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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021883
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】建物連結構造及び建物連結方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20240208BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
E04H9/02 351
F16F15/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125038
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】守屋 暁
(72)【発明者】
【氏名】川村 聡
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 庸介
(72)【発明者】
【氏名】飯野 夏輝
(72)【発明者】
【氏名】小川 剛士
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC80
2E139AD01
2E139AD03
2E139BA12
2E139BC06
2E139BD36
2E139BD49
2E139CB03
3J048AA06
3J048AD12
3J048DA04
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】制振ダンパーの許容変形量及び許容変形速度を超え難くする。
【解決手段】建物連結構造は、第一建物(建物10)と、第一建物に設けられた鉄骨部材40と、鉄骨部材40と対面して配置された第二建物(建物20)と、上方からみて第一建物及び第二建物が対向する方向に対して斜めに配置され、一端が第二建物に連結され、他端が鉄骨部材40に連結された制振ダンパー30、32と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一建物と、
前記第一建物に設けられた鉄骨部材と、
前記鉄骨部材と対面して配置された第二建物と、
上方からみて前記第一建物及び前記第二建物が対向する方向に対して斜めに配置され、一端が前記第二建物に連結され、他端が前記鉄骨部材に連結された制振ダンパーと、
を備えた建物連結構造。
【請求項2】
前記鉄骨部材は、
前記第一建物から跳ね出したアーム部材と、
前記アーム部材の端部が接合され、かつ、前記制振ダンパーの他端が連結される中継部材と、
を備えている、請求項1に記載の建物連結構造。
【請求項3】
前記中継部材は、上方からみて、前記第一建物及び前記第二建物の対向方向及び前記対向方向と直交する方向に沿う十字形状部材を備えており、
2本の前記制振ダンパーの他端が、前記十字形状部材における前記第二建物側の2箇所の入隅にそれぞれ連結されている、請求項2に記載の建物連結構造。
【請求項4】
上方からみて前記第一建物及び前記第二建物が対向する方向に対して斜めに配置された2本の前記アーム部材が、前記十字形状部材における前記第一建物側の2箇所の入隅にそれぞれ接合され、
上方からみて前記第一建物及び前記第二建物が対向する方向に沿う1本の前記アーム部材が、前記十字形状部材に接合されている、請求項3に記載の建物連結構造。
【請求項5】
前記第一建物は、前記第二建物の先に竣工した建物である、
請求項1~4の何れか1項に記載の建物連結構造。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物連結構造及び建物連結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、免震装置により免震支持された先行建物と、免震装置により免震支持された増築建物と、を制振部材で連結した免振建物の増築方法が記載されている。この増築方法では、先行建物及び増築建物の間に、これらの建物が対向する方向に沿って、ダンパーとして機能する制振部材が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-214969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の制振部材(制振ダンパー)は、先行建物及び増築建物に入力された地震力によって、これらの建物が互いに対向する方向に沿って相対変位した際、制振ダンパーには軸方向に沿って変形速度が生じ、制振性能が発揮される。一方、先行建物及び増築建物が互いに対向する方向と「直交する」方向に沿って相対変位した際は、制振ダンパーには変形速度が生じ難く、制振性能が発揮され難い。
