信号の受信信号強度と、前記磁気センサの検出結果と、を前記親機に送信し、
前記演算回路は、
前記受信信号強度に基づいて、前記駐車マスに車両があるか否かを判定した第1の判定結果を生成し、
前記磁気センサの検出結果に基づいて、前記駐車マスに車両があるか否かを判定した第2の判定結果を生成し、
前記第1の判定結果と前記第2の判定結果とが一致しない場合、前記第2の判定結果が異常であると判定する、
車両検知システム。
【請求項3】
前記演算回路は、
前記親機によって受信された前記信号の受信信号強度に基づいて、前記第1の判定結果の確からしさの指標を表す第1の信頼度を決定し、
前記磁気センサの検出結果に基づいて、前記第2の判定結果の確からしさの指標を表す第2の信頼度を決定し、
前記第1の判定結果と前記第2の判定結果とが一致しない場合、前記第1の信頼度と前記第2の信頼度との比較に基づいて、前記第2の判定結果の異常の有無を判定する、
請求項1又は2に記載の車両検知システム。
【請求項4】
前記演算回路は、
前記第1の判定結果と前記第2の判定結果とが一致するか否かについての複数回の判定の結果を蓄積し、
前記第1の判定結果と前記第2の判定結果とが一致せず、かつ、前記第1の信頼度が前記第2の信頼度より大きい場合の回数が所定の値以上となった場合、前記第2の判定結果が異常であると判定する、
請求項3に記載の車両検知システム。
【請求項5】
前記演算回路は、前記第1の判定結果と前記第2の判定結果とが一致せず、かつ、前記第2の信頼度が前記第1の信頼度より大きい場合の回数が所定の値以上となった場合、前記第2の判定結果に代えて、前記第1の判定結果が異常であると判定する、
請求項4に記載の車両検知システム。
【請求項6】
前記演算回路は、前記第1の判定結果を生成する処理において、前記受信信号強度を一定の周期で監視し、所定期間における前記受信信号強度の移動平均値又は最頻値と、所定の基準値と、の比較に基づいて、前記駐車マスに車両があるか否かを判定した前記第1の判定結果を生成する、
請求項1又は2に記載の車両検知システム。
【請求項7】
前記演算回路は、前記第1の判定結果を生成する処理において、所定期間における前記受信信号強度の移動平均値又は最頻値が、
前記駐車マスに車両がないと判定するための基準を示す第1の基準値より小さい第1の閾値を超えた場合、前記駐車マスに車両がないと判定し、
前記駐車マスに車両があると判定するための基準を示す第2の基準値より大きい第2の閾値を下回った場合、前記駐車マスに車両があると判定する、
請求項1又は2に記載の車両検知システム。
【請求項8】
前記演算回路は、前記第1の判定結果と前記第2の判定結果とが一致しないと判定した場合、前記第2の判定結果を、前記第1の判定結果と一致するように修正する、
請求項1又は2に車両検知システム。
【請求項9】
前記第1の判定結果又は前記第2の判定結果の異常の有無についての判定の結果を出力する出力部を更に備える、請求項1又は2に記載の車両検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された状態判定装置は、地磁気センサの計測結果及び通信ユニットとの無線通信における受信信号強度を用いて、駐車マスに車両が駐車されているか否かを判定する。特許文献1には、状態判定装置が、通信部で通信ユニットと無線通信が行えないとき、地磁気センサの計測結果を用いて、通信ユニットに異常が発生しているかどうかの判定も行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-135750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通信ユニットと無線通信が行えないときは、磁気センサの計測結果を用いなくとも通信ユニットに異常が発生していると判定できるため、従来技術は、駐車マスに車両が駐車されているか否かを判定するための手段の異常の有無を効果的に判定する点において改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、駐車マスに車両があるか否かを判定するための手段に関する異常の有無をより正確に判定する車両検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車両検知システムは、
車両が駐車される駐車マス内における磁気を検出する磁気センサと、
前記磁気センサの検出結果を示す信号を電波により送信する子機と、
前記電波により送信された前記信号を受信する親機と、
演算回路と、
を備え、
前記演算回路は、
前記親機によって受信された前記信号の受信信号強度に基づいて、前記駐車マスに車両があるか否かを判定した第1の判定結果を生成し、
前記磁気センサの検出結果に基づいて、前記駐車マスに車両があるか否かを判定した第2の判定結果を生成し、
前記第1の判定結果と前記第2の判定結果とが一致しない場合、前記第2の判定結果が異常であると判定する。
【0007】
本開示の他の態様に係る車両検知システム装置は、
車両が駐車される駐車マス内における磁気を検出する磁気センサと、
信号を電波により互いに送受信する親機及び子機と、
演算回路と、
を備え、
前記子機は、前記親機から受信した信号の受信信号強度と、前記磁気センサの検出結果と、を前記親機に送信し、
前記演算回路は、
前記受信信号強度に基づいて、前記駐車マスに車両があるか否かを判定した第1の判定結果を生成し、
前記磁気センサの検出結果に基づいて、前記駐車マスに車両があるか否かを判定した第2の判定結果を生成し、
前記第1の判定結果と前記第2の判定結果とが一致しない場合、前記第2の判定結果が異常であると判定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両検知システムによれば、駐車マスに車両があるか否かを判定するための手段に関する異常の有無をより正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る車両検知システムの構成例を示すブロック図
図2図1の車両検知システムが適用される駐車マスを例示する模式図
図3】子機の構成例を示すブロック図
図4】親機の構成例を示すブロック図
図5】管理装置の構成例を示すブロック図
図6図1の車両検知システムによって実行される車両検知方法の一例を示すフローチャート
図7】電波受信レベルと駐車マス状態の遷移との関係を例示する模式的なグラフ
図8図7のグラフの部分拡大図
図9図7のグラフの部分拡大図
図10】ダイポールアンテナを例示する模式図
図11】磁気検出値と駐車マス状態の遷移との関係を例示する模式的なグラフ
図12図11のグラフの部分拡大図
図13図11のグラフの部分拡大図
図14】実施形態2における駐車マスユニットの状態の遷移を説明するための模式図
図15】3マス状態と電波受信レベルとの関係を例示する模式図
図16】電波受信レベルによる駐車無状態の判定を説明するための模式図
図17】電波受信レベルによる駐車有状態の判定を説明するための模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。各図においては、説明の理解を容易にするため、適宜、各要素を誇張して示す場合がある。なお、本開示は、以下の実施形態に限定されない。また、本開示は、本開示の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更可能である。
【0011】
(本開示に至った経緯)
磁気センサがxyzの3方向の磁界検出素子により測定した外部磁界強度を用いて、金属の物体が発生する磁界を検出する物体検出システムが知られている。例えば、磁気センサがxyzの3方向の磁界検出素子により測定した外部磁界強度を用いて、金属の物体が発生する磁界を検出する物体検出システムが知られている。
【0012】
しかしながら、従来技術は、鉛直方向の磁界強度の重み付けを大きくするため、水平方向のうち、隣の車両の方向(幅方向)の磁界強度を希釈するのみならず、隣の車両の方向ではない方向(奥行方向)の磁界強度をも希釈してしまう。
【0013】
磁界が強く検出される方向は、車両により異なっており、3方向の検出値を用いることにより、各種車両の検出率を高めることができる。発明者らは、磁界の検出精度を高め、かつ、誤検出を防止するためには、隣接マスに車両が駐車する際の隣接車両による幅方向の磁界の影響を抑えることが望ましいことを実験で見出した。
【0014】
1.実施形態1
1-1.構成
図1は、本開示の実施形態1に係る車両検知システム(車両検知装置)1の構成例を示すブロック図である。図2は、図1の車両検知システム1が適用される駐車マス50を例示する模式図である。
【0015】
図1に示すように、車両検知システム1は、駐車マス50内に設置される子機10と、子機10と通信可能な親機20と、親機20と通信可能な管理装置30とを備える。親機20は、親機20が担当する複数の駐車マス50のそれぞれに設置される子機10の全てと通信可能であってもよく、管理装置30は、複数の親機20と通信可能であってもよい。
