(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021884
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】木質耐火被覆面材
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
E04B1/94 V
E04B1/94 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125039
(22)【出願日】2022-08-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蛇石 貴宏
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001EA06
2E001FA01
2E001FA02
2E001GA59
2E001GA63
2E001HB01
2E001HC01
2E001KA01
2E001LA01
2E001LA04
2E001LA12
(57)【要約】
【課題】熱可塑性樹脂によって接着された複数の木材を有する木質構成材によって木質耐火被覆面材を形成しつつ、木質構成材の脱落を抑制することを目的とする。
【解決手段】木質耐火被覆面材30であって、木質耐火被覆面材30の幅方向に配列されるとともに、熱硬化性樹脂R1によって接着された複数の木質構成材40を備え、木質構成材40は、木質耐火被覆面材30の厚み方向に積層されるとともに、熱可塑性樹脂によって接着された複数の木材42を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質耐火被覆面材であって、
前記木質耐火被覆面材の幅方向に配列されるとともに、熱硬化性樹脂によって接着された複数の木質構成材を備え、
前記木質構成材は、前記木質耐火被覆面材の厚み方向に積層されるとともに、熱可塑性樹脂によって接着された複数の木材を有する、
木質耐火被覆面材。
【請求項2】
隣り合う前記木質構成材の内面に亘って重ねられる金属板と、
前記木質構成材に前記金属板を固定するビスと、
を備える請求項1に記載の木質耐火被覆面材。
【請求項3】
前記ビスは、前記木質構成材の最外層を構成する前記木材に達する、
請求項2に記載の木質耐火被覆面材。
【請求項4】
前記木質構成材が、集成材又は直交集成板とされる、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の木質耐火被覆面材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質耐火被覆面材に関する。
【背景技術】
【0002】
木材によって形成され、H形鋼等の鉄骨部材を耐火被覆材(耐火被覆面材)が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平02-058651号公報
【特許文献2】特開2013-011063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、集成材やCLT(Cross Laminated Timber)の端材や廃材によって、耐火被覆面材を形成することが考えられる。
【0005】
しかしながら、これらの端材や廃材の接着剤として、熱可塑性樹脂が使用されている場合がある。この場合、火災時に、熱可塑性樹脂が軟化するため、接着力が低下し易く、端材等が早期に脱落する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、熱可塑性樹脂によって接着された複数の木材を有する木質構成材によって木質耐火被覆面材を形成しつつ、木質構成材の脱落を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の木質耐火被覆面材は、前記木質耐火被覆面材の幅方向に配列されるとともに、熱硬化性樹脂によって接着された複数の木質構成材を備え、前記木質構成材は、前記木質耐火被覆面材の厚み方向に積層されるとともに、熱可塑性樹脂によって接着された複数の木材を有する。
【0008】
請求項1に係る木質耐火被覆面材によれば、複数の木質構成材を備える。複数の木質構成材は、木質耐火被覆面材の幅方向に配列されるとともに、熱硬化性樹脂によって接着される。また、各木質構成材は、木質耐火被覆面材の厚み方向に積層されるとともに、熱可塑性樹脂によって接着された複数の木材を有する。