【0005】
また、先行建物及び増築建物が互いに対向する方向に沿って相対変位した際における制振ダンパーの変形量は、先行建物及び増築建物の相対変位とほぼ等しい。このため、先行建物及び増築建物の相対変位が、制振部材の許容変形量より大きいと、制振ダンパーが破損する場合がある。また、先行建物及び増築建物の相対変位速度が、制振ダンパーの許容変形速度より大きい場合も、制振ダンパーが破損する場合がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、制振ダンパーの許容変形量及び許容変形速度を超え難くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の建物連結構造は、第一建物と、前記第一建物に設けられた鉄骨部材と、前記鉄骨部材と対面して配置された第二建物と、上方からみて前記第一建物及び前記第二建物が対向する方向に対して斜めに配置され、一端が前記第二建物に連結され、他端が前記鉄骨部材に連結された制振ダンパーと、を備える。
【0008】
請求項1の建物連結構造では、制振ダンパーが、上方からみて第一建物及び第二建物が対向する方向に対して斜めに配置されている。
【0009】
このため、第一建物及び第二建物が互いに対向する方向に沿って相対変位した際、及び、第一建物及び第二建物が互いに対向する方向と「直交する」方向に沿って相対変位した際、の双方において制振ダンパーが制振性能を発揮できる。
【0010】
また、第一建物及び第二建物が、互いに対向する方向に沿って相対変位した際は、当該方向に沿って制振ダンパーを配置する場合と比較して、制振ダンパーの変形量及び変形速度が小さくなる。同様に、第一建物及び第二建物が互いに対向する方向と「直交する」方向に沿って相対変位した際も、当該方向に沿って制振ダンパーを配置する場合と比較して、制振ダンパーの変形量及び変形速度が小さくなる。
【0011】
これにより、制振ダンパーの許容変形量及び許容変形速度を超え難くすることができる。
【0012】
さらに、制振ダンパーの一端は、第二建物に連結されている。これにより、第二建物に作用するせん断力が直接制振ダンパーに入力され易いので、振動を減衰し易い。一方、制振ダンパーの他端は第一建物に設けられた鉄骨部材に連結されている。このような鉄骨部材を設けることで、第一建物と第二建物との間隔に関わらず任意の既成の制振ダンパーを配置することができ、汎用性が高い。
【0013】
請求項2の建物連結構造は、請求項1に記載の建物連結構造において、前記鉄骨部材は、前記第一建物から跳ね出したアーム部材と、前記アーム部材の端部が接合され、かつ、前記制振ダンパーの他端が連結される中継部材と、を備えている。
【0014】
請求項2の建物連結構造では、鉄骨部材が、第一建物から跳ね出したアーム部材と中継部材とを備えている。アーム部材の長さを調整すれば、第一建物と第二建物との間隔に関わらず任意の既成の制振ダンパーを配置でき、第一建物へ応力を伝達することができる。
【0015】
また、鉄骨部材は、アーム部材が接合され、かつ、制振ダンパーが連結される中継部材を備えている。このため、アーム部材や制振ダンパーがそれぞれ複数ある場合でも、この中継部材を介して複数のアーム部材から複数の制振ダンパーへ応力を伝達することができる。
【0016】
請求項3の建物連結構造は、請求項2に記載の建物連結構造において、前記中継部材は、上方からみて、前記第一建物及び前記第二建物の対向方向及び前記対向方向と直交する方向に沿う十字形状部材を備えており、2本の前記制振ダンパーの他端が、前記十字形状部材における前記第二建物側の2箇所の入隅にそれぞれ連結されている。
【0017】
請求項3の建物連結構造では、中継部材が、第一建物及び第二建物の対向方向及び対向方向と直交する方向に沿う十字形状部材を備えている。そして、2本の制振ダンパーが、十字形状部材における第二建物側の2箇所の入隅にそれぞれ連結されている。
【0018】