【0016】
図2には、説明の便宜のため、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を例示している。図2に示す例では、Z軸は、鉛直方向である。駐車マス50は、例えば駐車場に設けられる。図2に示す例では、駐車マス50はX方向を奥行方向(長さ方向)とし、Y方向を幅方向とする長方形である。車両2は、例えば、その車幅が駐車マス50の幅に収まるように駐車マス50に向けて前進又は後退することにより、駐車マス50内に駐車される。
【0017】
図2には、駐車マス50aと、それぞれ駐車マス50aにY方向に隣接する駐車マス(以下、「隣接マス」ともいう。)50b、50cとを例示している。駐車マス50a、50b、50cのそれぞれには、子機10が設置される。子機10は、地面の上に配置されてもよいし、地中に埋設されてもよい。子機10は、例えば平面視において各駐車マス50の中央に配置されるが、中央以外の場所に配置されてもよい。
【0018】
図3は、子機10の構成例を示すブロック図である。子機10は、磁気センサ11と、演算回路12と、記憶装置13と、通信部14と、電池15とを備える。
【0019】
磁気センサ11は、直交する3軸方向の磁気をそれぞれ検出可能なセンサである。磁気センサ11は、例えば当該3軸方向がXYZ方向に一致するように駐車マス50内に設置される。これにより、磁気センサ11は、XYZ方向の磁気成分をそれぞれ検出することができる。当該3軸方向がXYZ方向に一致しない場合には、磁気センサ11の3軸で規定されるローカル座標、特にXY平面座標を、後述する管理装置が回転行列を用いて駐車マス50のXY平面座標に変換してもよい。
【0020】
演算回路12は、情報処理を実行して子機10の機能を実現する。このような情報処理は、例えば、演算回路12が記憶装置13に格納されたプログラムを実行することにより実現される。演算回路12は、例えば、CPU、MPU、FPGA等の回路で構成される。演算回路12は、このような回路単体で実現されてもよいし、複数の回路により実現されてもよい。また、演算回路12の構成要素に関して、実施形態に応じて、適宜、機能の省略、置換及び追加が行われてもよい。
【0021】
記憶装置13は、子機10の機能を実現するために必要なプログラムを含む種々のデータを記憶する。記憶装置13は、例えば、フラッシュメモリ、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)等の半導体記憶装置、ハードディスクドライブ(HDD)等の磁気記憶装置、その他の記録媒体単独で又はそれらを組み合わせて実現される。記憶装置13は、SRAM、DRAM等の一時的な記憶装置を含んでもよい。
【0022】
通信部14は、アンテナを備え、電波によって親機20に信号を送信するとともに、親機20から電波により送信された信号を受信することができる。
【0023】
電池15は、子機10の各構成要素に電力を供給する電源である。電池15は、任意の一次電池であってもよいし、太陽電池などを用いて充電可能な二次電池であってもよい。
【0024】
図4は、親機20の構成例を示すブロック図である。親機20は、入出力部21と、演算回路22と、記憶装置23と、通信部24とを備える。
【0025】
入出力部21は、管理装置30等の外部装置に情報を出力するため、及び/又は外部装置からの情報を受け付けるために、親機20と外部装置とを接続するインタフェース回路である。入出力部21は、既存の有線通信規格又は無線通信規格に従ってデータ通信を行う通信回路であってもよい。
【0026】
演算回路22は、図3の子機10の演算回路12と同様の構成を有し、情報処理を実行して親機20の機能を実現する。記憶装置23は、図3の子機10の記憶装置13と同様の構成を有し、親機20の機能を実現するために必要なプログラムを含む種々のデータを記憶する。通信部24は、アンテナを備え、電波によって子機10に信号を送信するとともに、子機10から電波により送信された信号を受信することができる。親機20は、各構成要素に電力を供給するための商用電源を備えてもよい。
【0027】
図5は、管理装置30の構成例を示すブロック図である。管理装置30は、入出力部31と、演算回路32と、記憶装置33と、通信部34とを備える。
【0028】
入出力部31は、親機20等の外部装置に情報を出力するため、及び/又は外部装置からの情報を受け付けるために、管理装置30と外部装置とを接続するインタフェース回路である。演算回路32は、図3の子機10の演算回路12と同様の構成を有し、情報処理を実行して管理装置30の機能を実現する。記憶装置33は、図3の子機10の記憶装置13と同様の構成を有し、管理装置30の機能を実現するために必要なプログラムを含む種々のデータを記憶する。通信部34は、例えば、既存の有線通信規格又は無線通信規格に従ってデータ通信を行う通信回路である。
【0029】
1-2.動作
1-2-1.概要
図6は、本実施形態に係る車両検知システム1によって実行される車両検知方法の一例を示すフローチャートである。車両検知方法は、電波による車両検知(S1~S3)、磁気センサによる車両検知(S4~S6)、及び車両検知結果の組み合わせ方法(S7)を含む。図6では、電波による車両検知(S1~S3)の後に磁気センサによる車両検知(S4~S6)が行われる例を示しているが、これとは逆に電波による車両検知の前に磁気センサによる車両検知が行われてもよいし、両者が同時に実行されてもよい。以下、車両検知方法の一例の詳細について説明する。
【0030】
1-2-2.電波による車両検知
1-2-2-1.中央検出方式/子機・中央連携検出方式
駐車マス状態が駐車有状態となって子機10の上に車体が駐車されると、子機10及び親機20の電波受信レベル(受信信号強度)が低下する。子機10、親機20及び/又は管理装置30は、電波受信レベルの変化を検出することにより、駐車マス50に車両があるか否かを判定することができる。以下、図6~9を用いて電波による車両検知方法について説明する。
【0031】
電波による車両検知方法には、少なくとも、親機20又は子機10の通信時の電波受信レベルを管理装置30などの中央システムに送信し、中央システムが車両検知方法を実行する中央検出方式と、子機10も車両検知方法の一部を実行し、残部を中央システムが実行する子機・中央連携検出方式がある。後述の磁気センサによる車両検知においても、中央検出方式及び子機・中央連携検出方式を選択できる。
【0032】
まず、演算回路12、22又は32は、親機20又は子機10の通信時の電波受信レベルを取得する(S1)。親機20の電波受信レベルを用いる場合、親機20は、子機10から電波により送信された信号を受信し、演算回路12、22又は32は、親機20が子機10から受信した信号の強度に基づいて車両検知を行う。子機10の電波受信レベルを用いる場合、子機10は、親機20との間で信号を電波により互いに送受信し、親機20から受信した信号の強度と、磁気センサ11の検出結果と、を電波により親機20及び/又は管理装置30に送信する。以下では、子機10の演算回路12が行うとして下記処理について説明するが、同様の処理は、演算回路12に代えて、親機20の演算回路22及び管理装置30の演算回路32の少なくとも一方によっても行うことができる。
【0033】
演算回路12は、電波受信レベルを用いて、駐車マス状態につき駐車無状態と駐車有状態との間の遷移について判断する(S2、S3)。以下、これらの遷移について図7~9を用いて説明する。図7は、電波受信レベルと駐車マス状態の遷移との関係を例示する模式的なグラフである。図7は、駐車マス状態につき時系列で駐車無状態、駐車有状態、及び駐車無状態と遷移したときの電波受信レベルの時間的変化を例示している。図8及び図9は、図7のグラフの部分拡大図である。
【0034】
[駐車無状態から駐車有状態への遷移]
図8を参照して、電波受信レベルに基づく駐車無状態から駐車有状態への遷移の判定について説明する。電波受信レベルが、駐車無基準値Er1を基準として閾値Tbe1より大きく変化(低下)したとき、演算回路12は、現在の駐車マス状態が駐車無状態から駐車有状態に変化したと判定する。駐車無基準値Er1は、例えば、現在より前の時点において所定周期で取得した複数の電波受信レベルの移動平均値又は最頻値である。
【0035】
また、演算回路12は、電波受信レベルに基づいて、駐車マス状態が駐車有状態であるとの判定結果の信頼度(以下、「第1の信頼度」という。)を算出する。ここで、信頼度は、駐車マス50に車両があるか否かを判定した判定結果の確からしさの指標を表す。
【0036】
信頼度は、駐車マス状態の変化の有無についての確からしさの指標を含む。例えば、信頼度は、駐車マス状態が駐車無状態から駐車有状態へ、又は駐車有状態から駐車無状態へ変化したという判定結果の確からしさの指標(変化あり判定の信頼度)を含む。また、例えば、信頼度は、駐車マス状態が変化しなかったという判定結果の確からしさの指標(変化なし判定の信頼度)を含む。
