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特開2024-21887ターボ機械の回転羽根車の羽根、ターボ機械の回転羽根車、ターボ機械の回転羽根車の羽根の製造方法およびターボ機械の回転羽根車の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021887
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ターボ機械の回転羽根車の羽根、ターボ機械の回転羽根車、ターボ機械の回転羽根車の羽根の製造方法およびターボ機械の回転羽根車の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/22 20060101AFI20240208BHJP
   F03B 3/12 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F04D29/22 A
F03B3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125048
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】橋立 忠之
(72)【発明者】
【氏名】中村 高紀
(72)【発明者】
【氏名】中薗 昌彦
【テーマコード(参考)】
3H072
3H130
【Fターム(参考)】
3H072AA07
3H072BB01
3H072BB31
3H072CC42
3H130AA03
3H130AB05
3H130AB13
3H130AB32
3H130AB46
3H130AC03
3H130BA66C
3H130BA95C
3H130CB09
3H130CB11
3H130DA02Z
3H130DD01Z
3H130DD07Z
3H130EA01C
3H130EA07C
3H130EB02C
3H130ED02C
(57)【要約】
【課題】容易に作製することができるとともに水の流れが阻害されることを抑制できるターボ機械の回転羽根車の羽根を提供する。
【解決手段】実施の形態によるターボ機械の回転羽根車の羽根は、第1回転支持体と第2回転支持体との間に設けられる。羽根は、第1回転支持体に支持される第1羽根部分と、第2回転支持体に支持される第2羽根部分と、第1羽根部分と第2羽根部分との間に配置されたスペーサと、第1羽根部分、スペーサおよび第2羽根部分に嵌合された羽根嵌合部と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械の回転羽根車の第1回転支持体と第2回転支持体との間に設けられる羽根であって、
前記第1回転支持体に支持される、第1翼面を含む第1羽根部分と、
前記第2回転支持体に支持される、第2翼面を含む第2羽根部分と、
前記第1羽根部分と前記第2羽根部分との間に設けられた、スペーサ翼面を含むスペーサと、
前記第1羽根部分、前記スペーサおよび前記第2羽根部分に嵌合された羽根嵌合部と、を備えた、ターボ機械の回転羽根車の羽根。
【請求項2】
前記第1羽根部分は、第1ボルト孔を含み、
前記第2羽根部分は、第2ボルト孔を含み、
前記スペーサは、スペーサボルト孔を含み、
前記羽根嵌合部は、前記第1ボルト孔、前記スペーサボルト孔および前記第2ボルト孔に嵌合する羽根嵌合ボルトを含む、請求項1に記載のターボ機械の回転羽根車の羽根。
【請求項3】
ターボ機械の回転羽根車であって、
第1回転支持体と、
第2回転支持体と、
前記第1回転支持体と前記第2回転支持体との間に設けられ、請求項1または2に記載の複数の羽根と、を備えた、ターボ機械の回転羽根車。
【請求項4】
前記第1羽根部分は、前記第1回転支持体と共通部材として構成され、
前記第2羽根部分は、前記第2回転支持体と共通部材として構成されている、請求項3に記載のターボ機械の回転羽根車。
【請求項5】
前記羽根は、前記回転羽根車の回転軸線を中心にして、周方向に配置されている、請求項3に記載のターボ機械の回転羽根車。
【請求項6】
ターボ機械の回転羽根車の第1回転支持体と第2回転支持体との間に設けられる羽根の製造方法であって、
第1羽根母材に、スペーサ母材の第1スペーサ面を当接させて、前記第1羽根母材および前記スペーサ母材を締結する工程であって、前記第1羽根母材および前記スペーサ母材に第1加工用嵌合部を嵌合させる、工程と、
前記第1羽根母材および前記スペーサ母材を切削加工する工程であって、前記第1羽根母材から、第1翼面を含む第1羽根部分を形成するとともに、前記スペーサ母材から、第1スペーサ翼面を含むスペーサ中間部材を形成する工程と、
前記第1羽根部分と前記スペーサ中間部材を分離する工程と、
第2羽根母材に、前記スペーサ中間部材の前記第1スペーサ面とは反対側の第2スペーサ面を当接させて、前記第2羽根母材を前記スペーサ中間部材に締結する工程であって、前記第2羽根母材および前記スペーサ中間部材に第2加工用嵌合部を嵌合させる、工程と、
前記第2羽根母材および前記スペーサ中間部材を切削加工する工程であって、前記第2羽根母材から第2翼面を含む第2羽根部分を形成するとともに、前記スペーサ中間部材から第2スペーサ翼面を含むスペーサを形成する、工程と、
前記第2羽根部分と前記スペーサを分離する工程と、
前記第1羽根部分、前記スペーサおよび前記第2羽根部分を締結する工程であって、前記第1羽根部分、前記スペーサおよび前記第2羽根部分に羽根嵌合部を嵌合させて、前記第1羽根部分、前記スペーサおよび前記第2羽根部分により羽根を形成する、工程と、を備えた、ターボ機械の回転羽根車の羽根の製造方法。
【請求項7】
前記第1羽根母材は、第1ボルト孔を含み、
前記第2羽根母材は、第2ボルト孔を含み、
前記スペーサ母材は、スペーサボルト孔を含み、
前記第1加工用嵌合部は、前記第1ボルト孔および前記スペーサボルト孔に嵌合する第1加工用嵌合ボルトを含み、
前記第2加工用嵌合部は、前記第2ボルト孔および前記スペーサボルト孔に嵌合する第2加工用嵌合ボルトを含み、
前記羽根嵌合部は、前記第1ボルト孔、前記スペーサボルト孔および前記第2ボルト孔に嵌合する羽根嵌合ボルトを含む、請求項6に記載のターボ機械の回転羽根車の羽根の製造方法。
【請求項8】
前記第1羽根母材および前記スペーサ母材を切削加工する工程において、前記第1翼面および前記第1スペーサ翼面は、連続状に形成され、
前記第2羽根母材および前記スペーサ中間部材を切削加工する工程において、前記第2翼面および前記第2スペーサ翼面は、連続状に形成される、請求項6または7に記載のターボ機械の回転羽根車の羽根の製造方法。
【請求項9】
第1回転支持体と、第2回転支持体と、前記第1回転支持体と前記第2回転支持体との間に設けられる羽根と、を含むターボ機械の回転羽根車の製造方法であって、
第1羽根車母材に、スペーサ母材の第1スペーサ面を当接させて、前記第1羽根車母材および前記スペーサ母材を締結する工程であって、前記第1羽根車母材および前記スペーサ母材に第1加工用嵌合部を嵌合させる、工程と、
前記第1羽根車母材および前記スペーサ母材を切削加工する工程であって、前記第1羽根車母材から、前記第1回転支持体、および第1翼面を含む複数の第1羽根部分を形成するとともに、前記スペーサ母材から、第1スペーサ翼面を含む複数のスペーサ中間部材を形成する、工程と、
前記第1羽根部分と前記スペーサ中間部材を分離する工程と、
第2羽根車母材に、前記スペーサ中間部材の前記第1スペーサ面とは反対側の第2スペーサ面を当接させて、前記第2羽根車母材および前記スペーサ中間部材を締結する工程であって、前記第2羽根車母材および前記スペーサ中間部材に第2加工用嵌合部を嵌合させる、工程と、
前記第2羽根車母材および前記スペーサ中間部材を切削加工する工程であって、前記第2羽根車母材から、前記第2回転支持体、および第2翼面を含む複数の第2羽根部分を形成するとともに、前記スペーサ中間部材から、第2スペーサ翼面を含むスペーサを形成する、工程と、