このため、第一建物及び第二建物が互いに対向する方向へ沿って変位した際、十字形状部材において第一建物及び第二建物の対向方向に沿う部分及び当該対向方向と直交する方向に沿う部分の双方から、斜め方向に変形する制振ダンパーの反力を得ることができる。また、第一建物及び第二建物が互いに対向する方向と直交する方向へ沿って変位した際も、十字形状部材において第一建物及び第二建物の対向方向に沿う部分及び当該対向方向と直交する方向に沿う部分の双方から、斜め方向に変形する制振ダンパーの反力を得ることができる。すなわち、第一建物及び第二建物が対向する方向に対して斜めに配置された制振ダンパーを機能させ易い。
【0019】
請求項4の建物連結構造は、請求項3に記載の建物連結構造において、上方からみて前記第一建物及び前記第二建物が対向する方向に対して斜めに配置された2本の前記アーム部材が、前記十字形状部材における前記第一建物側の2箇所の入隅にそれぞれ接合され、上方からみて前記第一建物及び前記第二建物が対向する方向に沿う1本の前記アーム部材が、前記十字形状部材に接合されている。
【0020】
請求項4の建物連結構造では、斜めに配置された2本のアーム部材が、十字形状部材における第一建物側の2箇所の入隅にそれぞれ接合されている。これにより、2本の制振ダンパーと2本のアーム部材とが十字形状部材を挟んで対向配置される。このため、2本のアーム部材によって、十字形状部材における第二建物側の2箇所の入隅にそれぞれ接合されている2本の制振ダンパーの反力を得やすい。
【0021】
また、この建物連結構造では、第一建物及び第二建物が対向する方向に沿う1本のアーム部材が、十字形状部材に接合されている。これにより、斜めに配置されたアーム部材だけでなく、これらと比較して短いアーム部材によっても十字形状部材を支持できる。このため、第一建物及び第二建物の間隔が広くても鉛直方向の剛性を確保し易い。
【0022】
請求項5の建物連結構造は、請求項1~4の何れか1項に記載の建物連結構造において、前記第一建物は、前記第二建物の先に竣工した建物である。
【0023】
請求項5の建物連結構造では、第一建物が、第二建物の先に竣工した建物である。このため、第一建物と第二建物との間に制振ダンパーを設置する際、鉄骨部材を第一建物に対して固定することで、第一建物における柱梁架構の位置に関わらず任意の位置に制振ダンパーを設け易い。
【0024】
また、第二建物は後から竣工する建物であるため、第二建物の竣工時期に併せて制振ダンパーを設置すれば、第二建物における柱梁架構の位置を制振ダンパーの設置位置と揃えることができる。これにより、第二建物の補強部材として機能する鉄骨部材を省略できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、制振ダンパーの許容変形量及び許容変形速度を超え難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る建物連結構造が適用された建物を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る建物連結構造を示す平面図である。
図3】(A)は2つの建物が互いに対向する方向へ変位した際の制振ダンパーの変形を示す模式図であり、(B)は2つの建物が互いに対向する方向と直交する方向へ変位した際の制振ダンパーの変形を示す模式図である。
図4】本発明の実施形態におけるアーム部材の変形例に係る建物連結構造を示す平面図である。
図5】本発明の実施形態における鉄骨部材の変形例に係る建物連結構造を示す平面図である。
図6】本発明の実施形態における十字形状部材の変形例に係る建物連結構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係る建物連結構造について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0028】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において構成を省略する、異なる構成と入れ替える、一実施形態及び各種の変形例を組み合わせて用いる等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0029】
各図面において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向(上下方向)に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0030】
<建物連結構造>