【0037】
例えば、演算回路12は、駐車無基準値Er1と電波受信レベルとの差が所定値De1以上のときは駐車有状態の第1の信頼度を1とし、閾値Tbe1以下のときは駐車有状態の第1の信頼度を0とする。駐車無基準値Er1と電波受信レベルとの差が所定値De1より小さく、閾値Tbe1より大きいときは、演算回路12は、電波受信レベルが減少するに連れて第1の信頼度を増加させる。
【0038】
演算回路12は、電波受信レベルが非常に大きい場合(例えば所定値R以上である場合)、駐車マス状態が駐車無状態であると判定してもよい(「駐車無」優先判定処理)。
【0039】
[駐車有状態から駐車無状態への遷移]
図9を参照して、電波受信レベルに基づく駐車有状態から駐車無状態への遷移の判定について説明する。電波受信レベルが、駐車有基準値Er2を基準として閾値Tce1以上変化(増加)したとき、演算回路12は、現在の駐車マス状態が駐車有状態から駐車無状態に変化したと判定する。駐車有基準値Er2は、例えば、現在より前の時点において所定周期で取得した複数の電波受信レベルの移動平均値又は最頻値である。
【0040】
また、演算回路12は、電波受信レベルと駐車有基準値Er2との差が所定値De2以上のときは駐車無状態の第1の信頼度を1とし、閾値Tce1以下のときは駐車無状態の第1の信頼度を0とする。電波受信レベルと駐車有基準値Er2との差が所定値De2より小さく、閾値Tce1より大きいときは、演算回路12は、電波受信レベルが増加するに連れて第1の信頼度を増加させる。
【0041】
1-2-2-2.0点補正の方法
演算回路12、22及び/又は32は、例えば、現在の駐車マス50aの状態が駐車無状態であり、かつ、隣接マス50b、50cの状態が駐車無状態である場合における電波受信レベルの最頻値を用いて、電波受信レベルの0点補正を行う。あるいは、演算回路12、22及び/又は32は、電波受信レベルの所定区分毎に、受信回数をカウントアップし、電波受信レベルが所定値以上である区分のうち受信回数が最も多い区分を0点として補正してもよい。
【0042】
1-2-2-3.アンテナの指向性
親機20と子機10との間の通信時の電波受信レベルの安定化を図るため、例えば、それぞれのアンテナの指向性を通信相手方向としてもよいし、アンテナの横に電波を反射する反射板を設置してもよい。また、特に子機10においては、隣接マスに駐車された車両による電波の反射の影響を低減するため、図10において破線で示すように、X方向にローブを有しY方向にヌルを有するような指向性を示すダイポールアンテナを使用してもよい。これにより、Y方向への放射を低減し、隣接マスへの影響を低減することができる。1台の親機20と通信する子機10の台数を多数にする場合には、親機20にアンテナを複数設置してもよい。
【0043】
1-2-3.磁気センサによる車両検知
1-2-3-1.中央検出方式
前述のように、磁気センサによる車両検知において、中央検出方式及び子機・中央連携検出方式いずれが採用されてもよい。以下、まず中央検出方式を説明し、その後子機・中央連携検出方式を説明する。この中央検出方式の例では、管理装置30の演算回路32によって車両検知方法が実行されることを説明するが、本実施形態はこれに限定されず、車両検知方法は、サーバ装置の演算回路など、子機10の外部の演算回路によって実行されてもよい。
【0044】
子機10の演算回路12は、磁気センサ11の出力を200msec毎にサンプリングし、所定周期Cc(例えば2秒)間の平均値を磁気検出値として算出し、算出した磁気検出値を親機20を介して管理装置30へ送信する。管理装置30の演算回路32は、各子機10の磁気検出値を収集し(S4)、収集したデータをもとに、以下の処理を行う。
【0045】
まず、演算回路32は、所定周期Ccで、磁気検出値のNa回(例えば2回)の移動平均値又は最頻値(Xm、Ym、Zm)を算出する。なお、リアルタイム性が必要な場合は、現在の移動平均値の計算は行わず(Na=1)、子機送信データをそのまま使用してもよい。
【0046】
また、演算回路32は、所定周期Ccで、磁気検出値のNb回(Nb≧Na)の移動平均値又は最頻値を、変化検出のための基準値(Xr1、Yr1、Zr1)として求める。
【0047】
演算回路32は、上記検出値(Xm、Ym、Zm)及び基準値(Xr1、Yr1、Zr1)を用いて、駐車マス状態につき駐車無状態と駐車有状態との間の遷移について判断する(S5、S6)。以下、これらの遷移について図11~13を用いて説明する。図11は、磁気検出値と駐車マス状態の遷移との関係を例示する模式的なグラフである。図11は、駐車マス状態につき時系列で駐車無状態、駐車有状態、及び駐車無状態と遷移したときの磁気検出値の時間的変化を例示している。図11の磁気検出値は、例えばμTの単位で表される。図12及び図13は、図11のグラフの部分拡大図である。図11~13では、Z方向に関する磁気検出値を示している。他の方向、例えばX方向に関する磁気検出値を用いた状態遷移の考え方も同様であるため、図示を省略する。
【0048】
[駐車無状態から駐車有状態への遷移]
図12を参照して、磁気検出値に基づく駐車無状態から駐車有状態への遷移の判定について説明する。なお、図12では、説明を分り易くするため、車両が磁気センサに近づく時の磁気検出値に与える影響がプラス方向に働く場合について示している(図13も同様)。以下では、駐車マス50に車両2があるか否かの判定処理において、磁気検出値のY成分Ymの重みWyを0とした例について説明する。しかしながら、本実施形態では、磁気検出値のY成分Ymの重みWyは、磁気検出値のX成分Xmの重みWx及びZ成分Zmの重みWzより小さければよく、0に限定されない。例えば、演算回路32は、Wx及びWzを1とし、0<Wy<1を満たすようにWyを設定してもよい。
【0049】
現在の駐車マス状態が駐車無状態の場合、XmとZmとが、それぞれn周期前(例えばn=5)の駐車無基準値Xr1、Zr1と比較して閾値Tbx1、Tbz1以上変化したとき(例えば|Xm-Xr1|≧Tbx1かつ/又は|Zm-Zr1|≧Tbz1のとき)、演算回路32は、現在の駐車マス状態が進入状態であると仮判定(以下、「進入仮判定」ともいう。)する。あるいは、Xm及びZmの駐車無基準値Xr1、Zr1との差の絶対値の和が閾値Tbxz1以上となるようにXm及びZmが変化したとき(例えば|Xm-Xr1|+|Zm-Zr1|≧Tbxz1のとき)、演算回路32は、現在の駐車マス状態が進入状態であると仮判定する。
【0050】
進入仮判定(変化あり)の後、進入仮判定の状態が所定時間継続した(所定時間変化しない)とき、又は、XmとZmの単位時間当たりの変化が閾値Te以下となり、XmとZmの駐車無基準値Xr1、Zr1との差の絶対値の和が閾値Tbxz2(≦Tbxz1)以上のとき、演算回路32は、現在の駐車マス状態が安定状態であると判定し、駐車マス状態を駐車有状態に変化させる。
【0051】
また、演算回路32は、駐車マス状態が駐車有状態であるとの判定結果の信頼度(以下、「第2の信頼度」という。)を算出する。ここで、信頼度は、駐車マス50に車両があるか否かを判定した判定結果の確からしさの指標を表す。
【0052】
信頼度は、駐車マス状態の変化の有無についての確からしさの指標を含む。例えば、信頼度は、駐車マス状態が駐車無状態から駐車有状態へ、又は駐車有状態から駐車無状態へ変化したという判定結果の確からしさの指標(変化あり判定の信頼度)を含む。また、例えば、信頼度は、駐車マス状態が変化しなかったという判定結果の確からしさの指標(変化なし判定の信頼度)を含む。
【0053】
磁気検出値に基づいて算出された信頼度は、例えば、「現在の検出値と駐車無基準値Xr1、Zr1との差」、現在の駐車マス状態が進入仮判定(変化あり)から安定状態になるまでの「磁気検出値と駐車無基準値Xr1、Zr1との差の最大値」、閾値Tbx1、Tbz1、及び所定値Dm1に基づいて求められる。
【0054】
例えば、演算回路32は、現在の検出値と駐車無基準値Xr1、Zr1との差が所定値Dm1以上のときは駐車有状態の第2の信頼度を1とし、閾値Tbx1、Tbz1以下のときは駐車有状態の第2の信頼度を0とする。現在の検出値と駐車無基準値Xr1、Zr1との差が所定値Dm1未満であり、かつ、閾値Tbx1、Tbz1より大きいときは、演算回路32は、磁気検出値が減少するに連れて第2の信頼度を減少させる。例えば、現在の駐車マス状態が進入状態であると仮判定された場合(変化ありの場合)、第2の信頼度は、(|現在の検出値-駐車無基準値|-閾値)÷(所定値-閾値)により算出される。
【0055】
あるいは、検出値と閾値との差に対応する第2の信頼度の値を示す対応表を予め用意し、演算回路32は、現在の検出値と対応表とに基づいて、第2の信頼度を算出してもよい。
【0056】