前記第2羽根部分と前記スペーサとを分離する工程と、
前記第1羽根部分、前記スペーサおよび前記第2羽根部分を締結する工程であって、前記第1羽根部分、前記スペーサおよび前記第2羽根部分に羽根嵌合部を嵌合させて、前記第1羽根部分、前記スペーサおよび前記第2羽根部分により羽根を形成する、工程と、を備えた、ターボ機械の回転羽根車の製造方法。
【請求項10】
前記第1羽根車母材は、第1ボルト孔を含み、
前記第2羽根車母材は、第2ボルト孔を含み、
前記スペーサ母材は、スペーサボルト孔を含み、
前記第1加工用嵌合部は、前記第1ボルト孔および前記スペーサボルト孔に嵌合する第1加工用嵌合ボルトを含み、
前記第2加工用嵌合部は、前記第2ボルト孔および前記スペーサボルト孔に嵌合する第2加工用嵌合ボルトを含み、
前記羽根嵌合部は、前記第1ボルト孔、前記スペーサボルト孔および前記第2ボルト孔に嵌合する羽根嵌合ボルトを含む、請求項9に記載のターボ機械の回転羽根車の製造方法。
【請求項11】
前記第1羽根車母材および前記スペーサ母材を切削加工する工程において、前記第1翼面および前記第1スペーサ翼面は、連続状に形成され、
前記第2羽根車母材および前記スペーサ中間部材を切削加工する工程において、前記第2翼面および前記第2スペーサ翼面は、連続状に形成される、請求項9または10に記載のターボ機械の回転羽根車の製造方法。
【請求項12】
前記羽根は、前記回転羽根車の回転軸線を中心にして、周方向に配置されている、請求項9または10に記載のターボ機械の回転羽根車の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施の形態は、ターボ機械の回転羽根車の羽根、ターボ機械の回転羽根車、ターボ機械の回転羽根車の羽根の製造方法およびターボ機械の回転羽根車の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ機械の一例としてのフランシス水車は、水の圧力エネルギを回転エネルギに変換するランナを備えている。ランナは、周方向に配置された複数のランナ羽根を含んでおり、隣り合うランナ羽根の間に、水が流れる流路が形成されている。この流路に流入した水は、その圧力を解放することによって、水の圧力エネルギが回転エネルギに変換される。ランナ羽根の間の流路は、ランナの入口から出口に向かって徐々に狭くなっている。このことにより、流路内における急激な圧力の変化を防止し、入口では高い水の圧力が、出口に向かうにつれて緩やかに低下する。ランナ羽根は、クラウンとバンドとの間に配置され、クラウンおよびバンドに接続されている。
【0003】
このような構造を有するランナは、一般的には大型部品であるため、クラウン、バンド、ランナ羽根を個々に作製している。そして、各ランナを、クラウンおよびバンドに溶接することにより、ランナが作製される。
【0004】
一方、ランナが比較的小型である場合、ランナ羽根の間の空間は小さい。この場合、作業スペースを確保することが困難になり、ランナ羽根の溶接作業や、仕上げ作業が困難になり得る。このため、クラウンとランナ羽根を、1つの母材から切削加工によって作製する場合がある。この場合、別部品として作製されたバンドに、ランナ羽根がボルト締結され、ランナが作製され得る。あるいは、バンドとランナ羽根を1つの母材から切削加工によって作製される場合もある。この場合、別部品として作製されたクラウンに、ランナ羽根がボルト締結され、ランナが作製され得る。
【0005】
ランナ羽根は、3次元に複雑に湾曲した翼面形状を有している。このため、ランナ羽根の切削加工は、母材に対して切削工具の刃先の角度や深さを細やかに制御しながら行われる。例えば、3~5つの回転軸を有し、母材と切削工具との相対的な姿勢を制御可能な多軸工作機械が用いられる。通常、工具の長さ、径および可動範囲などを考慮してランナの設計が行われる。このことにより、切削不可能な狭小部または深遠部が存在することを防止することができる。一方で、ランナの設計が制約されるという問題もある。
【0006】
例えば、クラウンおよびバンドのいずれか一方とランナ羽根の全体を、1つの母材から切削加工によって作製する代わりに、ランナ羽根の一部分を、クラウンおよびバンドのいずれか一方と、1つの母材から切削加工によって作製することも考えられる。この場合、クラウンと一体化されたランナ羽根の一部分と、バンドと一体化されたランナ羽根の残りの部分とが接続される。ランナ羽根のクラウン側の部分の翼面と、ランナ羽根のバンド側の部分の翼面とは、別々に切削加工された後に、接続される。このため、加工誤差または組立誤差などにより、両翼面には、水の流れを阻害し得る程度の段差が形成される可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6726627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
実施の形態は、このような点を考慮してなされたものであり、容易に作製することができるとともに水の流れが阻害されることを抑制できるターボ機械の回転羽根車の羽根、ターボ機械の回転羽根車、ターボ機械の回転羽根車の羽根の製造方法およびターボ機械の回転羽根車の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施の形態によるターボ機械の回転羽根車の羽根は、第1回転支持体と第2回転支持体との間に設けられる羽根である。羽根は、第1回転支持体に支持される、第1翼面を含む第1羽根部分と、第2回転支持体に支持される、第2翼面を含む第2羽根部分と、第1羽根部分と第2羽根部分との間に設けられた、スペーサ翼面を含むスペーサと、第1羽根部分、スペーサおよび第2羽根部分に嵌合された羽根嵌合部と、を備えている。
【0010】
実施の形態によるターボ機械の回転羽根車は、第1回転支持体と、第2回転支持体と、第1回転支持体と第2回転支持体との間に設けられた上述のターボ機械の回転羽根車の複数の羽根と、を備えている。
【0011】
実施の形態によるターボ機械の回転羽根車の羽根の製造方法は、ターボ機械の回転羽根車の第1回転支持体と第2回転支持体との間に設けられる羽根の製造方法である。この製造方法は、第1羽根母材に、スペーサ母材の第1スペーサ面を当接させて、第1羽根母材およびスペーサ母材を締結する工程であって、第1羽根母材およびスペーサ母材に第1加工用嵌合部を嵌合させる、工程と、第1羽根母材およびスペーサ母材を切削加工する工程であって、第1羽根母材から、第1翼面を含む第1羽根部分を形成するとともに、スペーサ母材から、第1スペーサ翼面を含むスペーサ中間部材を形成する工程と、第1羽根部分とスペーサ中間部材を分離する工程と、第2羽根母材に、スペーサ中間部材の第1スペーサ面とは反対側の第2スペーサ面を当接させて、第2羽根母材をスペーサ中間部材に締結する工程であって、第2羽根母材およびスペーサ中間部材に第2加工用嵌合部を嵌合させる、工程と、第2羽根母材およびスペーサ中間部材を切削加工する工程であって、第2羽根母材から第2翼面を含む第2羽根部分を形成するとともに、スペーサ中間部材から第2スペーサ翼面を含むスペーサを形成する工程と、第2羽根部分とスペーサを分離する工程と、第1羽根部分、スペーサおよび第2羽根部分を締結する工程であって、第1羽根部分、スペーサおよび第2羽根部分に羽根嵌合部を嵌合させて、前記第1羽根部分、前記スペーサおよび前記第2羽根部分により羽根を形成する、工程と、を備えている。
【0012】