本発明の実施形態に係る建物連結構造は、図1に示すように、二つの建物10及び20を、制振ダンパー30で連結する制振構造である。この建物連結構造は、第一建物としての建物10と、鉄骨部材40と、第二建物としての建物20と、制振ダンパー30、32と、を含んで構成されている。
【0031】
(建物)
建物10及び20は、それぞれ竣工時期が異なり、建物10が先に竣工した建物であり、建物20が後に竣工した建物である。建物10、20は、それぞれ免震装置で支持された免震建物である。
【0032】
また、建物10、20は、それぞれ柱梁架構によって形成されており、それぞれの架構は、X方向及びY方向に沿って配置されている。建物10、20は、互いに間隔を空けた状態で対向して配置され、対向方向がY方向に沿っている。
【0033】
より具体的には、建物10、20は、それぞれの架構が同方向に沿って形成されており、対面して配置された外壁面がX方向に沿って平行に配置されている。また、建物20は、以下に示す鉄骨部材40と対面して配置されている。
【0034】
(鉄骨部材)
建物10には、鉄骨部材40が設けられている。「設けられている」とは、接合されていることを示す。鉄骨部材40は、接合部材42、アーム部材44、46、48及び中継部材50を備えている。
【0035】
(鉄骨部材-接合部材)
図2に示すように、接合部材42はH形鋼で形成された部材であり、ウェブ42Wが水平面に沿って配置され、一方のフランジ42Fが鉄筋コンクリート造の建物10におけるX方向に沿う梁12AにPC鋼棒によって接合されている。接合部材42は、建物10において梁12Aが架け渡された柱12B間に亘って配置されている。なお、フランジ42Fと梁12Aとは、ボルトによって接合してもよい。
【0036】
(鉄骨部材-アーム部材)
アーム部材44、46及び48はH形鋼で形成された部材であり、それぞれ、一端が接合部材42に接合されて建物10から跳ね出した片持ち梁である。また、アーム部材44、46及び48におけるそれぞれの他端は、中継部材50に接合されている。
【0037】
アーム部材44は、上方からみて建物10及び建物20が対向する方向であるY方向に沿う部材であり、端部44Eが、中継部材50における十字形状部材52の端部に接合されている(十字形状部材52については後述する)。
【0038】
アーム部材46は、上方からみて建物10及び建物20が対向する方向であるY方向及びY方向と直交するX方向に対して斜めに配置された部材である。アーム部材46は、接合部材42における建物10の柱12Bに接合された部分から跳ね出して配置され、端部46Eが中継部材50における建物10側の入隅部材54A(入隅部材54Aについては後述する)に接合されている。
【0039】
同様に、アーム部材48は、アーム部材44に対してアーム部材46の反対側において、上方からみてY方向及びY方向と直交するX方向に対して斜めに配置された部材である。アーム部材48は、接合部材42における建物10の柱12Bに接合された部分から跳ね出して配置され、端部48Eが中継部材50における建物10側の入隅部材54B(入隅部材54Bについては後述する)に接合されている。
【0040】
図2に一点鎖線で示すように、アーム部材44、46及び48の中心線は、上方からみて、後述する十字形状部材52と重なる交点Oにおいて交わっている。
【0041】
なお、接合部材42において、アーム部材44、46及び48が接合される部分には、フランジ42F間に補強リブ42Rが接合されている。
【0042】
(鉄骨部材-中継部材)
中継部材50は、十字形状部材52及び入隅部材54A、54B、54C及び54Dを備えて形成されている。
【0043】
十字形状部材52は、Y方向に沿うY方向部材52Aと、X方向に沿うX方向部材52Bと、で形成されている。Y方向部材52A及びX方向部材52BはH形鋼を用いて形成され、Y方向部材52AとX方向部材52Bとの交点においては、Y方向部材52Aが通し材とされている。すなわち、十字形状部材52は、Y方向部材52AにX方向部材52Bが接合されて形成されている。なお、十字形状部材52は、X方向部材52Bを通し材として形成してもよい。
【0044】
入隅部材54A、54B、54C及び54Dは、それぞれ、十字形状部材52におけるY方向部材52AとX方向部材52Bとの接合部の入隅に接合された部材である。このうち、入隅部材54A及び54Bは建物10側における2箇所の入隅にそれぞれ接合され、入隅部材54C及び54Dは建物20側における2箇所の入隅にそれぞれ接合されている。
【0045】