進入仮判定がされていない場合(変化なしの場合)、磁気検出値の変化が0であるとき、駐車無状態の第2の信頼度を1とし、現在の磁気検出値と駐車無基準値との差が閾値となったとき、第2の信頼度を0とする。例えば、第2の信頼度は、(閾値-|現在の検出値-駐車無基準値|)÷閾値により算出される。
【0057】
演算回路32は、磁気検出値と0点(車両が全く存在しない状態での磁気検出値X0,Y0,Z0)との差が非常に小さい場合(例えば、磁気検出値と0点との差が所定値m以下である場合)、駐車マス状態が駐車無状態であると判定してもよい(「駐車無」優先判定処理)。
【0058】
[駐車有状態から駐車無状態への遷移]
図13を参照して、磁気検出値に基づく駐車有状態から駐車無状態への遷移の判定について説明する。現在の駐車マス状態が駐車有状態の場合、Xm及びZmが、駐車無基準値Xr1、Zr1との差が小さくなる方向に変化したとき、車両2が駐車マスから進出していると判定でき得る。例えば、駐車有基準値Xr2、Zr2との差が閾値Tcx1、Tcz1以上となったとき、又は、Xm及びZmの駐車有基準値Xr2、Zr2との差の絶対値の和が閾値Tcxz1となるようにXm及びZmが変化したとき、演算回路32は、現在の駐車マス状態が進出状態であると仮判定する。
【0059】
進出仮判定(変化あり)の後、進出仮判定の状態が所定時間継続したとき、又は、XmとZmの単位時間当たりの変化が閾値Te以下となり、XmとZmの駐車有基準値Xr2、Zr2との差の絶対値の和が閾値Tcxz2(≦Tcxz1)以上のとき、演算回路32は、現在の駐車マス状態が安定状態であると判定し、駐車マス状態を駐車無状態に変化させる。第2の信頼度は、「現在の検出値と駐車有基準値Xr2、Zr2との差」、現在の駐車マス状態が進出仮判定(変化あり)から安定状態になるまでの「磁気検出値と駐車有基準値Xr2、Zr2との差の最大値」、閾値Tcx1、Tcz1、及び所定値Dm2に基づいて求められる。
【0060】
駐車有状態から駐車無状態への変化検出の閾値は、車両2の磁力の大きさに応じて設定されてもよい。
【0061】
子機10の消費電力を抑え、電池寿命を長くするために、子機10から管理装置30へのデータの送信間隔を長くしてもよい(例えば20秒間隔)。この場合、例えば、子機10は、管理装置30へ送信するデータを圧縮する。
【0062】
また、子機10の消費電力を抑え、電池寿命を長くするために、電波の送受信時間と磁気センサ11の起動時間を短くしてもよい。電波の送受信時間を短くするために、磁気検出値に変化があった場合のみ電波を補完的に利用してもよい。例えば、磁気センサ11は、第1の時間間隔で磁気検出を行い、子機10による電波受信レベルの検出は、第1の時間間隔より大きい第2の時間間隔で、又は、磁気検出値に変化があったときに行われる。
【0063】
なお、上記では、X方向及びZ方向の検出値の差分を算出する例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、演算回路32は、3軸の方向の検出値を用いて検出値の差分を算出してもよいし、1軸のみの方向の検出値を用いて検出値の差分を算出してもよい。
【0064】
1-2-3-2.子機・中央連携検出方式
[子機10の処理]
子機10の磁気センサ11は、周期Cs(例えば200msec)でセンシングする。演算回路12は、Nc回(例えば5回)の移動平均値又は最頻値(Xm、Ym、Zm)を算出する。
【0065】
また、演算回路12は、所定周期Csで、Nd回(Nd≧Nc)の移動平均値又は最頻値を、変化検出のための基準値(Xr1、Yr1、Zr1)として求める。
【0066】
駐車マス状態の駐車無状態と駐車有状態との間の遷移の判断については、子機10の演算回路12は、上記の中央検出方式における管理装置30の演算回路32と同様の処理を行う。但し、中央検出方式では演算回路32がn周期を用いたことに代えて、演算回路12は、m周期(例えばm=50)を用いる。
【0067】
子機・中央連携検出方式では、現在の駐車マス状態が安定状態であると判定すると、演算回路12は、安定状態となった時刻、基準値、現在値、現在値と基準値との差の最大値等のデータを管理装置30(中央システム)へ送信する。このデータ送信はリアルタイムで行われてもよいし、リアルタイムではなく、記憶装置33に蓄積したデータを送信してもよい。なお、リアルタイム性が必要な場合等、駐車マス進入/進出判定時にも、基準値と現在の検出値とを、親機20を介して管理装置30へ送信してもよい。1分間の間に変化が無かった場合、演算回路12は、現在の検出値及び基準値を管理装置30へ送信してもよい。
【0068】
[管理装置30の処理]
管理装置30の演算回路32は、磁気検出値に変化があったことを示すデータを受信すると、データに含まれる「現在の検出値と駐車無又は駐車有基準値との差」、現在の駐車マス状態が進入又は進出仮判定(変化あり)から安定状態になるまでの「磁気検出値と駐車無又は駐車有基準値との差の最大値」、閾値、及び所定値に基づいて変化あり判定の信頼度を求める。
【0069】
演算回路32は、磁気検出値に変化がなかったことを示すデータを受信すると、データに含まれる「現在の検出値と駐車無基準値との差」と閾値との比較により変化なし判定の信頼度を求める。
【0070】
1-2-3-3.0点補正の方法
演算回路12、22及び/又は32は、例えば、現在の駐車マス50aの状態が駐車無状態であり、かつ、隣接マス50b、50cの状態が駐車無状態である場合における磁気検出値の最頻値が0点となるように、補正を行う。あるいは、演算回路12、22及び/又は32は、電波受信レベルが所定値R以上の場合における磁気検出値の最頻値が0点となるように、補正を行ってもよい。
【0071】
1-2-4.磁気センサ及び電波による車両検知結果の組み合わせ方法
上記のように、車両検知システム1は、磁気センサ11の検出結果に基づく車両検知及び電波受信レベルに基づく車両検知のいずれか又は両者を行うことができるが、両者を組み合わせることにより車両検知を行うこともできる。
【0072】
例えば、演算回路32は、電波受信レベルに基づく車両検知の結果(第1の判定結果)と、磁気センサ11の検出結果に基づく車両検知の結果(第2の判定結果)とが一致した場合、第1の判定結果又は第2の判定結果を最終結果(第3の判定結果)とする。
【0073】
第1の判定結果と第2の判定結果とが一致しない場合、演算回路32は、それぞれの車両検知結果の信頼度を比較し、信頼度の高い方の結果を採用する。すなわち、第1の判定結果と第2の判定結果とが一致しない場合、演算回路32は、第1の信頼度が第2の信頼度より大きいときは第1の判定結果を第3の判定結果とし、第1の信頼度が第2の信頼度以下であるときは第2の判定結果を第3の判定結果とする。
【0074】
1-3.本実施形態のまとめ
1-3-1.Y方向の磁気成分の検出結果の重みを小さくする例についてのまとめ
以上のように、本実施形態に係る車両検知システム1(車両検知装置)は、車両が駐車される駐車マス50内における磁気の、駐車マス50の奥行方向(X方向)に平行な第1の磁気成分の第1の検出結果と、鉛直方向(Z方向)に平行な第2の磁気成分の第2の検出結果と、駐車マス50の幅方向(Y方向)に平行な第3の磁気成分の第3の検出結果と、各検出結果に適用される重みと、に基づいて、駐車マス50に車両があるか否かを判定する演算回路(例えば、演算回路12、22又は32)を備える。演算回路は、駐車マス50に車両があるか否かの判定処理において、第3の検出結果の重みを、第1の検出結果の重み及び第2の検出結果の重みより小さくする。この構成により、駐車マス50に車両があるか否かの判定の精度を向上させることができる。
【0075】
演算回路は、駐車マス50に車両があるか否かの判定処理において、第3の検出結果の重みを0としてもよい。隣接マスにおける車両の影響を受ける第3の検出結果の重みを0とすることにより、駐車マス50に車両があるか否かの判定の精度を向上させることができる。
【0076】
演算回路は、第1の検出結果の変化量の絶対値、第2の検出結果の変化量の絶対値、第3の検出結果の変化量の絶対値、及び/又はこれらの和が所定の閾値以上であるとき、駐車マス50における車両の有無の変化を検知し、検知結果に基づいて、駐車マス50に車両があるか否かを判定してもよい。
【0077】
演算回路は、第1の検出結果の変化量の絶対値、第2の検出結果の変化量の絶対値、第3の検出結果の変化量の絶対値、及び/又はこれらの和と、所定の基準値との差が所定の第1の閾値以上であるとき、駐車マス50における車両の有無に変化があったとの仮判定を行ってもよい。演算回路は、仮判定の結果が所定時間変化しない場合、駐車マス50の状態が安定状態であると判断し、駐車マス50における車両の有無に変化があったとの判定を確定させる。安定状態でない場合に判定を確定させることを防ぐことにより、駐車マス50に車両があるか否かの判定の精度を向上させることができる。
【0078】