実施の形態によるターボ機械の回転羽根車の製造方法は、第1回転支持体と、第2回転支持体と、第1回転支持体と第2回転支持体との間に設けられる羽根と、を含む回転羽車の製造方法である。この製造方法は、第1羽根車母材に、スペーサ母材の第1スペーサ面を当接させて、第1羽根車母材およびスペーサ母材を締結する工程であって、第1羽根車母材およびスペーサ母材に第1加工用嵌合部を嵌合させる工程と、第1羽根車母材およびスペーサ母材を切削加工する工程であって、第1羽根車母材から、第1回転支持体、および第1翼面を含む複数の第1羽根部分を形成するとともに、スペーサ母材から、第1スペーサ翼面を含む複数のスペーサ中間部材を形成する、工程と、第1羽根部分とスペーサ中間部材を分離する工程と、第2羽根車母材に、スペーサ中間部材の第1スペーサ面とは反対側の第2スペーサ面を当接させて、第2羽根車母材およびスペーサ中間部材を締結する工程であって、第2羽根車母材およびスペーサ中間部材に第2加工用嵌合部を嵌合させる工程と、第2羽根車母材およびスペーサ中間部材を切削加工する工程であって、第2羽根車母材から、第2回転支持体、および第2翼面を含む複数の第2羽根部分を形成するとともに、スペーサ中間部材から、第2スペーサ翼面を含むスペーサを形成する、工程と、第2羽根部分とスペーサとを分離する工程と、第1羽根部分、スペーサおよび第2羽根部分を締結する工程であって、第1羽根部分、スペーサおよび第2羽根部分に羽根嵌合部を嵌合させて、前記第1羽根部分、前記スペーサおよび前記第2羽根部分により羽根を形成する、工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
実施の形態によれば、容易に作製することができるとともに水の流れが阻害されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1の実施の形態によるフランシス水車の全体構成を示す縦断面図である。
図2図2は、図1に示すランナ羽根を示す斜視図である。
図3図3は、図2に示すランナ羽根を示す分解斜視図である。
図4図4は、図2に示すランナ羽根を示す断面図である。
図5図5は、図2に示すランナ羽根の製造方法において、第1締結工程を説明するための斜視図である。
図6図6は、図5とは異なる方向から見た、第1締結工程を説明するための斜視図である。
図7図7は、図2に示すランナ羽根の製造方法において、第1翼面形成工程を説明するための斜視図である。
図8図8は、図2に示すランナ羽根の製造方法において、第2締結工程を説明するための斜視図である。
図9図9は、図2に示すランナ羽根の製造方法において、第2翼面形成工程を説明するための斜視図である。
図10図10は、第2の実施の形態によるランナを示す断面図である。
図11図11は、図10に示すランナの製造方法において、ボルト孔形成工程を説明するための斜視図である。
図12図12は、図10に示すランナの製造方法において、第1締結工程を説明するための分解斜視図である。
図13図13は、図10に示すランナの製造方法において、第2締結工程を説明するための分解斜視図である。
図14図14は、図10に示すランナの製造方法において、組立工程を説明するための分解斜視図である。
図15図15は、図10に示すランナの製造方法において、組立完了後のランナを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態におけるターボ機械の回転羽根車の羽根、ターボ機械の回転羽根車、ターボ機械の回転羽根車の羽根の製造方法およびターボ機械の回転羽根車の製造方法について説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1図9を用いて、第1の実施の形態によるターボ機械の回転羽根車の羽根、ターボ機械の回転羽根車、ターボ機械の回転羽根車の羽根の製造方法およびターボ機械の回転羽根車の製造方法について説明する。
【0017】
まず、図1を用いて、本実施の形態によるフランシス水車およびランナについて説明する。本実施の形態では、ターボ機械の一例としての水力機械の一例としてのフランシス水車について説明する。
【0018】
図1に示すように、フランシス水車1は、水車運転時に上池から水圧鉄管(いずれも図示せず)を通って水が流入する渦巻き状のケーシング2と、複数のステーベーン3と、複数のガイドベーン4と、ランナ5と、を備えている。このうちステーベーン3は、ケーシング2からランナ5に流入する水流を整流するための部材である。ステーベーン3は、周方向に所定の間隔をあけて配列され、周方向に隣り合うステーベーン3同士の間には、水が流れる流路が形成されている。ガイドベーン4は、周方向に所定の間隔あけて配列され、周方向に隣り合うガイドベーン4同士の間には、水が流れる流路が形成されている。また、各ガイドベーン4は回動可能に構成されており、ランナ5に流入する水の流量が調整可能になっている。このようにして、後述する発電機7の発電量が調整可能になっている。
【0019】
ランナ5は、ケーシング2に対して回転軸線Cを中心に回転可能に構成されている。水車運転時には、ケーシング2から流入する水流によってランナ5は回転駆動される。すなわち、ランナ5は、ランナ5に流入する水の圧力エネルギを回転エネルギへと変換するための部材である。
【0020】
ランナ5には、主軸6を介して発電機7が連結されている。この発電機7は、水車運転時には、ランナ5の回転エネルギが伝達されて発電を行うように構成されている。
【0021】
ランナ5の水車運転時の下流側には、吸出し管8が設けられている。この吸出し管8は、図示しない下池または放水路に連結されており、ランナ5を回転駆動させた水が、圧力を回復して、図示しない下池または放水路に放出されるようになっている。
【0022】
なお、フランシス水車1は、ポンプ水車としてポンプ運転(揚水運転)することが可能であってもよい。この場合、発電機7は、電動機としての機能をも有し、電力が供給されることによりランナ5を回転駆動するように構成される。このことにより、吸出し管8を介して下池の水を吸い上げて上池に放出させることができ、ポンプ運転することが可能になる。この際、ガイドベーン4の開度は、ポンプ揚程に応じて適切な揚水量になるように変えられる。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態によるランナ5は、回転羽根車の一例であり、クラウン10と、バンド11と、複数のランナ羽根20と、を含んでいる。クラウン10は、第2回転支持体の一例であり、上述した主軸6に連結されている。バンド11は、第1回転支持体の一例であり、クラウン10よりも下方に配置されている。ランナ羽根20は、クラウン10とバンド11との間に設けられ、回転軸線Cを中心にして、周方向に配置されている。ランナ羽根20は、クラウン10に支持されるとともにバンド11に支持されている。周方向に隣り合う2つのランナ羽根20の間に、水の流路が形成されている。本実施の形態によるランナ羽根20は、クラウン10およびバンド11に、ボルト締結されていてもよい。
【0024】
本実施の形態によるランナ羽根20について図2図4を用いて説明する。
【0025】
図1図4に示すように、ランナ羽根20は、第1羽根部分30と、第2羽根部分40と、スペーサ50と、羽根嵌合部60と、を含んでいる。
【0026】
図2図4に示すように、第1羽根部分30は、ランナ羽根20のうちのバンド11に当接する部分であり、バンド11に接続されている。第1羽根部分30は、バンド11に当接するバンド当接面31と、スペーサ50に当接する第1スペーサ当接面32と、第1ボルト孔33と、ザグリ孔34と、を含んでいる。第1ボルト孔33は、第1スペーサ当接面32からバンド当接面31に向かって延びている。ザグリ孔34は、バンド当接面31に形成されており、第1ボルト孔33に連通している。
【0027】
第1羽根部分30は、第1翼面35を含んでいる。第1翼面35は、第1羽根部分30の外面に相当している。
【0028】