なお、本発明における、「2本のアーム部材」が「十字形状部材における第一建物側の2箇所の入隅にそれぞれ接合」されている状態とは、アーム部材46及び48が、それぞれ入隅部材54A及び54Bを介して十字形状部材52に接合されている状態を示している。
【0046】
同様に、本発明における、「2本の制振ダンパー」が「十字形状部材における第二建物側の2箇所の入隅にそれぞれ連結」されている状態とは、後述する制振ダンパー30及び32が、それぞれ入隅部材54C及び54Dを介して十字形状部材52に接合されている状態を示している。
【0047】
(制振ダンパー)
制振ダンパー30及び32は、例えばボールジョイント式のオイルダンパーであり、上方からみて建物10及び建物20が対向する方向(Y方向)及びY方向と直交するX方向の双方に対して斜めに配置されている。また、制振ダンパー30及び32は、水平姿勢で配置されている。
【0048】
制振ダンパー30及び32は、ボールジョイントによって、それぞれの一端が建物20に回転可能に連結され、他端が鉄骨部材40に回転可能に連結されている。
【0049】
制振ダンパー30は、一方の端部30Aが建物20の接合部材22Aに連結され、他方の端部30Bが鉄骨部材40の入隅部材54Cに連結されている。同様に、制振ダンパー32は、一方の端部32Aが建物20の接合部材22Bに接合され、他方の端部32Bが鉄骨部材40の入隅部材54Dに連結されている。
【0050】
なお、接合部材22A及び22Bは、建物20を形成するX方向に沿う鉄骨梁22Cに接合されている。また、鉄骨梁22Cにおいて、接合部材22A及び22Bが接合された部分には、Y方向に沿う鉄骨梁22Dが接合されている。
【0051】
図2に一点鎖線で示すように、制振ダンパー30及び32の中心線は、上方からみて、後述する十字形状部材52と重なる交点Oにおいて交わっている。
【0052】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係る建物連結構造では、制振ダンパー30及び32が、上方からみて建物10及び建物20が対向する方向(Y方向)に対して斜めに配置されている。
【0053】
このため、建物10及び建物20に地震力が入力されて互いに対向する方向(Y方向)に沿って相対変位した際、及び、建物10及び建物20に地震力が入力されて互いに対向する方向と「直交する」方向(X方向)に沿って相対変位した際、の双方において制振ダンパー30及び32が制振性能を発揮できる。
【0054】
また、建物10及び建物20が、互いに対向する方向に沿って相対変位した際は、当該方向に沿って制振ダンパーを配置する場合と比較して、制振ダンパーの変形及び変形速度が小さくなる。
【0055】
ここで、図3(A)には、建物10及び建物20が対向する方向(Y方向)に沿って配置した、比較例に係る制振ダンパー300と、本発明の実施形態に係る制振ダンパー30と、が模式的に描かれている。
【0056】
この図に示されるように、建物10及び建物20が、Y方向に沿って距離δYだけ相対変位した際には、制振ダンパー300も、Y方向に沿って距離δYだけ変形する。一方、制振ダンパー30は、端部30Bを中心に回転しつつ、端部30AがY方向に沿って距離δYだけ変位する。このとき、制振ダンパー30の変形量δLは、距離δYより小さい。
【0057】
すなわち、建物10及び建物20が、互いに対向する方向に沿って距離δYだけ相対変位した際、制振ダンパー30の変形量δLは、当該方向に沿って配置した制振ダンパー300の変形量(距離δY)と比較して、小さい。また、変形量が小さければ、変形速度も小さい。
【0058】
同様に、建物10及び建物20が互いに対向する方向と直交する方向(X方向)に沿って相対変位した際も、当該方向に沿って制振ダンパーを配置する場合と比較して、制振ダンパーの変形量及び変形速度が小さくなる。
【0059】
ここで、図3(B)には、X方向に沿って配置した、比較例に係る制振ダンパー320と、本発明の実施形態に係る制振ダンパー30と、が模式的に描かれている。
【0060】
この図に示されるように、建物10及び建物20が、X方向に沿って距離δXだけ相対変位した際には、制振ダンパー320も、X方向に沿って距離δXだけ変形する。一方、制振ダンパー30は、端部30Bを中心に回転しつつ、端部30AがX方向に沿って距離δXだけ変位する。このとき、制振ダンパー30の変形量δLは、距離δXより小さい。
【0061】