演算回路は、第1の検出結果の変化量の絶対値、第2の検出結果の変化量の絶対値、第3の検出結果の変化量の絶対値、及び/又はこれらの和の単位時間当たりの変化が、所定値以下であり、かつ、基準値との差が第1の閾値より小さい第2の閾値以上である場合、駐車マス50の状態が安定状態であると判断し、駐車マス50における車両の有無に変化があったとの判定を確定させてもよい。
【0079】
1-3-2.信頼度に基づいて駐車マスに車両があるか否かを判定する例についてのまとめ
以上のように、本実施形態の一例に係る車両検知システム1は、車両が駐車される駐車マス50内における磁気を検出する磁気センサ11と、磁気センサ11の検出結果を示す信号を電波により送信する第1の子機10と、第1の子機10から送信された信号を受信する親機20と、演算回路(例えば、演算回路12、22又は32)と、を備える。演算回路は、親機20によって受信された信号の受信信号強度に基づいて、駐車マス50に車両があるか否かを判定した第1の判定結果を生成し、第1の判定結果の確からしさの指標を表す第1の信頼度を決定する。演算回路は、磁気センサ11の検出結果に基づいて、駐車マス50に車両があるか否かについての第2の判定結果を生成し、第2の判定結果の確からしさの指標を表す第2の信頼度を決定する。演算回路は、第1の判定結果と、第1の信頼度と、第2の判定結果と、第2の信頼度と、に基づいて、駐車マス50に車両があるか否かについての第3の判定結果を決定する。信頼度を用いるこの構成により、駐車マス50に車両があるか否かの判定の精度を向上させることができる。
【0080】
本実施形態の他の例に係る車両検知システム1は、車両が駐車される駐車マス50内における磁気を検出する磁気センサ11と、信号を電波により互いに送受信する親機20及び第1の子機10と、演算回路(例えば、演算回路12、22又は32)と、を備える。第1の子機10は、親機20から受信した信号の受信信号強度と、磁気センサ11の検出結果と、を親機20に送信する。演算回路は、受信信号強度に基づいて、駐車マス50に車両があるか否かを判定した第1の判定結果を生成し、第1の判定結果の確からしさの指標を表す第1の信頼度を決定する。演算回路は、磁気センサ11の検出結果に基づいて、駐車マス50に車両があるか否かについての第2の判定結果を生成し、第2の判定結果の確からしさの指標を表す第2の信頼度を決定する。演算回路は、第1の判定結果と、第1の信頼度と、第2の判定結果と、第2の信頼度と、に基づいて、駐車マス50に車両があるか否かについての第3の判定結果を決定する。信頼度を用いるこの構成により、駐車マス50に車両があるか否かの判定の精度を向上させることができる。
【0081】
本実施形態の前記一例又は前記他の例において、演算回路は、第1の判定結果と第2の判定結果とが一致した場合、第1の判定結果又は第2の判定結果を第3の判定結果としてもよい。演算回路は、第1の判定結果と第2の判定結果とが一致しない場合、第1の信頼度が第2の信頼度より大きいときは第1の判定結果を第3の判定結果とし、第1の信頼度が第2の信頼度以下であるときは第2の判定結果を第3の判定結果としてもよい。この構成により、駐車マス50に車両があるか否かの判定の精度を向上させることができる。
【0082】
本実施形態の前記一例又は前記他の例において、演算回路は、受信信号強度と、受信信号強度についての第1の基準値と、の差分に基づいて第1の信頼度を決定してもよい。演算回路は、磁気センサ11によって検出された磁気の強さと、磁気の強さについての第2の基準値と、の差分に基づいて第2の信頼度を決定する。
【0083】
本実施形態の前記一例又は前記他の例において、第1の基準値及び第2の基準値は、駐車マス50及び駐車マス50に隣接する隣接マスにおける車両の有無に変化があったときに、及び/又は所定周期毎に更新されてもよい。第1の基準値は、受信信号強度の移動平均値又は最頻値に基づいて決定されてもよい。第2の基準値は、磁気センサ11によって検出された磁気の強さの移動平均値又は最頻値に基づいて決定されてもよい。
【0084】
本実施形態の前記他の例において、磁気センサ11は、第1の時間間隔で磁気の検出を行い、第1の子機10による信号の受信信号強度の検出は、第1の時間間隔より大きい第2の時間間隔で、又は、磁気の検出値に変化があったときに行われてもよい。この構成により、第1の子機10の消費電力を抑え、電池寿命を延ばすことができる。
【0085】
2.実施形態2
実施形態1では、所定周期で取得した磁気検出値のNb回の移動平均値又は最頻値を磁気についての基準値とし、現在より前の時点において所定周期で取得した電波受信レベルの移動平均値又は最頻値を電波受信レベルについての基準値とする例について説明した。
【0086】
駐車マス50a内の磁気レベル、駐車マス50a内の子機10から送信される電波の強度、及び駐車マス50a内の子機10が受信する電波の強度は、駐車マス50aに車両が駐車されているか否かだけでなく、駐車マス50aの周囲に車両があるか否かによっても影響を受ける。特に、駐車マス50a、50b、50c(図2参照)のそれぞれにおける車両の有無に影響を受ける。
【0087】
そこで、実施形態2では、隣接する3つの駐車マスを駐車マスユニットとして一体的に観察し、駐車マスユニットの状態に基づいて車両検知についての基準値、閾値及び/又は所定値を決定する。
【0088】
図14は、実施形態2における駐車マスユニット51の状態(以下、「3マス状態」という。)の遷移を説明するための模式図である。本実施形態では、親機20が担当する複数の駐車マスのうち、隣接する駐車マス50a、50b、50cの3つを駐車マスユニット51として取り扱う例について説明する。もっとも、隣接する他の3つの駐車マスを駐車マスユニットとして取り扱ってもよい。
【0089】
図14では、駐車マス50a、50b、50cに車両があることを「○」で示している。図14に示すように、3マス状態は、以下の8つの状態になり得る。
第1状態:V0
第2状態:V1L
第3状態:V1R
第4状態:V2
第5状態:O0
第6状態:O1L
第7状態:O1R
第8状態:O2
【0090】
ここで、第1~第4状態のプレフィックスVは、駐車マス50aに車両がない(vacant)ことを示し、第5~第8状態のプレフィックスOは、駐車マス50aに車両がある(occupied)ことを示す。第1状態及び第5状態のサフィックス「0」は、隣接マス50b、50cのいずれにも車両がないことを示す。第2状態及び第6状態のサフィックス「1L」は、左側の隣接マス50bに車両があることを示す。第3状態及び第7状態のサフィックス「1R」は、右側の隣接マス50cに車両があることを示す。第4状態及び第8状態のサフィックス「2」は、隣接マス50b、50cの両方に車両があることを示す。
【0091】
ある時刻においては、駐車マス50a、50b、50cのうちの1つのみにおける車両の有無が変化し、すなわち駐車マス50a、50b、50cのうちの2以上における車両の有無が同時に変化しないとすると、3マス状態は、図14の実線及び破線で接続された2状態間で遷移し得る。なお、駐車マス50a、50b、50cのうちの2以上における車両の有無が同時に変化してもよい。
【0092】
これらの遷移のうち、駐車マス50aにおける車両の有無が変化するのは、実線で接続されたV0-O0間、V1L-O1L間、V1R-O1R間、及びV2-O2間の遷移である。
【0093】
本実施形態では、3つの駐車マスを駐車マスユニットとして一体的に観察し、3マス状態の変化のタイミングも考慮することにより、車両検知についての基準値、閾値及び/又は所定値をより適切に決定することができる。これにより、駐車マスに車両があるか否かについてより精度良く判定することができる。
【0094】
2-1.電波による車両検知
図15に示すように、親機20又は駐車マス50aの子機10の通信時の電波受信レベルは、3マス状態が第1~第8状態のいずれであるかによって異なり得る。そこで、本実施形態では、各状態に対応する基準値を予め設定する。予め設定された基準値は、例えば記憶装置13、23又は33に格納される。
【0095】
このような基準値は、例えば、第1~第8状態に相当する状況において予め測定される。あるいは、演算回路12、22及び/又は32は、学習期間において、電波受信レベルの所定区分毎に、受信回数をカウントアップし、電波受信レベルが第1の設定値以上である区分のうち受信回数が最も多い区分における電波受信レベル中心値を、駐車無状態の基準値として設定し、電波受信レベルが第2の設定値未満である区分のうち受信回数が最も多い区分における電波受信レベル中心値を、駐車有状態の基準値として設定する。第2の設定値は、第1の設定値と等しくてもよいし、第1の設定値より小さくてもよい。
【0096】
演算回路12、22及び/又は32は、例えば、駐車マス50a、50b、50cの駐車状態の少なくとも1つが変化したときに基準値を更新する。演算回路12、22及び/又は32は、駐車マス50a、50b、50cの少なくとも1つについて上記のような仮判定がされたときに基準値を更新してもよい。これらに代えて、又はこれらと共に、演算回路12、22及び/又は32は、所定周期毎に基準値を変更するか否かを判断し、必要に応じて基準値を変更してもよい。