第2羽根部分40は、ランナ羽根20のうちのクラウン10に当接する部分であり、クラウン10に接続されている。第2羽根部分40は、クラウン10に当接するクラウン当接面41と、スペーサ50に当接する第2スペーサ当接面42と、第2ボルト孔43と、ネジ孔44と、を含んでいる。第2ボルト孔43は、第2スペーサ当接面42からクラウン当接面41に向かって延びている。ネジ孔44は、第2ボルト孔43からクラウン当接面41に向かって延びている。ネジ孔44は、クラウン当接面41まで延びていなくてもよく、またはクラウン当接面41まで延びていてもよい。
【0029】
第2羽根部分40は、第2翼面45を含んでいる。第2翼面45は、第2羽根部分40の外面に相当している。
【0030】
スペーサ50は、第1羽根部分30と第2羽根部分40との間に配置されている。スペーサ50は、第1羽根部分30に当接する第1スペーサ面51と、第2羽根部分40に当接する第2スペーサ面52と、スペーサボルト孔53と、を含んでいる。第2スペーサ面52は、第1スペーサ面51とは反対側に位置している。スペーサボルト孔53は、第1スペーサ面51から第2スペーサ面52に延びている。
【0031】
スペーサ50は、スペーサ翼面54を含んでいる。スペーサ翼面54は、スペーサ50の外面に相当している。
【0032】
ランナ羽根20の翼面は、上述した第1翼面35と、第2翼面45と、スペーサ翼面54と、により構成されている。
【0033】
羽根嵌合部60は、第1羽根部分30、スペーサ50および第2羽根部分40に嵌合されている。より具体的には、図3および図4に示すように、羽根嵌合部60は、羽根嵌合ボルト61を含んでいる。羽根嵌合ボルト61は、第1ボルト孔33、スペーサボルト孔53および第2ボルト孔43に挿入されて嵌合している。羽根嵌合ボルト61は、嵌合胴体部62と、頭部63と、ネジ部64と、を含んでいる。嵌合胴体部62は、第1ボルト孔33、スペーサボルト孔53および第2ボルト孔43に挿入されて嵌合している。嵌合胴体部62は、頭部63からネジ部64に延びるように形成されている。頭部63は、第1羽根部分30のザグリ孔34に挿入されている。ネジ部64は、第2羽根部分40のネジ孔44に螺合している。羽根嵌合ボルト61を締め付けることにより、第1羽根部分30、スペーサ50および第2羽根部分40が固定される。羽根嵌合ボルト61は、例えば、リーマボルトであってもよい。
【0034】
嵌合とは、胴体部と孔との隙間が比較的小さく、締結される複数の部材の位置ずれを小さくできる状態を意味する。例えば、嵌合が、JIS B 0401に規定される中間嵌めであってもよい。JIS B 0401-1に規定される嵌め合い交差域は、例えば、胴体部についてクラスg6であり、孔についてクラスH7の組み合わせであってもよい。胴体部の外径が6mmである場合、交差は、-0.012mmから-0.0004mmとなり、最小外径は、5.988mmとなる。一方、孔の内径が6mmである場合、交差は、0mmから+0.012mmとなり、最大内径は、6.012mmとなる。従って、胴体部と孔との最大隙間は、胴体部に対して一方の側で、半径方向に0.012mmとなる。このような嵌め合い交差を用いた場合、第1羽根部分30とスペーサ50との間の位置ずれは0.012mm以内に制限され、スペーサ50と第2羽根部分40との間の位置ずれは0.012mm以内に制限される。このようにして、羽根嵌合ボルト61の嵌合胴体部62がボルト孔33、43、53に嵌合することにより、第1羽根部分30、スペーサ50および第2羽根部分40の位置ずれを小さくできる。
【0035】
図2図4においては、便宜上、バンド当接面31、第1スペーサ当接面32、第1スペーサ面51、第2スペーサ面52、第2スペーサ当接面42およびクラウン当接面41が平坦な面であって、平行に形成されている例が示されている。しかしながら、これらの面31、32、41、42、51、52は、クラウン10およびバンド11の形状に応じて形成されていればよく、平坦な面であることに限られることはない。各面31、32、41、42、51、52は、水の流れの主流方向(図1の矢印参照)に沿うように形成されていてもよい。あるいは、各面31、32、41、42、51、52は、ランナ羽根20のクラウン10の側の端部からバンド11の側の端部に向かう方向に交差する方向に延びていてもよい。あるいは、各面31、32、41、42、51、52は、湾曲した面であってもよい。例えば、各面31、32、41、42、51、52は、クラウン10の内面およびバンド11の内面と同様に湾曲した面であってもよい。
【0036】
本実施の形態によるランナ羽根20は、2つの羽根嵌合部60を含んでいる。しかしながら、羽根嵌合部60の個数は、3つ以上でもよく、任意である。
【0037】
次に、このような構成からなる本実施の形態によるランナ羽根20の製造方法およびランナ5の製造方法について説明する。
【0038】
まず、準備工程として、第1羽根母材36、第2羽根母材46およびスペーサ母材55を準備する。
【0039】
図5および図6に示すように、第1羽根母材36は、第1羽根部分30を形成するための母材であり、第1羽根部分30に対して切削代が確保された寸法を有している。第1羽根母材36は、上述したバンド当接面31と、第1スペーサ当接面32と、第1ボルト孔33と、ザグリ孔34と、を含んでいる。言い換えると、第1羽根母材36には、予め、バンド当接面31、第1スペーサ当接面32、第1ボルト孔33およびザグリ孔34が形成されている。図5および図6に示すように、第1羽根母材36は、直方体状に形成されていてもよい。
【0040】
図8に示すように、第2羽根母材46は、第2羽根部分40を形成するための母材であり、第2羽根部分40に対して切削代が確保された寸法を有している。第2羽根母材46は、上述したクラウン当接面41と、第2スペーサ当接面42と、第2ボルト孔43と、ネジ孔44と、を含んでいる。言い換えると、第2羽根母材46には、予め、クラウン当接面41、第2スペーサ当接面42、第2ボルト孔43およびネジ孔44が形成されている。後述する図8に示すように、第2羽根母材46は、直方体状に形成されていてもよい。
【0041】
図5および図6に示すように、スペーサ母材55は、スペーサ50を形成するための母材であり、スペーサ50に対して切削代が確保された寸法を有している。スペーサ母材55は、上述した第1スペーサ面51と、第2スペーサ面52と、スペーサボルト孔53と、を含んでいる。言い換えると、スペーサ母材55には、予め、第1スペーサ面51、第2スペーサ面52およびスペーサボルト孔53が形成されている。図5および図6に示すように、スペーサ母材55は、直方体状または矩形板状に形成されていてもよい。
【0042】
準備工程の後、第1締結工程として、第1羽根母材36およびスペーサ母材55が締結される。この場合、図5および図6に示すように、第1羽根母材36の第1スペーサ当接面32に、スペーサ母材55の第1スペーサ面51が当接するとともに、第1羽根母材36およびスペーサ母材55に、第1加工用嵌合部70を嵌合させる。より具体的には、第1加工用嵌合部70は、第1加工用嵌合ボルト71と、ナット75と、を含んでいる。第1加工用嵌合ボルト71は、第1嵌合胴体部72と、頭部73と、ネジ部74と、を含んでいる。第1嵌合胴体部72は、頭部73からネジ部74に延びるように形成されている。第1羽根母材36のザグリ孔34から第1加工用嵌合ボルト71のネジ部74を第1ボルト孔33およびスペーサボルト孔53に挿入し、頭部73をザグリ孔34に挿入させる。ネジ部74の一部は、第2スペーサ面52から突出し、第2スペーサ面52に当接したナット75に螺合させる。第1加工用嵌合ボルト71およびナット75を締め付けることにより、第1羽根母材36およびスペーサ母材55が締結される。第1加工用嵌合ボルト71の第1嵌合胴体部72は、第1ボルト孔33およびスペーサボルト孔53に嵌合する。第1加工用嵌合ボルト71は、例えば、羽根嵌合ボルト61よりも短いリーマボルトであってもよい。
【0043】