すなわち、建物10及び建物20が、互いに対向する方向と直交する方向に沿って距離δXだけ相対変位した際、制振ダンパー30の変形量δLは、当該方向に沿って配置した制振ダンパー320の変位(距離δX)と比較して、小さい。また、変形量が小さければ、変形速度も小さい。
【0062】
以上述べたように、本発明の実施形態に係る建物連結構造によれば、制振ダンパーの許容変形量及び許容変形速度を超え難くすることができる。
【0063】
さらに、本発明の実施形態に係る建物連結構造では、図2に示すように、制振ダンパー30及び32の一端(端部30A及び32A)が、建物20に回転可能に連結されている。これにより、建物20に作用するせん断力が、直接制振ダンパー30及び32に入力され易いので、振動を減衰し易い。
【0064】
一方、制振ダンパー30及び32の他端(端部30B及び32B)は建物10に設けられた鉄骨部材40に回転可能に連結されている。このような鉄骨部材40を設けることで、建物10と建物20との間隔に関わらず任意の既成の制振ダンパーを配置することができ、汎用性が高い。
【0065】
なお、鉄骨部材40は、建物10から跳ね出したアーム部材44、46及び48と中継部材50とを備えている。アーム部材44、46及び48の長さを調整すれば、建物10と建物20との間隔に関わらず任意の既成の制振ダンパーを配置でき、建物10へ応力を伝達することができる。
【0066】
また、鉄骨部材40は、アーム部材44、46及び48が接合され、制振ダンパー30及び32が連結される中継部材50を備えている。このため、上記実施形態で説明したようにアーム部材や制振ダンパーがそれぞれ複数ある場合でも、この中継部材50を介して複数のアーム部材から複数の制振ダンパーへ応力を伝達することができる。
【0067】
また、中継部材50は、建物10及び建物20の対向方向及び対向方向と直交する方向に沿う十字形状部材52を備えている。そして、2本の制振ダンパー30及び32の他端(端部30B及び32B)が、入隅部材54C及び54Dを介して、十字形状部材52における建物20側の2箇所の入隅にそれぞれ回転可能に連結されている。
【0068】
このため、建物10及び建物20がY方向に沿って変位した際、十字形状部材52においてX方向に沿うX方向部材52B及びY方向に沿うY方向部材52Aの双方から、斜め方向に変形する制振ダンパー30及び32の反力を得ることができる。また、建物10及び建物20がX方向に沿って変位した際も、十字形状部材52においてX方向に沿うX方向部材52B及びY方向に沿うY方向部材52Aの双方から、斜め方向に変形する制振ダンパー30及び32の反力を得ることができる。
【0069】
すなわち、十字形状部材52を設けることにより、建物10及び建物20が対向する方向に対して斜めに配置された制振ダンパー30を機能させ易い。
【0070】
また、本発明の実施形態に係る建物連結構造では、斜めに配置された2本のアーム部材46及び48が、入隅部材54C及び54Dを介して、十字形状部材52における建物10側の2箇所の入隅にそれぞれ接合されている。
【0071】
これにより、2本の制振ダンパー30及び32と、2本のアーム部材46及び48とが、十字形状部材52を挟んで対向配置される。このため、2本のアーム部材46及び48によって、十字形状部材52における建物20側の2箇所の入隅にそれぞれ接合されている2本の制振ダンパー30及び32の反力を得やすい。
【0072】
また、この建物連結構造では、Y方向に沿う1本のアーム部材44が、十字形状部材52に接合されている。これにより、斜めに配置されたアーム部材46及び48だけでなく、これらと比較して短いアーム部材44によっても十字形状部材52を支持できる。このため、建物10及び建物20の間隔が広くても鉛直方向の剛性を確保し易い。
【0073】
また、この建物連結構造では、建物10が、建物20が先に竣工した建物である。このため、建物10と建物20との間に制振ダンパー30及び32を設置する際、鉄骨部材40を建物10に対して固定することで、建物10を形成する柱梁架構の柱12Bの位置に関わらず任意の位置に制振ダンパー30及び32を設け易い。
【0074】
また、建物20は後から竣工する建物であるため、建物20の竣工時期に併せて制振ダンパー30及び32を設置すれば、例えば鉄骨梁22Dのように、建物20における柱梁架構の位置を制振ダンパー30及び32の設置位置と揃えることができる。これにより、建物20の補強部材として機能する鉄骨部材を省略できる。
【0075】
<その他の実施形態>