【0097】
上記のように、3マス状態の遷移のうち、駐車マス50aにおける車両の有無が変化するのは、図14において実線で示した4ケースである。これらの4ケースの遷移では、それぞれ電波受信レベルの変化値(差分)が異なる。演算回路12、22及び/又は32は、この差分を所定値(例えば実施形態1のDe1、De2に相当する所定値)とし、当該差分の1/2を閾値とする。
【0098】
駐車マス50aにおける進入/進出判定(変化あり)の判定時点又はその直前に隣接マス50b、50cの駐車状態にも変化があった場合、現在の駐車マス状態につき変化なしとするか、又は、変化ありとしつつ変化あり判定の信頼度を下げてもよい。あるいは、駐車マス50aにおける変化ありの判定時点又はその前後の所定時間内で、隣接マス50b、50cの駐車状態にも変化があった場合、駐車マス50aと隣接マス50b、50cの電波受信レベルの変化を比較する。例えば、駐車マス50aの電波受信レベルの変化の差分値が隣接マス50b、50cの電波受信レベルの変化の差分値より小さいとき、現在の駐車マス状態につき信頼度の高い変化なしとするか、又は、変化ありとしつつ変化あり判定の信頼度を下げる。一方、駐車マス50aの電波受信レベルの差分値が隣接マス50b、50cの電波受信レベルの差分値より大きいとき、現在の駐車マス状態につき変化あり判定の信頼度を上げてもよい。
【0099】
2-2.磁気センサによる車両検知
駐車マス50aの子機10の磁気センサ11による磁気検出値は、電波受信レベルに比べ、車両の種類による影響を大きく受けるため、例えば、駐車マス50aと隣接マス50b、50cが共に駐車無状態である第1状態V0について、固定的な基準値を設定して記憶装置13、23又は33に格納する。その他の状態での基準値は、駐車マスユニット51内の車両の種類によって変化してもよい。
【0100】
演算回路12、22及び/又は32は、例えば、駐車マス50a、50b、50cの駐車状態の少なくとも1つが変化したときに基準値を更新する。演算回路12、22及び/又は32は、駐車マス50a、50b、50cの少なくとも1つについて上記のような仮判定がされたときに基準値を更新してもよい。これらに代えて、又はこれらと共に、演算回路12、22及び/又は32は、所定周期毎に基準値を変更するか否かを判断し、必要に応じて基準値を変更してもよい。
【0101】
演算回路12、22及び/又は32は、図14において実線で示した4ケースにおいて、駐車マス50aの状態が駐車無状態から駐車有状態に遷移する場合、磁気検出値に関する所定値を予め設定した固定値とする。駐車マス50aの状態が駐車有状態から駐車無状態に遷移する場合は、駐車無状態から駐車有状態への変化時に検出した磁気検出値の変化値(差分)とする。閾値は、当該差分の1/2に設定される。
【0102】
磁気検出値に関する基準値は、例えば記憶装置13、23又は33に格納される。このような基準値は、例えば、第1~第8状態に相当する状況において予め測定される。あるいは、演算回路12、22及び/又は32は、学習期間の電波受信レベルが所定の設定値より高い状態において、磁気検出値の所定区分毎に、受信回数をカウントアップし、最頻区分の中心値を駐車無状態の基準値として設定する。その後は、演算回路12、22及び/又は32は、駐車マス50a又は隣接マス50b、50cの車両の有無に変化があった場合、駐車マス50aの所定期間の磁気センサ検出値の最頻値又は移動平均値を、対応する遷移状態の基準値として更新する。
【0103】
2-3.隣接マスの状態に応じた信頼度の補正
隣接マス50b、50c内の車両の存在は、駐車マス50aにおける第1の信頼度及び第2の信頼度に影響を及ぼし得る。そこで、演算回路22及び/又は32は、隣接マスの状態に応じて第1の信頼度及び/又は第2の信頼度を補正してもよい。
【0104】
例えば、隣接マス50b又は50c内の子機10(第2の子機)は、隣接マス50b又は50c内の磁気センサの検出結果を示す信号を電波により親機20に送信する。親機20は、第2の子機から送信された信号を受信し、演算回路22及び/又は32は、親機20が受信した信号の受信信号強度(電波受信レベル)に基づいて、第1の信頼度及び/又は第2の信頼度を補正する。
【0105】
あるいは、第2の子機は、親機20から受信した信号の受信信号強度(電波受信レベル)と、隣接マス50b又は50c内の磁気センサの検出結果と、を親機20に送信してもよい。演算回路22及び/又は32は、親機20が受信した第2の子機からの信号の受信信号強度に基づいて、第1の信頼度及び/又は第2の信頼度を補正する。
【0106】
さらに、磁気検出値に基づく駐車状態の判定が変化ありの場合において、駐車マス50aの電波受信レベルの変化の差分値が隣接マス50b又は50cの電波受信レベルの変化の差分値より小さいときは、演算回路22及び/又は32は、現在の駐車マス状態につき信頼度の高い変化なしとするか、又は、変化ありとしつつ変化あり判定の信頼度を下げる。一方、駐車マス50aの電波受信レベルの差分値が隣接マス50b又は50cの電波受信レベルの差分値より大きいときは、演算回路22及び/又は32は、変化あり判定の信頼度を上げる。
【0107】
また、演算回路22及び/又は32は、駐車マス50aと隣接マス50b又は50cの磁気検出値の変化タイミングの差が所定時間以下の場合、駐車マス50aにおける磁気検出値の差分値と隣接マス50b又は50cにおける磁気検出値の差分値との比較に基づいて、駐車マス50aの第1の信頼度及び第2の信頼度を補正してもよい。
【0108】
2-3.本実施形態のまとめ
以上のように、本実施形態の一例に係る車両検知システム1は、磁気センサ11と、第1の子機10と、親機20と、演算回路(例えば、演算回路22又は32)と、駐車マス50aに隣接する隣接マス50b又は50c内における磁気を検出する隣接マス内の磁気センサと、前記隣接マス内の磁気センサの検出結果を示す信号を電波により親機20に送信する第2の子機10と、を備える。親機20は、第2の子機10から送信された信号を受信し、演算回路は、親機20が受信した信号の受信信号強度に基づいて、第1の信頼度及び/又は第2の信頼度を補正する。この構成により、駐車マス50に車両があるか否かの判定の精度を向上させることができる。
【0109】
本実施形態の他の例に係る車両検知システム1は、磁気センサ11と、第1の子機10と、親機20と、演算回路(例えば、演算回路22又は32)と、駐車マス50aに隣接する隣接マス50b又は50c内における磁気を検出する隣接マス内の磁気センサと、親機20との間で信号を電波により互いに送受信する第2の子機10と、を備える。第2の子機10は、親機20から受信した信号の受信信号強度と、隣接マス内の磁気センサの検出結果と、を親機20に送信する。演算回路は、親機20が受信した第2の子機からの信号の受信信号強度に基づいて、第1の信頼度及び/又は第2の信頼度を補正する。この構成により、駐車マス50に車両があるか否かの判定の精度を向上させることができる。
【0110】
3.実施形態3
3-1.概要
電波受信レベルに基づいて車両を検知する方法の検知精度は、他の車両の往来によると考えられる電波の多重反射の影響を受けると考えられる。一方、電波受信レベルを比較的長い時間継続的に監視し、平滑化することで、車両の往来に起因する短時間の電波の多重反射の影響を取り除くことが考えられる。そこで、発明者らは、電波受信レベルに基づいて車両を検知する方法を磁気センサの故障等の異常の検知手段として利用し、維持管理を図ることについて検討を行い、実施形態3に係る車両検知システムを想到するに至った。
【0111】
本実施形態に係る車両検知システムは、一例として、電波受信レベルに基づく車両検知の結果(第1の判定結果)と、磁気センサ11の検出結果に基づく車両検知の結果(第2の判定結果)とが一致しない場合、第2の判定結果が異常であると判定する。第2の判定結果が異常である場合、磁気センサ11に故障等の異常があることが考えられる。このように、本実施形態に係る車両検知システムによれば、磁気センサ11による検知結果又は磁気センサ11の異常を検知することができる。
【0112】
例えば、本実施形態に係る車両検知システムは、親機20と子機10との間の無線通信時の電波受信レベルを比較的長い所定時間(例えば1分間)継続して監視する。駐車マス状態が駐車有状態である場合、子機10に内蔵されている磁気センサ11が車体の陰となり、車体により電波が遮蔽される。発明者らは、このような電波の遮蔽により、駐車有状態の電波受信レベルが、通信可能な周波数帯域においても、駐車無状態と比べて10db以上低下することを実験により見出した。車体による電波の遮蔽に起因する電波受信レベルの低下がなく、十分に大きな電波受信レベルが継続される場合、駐車マス状態が駐車無状態である確度が高いと推定できる。
【0113】