第1締結工程の後、第1翼面形成工程として、第1羽根母材36およびスペーサ母材55が切削加工される。このことにより、図7に示すように、第1羽根母材36から、第1翼面35を含む第1羽根部分30が形成され、スペーサ母材55から、第1スペーサ翼面54aを含むスペーサ中間部材56が形成される。第1翼面35および第1スペーサ翼面54aは、連続状に形成され、第1翼面35と第1スペーサ翼面54aとの間に段差が形成されることを抑制できる。第1スペーサ翼面54aは、上述したスペーサ翼面54の一部を構成している。
【0044】
より具体的には、第1羽根母材36のバンド当接面31から第1スペーサ当接面32にわたって第1翼面35が形成される。このことにより、第1羽根母材36から、図2等に示す第1羽根部分30が得られる。
【0045】
スペーサ母材55の第1スペーサ面51から途中位置57まで、第1スペーサ翼面54aが形成される。このことにより、スペーサ母材55からスペーサ中間部材56が得られる。途中位置57は、第1スペーサ面51と第2スペーサ面52との間の位置である。途中位置57から第2スペーサ面52までの範囲には、加工余肉部58が残される。加工余肉部58は、図7に示すように、スペーサ母材55の表面が加工されずに残った部分であってもよい。あるいは、加工余肉部58は、後述する第2翼面45を形成するための加工代が確保される程度に加工された部分であってもよい。
【0046】
第1翼面形成工程の後、第1分離工程として、第1羽根部分30とスペーサ中間部材56とが分離される。この場合、まず、第1加工用嵌合ボルト71とナット75が取り外され、第1加工用嵌合ボルト71が、第1ボルト孔33およびスペーサボルト孔53から抜き出される。その後、第1羽根部分30とスペーサ中間部材56が分離される。
【0047】
第1分離工程の後、第2締結工程として、第2羽根母材46およびスペーサ中間部材56が締結される。この場合、図8に示すように、第2羽根母材46の第2スペーサ当接面42に、スペーサ中間部材56の第2スペーサ面52が当接するとともに、第2羽根母材46およびスペーサ中間部材56に、第2加工用嵌合部80を嵌合させる。より具体的には、第2加工用嵌合部80は、第2加工用嵌合ボルト81を含んでいる。第2加工用嵌合ボルト81は、第2嵌合胴体部82と、頭部83と、ネジ部84と、を含んでいる。第2嵌合胴体部82は、頭部83からネジ部74に延びるように形成されている。第1スペーサ面51から第2加工用嵌合ボルト81のネジ部84をスペーサボルト孔53および第2ボルト孔43に挿入し、頭部83は、第1スペーサ面51に当接させる。ネジ部84は、第2羽根母材46のネジ孔44に螺合させる。第2加工用嵌合ボルト81を締め付けることにより、第2羽根母材46およびスペーサ中間部材56が締結される。第2加工用嵌合ボルト81の第2嵌合胴体部82は、第2ボルト孔43およびスペーサボルト孔53に嵌合する。第2加工用嵌合ボルト81は、例えば、羽根嵌合ボルト61よりも短いリーマボルトであってもよい。
【0048】
第2締結工程の後、第2翼面形成工程として、第2羽根母材46およびスペーサ中間部材56が切削加工される。図9に示すように、第2羽根母材46から、第2翼面45を含む第2羽根部分40が形成され、スペーサ中間部材56から、第2スペーサ翼面54bを含むスペーサ50が形成される。第2翼面45および第2スペーサ翼面54bは連続状に形成され、第2翼面45と第2スペーサ翼面54bとの間に段差が形成されることを抑制できる。第2スペーサ翼面54bは、上述したスペーサ翼面54の一部を構成している。
【0049】
より具体的には、第2羽根母材46のクラウン当接面41から第2スペーサ当接面42にわたって第2翼面45が形成される。このことにより、第2羽根母材46から、図2等に示した第2羽根部分40が得られる。
【0050】
スペーサ中間部材56の第2スペーサ当接面42から途中位置57まで、第2スペーサ翼面54bが形成される。加工余肉部58は、除去される。このことにより、スペーサ中間部材56からスペーサ50が得られる。切削加工時、第1スペーサ翼面54aを基準にして第2スペーサ翼面54bおよび第2翼面45を形成してもよい。このことにより、第1スペーサ翼面54aと第2スペーサ翼面54bとの間の段差を無くすことができる、または小さくすることができる。
【0051】
第2翼面形成工程において、第2スペーサ翼面54bが形成されると、図9に示すように、第1スペーサ翼面54aと第2スペーサ翼面54bとで構成されるスペーサ翼面54が得られる。第1スペーサ翼面54aは、第1スペーサ面51の側に位置し、第2スペーサ翼面54bは、第2スペーサ翼面54bの側に位置している。
【0052】
第2翼面形成工程の後、第2分離工程として、第2羽根部分40とスペーサ50とが分離される。この場合、まず、第2加工用嵌合ボルト81がネジ部84から取り外され、第2ボルト孔43およびスペーサボルト孔53から抜き出される。その後、第2羽根部分40とスペーサ50が分離される。
【0053】
第2分離工程の後、組立工程として、第1羽根部分30、スペーサ50および第2羽根部分40が締結される。この場合、図2および図3に示すように、第1羽根部分30の第1スペーサ当接面32に、スペーサ50の第1スペーサ面51が当接するとともに、第2羽根部分40の第2スペーサ当接面42に、スペーサ50の第2スペーサ面52が当接する。第1羽根部分30、スペーサ50および第2羽根部分40に、羽根嵌合部60を嵌合させる。より具体的には、図3に示すように、第1羽根部分30のザグリ孔34から羽根嵌合ボルト61のネジ部64を第1ボルト孔33、スペーサボルト孔53および第2ボルト孔43に挿入し、頭部63をザグリ孔34に挿入させる。ネジ部64は、第2羽根部分40のネジ孔44に螺合させる。羽根嵌合ボルト61を締め付けることにより、図2に示すように、第1羽根部分30、スペーサ50および第2羽根部分40が締結される。羽根嵌合ボルト61の嵌合胴体部62が、第1ボルト孔33、スペーサボルト孔53および第2ボルト孔43に嵌合する。
【0054】
このようにして、図2に示す本実施の形態によるランナ羽根20が得られる。羽根嵌合部60が、第1羽根部分30、スペーサ50および第2羽根部分40に嵌合することにより、第1羽根部分30とスペーサ50との間の位置ずれを抑制でき、第1翼面35とスペーサ翼面54(または第1スペーサ翼面54a)との間の段差を無くすことができる、または小さくすることができる。同様に、スペーサ50と第2羽根部分40との間の位置ずれを抑制でき、第2翼面45とスペーサ翼面54(または第2スペーサ翼面54b)との間の段差を無くすことができる、または小さくすることができる。このため、ランナ羽根20として全体的に滑らかな翼面を得ることができる。
【0055】
このようにして得られた複数のランナ羽根20が、クラウン10およびバンド11に、図示しないボルト等を用いて取り付けられる。このことにより、図1に示すランナ5が得られる。
【0056】
このように本実施の形態によれば、バンド11に支持される第1羽根部分30、スペーサ50およびクラウン10に支持される第2羽根部分40に、羽根嵌合部60が嵌合している。このことにより、第1羽根部分30およびスペーサ50を締結して切削加工を行うことができ、第1翼面35および第1スペーサ翼面54a(スペーサ翼面54の一部)を形成することができる。この場合、第1翼面35および第1スペーサ翼面54aを形成するための切削加工を行う際に、スペースを確保することができる。また、スペーサ50を第1羽根部分30から分離し、第2羽根部分40に締結して切削加工を行うことができ、第2スペーサ翼面54b(スペーサ翼面54の他の一部)および第2翼面45を形成することができる。この場合、第2スペーサ翼面54bおよび第2翼面45を形成するための切削加工を行う際に、スペースを確保することができる。このため、ランナ5が比較的小型である場合であっても、切削加工のためのスペースを確保することができ、ランナ羽根20の翼面を容易に作製することができる。
【0057】