上記実施形態においては、建物10が、建物20の先に竣工した建物であるが、本発明の実施形態はこれに限らない。本発明においては、建物20が、建物10の先に竣工した建物であってもよく、建物10と建物20とが同時に竣工した建物でもよい。
【0076】
建物10及び20の竣工時期に関わらず、制振ダンパー30及び32を建物10及び建物20が対向する方向に対して斜めに配置すれば、制振ダンパー30及び32の許容変形量及び許容変形速度を超え難くする効果を得られる。
【0077】
また、上記実施形態においては、アーム部材として、3本のアーム部材44、46及び48を設けているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えばアーム部材44、46及び48の何れかを省略してもよい。例えば、図4には、アーム部材44を省略した図が示されている。アーム部材44を省略しても、上方からみて斜めに配置されたアーム部材46及び48によって、制振ダンパー30及び32の反力を得やすい効果を得ることができる。
【0078】
さらに、上記実施形態においては、鉄骨部材40が接合部材42、アーム部材44、46、48及び中継部材50を備えているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば図5に示すように、アーム部材を省略し、中継部材50の変形例である中継部材60を用いてもよい。
【0079】
中継部材60は、Y方向部材62、入隅部材64A及び64Bを備えている。このうち、Y方向部材62は、接合部材42に接合されたY方向に沿うH形鋼である。また、入隅部材64A及び64Bは、Y方向部材62と接合部材42との接合部に形成さる入隅に接合された部材である。これらの入隅部材64A及び64Bには、図2に示した入隅部材54C及び54Dと同様に、制振ダンパー30及び32が連結される。
【0080】
またさらに、上記実施形態においては、十字形状部材52が、Y方向に沿うY方向部材52Aと、X方向に沿うX方向部材52Bと、で形成されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば図7に示す十字形状部材70のように、Y方向に対して斜めに配置された斜材70A及び70Bによって形成してもよい。
【0081】
斜材70A及び70Bの角度は特に限定されるものではないが、本例においては、斜材70A及び70Bは互いに直交して配置され、Y方向に対する角度が45°である。
【0082】
また、十字形状部材をY方向に対して斜めに配置された斜材70A及び70Bによって形成する場合、制振ダンパー30及び32は、中心軸を斜材70A及び70Bの中心軸と一致するように配置することが好ましい。
【0083】
十字形状部材をこのように形成する場合、図2に示したような入隅部材54A~54Dを省略できる。なお、斜材70A及び70Bの長さは任意であり、アーム部材46及び48を相対的に長く形成してもよい。
【0084】
また、上記実施形態においては、制振ダンパー30及び32を、建物20及び鉄骨部材40に回転可能に接続するための構成として、ボールジョイント式のダンパーを採用しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0085】
例えば制振ダンパー30及び32をボールジョイント式としなくても、回転軸が上下方向に沿う接合用ピン等を用いて、建物20及び鉄骨部材40に対して水平方向に回転可能となるようにピン接合すればよい。
【0086】
また、上記実施形態においては、建物10及び建物20が対向する方向に対して斜めに配置されたダンパーとして、制振ダンパー30及び32の2つのダンパーを設けているが、本発明の実施形態はこれに限らない。制振ダンパー30及び32は、何れかを省略してもよい。
【0087】
また、図1に示すように、建物10及び20の間には、建物10及び建物20が対向する方向(Y方向)及び当該方向と直交する方向(X方向)に沿うダンパー300、320も設けられている。本発明は、2つの建物間に、建物10及び建物20が対向する方向に対して斜めに配置されたダンパーがあれば、このようなダンパー300、320を設けてもよい。
【符号の説明】
【0088】
10 建物(第一建物)
20 建物(第二建物)
30 制振ダンパー
32 制振ダンパー
40 鉄骨部材
44 アーム部材
46 アーム部材
48 アーム部材
50 中継部材
52 十字形状部材
60 中継部材
70 十字形状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6