【0009】
ここで、前述したように、木質耐火被覆面材の幅方向に隣り合う木質構成材は、熱硬化性樹脂によって接着されている。つまり、本発明では、木質耐火被覆面材の幅方向に隣り合う木質構成材の木材同士が、火災時に接着力が低下し難い熱硬化性樹脂によって接着されている。
【0010】
これにより、火災時に、木質構成材の熱可塑性樹脂が軟化し、木質耐火被覆面材の厚み方向に隣り合う木材の接着力が低下しても、当該木材の脱落が抑制される。
【0011】
このように本発明では、熱可塑性樹脂によって接着された複数の木材を有する木質構成材によって木質耐火被覆面材を形成しつつ、木質構成材の脱落を抑制することができる。したがって、熱可塑性樹脂で接着されたCLT等の集成材や、それらの端材及び廃材の有効利用(再利用)を図ることができる。
【0012】
請求項2に記載の木質耐火被覆面材は、請求項1に記載の木質耐火被覆面材において、隣り合う前記木質構成材の内面に亘って重ねられる金属板と、前記木質構成材に前記金属板を固定するビスと、を備える。
【0013】
請求項2に係る木質耐火被覆面材によれば、金属板は、隣り合う木質構成材の内面に亘って重ねられる。また、金属板は、ビスによって木質構成材に固定される。
【0014】
これにより、例えば、火災時に、一の木質構成材に入力された火災熱が、金属板を介して隣り合う他の木質構成材に伝達される。したがって、一の木質構成材の温度上昇が抑制されるため、当該木質構成材の脱落が抑制される。
【0015】
また、仮に火災時に、木質構成材が脱落しても、金属板によって火炎が遮炎される。したがって、耐火性能が向上する。
【0016】
請求項3に記載の木質耐火被覆面材は、請求項2に記載の木質耐火被覆面材において、前記ビスは、前記木質構成材の最外層を構成する前記木材に達する。
【0017】
請求項3に係る木質耐火被覆面材によれば、ビスは、木質構成材の最外層を構成する木材に達する。これにより、火災時に、木質構成材の熱可塑性樹脂が軟化し、接着力が低下しても、木質構成材の最外層を構成する木材の脱落がさらに抑制される。
【0018】
請求項4に記載の木質耐火被覆面材は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の木質耐火被覆面材において、前記木質構成材が、集成材又は直交集成板とされる。
【0019】
請求項4に係る木質耐火被覆面材によれば、木質構成材が、集成材又は直交集成板とされる。これにより、集成材、及び直交集成板の端材や廃材の有効利用を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、熱可塑性樹脂によって接着された複数の木材を有する木質構成材によって木質耐火被覆面材を形成しつつ、木質構成材の脱落を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施形態に係る木質耐火被覆面材によって耐火被覆された鉄骨柱を示す平断面図である。
【
図3】比較例に係る木質耐火被覆面材を示す
図2に対応する断面図である。
【
図4】一実施形態に係る木質耐火被覆面材の変形例を示す
図2に対応する断面図である。
【
図5】一実施形態に係る木質耐火被覆面材の変形例を示す
図2に対応する断面図である。
【
図6】一実施形態に係る木質耐火被覆面材の変形例によって耐火被覆された鉄骨柱の角部を示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る木質耐火被覆面材について説明する。なお、各図に適宜示される矢印X方向、及び矢印Y方向は、互いに直交する水平二方向を示している。
【0023】
(鉄骨柱)
図1には、本実施形態に係る木質耐火被覆面材30によって耐火被覆された鉄骨柱10が示されている。鉄骨柱10は、一例として、角形鋼管によって形成されている。
【0024】
なお、鉄骨柱10は、角形鋼管に限らず、例えば、丸形鋼管やH形鋼、鋼管内にコンクリートを充填したCFT柱等でも良い。また、鉄骨柱10は、鉄骨部材の一例である。
【0025】
鉄骨柱10の周囲には、複数(本実施形態では4本)の下地材20が配置されている。複数の下地材20は、例えば、L形鋼によって形成されており、鉄骨柱10の各角部の外側に配置されている。
【0026】