また、本実施の形態によれば、第1羽根部分30、スペーサ50および第2羽根部分40に羽根嵌合部60が嵌合している。このことにより、第1翼面35および第1スペーサ翼面54aを形成した後に、第1羽根部分30およびスペーサ50を分離して再び締結した場合においても、第1羽根部分30とスペーサ50との間の位置ずれを抑制できる。このため、第1翼面35とスペーサ翼面54(または第1スペーサ翼面54a)との間の段差を無くすことができる、または小さくすることができる。同様に、第2翼面45および第2スペーサ翼面54bを形成した後に、第2羽根部分40およびスペーサ50を分離して再び締結した場合においても、第2翼面45とスペーサ翼面54(または第2スペーサ翼面54b)との間の段差を無くすことができる、または小さくすることができる。このため、ランナ羽根20の近傍における水の流れが乱れることを抑制でき、水の流れが阻害されることを抑制できる。
【0058】
また、本実施の形態によれば、羽根嵌合部60は、第1羽根部分30の第1ボルト孔33、スペーサ50のスペーサボルト孔53および第2羽根部分40の第2ボルト孔43に嵌合する羽根嵌合ボルト61を含んでいる。このことにより、第1羽根部分30、スペーサ50及び第2羽根部分40が位置ずれすることを抑制するための構成を簡素化できる。
【0059】
また、本実施の形態によれば、第1翼面形成工程において、第1翼面35および第1スペーサ翼面54aは、連続状に形成される。このことにより、第1翼面形成工程の後の組立工程において、第1翼面35と第1スペーサ翼面54aとの間の段差を無くすことができる、または小さくすることができる。同様に、第2翼面形成工程において、第2翼面45および第2スペーサ翼面54bは、連続状に形成される。このことにより、第2翼面形成工程の後の組立工程において、第2翼面45と第2スペーサ翼面54bとの間の段差を無くすことができる、または小さくすることができる。このため、ランナ羽根20の近傍における水の流れが乱れることを抑制できる。
【0060】
なお、上述した本実施の形態においては、第1羽根部分30がザグリ孔34を含み、羽根嵌合ボルト61が、バンド当接面31から第1ボルト孔33等に挿入される例について説明した。しかしながら、本実施の形態は、このことに限られることはない。例えば、第2羽根部分40がザグリ孔を含んでいてもよい。この場合、ザグリ孔は、クラウン当接面41に形成され、ネジ孔は、第1ボルト孔33からバンド当接面31に向かって延びていてもよい。あるいは、ザグリ孔は、バンド11に設けられていてもよい。この場合、羽根嵌合ボルト61の頭部63は、第1羽根部分30の内部に位置するのではなく、バンド当接面31に当接し、バンド11の内部に形成されたザグリ孔に挿入されてもよい。他の例としては、ザグリ孔は、クラウン10に設けられていてもよい。この場合、羽根嵌合ボルト61の頭部63は、第2羽根部分40のクラウン当接面41に当接し、クラウン10の内部に形成されたザグリ孔に挿入されてもよい。
【0061】
また、上述した本実施の形態においては、嵌合ボルト61が、嵌合胴体部62と、頭部63と、ネジ部64と、を含んでいる例について説明した。しかしながら、嵌合ボルト61の構成は、このことに限られることはない。例えば、嵌合ボルト61は、頭部63が、孔に嵌合するようになっていてもよい。この場合、嵌合胴体部62は、第1ボルト孔33等に嵌合しなくてもよい。例えば、嵌合ボルト61が、皿ボルト(または皿ネジ)であってもよい。皿ボルトの頭部は、傾斜面を有するように皿状に形成され、ザグリ孔34は、皿孔として形成されていてもよい。
【0062】
また、上述した本実施の形態においては、羽根嵌合部60が、羽根嵌合ボルト61を含んでいる例について説明した。しかしながら、羽根嵌合部60の構成は、第1羽根部分30、スペーサ50および第2羽根部分40に嵌合することができれば、任意である。
【0063】
例えば、羽根嵌合部60が、図示しない嵌合ピンを含んでいてもよい。嵌合ピンが、第1羽根部分30、スペーサ50および第2羽根部分40に嵌合するようにしてもよい。この場合、図示しないボルトを用いて、第1羽根部分30、スペーサ50および第2羽根部分40が締結されていてもよい。このボルトは、第1羽根部分30、スペーサ50および第2羽根部分40に嵌合していなくてもよい。すなわち、ボルトの胴体部と、第1ボルト孔33、スペーサボルト孔53および第2ボルト孔43との隙間は、上述した羽根嵌合ボルト61の嵌合胴体部62と、各孔33、53、43との隙間よりも大きくてもよい。
【0064】
また、例えば、羽根嵌合部60が、図示しない凸部と凹部で構成されていてもよい。例えば、第1羽根部分30の第1スペーサ当接面32に、凸部が形成され、第2羽根部分40の第2スペーサ当接面42に、凹部が形成されていてもよい。スペーサ50に、凸部に嵌合する孔(図示せず)が形成されていてもよい。凸部は、スペーサ50の孔を貫通して第2スペーサ面52から突出し、第2羽根部分40の凹部に挿入されて嵌合していてもよい。凸部は、第2羽根部分40の第2スペーサ当接面42に形成され、凹部は、第1羽根部分30の第1スペーサ当接面32に形成されていてもよい。あるいは、スペーサ50の第1スペーサ面51および第2スペーサ面52のそれぞれに凸部が形成され、第1スペーサ当接面32および第2スペーサ当接面42のそれぞれに凹部が形成されていてもよい。凸部と凹部の組み合わせや構成は任意である。凸部および凹部の平面形状は、円形、楕円形、矩形、三角形または六角形などであってもよく、任意である。円形以外の形状を用いた場合には、凸部と凹部の組み合わせは1組でもよい。このような凸部と凹部を用いる場合においても、上述したような、図示しないボルトを用いて、第1羽根部分30、スペーサ50および第2羽根部分40が締結されていてもよい。
【0065】
(第2の実施の形態)
次に、図10図15を用いて、第2の実施の形態によるターボ機械の回転羽根車の羽根、ターボ機械の回転羽根車、ターボ機械の回転羽根車の羽根の製造方法およびターボ機械の回転羽根車の製造方法について説明する。
【0066】
図10図15に示す第2の実施の形態においては、ランナ羽根の第1羽根部分がバンドと共通部材として構成され、第2羽根部分がクラウンと共通部材として構成されている点が主に異なり、他の構成は、図1図9に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図10図15において、図1図9に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0067】
図10に示すように、本実施の形態によるランナ羽根20の第1羽根部分30は、バンド11と連続する共通部材として構成されている。すなわち、バンド11に、複数の第1羽根部分30が一体化されている。第1羽根部分30が一体化されたバンド11を、ランナ下半部材16と称して、以下説明する。言い換えると、ランナ下半部材16は、バンド11と、複数の第1羽根部分30と、を含んでいる。
【0068】
本実施の形態による第1羽根部分30の第1スペーサ当接面32は、湾曲した面として形成されている。第1スペーサ当接面32は、例えば、回転軸線Cを中心とした円弧に沿うように形成されていてもよい。第1羽根部分30の第1ボルト孔33は、第1スペーサ当接面32からバンド11の内部に延びている。ザグリ孔34は、バンド11の外面に形成されており、第1ボルト孔33に連通している。第1羽根部分30には、ザグリ孔は形成されていない。
【0069】
第1羽根部分30の根元部に、フィレット38が形成されている。第1羽根部分30の根元部は、バンド11に接続された端部に相当する。
【0070】
第2羽根部分40は、クラウン10と連続する共通部材として構成されている。すなわち、クラウン10に、複数の第2羽根部分40が一体化されている。第2羽根部分40が一体化されたクラウン10を、ランナ上半部材15と称して、以下説明する。言い換えると、ランナ上半部材15は、クラウン10と、複数の第2羽根部分40と、を含んでいる。