電波受信レベルに基づく車両検知の結果(第1の判定結果)において駐車無の推定確度が高い場合、第1の判定結果と磁気センサ11による駐車有無の判定結果(第2の判定結果)とを比較することにより、磁気センサ11の異常の有無を検知することができる。
【0114】
入出力部21又は31は、磁気センサ11による検知結果又は磁気センサ11の異常の有無についての判定の結果を、ディスプレイ、スピーカ、LED等の発光装置に出力してもよい。これにより、ユーザは、異常の有無についての判定の結果を知ることができる。
【0115】
以下、磁気センサ11による検知結果又は磁気センサ11の異常を検知するための具体的な手法について説明する。
【0116】
3-2.手法1
親機20と子機10との間で、所定周期(例えば8秒)で通信を行い、そのときの電波受信レベルを親機20又は子機10により取得する。演算回路12、22及び/又は32は、十分に大きな強度の電波受信レベルが継続した場合、駐車マス状態が駐車無状態であると判定する。例えば、図16に示すように、所定期間(1分間)取得したデータの移動平均値(又は最頻値)が、駐車無基準値Er1より小さい第1の近傍値(第1の閾値)以上となった場合、駐車マス状態が駐車無状態であると判定される。
【0117】
一方、図17に示すように、演算回路12、22及び/又は32は、電波受信レベルが低い状態が継続し、駐車有基準値Er2より大きい第2の近傍値(第2の閾値)以下となった場合、駐車マス状態が駐車有状態であると判定する。演算回路12、22及び/又は32は、電波受信レベルに基づく車両検知の結果(第1の判定結果)と磁気センサ11による駐車有無の判定結果(第2の判定結果)と比較し、不一致の場合、磁気センサ11による検知結果又は磁気センサ11に異常があると判定する。
【0118】
演算回路12、22及び/又は32は、電波受信レベルに基づく車両検知の結果(第1の判定結果)と磁気センサ11による駐車有無の判定結果(第2の判定結果)とが一致しないと判定した場合、第2の判定結果を、第1の判定結果と一致するように修正してもよい。あるいは、第1の判定結果の信頼度(第1の信頼度)が所定の閾値以上である場合、第2の判定結果を、第1の判定結果と一致するように修正してもよい。
【0119】
演算回路12、22及び/又は32は、第1の判定結果と第2の判定結果とが一致するか否かについての複数回の判定の結果を、記憶装置13、23又は33に格納するなどして蓄積してもよい。演算回路12、22及び/又は32は、第1の判定結果と第2の判定結果とが一致せず、かつ、第1の信頼度が第2の信頼度より大きい場合の回数が所定の値以上となった場合、第2の判定結果が異常であると判定してもよい。すなわち、演算回路12、22及び/又は32は、不一致の場合、信頼度が低く検出結果が採用されなかった方の不採用カウンタをカウントアップする。演算回路12、22及び/又は32は、所定期間の間に不採用カウンタが所定回数以上となった場合、磁気センサ11による検知結果又は磁気センサ11に異常があると判定する。所定回数未満の場合は、一旦不採用カウンタをリセットする。
【0120】
本手法によれば、隣接車両が磁気に与える影響等により、駐車マス状態が駐車無状態にも拘らず駐車有との妥当でない第2の判定結果が生成されその状態が継続した場合にも、第2の判定結果をリセットすることができる。
【0121】
3-3.手法2
図14の状態遷移図に示された各状態では、駐車マス50aの子機10により送信又は受信される電波の電波受信レベルが互いに異なるので、演算回路12、22及び/又は32は、その変化を検出して、状態の遷移を検出する。
【0122】
なお、図14では、8つの状態を例示したが、状態の数は8に限定されない。例えば、状態の数は、駐車マス50aにおける駐車有状態と駐車無状態の2つでもよいし、この2状態に加えて隣接マス50b及び/又は50cにおける駐車有無状態を加え、4又は6であってもよい。
【0123】
各状態での電波受信レベル基準値は、予め設定されてもよい。このような基準値は、例えば、第1~第8状態に相当する状況において予め測定される。駐車マスユニット51(図14参照)への車両の進入・退出により親機20又は子機10の電波受信レベルが変化するので、演算回路12、22及び/又は32は、その変化を所定時間継続的に監視する。演算回路12、22及び/又は32は、検出した電波受信レベルの移動平均値(又は最頻値)を求め、基準値と比較して、どの状態に遷移したかを判定する。例えば、演算回路12、22及び/又は32は、検出した電波受信レベルの移動平均値(又は最頻値)の各状態の基準値からの偏差を求める。演算回路12、22及び/又は32は、遷移前の状態の基準値との偏差が所定値以上となり、かつ、遷移可能な状態のうちのある一状態の基準値との偏差が所定値以内になったとき、当該一状態に遷移したと判定する。
【0124】
あるいは、磁気センサ11による検出結果から判定した状態遷移に基づき、各状態での電波受信レベルの最頻値(又は移動平均値)をモデルに学習させてもよい。このようにして生成された学習済みモデルに電波受信レベルの最頻値(又は移動平均値)を入力することにより、どの状態に遷移したかの判定結果が出力される。
【0125】
演算回路12、22及び/又は32は、電波受信レベルに基づく車両検知の結果(第1の判定結果)と磁気センサ11による駐車有無の判定結果(第2の判定結果)とが一致しないと判定した場合、第2の判定結果を、第1の判定結果と一致するように修正してもよい。あるいは、第1の判定結果の信頼度(第1の信頼度)が所定の閾値以上である場合、第2の判定結果を、第1の判定結果と一致するように修正してもよい。電波受信レベルによる判定結果の信頼度は、上記偏差の大きさにより定め、偏差が小さいときの信頼度を高める。
【0126】
3-4.本実施形態のまとめ
以上のように、本実施形態の一例に係る車両検知システムは、車両が駐車される駐車マス50内における磁気を検出する磁気センサ11と、磁気センサ11の検出結果を示す信号を電波により送信する子機10と、電波により送信された信号を受信する親機20と、演算回路(例えば、演算回路12、22及び/又は32)と、を備え、演算回路は、親機20によって受信された信号の受信信号強度に基づいて、駐車マス50に車両があるか否かを判定した第1の判定結果を生成し、磁気センサ11の検出結果に基づいて、駐車マス50に車両があるか否かを判定した第2の判定結果を生成し、第1の判定結果と第2の判定結果とが一致しない場合、第2の判定結果が異常であると判定する。この構成により、磁気センサ11に関する異常の有無をより正確に判定することができる。
【0127】
本実施形態の他の例に係る車両検知システムは、車両が駐車される駐車マス50内における磁気を検出する磁気センサ11と、信号を電波により互いに送受信する親機20及び子機10と、演算回路(例えば、演算回路12、22及び/又は32)と、を備え、子機10は、親機20から受信した信号の受信信号強度と、磁気センサ11の検出結果と、を親機20に送信し、演算回路は、受信信号強度に基づいて、駐車マス50に車両があるか否かを判定した第1の判定結果を生成し、磁気センサ11の検出結果に基づいて、駐車マス50に車両があるか否かを判定した第2の判定結果を生成し、第1の判定結果と第2の判定結果とが一致しない場合、第2の判定結果が異常であると判定する。この構成により、磁気センサ11に関する異常の有無をより正確に判定することができる。
【0128】
本実施形態の前記一例又は前記他の例において、演算回路は、親機20によって受信された信号の受信信号強度に基づいて、第1の判定結果の確からしさの指標を表す第1の信頼度を決定し、磁気センサ11の検出結果に基づいて、第2の判定結果の確からしさの指標を表す第2の信頼度を決定し、第1の判定結果と第2の判定結果とが一致しない場合、第1の信頼度と第2の信頼度との比較に基づいて、第2の判定結果の異常の有無を判定してもよい。信頼度を用いるこの構成により、磁気センサ11に関する異常の有無をより正確に判定することができる。
【0129】
本実施形態の前記一例又は前記他の例において、演算回路は、第1の判定結果と第2の判定結果とが一致するか否かについての複数回の判定の結果を蓄積し、第1の判定結果と第2の判定結果とが一致せず、かつ、第1の信頼度が第2の信頼度より大きい場合の回数が所定の値以上となった場合、第2の判定結果が異常であると判定してもよい。
【0130】
本実施形態の前記一例又は前記他の例では、演算回路は、第1の判定結果を生成する処理において、受信信号強度を一定の周期で監視し、所定期間における受信信号強度の移動平均値又は最頻値と、所定の基準値と、の比較に基づいて、駐車マス50に車両があるか否かを判定した第1の判定結果を生成してもよい。
【0131】
本実施形態の前記一例又は前記他の例では、演算回路は、第1の判定結果を生成する処理において、所定期間における受信信号強度の移動平均値又は最頻値が、
(1)駐車マス50に車両がないと判定するための基準を示す第1の基準値より小さい第1の閾値(第1の近傍値)を超えた場合、駐車マス50に車両がないと判定し、