複数の下地材20は、当該鉄骨柱10の材軸方向に沿って配置されており、鉄骨柱10の柱脚部から柱頭部に亘っている。各下地材20の上下の端部は、例えば、図示しないランナー等によって支持されている。これらの下地材20に木質耐火被覆面材30が支持されている。
【0027】
なお、木質耐火被覆面材30は、下地材20に限らず、例えば、鉄骨柱10の外面に取り付けられたブラケット等に支持されても良い。
【0028】
(木質耐火被覆面材)
複数(本実施形態では4枚)の木質耐火被覆面材30は、鉄骨柱10を取り囲むように配置されている。より具体的には、複数の木質耐火被覆面材30は、鉄骨柱10の材軸方向から見て、鉄骨柱10を取り囲む矩形枠状に配置されており、鉄骨柱10を耐火被覆している。
【0029】
木質耐火被覆面材30は、耐火被覆材として機能する。具体的には、木質耐火被覆面材30は、鉄骨柱10を耐火被覆する燃え代層として機能する。燃え代層は、火災時に燃焼して炭化層(断熱層)を形成することにより、鉄骨柱10側への火災熱の浸入を抑制する層とされる。
【0030】
木質耐火被覆面材30の板厚(厚み)t(
図2参照)は、要求される耐火性能に応じて適宜設定される。ここで、木材(木質材)は、1面加熱の場合、1時間加熱で40mm~60mm、2時間加熱で70mm~90mm、3時間加熱で100mm~120mm炭化する。そのため、1面加熱の場合、木質耐火被覆面材30の板厚tは、例えば、1時間加熱で40mm~60mm、2時間加熱で70mm~90mm、3時間加熱で100mm~120mmに設定される。
【0031】
また、木材(木質材)は、2面加熱になると、板厚に10%~20%の余裕が必要となる。そのため、木質耐火被覆面材30の板厚t)は、1時間加熱で44mm~72mm、2時間加熱で77mm~108mm、3時間加熱で110mm~144mmに設定される。
【0032】
また、木質耐火被覆面材30に使用する樹種(木材)としては、例えば、カラマツ、ベイマツ、又はスギが挙げられる。ここで、樹種によって、加熱後に、木質耐火被覆面材30の外面(見つけ面)30Aの燃焼状態が異なる場合がある。例えば、スギの場合、木質耐火被覆面材30の外面30Aの全面において、燃焼が継続され易い。
【0033】
一方、カラマツ、及びベイマツの場合、木質耐火被覆面材30の外面30Aにおいて、部分的に燃焼が継続されるが、全体としては燃え止まり易い。したがって、木質耐火被覆面材30に使用する樹種(木材)としては、カラマツ、及びベイマツが好ましい。
【0034】
なお、鉄骨柱10は、熱伝導率が高い。そのため、火災時に、木質耐火被覆面材30の外面30Aにおいて部分的に燃焼が継続しても、火災熱が鉄骨柱10全体に拡散されるため、鉄骨柱10の局所的な温度上昇が抑制される。
【0035】
したがって、木質耐火被覆面材30にカラマツ、又はベイマツを使用した場合であって、火災時に、木質耐火被覆面材30の外面30Aにおいて部分的に燃焼が継続しても、鉄骨柱10の耐火性能は確保される。
【0036】
鉄骨柱10の材軸方向から見て、隣り合う木質耐火被覆面材30は、互いに略直交する方向(矢印X方向、矢印Y方向)に沿って配置されている。また、隣り合う木質耐火被覆面材30は、各々の端部が突き当てられた状態で配置されており、その端部間に目地Mが形成されている。
【0037】
木質耐火被覆面材30の内面(裏面)30Bには、金属板50が取り付けられている。断熱層としての金属板50は、熱伝導率が高い鋼板や鉄板等によって形成されている。この金属板50は、木質耐火被覆面材30の内面30Bに重ねられた状態で、複数のビス52によって木質耐火被覆面材30に固定されている。
【0038】
なお、木質耐火被覆面材30及び金属板50は、予め一体化されたユニットとしても良い。また、金属板50は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0039】
金属板50及び木質耐火被覆面材30は、隣り合う下地材20に亘って配置されている。これらの金属板50及び木質耐火被覆面材30は、木質耐火被覆面材30の表面(外面)側から、図示しないビス等によって下地材20に固定されている。なお、金属板50は、隣り合う木質耐火被覆面材30の目地Mには、配置されていない。
【0040】
金属板50の内面は、鉄骨柱10の外面(外側面)と対向して配置されている。つまり、木質耐火被覆面材30は、金属板50の内面と鉄骨柱10の外面との間に間隔を空けた状態で配置されている。この間隔は、断熱層(断熱空間)として機能する。