【0071】
本実施の形態による第2羽根部分40の第2スペーサ当接面42は、湾曲した面として形成されている。第2スペーサ当接面42は、例えば、回転軸線Cを中心とした円弧に沿うように形成されていてもよい。第2羽根部分40のネジ孔44は、図10に示すように、第2羽根部分40の内部に位置していてもよい。
【0072】
第2羽根部分40の根元部に、フィレット48が形成されている。第2羽根部分40の根元部は、クラウン10に接続された端部に相当する。
【0073】
スペーサ50の第1スペーサ面51および第2スペーサ面52は、湾曲した面として形成されている。第1スペーサ面51および第2スペーサ面52は、例えば、回転軸線Cを中心とした円弧に沿うように形成されていてもよい。
【0074】
次に、このような構成からなる本実施の形態によるランナ5の製造方法について説明する。
【0075】
まず、準備工程として、ランナ下半母材37、ランナ上半母材47およびスペーサ母材55を準備する。ランナ下半母材37は、第1羽根車母材の一例であり、ランナ上半母材47は、第2羽根車母材の一例である。
【0076】
図11に示すように、ランナ下半母材37は、上述したランナ下半部材16を形成するための母材である。ランナ下半母材37は、第1スペーサ当接面32を含んでいる。言い換えると、ランナ下半母材37には、複数の第1スペーサ当接面32が予め形成されている。ランナ下半母材37には、バンド11の外面が予め形成されていてもよいが、バンド11の外面を形成するタイミングは任意である。例えば、第1翼面35、第2翼面45およびスペーサ翼面54が形成された後に、バンド11の外面が形成されてもよい。ランナ下半母材37は、概略円板リング状に形成され、中央部が、下方に突出するように形成されていてもよい。このようなランナ下半母材37は、例えば、旋盤加工で作製されていてもよい。
【0077】
図11に示すように、ランナ上半母材47は、上述したランナ上半部材15を形成するための母材である。ランナ上半母材47は、スペーサ母材55に当接する第2スペーサ当接面42を含んでいる。言い換えると、ランナ上半母材47には、複数の第2スペーサ当接面42が予め形成されている。ランナ上半母材47には、クラウン10の外面が予め形成されていてもよいが、クラウン10の外面を形成するタイミングは任意である。例えば、第1翼面35、第2翼面45およびスペーサ翼面54が形成された後に、クラウン10の外面が形成されてもよい。ランナ上半母材47は、概略円板状に形成され、中央に、バンドに向かって突出するランナコーンが形成されていてもよい。このようなランナ上半母材47は、例えば、旋盤加工で作製されていてもよい。
【0078】
スペーサ母材55は、スペーサ50を形成するための母材である。スペーサ母材55は、第1スペーサ面51と第2スペーサ面52とを含んでいる。言い換えると、スペーサ母材55には、複数の第1スペーサ面51および複数の第2スペーサ面52が予め形成されている。このようなスペーサ母材55は、例えば、旋盤加工で作製されていてもよい。
【0079】
準備工程の後、ボルト孔形成工程として、ランナ下半母材37、スペーサ母材55およびランナ上半母材47に、孔が形成される。この場合、まず、図11に示すように、ランナ下半母材37の第1スペーサ当接面32に、スペーサ母材55の第1スペーサ面51が当接するとともに、スペーサ母材55の第2スペーサ面52に、ランナ上半母材47の第2スペーサ当接面42が当接する。続いて、バンド11の外面から工具を送り込むことにより、各孔が形成されてもよい。より具体的には、各ボルト孔33、53、43の下孔が形成され、ランナ上半母材47にネジ孔44が形成される。続いて、下孔の径を拡大するように、第1ボルト孔33、スペーサボルト孔53および第2ボルト孔43が形成される。その後、バンド11の外面にザグリ孔34が形成される。
【0080】
ボルト孔形成工程の後、第1締結工程として、ランナ下半母材37およびスペーサ母材55が締結される。この場合、図12に示すように、ランナ下半母材37の第1スペーサ当接面32に、スペーサ母材55の第1スペーサ面51が当接するとともに、ランナ下半母材37およびスペーサ母材55に、第1加工用嵌合部70を嵌合させる。ザグリ孔34から第1加工用嵌合ボルト71のネジ部74を第1ボルト孔33およびスペーサボルト孔53に挿入し、頭部73をザグリ孔34に挿入させる。ネジ部74の一部は、第2スペーサ面52から突出し、第2スペーサ面52に当接したナット75(図6参照)に螺合させる。第1加工用嵌合ボルト71およびナット75を締め付けることにより、ランナ下半母材37およびスペーサ母材55が締結される。第1加工用嵌合ボルト71の第1嵌合胴体部72は、第1ボルト孔33およびスペーサボルト孔53に嵌合する。
【0081】
第1締結工程の後、第1翼面形成工程として、ランナ下半母材37およびスペーサ母材55が切削加工される。この場合、ランナ下半母材37から、第1翼面35を含む複数の第1羽根部分30が形成され、スペーサ母材55から、第1スペーサ翼面54aを含む複数のスペーサ中間部材56が形成される。第1翼面35および第1スペーサ翼面54aは、連続状に形成され、第1翼面35と第1スペーサ翼面54aとの間に段差が形成されることを抑制できる。
【0082】
より具体的には、ランナ下半母材37に、第1翼面35を含む複数の第1羽根部分30が形成されることにより、ランナ下半母材37から、図10に示すランナ下半部材16が得られる。ランナ下半部材16は、共通部材として構成されたバンド11および複数の第1羽根部分30を含んでいる。この際、第1羽根部分30の根元部に、フィレット38が形成される。
【0083】
スペーサ母材55の第1スペーサ面51から途中位置57まで第1スペーサ翼面54aが形成される。このことにより、スペーサ母材55からスペーサ中間部材56が得られる。スペーサ中間部材56の途中位置57と第2スペーサ面52までの範囲には、加工余肉部58が残される。本実施の形態においては、加工余肉部58は、第2スペーサ翼面54bを形成するための加工代が確保される程度に加工された部分であってもよい。スペーサ母材55から複数のスペーサ中間部材56が得られてもよい。この場合、スペーサ中間部材56は、個々のスペーサ50に対応して個片化されていてもよい。このことにより、第1翼面形成工程における切削加工のためのスペースを確保することができる。
【0084】
第1翼面形成工程の後、第1分離工程として、ランナ下半母材37とスペーサ中間部材56とが分離される。この場合、まず、第1加工用嵌合ボルト71とナット75が取り外され、第1加工用嵌合ボルト71が、第1ボルト孔33およびスペーサボルト孔53から抜き出される。その後、ランナ下半母材37とスペーサ中間部材56が分離される。
【0085】
第1分離工程の後、第2締結工程として、ランナ上半母材47およびスペーサ中間部材56が締結される。この場合、図13に示すように、ランナ上半母材47の第2スペーサ当接面42に、スペーサ中間部材56の第2スペーサ面52が当接するとともに、ランナ上半母材47およびスペーサ中間部材56に、第2加工用嵌合部80を嵌合させる。第1スペーサ面51から第2加工用嵌合ボルト81のネジ部84をスペーサボルト孔53および第2ボルト孔43に挿入し、頭部83は、第1スペーサ面51に当接させる。ネジ部84は、ランナ上半母材47のネジ孔44に螺合させる。第2加工用嵌合ボルト81を締め付けることにより、ランナ上半母材47およびスペーサ中間部材56が締結される。第2加工用嵌合ボルト81の第2嵌合胴体部82は、第2ボルト孔43およびスペーサボルト孔53に嵌合する。スペーサ中間部材56は、第1翼面形成工程における周方向配置と同じ周方向配置で配置されてもよい。
【0086】