(2)駐車マス50に車両があると判定するための基準を示す第2の基準値より大きい第2の閾値(第2の近傍値)を下回った場合、駐車マス50に車両があると判定してもよい。
【0132】
本実施形態の前記一例又は前記他の例において、演算回路は、第1の判定結果と第2の判定結果とが一致しないと判定した場合、第2の判定結果を、第1の判定結果と一致するように修正してもよい。
【0133】
本実施形態の前記一例又は前記他の例において、車両検知システムは、第1の判定結果又は第2の判定結果の異常の有無についての判定の結果を出力する出力部(例えば、入出力部21又は31)を更に備えてもよい。この構成により、ユーザは、異常の有無についての判定の結果を知ることができる。
【0134】
4.変形例
以上、本開示の実施形態を詳細に説明したが、前述までの説明はあらゆる点において本開示の例示に過ぎない。本開示の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができる。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略する。以下の変形例は適宜組み合わせることができる。
【0135】
4-1.第1変形例
実施形態1では、磁気センサ11が子機10に含まれる例について説明したが、磁気センサ11は子機10とは別体として駐車マス50内に設置されてもよい。
【0136】
4-2.第2変形例
実施形態1では、電波による車両検知方法として、親機20と子機10との間の通信時の電波受信レベルを監視する例を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、子機10間の通信時の電波受信レベルを監視する方式、通信時の送信電波の反射レベルを監視する方式が採用されてもよい。さらに、駐車マスが大型車両用の大型マスである場合のように、1つの駐車マスに2つ以上の子機を埋設する場合には、親機20と一の子機との間の通信を他の子機で傍受し、その電波受信レベルの変化を、駐車有無の判定に利用してもよい。また、車両検知システムが電波送信器を更に備え、親機20及び/又は子機10による送信波の反射波を監視する方式が採用されてもよいし、別の目的で使用されている電波送信器からの電波受信レベルを監視する方式が採用されてもよい。
【0137】
4-3.第3変形例
実施形態1では、駐車マス50に車両2があるか否かの判定処理において、磁気検出値のY成分Ymの重みWyを0とした例、及び0<Wy<1を満たすようにWyを設定した例について説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されず、Wyは1に設定されてもよい。
【0138】
4-4.第4変形例
実施形態1では、演算回路32は、所定周期Ccで、磁気検出値のNb回(Nb≧Na)の移動平均値又は最頻値を、変化検出のための基準値(Xr1、Yr1、Zr1)として求める例について説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されない。例えば、基準値は、駐車マス50の駐車マス状態(駐車有状態及び駐車無状態)毎に予め定められてもよい。また、例えば、基準値は、駐車マスユニット51の8つの状態(図14参照)のそれぞれについて予め定められてもよい。基準値は、駐車マス50aの駐車マス状態の判定時、例えば駐車有状態と駐車無状態とが切り替わった際に更新されてもよい。さらに、基準値は、駐車マスユニット51の状態が遷移した際に更新されてもよい。
【0139】
4-5.第5変形例
実施形態3では、磁気センサ11による検知結果(第2の判定結果)又は磁気センサ11の異常を検知する車両検知システムについて説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、演算回路は、第1の判定結果と第2の判定結果とが一致せず、かつ、第2の信頼度が第1の信頼度より大きい場合の回数が所定の値以上となった場合、第2の判定結果に代えて、第1の判定結果が異常であると判定してもよい。
【0140】
(付記)
以下に本開示の態様を例示する。
【0141】
<態様1>
車両が駐車される駐車マス内における磁気を検出する磁気センサと、
前記磁気センサの検出結果を示す信号を電波により送信する子機と、
前記電波により送信された前記信号を受信する親機と、
演算回路と、
を備え、
前記演算回路は、
前記親機によって受信された前記信号の受信信号強度に基づいて、前記駐車マスに車両があるか否かを判定した第1の判定結果を生成し、
前記磁気センサの検出結果に基づいて、前記駐車マスに車両があるか否かを判定した第2の判定結果を生成し、
前記第1の判定結果と前記第2の判定結果とが一致しない場合、前記第2の判定結果が異常であると判定する、
車両検知システム。
【0142】
<態様2>
車両が駐車される駐車マス内における磁気を検出する磁気センサと、
信号を電波により互いに送受信する親機及び子機と、
演算回路と、
を備え、
前記子機は、前記親機から受信した信号の受信信号強度と、前記磁気センサの検出結果と、を前記親機に送信し、
前記演算回路は、
前記受信信号強度に基づいて、前記駐車マスに車両があるか否かを判定した第1の判定結果を生成し、
前記磁気センサの検出結果に基づいて、前記駐車マスに車両があるか否かを判定した第2の判定結果を生成し、
前記第1の判定結果と前記第2の判定結果とが一致しない場合、前記第2の判定結果が異常であると判定する、
車両検知システム。
【0143】
<態様3>
前記演算回路は、
前記親機によって受信された前記信号の受信信号強度に基づいて、前記第1の判定結果の確からしさの指標を表す第1の信頼度を決定し、
前記磁気センサの検出結果に基づいて、前記第2の判定結果の確からしさの指標を表す第2の信頼度を決定し、
前記第1の判定結果と前記第2の判定結果とが一致しない場合、前記第1の信頼度と前記第2の信頼度との比較に基づいて、前記第2の判定結果の異常の有無を判定する、
態様1又は2に記載の車両検知システム。
【0144】
<態様4>
前記演算回路は、
前記第1の判定結果と前記第2の判定結果とが一致するか否かについての複数回の判定の結果を蓄積し、
前記第1の判定結果と前記第2の判定結果とが一致せず、かつ、前記第1の信頼度が前記第2の信頼度より大きい場合の回数が所定の値以上となった場合、前記第2の判定結果が異常であると判定する、
態様3に記載の車両検知システム。
【0145】
<態様5>
前記演算回路は、前記第1の判定結果と前記第2の判定結果とが一致せず、かつ、前記第2の信頼度が前記第1の信頼度より大きい場合の回数が所定の値以上となった場合、前記第2の判定結果に代えて、前記第1の判定結果が異常であると判定する、
態様4に記載の車両検知システム。
【0146】
<態様6>
前記演算回路は、前記第1の判定結果を生成する処理において、前記受信信号強度を一定の周期で監視し、所定期間における前記受信信号強度の移動平均値又は最頻値と、所定の基準値と、の比較に基づいて、前記駐車マスに車両があるか否かを判定した前記第1の判定結果を生成する、
態様1~5のいずれかに記載の車両検知システム。
【0147】
<態様7>
前記演算回路は、前記第1の判定結果を生成する処理において、所定期間における前記受信信号強度の移動平均値又は最頻値が、
前記駐車マスに車両がないと判定するための基準を示す第1の基準値より小さい第1の閾値を超えた場合、前記駐車マスに車両がないと判定し、
前記駐車マスに車両があると判定するための基準を示す第2の基準値より大きい第2の閾値を下回った場合、前記駐車マスに車両があると判定する、
態様1~6のいずれかに記載の車両検知システム。
【0148】
<態様8>
前記演算回路は、前記第1の判定結果と前記第2の判定結果とが一致しないと判定した場合、前記第2の判定結果を、前記第1の判定結果と一致するように修正する、
態様1~7のいずれかに記載の車両検知システム。
【0149】
<態様9>
前記第1の判定結果又は前記第2の判定結果の異常の有無についての判定の結果を出力する出力部を更に備える、態様1~8のいずれかに記載の車両検知システム。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明は、例えば駐車マスに車両があるか否かを判定する車両検知システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0151】
1 車両検知システム(車両検知装置)
2 車両
10 子機
11 磁気センサ
12 演算回路
13 記憶装置
14 通信部
15 電池
20 親機
21 入出力部
22 演算回路
23 記憶装置
24 通信部
30 管理装置
31 入出力部
32 演算回路
33 記憶装置
34 通信部
50 駐車マス
50a 駐車マス
50b 駐車マス(隣接マス)
50c 駐車マス(隣接マス)
51 駐車マスユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17