【0041】
また、金属板50の内面と鉄骨柱10の外面との間に間隔を空けることにより、鉄骨柱10の外面に形成された溶接ビード等の凹凸と、木質耐火被覆面材30との干渉が抑制されるとともに、当該間隔によって、木質耐火被覆面材30の施工誤差等が吸収可能とされる。
【0042】
ここで、
図2に示されるように、木質耐火被覆面材30は、幅方向(矢印X方向)に配列された複数の木質構成材40を備えている。隣り合う木質構成材40は、各々の側面40S同士を突き合せた状態で配置されるとともに、各々の側面40S同士が熱硬化性樹脂R1によって接着(圧着)されている。
【0043】
木質構成材40は、熱可塑性樹脂R2によって接着された集成材によって形成されている。また、木質構成材40は、例えば、集成材の端材や廃材によって形成されている。各木質構成材40は、木質耐火被覆面材30の厚み方向(矢印Y方向)に積層された複数の木材42を有している。
【0044】
複数の木材42は、集成材のラミナとされており、3層以上で積層されている。また、複数の木材42は、断面矩形状とされており、各々の繊維方向(長手方向)を同一方向として積層されている。隣り合う木材42は、各々の厚み方向の表面(板面又は柾面)42A同士を突き合せた状態で配置されるとともに、各々の表面42A同士が熱可塑性樹脂R2によって接着(圧着)されている。
【0045】
なお、本実施形態では、一例として、4層の木材42を有する木質構成材40、及び5層の木材42を有する木質構成材40を用いている。また、木質構成材40は、端材や廃材に限らず、例えば、製材等でも良い。
【0046】
金属板50は、隣り合う木質構成材40の内面に亘って重ねられている。この金属板50は、複数のビス52によって木質構成材40に固定されている。複数のビス52は、木質耐火被覆面材30の幅方向に間隔を空けるとともに、鉄骨柱10の材軸方向に間隔を空けて配置されている。各ビス52は、例えば、木質構成材40の内層側の木材42に固定されている。
【0047】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0048】
図2に示されるように、木質耐火被覆面材30は、複数の木質構成材40を備えている。複数の木質構成材40は、木質耐火被覆面材30の幅方向に配列されるとともに、各々の側面40S同士が突き当てられた状態で熱硬化性樹脂R1によって接着されている。
【0049】
各木質構成材40は、木質耐火被覆面材30の厚み方向に積層された複数の木材42を有している。また、複数の木材42は、各々の表面42A同士が突き当てられた状態で、熱可塑性樹脂R2によって接着されている。
【0050】
ここで、
図3には、比較例に係る木質耐火被覆面材100が示されている。比較例に係る木質耐火被覆面材100は、隣り合う木質構成材40が、熱可塑性樹脂R2によって接着されている点で、本実施形態に係る木質耐火被覆面材30と相違する。
【0051】
そのため、比較例に係る木質耐火被覆面材100では、火災時に、熱可塑性樹脂R2が軟化し、接着力が低下すると、
図3に二点鎖線で示されるように、木質構成材40の木材42が早期に脱落する可能性がある。
【0052】
これに対して本実施形態では、前述したように、木質耐火被覆面材30の幅方向に隣り合う木質構成材40が、熱硬化性樹脂R1によって接着されている。つまり、本実施形態では、木質耐火被覆面材30の幅方向に隣り合う木質構成材40の木材42同士が、火災時に接着力が低下し難い熱硬化性樹脂R1によって接着されている。
【0053】
これにより、火災時に、木質構成材40の熱可塑性樹脂R2が軟化し、木質耐火被覆面材30の厚み方向に隣り合う木材42の接着力が低下しても、当該木材42の脱落が抑制される。
【0054】
このように本実施形態では、熱可塑性樹脂R2によって接着された複数の木材42を有する木質構成材40によって木質耐火被覆面材30を形成しつつ、木質構成材40の脱落を抑制することができる。したがって、熱可塑性樹脂R2で接着されたCLT等の集成材や、それらの端材及び廃材の有効利用(再利用)を図るこができる。
【0055】
また、木質耐火被覆面材30の内面30Bには、金属板50が取り付けられている。金属板50は、隣り合う木質構成材40の内面に亘って重ねられている。また、金属板50は、複数のビス52によって木質構成材40に固定されている。