第2締結工程の後、第2翼面形成工程として、ランナ上半母材47およびスペーサ中間部材56が切削加工される。この場合、ランナ上半母材47から、第2翼面45を含む第2羽根部分40が形成され、スペーサ中間部材56から、第2スペーサ翼面54bを含むスペーサ50が形成される。第2翼面45および第2スペーサ翼面54bは、連続状に形成され、第2翼面45と第2スペーサ翼面54bとの間に段差が形成されることを抑制できる。
【0087】
より具体的には、ランナ上半母材47に第2翼面45が形成されることにより、ランナ上半母材47から、図10に示すランナ上半部材15が得られる。ランナ上半部材15は、共通部材として構成されたクラウン10および複数の第2羽根部分40を含んでいる。この際、第2羽根部分40の根元部に、フィレット48が形成される。
【0088】
スペーサ中間部材56の第2スペーサ面52から途中位置57まで第2スペーサ翼面54bが形成される。加工余肉部58は、除去される。このことにより、スペーサ中間部材56からスペーサ50が得られる。切削加工時、第1スペーサ翼面54aを基準にして第2スペーサ翼面54bおよび第2翼面45を形成することにより、第1スペーサ翼面54aと第2スペーサ翼面54bとの間の段差を無くすことができる、または小さくすることができる。
【0089】
第2翼面形成工程の後、第2分離工程として、ランナ上半部材15とスペーサ50とが分離される。この場合、まず、第2加工用嵌合ボルト81がネジ部84から取り外され、第2ボルト孔43およびスペーサボルト孔53から抜き出される。その後、ランナ上半部材15とスペーサ50が分離される。
【0090】
第2分離工程の後、組立工程として、ランナ下半部材16、スペーサ50およびランナ上半部材15が締結される。この場合、ランナ下半部材16の第2スペーサ当接面42に、スペーサ50の第1スペーサ面51が当接するとともに、ランナ上半部材15の第2スペーサ当接面42に、スペーサ50の第2スペーサ面52が当接する。ランナ上半部材15、スペーサ50およびランナ下半部材16に、羽根嵌合部60を嵌合させる。バンド11の外面に形成されたザグリ孔34から羽根嵌合ボルト61のネジ部84を第1ボルト孔33、スペーサボルト孔53および第2ボルト孔43に挿入し、頭部63をザグリ孔34に挿入させる。ネジ部64は、ランナ上半部材15のネジ孔44に螺合させる。羽根嵌合ボルト61を締め付けることにより、図15に示すように、ランナ下半部材16、スペーサ50およびランナ上半部材15が締結される。スペーサ50は、第1翼面形成工程において配置された第1スペーサ当接面32と同じ第1スペーサ当接面32に配置されるとともに、第2翼面形成工程において配置された第2スペーサ当接面42と同じ第2スペーサ当接面42に配置されていてもよい。
【0091】
このようにして、図10および図15に示す本実施の形態によるランナ5が得られる。
【0092】
このように本実施の形態によれば、バンド11と共通部材として構成された第1羽根部分30、スペーサ50、および、クラウン10と共通部材として構成された第2羽根部分40に、羽根嵌合部60が嵌合している。このことにより、第1羽根部分30およびスペーサ50を締結して切削加工を行うことができ、第1翼面35および第1スペーサ翼面54a(スペーサ翼面54の一部)を形成することができる。この場合、第1翼面35および第1スペーサ翼面54aを形成するための切削加工を行う際に、スペースを確保することができる。また、スペーサ50を第1羽根部分30から分離し、第2羽根部分40に締結して切削加工を行うことができ、第2スペーサ翼面54b(スペーサ翼面54の他の一部)および第2翼面45を形成することができる。この場合、第2スペーサ翼面54bおよび第2翼面45を形成するための切削加工を行う際に、スペースを確保することができる。このため、ランナ5が比較的小型である場合であっても、切削加工のためのスペースを確保することができ、切削加工のためのスペースを確保することができ、ランナ羽根20の翼面を容易に作製することができる。
【0093】
また、本実施の形態によれば、第1羽根部分30、スペーサ50および第2羽根部分40に羽根嵌合部60が嵌合している。このことにより、第1翼面35および第1スペーサ翼面54aを形成した後に、第1羽根部分30およびスペーサ50を分離して再び締結した場合においても、第1羽根部分30とスペーサ50との間の位置ずれを抑制できる。このため、第1翼面35とスペーサ翼面54(または第1スペーサ翼面54a)との間の段差を無くすことができる、または小さくすることができる。同様に、第2翼面45および第2スペーサ翼面54bを形成した後に、第2羽根部分40およびスペーサ50を分離して再び締結した場合においても、第2翼面45とスペーサ翼面54(または第2スペーサ翼面54b)との間の段差を無くすことができる、または小さくすることができる。このため、ランナ羽根20の近傍における水の流れが乱れることを抑制でき、水の流れが阻害されることを抑制できる。
【0094】
また、本実施の形態によれば、ランナ羽根20の第1羽根部分30は、バンド11と連続する共通部材として構成され、ランナ羽根20の第2羽根部分40は、クラウン10と連続する共通部材として構成されている。このことにより、ランナ5の組立を簡素化することができる。また、第1羽根部分30の根元部に、フィレット38を形成することができる。このことにより、応力集中を抑制できるとともに、水の流れの挙動を制御することができる。同様に、第2羽根部分40の根元部に、フィレット48を形成することができる。このことにより、応力集中を抑制できるとともに、水の流れの挙動を制御することができる。
【0095】
なお、上述した本実施の形態においては、ザグリ孔34が、バンド11の外面に形成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、ザグリ孔34は、クラウン10の外面に形成されていてもよい。この場合、第2羽根部分40の第2ボルト孔43は、第2スペーサ当接面42からクラウン10の内部に延びていてもよい。ザグリ孔34は、第2ボルト孔43に連通する。ネジ孔は、第1ボルト孔33からバンド当接面31に向かって延びていてもよい。
【0096】
以上述べた実施の形態によれば、容易に作製することができるとともに水の流れが阻害されることを抑制できる。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。
【0098】
例えば、上述した本実施の形態においては、ターボ機械の一例としての水力機械の一例として、フランシス水車を例にとって説明した。しかしながら、水力機械はフランシス水車に限られることはなく、任意である。また、ターボ機械の一例として水力機械を挙げたが、水力機械以外のターボ機械にも、例えば、ポンプなどにも、上述した本実施の形態を適用できる。
【符号の説明】
【0099】
1:フランシス水車、5:ランナ、10:クラウン、11:バンド、15:ランナ上半部材、16:ランナ下半部材、20:ランナ羽根、30:第1羽根部分、32:第1スペーサ当接面、33:第1ボルト孔、35:第1翼面、36:第1羽根母材、37:ランナ下半母材、40:第2羽根部分、42:第2スペーサ当接面、43:第2ボルト孔、45:第2翼面、46:第2羽根母材、47:ランナ上半母材、50:スペーサ、51:第1スペーサ面、52:第2スペーサ面、53:スペーサボルト孔、54:スペーサ翼面、54a:第1スペーサ翼面、54b:第2スペーサ翼面、55:スペーサ母材、56:スペーサ中間部材、57:途中位置、60:羽根嵌合部、61:羽根嵌合ボルト、70:第1加工用嵌合部、71:第1加工用嵌合ボルト、80:第2加工用嵌合部、81:第2加工用嵌合ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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