【0056】
これにより、例えば、火災時に、一の木質構成材40に入力された火災熱が、金属板50を介して隣り合う他の木質構成材40に伝達される。したがって、一の木質構成材40の温度上昇が抑制されるため、当該木質構成材40の脱落が抑制される。
【0057】
また、木質構成材40の内層側の木材42は、ビス52及び金属板50を介して下地材20に支持されている。したがって、木質構成材40の内層側の木材42の脱落が抑制される。
【0058】
さらに、仮に火災時に、木質構成材40の内層側の木材42が脱落しても、金属板50によって火炎が遮炎される。したがって、鉄骨柱10の耐火性能が向上する。
【0059】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0060】
上記実施形態では、金属板50を固定するビス52が、木質構成材40の内層側の木材42に固定されている。しかし、例えば、
図4に示される変形例のように、木質構成材40の最外層を構成する木材42に達するように、木質構成材40にビス54を固定しても良い。
【0061】
これにより、火災時に、木質構成材40の熱可塑性樹脂R2が軟化し、接着力が低下しても、ビス54によって木質構成材40の最外層を構成する木材42が支持されるため、当該木材42の脱落がさらに抑制される。
【0062】
また、上記実施形態では、木質構成材40が集成材によって形成されている。しかし、木質構成材60は、例えば、
図5に示される変形例のように、直交集成板(CLT)によって形成されても良い。
【0063】
木質構成材60は、木質耐火被覆面材30の幅方向に配列され、各々の側面60S同士を突き合せた状態で配置されるとともに、各々の側面60S同士が熱硬化性樹脂R1によって接着(圧着)されている。
【0064】
各木質構成材60は、厚み方向に積層された複数の木材(ラミナ)62,64を有している。複数の木材62,64は、各々の繊維方向が互いに交差(略直交)するように積層されている。また、複数の木材62,64は、各々の厚み方向の表面同士が突き当てられた状態で、熱可塑性樹脂R2によって接着されている。
【0065】
ここで、木質構成材60では、例えば、木質耐火被覆面材30の幅方向(矢印X方向)に延びる木材62に達するようにビス54を固定する。これにより、木材62によって、当該木材62の内層側の複数の木材64が拘束される。したがって、ビス54の数を低減しつつ、複数の木材64の脱落も抑制することができる。
【0066】
また、
図6に示される変形例のように、隣り合う木質耐火被覆面材30の角部では、一方の木質耐火被覆面材30の木口面30Kが露出するため、火災時に、木口面30Kが加熱される。そのため、木口面30Kを構成する木質構成材40の熱可塑性樹脂R2が全層に亘って軟化し、接着力が低下する。この結果、一方の木質耐火被覆面材30の木口面30Kを構成する複数の木材42が、全層に亘って早期に脱落する可能性がある。
【0067】
この対策として、
図6に示される変形例では、一方の木質耐火被覆面材30の端部(木口面30K)を構成する木質構成材40にビス56が設けられている。ビス56は、木質構成材40の内面側から木質構成材40に捻じ込まれており、当該木質構成材40の最外層を構成する木材42に達している。
【0068】
また、ビス56は、例えば、隣り合う木質耐火被覆面材30の目地M内(他方の木質耐火被覆面材30の厚み内)で、かつ、一方の木質耐火被覆面材30の木口面30Kから、例えば、30mm以上内側に配置されている。このビス56によって、一方の木質耐火被覆面材30の端部(木口面30K)を構成する複数の木材42の脱落を抑制することができる。
【0069】
また、上記実施形態では、鉄骨部材が鉄骨柱10とされている。しかし、鉄骨部材は、鉄骨柱に限らず、鉄骨梁でも良い。この場合、木質耐火被覆面材によって、鉄骨梁が耐火被覆される。
【0070】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合せて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0071】
30 木質耐火被覆面材
30B 内面
40 木質構成材
42 木材
50 金属板
52 ビス
54 ビス
60 木質構成材
62 木材
64 木材
R1 熱硬化性樹脂
R2 熱可塑性樹脂